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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】防塵カバー、及びコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20230208BHJP
【FI】
H01R13/52 302Z
H01R13/52 301Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018056078
(22)【出願日】2018-03-23
(65)【公開番号】P2019169345
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】592028846
【氏名又は名称】I-PEX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【弁理士】
【氏名又は名称】榊原 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100146916
【弁理士】
【氏名又は名称】廣石 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 隆吉
(72)【発明者】
【氏名】唐野 修治
【審査官】濱田 莉菜子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-274073(JP,A)
【文献】特開2009-252519(JP,A)
【文献】特開平09-320674(JP,A)
【文献】特開平08-273730(JP,A)
【文献】特開2001-176628(JP,A)
【文献】特開2018-026219(JP,A)
【文献】実開昭61-180473(JP,U)
【文献】実開平05-048241(JP,U)
【文献】中国実用新案第201142428(CN,Y)
【文献】特開平05-114435(JP,A)
【文献】実開平06-062479(JP,U)
【文献】特開平06-029061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40-13/533
H01R 12/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタのハウジングに装着され、前記ハウジングから突出した端子とコネクタ取付対象部材の導通部分との接続部分を覆うカバー部と、
前記カバー部から突出すると共に、その先端が自由端として構成されて、前記ハウジングの上面に当接し、前記カバー部と前記ハウジングとの境目部分を覆う庇部と、
を備え
前記庇部は、絶縁性の樹脂から形成され、相手側コネクタに嵌合するために移動する嵌合方向であり、前記嵌合方向より前記ハウジング側に傾斜して延びるように形成され、前記カバー部が前記ハウジングに装着されると、前記ハウジングの前記上面に撓みつつ当接するように形成され、前記ハウジングの上面全体を覆い、前記ハウジングから突出した前記端子と前記コネクタ取付対象部材の前記導通部分との前記接続部分とに異物が付くのを防ぐ
防塵カバー。
【請求項2】
前記ハウジングには、嵌合部が形成され、
前記庇部の前記先端には、前記嵌合部に嵌る被嵌合部が形成されている、
請求項1に記載の防塵カバー。
【請求項3】
前記カバー部と前記コネクタ取付対象部材との間を封止する封止部を備える、
請求項1または2に記載の防塵カバー。
【請求項4】
請求項1からのいずれか一項に記載の防塵カバーと、
前記防塵カバーが装着される前記ハウジングと、
前記ハウジングから突出し、前記コネクタ取付対象部材の導通部分に接続される端子と、
を備える、コネクタ。
【請求項5】
前記カバー部及び前記ハウジングの一方には、係止部が形成され、
前記カバー部及び前記ハウジングの他方には、前記係止部が係止する被係止部が形成されている、
請求項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記カバー部及び前記ハウジングの一方には、前記ハウジングに前記カバー部が装着されるために前記ハウジングに対して前記カバー部が移動する装着方向に沿って延びるガイド部が形成され、
前記カバー部及び前記ハウジングの他方には、前記ガイド部が嵌合するガイド溝が形成されている、
請求項またはに記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防塵カバー、及びコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタの端子とコネクタ取付対象部材である基板との接続部分にゴミ等の異物が付着しないように、コネクタにカバーを設けることがある。特許文献1には、絶縁ハウジングと、絶縁ハウジングに取り付けられ、端子と基板との接続部分を覆うカバー部と、を備えたコネクタが開示されている。カバー部は、絶縁ハウジングに回動可能に支持されている。コネクタを基板に実装した後、カバー部を所定の位置まで回動させることにより、端子と基板との接続部分がカバー部に覆われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4028497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されるように、このコネクタにおいては、カバー部を所定の位置まで倒したときに、カバー部と絶縁ハウジングとの間に隙間が空くため、この隙間より小さな異物であれば、カバー部内部に入り込むことが想定される。例えば、特許文献1に記載のコネクタが取り付けられた基板の近くに、金属からなる回転物が配置されている場合、回転物から金属粉といった細かい異物が発生し、隙間からカバー部内部に入り込み、金属粉が端子に付着して、端子間で短絡が発生するおそれがある。このように、特許文献1の構成では、カバー部内部に異物が入り込むことを十分に防止することができない。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、コネクタの端子とコネクタ取付対象部材との接続部分を覆うカバー部内部に異物が入り込むことを抑制することができる防塵カバー、及びコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る防塵カバーは、
コネクタのハウジングに装着され、前記ハウジングから突出した端子とコネクタ取付対象部材の導通部分との接続部分を覆うカバー部と、
前記カバー部から突出すると共に、その先端が自由端として構成されて、前記ハウジングの上面に当接し、前記カバー部と前記ハウジングとの境目部分を覆う庇部と、
を備え
前記庇部は、絶縁性の樹脂から形成され、相手側コネクタに嵌合するために移動する嵌合方向であり、前記嵌合方向より前記ハウジング側に傾斜して延びるように形成され、前記カバー部が前記ハウジングに装着されると、前記ハウジングの前記上面に撓みつつ当接するように形成され、前記ハウジングの上面全体を覆い、前記ハウジングから突出した前記端子と前記コネクタ取付対象部材の前記導通部分との前記接続部分とに異物が付くのを防ぐ
【0008】
前記ハウジングには、嵌合部が形成され、
前記庇部の前記先端には、前記嵌合部に嵌る被嵌合部が形成されているとよい。
【0009】
前記カバー部と前記コネクタ取付対象部材との間を封止する封止部を備えるとよい。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の第2の観点に係るコネクタは、
上記に記載の防塵カバーと、
前記防塵カバーが装着される前記ハウジングと、
前記ハウジングから突出し、前記コネクタ取付対象部材の導通部分に接続される端子と、
を備える。
【0011】
前記カバー部及び前記ハウジングの一方には、係止部が形成され、
前記カバー部及び前記ハウジングの他方には、前記係止部が係止する被係止部が形成されているよとい。
【0012】
前記カバー部及び前記ハウジングの一方には、前記ハウジングに前記カバー部が装着されるために前記ハウジングに対して前記カバー部が移動する装着方向に沿って延びるガイド部が形成され、
前記カバー部及び前記ハウジングの他方には、前記ガイド部が嵌合するガイド溝が形成されているとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、庇部が、カバー部とハウジングとの境目部分を覆う。このため、コネクタの端子とコネクタ取付対象部材との接続部分を覆うカバー部内部に異物が入り込むことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】防塵カバーが取り付けられた状態のオスコネクタと、メスコネクタとを、メスコネクタのケーブルが引き出されている側から見た斜視図である。
図2】オスコネクタと、オスコネクタに取り付けられていない状態の防塵カバーの斜視図である。
図3】防塵カバーの斜視図である。
図4】カバー部と、カバー部に取り付けられていない状態の封止部の斜視図である。
図5】(a)は、図4のIVaから見たカバー部の正面図である。(b)は、図4のIVbから見たカバー部の背面図である。(c)は、図4のIVcから見たカバー部の側面図である。(d)は、図4のIVeから見たカバー部の底面図である。
図6】(a)は、防塵カバーを取り付けた状態のオスコネクタを図1のIaから見た側面図である。(b)は、(a)中のA-A線で切断したオスコネクタ及び防塵カバーの断面図である。
図7】(a)は、オスコネクタに取り付けられた防塵カバーを図1のIbから見た正面図である。(b)は、(a)中のB-B線で切断したオスコネクタ及び防塵カバーの断面図である。(c)は、(a)中のC-C線で切断したオスコネクタ及び防塵カバーの断面図である。
図8】(a)は、図4のIVcから見た封止部の側面図である。(b)は、図4のIVdから見た封止部の平面図である。(c)は、図4のIVeから見た封止部の底面図である。
図9】変形例1に係る防塵カバーの斜視図である。
図10】変形例1に係る防塵カバーの背面図である。
図11】(a)は、変形例1に係るカバー部の正面図であり、(b)は、背面図であり、(c)は、底面図である。
図12】変形例1の防塵カバーをオスコネクタに取り付けた状態におけるオスコネクタ及び防塵カバーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態.
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。図面には、相互に直交するXYZ座標を設定し、適宜参照する。XYZ座標のY軸方向は、図1に示すように、コネクタ500に対して相手側コネクタ600が嵌合するために移動する嵌合方向D1と同一の方向である。Z軸方向は、コネクタ500の取付対象部材の一つである基板700の厚み方向と同一の方向である。X軸方向は、Y軸方向及びZ軸方向の双方向に直交する方向である。
【0016】
図1に示すように、コネクタユニット10は、例えば、自動車に装備される電子回路部品同士を電気的に接続するために用いられる。コネクタユニット10は、実施の形態に係るコネクタ500と、相手側コネクタ600とを備える。
【0017】
コネクタ500は、基板700に取り付けられるオスコネクタである。コネクタ500は、ハウジング510と、端子520と、コネクタ500のハウジング510から露出した端子520に異物が付くのを防ぐ防塵カバー1とを備える。
【0018】
図2に示すように、ハウジング510は、樹脂等の絶縁性の素材により形成され、Y軸方向を筒軸方向とする略四角筒状に形成されて相手側コネクタ600を収容する端子収容空間510aを規定する略箱形状の部材である。ハウジング510から端子520が露出する側(+Y側)には、ハウジング510の側壁から延長した、防塵カバー1が取り付けられる取付部510b、510cが形成されている。また、ハウジング510は、係止部511と、ガイド溝512と、固定金具513とを含む。
【0019】
係止部511は、防塵カバー1がコネクタ500に取り付けられたときに、防塵カバー1の被係止部120の下縁120aに係止する部材である。係止部511は、取付部510b、510cの、防塵カバー1と当接する面にそれぞれ形成されている。図示する例では、係止部511の一方は、取付部510bの+X側の面に形成され、他方は取付部510cの-X側の面に形成されている。
【0020】
ガイド溝512は、図2に示すように、防塵カバー1のガイド部140が嵌合する溝として、取付部510b、510cの係止部511が形成されている面とは反対の面にそれぞれZ軸方向に沿って延びるように形成されている。図示する例では、ガイド溝512の一方は、取付部510bの-X側の面に形成され、他方は取付部510cの+X側の面に形成されている。
【0021】
固定金具513は、コネクタ500を基板700に固定するための部材であり、ほぼ直角に折り曲げられた、L字状の板状の金属の部材からなる。図1、2に示す例では、固定金具513は、基板700の実装面(+Z側の面)に平行な板部と、ハウジング510の側面(ZY平面)に平行な板部とを含む。固定金具513は、ハウジング510の側面外側に形成された溝510dに挿入されることにより、ハウジング510に取り付けられる。固定金具513が基板700の取り付け部702にはんだ付けされることで、コネクタ500が基板700に固定される。
【0022】
端子520は、金属の素材により形成されている。図7(c)に示すように、端子520の+Y側の先端520aは、ハウジング510の+Y側の後端面から突出して露出している。端子520の先端520aは、はんだ付けにより、基板700の上側(+Z側)の面に露出する基板700の接点701に接続されている。端子520の-Y側の先端520bは、端子収容空間510aに突出している。
【0023】
図1、2に示すように、防塵カバー1は、コネクタ500の端子520の+Y側の先端520aに取り付けられ、端子520と基板700(コネクタ取付対象部材)の接点701との接続部分を覆う。図3に示すように、防塵カバー1は、カバー部100と、封止部200と、庇部300とを含む。図4に示すように、カバー部100と封止部200とはそれぞれ別の部品から構成されている。封止部200は、カバー部100に着脱可能な部品である。カバー部100と庇部300とは一体的に形成されている。
【0024】
カバー部100は、絶縁性の樹脂から形成され、射出形成することにより、庇部300と共に一体的に形成されている部材である。カバー部100は、上板111と、上板111の両端に接続されている側板112及び113と、上板111の+Y側の端面と側板112、113のそれぞれの+Y側の端面とに接続されている前板114とを含む。
【0025】
被係止部120は、側板112、113にそれぞれ形成された縦長の開口(Z軸方向に長い開口)を含む。被係止部120は、後述するコネクタ500の係止部511が係止する部分である。図1図6(a)、(b)に示すように、コネクタ500の係止部511が被係止部120の下縁120aに係止することにより、防塵カバー1がコネクタ500に固定される。図2に示すように、防塵カバー1は、コネクタ500の上から装着方向A1に向かって、コネクタ500に被せられる。このため、被係止部120は、縦長の開口として構成されている。
【0026】
図5(b)、(d)に示すように、前板114の内側面には、封止部200が嵌め込まれる空間である凹部131が形成されている。凹部131の幅(X軸方向の長さ)は、封止部200の幅(X軸方向の長さ)とほぼ同じである。図7(b)に示すように、凹部131の高さ(Z軸方向の長さ)は、封止部200の高さ(Z軸方向の長さ)よりやや短く、凹部131の奥行(Y軸方向の長さ)は、封止部200の厚み(Y軸方向の長さ)よりやや短く設定されている。
【0027】
図4、5に示すように、固定ピン用孔132は、前板114に形成された4つの貫通孔から構成される。固定ピン用孔132には、後述の封止部200の固定ピン220が挿入される。固定ピン用孔132は、X軸方向に沿って等間隔に形成されている。図4に示すように、封止部200の固定ピン220は、矢印D2の方向に固定ピン用孔132に挿入され、固定ピン用孔132に係止する。このようにして、封止部200がカバー部100に固定される。
【0028】
図5(b)に示すように、ガイド部140は、カバー部100に一体的に形成され、防塵カバー1がハウジング510に取り付けられる際に、カバー部100が移動する図2の装着方向A1に沿って延びた一対の部材を含む。ガイド部140は、図5(d)に示すように、横断面がT字形状として構成されている。ガイド部140は、T字の横棒がY軸方向に平行となるよう配置され、T字の横棒の一方の端は、前板114の内側面に接続されている。図6(b)、図7(b)に示すように、防塵カバー1がコネクタ500に取り付けられているとき、ガイド部140のT字の縦棒部分が、図2に示すハウジング510に形成された一対のガイド溝512にそれぞれ嵌合する。
【0029】
ガイド部140は以下のような理由のため設けられている。図6(b)に示すように、防塵カバー1がコネクタ500のハウジング510に取り付けられると、ガイド部140は、ガイド溝512に圧入される。これにより、図7(b)に示すように、防塵カバー1のハウジング510に対するY軸方向における位置が規定される。よって、図6(a)に示す係止部511のY軸方向の移動が抑制され、係止部511のがたつきを抑えることができる。また、図6(b)に示すように、ハウジング510に装着された防塵カバー1のX軸方向の移動が抑制され、防塵カバー1ががたつかない。
【0030】
図4に示すように、カバー部100には、4つの肉抜き部150が形成されている。
【0031】
封止部200は、防塵カバー1がコネクタ500に装着されるのに先だって、カバー部100に取り付けられる。矢印D2は、封止部200を取り付ける方向を示す。封止部200は、カバー部100と基板700との間を封止する部材である。封止部200は、本体部210と、固定ピン220とを含む。
【0032】
図4、8に示すように、本体部210は、略角柱形状に形成されている。図7(b)に示すように、本体部210の前面211は、封止部200がカバー部100に取り付けられたときに、カバー部100の前板114の凹部131の面131aに当接する。上面213は、防塵カバー1がコネクタ500に装着されると、カバー部100の凹部131の面131bに当接する。下面212は、防塵カバー1がコネクタ500に装着されると、基板700に当接する。
【0033】
封止部200の本体部210の前面211の下側(-Z側)には、+Y方向に突出する凸部215が形成されている。図4図8(a)、(b)に示すように、凸部215は、カバー部100に装着された封止部200のずれを防止するため、X軸方向に延設されている。図7(b)に示すように、防塵カバー1が、基板700上のコネクタ500のハウジング510に取り付けられた状態では、前板114の下端(-Z側の端)が凸部215を-Z方向(基板700側)に沿って押圧する。この結果、カバー部100に装着された封止部200がずれることを防止することができる。
【0034】
図8(c)に示すように、封止部200の本体部210の下面212には、異物が防塵カバー1内部に侵入するのを防止するため、下面212から下方に突出する凸部216がX軸方向に延設されている。防塵カバー1がコネクタ500に装着されると、封止部200は、カバー部100と基板700との間に挟まれ、圧縮される。凸部216が下面212から突出していることにより、封止部200は、カバー部100と基板700との間を隙間なく封止することができる。
【0035】
図4、8に示すように、封止部200の本体部210の前面211には、封止部200をカバー部100に固定するための固定ピン220が形成されている。図4に示すように、固定ピン220は、カバー部100の固定ピン用孔132に矢印D2の方向に挿入され、固定ピン用孔132に係止する。
【0036】
図8(a)、(b)に示すように、固定ピン220は、略円錐形状に形成された円錐部分221と、円錐部分221と本体部210とを接続する軸部分222とを有する。円錐部分221の先端部の直径r1は、図5(a)に示す固定ピン用孔132の直径Rより小さく形成されている。さらに、図8(a)~(c)に示すように、円錐部分221が、テーパ形状に形成されていることにより、固定ピン用孔132への固定ピン220をスムーズに挿入することが可能である。
【0037】
円錐部分221の最も太い部分の直径r2は、図5(a)に示す固定ピン用孔132の直径Rより大きく形成されている。これは、図3、4に示すように、固定ピン220が、その先端部分から、固定ピン用孔132に挿入され、図7(c)に示すように、軸部分222が固定ピン用孔132に到達すると、固定ピン220が、固定ピン用孔132から抜けることを防止するためである。
【0038】
図8(b)に示す軸部分222の直径r3は、図5(a)に示す固定ピン用孔132の直径Rよりやや大きく形成されている。図7(c)に示すように、軸部分222が固定ピン用孔132に挿入されている状態では、軸部分222が圧縮されるので、固定ピン用孔132から防塵カバー1の内部に異物が侵入することを防ぐことができる。
【0039】
図3、4に示すように、庇部300は、カバー部100の上板111から、-Y方向に向かって延びている。庇部300は、図2に示すように、カバー部100とコネクタ500のハウジング510との境目部分Bを覆う部材である。図5(c)に示すように、庇部300は、水平方向ではなく、水平方向よりやや下側(-Z側)に向かって延びるように形成されている。さらに、庇部300の先端部分は自由端として、撓み可能に形成されている。
【0040】
図7(b)、(c)に示すように、防塵カバー1がコネクタ500のハウジング510に取り付けた状態では、庇部300は、コネクタ500のハウジング510の上面に当接する。庇部300が、水平方向よりやや下側(-Z側)に向かって延び、かつ撓み可能に構成されていることにより、カバー部100とハウジング510の上面との境目において、隙間なく防塵カバー1をコネクタ500に取り付けることが可能である。
【0041】
図1に示すように、相手側コネクタ600は、メス端子(不図示)に接続されたケーブル601が引き出されているメスコネクタである。相手側コネクタ600は、嵌合方向D1の方向にコネクタ500の端子収容空間510aに挿入される。相手側コネクタ600の一部がコネクタ500の端子収容空間510aに収容されることにより、コネクタ500と相手側コネクタ600とが嵌合する。
【0042】
なお、相手側コネクタ600は、コネクタ500に対応する構成を備えていればよい。図1に示すメスコネクタの構成は、一例であり、相手側コネクタ600のケーブル本数、ハウジング形状等は、適宜変更可能である。
【0043】
基板700は、接点701、取り付け部702が露出する+Y側の表側の面と、接点701が設けられていない裏側の面とを有するプリント基板である。基板700には、コネクタ500が取り付けられる。
【0044】
防塵カバー1の製作方法の一例を説明する。
【0045】
先ず、防塵カバー1を制作する作業者は、図4に示すようなカバー部100と庇部300との一体成型品を準備する。この一体成型品は、射出形成することにより製造される。併せて、封止部200を準備する。
【0046】
カバー部100と庇部300との一体成型品に対して、封止部200を矢印D2方向に移動させ、前板114の内側の面に押し当てる。このとき、固定ピン220を固定ピン用孔132に挿入する。固定ピン220が固定ピン用孔132に挿入されることにより、図3に示すように、当該一体成型品と封止部200とが組み合わせられた防塵カバー1が完成する。
【0047】
防塵カバー1のコネクタ500への取り付けは、次のように行う。図1及び図2を参照するとわかるように、あらかじめ、固定金具513と端子520が取り付けられたコネクタ500の固定金具513を基板700上の取り付け部702に、端子520を基板700上の接点701にそれぞれはんだ付けしておく。この状態で、図2に示すように、コネクタ500の上から、装着方向A1に沿って、防塵カバー1をコネクタ500に被せる。このとき、図2に示すように、係止部511が、被係止部120の開口に嵌るように、X軸上及びY軸上における被係止部120と係止部511の位置を相互に合わせて、防塵カバー1を装着方向A1方向に移動させて、コネクタ500に被せる。防塵カバー1を移動させていくと、防塵カバー1の側板112及び113の内側の面が、係止部511の傾斜面に沿って導かれ、防塵カバー1が所定の位置まで移動すると、図1、6に示すように、係止部511が下縁120aに係止する。このようにして、図1に示すように、防塵カバー1はコネクタ500に取り付けられる。
【0048】
防塵カバー1がコネクタ500に取り付けられ、係止部511が被係止部120に係止することにより、図7(b)、(c)のように、封止部200が基板700に押圧される。従って、異物が防塵カバー1の外から内部に入り込むことを防止することができる。以上が実施の形態に係る防塵カバー1の説明である。
【0049】
以上、説明したように、本実施の形態では、カバー部100とハウジング510との境目部分Bを覆う庇部300を設け、庇部300が撓みつつハウジング510に当接するので、カバー部100とハウジング510との境目部分Bからの異物の侵入を抑制することができる。
【0050】
また、本実施の形態では、防塵カバー1は、カバー部100と基板700との間を封止する封止部200を備える。この封止部200により、カバー部100と基板700との隙間が塞がれるため、防塵カバー1の内部への異物の侵入を抑制することができる。
【0051】
また、本実施の形態では、ハウジング510の係止部511を防塵カバー1の被係止部120に係止させることにより、封止部200を基板700に押圧して圧縮するように構成されている。これにより、防塵カバー1の内部への異物の侵入を抑制する効果をより高めることができる。
【0052】
また、本実施の形態では、カバー部100のガイド部140が、ハウジング510のガイド溝512に嵌合している。これにより、前述のように、ハウジング510に取り付けられた防塵カバー1の位置がずれることが抑制される。よって、防塵カバー1のがたつき防止となる。さらに、ハウジング510に当接する庇部300の撓みに対する反力により、ハウジング510に取り付けられた防塵カバー1が持ち上がることを抑止することができる。
【0053】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態によって限定されるものではない。
【0054】
変形例1.
上記実施の形態においては、図2図3に示すように、カバー部100とコネクタ500のハウジング510との境目部分Bを覆う庇部300の先端が平坦な例について説明した。庇部300の先端は、カバー部100とハウジング510との境目部分Bからの異物の侵入を抑制することができる形状であれば限定されない。以下、庇部300の構成が異なる変形例1に係る防塵カバー2について図9図12を参照して説明する。変形例1に係る防塵カバー2は、封止部201が、カバー部101に一体的に形成されている。なお、以下の変形例1では、実施の形態と同様の構成については説明を省略し、実施の形態と異なる点を主に説明する。なお、図12は、図7(a)中のC-C線と同様の位置で、オスコネクタ及び防塵カバー2を切断した断面図である。
【0055】
図9、10に示すように、防塵カバー2は、カバー部101と、封止部201と、庇部301とを含む。カバー部101における、封止部201が配置される位置は、実施の形態とほぼ同じである。しかし、図9、10に示すように、変形例1においては、カバー部101と、封止部201とは、インサート成形により一体となるように形成されたインサート成形品から構成される。このため、カバー部101から封止部201を取り外すことはできない。
【0056】
図11に示すように、実施の形態とは異なり、カバー部101の前板114には固定ピン用孔が形成されていない。カバー部101の前板114の下側(-Z側)の一部は、封止部201の幅と同じ程度の幅で、肉抜き部150に干渉しない程度の高さに切り取られている。封止部201が設けられる箇所には、前板114の下端から延びた板状の部材として、ベース部134が形成されている。このベース部134に、インサート成形により封止部201が形成される。さらに、ベース部134には、4つの貫通孔134aが設けられている。これは、インサート成形により、封止部201の材料が貫通孔134aに充填される。よって、封止部201がカバー部101から脱落することを予防することができる。
【0057】
また、図9に示すように、実施の形態と異なる構成として、庇部301の先端の-Z側には、被嵌合部として機能する凸部310が形成されている。また、図12に示すように、ハウジング510の、庇部301の先端が当接する位置には、凸部310が嵌る嵌合部として機能する凹部514が形成されている。このような構成を備えることで、防塵カバー2が、ハウジング510に取り付けられたときに、庇部301の位置ズレを防止することができる。さらに、庇部301に凸部310が設けられているため、凸部310とハウジング510との当接の確実性が向上し、ハウジング510と庇部301の先端部分との境目から異物が侵入することを抑制できる。なお、ハウジング510に凹部514が設けられていない場合であっても、庇部301が凸部310を有することにより、ハウジング510と庇部301の先端部分との境目からの異物の侵入の抑制する効果を得ることができる。
【0058】
以上、説明したように、変形例1では、カバー部101の庇部301の先端に、ハウジング510に形成された凹部514に嵌まる凸部310を設けることで、防塵カバー2が、ハウジング510に取り付けられたときに、庇部301の位置ズレを防止することができ、かつ、ハウジング510と庇部301の先端部分との境目からの異物の侵入の抑制することができる。
【0059】
また、本変形例1においても、図12に示すように、防塵カバー2の封止部201により、カバー部101と基板700との隙間が塞がれるため、防塵カバー2の内部への異物の侵入を抑制することができる。従って、変形例1においても、実施の形態、変形例1と同様の効果を得ることができる。
【0060】
また、変形例1では、カバー部101と封止部201とを、一体に形成されたインサート成形品とするため、実施の形態に係る構成に比べ、防塵カバー2をコンパクトに構成することができる。
【0061】
変形例2.
上記変形例1では、庇部301の先端に被嵌合部として機能する凸部310が形成され、ハウジング510における庇部301の先端が当接する位置には、凸部310が嵌る嵌合部として機能する凹部514が形成される例について説明した。庇部301に形成される被嵌合部とハウジング510に形成される嵌合部とは互いに嵌まる形状であればよく、庇部301の先端に被嵌合部として機能する凹部が形成され、ハウジング510に嵌合部として機能する凸部が形成されてもよい。また、庇部300に凸凹部が形成され、庇部300に形成された凸凹部に嵌る凸凹部がハウジング510に形成されてもよい。
【0062】
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0063】
1,2:防塵カバー、10:コネクタユニット、100,101:カバー部、111:上板、112,113:側板、114:前板、120:被係止部、120a:下縁、131,133:凹部、131a,131b:面、132:固定ピン用孔、134:ベース部、134a:貫通孔、140:ガイド部、150:肉抜き部、200,201:封止部、210:本体部、211:前面、212:下面、212,215,216,310:凸部、213:上面、214:背面、220:固定ピン、221:円錐部分、222:軸部分、300,301:庇部、500:コネクタ、510:ハウジング、520:端子、510a:端子収容空間、510b,510c:取付部、511,515:係止部、512:ガイド溝、513:固定金具、514:凹部、600:相手側コネクタ、601:ケーブル、700:基板、701:接点、R,r1,r2,r3:直径。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12