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  • 特許-斜面昇降アシスト装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】斜面昇降アシスト装置
(51)【国際特許分類】
   B66D 1/54 20060101AFI20230208BHJP
   E02F 5/00 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
B66D1/54 M
E02F5/00 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018051489
(22)【出願日】2018-03-19
(65)【公開番号】P2019163119
(43)【公開日】2019-09-26
【審査請求日】2021-03-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000110022
【氏名又は名称】トーヨーコーケン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110559
【弁理士】
【氏名又は名称】友野 英三
(72)【発明者】
【氏名】梶原 宏生
(72)【発明者】
【氏名】岩下 聡
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-070017(JP,A)
【文献】特開平09-002748(JP,A)
【文献】実開昭60-012594(JP,U)
【文献】実開平02-115384(JP,U)
【文献】特開平10-117634(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0020663(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 1/54- 1/58
E02F 5/00
E04G 21/32
A62B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業人員を牽引するロープ部と、
前記ロープ部の一端側に取り付けられ該ロープ部を巻き取り又は前記ロープ部を送り出す動作を行うウィンチ部と、
前記ウィンチ部の動作を制御する制御部と、
前記ロープ部が掛け渡される滑車を有し、地面に固定された支持部に設けられる方向変換部と、
前記制御部に信号を出力するリモートコントローラと、
を有し、
前記ロープ部の前記一端側と対向する側である他端側に連結された安全ベルトが巻き回された作業人員は、前記リモートコントローラを操作して斜面上を昇降するようにされた斜面昇降アシスト装置であって、
前記方向変換部に設けられ、前記作業人員の前記方向変換部への接近を検出すると検出信号を出力する検出部をさらに有し、
前記検出部には細長く延びた棒状のセンサ部が前記滑車と前記作業人員との間の前記滑車に近い場所に設けられ、前記センサ部の先端部の付近が前記作業人員の接近によって押圧されたときに、作業員の手による操作を要せずに、前記先端部が根本部分を中心として回動して前記検出信号を出力するように構成され、
前記制御部は、前記検出信号が入力されると前記ウィンチ部に前記ロープ部の巻き取りを停止させることで前記作業人員が前記斜面上を昇降する際に前記ウィンチ部に巻き込まれることを防止することを特徴とする斜面昇降アシスト装置。
【請求項2】
前記ウィンチ部を固定する枠体を有する請求項1記載の斜面昇降アシスト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は法面工事の技術に係り、特に、作業人員の昇降移動を安全に補助する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
土木工事のうち、高所で作業を行う場合には墜落による労働者の危険を防止するために作業床を設置する必要があるが、作業床の設置が困難なところではロープで身体を保持する必要がある。
【0003】
例えば法面の保護工事などの場合には、高所の斜面上で作業人員が移動する必要があり、作業人員はロープを用いて安全を確保しながら斜面を昇降することになる。しかしながら人力で斜面を昇降しようとすると、疲労を回復するために休憩に長時間を要することになる。
【0004】
そこで近年では、作業人員をワイヤロープに緊結し、電動ウインチによってワイヤロープを巻き上げ又は送り出し、作業人員の安全性を確保しつつ斜面の登坂を補助することで、作業人員の昇降動作の負荷を軽減する工事方法が提案されている。
【0005】
しかしながら電動ウインチによって昇降させる対象は作業人員であることから、荷物や材料を昇降させるときと比べて安全性を格段に向上させる必要があり、特に、昇降する作業人員をウインチに巻き込むことが無い技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-036309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は斜面で工事を行う作業人員の安全を確保すると共に、作業人員の負荷を軽減する斜面昇降アシスト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、作業人員を牽引するロープ部と、前記ロープ部を巻き取り又は前記ロープ部を送り出す動作を行うウィンチ部と、前記ウィンチ部の動作を制御する制御部と、前記ロープ部が掛け渡される滑車を有し、地面に固定された支持部に設けられる方向変換部と、前記制御部に信号を出力するリモートコントローラと、を有し、前記ロープ部に連結された安全ベルトが巻き回された作業人員は、前記リモートコントローラを操作して斜面上を昇降するようにされた斜面昇降アシスト装置であって、前記方向変換部に設けられ、前記作業人員の前記方向変換部への接近を検出すると検出信号を出力する検出部と、前記制御部は、前記検出信号が入力されると前記ウィンチ部に前記ロープ部の巻き取りを停止させることを特徴とする斜面昇降アシスト装置である。
本発明は、前記検出部にはセンサ部が設けられ、前記センサ部が押圧されたことを検出すると前記検出信号を出力する斜面昇降アシスト装置である。
本発明は、前記ウィンチ部を固定する枠体を有する斜面昇降アシスト装置である。
【発明の効果】
【0009】
作業人員が斜面を登坂すると、両手が塞がっていてもロープ部の巻き取りが自動的に停止されるので安全である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の斜面昇降アシスト装置を説明するための図
図2】その斜面昇降アシスト装置のウインチ部を説明するための図
図3】本発明の斜面昇降アシスト装置によって斜面を昇降する様子を説明するための図
図4】方向変換部を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1の符号2は本発明の斜面昇降アシスト装置を示しており、該斜面昇降アシスト装置2は、台座40と、台座40に取り付けられたウィンチ部10と、方向変換部11とを有している。
図2はウィンチ部10とその周囲とを上方から見た図面である。複数の支柱441~444が水平な地面36に打ち込まれて固定されており、一台の台座40が打ち込まれた各支柱441~444のそれぞれに固定されている。
【0012】
台座40は、木製の棒又は金属製のパイプから成る四本の支持棒451~454が第一の固定金具331~334で着脱可能に固定されて井桁形形状に組み立てられて形成されており、台座40は、第二の固定金具311~314によって着脱可能に固定されている。
【0013】
ウィンチ部10は、枠体21と、枠体21に固定されたウィンチ本体22とを有しており、枠体21は第三の固定金具281~284によって台座40に着脱可能に固定されている。従って、ウィンチ部10は枠体21と台座40とを介して、支柱441~444に着脱可能に固定されている。
【0014】
水平な地面のうち、支柱441~444が打ち込まれた場所は、その側方の近傍に斜面37が位置している場所であり、斜面37と支柱441~444が打ち込まれた場所との間の水平な地面36には支持部16が設けられている。
【0015】
支持部16は、地面36に垂直に打ち込まれた一本乃至複数本の主柱161と、主柱161の一本に対して一本が地面36に傾斜して打ち込まれた補助柱162とで構成されている。主柱161と補助柱162とは、それらの上部で連結されており、支持部16の前後左右に力が印加されても倒れないようになっている。
補助くい291~294をうち込んでもよい。
【0016】
支持部16の上部には方向変換部11が設けられている。
図4は方向変換部11の拡大図である。方向変換部11は懸吊部54と、懸吊部54に設けられた滑車52とを有し、懸吊部54は支持部16に固定された懸吊フック34に着脱可能に掛けられており、従って、方向変換部11は懸吊フック34に懸吊されている。
【0017】
ウィンチ本体22は、モータ23と巻き胴24とギア部25と制御部26と、を有しており、巻き胴24にはロープ部18が送り出し可能に巻き取られている。ギア部25には直径が異なるギアとブレーキとが内蔵され、速度調節ができるようになっている。
【0018】
図3に示すように、ロープ部18の先端には連結器具12が設けられている。
斜面37を昇降移動しようとする作業人員20は、平坦な地面36上で予め安全ベルト59を人体の胴に巻き回しておく。また、ウィンチ部10を動作させてロープ部18をウィンチ部10から送り出し、送り出されたロープ部18を滑車52に掛け渡しておく。
【0019】
ロープ部18の先端に設けられた連結器具12はロープ部18の先端に固定される固定部56と固定部56に設けられた連結フック部57とを有しており、作業人員20は、先ず、安全ベルト59に設けられた連結環58を連結フック部57に連結し、作業人員20の本人をロープ部18に緊結する。
【0020】
作業人員20はウィンチ部10のモータ23の動作を制御するためのリモートコントローラ13を把持している。
リモートコントローラ13は、電波によって制御部26に無線接続されており、作業人員20がリモートコントローラ13に設けられたボタンを操作することによって、操作に対応した信号がリモートコントローラ13から制御部26に無線出力される。制御部26は受信した信号の内容に従って、モータ23の回転方向や回転速度等を制御し、ロープ部18を所望速度で巻き取り又は送り出すようになっている。
【0021】
作業人員20は、ロープ部18にたるみが無いようにロープ部18を送り出しながら斜面37を降下する。図3は、作業人員20が斜面37を降下しているところであり、所望の位置に到達したところで、リモートコントローラ13によってロープ部18が送り出されないようにする。
【0022】
その状態で作業人員20が斜面37に対して直立したときには、ロープ部18は、作業人員20の体重によって発生する力によって、斜面37の表面に沿った方向に牽引される。
【0023】
ロープ部18を牽引する力は、作業人員20の体重によって発生する力のうちの斜面37と平行な成分であり、ウィンチ本体22と方向変換部11との間に位置するロープ部18が略水平に張られているものとすると、斜面37に対して平行な力は、方向変換部11によって斜面37と平行な方向に変換され、ウインチ部10を水平方向に牽引する。
【0024】
ウィンチ部10は、上述したように、支柱441~444に固定されており、ウィンチ部10は、作業人員20の体重によって発生する力が印加されても移動しないようになっている。
【0025】
支柱441~444と支持部16は傾かず、ロープ部18は伸びることは無いから、ロープ部18にたるみが無い状態では作業人員20の姿勢は斜面37上で安定する。
【0026】
このように、作業人員20がロープ部18がたるまないようにしながらウィンチ本体22からロープ部18を送り出すと、作業人員20は斜面37を下方に移動することができる。
【0027】
他方、作業人員20が上方に移動しようとするときは、ウィンチ本体22によって作業人員20を牽引しながらロープ部18を巻き取り、作業人員20が斜面37の表面に沿ってロープ部18と共に移動すると、作業人員20はロープ部18が巻き取られる力を補助力にして斜面37を登坂することができるので、作業人員20は小さな力で上方に移動することができることになる。
このように、作業人員20はリモートコントローラ13を操作し、斜面37上を所望距離上昇又は下降して土木作業を行うことができる。
【0028】
また、作業人員20が斜面37から平坦な地面36に移動する場合には、作業人員20はリモートコントローラ13を操作し、ウィンチ部10によってロープ部18を巻き取り、小さな力で斜面37を上方に移動する。
【0029】
作業人員20が上端に到着し、斜面37から水平な地面36に移動すると、作業人員20は支持部16に設けられた滑車52に接近することになる。
滑車52には検出部51が固定されており、検出部51はセンサ部53を有している。
【0030】
センサ部53は細長形状で湾曲した金属棒で構成されており、その一端である根本部分55は検出部51が内蔵する回転軸に取り付けられ、他端である先端部分14は滑車52と作業人員20との間の滑車52に近い場所に位置するようにされている。
【0031】
センサ部53は地面36の上方に位置しており、先端部分14の地面36からの高さは、作業人員20の胴に巻き回された安全ベルト59の地面36からの高さと同程度にされている。
【0032】
作業人員20が滑車52に接近すると、固定部56や連結フック部57等のロープ部18に設けられた部材がセンサ部53の先端部分14と接触して先端部分14を押圧する。
【0033】
センサ部53は、根本部分55を中心として回動できるように検出部51に設けられており、ロープ部18に設けられた部材による押圧のため、センサ部53の先端部分14は回動する。
【0034】
検出部51の内部には、センサ部53の回動によって導通又は遮断が切りかわり、作業人員20の接近を検出するスイッチが設けられている。
【0035】
検出部51と制御部26とは、信号線17によって電気的に接続されており、スイッチの切り換わりによって検出部51は作業人員20の接近を検出し、検出部51は接近したことを示す検出信号を、信号線17を介して制御部26に出力する。
信号線17ではなく、無線によって検出信号を出力してもよい。また、信号線17と並列に、方向変換部11を動作させる電力線を敷設することもできる。
【0036】
制御部26は、検出部51から検出信号が入力されるとウィンチ部10を制御し、ロープ部18の巻き取り動作を停止させる。その結果、作業人員20は支持部16と衝突したり、ウィンチ部10に巻き込まれるようなことは無く、安全に地面36上で立ち止まることができる。特に、作業人員20の両手がふさがっているときであっても、作業人員20は安全に移動を停止することができる。
【0037】
作業人員20が斜面37から水平な地面36に移動したときに、作業人員20がリモートコントローラ13を操作してウィンチ部10による巻き取りを停止させることもできる。
【0038】
なお、上記例では、金属棒に換え、赤外線センサーを用いてセンサ部とし、固定部56や連結フック部57等のロープ部18に設けられた部材が赤外線を遮断することで、作業人員20の接近を検出することができる。但し、屋外での検出動作になるため、金属棒の押圧によって作業人員20の接近を検出する方が信頼性が高い。
【符号の説明】
【0039】
2……斜面昇降アシスト装置
10……ウィンチ部
11……方向変換部
13……リモートコントローラ
20……作業人員
21……枠体
26……制御部
36……地面
37……斜面
51……検出部
52……滑車
53……センサ部
図1
図2
図3
図4