(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】モータ装置
(51)【国際特許分類】
H02K 11/33 20160101AFI20230208BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20230208BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
H02K11/33
H05K7/20 B
B62D5/04
(21)【出願番号】P 2017216723
(22)【出願日】2017-11-09
【審査請求日】2020-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕人
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-189034(JP,A)
【文献】特開2013-151206(JP,A)
【文献】特開2001-008468(JP,A)
【文献】国際公開第2012/060123(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/160622(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/33
H05K 7/20
B62D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
トランジスタと当該トランジスタへの電力の供給を安定化するコンデンサとシャント抵抗で構成されており、前記モータの駆動に必要な電力を供給するように動作するパワー回路と、前記パワー回路の動作を制御する制御回路とがそれぞれ実装されており、前記モータにおける回転軸の軸線の延長線上で前記回転軸の軸方向に沿って見たときに、互いに重なり合う部分を有して配置されている複数の制御基板と、を備え、
前記複数の制御基板の前記互いに重なり合う部分は、前記回転軸の軸線の延長線と交差しており、
前記パワー回路の放熱を促すヒートシンクを更に備え、
前記複数の制御基板は、前記回転軸の前記軸方向において前記ヒートシンクを挟むように配置される第1の制御基板と第2の制御基板とを含み、
前記第1の制御基板の前記パワー回
路が実装される
第1の領域を含む当該第1の制御基板の実装面および前記第2の制御基板の前記パワー回
路が実装される
第2の領域を含む当該第2の制御基板の実装面が前記ヒートシンクに対してそれぞれ対向しており、
前記第1
の領域と前記第2
の領域とは、
前記複数の制御基板の前記互いに重なり合う部分の領域内に配置されているなかで前記回転軸の軸線の延長線上で前記軸方向に沿って見たときに重なり合わないように配置されているモータ装置。
【請求項2】
前記第1の制御基板および前記第2の制御基板には、前記トランジスタ
および前記シャント抵抗を含む複数の電子部品がそれぞれ実装され、
前記第1の制御基板に実装される前記複数の電子部品と前記ヒートシンクとの前記軸方向におけるそれぞれの距離のうち、前記トランジスタ又は前記シャント抵抗と前記ヒートシンクとの距離が最も短く、
前記第2の制御基板に実装される前記複数の電子部品と前記ヒートシンクとの前記軸方向におけるそれぞれの距離のうち、前記トランジスタ又は前記シャント抵抗と前記ヒートシンクとの距離が最も短い
請求項1に記載のモータ装置。
【請求項3】
前記第1の制御基板における前記トランジス
タと前記ヒートシンクとの前記軸方向における距離と、前記第2の制御基板における前記トランジス
タと前記ヒートシンクとの前記軸方向における距離とが等しくされている
請求項1または請求項2に記載のモータ装置。
【請求項4】
前記第1
の領域と前記第2
の領域とは、前記回転軸の軸線の延長線上で前記軸方向に沿って見たときに前記回転軸の軸心について点対称の位置にある
請求項1~3のいずれか一項に記載のモータ装置。
【請求項5】
前記ヒートシンクは、前記回転軸の軸線の延長線上で前記軸方向に沿って見たときに四角状であり、
前記第1の制御基板および前記第2の制御基板は、前記ヒートシンクの四隅に対応する部位に対して固定される
請求項1~4のいずれか一項に記載のモータ装置。
【請求項6】
前記第1の制御基板および前記第2の制御基板は、円板状である
請求項1~5のいずれか一項に記載のモータ装置。
【請求項7】
第1の断熱層および第2の断熱層を備え、
前記第1の制御基板は、前記回転軸の前記軸方向において前記ヒートシンクと前記第1の断熱層との間に挟まれるように配置され、
前記第2の制御基板は、前記回転軸の前記軸方向において前記ヒートシンクと前記第2の断熱層との間に挟まれるように配置される
請求項1~6のいずれか一項に記載のモータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されるようなモータ装置が知られている。
例えば、特許文献1には、回転軸を有するモータと、当該モータの駆動を制御する制御基板とが一体的に設けられたモータ装置が開示されている。特許文献1のモータ装置では、モータと、制御基板とがともにハウジングに収容されている。制御基板の一部は、モータの外周面よりもモータの回転軸の径方向外方に突出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータの駆動の制御における冗長性の確保の目的で、モータの駆動に必要な電力を供給するように動作するパワー回路や、パワー回路の動作を制御する制御回路等、上記制御基板に実装しなければいけない各種回路が増加すると、モータの外周面から回転の径方向外方に突出する制御基板の部位が増加する。この場合、回転軸の径方向においてモータ装置が大型化することとなる。
【0005】
本発明の目的は、モータの駆動の制御における冗長性を確保しつつ、モータの回転軸の径方向におけるモータ装置の大型化を抑制できるモータ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]上記目的を達成し得るモータ装置は、モータと、前記モータの駆動に必要な電力を供給するように動作するパワー回路と、前記パワー回路の動作を制御する制御回路とがそれぞれ実装されており、前記モータにおける回転軸の軸線の延長線上で前記回転軸の軸方向に沿って見たときに、互いに重なり合う部分を有して配置されている複数の制御基板と、を備える。前記複数の制御基板の前記互いに重なり合う部分は、前記回転軸の軸線の延長線と交差している。
【0007】
この構成によれば、複数の制御基板が互いに重なり合うようにし、その重なり合う部分を回転軸の軸線の延長線と交差させるため、回転軸の径方向におけるモータ装置の大型化を抑制することができる。したがって、モータの駆動の制御における冗長性を確保しつつ、モータの回転軸の径方向におけるモータ装置の大型化を抑制することができる。
【0008】
[2]上記[1]の構成を有するモータ装置において、前記パワー回路の放熱を促すヒートシンクを更に備え、前記複数の制御基板は、前記回転軸の前記軸方向において前記ヒートシンクを挟むように配置される第1の制御基板と第2の制御基板とを含み、前記第1の制御基板の前記パワー回路の発熱素子が実装される当該第1の制御基板の実装面および前記第2の制御基板の前記パワー回路の発熱素子が実装される当該第2の制御基板の実装面が前記ヒートシンクに対してそれぞれ対向していることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、第1の制御基板のパワー回路の発熱素子が実装される当該第1の制御基板の実装面および第2の制御基板のパワー回路の発熱素子が実装される当該第2の制御基板の実装面がいずれもヒートシンクに対向していない構成と比較して、第1および第2の制御基板の各熱素子からヒートシンクに伝わる熱量を増加させやすい。
【0010】
また、第1の制御基板および第2の制御基板のうち、一方の制御基板におけるパワー回路の発熱素子が実装される実装面がヒートシンクに対向し、他方の制御基板におけるパワー回路の発熱素子が実装される実装面がヒートシンクに対向していない構成と比較して、第1の制御基板の発熱素子からヒートシンクに伝わる熱量と第2の制御基板の発熱素子からヒートシンクに伝わる熱量との差を小さくしやすい。
【0011】
このため、両制御基板のそれぞれの発熱素子の温度を低下させつつも、両発熱素子の温度差を小さくすることができる。したがって、第1の制御基板および第2の制御基板の各パワー回路、特にそれらの発熱素子の熱抵抗の差が生じることに起因して両制御基板のそれぞれからモータへの給電にずれが生じてしまうこと、すなわちモータのトルク変動が生じることを抑制することができる。
【0012】
[3]上記[2]の構成を有するモータ装置において、前記第1の制御基板および前記第2の制御基板には、前記発熱素子を含む複数の電子部品がそれぞれ実装され、前記第1の制御基板に実装される前記複数の電子部品と前記ヒートシンクとの前記軸方向におけるそれぞれの距離のうち、前記発熱素子と前記ヒートシンクとの距離が最も短く、前記第2の制御基板に実装される前記複数の電子部品と前記ヒートシンクとの前記軸方向におけるそれぞれの距離のうち、前記発熱素子と前記ヒートシンクとの距離が最も短いことが好ましい。
【0013】
この構成によれば、発熱素子からヒートシンクに放熱される熱の量が発熱素子以外の電子部品からヒートシンクに放熱される熱の量よりも多くなりやすいため、発熱素子からヒートシンクへの放熱をより効率的に行うことができる。
【0014】
[4]上記[2]の構成または上記[3]の構成を有するモータ装置において、前記第1の制御基板における前記発熱素子と前記ヒートシンクとの前記軸方向における距離と、前記第2の制御基板における前記発熱素子と前記ヒートシンクとの前記軸方向における距離とが等しくされていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、第1の制御基板の発熱素子からヒートシンクに放熱される熱の量と、第2の制御基板の発熱素子からヒートシンクに放熱される熱の量とに差が生じにくい。このため、第1の制御基板の発熱素子の温度と、第2の制御基板の発熱素子の温度との間の温度差をより小さくすることができる。
【0016】
[5]上記[2]~[4]のいずれか1つの構成を有するモータ装置において、前記第1の制御基板において前記パワー回路が実装される領域と前記第2の制御基板において前記パワー回路が実装される領域とは、前記回転軸の軸線の延長線上で前記軸方向に沿って見たときに重なり合わないことが好ましい。
【0017】
[6]上記[2]~[5]のいずれか1つの構成を有するモータ装置において、前記第1の制御基板において前記パワー回路が実装される領域と前記第2の制御基板において前記パワー回路が実装される領域とは、前記回転軸の軸線の延長線上で前記軸方向に沿って見たときに前記回転軸の軸心について点対称の位置にあることが好ましい。
【0018】
上記[5]、[6]の構成によれば、ヒートシンクにおいて、第1の制御基板のパワー回路から熱が伝わる部位と第2の制御基板のパワー回路から熱が伝わる部位とが回転軸の径方向において異なることとなるため、ヒートシンクの放熱効率をより向上させることができる。
【0019】
[7]上記[2]~[6]のいずれか1つの構成を有するモータ装置において、第1の断熱層および第2の断熱層を備え、前記第1の制御基板は、前記回転軸の前記軸方向において前記ヒートシンクと前記第1の断熱層との間に挟まれるように配置され、前記第2の制御基板は、前記回転軸の前記軸方向において前記ヒートシンクと前記第2の断熱層との間に挟まれるように配置されることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、断熱層が設けられることにより、各制御基板の各パワー回路から発生する熱の多くは、ヒートシンクに伝達されるようになる。そのため、各制御基板から発生する熱の伝達される方向をヒートシンクに向かう方向とするように構成されるため、各制御基板の各発熱素子の温度差を小さくするために考慮するべき条件を簡略化することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のモータ装置によれば、モータの駆動の制御における冗長性を確保しつつ、モータの回転軸の径方向におけるモータ装置の大型化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】一実施形態におけるモータ装置の分解斜視図。
【
図2】モータ装置の制御部近傍における拡大斜視図。
【
図3】一実施形態におけるモータ装置を回転軸の軸線に沿って切断したときの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、モータ装置の一実施形態を説明する。このモータ装置は、車両の電動パワーステアリング装置に搭載されるものであり、運転者のステアリング操作を補助するためのトルクを発生させるものである。
【0024】
図1に示すように、モータ装置10は、回転軸23を有するモータ20と、ハウジング30と、制御部40と、コネクタ50とを備えている。モータ装置10は、各構成を回転軸23の軸方向に組み付けることにより構成される。
【0025】
以下の説明において、「軸方向」は回転軸23の軸方向を意味し、「径方向」は「軸方向」に直交する方向を意味し、「周方向」は回転軸23の軸線を中心に回転軸23が回転する方向を意味する。
【0026】
ハウジング30は、モータ20を収容する有底筒状のモータハウジング31と、モータハウジング31の開口部を覆う円板状のロータハウジング32と、ロータハウジング32との間で制御部40およびコネクタ50を収容する円筒状のカバー33とを有している。
【0027】
モータ20には、三相ブラシレスモータが採用される。モータ20は、円筒状のステータ21と、ステータ21の内周側に設けられる円筒状のロータ22と、ロータ22の内周側に一体回転可能に設けられている回転軸23と、回転軸23のロータハウジング32側の第1の端部23aに一体回転可能に設けられている円板状の磁石24とを有している。ロータ22は、その外周面に沿ってN極およびS極の磁極を交互に有する多極構造をなしている。
【0028】
ステータ21は、モータハウジング31の内周面に固定されている。ステータ21には、三相に対応する3本を1組とした第1のバスバー211または第2のバスバー212に接続されるモータコイルがそれぞれ巻装されている。第1のバスバー211および第2のバスバー212は、それぞれ回転軸23の軸線の延長線mを挟んで反対側に設けられている。第1のバスバー211および第2のバスバー212は、モータハウジング31の内部側からロータハウジング32を貫通し、回転軸23の軸線の延長線mに沿ってカバー33に向けて延出している。また、ロータハウジング32のカバー33側の一端面32aには、3つの第1の円筒支持部32cが設けられている。3つの第1の円筒支持部32cは、一端面32aの外周縁に不等間隔で設けられている。具体的には、3つの第1の円筒支持部32cのうち2つは、第2のバスバー212を周方向において挟むように設けられている。3つの第1の円筒支持部32cのうち残りの1つは、第1のバスバー211に隣り合うように設けられている。なお、モータコイルは、U相、V相、およびW相の三相を1組とした2系統のモータコイルが採用されている。第1のバスバー211は、2系統のモータコイルのうち一方に接続され、第2のバスバー212は、2系統のモータコイルのうち他方に接続される。
【0029】
磁石24は、ロータハウジング32の中央に設けられた貫通孔32bの内部に位置している。磁石24の外径は、貫通孔32bの内径よりも小さく設定されている。そのため、回転軸23の回転に応じて磁石24は貫通孔32bの内部で回転可能である。なお、磁石24は、モータ20の回転角の検出に必要な磁力の発生源となる。回転軸23の軸方向において、後述する第1の制御基板41には、磁石24と対向するように一対の磁気センサ411,412が設けられている。一対の磁気センサ411,412により、モータ20の回転軸23の回転に伴う磁石24の磁力の変化が検出される。
【0030】
モータ20では、一対の磁気センサ411,412の検出結果を用いて演算される回転角に応じた三相の駆動電力がモータコイルに供給されることにより回転磁界が発生する。それに伴い、ロータ22は、モータ20のモータコイルに発生する回転磁界とロータ22の各磁極との関係に基づき回転する。
【0031】
次に制御部40の構成について説明する。
図2に示すように、制御部40は、モータ装置10を構成する部品の放熱を促す機能を有するヒートシンク45と、軸方向においてヒートシンク45を挟むように設けられる第1の制御基板41および第2の制御基板42と、各制御基板41,42をそれぞれ電気的に接続する中継端子部材49とを有している。
【0032】
ヒートシンク45は、長方板状をなしている。ヒートシンク45の四隅のうち3箇所には、その板厚方向に沿って延びる第2の円筒支持部46が設けられている。
第2の円筒支持部46は、コネクタ50側に延びる延出部46aと、モータハウジング31側に延びる延出部46bとを有している。第2の円筒支持部46の延出部46aのヒートシンク45の一端面45aを基準とする長さL1(
図3参照)は、第2の円筒支持部46の延出部46bのヒートシンク45の他端面45bを基準とする長さL2(
図3参照)よりも長く設定されている。
【0033】
ヒートシンク45には、第2の円筒支持部46に隣接するかたちで固定突部47が設けられている。固定突部47は、軸方向においてロータハウジング32の3つの第1の円筒支持部32cに対応する位置に設けられている。固定突部47は、ヒートシンク45の一端面45aから第2の制御基板42に向けて突出するとともに、径方向にも突出している。固定突部47の軸方向における長さTは、第2の円筒支持部46の延出部46aの長さL1よりも小さく設定されている(
図3参照)。固定突部47には、軸方向に延びる貫通孔47aが設けられている。また、ヒートシンク45の一端面45aにおける四隅のうち3箇所には、ボス等の固定部48が設けられている。
【0034】
図3に示すように、固定部48におけるヒートシンク45の一端面45aを基準とする長さL3は、第2の円筒支持部46の延出部46bの長さL2と同じであり、且つ固定突部47の長さTよりも小さく設定されている。なお、ヒートシンク45の板厚方向は、軸方向と一致している。
【0035】
図2に示すように、第1の制御基板41は、円板状をなしている。第1の制御基板41は、軸方向においてロータハウジング32とヒートシンク45との間に設けられている。第1の制御基板41には、第1のバスバー211に接続されるモータコイルを通じてモータ20の駆動を制御する回路が実装されている。具体的には、第1の制御基板41には、モータ20の駆動に必要な電力を供給するように動作する第1のパワー回路41aと、第1のパワー回路41aの動作を制御する第1の制御回路41bとが実装されている。
【0036】
また、第2の制御基板42は、円板状をなしている。第2の制御基板42は、軸方向においてヒートシンク45とコネクタ50との間に設けられている。第2の制御基板42には、第2のバスバー212に接続されるモータコイルを通じてモータ20の駆動を制御する回路が実装されている。具体的には、第2の制御基板42は、モータ20の駆動に必要な電力を供給するように動作する第2のパワー回路42aと、第2のパワー回路42aの動作を制御する第2の制御回路42bとが実装されている。
【0037】
各パワー回路41a,42aは、発熱素子としての複数のトランジスタTrや、これらトランジスタTrへの電力の供給を安定化するためのコンデンサCdを含む複数の電子部品で構成されている。各制御回路41b,42bは、複数の集積回路Cpを含む複数の電子部品で構成されている。軸方向においてヒートシンク45の一端面45aおよび他端面45bに対向している各制御基板41,42の実装面Spbには、複数のトランジスタTrが実装されている。制御基板41,42において実装面Spbと反対側の実装面Spaには、コンデンサCdおよび集積回路Cp等のトランジスタTr以外の電子部品が実装されている。なお、第1の制御基板41における実装面Spaの中央部分には、一対の磁気センサ411,412が設けられている。
【0038】
2つの制御基板41,42は、基本的に同じ構成を有している。そのため、何れか一方の制御基板に異常があったり、何れか一方のモータコイルに異常があったりする場合であっても、残りの正常な制御基板が制御対象とするモータコイルを通じてモータ20の駆動を継続することができるように構成されている。すなわち、モータ装置10は、モータ20の駆動の制御における冗長性が確保されている。
【0039】
図3に示すように、各制御基板41,42は、回転軸23の軸線の延長線m上で軸方向に沿って見たとき、互いに重なり合う部分Orを有して配置されている。さらに、各制御基板41,42は、それらが重なり合う部分Orが延長線mに交差している。
【0040】
また、各制御基板41,42が軸方向においてヒートシンク45を挟むように配置された状態において、各制御基板41,42の板厚方向は、軸方向と一致している。すなわち、各制御基板41,42は、それぞれの実装面Spbをヒートシンク45に対向させた状態で、各実装面Spa,Spbが平行となるように設けられている。
【0041】
図2に示すように、各パワー回路41a,42aは、各制御基板41,42において延長線mから離間した外周縁側に寄った領域A,Bに設けられている。各制御回路41b,42bは、各制御基板41,42における各パワー回路41a,42aが実装されている領域A,Bと同じ位置に設けられている。
【0042】
各制御基板41,42の各パワー回路41a,42aの実装されている領域A,Bは、回転軸23の軸線の延長線m上で軸方向に沿って見たとき、軸方向において重なり合わないように配置されている。具体的には、各制御基板41,42の各パワー回路41a,42aが設けられている領域A,Bは、回転軸23の軸心について点対称となるように設けられている。すなわち、各制御基板41,42の間で、各パワー回路41a,42aおよび各制御回路41b,42bを構成するトランジスタTr、コンデンサCd、集積回路Cp等の電子部品の配置は、回転軸23の径方向において対称性を有している(
図2参照)。なお、一対の磁気センサ411,412は、それぞれ回転軸23の軸心について点対称な位置に配置され、径方向において対称性を有している。
【0043】
第1の制御基板41の外周縁には、軸方向においてロータハウジング32の第1の円筒支持部32cに対応する位置に第1の切り欠き部41dが設けられている。第1の切り欠き部41dは、第1の制御基板41の一部分を切り欠くことにより形成されている。第1の切り欠き部41dの形状は、第1の円筒支持部32cの外形に対応する形状を有している。第1の制御基板41は、3つの第2の円筒支持部46の延出部46bに対して3つのビス等の固定具81により固定される。このとき、第1の制御基板41の実装面Spaの外周縁は、第2の円筒支持部46の延出部46bに対して当接する。
【0044】
また、第2の制御基板42の外周縁には、軸方向においてヒートシンク45の第2の円筒支持部46および固定突部47に対応する位置に第2の切り欠き部42dが設けられている。第2の切り欠き部42dは、第2の制御基板42の一部分を切り欠くことにより形成されている。第2の切り欠き部42dの形状は、第2の円筒支持部46および固定突部47の回転軸23の径方向内側における外形に対応する形状を有している。第2の制御基板42は、ヒートシンク45における3つの固定部48に対して3つのビス等の固定具82により固定される。このとき、第2の制御基板42の切り欠き部42dには、ヒートシンク45の第2の円筒支持部46および固定突部47の回転軸23の径方向内側の外形部分が嵌合される。また、第2の制御基板42は、固定部48に対して当接する。
【0045】
図3に示すように、各制御基板41,42の実装面Spbに実装されているトランジスタTrは、ヒートシンク45の一端面45aおよび他端面45bに対して隙間を持って設けられている。すなわち、第2の円筒支持部46の延出部46bの長さL2、および固定部48の軸方向における長さL3は、各制御基板41,42をヒートシンク45に組み付けたとき、トランジスタTrがヒートシンク45に接触しないように設定されている。このとき、各制御基板41,42に実装される各パワー回路41a,41bおよび各制御回路41b,42bを構成する複数の電子部品とヒートシンク45との間の軸方向におけるそれぞれの距離を比較する。具体的には、各パワー回路41a,42aと各制御回路41b,42bとを構成する複数の電子部品とヒートシンク45との軸方向におけるそれぞれの距離のうち、各制御基板41,42の各実装面Spbに実装されているトランジスタTrとヒートシンク45との距離D1は、各制御基板41,42の各実装面Spaに実装されるトランジスタTrを除く電子部品とヒートシンク45との間の距離D2とを比較すると、トランジスタTrとヒートシンク45の一端面45aおよび他端面45bとの軸方向における距離D1が最も短い状態である。また、第1の制御基板41の実装面SpbにおけるトランジスタTrとヒートシンク45との軸方向における距離D1と、第2の制御基板42の実装面SpbにおけるトランジスタTrとヒートシンク45との軸方向における距離D1とは等しくされている。これは、ヒートシンク45の固定部48の長さL3と、第2の円筒支持部46の延出部46bの長さL2とが同じだからである。なお、トランジスタTrとヒートシンク45の一端面45aおよび他端面45bとの隙間には、放熱グリスGrが充填されている。これにより、トランジスタTrから発生する熱は、放熱グリスGrを経由する放熱経路を通じてヒートシンク45へと伝達される。
【0046】
図2に示すように、中継端子部材49は、各制御基板41,42を互いに電気的に接続することにより、各制御基板41,42の間での情報を共有する通信回路の一部として機能する。この情報としては、例えば、各制御基板41,42に実装されている集積回路Cp間の動作を同期させるための信号や、第2の制御基板42に設けられた一対の磁気センサ411,412からの磁気信号である。中継端子部材49は、軸方向において各制御基板41,42の各実装面Spbの外周縁に挟まれるかたちで設けられている。中継端子部材49は、各制御基板41,42の各実装面Spbの間において、各制御基板41,42のそれぞれとの電気的な接続を可能とする複数本を1組とした2組の接続端子49a,49bを有している。接続端子49aは、第1の制御基板41に設けられた複数の端子孔41cにそれぞれ挿入されて半田で接合される。これにより、中継端子部材49と、第1の制御基板41の第1の制御回路41bとが電気的に接続される。また、接続端子49bは、第2の制御基板42に設けられた複数の端子孔42cにそれぞれ挿入されて半田で接合される。これにより、中継端子部材49と、第2の制御基板42の第2の制御回路42bとが電気的に接続される。
【0047】
図3に示すように、各制御基板41,42と、ヒートシンク45と、中継端子部材49(
図2参照)とを組み付けた状態で制御部40が完成する。この状態で、制御部40は、モータ20の第1のバスバー211および第2のバスバー212に電気的に接続される。具体的には、第1のバスバー211は、第1の制御基板41に設けられる複数の端子孔41f(
図2参照)に挿入されて半田により接合されている。第2のバスバー212は、第2の制御基板42に設けられる複数の端子孔42f(
図2参照)に挿入されて半田により接合されている。これにより、モータ20と制御部40とが電気的に接続されている。
【0048】
図2に示すように、モータ20と制御部40とを電気的に接続する場合、ロータハウジング32の第1の円筒支持部32cは、第1の制御基板41の第1の切り欠き部41dに挿通され、ヒートシンク45の固定突部47に当接させられる。その後、ビス等の固定具83を固定突部47の貫通孔47aおよび第1の円筒支持部32cの円筒穴に挿通させることでヒートシンク45がロータハウジング32に固定、ひいては制御部40がロータハウジング32に対して固定される。このとき、第1の制御基板41の実装面Spaに設けられているコンデンサCdは、軸方向においてロータハウジング32の一端面32aに対して当接しない(
図3参照)。
【0049】
コネクタ50は、軸方向においてロータハウジング32と反対側に設けられている。コネクタ50は、バッテリや外部機器等に対して各制御基板41,42を電気的に接続する機能を有している。コネクタ50は、ロータハウジング32の第1の円筒支持部32cに対して固定するための板状のベース部51と、ベース部51の一端面51aから軸方向においてロータハウジング32と反対側に延びる複数の有底筒状の接続部52と、ベース部51の外周に設けられる3箇所の締結部53と、接続部52の内部とベース部51の他端面51bに突出するとともに複数本を1組とする2組の接続端子54(
図3参照)および接続端子55とを有している。
【0050】
締結部53は、第2の円筒支持部46の延出部46aに対応する位置に設けられている。締結部53は、その厚みを貫通する貫通孔53aが設けられている。コネクタ50は、締結部53の貫通孔53aおよび第2の円筒支持部46の延出部46aにおける円筒穴に3つのビス等の固定具84を挿通させることによりヒートシンク45に対して固定される。
【0051】
図3に示すように、コネクタ50が第2の円筒支持部46の延出部46aに固定された状態において、コネクタ50のベース部51の他端面51bは、第2の制御基板42の実装面Spaに設けられたコンデンサCdに当接していない。
【0052】
図2に示すように、接続端子55は、ベース部51の他端面51bから軸方向に沿ってモータハウジング31側に延出している。接続端子55は、第1の制御基板41に設けられた複数の端子孔41eにそれぞれ挿入されて半田で接合される。すなわち、コネクタ50と、第1の制御基板41の第1のパワー回路41aおよび第1の制御回路41bとが電気的に接続される。
【0053】
図3に示すように、コネクタ50の接続端子54は、ベース部51の他端面51bから軸方向に沿ってモータハウジング31側に延出している。接続端子54は、第2の制御基板42に設けられた複数の端子孔42e(
図2参照)にそれぞれ挿入されて半田で接合される。すなわち、コネクタ50と、第2の制御基板42の第2のパワー回路42aおよび第2の制御回路42bとが電気的に接続される。コネクタ50の接続部52は、軸方向においてカバー33の頂部に設けられた挿通孔33aからモータハウジング31と反対側の外部に露出している。
【0054】
モータ装置10が組み付けられた状態において、第1の制御基板41の実装面Spaからロータハウジング32の一端面32aまでの軸方向における距離D3と、第2の制御基板42の実装面Spaからコネクタ50の他端面51bまでの距離D4とは同じに設定される。すなわち、第1の制御基板41とロータハウジング32との間、および第2の制御基板42とコネクタ50との間には、軸方向において厚みが等しい第1の断熱層としての空気層S1および第2の断熱層としての空気層S2がそれぞれ形成される。換言すると、第1の制御基板41および第2の制御基板42は、軸方向においてヒートシンク45と空気層S1,S2とにより挟まれるように配置されている。
【0055】
こうした空気層S1,S2を設けるために、ロータハウジング32の第1の円筒支持部32cにおける一端面32aからの長さL4(
図2参照)と、第2の円筒支持部46の延出部46aの長さL1は、以下のように設定されている。すなわち、上記長さL4は、第1の制御基板41の実装面Spaに実装されるコンデンサCdがロータハウジング32の一端面32aと接触しないように設定されている。一方、上記長さL1は、第2の制御基板42の実装面Spaに実装されるコンデンサCdがコネクタ50の他端面51bと接触しないように設定されている。
【0056】
空気層S1,S2が設けられることにより、各制御基板41,42の各パワー回路41a,42aから発生する熱は、ロータハウジング32およびコネクタ50に伝達し難くなる一方で、その多くがヒートシンク45に伝達されるようになる。なお、空気層S1,S2の厚さに相当する距離D3,D4がそれぞれ同じ大きさに設定されるのは、第1の制御基板41のトランジスタTrの温度と、第2の制御基板42のトランジスタTrの温度との間の温度差を小さくするためである。
【0057】
以下、本実施の形態のモータ装置10における作用効果を説明する。
(1)各制御基板41,42が互いに重なり合うようにし、その重なり合う部分Orを回転軸23の軸線の延長線mと交差させるため、回転軸23の径方向におけるモータ装置10の大型化を抑制することができる。したがって、モータ20の駆動の制御における冗長性を確保しつつ、モータ20の回転軸23の径方向におけるモータ装置10の大型化を抑制することができる。
【0058】
(2)各パワー回路41a,42aの複数のトランジスタTrの実装される各制御基板41,42の実装面Spbがヒートシンク45の一端面45aおよび他端面45bに対向している。
【0059】
そのため、第1の制御基板41のパワー回路41aのトランジスタTrが実装される第1の制御基板41の実装面Spbおよび第2の制御基板42のパワー回路42aのトランジスタTrが実装される第2の制御基板42の実装面Spbがいずれもヒートシンク45に対向していない構成と比較して、各制御基板41,42の各トランジスタTrからヒートシンク45に伝わる熱量を増加させやすい。
【0060】
また、第1の制御基板41および第2の制御基板42のうち、一方の制御基板におけるパワー回路のトランジスタTrが実装される実装面Spbがヒートシンク45に対向し、他方の制御基板におけるパワー回路のトランジスタTrが実装される実装面Spbがヒートシンク45に対向していない構成と比較して、第1の制御基板41のトランジスタTrからヒートシンク45に伝わる熱量と第2の制御基板42のトランジスタTrからヒートシンク45に伝わる熱量との差を小さくしやすい。
【0061】
このため、両制御基板41,42のそれぞれのトランジスタTrの温度を低下させつつも、両発熱素子の温度差を小さくすることができる。したがって、第1の制御基板41および第2の制御基板42の各パワー回路41a,42a、特にそれらのトランジスタTrの熱抵抗の差が生じることに起因して両制御基板41,42のそれぞれからモータ20への給電にずれが生じてしまうこと、すなわちモータ20のトルク変動が生じることを抑制することができる。
【0062】
(3)各制御基板41,42に実装される各パワー回路41a,42aと各制御回路41b,42bとを構成する複数の電子部品のうち各制御基板41,42の各実装面Spbに実装されているトランジスタTrとヒートシンク45の一端面45aおよび他端面45bとの距離D1が最も短い状態である。
【0063】
そのため、トランジスタTrからヒートシンク45に放熱される熱の量がトランジスタTr以外の電子部品からヒートシンク45に放熱される熱の量よりも多くなりやすいため、トランジスタTrからヒートシンク45への放熱をより効率的に行うことができる。
【0064】
(4)第1の制御基板41の実装面Spbに設けられているトランジスタTrとヒートシンク45との距離D1と、第2の制御基板42の実装面Spbに設けられているトランジスタTrとヒートシンク45との距離D1とは等しくされている。
【0065】
そのため、第1の制御基板41のトランジスタTrからヒートシンク45に放熱される熱の量と、第2の制御基板42のトランジスタTrからヒートシンク45に放熱される熱の量とに差が生じにくい。このため、第1の制御基板41のトランジスタTrの温度と、第2の制御基板42のトランジスタTrの温度との間の温度差をより小さくすることができる。
【0066】
(5)各制御基板41,42は、回転軸23の軸線の延長線m上で軸方向に沿って見たとき各パワー回路41a,42aの実装されている領域A,Bを軸方向において重なり合わないように配置されている。具体的には、各制御基板41,42の各パワー回路41a,42aが設けられている領域A,Bは、回転軸23の延長線mについて点対称となるように設けられている。
【0067】
そのため、ヒートシンク45において、第1の制御基板41のパワー回路41aから熱が伝わる部位と第2の制御基板42のパワー回路42aから熱が伝わる部位とが回転軸23の径方向において異なることとなるため、ヒートシンク45の放熱効率をより向上させることができる。
【0068】
(6)空気層S1,S2が設けられることにより、各制御基板41,42の各パワー回路41a,42aから発生する熱の多くは、ヒートシンク45に伝達されるようになる。そのため、各制御基板41,42から発生する熱の伝達される方向をヒートシンク45に向かう方向とするように構成されるため、各制御基板41,42のトランジスタTrの温度差を小さくするために考慮するべき条件を簡略化することができる。
【0069】
(7)第1の制御基板41の第1の切り欠き部41dにロータハウジング32の第1の円筒支持部32cが嵌合され、第2の制御基板42の第2の切り欠き部42dにヒートシンク45の第2の円筒支持部46および固定突部47が嵌合される。そのため、各制御基板41,42を第2の円筒支持部46の延出部46bおよび固定部48に固定具81,82により固定するための位置決めを実施することができる。
【0070】
また、第1の制御基板41は第1の円筒支持部32cにより、第2の制御基板42は第2の円筒支持部46および固定突部47により、その周方向における相対回転が抑制されている。そのため、各制御基板41,42に実装される各パワー回路41a,42aおよび各制御回路41b,42bを含む複数の電子部品の対称性を担保することができる。
【0071】
(8)例えば、2つの制御基板の一方に各パワー回路41a,42aを、他方に各制御回路41b,42bを配置した場合を考える。この場合、第1のパワー回路41aおよび第1の制御回路41b、第2のパワー回路42aおよび第2の制御回路42bのそれぞれを接続するため多数の接続端子が必要になり、各制御基板の接続が煩雑になってしまうおそれがある。
【0072】
その点、モータ装置10では、第1の制御基板41には、第1のパワー回路41aおよび第1の制御回路41bが実装され、第2の制御基板42には、第2のパワー回路42aおよび第2の制御回路42bが実装されている。すなわち、パワー回路と制御回路とを分けずに制御基板に実装している。このように構成することで、各制御基板41,42を互いに接続する構成を中継端子部材49だけに集約することができるため、各制御基板41,42の接続が簡素化でき、モータ装置10の生産性を向上させることができる。また、各制御基板41,42を接続する接続端子の数量も少なくすることができるため、モータ装置10の製造コストも低減させることができる。
【0073】
なお、本実施の形態は、技術的に矛盾が生じない範囲で以下のように変更してもよい。
・空気層S1,S2は同じ厚みを有していたが、例えば、同じ厚みでなくてもよい。この場合、軸方向において各制御基板41,42からロータハウジング32およびコネクタ50までの距離が十分に離れており、各制御基板41,42からロータハウジング32およびコネクタ50にまで各パワー回路41a,42aに発生する熱が伝達されない、また熱が伝達されたとしても各制御基板41,42の各トランジスタTrの温度差が出ない程度であれば、空気層S1,S2の厚みは適宜変更してもよい。
【0074】
・また、空気層S1,S2から別部材で構成された断熱層に代替してもよい。その他、空気層S1,S2のいずれか一方だけを別部材で構成された断熱層に代替してもよい。どのような断熱層を設けたとしても、各制御基板41,42の各トランジスタTrの温度差が可能な限り小さくなるように設定されていれば、どのように構成してもよい。
【0075】
・各制御基板41,42の各パワー回路41a,42aにおけるトランジスタTrとヒートシンク45との距離D1が互いに等しく設定されているが、各制御基板41,42の各トランジスタTrの温度差が可能な限り小さくなるように断熱層を設定する等の対策が実施されていればこの限りではない。
【0076】
・各制御基板41,42の各パワー回路41a,42aおよび各制御回路41b,42bを構成する複数の電子部品が、回転軸23の軸心について点対称に設けられていたが、これに限らない。例えば、回転軸23の軸線の延長線m上で軸方向に沿って見たとき、各パワー回路41a,42aのそれぞれの領域A,Bが重なり合わないように設けられていればどのような位置に設けられていてもよい。また、回転軸23の軸線の延長線m上で軸方向に沿って見たとき、各制御基板41,42における各パワー回路41a,42aのそれぞれが重なっていてもよい。このとき、ヒートシンク45の板厚を厚くするなどして、ヒートシンク45の放熱性能が十分に機能していればよい。
【0077】
・また、各制御基板41,42は、同じ構成を有していなくてもよい。すなわち、制御基板41,42の間で各パワー回路41a,42aおよび各制御回路41b,42bを含む電子部品の種類が異なるように設定してもよいし、電子部品の配置が異なっていてもよい。これに伴い、各パワー回路41a,42aおよび各制御回路41b,42bを構成する複数の電子部品は、各制御基板41,42の各実装面Spa,Spbの一方側のみに集約して実装されていてもよい。ただし、複数の電子部品、特にトランジスタTr等の発熱素子から生じる熱を放熱できるように可能な限りヒートシンク45と各制御基板41,42を近接させる。
【0078】
・各制御基板41,42に実装される電子部品のうち各パワー回路41a,42aにおけるトランジスタTrとヒートシンク45との距離D1が最も短くなっているが、例えば、各パワー回路41a,42aを構成する電子部品の一つであるシャント抵抗を発熱素子として、当該シャント抵抗とヒートシンク45との距離を最も短くしてもよい。すなわち、各制御基板41,42に実装される各パワー回路41a,42aおよび各制御回路41b,42bを構成する複数の電子部品とヒートシンク45との軸方向のおけるそれぞれの距離のうち各パワー回路41a,42aの発熱素子とヒートシンク45との距離が最も短く設定されていればよい。
【0079】
・また、各制御基板41,42の各パワー回路41a,42aの発熱素子とヒートシンク45との距離が最も小さくなくてもよい。各制御回路41b,42bを構成する集積回路Cpを最もヒートシンク45に近接させた状態にしてもよい。
【0080】
・各パワー回路41a,42aを構成するトランジスタTrとヒートシンク45との間には、放熱グリスGrが設けられていたが、例えば、シート状の放熱シートに代替してもよい。
【0081】
・ヒートシンク45は長方板状をなしていたが、これに限らず、軸方向において各制御基板41,42の間に設けることができるのであれば、どのような形状を有していてもよい。
【0082】
・また、ヒートシンク45に替えて送風機による冷却構造を用いてもよい。この変更に伴い、放熱グリスGrまたは放熱シートは割愛し、送風機には、各制御基板41,42を固定するための構成を新たに設ける。また、ヒートシンク45または送風機を割愛してもよい。
【0083】
・各制御基板41,42は、円板状をなしていたが、例えば、ハウジング30に収容可能であれば、どのような形状であってもよい。
・各制御基板41,42は、回転軸23の径方向に沿って平行をなしていたが、これに限らない。例えば、各制御基板41,42を延長線mに対して若干傾斜させるように設けてもよい。この場合であっても、各制御基板41,42の互いに重なり合う部分Orが回転軸23の延長線mに対して交差するように設けられていれば、モータ装置10における回転軸23の径方向への大型化を抑制することができる。
【0084】
・また、モータ20の駆動の制御における冗長性を確保する場合、2系統のモータコイルに対して各制御基板41,42を有するようにしたが、3系統以上のモータコイルに対して3系統以上の制御基板を有するようにしてもよい。
【0085】
・一対の磁気センサ411,412は、第1の制御基板41の実装面Spaに設けられていたが、第1の制御基板41の実装面Spbに設けてもよい。この場合、一対の磁気センサ411,412がヒートシンク45の他端面45bに当接しないようにする。さらに、一対の磁気センサ411,412を第2の制御基板42に実装してもよい。ただし、モータ20の回転角検出の精度を考慮すると、第1の制御基板41の実装面Spaに設けられることが好ましい。なお、各磁気センサ411,412は、ホールIC等を用いたセンサであってもよい。
【0086】
・また、モータ20の回転角の検出には、レゾルバを用いるようにしてもよい。この場合、レゾルバと各制御基板41,42とを接続端子等で電気的に接続する。また、各制御基板41,42の間に設けられている中継端子部材49の接続端子49a,49bにおける磁気センサ411,412の磁気信号を伝達する役割を有する端子を割愛し、中継端子部材49の構成をより小型化させる。
【0087】
・モータ装置10は、電動パワーステアリング装置に搭載するモータ装置に限らず、車両の車輪を駆動させる駆動装置に搭載するモータ装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0088】
10…モータ装置、20…モータ、23…回転軸、30…ハウジング、31…モータハウジング、32…ロータハウジング、33…カバー、41…第1の制御基板、42…第2の制御基板、41a…第1のパワー回路、42a…第2のパワー回路、41b…第1の制御回路、42b…第2の制御回路、45…ヒートシンク、m…延長線、Spb…実装面、D1,D2…距離、S1,S2…空気層、Or…重なり合う部分、A,B…領域。