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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】回転ノズルを備える装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 3/02 20060101AFI20230208BHJP
   B05B 13/04 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
B05B3/02 G
B05B3/02 L
B05B13/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019055787
(22)【出願日】2019-03-24
(65)【公開番号】P2020151695
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-03-21
(73)【特許権者】
【識別番号】710006367
【氏名又は名称】ウラカミ合同会社
(72)【発明者】
【氏名】浦上 不可止
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-179143(JP,A)
【文献】特開2001-293440(JP,A)
【文献】特開2014-088712(JP,A)
【文献】特開2015-003286(JP,A)
【文献】特開平08-084964(JP,A)
【文献】特開平06-226215(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1242593(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 3/00- 3/18,
13/00-13/06
B08B 3/00- 3/14,
7/00- 9/46
B24C 3/00- 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体表面に沿って移動可能な移動装置と、該移動装置に搭載された回転ノズル装置から構成された、回転ノズルを備える装置において;
該回転ノズル装置は、円運動を行う少なくとも2個の噴射ノズルから噴射された被噴射物が被噴射面に射突して該被噴射面上に円形の軌跡を描くように構成された回転ノズルユニットが、該移動装置の移動方向と直角に交差する方向に並列に2式具備されており、すなわち、ローラチェーンやギヤなどの回転伝導手段により連動して回転運動を行う、左回転ノズルユニットと右回転ノズルユニットが具備されており;
噴射ノズルが円形の軌跡を描く運動速度に関し、各々の回転ノズルユニットの噴射ノズルは不等速円運動を行うように構成されており、すなわち、各々の噴射ノズルが移動装置の移動方向に向かって左の端部領域もしくは右の端部領域に在る場合においては運動速度が増加し、移動方向に向かって前方の端部領域もしくは後方の端部領域に在る場合においては運動速度が減少するように構成されている;ことを特徴とする回転ノズルを備える装置において;
左回転ノズルユニットの噴射ノズルの配置と、右回転ノズルユニットの噴射ノズルの配置について、左右の噴射ノズルどうしは約90度位相がずれた状態で配置されており、よって、左の噴射ノズルの円運動が加速される場合には右の噴射ノズルの円運動が減速されるように構成されており、また、左の噴射ノズルの円運動が減速される場合には右の噴射ノズルの円運動が加速されるように構成されており、すなわち、左の噴射ノズルの運動の加速度の反力と右の噴射ノズルの運動の加速度の反力が打ち消されるように構成されている;ことを特徴とする回転ノズルを備える装置。
【請求項2】
2式の回転ノズルユニットの各々は、等速円運動を不等速円運動に変換する運動伝達機構として非円形歯車機構を備えている、ことを特徴とする請求項1に記載の回転ノズルを備える装置。
【請求項3】
移動装置の形態に関し、該移動装置は、函体と、該函体及び移動面と協働して減圧空間を規定するシールと、該減圧空間から流体を排出して該減圧空間内を減圧せしめるための減圧生成手段とを具備する構成により包囲流体の圧力によって移動面に吸着し且つ移動面に沿って移動可能な台車、の形態を成しており、該台車の該減圧空間内において、該ノズルが円運動を行い、該ノズルから噴射された被噴射物が被噴射面に射突して該被噴射面上に円形の軌跡を描くように構成されている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項2に記載の回転ノズルを備える装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体表面に水などの超高圧流体や、あるいは砥粒を混合された圧縮空気などの物質を噴射することにより、物体表面に付着する旧塗膜やさび等の異物を除去し、あるいは物体表面を粗面化することが可能な装置に関する。
また、本発明は、物体表面に塗料や、あるいはプラズマ化された金属などの物質を噴射することにより、物体表面をコーティングすることが可能な装置に関する。
また、本発明は、空気や水の如とき包囲流体の圧力によって物体表面に吸着し且つそれに沿って移動しながら、物体表面に種々の物質を噴射することにより、物体表面の処理を行うことが可能な装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、貯油タンクや船体等の物体表面に水などの超高圧流体や、あるいは砥粒を混合された圧縮空気を噴射することにより、物体表面に付着する旧塗膜やさび等の異物を除去し、あるいは噴射された砥粒により物体表面を粗面化し、よって塗装の素地調整を行ったり、あるいは非破壊検査を実施するために物体表面を清浄にする装置として、超高圧ウオータジェット装置やサンドブラスト装置が実用に供されている。
また、空気や水の如とき包囲流体の圧力によって貯油タンクや船体等の物体表面に吸着し且つそれに沿って移動しながら、物体表面に水などの超高圧流体や、あるいは砥粒を混合された圧縮空気を噴射することにより、物体表面に付着する旧塗膜やさび等の異物を除去し、あるいは噴射された砥粒により物体表面を粗面化し、よって塗装の素地調整を行ったり、あるいは非破壊検査を実施するために物体表面を清浄にする装置として、例えば特公昭60-26752号公報、特許第1323843号、米国特許第4,095,378号に開示された装置を挙げることができる。
かかる装置は、函体と、該函体に装着された複数の車輪と、該函体に連結されその自由端部が物体表面に接触せしめられるシールと、該函体、物体表面及び該シールによって規定された減圧空間内の流体を外部に排出するための減圧生成手段とを備えている。
かかる装置においては、減圧生成手段が付勢されると減圧空間内の流体が外部に排出され、減圧空間内外の流体圧力差に起因して函体に作用する流体圧力は車輪を介して物体表面に伝達され、かかる流体圧力によって装置が物体表面に吸着される。
また、かかる吸着状態において電動モータの如き駆動手段によって車輪を回転駆動せしめると、上記車輪の作用によって装置は物体表面に沿って移動する。
なお、かかる装置には、物体表面に超高圧水を噴射する超高圧水噴射ノズルや砥粒を圧縮空気と共に噴射する砥粒噴射ノズルの如きノズルが装着され、かつ該ノズルから噴射された物質が物体表面上に円形の軌跡を描くように該ノズルが円運動を行える状態で装着されている。
以下に、従来の超高圧ウオータジェット装置における、超高圧水を噴射しながら円運動を行う回転ノズルの具体例を記載する。
従来の超高圧ウオータジェット装置の回転ノズルにおいては、1平方センチメータあたり約2000~2500キログラムの超高圧に加圧された毎分約20リットルの量の水を、直径0.1~0.5ミリメートルのノズルより噴射せしめ、かつ該ノズルを、物体表面より20~30ミリメートル離れた該表面と平行な面上において、毎分約1000回転で、回転直径は約400ミリメートルで高速回転せしめ、しかも該回転するノズルを毎分約3メートルの速度で物体表面に沿って徐々に移動せしめることにより、物体表面の処理を連続的に行っている。
なお、上記の装置においては、超高圧水をノズルに供給する超高圧ホースと回転ノズルの間は、回転継手により連結されている。
なお、上記の装置においてノズルが高速回転せしめられる理由は、ノズルの直径が0.1~0.5ミリメートルと非常に小さく、よって処理幅も同様に小さいため、もしノズルを低速で回転せしめると、処理後の表面はノズルの中心が移動する軌跡の部分のみ線の状態で処理され、面の状態で処理されない、という問題が発生するからである。
【0003】
なお、上述した従来の装置には次の通りの解決すべき問題が存在する。
即ち、従来の超高圧ウオータジェット装置の回転ノズルにおいては、ノズルが等速円運動を行っており、よって回転ノズル全体の移動方向に向かって該ノズルが左の端部もしくは右の端部に在る場合においては処理能力が増大し、前の端部もしくは後の端部に在る場合においては減少する、といった現象に起因した処理むらの発生が問題であった。
そこで本発明者は、上記事実に鑑みて、従来の装置に比べて処理むらの発生を防止できる装置として、特開2001-179143号公報に記載の装置、即ち;
回転ノズルを備える装置において、円形の軌跡を被噴射面に沿って移動させるために移動手段を備え、ノズルは不等速円運動を行うようにされている。すなわち、該ノズルが該回転ノズルを備える装置の移動方向に向かって左右の端部に在る場合は運動速度が増加し、前後の端部に在る場合は減少する。該移動手段は、函体2及び移動面と協働して減圧空間を規定するシール36と、該減圧空間から流体を排出して該減圧空間内を減圧せしめるための減圧生成手段とを具備し、包囲流体の圧力によって移動面に吸着し且つ移動面に沿って移動可能な台車となっており、台車の減圧空間内でノズルが円運動を行う、回転ノズルを備える装置;を提案している。
【文献】特公昭60-26752号
【文献】特許第1323843号
【文献】米国特許第4,095,378号
【文献】特開2001-179143号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の装置には次の通りの解決すべき問題が存在する。
即ち、特開2001-179143号公報に記載の装置においては、不等速円運動を行うノズルが、等速円運動を不等速円運動に変換する運動伝達機構を介して、等速円運動を行う質量が重いフライホイールに連結されおり、而して、装置の質量が重くなる、という欠点があった。
本発明は、上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的解決課題は、質量が重いフライホイールの使用を廃止することにより軽量化された装置と、且つ、2式の回転ノズルユニットを具備したことにより処理巾が増大化された装置、を提供することである。
また本発明においては、物質の物体表面への噴射を物体表面に沿って移動する減圧空間内で実施することにより、噴射された物質や物体表面から剥離された異物を真空生成装置により吸引回収し、よって大気浮遊物質の発生源を無くし環境汚染を防止できる装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、請求項1に記載のように、物体表面に沿って移動可能な移動装置と、該移動装置に搭載された回転ノズル装置から構成された、回転ノズルを備える装置において;
該回転ノズル装置は、円運動を行う少なくとも2個の噴射ノズルから噴射された被噴射物が被噴射面に射突して該被噴射面上に円形の軌跡を描くように構成された回転ノズルユニットが、該移動装置の移動方向と直角に交差する方向に並列に2式具備されており、すなわち、ローラチェーンやギヤなどの回転伝導手段により連動して回転運動を行う、左回転ノズルユニットと右回転ノズルユニットが具備されており;
噴射ノズルが円形の軌跡を描く運動速度に関し、各々の回転ノズルユニットの噴射ノズルは不等速円運動を行うように構成されており、すなわち、各々の噴射ノズルが移動装置の移動方向に向かって左の端部領域もしくは右の端部領域に在る場合においては運動速度が増加し、移動方向に向かって前方の端部領域もしくは後方の端部領域に在る場合においては運動速度が減少するように構成されている;ことを特徴とする回転ノズルを備える装置において;
左回転ノズルユニットの噴射ノズルの配置と、右回転ノズルユニットの噴射ノズルの配置について、左右の噴射ノズルどうしは約90度位相がずれた状態で配置されており、よって、左の噴射ノズルの円運動が加速される場合には右の噴射ノズルの円運動が減速されるように構成されており、また、左の噴射ノズルの円運動が減速される場合には右の噴射ノズルの円運動が加速されるように構成されており、すなわち、左の噴射ノズルの運動の加速度の反力と右の噴射ノズルの運動の加速度の反力が打ち消されるように構成されている;
ことを特徴とする回転ノズルを備える装置が提供される。
また本発明によれば、2式の回転ノズルユニットの各々は、等速円運動を不等速円運動に変換する運動伝達機構として非円形歯車機構を備えている、ことを特徴とする請求項1に記載の回転ノズルを備える装置が提供される。
また本発明によれば、移動装置の形態に関し、該移動装置は、函体と、該函体及び移動面と協働して減圧空間を規定するシールと、該減圧空間から流体を排出して該減圧空間内を減圧せしめるための減圧生成手段とを具備する構成により包囲流体の圧力によって移動面に吸着し且つ移動面に沿って移動可能な台車、の形態を成しており、該台車の該減圧空間内において、該ノズルが円運動を行い、該ノズルから噴射された被噴射物が被噴射面に射突して該被噴射面上に円形の軌跡を描くように構成されている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項2に記載の回転ノズルを備える装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、下記の効果をもたらすものである。
ノズルから噴射された物質が被噴射面に射突する点の軌跡が円形の軌跡を描くようにノズルが円運動を行う、従来の超高圧ウオータジェット装置等の回転ノズルを備えた装置においては、ノズルは等速円運動を行っており、よって回転ノズルを備えた装置の移動方向に向かって、ノズルが左の端部もしくは右の端部に在る場合においては処理能力が増大し、前の端部もしくは後の端部に在る場合においては減少する、といった現象に起因した処理むらの発生が問題であったが、本発明においては、ノズルが円形の軌跡を描く運動速度に関し、該ノズルは不等速円運動を行うように構成されており、すなわち、回転ノズルを備える装置の移動方向に向かって左の端部もしくは右の端部にノズルが在る場合においては該運動速度が増加し、前の端部もしくは後の端部に在る場合においては減少するように構成されているため、従来の装置に比べて処理むらの発生を防止でき、処理品質が均一でかつ効率的な表面処理作業を実施することができる。
また本発明においては、物質の物体表面への噴射を物体表面に沿って移動する減圧空間内で実施することにより、噴射された物質や物体表面から剥離された異物を真空生成装置により吸引回収し、よって大気浮遊物質の発生源を無くし環境汚染を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明に従って構成された装置の好適実施例について、添付図を参照して更に詳細に説明する。
【実施例
【0008】
図1図2及び図3において、図示の装置は、例えば鋼の如き剛性乃至半剛性の材料から形成された函体2を具備している。
函体2は適宜の形状でよいが、図示の具体例では、本発明の装置が移動する表面である物体表面1に対向する部分が開口した略長円筒の箱の該開口部の外周縁に長円形の板が溶着されている形状をしている。
この函体2の側壁の対向する両部位には、外方に突出する支持部材12及び14が固定され、支持部材12及び14には更に支持フレーム16及び18が固定されている。
主として図1を参照して、支持フレーム16には車輪22a及び 22bが回転自在に装着されている。
支持フレーム16には、更に、走行駆動源を構成する電動モータ24が設置されている。電動モータ24は、チェーン26及びスプロケットの如き適宜の伝動手段を介して車輪22a及び22bに連結されていて車輪22a及び22bを回転駆動する。
また、支持フレーム18にも、車輪30a及び30bが回転自在に装着されている。
支持フレーム18にも、更に、走行駆動源を構成する電動モータ32が設置されており、電動モータ32はチェーン34及びスプロケットの如き適宜の伝動手段を介して車輪30a及び30bに連結されていて車輪30a及び30bを回転駆動する。
これら車輪22a,22b,30a及び30bは本発明の装置を物体表面1に沿って移動せしめるための走行手段を構成し、具体例においては後に詳述する如く、函体2に作用する包囲流体圧力によって物体表面1に押付けられてこれに接触せしめられる。
尚、具体例においては、走行手段として4個の車輪を用いているが、これに代えて3個又は5個以上の車輪を用いてもよく、更に車輪に代えて2個以上のそれ自体周知のエンドレストラックを用いてもよい。
主として図3を参照して、函体2の開口部にはシール36が装着されている。
全体の形状が長円形かつ環状のシール36の一方の端部は函体2の長円形の板に連結され、もう一方の端部は物体表面1に接触せしめられ、函体2及び物体表面1と協働して減圧空間50を規定している。
かかるシール36は、ポリウレタンの如き非通気性で且つ比較的柔軟な材料から形成されており、従って比較的小さな力によってそれ自体が弾性変形し、これによって物体表面1に接触する端部は函体2に対して物体表面1の方向及びこれから離れる方向に変位せしめられる。
函体2、物体表面1及びシール36によって規定される減圧空間50は減圧生成手段(図示せず)に連通されている。
具体例では、函体2の側壁には接続管部10aが設けられており、サクションホース(図示せず)の一端部が上記接続管部10aに接続され、その他端部がバッグフィルタ等の分離器(図示せず)を介して減圧生成手段(図示せず)に接続されている。
減圧生成手段(図示せず)は減圧空間50から流体を排して減圧空間50内を減圧せしめるそれ自体周知のものでよく、上記装置を例えば大気中で使用する場合には排気ポンプ又はエゼクタ等を用いることができ、また上記装置を例えば水中又は海中で使用する場合には排水ポンプ等を用いることができる。
【0009】
次に、主として図3乃至図4を参照して説明すると、函体2の上面部に在るフランジ部にはギヤボックス9がその底面部に在るフランジ部において固定されている。
電動モータ94はそのフランジ部においてギヤボックス9の上面部に在るフランジ部に固定されている。
ギヤボックス9は、電動モータ94の出力軸941と、2式の回転ノズル軸92と中間軸97を軸受を用いて軸支している。
各々の回転ノズル軸92の物体表面側の端部にはノズルホルダ911が固着され、ノズルホルダ911には2本のノズルバー912が固着され、ノズルバー912の各々には噴射ノズル91が固着されている。
各々の回転ノズル軸92の物体表面と反対側の端部はギヤボックス9の上面部を貫通し、該端部には回転継手95がネジ込まれ、回転継手95には超高圧水ホース(図示せず)が接続されている。
各々の回転ノズル軸92の軸線部分には超高圧水の流路として細孔924が有り、超高圧水ホース(図示せず)から、回転継手95、細孔924、ノズルホルダ911及びノズルバー912を通り噴射ノズル91に至る超高圧水の流路が形成されている。
各々の回転ノズル軸92の上部には従動側の非円形歯車922が固着され、従動側の非円形歯車922と噛合う原動側の非円形歯車923は中間軸97の上部に固着されている。
図4に図示のように、従動側の非円形歯車922は概ね長円形に近い形状を成し、原動側の非円形歯車923は概ね菱形に近い形状を成している。
中間軸97の中央部には従動側の円形歯車942が固着され、従動側の円形歯車942と噛合う原動側の円形歯車943は出力軸941の中央部に固着されている。
各々の中間軸97の下部にはスプロケット963が固着されており、2式のスプロケット963の間にはローラチェーン964が懸架されている。
なお、2式のノズルバー912と2式の非円形歯車ユニットは、90度位相が異なって配置されている。
以上に記載した歯車の構成により、出力軸941と中間軸97は等速円運動を行い、回転ノズル軸92は不等速円運動を行う。
よって回転ノズル軸92にノズルホルダ911及びノズルバー912を介して装着されている2個の噴射ノズル91も不等速円運動を行う。
【0010】
次に、上述した装置の作用について説明する。
減圧生成手段(図示せず)が作動すると、この減圧生成手段の作用によって減圧空間50内の流体(例えば大気中で使用する場合には空気、また例えば水中で使用する場合には水)がサクションホース(図示せず)を通って外部に排出され、これによって減圧空間50内が所要の通り減圧される。
かくすると、シール36が比較的柔軟な材料から形成されている故に、減圧空間50の内外の流体圧力差に起因して函体2に作用する包囲流体圧力は実質上函体2から支持フレーム16及び18、並びに車輪22a,22b,30a及び30bを介して物体表面1に伝達され、これによって装置が物体表面1に吸着せしめられる。
なお、減圧空間50の内外の流体圧力差に起因してシール36に作用する包囲流体圧力は、シール36を物体表面1に向けて偏倚せしめてその端部を物体表面1に接触せしめるように作用する。
尚、容易に理解される如く、電動モータ24及び32を作動せしめて車輪22a及び22bと車輪30a及び30bを同方向に回転駆動すると、装置は物体表面1に沿って直進(前進または後進)し、また車輪22a及び22bと車輪30a及び30bを逆方向に回転駆動すると、装置はその中心軸線の回りを回転(左回転または右回転)して所望の方向に向けられる。
【0011】
次に、不等速円運動を行うノズル91の作用効果について説明する。
なお、従来の超高圧ウオータジェット装置の回転ノズルにおいては、ノズルが等速円運動を行っており、よって回転ノズル全体の移動方向に向かって該ノズルが左の端部もしくは右の端部に在る場合においては処理能力が増大し、前の端部もしくは後の端部に在る場合においては減少する、といった現象に起因した処理むらの発生が問題であった。
上記の処理むらを解消するために不等速円運動を行うノズル91を具備した本発明の実施例の装置においては、電動モータ94を作動せしめて出力軸941を回転駆動すると、従動側の中間軸97は回転駆動されて等速円運動を行う。一方、同じく従動側の回転ノズル軸92も回転駆動されるが、非円形歯車922及び923の作用により不等速円運動を行うものである。
以下に図4により非円形歯車922及び923の作用を説明する。
図4において、矢印Cは本発明の装置の移動方向を示し、Aは本発明の装置が移動する表面に平行かつ移動方向に直交する線とノズルバー912及びノズル91が成す角度を示し、Rはノズル91の回転半径を示し、Wは本発明の装置の回転ノズル軸が移動する中心線とノズル91の距離を示している。
噴射ノズル91の加速度は、角度Aが0度(360度)及び180度の近傍で急激に増大し、よって噴射ノズル91が不等速円運動を行うためには、該加速度の変化を阻止しようとする噴射ノズル91とノズルバー912の慣性力に打ち勝つだけの反力が必要となる。
本発明の実施例の装置においては、回転ノズルユニットが、移動装置の移動方向と直角に交差する方向に並列に2式具備されており、すなわち、スプロケット963とローラチェーン964による回転伝導手段により連動して回転運動を行う、左回転ノズルユニットと右回転ノズルユニットが具備されている。
なお、スプロケット963の回転方向をCCWで示しており、左回転ノズルユニットのノズルバー912Lと右回転ノズルユニットのノズルバー912Rの回転方向をCWで示している。
噴射ノズルが円形の軌跡を描く運動速度に関し、各々の回転ノズルユニットの噴射ノズルは不等速円運動を行うように構成されており、すなわち、各々の噴射ノズルが移動装置の移動方向に向かって左の端部領域もしくは右の端部領域に在る場合においては運動速度が増加し、移動方向に向かって前方の端部領域もしくは後方の端部領域に在る場合においては運動速度が減少するように構成されている。
左回転ノズルユニットの噴射ノズルの配置と、右回転ノズルユニットの噴射ノズルの配置について、左右の噴射ノズルどうしは90度位相がずれた状態で配置されており、よって、左の噴射ノズルの円運動が加速される場合には右の噴射ノズルの円運動が減速されるように構成されており、また、左の噴射ノズルの円運動が減速される場合には右の噴射ノズルの円運動が加速されるように構成されており、すなわち、左の噴射ノズルの運動の加速度の反力と右の噴射ノズルの運動の加速度の反力が打ち消されるように構成されている。
【0012】
なお、本発明の実施例の装置においては、超高圧水ホース(図示せず)から回転継手95、細孔924、ノズルホルダ911及びノズルバー912を通りノズル91から噴射された超高圧水は、物体表面1へ射突して物体表面上の旧塗膜やサビ等の異物を除去したあと、減圧空間50から接続管部10a、サクションホース(図示せず)及びバッグフィルタ等の分離器(図示せず)を通って減圧生成手段(図示せず)に至る吸引空気流の作用により吸引回収される。
【0013】
以上の本発明の装置の好適実施例についての説明は、本発明の装置が大気中の表面上に在るものとして説明を行ったが、本発明の装置は水中においても適用されることができる。かかる場合の真空ポンプについては、水ポンプや水駆動エゼクタを用いることができる。
以上に本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、さまざまな変形あるいは修正ができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0014】
ノズルから噴射された物質が被噴射面に射突する点の軌跡が円形の軌跡を描くようにノズルが円運動を行う、従来の超高圧ウオータジェット装置等の回転ノズルを備えた装置においては、ノズルは等速円運動を行っており、よって回転ノズルを備えた装置の移動方向に向かって、ノズルが左の端部もしくは右の端部に在る場合においては処理能力が増大し、前の端部もしくは後の端部に在る場合においては減少する、といった現象に起因した処理むらの発生が問題であったが、本発明においては、ノズルが円形の軌跡を描く運動速度に関し、該ノズルは不等速円運動を行うように構成されており、すなわち、回転ノズルを備える装置の移動方向に向かって左の端部もしくは右の端部にノズルが在る場合においては該運動速度が増加し、前の端部もしくは後の端部に在る場合においては減少するように構成されているため、従来の装置に比べて処理むらの発生を防止でき、処理品質が均一でかつ効率的な表面処理作業を実施することができる。
また本発明においては、物質の物体表面への噴射を物体表面に沿って移動する減圧空間内で実施することにより、噴射された物質や物体表面から剥離された異物を真空生成装置により吸引回収し、よって大気浮遊物質の発生源を無くし環境汚染を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に従って構成された装置の一具体例を示す平面図。
図2図1の装置の下側面図。
図3図1の装置のA-A線による断面図。
図4】非円形歯車の歯車運動と噴射ノズルの円運動を示す平面図。
【符号の説明】
【0016】
1:物体表面
2:函体
9:ギヤボックス
91:噴射ノズル
92:回転ノズル軸
93:ギヤボックスケース
94:電動モータ
95:回転継手
97:中間軸
911:ノズルホルダ
912:ノズルバー
912L:左ノズルバー
912R:右ノズルバー
922:従動側の非円形歯車
923:原動側の非円形歯車
924:細孔
941:出力軸
942:従動側の円形歯車
943:原動側の円形歯車
963:スプロケット
964:ローラチェーン
10a:接続管部
12:支持部材
14:支持部材
16:支持フレーム
18:支持フレーム
22a:車輪
22b:車輪
24:電動モータ
26:チェーン
30a:車輪
30b:車輪
32:電動モータ
34:チェーン
36:シール
50:減圧空間

図1
図2
図3
図4