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特許7222227電力取引装置、電力取引方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】電力取引装置、電力取引方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20230208BHJP
【FI】
G06Q50/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018223957
(22)【出願日】2018-11-29
(65)【公開番号】P2020087209
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小櫻 文彦
(72)【発明者】
【氏名】藤本 真吾
【審査官】松田 岳士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/132371(WO,A1)
【文献】特開2014-127107(JP,A)
【文献】国際公開第2018/177520(WO,A1)
【文献】特開2018-049399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
節電要求を受けた電力の購入者からの購入要求に応じ、前記購入要求に示されている購入量と、電力の各販売者からの各販売要求に示されている販売可能量とに基づいて、前記購入量に係る購入の可否を判定する判定部と、
前記購入量に係る購入が可能であると判定された場合に、前記購入者による前記節電要求に対する回答を可能とするための情報を前記購入要求および前記販売要求が記録されているブロックチェーンに出力する出力部と、
前記情報が出力された後に、前記購入量と前記各販売要求の販売可能量とに基づいて、前記各販売要求に対して前記購入量に対する販売量を割り当てる割当部と、
を有することを特徴とする電力取引装置。
【請求項2】
前記割当部は、前記節電要求に対する回答期限より後に、前記各販売要求に対して前記購入量に対する販売量を割り当てる、
ことを特徴とする請求項1記載の電力取引装置。
【請求項3】
前記判定部は、複数の前記購入要求のそれぞれについて、購入の可否を判定し、
前記出力部は、前記購入量に係る購入が可能であると判定された前記購入要求について、前記回答を可能とするための情報を出力し、
前記割当部は、前記購入量の合計と前記各販売要求の販売可能量とに基づいて、前記各販売要求に対して前記購入量の合計に対する販売量を割り当て、
前記各販売要求に対して割り当てられた販売量と、前記複数の購入要求のそれぞれの前記購入量とに基づいて、前記販売要求と前記購入要求とを関連付ける関連付け部を有する、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の電力取引装置。
【請求項4】
前記購入要求および前記販売要求はブロックチェーンに記録され
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の電力取引装置。
【請求項5】
節電要求を受けた電力の購入者からの購入要求に応じ、前記購入要求に示されている購入量と、電力の各販売者からの各販売要求に示されている販売可能量とに基づいて、前記購入量に係る購入の可否を判定し、
前記購入量に係る購入が可能であると判定された場合に、前記購入者による前記節電要求に対する回答を可能とするための情報を前記購入要求および前記販売要求が記録されているブロックチェーンに出力し、
前記情報が出力された後に、前記購入量と前記各販売要求の販売可能量とに基づいて、前記各販売要求に対して前記購入量に対する販売量を割り当てる、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする電力取引方法。
【請求項6】
節電要求を受けた電力の購入者からの購入要求に応じ、前記購入要求に示されている購入量と、電力の各販売者からの各販売要求に示されている販売可能量とに基づいて、前記購入量に係る購入の可否を判定し、
前記購入量に係る購入が可能であると判定された場合に、前記購入者による前記節電要求に対する回答を可能とするための情報を前記購入要求および前記販売要求が記録されているブロックチェーンに出力し、
前記情報が出力された後に、前記購入量と前記各販売要求の販売可能量とに基づいて、前記各販売要求に対して前記購入量に対する販売量を割り当てる、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力取引装置、電力取引方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力逼迫時に需要家に対して節電要求を行うことで電力網のダウンを防止するためのDR(Demand Response)取引において、需要家は、アグリゲータからの節電要求に対して、DR回答期限までに節電目標が達成可能か否かの回答を行う。節電要求を受け容れた需要家は、節電目標を達成する手段としてエアコン等の機器の停止のほか、自家用発電機を稼働させて見かけ上の節電を実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-127107号公報
【文献】特開2008-65617号公報
【文献】特開2004-192473号公報
【文献】特開2018-78702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
DR取引の報酬金額は大きいため需要家がDR取引に参加するメリットは大きいが、少しでも節電目標を下回ると報酬を一切受け取れない。したがって、節電要求を受けた需要家は、DR回答期限までに電力が確保できることを確定させたい。
【0005】
しかし、DR回答期限までに電力の確保の可否を判定するのが困難な場合がある。その場合には、結果的に電力を確保できた場合であっても、需要家は、節電要求の受け容れを断念せざるを得ない。
【0006】
そこで、一側面では、本発明は、節電要求に応じた電力取引の円滑な運用を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの態様では、電力取引装置は、節電要求を受けた電力の購入者からの購入要求に応じ、前記購入要求に示されている購入量と、電力の各販売者からの各販売要求に示されている販売可能量とに基づいて、前記購入量に係る購入の可否を判定する判定部と、前記購入量に係る購入が可能であると判定された場合に、前記購入者による前記節電要求に対する回答を可能とするための情報を出力する出力部と、前記情報が出力された後に、前記購入量と前記各販売要求の販売可能量とに基づいて、前記各販売要求に対して前記購入量に対する販売量を割り当てる割当部と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
一側面として、節電要求に応じた電力取引の円滑な運用を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】節電要求に対する不足分をP2P電力取引によって融通する例を示す図である。
図2】本発明の実施の形態におけるシステム構成例を示す図である。
図3】本発明の実施の形態におけるマッチング装置10のハードウェア構成例を示す図である。
図4】本発明の実施の形態におけるマッチング装置10の機能構成例を示す図である。
図5】需要家からの要求とマッチング装置10による処理との時系列順を示す図である。
図6】購入確定判定処理の処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。
図7】ブロックチェーンBCにおける買い情報の構成例を示す図である。
図8】ブロックチェーンBCにおける売り情報の構成例を示す図である。
図9】ブロックチェーンBCにおける購入確定情報の構成例を示す図である。
図10】ブロックチェーンBCにおける販売確定情報の構成例を示す図である。
図11】メモリにロードされた買い情報及び売り情報のデータ例を示す第1の図である。
図12】販売確定判定処理の処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。
図13】メモリにロードされた買い情報及び売り情報のデータ例を示す第2の図である。
図14】メモリにロードされた買い情報及び売り情報のデータ例を示す第3の図である。
図15】約定確定処理の処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。
図16】売りと買いとのマッチング結果の一例を示す図である。
図17】ブロックチェーンBCにおける約定情報の構成例を示す図である。
図18】回答期限までにマッチングを行う場合の約定の確定処理の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。本実施の形態では、DR(Demand Response)取引において節電要求(DR要求)を受け容れた需要家が、単独では節電目標を達成できない場合でも、図1に示されるように、他の需要家とのP2P電力取引によって不足分の電力を融通することで、節電目標を達成しやすくする。図1では、節電要求を受けた需要家A及び需要家Cが、需要家BとのP2P電力取引によって不足分を融通している。
【0011】
なお、P2P電力取引は信頼関係がない個と個の直接取引であるため、取引内容を記載した約定の管理が重要になる。そこで、本実施の形態において、DR取引におけるP2P電力取引の約定は、ブロックチェーンに記録される。約定がブロックチェーンに記録されることで改ざんが困難になり、約定を信頼した上で取引が行われうる。
【0012】
具体的には、P2P電力取引における電力の販売者は、電力の販売要求を示す情報(以下、「売り情報」という。)をブロックチェーンに記録し、電力購入者は、電力の購入要求を示す情報(以下、「買い情報」という。)をブロックチェーンに記録する。P2P電力取引のブローカは、電力取引のために、複数の売り情報と買い情報の中から売りと買いとの関連付け(マッチング)を行い、その結果を約定としてブロックチェーンに記録する。約定が記録された時点で契約は有効になり、販売者は購入者に電力を提供し、購入者は販売者から電力の提供を受ける。
【0013】
ここで、電力の購入者は、節電要求に対する回答(以下、「節電要求回答」という。)を行うために、DR回答期限(節電要求に対する回答期限)までに電力が確保できることを確定させたい。一方、電力の販売者は、効率的に多くの電力を売るため、また、ブローカは多くの取引を可能にするため、取引の確定を遅延したい。本実施の形態では、当該遅延を行える限界を「取引期限」と定義する。ここで、効率的な取引とP2P電力取引時に節電要求回答に要求される短時間での電力確保を両立させることは困難である。
【0014】
両立が困難な理由は、効率的な取引と節電要求回答までの電力確保とがトレードオフの関係を有するためである。電力出力には最大出力と最低出力があり、最低出力以下の電力は出力が不安定となるため、最低出力以下では電力は提供されない。効率的な取引のためには、より多くの買い要求と売り要求とをマッチングさせる必要がある。そのため、取引期限まで売り要求、買い要求が出てくるのを待つのが効率がよい。一方、節電要求回答までの電力の確保のために、需要家は節電要求回答を期限までに行うため、期限までに節電不足分の電力を確保する必要がある。そのため早期の取引確定が必要であり、節電要求回答までの電力確保と効率的な取引とを両立させることが難しい。
【0015】
そこで、本実施の形態において、マッチング装置10は、買い情報と売り情報とのマッチングについて、3段階の時系列順でブロックチェーンに情報を記録する。1段目において記録される情報が、各買い情報についての購入の確定を示す情報(以下、「購入確定情報」という。)である。2段目において記録される情報が、各売り情報についての販売の確定を示す情報(以下、「販売確定情報」という。)である。3段目において記録される情報が、買い情報と売り情報とのマッチング結果を示す情報である。
【0016】
マッチングに関する情報を3段階に分割することで、1段目のタイミングで買い情報に係る電力の購入を確定させて節電要求への回答を可能にすることができる。2段目で売り情報に係る販売を確定させで配電を可能にすることができる。3段目で実際に買い情報と売り情報の最適なマッチングを行う。
【0017】
図2は、本発明の実施の形態におけるシステム構成例を示す図である。図2において、複数の需要家装置30は、インターネット等のネットワークを介してP2P電力取引サーバ20に接続される。P2P電力取引サーバ20は、インターネット等のネットワークを介してブロックチェーンBCに接続される。マッチング装置10は、インターネット等のネットワークを介してブロックチェーンBC及びP2P電力取引サーバ20に接続される。アグリゲータ装置40は、インターネット等のネットワークを介して各需要家装置30及びP2P電力取引サーバ20に接続される。
【0018】
各需要家装置30は、DR(Demand Response)取引を行う各需要家が利用するコンピュータである。上記したように、DR取引における節電要求を満たすため、各需要家の間では、P2P電力取引が行われる。P2P電力取引において電力の購入者となる需要家の需要家装置30は、電力の購入要求を示す買い情報をP2P電力取引サーバ20へ送信する。電力の販売者となる需要家の需要家装置30は、電力の販売要求を示す売り情報をP2P電力取引サーバ20に送信する。買い情報には、購入したい電力量(以下、「買い量」という。)等が含まれる。売り情報には、販売可能な最低の電力量(以下、「最低売り量」という。)及び販売可能な最大の電力量(以下、「最大売り量」という。)等が含まれる。なお、以下において、最低売り量と最大売り量とを区別しない場合、「販売可能量」という。
【0019】
P2P電力取引サーバ20は、P2P電力取引の仲介を行う1以上のコンピュータである。P2P電力取引サーバ20は、各需要家装置30から送信される買い情報又は売り情報を受信すると、受信した情報をブロックチェーンBCに登録する。
【0020】
マッチング装置10は、ブロックチェーンBCに登録された買い情報と売り情報とのマッチングを行い、マッチングにおいて生成される情報(後述の購入確定情報、販売確定情報、約定情報)をブロックチェーンBCに登録する。なお、ブロックチェーンBCのスマートコントラクト等にマッチング装置10の機能が配備されてもよい。但し、図2のように、マッチング装置10をブロックチェーンBCの外部に配置することで、環境変化に伴いマッチングの最適化アルゴリズムを容易に変更可能とすることができる。
【0021】
アグリゲータ装置40は、DR取引におけるアグリゲータとして機能する1以上のコンピュータである。アグリゲータ装置40は、各需要家装置30に対して節電要求を送信したり、節電要求に対応する回答を各需要家装置30から受信したりする。アグリゲータ装置40は、また、P2P電力取引に関してブロックチェーンBCに記録される情報を参照することで、節電要求に対する各需要家装置30からの回答の正当性の評価等を行う。
【0022】
図3は、本発明の実施の形態におけるマッチング装置10のハードウェア構成例を示す図である。図3のマッチング装置10は、それぞれバスBで相互に接続されているドライブ装置100、補助記憶装置102、メモリ装置103、CPU104、及びインタフェース装置105等を有する。
【0023】
マッチング装置10での処理を実現するプログラムは、記録媒体101によって提供される。プログラムを記録した記録媒体101がドライブ装置100にセットされると、プログラムが記録媒体101からドライブ装置100を介して補助記憶装置102にインストールされる。但し、プログラムのインストールは必ずしも記録媒体101より行う必要はなく、ネットワークを介して他のコンピュータよりダウンロードするようにしてもよい。補助記憶装置102は、インストールされたプログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータ等を格納する。
【0024】
メモリ装置103は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置102からプログラムを読み出して格納する。CPU104は、メモリ装置103に格納されたプログラムに従ってマッチング装置10に係る機能を実行する。インタフェース装置105は、ネットワークに接続するためのインタフェースとして用いられる。
【0025】
なお、記録媒体101の一例としては、CD-ROM、DVDディスク、又はUSBメモリ等の可搬型の記録媒体が挙げられる。また、補助記憶装置102の一例としては、HDD(Hard Disk Drive)又はフラッシュメモリ等が挙げられる。記録媒体101及び補助記憶装置102のいずれについても、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に相当する。
【0026】
図4は、本発明の実施の形態におけるマッチング装置10の機能構成例を示す図である。 図4に示されるように、マッチング装置10は、上記の3段階に対応させて、購入確定処理部11、販売確定処理部12及び約定生成部13を有する。これら各部は、マッチング装置10にインストールされた1以上のプログラムが、CPU104に実行させる処理により実現される。
【0027】
購入確定処理部11は、買い情報に示されている買い量(購入量)と、各売り情報に示されている販売可能量とに基づいて、買い情報の買い量に係る電力の購入の可否を判定する。購入確定処理部11は、購入が可能であると判定した買い情報について、購入者による節電要求に対する回答を可能とするための情報(具体的には、当該買い情報に係る購入が可能であることを示す情報(すなわち、当該買い情報に係る購入確定情報))をブロックチェーンBCに記録する。
【0028】
販売確定処理部12は、購入確定情報が記録された後に、当該購入確定情報に係る買い情報(購入が確定している買い情報)の買い量と、各売り情報に示されている販売可能量とに基づいて、各売り情報に対して、当該買い量に対する販売量(実際の売り量)を割り当てる(配分する)。販売確定処理部12は、実際の売り量が割り当てられた売り情報に係る販売確定情報をブロックチェーンBCに記録する。
【0029】
約定生成部13は、購入が確定した買い情報と販売が確定した売り情報とのマッチング(関連付け)を行う。約定生成部13は、売り情報と買い情報の配電の近さに基づいて電力を割り当て、P2P取引における電力の売買に関する約定を示す情報(以下、「約定情報」という。)をブロックチェーンBCに記録する。
【0030】
なお、上記における、2段目及び3段目を統合して全部で2段にされてもよい。この場合、販売確定情報はブロックチェーンBCへ記録されなくてもよい。
【0031】
なお、本実施の形態では、需要家からの要求(売り要求(売り情報)、買い要求(買い情報))、及びマッチング装置10による各種の処理が、図5に示される順番で発生する場合を具体例として説明する。図5において、各要求又は各処理に付与されている符号txのxは、各要求又は各処理の順序関係を示す。すなわち、xの値が小さい方が先に生じた事象であることを示す。なお、図5の内容については、処理手順の説明と共に説明する。
【0032】
以下、マッチング装置10が実行する処理手順について説明する。図6は、購入確定判定処理の処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。
【0033】
購入確定処理部11は、ブロックチェーンBCへの新たな買い情報又は新たな売り情報の記録(登録)を待機している(S101)。新たな買い情報又は新たな売り情報がブロックチェーンBCに記録されると(S101でYes)、購入確定処理部11は、当該買い情報又は当該売り情報と取引期間が共通する買い情報及び売り情報をブロックチェーンBCから読み込む(S102)。
【0034】
図7は、ブロックチェーンBCにおける買い情報の構成例を示す図である。図7において、1つの行(レコード)が1つの買い情報を示す。図7に示されるように、1つの買い情報は、要求時刻、購入者、買い量、取引期間及び買いTXID等を含む。
【0035】
要求時刻は、買い情報をブロックチェーンBCに格納したトランザクションの開始時刻である。購入者は、当該買い情報に係る購入者に該当する需要家のIDである。買い量は、当該購入者が購入を希望する電力量である。取引期間は、当該電力量の電力を必要する期間である。買いTXIDは、ブロックチェーンBCにおいて買い情報に関するトランザクションのIDである。なお、買い番号は、図5における買い要求(買い情報)との対応を明確にするために、説明の便宜上付与したものである。後述される購入確定情報についても同様である。以下、それぞれの買い情報を区別する場合、「買い情報」の後に買い番号を付与する。
【0036】
また、図8は、ブロックチェーンBCにおける売り情報の構成例を示す図である。図8において、1つの行(レコード)が1つの売り情報を示す。図8に示されるように、1つの売り情報は、要求時刻、販売者、最大売り量、最低売り量、取引期間及び売りTXID等を含む。
【0037】
要求時刻は、売り情報をブロックチェーンBCに格納したトランザクションの開始時刻である。販売者は、当該売り情報に係る販売者に該当する需要家のIDである。最大売り量は、販売可能な最大の電力量である。最低売り量は、販売可能な最低の電力量である。取引期間は、販売可能量の電力を販売可能な期間である。売りTXIDは、ブロックチェーンBCにおいて売り情報に関するトランザクションのIDである。なお、売り番号は、図5における売り要求(売り情報)との対応を明確にするために、説明の便宜上付与したものである。後述される販売確定情報についても同様である。以下、それぞれの売り情報を区別する場合、「売り情報」の後に売り番号を付与する。
【0038】
続いて、購入確定処理部11は、ステップS102において読み込まれた各買い情報に対応する購入確定情報をブロックチェーンBCから読み込む(S103)。
【0039】
図9は、ブロックチェーンBCにおける購入確定情報の構成例を示す図である。図9において、1つの行(レコード)が1つの購入確定情報を示す。図9に示されるように、1つの購入確定情報は、購入が確定した買い情報の買いTXIDを含む。
【0040】
続いて、購入確定処理部11は、ステップS102において読み込まれた各売り情報に対応する販売確定情報をブロックチェーンBCから読み込む(S104)。
【0041】
図10は、ブロックチェーンBCにおける販売確定情報の構成例を示す図である。図10において、1つの行(レコード)が1つの販売確定情報を示す。図10に示されるように、1つの販売確定情報は、販売が確定した売り情報の売りTXID及び取引電力量を含む。取引電力量は、販売可能量のうち、実際に販売することが確定した電力量である。
【0042】
なお、ここでは、図5の時刻t8において買い情報(2)がブロックチェーンBCに記録されることに応じて(買い情報(2)が需要家から送信されたことに応じて)、ステップS102以降が実行された場合を想定する。すなわち、図7における買い情報(1)と、図8における売り情報(1)及び売り情報(2)とが、既にブロックチェーンBCに記録されており、買い情報(2)が、新たにブロックチェーンBCに記録された状況を想定する。したがって、図5の時刻5において買い情報(1)が確定しているが、売り情報(1)及び売り情報(2)は確定していない。すなわち、買い情報(1)に対応する購入確定情報は時刻t5においてブロックチェーンBCに記録されているが、売り情報(1)及び売り情報(2)のそれぞれに対応する販売確定情報は、ブロックチェーンBCに記録されていない。したがって、購入確定処理部11は、ステップS102~S104において読み込まれた情報に基づいて、図11に示されるようなデータをメモリ装置103に生成する。
【0043】
図11は、メモリにロードされた買い情報及び売り情報のデータ例を示す第1の図である。図11において、売りデータdS1は、売り情報(1)に対応し、売りデータdS2は、売り情報(2)に対応する。また、買いデータdB1は、買い情報(1)に対応し、買いデータdB2は、買い情報(2)に対応する。
【0044】
売りデータは、売り情報と「取引電力量」とを含む。「取引電力量」は、当該売り情報に対応する販売確定情報における「取引電力量」である。ここでは、売り情報(1)及び(2)のいずれについても販売が確定していない(販売確定情報がブロックチェーンBCに記録されていない)ため、売りデータdS1及びdS2のいずれについても取引電力量の値は空である。
【0045】
買いデータは、買い情報と「購入予約」及び「購入先確定量」を含む。「購入予約」は、当該買い情報が確定したか否かを示す項目である。「済」は、確定していることを示し、「未」は、確定していないことを示す。ここでは、買い情報(1)については確定している(購入確定情報がブロックチェーンBCに記録されている)ため、買いデータdB1の購入予約は「済」である。「購入先確定量」は、電力の購入先である販売者が確定された(マッチングされた)分の電力量が記録される項目である。
【0046】
なお、図11に示される各売りデータの販売者の項目及び各買いデータの購入者の項目には、各販売者又は各購入者の所在地が括弧内に示されている。当該所在地は、例えば、P2P電力取引サーバ20に記憶されている各需要家の属性情報から取得されてもよい。なお、本実施の形態では、便宜上、所在地は、県によって表現されているが、市町村や緯度及び経度等、他の形式によって表現されてもよい。
【0047】
続いて、購入確定処理部11は、購入予約の値が「未」である買いデータの有無を判定する(S105)。該当する買いデータが無い場合(S105でNo)、ステップS101へ戻る。該当する買いデータ(以下、「候補買いデータ群」という。)が有る場合(S105でYes)、購入確定処理部11は、確定していない(すなわち、取引電力量に値が記録されていない)売りデータの有無を判定する(S106)。該当する売りデータが無い場合(S106でNo)、ステップS101へ戻る。該当する売りデータ(以下、「候補売りデータ群」という。)有る場合(S106でYes)、ステップS107へ進む。
【0048】
なお、図5において、時刻t1では、ステップS105でNoとなるため、時刻t2における購入確定判定処理において購入が確定する買い情報は無い。
【0049】
ステップS107において、購入確定処理部11は、候補買いデータ群のうちの先着順で1つの買いデータを処理対象として選択する。図11の例によれば、買いデータdB2が、処理対象(以下、「対象買いデータ」という。)とされる。
【0050】
続いて、購入確定処理部11は、購入予約済みの(購入予約の値が「済」である)買いデータの買い量の合計に、対象買いデータの買い量を加算した結果を変数xに代入する(S108)。図11の例によれば、購入予約済みの買いデータdB1の買い量は、300kWhであり、対象買いデータ(買いデータdB2)の買い量は、300kWhである。したがって、xには、300kWh+300kWh=600kWhが代入される。
【0051】
続いて、購入確定処理部11は、xが示す買い量を満たすことが可能な売りデータを、候補売りデータ群の中から先着順に抽出する(S109)。以下、抽出された1以上の売りデータの集合を「対象売り集合」という。具体的には、購入確定処理部11は、最大売り量の合計がx以上となるまで、候補売りデータ群に先着順に売りデータを抽出する。図11の例では、先頭の売りデータdS1の最大売り量(800kWh)が、x(600kh)以上となる。したがって、売りデータdS1が対象売り集合の要素となる。
【0052】
対象売り集合(すなわち、xが示す買い量を満たすことが可能な売りデータ)を抽出できなかった場合(S110でNo)、ステップS101へ戻る。対象売り集合を抽出できた場合(S110でYes)、購入確定処理部11は、対象売り集合に含まれる各売りデータの最大売り量の合計を変数yに代入する(S111)。図11の例では、売りデータdS1の最大売り量である800kWhが、変数yに代入される。
【0053】
続いて、購入確定処理部11は、対象売り集合に含まれる各売りデータの最低売り量の合計を変数zに代入する(S112)。図11の例では、売りデータdS1の最低売り量である300kWhが、変数zに代入される。
【0054】
続いて、購入確定処理部11は、xの値がz以上、かつ、y以下であるという条件(以下、「購入確定条件」という。)が満たされるか否かを判定する(S113)。購入確定条件が満たされない場合(S113でNo)、ステップS101へ戻る。購入確定条件が満たされる場合(S113でYes)、購入確定処理部11は、対象買いデータの購入予約を「未」から「済」に更新する(S114)。続いて、購入確定処理部11は、対象買いデータに対応する購入確定情報をブロックチェーンBCに記録する(S115)。
【0055】
図11の例では、xの値(600kWh)は、z(300kWh)以上、かつ、y(800kWh)以下である。したがって、買いデータdB2に対応する購入確定情報がブロックチェーンBCに記録される。なお、当該購入確定情報の記録は、図5において、時刻t10の購入確定(2)に対応する。また、当該購入確定情報は、図9において、買い番号が(2)である購入確定情報に対応する。なお、図5において、時刻t10は、買い情報(2)の回答期限である時刻t12より前に行われている。
【0056】
ステップS115に続いて、ステップS105へ戻る。ステップS105へ戻ると、購入確定処理部11は、要求時刻が対象買いデータより後である買いデータについてステップS105以降を実行する。
【0057】
なお、P2P電力取引サーバ20は、定期的にブロックチェーンBCへの新たな購入確定情報の記録を確認している。P2P電力取引サーバ20は、新たな購入確定情報が記録されると、当該購入確定情報に対応する買い情報の送信元の需要家装置30に対して、購入の確定通知を送信する。当該需要家装置30に係る需要家は、当該確定通知の受信によって、節電要求に対する回答(DR回答)を行うことができるようになる。したがって、ブロックチェーンBCへの購入確定情報の記録は、購入者である需要家による節電要求に対する回答を可能とするための情報(当該購入者からの買い情報に係る購入が可能であることを示す情報)の出力の一例に該当する。
【0058】
図12は、販売確定判定処理の処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。図12の処理手順は、取引期間が共通する買い情報群及び売り情報群に対する取引期限後に実行される。すなわち、取引期限は、取引期間が共通する買い情報群及び売り情報群ごとに設定される。取引期限は、例えば、当該取引期間の開始時刻-αである。すなわち、図12の処理手順は、取引の開始に遅れない程度のタイミングまでに実行されればよく、各買い情報の回答期限の後におこなわれてもよい。図5の例では、取引期限は時刻t17である。
【0059】
ステップS201において、販売確定処理部12は、取引期間が共通する買い情報群に係る買いデータ群のうち、購入予約が「済」である各買いデータの買い量の合計(以下、「買い総和」という。)を変数xに代入する。
【0060】
ここでは、時刻t17を想定しているため、図13に示されるような買いデータ及び売りデータがメモリ装置103にロードされている。
【0061】
図13は、メモリにロードされた買い情報及び売り情報のデータ例を示す第2の図である。図13中、図11と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。図13では、買いデータdS3が更に追加されており、買いデータdS3の購入予約が「済」とされている。買いデータdS3の追加は、図5の時刻t14において行われ、買いデータdS3の購入予約の「済」への変更は、図5の時刻t15において行われている。
【0062】
したがって、図13の例によれば、x=300kWh+300kWh+300kWh=900kWhである。
【0063】
続くステップS202以降において、販売確定処理部12は、買い総和xに対する取引電力量の割り当て先の売りデータと、各売りデータの取引電力量とを特定するための処理を実行する。
【0064】
続いて、販売確定処理部12は、変数Ymax及びYminのそれぞれに0を代入する(S202)。変数Ymaxは、買い総和xに対する取引電力量が割り当てられる各売りデータの最大売り量の合計を記憶するための変数である。変数Yminは、買い総和xに対する取引電力量が割り当てられる各売りデータの最低売り量の合計を記憶するための変数である。
【0065】
続いて、販売確定処理部12は、取引期間が共通する売りデータ群(以下、「候補売りデータ群」という。)のうち、先頭の売りデータを処理対象(以下、「対象売りデータ」という。)とする(S203)。
【0066】
続いて、販売確定処理部12は、Ymaxがx以上であるか否かを判定する(S204)。すなわち、最大売り量の合計が買い総和x以上であるか否かが判定される。Ymaxがx未満である場合(S204でNo)、販売確定処理部12は、Ymaxに対して対象売りデータの最大売り量を加算した結果をYmaxに代入し、Yminに対して対象売りデータの最低売り量を加算した結果をYminに代入する(S205)。続いて、販売確定処理部12は、候補売りデータ群の中で対象売りデータの次の売りデータを対象売りデータとして(S206)、ステップS204以降を繰り返す。
【0067】
その結果、図13の例では、売りデータdS1及び売りデータdS2の最大売り量の合計である1300kWhがYmaxに代入され、それぞれの最低売り量の合計である700kWhがYminに代入された時点で、ステップS204の判定がYesとなり、ステップS207へ進む。すなわち、図13の例では、売りデータdS1及び売りデータdS2が、買い総和xに対する取引電力量の割り当て先となる。
【0068】
続いて、販売確定処理部12は、買い総和xからYminを差し引いた結果を変数zへ代入する(S207)。すなわち、買い総和xに対して、売りデータdS1及び売りデータdS2の最低売り量を割り当てた結果として不足する買い量がz(以下、「未割当量z」という。)に代入される。なお、図13の例において、未割当量z=900kWh-300kWh-400kWh=200kWhである。
【0069】
続いて、販売確定処理部12は、現在の対象売りデータ(図13の例における売りデータdS2)までを、最低売り量以上の取引電力量の割り当て範囲(以下、「売り範囲R」という。)とする(S208)。
【0070】
続くステップS209~S216において、販売確定処理部12は、売り範囲Rに含まれる売りデータに対して、未割当量zを割り当てる(分配する)ための処理を実行する。
【0071】
ステップS209において、販売確定処理部12は、候補売りデータ群の先頭の売りデータを処理対象(以下、「対象売りデータ」という。)とする。続いて、販売確定処理部12は、対象売りデータの最大売り量をYmaxに代入し、対象売りデータの最低売り量をYminに代入する(S210)。続いて、販売確定処理部12は、YmaxからYminを差し引いた結果を変数Ymidに代入する(S211)。変数Ymidは、対象売りデータにおける未割当分の売り量である。
【0072】
続いて、販売確定処理部12は、Ymidが未割当量z以上であるか否かを判定する(S212)。Ymidが未割当量z未満である場合(S212でNo)、販売確定処理部12は、対象売りデータの取引電力量にYmaxを設定する(S213)。すなわち、対象売りデータの最大売り量が、対象売りデータの取引電力量とされる。続いて、販売確定処理部12は、未割当量zからYmidを差し引いた結果を未割当量zに代入する(S214)。続いて、販売確定処理部12は、候補売りデータ群において対象売りデータの次の売りデータを対象売りデータとして(S215)、ステップS210以降を繰り返す。一方、Ymidが未割当量z以上である場合(S212でYes)、販売確定処理部12は、Yminに対して未割当量zを加算した結果を対象売りデータの取引電力量に設定する(S216)。
【0073】
図13の例では、売りデータdS1のYmidは、800kWh-300kWh=500kWhであり、未割当量200kWh以上である。したがって、売りデータdS1の取引電力量には、300kWh+200kWh=500kWhが設定される。
【0074】
続くステップS217~S219において、販売確定処理部12は、売り範囲Rに含まれる他の売りデータのそれぞれの取引電力量に対して、それぞれの最低売り量を設定するため処理を実行する。
【0075】
ステップS217において、販売確定処理部12は、候補販売データ群において対象売りデータの次の売りデータを対象売りデータとする。続いて、販売確定処理部12は、対象売りデータが、売り範囲Rを超えているか否かを判定する。対象売りデータが売り範囲Rを超えていない場合(S218でNo)、販売確定処理部12は、対象売りデータの取引電力量に、対象売りデータの最低売り量を設定し(S219)、ステップS217に戻る。
【0076】
図13の例では、売りデータdS2の取引電力量に対して、売りデータdS2の最低売り量である400kWhが設定される。その結果、各売りデータは、図14に示される通りとなる。
【0077】
図14は、メモリにロードされた買い情報及び売り情報のデータ例を示す第3の図である。図14では、売りデータdS1及びdS2のそれぞれの取引電力量に値が記録されている。
【0078】
対象売りデータが売り範囲Rを超えると(S218でYes)、販売確定処理部12は、候補売りデータ群のうち、取引電力量に値が設定された売りデータに対応する販売確定情報をブロックチェーンBCに記録する(S220)。図11の例では、売りデータdS1及びdS2のそれぞれに対応する販売確定情報が、図5の時刻t18及び時刻t19のタイミングでブロックチェーンBCに記録される。
【0079】
図12の処理によれば、各売り情報に対して公平な取引電力量の配分が可能になる
図15は、約定確定処理の処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。図15は、例えば、取引期間の開始時刻(図5の時刻t20)の直後に、当該取引期間に係る買いデータ及び売りデータについて実行される。すなわち、図15の処理手順は、図5の時刻t21に実行される。
【0080】
ステップS301において、約定生成部13は、売り範囲Rに含まれる売りデータのうち、先頭の売りデータを処理対象(以下、「対象売りデータ」という。)とする。時刻t21では、各買いデータ及び売りデータの状態は、図14に示した通りである。
【0081】
続いて、約定生成部13は、対象売りデータの取引電力量を変数Xに代入する(S302)。変数Xは、対象売りデータの取引電力量の残量(以下、「取引残量」という。)を記憶するための変数である。
【0082】
続いて、約定生成部13は、購入予約が「済」である買いデータ群(以下、「候補買いデータ群」)という。)から、購入者の所在地が対象売りデータの販売者の所在地と同じで、購入先確定量が買い量に満たない買いデータを探索し、該当する買いデータの中で先頭の買いデータを処理対象とする(S303)。なお、該当する買いデータが無い場合、購入者の所在地が対象売りデータの販売者の所在地に最も近い買いデータの中で先頭の買いデータが処理対象とされる。以下、処理対象とされた買いデータを「対象買いデータ」という。
【0083】
続いて、約定生成部13は、対象買いデータの買い量から対象買いデータの購入先確定量を差し引いた結果を変数Yに代入する(S304)。すなわち、変数Yは、対象買いデータについて買い量に対する不足分を記憶するための変数である。
【0084】
続いて、約定生成部13は、取引残量Xと不足分Yとを比較する(S305)。取引残量Xが不足分Yより大きい場合(S305でNo)、約定生成部13は、対象売りデータから対象買いデータに対してY分の電力を売ることを示すマッチング情報をメモリ装置103に記録する(S306)。続いて、約定生成部13は、対象買いデータの購入先確定量に対して対象買いデータの買い量の値を設定する(S307)。その結果、対象買いデータについて全ての購入先は確定したことになる。続いて、約定生成部13は、取引残量Xから不足分Yを差し引いた結果を取引残量Xに代入し、ステップS303以降を繰り返す。
【0085】
一方、ステップS305において、取引残量Xが不足分Y以下である場合(S305でYes)、約定生成部13は、対象売りデータから対象買いデータに対してX分の電力を売ることを示すマッチング情報をメモリ装置103に記録する(S309)。続いて、約定生成部13は、対象買いデータの購入先確定量に取引残量Xを加算した結果を、対象買いデータの購入先確定量に代入する(S310)。続いて、約定生成部13は、売り範囲Rにおいて対象売りデータの次の売りデータを処理対象にする(S311)。該当する売りデータが有る場合(S311でNo)、当該売りデータが対象売りデータとされてステップ302以降が繰り返される。
【0086】
すなわち、ステップS301~S312では、売りデータごとに、販売元と購入先との地理的な近さに基づいて、販売先の買いデータが決定される。但し、買いデータごとに、購入先の売りデータが決定されるようにしてもよい。
【0087】
売り範囲Rの全ての売りデータについて先着順にステップS311までが実行されると(S312でYes)、約定生成部13は、ステップS306又はS309において記録された各マッチング情報に基づく約定情報をブロックチェーンBCに記録する(S313)。
【0088】
例えば、図14の例によれば、図16に示されるようにマッチング(関連付け)が行われる。図16は、売りと買いとのマッチング結果の一例を示す図である。図16において、売りデータから買いデータへの各矢印がマッチング情報を示す。すなわち、図16では、売りデータdS1の取引電力量(500kWh)については、買いデータdB1へ300kWhが販売され、買いデータdB2へ200kWhが販売されることが示されている。また、売りデータdS2の取引電力量(400kWh)については、買いデータdB2へ100kWhが販売され、買いデータdB2へ300kWhが販売されることが示されている。その結果、全ての買いデータの買い量が過不足なく満たされている。
【0089】
この場合、ブロックチェーンBCには、図17に示されるような約定情報が記録される。図17は、ブロックチェーンBCにおける約定情報の構成例を示す図である。図17において、1つの行(レコード)が1つの約定情報を示し、図16における1つの矢印に対応する。図17に示されるように、1つの約定情報は、売りTXID、買いTXID、取引電力量及び取引期間等を含む。売りTXIDは、売り情報の売りTXIDである。買いTXIDは、当該売り情報とマッチングされた買い情報の買いTXIDである。取引電力量は、当該売り情報と当該買い情報との間の電力の取引量(当該売り情報から当該買い情報への電力の販売量)である。取引期間は、当該取引量に係る取引の期間である。
【0090】
なお、上記では地理的な近さに基づく順番で売り情報と買い情報とをマッチングする例を示したが、例えば、先着順等の他の順番に基づいてマッチングが行われてもよい。
【0091】
また、マッチングされた需要家間では、実際に電力の移動が行われなくてよく、単に、金銭的な取引が行われればよい。すなわち、全体としてDR取引による節電が実現されていればよいため、販売者は、販売量(取引電力量)の分だけ節電すればよい。
【0092】
上述したように、本実施の形態によれば、約定(マッチング)が決定する前に電力確保を保証するために、新たに売ることができる電力量と、各買い要求(買い情報)の買い量とに基づいて、各買い要求について購入を確定させることができる。
【0093】
その結果、効率的な電力取引と節電要求回答までの電力確保とを両立させることができ、例えば、早急に回答が必要な節電要求に対しても回答が可能になる。したがって、節電要求に応じた電力取引の円滑な運用を可能とすることができる。
【0094】
なお、本実施の形態において示した売り情報及び買い情報について、仮に、各買い情報に対する節電要求の回答期限までにマッチングを完了させようとした場合について参考までに説明する。
【0095】
図18は、回答期限までにマッチングを行う場合の約定の確定処理の例を説明するための図である。
【0096】
図18に示されるように、この場合、1つの売り情報(売りデータdS1)と、2つの買い情報(買いデータdB1及びdB2)とがブロックチェーンに記録された時点で、回答期限内に約定を確定するために、1回目のマッチングが行われる。その後に1つの売り情報(売りデータdS2)と、1つの買い情報(買いデータdB3)とが追加された後に2回目のマッチングが行われる。
【0097】
1回目のマッチングにおいて、2つの買い情報(買いデータdB1及びdB2)は、1件目の売り情報(売りデータdS1)から購入可能となり、当該2つの買い情報と当該売り情報とのマッチングに基づく約定情報がブロックチェーンに登録される。
【0098】
2回目のマッチングにおいて、新たに追加された買い情報(買いデータdB3)のマッチングが実行されるが、1件目の売り情報(売りデータdS1)の売りの空きは200kWhしかなく、買いデータdB3の買い量である300kWhに対して100kWhだけ足りない。2件目の売り情報(売りデータdS2)の空きは500kWhであるが、最低売り量が400kWhであるため、買いデータdB3の買い量である300kWhでは売ることができない。したがって、買いデータdB3に係る購入者が節電要求を満たすためには100kWh余分に電力を購入することになってしまう。
【0099】
この様に早めの約定が行われると、全体として最適な売買ができない可能性が高くなる。
【0100】
なお、本実施の形態において、マッチング装置10は、電力取引装置の一例である。購入確定処理部11は、判定部及び出力部の一例である。販売確定処理部12は、割当部の一例である。約定生成部13は、関連付け部の一例である。
【0101】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0102】
以上の説明に関し、更に以下の項を開示する。
(付記1)
節電要求を受けた電力の購入者からの購入要求に応じ、前記購入要求に示されている購入量と、電力の各販売者からの各販売要求に示されている販売可能量とに基づいて、前記購入量に係る購入の可否を判定する判定部と、
前記購入量に係る購入が可能であると判定された場合に、前記購入者による前記節電要求に対する回答を可能とするための情報を出力する出力部と、
前記情報が出力された後に、前記購入量と前記各販売要求の販売可能量とに基づいて、前記各販売要求に対して前記購入量に対する販売量を割り当てる割当部と、
を有することを特徴とする電力取引装置。
(付記2)
前記割当部は、前記節電要求に対する回答期限より後に、前記各販売要求に対して前記購入量に対する販売量を割り当てる、
ことを特徴とする付記1記載の電力取引装置。
(付記3)
前記判定部は、複数の前記購入要求のそれぞれについて、購入の可否を判定し、
前記出力部は、前記購入量に係る購入が可能であると判定された前記購入要求について、前記回答を可能とするための情報を出力し、
前記割当部は、前記購入量の合計と前記各販売要求の販売可能量とに基づいて、前記各販売要求に対して前記購入量の合計に対する販売量を割り当て、
前記各販売要求に対して割り当てられた販売量と、前記複数の購入要求のそれぞれの前記購入量とに基づいて、前記販売要求と前記購入要求とを関連付ける関連付け部を有する、
ことを特徴とする付記1又は2記載の電力取引装置。
(付記4)
前記購入要求および前記販売要求はブロックチェーンに記録され、前記出力部は、前記購入者による前記節電要求に対する回答を可能とするための情報を前記ブロックチェーンに出力する、
ことを特徴とする付記1ないし3のいずれかに記載の電力取引装置。
(付記5)
節電要求を受けた電力の購入者からの購入要求に応じ、前記購入要求に示されている購入量と、電力の各販売者からの各販売要求に示されている販売可能量とに基づいて、前記購入量に係る購入の可否を判定し、
前記購入量に係る購入が可能であると判定された場合に、前記購入者による前記節電要求に対する回答を可能とするための情報を出力し、
前記情報が出力された後に、前記購入量と前記各販売要求の販売可能量とに基づいて、前記各販売要求に対して前記購入量に対する販売量を割り当てる、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする電力取引方法。
(付記6)
前記割り当てる処理は、前記節電要求に対する回答期限より後に、前記各販売要求に対して前記購入量に対する販売量を割り当てる、
ことを特徴とする付記5記載の電力取引方法。
(付記7)
前記判定する処理は、複数の前記購入要求のそれぞれについて、購入の可否を判定し、
前記出力する処理は、前記購入量に係る購入が可能であると判定された前記購入要求について、前記回答を可能とするための情報を出力し、
前記割り当てる処理は、前記購入量の合計と前記各販売要求の販売可能量とに基づいて、前記各販売要求に対して前記購入量の合計に対する販売量を割り当て、
前記各販売要求に対して割り当てられた販売量と、前記複数の購入要求のそれぞれの前記購入量とに基づいて、前記販売要求と前記購入要求とを関連付ける処理、
を前記コンピュータが実行することを特徴とする付記5又は6記載の電力取引方法。
(付記8)
節電要求を受けた電力の購入者からの購入要求に応じ、前記購入要求に示されている購入量と、電力の各販売者からの各販売要求に示されている販売可能量とに基づいて、前記購入量に係る購入の可否を判定し、
前記購入量に係る購入が可能であると判定された場合に、前記購入者による前記節電要求に対する回答を可能とするための情報を出力し、
前記情報が出力された後に、前記購入量と前記各販売要求の販売可能量とに基づいて、前記各販売要求に対して前記購入量に対する販売量を割り当てる、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
(付記9)
前記割り当てる処理は、前記節電要求に対する回答期限より後に、前記各販売要求に対して前記購入量に対する販売量を割り当てる、
ことを特徴とする付記8記載のプログラム。
(付記10)
前記判定する処理は、複数の前記購入要求のそれぞれについて、購入の可否を判定し、
前記出力する処理は、前記購入量に係る購入が可能であると判定された前記購入要求について、前記回答を可能とするための情報を出力し、
前記割り当てる処理は、前記購入量の合計と前記各販売要求の販売可能量とに基づいて、前記各販売要求に対して前記購入量の合計に対する販売量を割り当て、
前記各販売要求に対して割り当てられた販売量と、前記複数の購入要求のそれぞれの前記購入量とに基づいて、前記販売要求と前記購入要求とを関連付ける処理、
を前記コンピュータに実行させることを特徴とする付記8又は9記載のプログラム。
【符号の説明】
【0103】
10 マッチング装置
11 購入確定処理部
12 販売確定処理部
13 約定生成部
20 P2P電力取引サーバ
30 需要家装置
40 アグリゲータ装置
100 ドライブ装置
101 記録媒体
102 補助記憶装置
103 メモリ装置
104 CPU
105 インタフェース装置
B バス
BC ブロックチェーン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18