IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジェイテクトの特許一覧

<>
  • 特許-歩行支援装置 図1
  • 特許-歩行支援装置 図2
  • 特許-歩行支援装置 図3
  • 特許-歩行支援装置 図4
  • 特許-歩行支援装置 図5
  • 特許-歩行支援装置 図6
  • 特許-歩行支援装置 図7
  • 特許-歩行支援装置 図8
  • 特許-歩行支援装置 図9
  • 特許-歩行支援装置 図10
  • 特許-歩行支援装置 図11
  • 特許-歩行支援装置 図12
  • 特許-歩行支援装置 図13
  • 特許-歩行支援装置 図14
  • 特許-歩行支援装置 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】歩行支援装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 3/04 20060101AFI20230208BHJP
【FI】
A61H3/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019018920
(22)【出願日】2019-02-05
(65)【公開番号】P2020124390
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 元気
(72)【発明者】
【氏名】柴田 由之
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-115323(JP,A)
【文献】特開2012-081033(JP,A)
【文献】特開2018-061819(JP,A)
【文献】国際公開第2017/079491(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/032376(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
使用者に把持されて使用者の歩行に伴う腕の振りに合わせて前記フレームに対して前記フレームの前後方向であるフレーム前後方向に移動する左右一対の持ち手と、
それぞれの前記持ち手が設けられて、使用者の歩行に伴う腕の振りに合わせた可動範囲にそれぞれの前記持ち手を案内する左右一対の持ち手案内手段と、
前記フレームに設けられた少なくとも1つの駆動輪を含む複数の車輪と、
前記駆動輪を駆動する走行用駆動手段と、
前記走行用駆動手段を動作させるバッテリと、
前記走行用駆動手段を制御する制御装置と、
を有して、左右の手でそれぞれの前記持ち手を把持した使用者が腕を前後方向に振りながら歩行した際に使用者とともに進行する歩行支援装置であって、
地面に対するそれぞれの前記持ち手の前記フレーム前後方向の速度であるそれぞれの持ち手対地速度に関連する情報を検出する、対地速度検出手段を有し、
前記制御装置は、
前記対地速度検出手段を用いて検出した情報に基づいて、それぞれの前記持ち手対地速度を算出する、持ち手対地速度算出手段と、
前記歩行支援装置の進行方向の速度を正の速度とした場合にそれぞれの前記持ち手対地速度の少なくとも一方が負の速度である場合は、前記歩行支援装置に対して後方に移動された前記持ち手が、地面から見た際に静止して見えるよう、前記歩行支援装置を前記進行方向に加速させるように前記走行用駆動手段を制御する、進行速度調整手段と、
を有する、
歩行支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の歩行支援装置であって、
前記対地速度検出手段は、
地面に対する前記歩行支援装置の前記フレーム前後方向の進行速度を検出する進行速度検出手段と、
それぞれの前記持ち手の状態を検出するそれぞれの持ち手状態検出手段と、
を有しており、
前記制御装置は、
前記持ち手対地速度算出手段にて、
それぞれの前記持ち手状態検出手段からの検出信号に基づいて前記歩行支援装置に対するそれぞれの前記持ち手の前記フレーム前後方向のそれぞれの移動速度を算出し、
それぞれの前記持ち手のそれぞれの前記移動速度と前記進行速度とに基づいてそれぞれの前記持ち手に対するそれぞれの前記持ち手対地速度を算出し、
前記進行速度調整手段にて、
前記歩行支援装置の前記進行方向の速度を正の速度とした場合にそれぞれの前記持ち手対地速度の少なくとも一方が負の速度である場合は、前記歩行支援装置に対して後方に移動された前記持ち手が、地面から見た際に静止して見えるよう、前記歩行支援装置を前記進行方向に加速させる対地速度補正量を算出し、前記進行速度と前記対地速度補正量とに基づいて求めた目標速度となるように前記走行用駆動手段を制御する、
歩行支援装置。
【請求項3】
請求項2に記載の歩行支援装置であって、
それぞれの前記持ち手状態検出手段には、前記歩行支援装置に対するそれぞれの前記持ち手の前記フレーム前後方向の位置を検出可能なそれぞれの持ち手位置検出手段が含まれており、
前記制御装置は、
前記持ち手対地速度算出手段にてそれぞれの前記移動速度を算出する場合、
それぞれの前記持ち手位置検出手段からの検出信号に基づいて、前記歩行支援装置に対するそれぞれの前記持ち手の前記フレーム前後方向の位置であるそれぞれの持ち手前後位置を検出し、
検出したそれぞれの前記持ち手前後位置に基づいて、それぞれの前記移動速度を算出し、
前記持ち手対地速度算出手段にてそれぞれの前記持ち手対地速度を算出する場合、
前記歩行支援装置の前記進行方向の速度を正の速度に設定し、
前記進行方向と同方向の前記移動速度を正の速度、前記進行方向と逆方向の前記移動速度を負の速度に設定し、
前記進行速度に、それぞれの前記移動速度を加算して、それぞれの前記持ち手対地速度を算出する、
歩行支援装置。
【請求項4】
請求項3に記載の歩行支援装置であって、
前記フレームには、前記フレーム前後方向における所定位置に仮想前後基準位置が設定されており、
前記制御装置は、
前記進行速度調整手段にて、
それぞれの前記持ち手前後位置に対する前記フレーム前後方向の中央となる持ち手前後中央位置を求め、前記フレーム前後方向において、前記持ち手前後中央位置を前記仮想前後基準位置に近づけるように前記歩行支援装置の進行速度を調整する中央位置速度補正量を算出し、前記進行速度と前記対地速度補正量と前記中央位置速度補正量とに基づいて求めた目標速度となるように、前記走行用駆動手段を制御する、
歩行支援装置。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか一項に記載の歩行支援装置であって、
前記対地速度補正量は、前記進行速度が大きくなるにしたがって前記対地速度補正量が小さくなるように設定されている、
歩行支援装置。
【請求項6】
請求項2~5のいずれか一項に記載の歩行支援装置であって、
前記制御装置は、
前記進行速度調整手段にて前記対地速度補正量を算出する場合、
前記歩行支援装置の前記進行方向の速度を正の速度とした場合にそれぞれの前記持ち手のそれぞれの前記持ち手対地速度のいずれも負の速度でない場合は、前記歩行支援装置に対して後方に移動された前記持ち手が、地面から見た際に静止して見えるよう、前記歩行支援装置を前記進行方向に減速させる前記対地速度補正量を算出する、あるいは、前記対地速度補正量をゼロとする、
歩行支援装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自立歩行可能な使用者が、より質の高い自然な歩行のトレーニングを行うには、歩行器に寄り掛からず、体幹を真っ直ぐにした正しい姿勢で、脚に同期させて正しく腕を振りながら歩行することが非常に重要である。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の手押し車(歩行支援装置に相当)は、使用者がハンドルバー(固定持ち手に相当)を把持して手押し車を押す力であるハンドル力の大きさと、その方向に応じて、手押し車に対して進行方向の移動をアシストするアシスト力を発生させる。また、手押し車は、回転角センサ及び傾斜角センサを有しており、様々な使用状況における車両本体の進行方向と傾斜角等の情報に基づいて、使用者が安定して手押し車を押して歩行できるように車輪を駆動する。
【0004】
特許文献2に記載の歩行車(歩行支援装置に相当)は、前輪と後輪とメインフレームとサイドフレームとスライダとハンドルと連結棒と、を左右一対で備えている。スライダは、ハンドルが固定されており、サイドフレームに沿って前後にスライド可能とされている。またスライダは、連結棒を介して後輪に接続されている。これにより、使用者が、左右の手で左右のハンドルを把持し、歩行車を前方に押し出し車体を前進させると、左右のハンドルは、後輪の回転運動によって交互に前後動する。つまり、腕を振って歩行する使用者とともに歩行車が移動し、歩行車の動力源は、使用者が腕を前後に振る力である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-12546号公報
【文献】特開2009-106446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
使用者の脚の動きに同期させて使用者が正しく腕を振る質の高い歩行を支援するためには、使用者が腕を振って自分のペースで歩く使用者の歩行速度と、歩行支援装置が進行する進行速度と、を一致させなければならない。
【0007】
特許文献1に記載の手押し車は、使用者の脚の動きに同期させて、正しく使用者の腕を振る質の高い歩行を支援することができない。
【0008】
特許文献2に記載の歩行車は、使用者が腕を振りながら歩行することを支援できる。しかし、使用者が腕を振る腕の振り幅が固定されていることに加えて、車輪を駆動する駆動源が無く、使用者の腕の振りにより歩行車の車輪を駆動(回転)しているので、使用者が腕を振る速度である腕振り速度で、歩行車の進行速度が決まってしまう。従って、歩行車の進行速度を調整するためには、使用者の腕振り速度を調整しなければならない。このため、使用者は、使用者自身の歩行速度と歩行車の進行速度を一致させるために歩行速度や腕振り速度を無理に調整しなければならないので、自分のペースで適切に歩行できない可能性がある。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、使用者の脚の動きに同期させて正しく腕を振る質の高い使用者の歩行を支援するとともに、使用者にとって自然な(楽な)腕振り状態及び歩行速度に応じた進行速度となる、歩行支援装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の第1の発明は、フレームと、使用者に把持されて使用者の歩行に伴う腕の振りに合わせて前記フレームに対して前記フレームの前後方向であるフレーム前後方向に移動する左右一対の持ち手と、それぞれの前記持ち手が設けられて、使用者の歩行に伴う腕の振りに合わせた可動範囲にそれぞれの前記持ち手を案内する左右一対の持ち手案内手段と、前記フレームに設けられた少なくとも1つの駆動輪を含む複数の車輪と、前記駆動輪を駆動する走行用駆動手段と、前記走行用駆動手段を動作させるバッテリと、前記走行用駆動手段を制御する制御装置と、を有して、左右の手でそれぞれの前記持ち手を把持した使用者が腕を前後方向に振りながら歩行した際に使用者とともに進行する歩行支援装置であって、地面に対するそれぞれの前記持ち手の前記フレーム前後方向の速度であるそれぞれの持ち手対地速度に関連する情報を検出する、対地速度検出手段を有し、前記制御装置は、前記対地速度検出手段を用いて検出した情報に基づいて、それぞれの前記持ち手対地速度を算出する、持ち手対地速度算出手段と、前記歩行支援装置の進行方向の速度を正の速度とした場合にそれぞれの前記持ち手対地速度の少なくとも一方が負の速度である場合、前記歩行支援装置を前記進行方向に加速させるように前記走行用駆動手段を制御する、進行速度調整手段と、を有する、歩行支援装置である。
【0011】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係る歩行支援装置であって、前記対地速度検出手段は、地面に対する前記歩行支援装置の前記フレーム前後方向の進行速度を検出する進行速度検出手段と、それぞれの前記持ち手の状態を検出するそれぞれの持ち手状態検出手段と、を有しており、前記制御装置は、前記持ち手対地速度算出手段にて、それぞれの前記持ち手状態検出手段からの検出信号に基づいて前記歩行支援装置に対するそれぞれの前記持ち手の前記フレーム前後方向のそれぞれの移動速度を算出し、それぞれの前記持ち手のそれぞれの前記移動速度と前記進行速度とに基づいてそれぞれの前記持ち手に対するそれぞれの前記持ち手対地速度を算出し、前記進行速度調整手段にて、前記歩行支援装置の前記進行方向の速度を正の速度とした場合にそれぞれの前記持ち手対地速度の少なくとも一方が負の速度である場合、前記歩行支援装置を前記進行方向に加速させる対地速度補正量を算出し、前記進行速度と前記対地速度補正量とに基づいて求めた目標速度となるように前記走行用駆動手段を制御する、歩行支援装置である。
【0012】
次に、本発明の第3の発明は、上記第2の発明に係る歩行支援装置であって、それぞれの前記持ち手状態検出手段には、前記歩行支援装置に対するそれぞれの前記持ち手の前記フレーム前後方向の位置を検出可能なそれぞれの持ち手位置検出手段が含まれており、前記制御装置は、前記持ち手対地速度算出手段にてそれぞれの前記移動速度を算出する場合、それぞれの前記持ち手位置検出手段からの検出信号に基づいて、前記歩行支援装置に対するそれぞれの前記持ち手の前記フレーム前後方向の位置であるそれぞれの持ち手前後位置を検出し、検出したそれぞれの前記持ち手前後位置に基づいて、それぞれの前記移動速度を算出し、前記持ち手対地速度算出手段にてそれぞれの前記持ち手対地速度を算出する場合、前記歩行支援装置の前記進行方向の速度を正の速度に設定し、前記進行方向と同方向の前記移動速度を正の速度、前記進行方向と逆方向の前記移動速度を負の速度に設定し、前記進行速度に、それぞれの前記移動速度を加算して、それぞれの前記持ち手対地速度を算出する、歩行支援装置である。
【0013】
次に、本発明の第4の発明は、上記第3の発明に係る歩行支援装置であって、前記フレームには、前記フレーム前後方向における所定位置に仮想前後基準位置が設定されており、前記制御装置は、前記進行速度調整手段にて、それぞれの前記持ち手前後位置に対する前記フレーム前後方向の中央となる持ち手前後中央位置を求め、前記フレーム前後方向において、前記持ち手前後中央位置を前記仮想前後基準位置に近づけるように前記歩行支援装置の進行速度を調整する中央位置速度補正量を算出し、前記進行速度と前記対地速度補正量と前記中央位置速度補正量とに基づいて求めた目標速度となるように、前記走行用駆動手段を制御する、歩行支援装置である。
【0014】
次に、本発明の第5の発明は、上記第2の発明~第4の発明のいずれか1つに係る歩行支援装置であって、前記対地速度補正量は、前記進行速度が大きくなるにしたがって前記対地速度補正量が小さくなるように設定されている、歩行支援装置である。
【0015】
次に、本発明の第6の発明は、上記第2の発明~第5の発明のいずれか1つに係る歩行支援装置であって、前記制御装置は、前記進行速度調整手段にて前記対地速度補正量を算出する場合、前記歩行支援装置の前記進行方向の速度を正の速度とした場合にそれぞれの前記持ち手のそれぞれの前記持ち手対地速度のいずれも負の速度でない場合、前記歩行支援装置を前記進行方向に減速させる前記対地速度補正量を算出する、あるいは、前記対地速度補正量をゼロとする、歩行支援装置である。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明によれば、フレームに対して前後方向に移動する持ち手の対地速度が負の速度である場合(つまり、前方に向かって走行している歩行支援装置を「地面から見た際に」、前後に移動している持ち手が後方に移動している場合)、進行方向に加速させる。これにより、ストックを突きながら歩行する状態を模擬することが可能となり、使用者の脚の動きに同期させて正しく腕を振る質の高い使用者の歩行を支援することができる。また、前後に振る腕の振り幅や、歩行速度が予め決められている訳ではないので、使用者にとって自然な(楽な)腕振り状態及び歩行速度に応じた進行速度とすることができる。
【0017】
第2の発明によれば、地面に対する歩行支援装置のフレーム前後方向の速度である進行速度と、歩行支援装置に対するそれぞれの持ち手のフレーム前後方向の速度であるそれぞれの移動速度とから、それぞれの持ち手対地速度を適切に算出することができる。また、進行速度と対地速度補正量に基づいた目標速度となるように走行用駆動手段を制御することで、歩行支援装置を適切に加速させることができる。
【0018】
第3の発明によれば、地面に対するそれぞれの持ち手の移動速度であるそれぞれの持ち手対地速度を、適切かつ容易に求めることができる。
【0019】
第4の発明によれば、歩行支援装置の進行速度を調整するための補正量として、対地速度補正量に加えて、持ち手の前後方向位置に基づいた中央位置速度補正量を用いることで、歩行支援装置の進行速度を、より適切に使用者の歩行速度と一致させることができる。
【0020】
第5の発明によれば、歩行支援装置の進行速度が大きくなるにしたがって対地速度補正量を小さくすることで、使用者の歩行速度に対して歩行支援装置が必要以上に加速することを抑制することができる。
【0021】
第6の発明によれば、歩行支援装置を加速させるべきではない場合(いずれの持ち手の対地速度も負の速度でない場合(正の速度またはゼロ(静止)の場合))、適切に歩行支援装置を減速させることができる。従って、腕を振りながら歩行する使用者に対して、腕振りに応じて歩行支援装置の加速と減速を繰り返すことで、使用者の歩行速度と歩行支援装置の進行速度とを適切に一致させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】歩行支援装置の全体構成を説明する斜視図である。
図2】持ち手及びレールの構成及び機能を説明する斜視図である。
図3図2におけるIII-III断面図である。
図4図2におけるIV-IV断面図である。
図5】歩行支援装置の制御装置の入出力を説明するブロック図である。
図6】歩行支援装置の制御装置の処理手順(全体処理)を説明するフローチャートである。
図7図6に示す全体処理中の入力処理の処理手順を説明するフローチャートである。
図8図7に示す入力処理中の右(左)移動速度、移動方向、振幅算出処理の処理手順を説明するフローチャートである。
図9図6に示す全体処理中の持ち手制御処理の処理手順を説明するフローチャートである。
図10図6に示す全体処理中の対地速度処理の処理手順を説明するフローチャートである。
図11図6に示す全体処理中の中央位置処理の処理手順を説明するフローチャートである。
図12図6に示す全体処理中の速度調整処理の処理手順を説明するフローチャートである。
図13】歩行支援装置の平面図であり、持ち手前後位置、持ち手前後中央位置、仮想前後基準位置等を説明する図である。
図14】前後方向偏差・中央位置速度補正量特性の例を説明する図である。
図15】持ち手を把持して腕を前後に振りながら歩行する使用者と、歩行支援装置及び持ち手の位置、の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。なお、図中にX軸、Y軸、Z軸が記載されている場合、各軸は互いに直交している。そして図1では、Z軸方向は、前輪60FRから後輪60RRへの方向を示し、X軸方向は、フレーム50における左から右へ向かう方向を示している。つまり、歩行支援装置10に対して、X軸方向を“右”、X軸方向に対して反対方向を“左”とし、Z軸方向の反対方向を“前”、Z軸方向を“後”とする。また、Y軸方向を“上”、Y軸方向の反対方向を“下”とする。また以降では、フレームの前後方向を「フレーム前後方向」と記載する。
【0024】
●[歩行支援装置10の概略全体構成(図1)]
図1を用いて、本発明の歩行支援装置10の概略全体構成を説明する。歩行支援装置10は、持ち手20R、20Lと、レール30R、30Lと、制御装置40と、フレーム50と、前輪60FR、60FLと、後輪60RR、60RLと、走行用駆動手段64R、64L(例えば電動モータ)と、コントロールパネル70と、バッテリBと、を有している。
【0025】
フレーム50は、図1に示すように、左右方向に対して対称の形状をしており、使用者はフレーム50の開放されている側(後方)からレール30Rとレール30Lとの間に入り、歩行支援装置10を操作する。
【0026】
前輪60FR、60FL(車輪に相当)は、フレーム50における前方下端に設けられた従動輪(旋回自在なキャスタ輪)である。後輪60RR、60RL(車輪に相当)は、フレーム50における下端かつ後端に設けられた駆動輪であり、ベルト62を介して走行用駆動手段64R、64Lでそれぞれ駆動される。図1に示す例では、駆動輪である後輪は左右一対であって、それぞれ独立に走行用駆動手段により駆動される例を示している。なお、後輪60RR、60RLは、フレーム50の後端に設けられているので、後輪60RR、60RLの後方にフレームは突出していない(後輪の後方に延出部を有していない)。なお、走行用駆動手段64L、64Rには、エンコーダ等の進行速度検出手段64LE、64REが設けられており、制御装置40は、当該進行速度検出手段64LE、64RE(対地速度検出手段に相当)からの検出信号に基づいて、地面に対する歩行支援装置10のフレーム前後方向の進行速度を検出することができる。
【0027】
フレーム50の右側にはレール30R、左側にはレール30Lがそれぞれ設けられている。レール30R、30Lのそれぞれには、上方に突出した持ち手20R、20Lがそれぞれ設けられている。持ち手20R、20Lは、使用者の歩行に伴う腕の振りに合わせたレール30R、30Lのそれぞれの可動範囲内をフレーム前後方向に移動する。レールと持ち手は、左右一対で設けられている。レール30R、30Lは、フレーム50に設けられて、フレーム前後方向に延びるように、使用者(歩行支援装置10を使用中の使用者)の左右に配置される。左右一対の持ち手20R、20Lは、使用者に把持されて使用者の歩行に伴う腕の振りに合わせてフレーム50に対してフレーム前後方向に移動する。また左右一対のレール30R、30L(持ち手案内手段に相当)は、それぞれの持ち手が設けられて、使用者の歩行に伴う腕振りに合わせた可動範囲にそれぞれの持ち手を案内する。
【0028】
コントロールパネル70は、図1に示すように、例えばフレーム50の上部であって使用者による操作が容易な位置に設けられている。コントロールパネル70は、メインスイッチ72と、アシスト量調整ボリューム74aと、負荷量調整ボリューム74bと、移動負荷制御モード切替76と、モニター78と、を有している。メインスイッチ72は、歩行支援装置10のメインのスイッチであり、オンにするとバッテリBから制御装置40と走行用駆動手段64R、64Lへ電力を供給し、歩行支援装置10の操作を可能にする。
【0029】
移動負荷制御モード切替76は、後述する持ち手用駆動手段32R、32L(例えば電動モータであり、図2参照)によるレール30R、30Lに対する持ち手20R、20Lの移動をアシストするアシストモード又は移動に負荷を掛ける負荷モードを切り替える。例えば移動負荷制御モード切替76は、持ち手の移動をアシストする「アシストモード」と、持ち手の移動に負荷を加える「負荷モード」と、持ち手の移動に対してアシストも負荷の付与も行わない「ノーマルモード」と、の3つのモードの切り替えを可能とする。また、アシスト量調整ボリューム74aはアシストモードにおけるアシスト量を、負荷量調整ボリューム74bは負荷モードにおける負荷量を、それぞれ調整するボリュームである。モニター78は、種々の状態を表示するモニターで、例えばバッテリBの充電量、各種モードの設定、動作の状態等を表示する。
【0030】
3軸加速度・角速度センサ52は、フレーム50に設けられており、X軸・Y軸・Z軸の3方向の軸のそれぞれに対して加速度を計測するとともに、3方向のそれぞれの軸を中心とした回転の角速度を計測し、計測結果に基づいた検出信号を制御装置40に出力する。例えば3軸加速度・角速度センサ52は、歩行支援装置10が傾斜面を進行している場合、X軸・Y軸・Z軸のそれぞれに対する歩行支援装置10の傾斜角度に応じた検出信号を制御装置40に出力する。また、例えば3軸加速度・角速度センサ52は、歩行支援装置10の車体に加えられた加速度(例えば、車体への衝撃)を検出し、検出した加速度に応じた検出信号を制御装置40に出力する。また、例えば3軸加速度・角速度センサ52は、歩行支援装置10の車体のピッチ角速度(X軸回りの角速度)、ヨー角速度(Y軸回りの角速度)、ロール角速度(Z軸回りの角速度)を検出し、検出した角速度に応じた検出信号を制御装置40に出力する。制御装置40は、3軸加速度・角速度センサ52からの検出信号に基づいて、歩行支援装置10のX軸・Y軸・Z軸に対するそれぞれの傾斜角度、加速度(衝撃)の大きさ、ピッチ角速度、ヨー角速度、ロール角速度を検出することができる。
【0031】
●[レール30R及び持ち手20Rの詳細な構造(図2図4)]
図2図4を用いて、歩行支援装置10におけるレール30R及び持ち手20Rの構造について詳細に説明する。なお、歩行支援装置10は、コントロールパネル70と制御装置40とバッテリBを除き、フレーム50における左右において対称な構造であるため、左側の説明を省略して主に右側の構造について説明する。図2は、持ち手20R及びレール30Rの構成及び機能を説明する斜視図である。また、図3は、図2におけるIII-III断面図であり、図4は、図2におけるIV-IV断面図である。
【0032】
レール30Rは、図2に示すように、持ち手20Rと、プーリーPB、PFと、ワイヤーWと、を有している。レール30Rは、上方向に凹状に湾曲した形状を有し、前後方向に沿って上方向に開口するレールスリット部38を有している。また、レール30Rは、前後方向における両端に、プーリーPB、PFがそれぞれ設けられている。ワイヤーWは、前方に配置されたプーリーPFと後方に配置されたプーリーPBに掛けられ、それぞれの回転を連動させる。
【0033】
持ち手用駆動手段32Rと右持ち手位置検出手段34R(例えばエンコーダ)と持ち手移動制限手段35Rは、プーリーPFに対して同軸に設けられている。図4に示すように、アンカー部22Bのワイヤー接続部WAにはワイヤーが固定され、ワイヤー孔WHにはワイヤーが固定されることなく挿通されている。そしてアンカー部22Bには持ち手20Rが接続されている。これにより、持ち手用駆動手段32Rは、プーリーPFを回転させてワイヤーWをプーリー間で回転させることで、持ち手20Rの移動をアシスト又は、持ち手20Rの移動に負荷を掛けることができる。
【0034】
右持ち手位置検出手段34Rは、レール30Rに対する持ち手20Rの移動に伴うプーリーPFの回転量及び回転方向、すなわち持ち手20Rの移動量及び移動方向を含む検出信号を制御装置40へ出力する。制御装置40は、右持ち手位置検出手段34Rからの検出信号に基づいて、レール30R上における持ち手20Rの位置(前後方向の位置)を検出することができる。
【0035】
持ち手20Rは、図3に示すように、持ち手軸部21aと、軸部嵌入孔21bと、スライダ22と、グリップ部26aと、スイッチグリップ部26b、26cと、ブレーキレバーBKLと、を有している。また、スライダ22は、持ち手保持部22Aとアンカー部22Bを有している。
【0036】
図3に示すように、付勢手段24の一方端が持ち手軸部21aに接続され、他方端が軸部嵌入孔21bの底部に接続されている。持ち手軸部21aの付勢手段24が接続されている端部には円周方向に鍔部21cが設けられている。また、軸部嵌入孔21bにおける開口の内側壁面には、内鍔部20cが設けられている。これにより、グリップ部26aは、持ち手軸部21aと分離することなく、持ち手軸部21aの長手方向に沿って上下にスライド可能である。すなわち、持ち手20Rは、突出方向への伸縮を可能とする伸縮機構を有している。
【0037】
持ち手軸部21aの付勢手段24が接続されていない側には、持ち手支持軸JKが設けられている。持ち手支持軸JKは、軸の先端が略球状に形成されており、持ち手保持部22Aに設けられた凹部とボールジョイントを形成する。これにより、持ち手20Rは、持ち手保持部22Aに対して開口で規制される範囲内で前後左右に傾けることができる(図3図4参照)。
【0038】
右持ち手傾き検出手段33Rは、持ち手保持部22Aの開口において設けられ前後左右から持ち手支持軸JKに対応させて配置されている。右持ち手傾き検出手段33Rは、例えば持ち手支持軸JK側面と持ち手保持部22Aの開口との間にバネを設け、そのバネの伸縮伸長による圧力を検出する圧力検出手段(例えば圧力センサ)である。そして右持ち手傾き検出手段33Rは、バネの伸縮伸長による圧力に応じた検出信号を制御装置40に出力する。制御装置40は、右持ち手傾き検出手段33Rからの検出信号に基づいて、持ち手保持部22Aに対する持ち手20Rの傾斜方向や傾斜角度を検出することができる。
【0039】
スイッチグリップ部26bは、図3に示すように、グリップ付勢手段28(例えばバネ)により、グリップ部26aとスイッチグリップ部26bとの間に所定の隙間を生じるように、持ち手20Rの前方側に設けられている。把持検出手段25RFは、圧力検出手段(例えば圧力センサ)であり、使用者が持ち手20Rを把持した際、持ち手20Rの前方側の把持力に応じた検出信号を出力する。また、把持検出手段25RFは、使用者が持ち手20Rを把持して、把持した持ち手20Rを前方から後方へと移動させた場合、持ち手20Rの前方側の把持力と、持ち手20Rの前方側を後方に押して持ち手20Rを後方に引っ張る引張力と、に応じた検出信号を出力する。制御装置40は、把持検出手段25RFからの検出信号に基づいて、使用者の把持力、引張力を検出することができる。
【0040】
スイッチグリップ部26cは、図3に示すように、グリップ付勢手段28(例えばバネ)により、グリップ部26aとスイッチグリップ部26cとの間に所定の隙間を生じるように、持ち手20Rの後方側に設けられている。把持検出手段25RBは、圧力検出手段(例えば圧力センサ)であり、使用者が持ち手20Rを把持した際、持ち手20Rの後方側の把持力に応じた検出信号を出力する。また、把持検出手段25RBは、使用者が持ち手20Rを把持して、把持した持ち手20Rを後方から前方へと移動させた場合、持ち手20Rの後方側の把持力と、持ち手20Rの後方側を前項に押して持ち手20Rを前項に押し出す押出力と、に応じた検出信号を出力する。制御装置40は、把持検出手段25RBからの検出信号に基づいて、使用者の把持力、押出力を検出することができる。
【0041】
ブレーキレバーBKLは、一方端がグリップ部26aにおける前側下方に接続されている。使用者が、ブレーキレバーBKLを把持してグリップ部26a側に引くと、前輪60FR、60FL、後輪60RR、60RLの回転をロックし、そのロック状態が維持され、さらに引くとロックを解除する機構を有する(図示省略)。
【0042】
レール30Rには、図2に示すように、フレーム50に対する持ち手20Rの移動の許可と禁止を行う持ち手移動制限手段35Rが設けられている。例えば持ち手移動制限手段35Rは、持ち手用駆動手段32R(例えば電動モータ)の回転をロックするロック機構を有し、持ち手用駆動手段32Rの回転をロックすることで持ち手の移動を禁止する。また例えば、持ち手移動制限手段35Rは、持ち手用駆動手段32Rの回転のロックを解除することで、レールに対する(すなわち、フレームに対する)持ち手の移動を許可する。また、このロック機構として、例えばパウダーブレーキを用いても良いし、持ち手用駆動手段32Rに直流電流を印加してロックさせても良い(この場合、持ち手用駆動手段が持ち手移動制限手段となる)。
【0043】
アンカー部22Bに設けられたワイヤー孔WHには、図2図4に示すように、ワイヤーWの一方が挿通されており、ワイヤーWの他方がワイヤー接続部WAに接続されている(固定されている)。また、持ち手20Rは、持ち手保持部22Aとアンカー部22Bを接続するくびれた部分がレールスリット部38を摺動して、レール30R上を移動できる。
【0044】
信号ケーブル36は、一方がアンカー部22Bに接続されて、他方が制御装置40に接続されており、把持検出手段25RF、25RBと、右持ち手位置検出手段34Rと、右持ち手傾き検出手段33Rからの検出信号を制御装置40へ伝達する。信号ケーブル36は、例えば、フレキシブルケーブル等の柔軟性を有するケーブルであれば良い。
【0045】
上記の把持検出手段25RF、25RB、右持ち手位置検出手段34R、右持ち手傾き検出手段33R(及び把持検出手段25LF、25LB、左持ち手位置検出手段34L、左持ち手傾き検出手段33L)は、持ち手状態検出手段に相当している。そして、右持ち手位置検出手段34R、左持ち手位置検出手段34Lは、さらに、対地速度検出手段にも相当している。
【0046】
●[制御装置40の入出力(図5)]
図5は、歩行支援装置10の制御装置40(例えばCPUを備えた制御装置)の入出力を説明するブロック図である。図5に示すように、制御装置40(例えばCPU)は、持ち手状態検出手段42からの入力情報(検出信号)と、コントロールパネル70からの入力情報と、3軸加速度・角速度センサ52からの入力情報(検出信号)に基づいて、持ち手用駆動手段32R、32Lと、持ち手移動制限手段35R、35Lと、走行用駆動手段64R、64Lを制御する。持ち手状態検出手段42は、把持検出手段25RF、25LF、25RB、25LBと、右持ち手傾き検出手段33Rと、左持ち手傾き検出手段33Lと、右持ち手位置検出手段34Rと、左持ち手位置検出手段34Lと、から構成されている。また、記憶手段44は、情報を記憶する手段であり、制御装置40の求めに応じて情報の記憶と読み出しを行う。また制御装置40には、コントロールパネル70のメインスイッチ72、アシスト量調整ボリューム74a、負荷量調整ボリューム74b、移動負荷制御モード切替76から信号が入力され、制御装置40はモニター78に画像信号等を出力する。
【0047】
なお、持ち手対地速度算出手段40A、進行速度調整手段40B、装置対地速度算出手段40C、持ち手移動速度算出手段40D、最終対地速度算出手段40E、対地速度補正量算出手段40F、持ち手前後中央位置算出手段40G、中央位置速度補正量算出手段40H、最終速度調整手段40Iの詳細については後述する。
【0048】
●[制御装置40の処理手順(図6図12)]
図6は、制御装置40の処理手順における全体処理を示している。使用者がメインスイッチ72をONにすると、所定時間間隔(例えば数[ms]間隔)で、図6に示す処理が起動される。制御装置40は、図6に示す処理が起動されると、ステップS010へと処理を進める。なお以下では、使用者が歩行支援装置とともに前進するように歩行する場合の例を説明する。
【0049】
ステップS010にて制御装置40は、SB100(入力処理)を実行してステップS030に処理を進める。なおSB100(入力処理)の詳細については後述する。
【0050】
ステップS030にて制御装置40は、SB300(持ち手制御処理)を実行してステップS040に処理を進める。なおSB300(持ち手制御処理)の詳細については後述する。
【0051】
ステップS040にて制御装置40は、SB400(対地速度処理)を実行してステップS050に処理を進める。なおSB400(対地速度処理)の詳細については後述する。
【0052】
ステップS050にて制御装置40は、SB500(中央位置処理)を実行してステップS060に処理を進める。なおSB500(中央位置処理)の詳細については後述する。
【0053】
ステップS060にて制御装置40は、SB600(速度調整処理)を実行して処理を終了する(リターンする)。なおSB600(速度調整処理)の詳細については後述する。
【0054】
●[SB100:入力処理の詳細(図7)]
次に図7を用いて、SB100(入力処理)の詳細について説明する。図6に示すステップS010にてSB100を実行する際、制御装置40は、図7に示すステップSB010へ処理を進める。
【0055】
ステップSB010にて制御装置40は、記憶手段に記憶しているモード切替、アシスト量、負荷量、右前圧力、右後圧力、右持ち手前後位置、右傾斜、右進行速度、左前圧力、左後圧力、左持ち手前後位置、左傾斜、左進行速度、車体傾斜、ピッチ角速度、ヨー角速度、ロール角速度、を更新してステップSB020に処理を進める。
【0056】
具体的には、制御装置40は、移動負荷制御モード切替76(図1参照)からの入力情報に基づいて、モード切替に、「アシストモード」、「負荷モード」、「ノーマルモード」のいずれかを記憶する。また制御装置40は、アシスト量調整ボリューム74a(図1参照)からの入力情報に基づいて求めたアシスト調整量をアシスト量に記憶し、負荷量調整ボリューム74b(図1参照)からの入力情報に基づいて求めた負荷調整量を負荷量に記憶する。また制御装置40は、右の持ち手20R(図1参照)の把持検出手段25RF(図3参照)からの検出信号に基づいて求めた圧力を右前圧力に記憶し、右の持ち手20Rの把持検出手段25RB(図3参照)からの検出信号に基づいて求めた圧力を右後圧力に記憶する。また制御装置40は、右持ち手位置検出手段34R(図2参照)からの検出信号に基づいて求めた、レール30R上における持ち手20Rの位置、を右持ち手前後位置に記憶する。また制御装置40は、右持ち手傾き検出手段33R(図3図4参照)からの検出信号に基づいて求めた、右の持ち手20Rの傾斜角度や傾斜方向等の傾斜情報を右傾斜に記憶する。また走行用駆動手段64R、64Lのそれぞれには、例えばエンコーダ等の進行速度検出手段64RE、64LEが設けられている。例えば、制御装置40は、(右)走行用駆動手段64Rの(右)進行速度検出手段64REからの検出信号に基づいて、(右)走行用駆動手段64Rの回転数を検出して後輪60RRの回転数から後輪60RRによる進行速度を検出して右進行速度に記憶する。
【0057】
同様に制御装置40は、左前圧力、左後圧力、左持ち手前後位置、左傾斜、左進行速度、を記憶する。また制御装置40は、3軸加速度・角速度センサ52(図1参照)からの検出信号に基づいて求めた歩行支援装置10の車体の傾斜角度や傾斜方向等の傾斜情報を車体傾斜に記憶する。また制御装置40は、3軸加速度・角速度センサ52(図1参照)からの検出信号に基づいて求めた歩行支援装置10のX軸回りの角速度をピッチ角速度に記憶し、Y軸回りの角速度をヨー角速度に記憶し、Z軸回りの角速度をロール角速度に記憶する。
【0058】
ステップSB020にて制御装置40は、SBA00(右(左)移動速度、移動方向、振幅算出処理)を実行してステップSB030に処理を進める。なおSBA00(右(左)移動速度、移動方向、振幅算出処理)の詳細については後述する。
【0059】
ステップSB030にて制御装置40は、ステップSB010にて記憶した右進行速度及び左進行速度に基づいて、地面に対する歩行支援装置のフレーム前後方向の進行速度を求めて記憶し、ステップSB040に処理を進める。例えば制御装置40は、進行速度=(右進行速度+左進行速度)/2にて、進行速度を求める。
【0060】
ステップSB030の処理を実行している制御装置40は、進行速度検出手段からの検出信号に基づいて、地面に対する歩行支援装置10のフレーム前後方向の進行速度を算出する、装置対地速度算出手段40C(図5参照)に相当する。
【0061】
ステップSB040にて制御装置40は、持ち手20R、20Lがともに把持されているか否か(右把持力>所定把持力、かつ、左把持力>所定把持力であるか否か)を判定し、ともに把持されている場合(Yes)はステップSB050に処理を進め、そうでない場合(No)はステップSB070Dに処理を進める。
【0062】
ステップSB050に処理を進めた場合、制御装置40は、モード切替がアシストモードであるか否かを判定し、アシストモードである場合(Yes)はステップSB070Aに処理を進め、そうでない場合(No)はステップSB060に処理を進める。
【0063】
ステップSB060に処理を進めた場合、制御装置40は、モード切替が負荷モードであるか否かを判定し、負荷モードである場合(Yes)はステップSB070Bに処理を進め、そうでない場合(No)はステップSB070Cに処理を進める。
【0064】
ステップSB070Aに処理を進めた場合、制御装置40は、動作モードにアシストモードを記憶して処理を終了する(リターンする)。
【0065】
ステップSB070Bに処理を進めた場合、制御装置40は、動作モードに負荷モードを記憶して処理を終了する(リターンする)。
【0066】
ステップSB070Cに処理を進めた場合、制御装置40は、動作モードにノーマルモードを記憶して処理を終了する(リターンする)。
【0067】
ステップSB070Dに処理を進めた場合、制御装置40は、動作モードに待機モードを記憶して処理を終了する(リターンする)。
【0068】
●[SBA00:右(左)移動速度、移動方向、振幅算出処理の詳細(図8)]
次に図8を用いて、SBA00(右(左)移動速度、移動方向、振幅算出処理)の詳細について説明する。図7に示すステップSB020にてSBA00を実行する際、制御装置40は、図8に示すステップSBA10へ処理を進める。
【0069】
ステップSBA10にて制御装置40は、右持ち手移動速度に、「(今回処理時の右持ち手前後位置(今回右持ち手前後位置)-前回処理時の右持ち手前後位置(前回右持ち手前後位置))/時間」にて求めた速度を記憶して、ステップSBA15に処理を進める。なお、この場合の「時間」は、図6の処理を起動する間隔の時間である(例えば10[ms]間隔で起動する場合は10[ms])。また、進行方向が前進の場合、今回右持ち手前後位置が前回右持ち手前後位置よりも前方である場合では右持ち手移動速度は「正」の速度となり、今回右持ち手前後位置が前回右持ち手前後位置よりも後方である場合では右持ち手移動速度は「負」の速度となる。
【0070】
ステップSBA15にて制御装置40は、前回処理時の右持ち手移動速度(前回右持ち手移動速度)=正(0より大きい)、かつ、今回処理時の右持ち手移動速度(今回右持ち手移動速度)=負(0以下)であるか否かを判定し、満足する場合(Yes)はステップSBA25Aに処理を進め、満足しない場合(No)はステップSBA20に処理を進める。
【0071】
ステップSBA25Aに処理を進めた場合、制御装置40は、今回右持ち手前後位置を右前端位置に記憶してステップSBA30に処理を進める。
【0072】
ステップSBA20に処理を進めた場合、制御装置40は、前回処理時の右持ち手移動速度(前回右持ち手移動速度)=負(0未満)、かつ、今回処理時の右持ち手移動速度(今回右持ち手移動速度)=正(0以上)であるか否かを判定し、満足する場合(Yes)はステップSBA25Bに処理を進め、満足しない場合(No)はステップSBB10に処理を進める。
【0073】
ステップSBA25Bに処理を進めた場合、制御装置40は、今回右持ち手前後位置を右後端位置に記憶してステップSBA30に処理を進める。
【0074】
ステップSBA30に処理を進めた場合、制御装置40は、右前端位置-右後端位置(右前端位置>右後端位置)にて求めた長さを右振幅に記憶し、ステップSBB10に処理を進める。
【0075】
ステップSBB10~SBB30の処理は、左の持ち手20Lの左移動速度、左前端位置、左後端位置、左振幅を求める処理であり、右の持ち手20Rの右移動速度、右前端位置、右後端位置、右振幅を求めるステップSBA10~SBA30と同様であるので説明を省略する。
【0076】
ステップSBA10、SBB10の処理を実行している制御装置40は、それぞれの持ち手状態検出手段(この場合、右持ち手位置検出手段34Rと左持ち手位置検出手段34L)からの検出信号に基づいて、歩行支援装置10に対するそれぞれの持ち手のフレーム前後方向の移動速度(右持ち手移動速度と左持ち手移動速度)を算出する、持ち手移動速度算出手段40D(図5参照)に相当する。
【0077】
●[SB300:持ち手制御処理の詳細(図9)]
次に図9を用いて、SB300(持ち手制御処理)の詳細について説明する。図6に示すステップS030にてSB300を実行する際、制御装置40は、図9に示すステップSB310へ処理を進める。
【0078】
ステップSB310にて制御装置40は、前回処理時の動作モードが待機モードであり、かつ、今回処理時の動作モードが待機モードでない、か否かを判定し、満足する場合(Yes)はステップSB315に処理を進め、そうでない場合(No)はステップSB320Aに処理を進める。
【0079】
ステップSB315に処理を進めた場合、制御装置40は、持ち手移動制限手段35R、35L(図2参照)を「許可(ロック解除)」に制御してステップSB320Aに処理を進める(ステップSB345Dでの「禁止(ロック)」を解除する)。制御装置40は、待機モード時にステップSB345Dにて「禁止(ロック)」していた持ち手移動制限手段35R、35L(図2参照)を、待機モードが解除された時点で「許可(ロック解除)」する。
【0080】
ステップSB320Aに処理を進めた場合、制御装置40は、動作モードがアシストモードであるか否かを判定し、アシストモードである場合(Yes)はステップSB345Aに処理を進め、そうでない場合(No)はステップSB320Bに処理を進める。
【0081】
ステップSB345Aに処理を進めた場合、制御装置40は、持ち手20R、20Lのそれぞれの移動方向(右移動方向、左移動方向)に対して、アシスト量に応じたアシストをするように(順方向に)、それぞれの持ち手用駆動手段((右)持ち手用駆動手段32R、(左)持ち手用駆動手段32L(図2参照))を制御して、処理を終了する(リターンする)。
【0082】
ステップSB320Bに処理を進めた場合、制御装置40は、動作モードが負荷モードであるか否かを判定し、負荷モードである場合(Yes)はステップSB345Bに処理を進め、そうでない場合(No)はステップSB320Cに処理を進める。
【0083】
ステップSB345Bに処理を進めた場合、制御装置40は、持ち手20R、20Lのそれぞれの移動方向(右移動方向、左移動方向)に対して、負荷量に応じた負荷を付与するように(逆方向に)、それぞれの持ち手用駆動手段((右)持ち手用駆動手段32R、(左)持ち手用駆動手段32L(図2参照))を制御して、処理を終了する(リターンする)。
【0084】
ステップSB320Cに処理を進めた場合、制御装置40は、動作モードがノーマルモードであるか否かを判定し、ノーマルモードである場合(Yes)はステップSB345Cに処理を進め、そうでない場合(No)はステップSB345Dに処理を進める。
【0085】
ステップSB345Cに処理を進めた場合、制御装置40は、それぞれの持ち手用駆動手段((右)持ち手用駆動手段32R、(左)持ち手用駆動手段32L(図2参照))を空回り状態にして(アシストも負荷の付与も行わない)、処理を終了する(リターンする)。
【0086】
ステップSB345Dに処理を進めた場合、制御装置40は、それぞれの持ち手用駆動手段((右)持ち手用駆動手段32R、(左)持ち手用駆動手段32L(図2参照))を空回り状態にする(アシストも負荷の付与も行わない)。そして制御装置40は、それぞれの持ち手移動制限手段((右)持ち手移動制限手段35R、(左)持ち手移動制限手段35L(図2参照))を「禁止(ロック)」に制御して、処理を終了する(リターンする)。
【0087】
●[SB400:対地速度処理の詳細(図10)]
次に図10を用いて、SB400(対地速度処理)の詳細について説明する。図6に示すステップS040にてSB400を実行する際、制御装置40は、図10に示すステップSB410へ処理を進める。
【0088】
ステップSB410にて制御装置40は、「進行速度+右持ち手移動速度」を求めて右持ち手対地速度に記憶し、「進行速度+左持ち手移動速度」を求めて左持ち手対地速度に記憶し、ステップSB420に処理を進める。なお、「進行速度」は、地面に対する歩行支援装置のフレーム前後方向の速度であり、「右持ち手移動速度」は、歩行支援装置に対する(右)持ち手20Rのフレーム前後方向の移動速度であり、「右持ち手対地速度」は、地面に対する(右)持ち手20Rのフレーム前後方向の移動速度である。また、「右持ち手移動速度」は、「進行方向」と同方向が「正」の速度に設定され、「進行方向」と逆方向が「負」の速度に設定されている。つまり、進行速度が前方へ向かう速度である場合(進行方向が前進の場合)、前方へ向かう右持ち手移動速度は「正」であり、後方へ向かう右持ち手移動速度は「負」である。また、左持ち手対地速度も同様にして求められる。
【0089】
ステップSB410の処理を実行している制御装置40は、それぞれの持ち手の移動速度と、進行速度とに基づいて、地面に対するそれぞれの持ち手の速度であるそれぞれの持ち手対地速度(右持ち手対地速度と左持ち手対地速度)を算出する、最終対地速度算出手段40E(図5参照)に相当する。そして図5に示すように、持ち手対地速度算出手段40Aは、上述した装置対地速度算出手段40C、持ち手移動速度算出手段40D、最終対地速度算出手段40Eを含んでいる。従って、制御装置40は、対地速度検出手段(この場合、進行速度検出手段64RE、64LE、右持ち手位置検出手段34R、左持ち手位置検出手段34L)を用いて検出した情報に基づいて、それぞれの持ち手対地速度(右持ち手対地速度、左持ち手対地速度)を算出する、持ち手対地速度算出手段40A(図5参照)を有している。
【0090】
ステップSB420にて制御装置40は、右持ち手対地速度が負(0未満)であるか否かを判定し、負(0未満)である場合(Yes)はステップSB440に処理を進め、そうでない場合(No)はステップSB430に処理を進める。
【0091】
ステップSB430に処理を進めた場合、制御装置40は、左持ち手対地速度が負(0未満)であるか否かを判定し、負(0未満)である場合(Yes)はステップSB440に処理を進め、そうでない場合(No)はステップSB450Bに処理を進める。
【0092】
ステップSB440に処理を進めた場合、制御装置40は、進行速度に応じた重み係数を算出してステップSB450Aに処理を進める。例えば重み係数は、進行速度が大きくなるにしたがって小さくなるように設定されている。
【0093】
ステップSB450Aにて制御装置40は、予め設定された加速補正量に重み係数を乗算して求めた値を、対地速度補正量に記憶して処理を終了する(リターンする)。なお、加速補正量は、種々の実験やシミュレーション等によって決められている。この場合の対地速度補正量は、0より大きな値(正の値であり、加速するための補正量)となる。
【0094】
ステップSB440、SB450Aの処理を実行している制御装置40は、歩行支援装置の進行方向の速度を「正」の速度とした場合にそれぞれの持ち手のそれぞれの持ち手対地速度の少なくとも一方が「負」の速度である場合、歩行支援装置10を進行速度の方向に加速させる対地速度補正量を算出する、対地速度補正量算出手段40F(図5参照)に相当する。
【0095】
ステップSB450Bに処理を進めた場合(右持ち手対地速度と左持ち手対地速度が、いずれも負の速度でない場合)、制御装置40は、予め設定された減速補正量を、対地速度補正量に記憶して処理を終了する(リターンする)。なお、減速補正量は、種々の実験やシミュレーション等によって決められている。この場合の対地速度補正量は、0以下の値(ゼロまたは負の値であり、減速するための補正量)となる。
【0096】
なお、対地速度補正量が0より大きな正の値の場合、歩行支援装置の進行速度を加速させることができる。また、対地速度補正量が0未満の負の値の場合、歩行支援装置の進行速度を減速させることができる。また、対地速度補正量がゼロの場合、歩行支援装置は惰性走行となるが、転がり抵抗等によって進行速度は減速される。
【0097】
●[SB500:中央位置処理の詳細(図11)]
次に図11を用いて、SB500(中央位置処理)の詳細について説明する。図6に示すステップS050にてSB500を実行する際、制御装置40は、図11に示すステップSB510へ処理を進める。
【0098】
ステップSB510にて制御装置40は、「(右持ち手前後位置+左持ち手前後位置)/2」を求めて持ち手前後中央位置に記憶し、ステップSB520に処理を進める。
【0099】
ステップSB510の処理を実行している制御装置40は、それぞれの持ち手前後位置に対するフレーム前後方向の中央となる持ち手前後中央位置を求める、持ち手前後中央位置算出手段40G(図5参照)に相当する。
【0100】
図13は、歩行支援装置10を上から見た図であり、(右)持ち手20Rの持ち手前後位置(PmR)、(左)持ち手20Lの持ち手前後位置(PmL)、仮想前後基準位置(Ps)、持ち手前後中央位置(Pmc)、可動範囲(レールスリット部38)の中央位置(Pc)を説明する図である。例えば、フレームの前後方向であるフレーム前後方向において、持ち手20R、20Lの可動範囲L1(レールスリット部38)は、可動範囲L1の前端位置(Po)から、可動範囲の後端位置(Pr)までである。そして中央位置(Pc)は、レール前後方向における可動範囲L1の中央位置である。そして可動範囲L1の中央位置(Pc)よりも所定距離Laだけ前方となる位置が、フレーム前後方向における所定位置である仮想前後基準位置(Ps)に設定されている。また、右持ち手前後位置(PmR)と左持ち手前後位置(PmL)とのレール前後方向における中央位置が、持ち手前後中央位置(Pmc)となる。
【0101】
ステップSB520にて制御装置40は、「持ち手前後中央位置-仮想前後基準位置」を求めて前後方向偏差に記憶し、ステップSB530に処理を進める。なお図13に示すように、前後方向偏差ΔLは、持ち手前後中央位置(Pmc)と仮想前後基準位置(Ps)との偏差である。
【0102】
ステップSB530にて制御装置40は、前後方向偏差に応じた中央位置速度補正量を求め、求めた中央位置速度補正量を記憶して、処理を終了する(リターンする)。例えば、図14に示す前後方向偏差・中央位置速度補正量特性が記憶手段に記憶されており、制御装置40は、当該前後方向偏差・中央位置速度補正量特性と、前後方向偏差とに基づいて、中央位置速度補正量を求めて記憶する。
【0103】
ステップSB520、SB530の処理を実行している制御装置40は、フレーム前後方向において、持ち手前後中央位置を仮想前後基準位置に近づけるように歩行支援装置10の進行速度を調整する中央位置速度補正量を算出する、中央位置速度補正量算出手段40H(図5参照)に相当する。
【0104】
●[SB600:速度調整処理の詳細(図12)]
次に図12を用いて、SB600(速度調整処理)の詳細について説明する。図6に示すステップS060にてSB600を実行する際、制御装置40は、図12に示すステップSB610へ処理を進める。
【0105】
ステップSB610にて制御装置40は、「進行速度+対地速度補正量+中央位置速度補正量」を求めて(それぞれを加算して)右目標速度に記憶し、「進行速度+対地速度補正量+中央位置速度補正量」を求めて(それぞれを加算して)左目標速度に記憶し、ステップSB620へ処理を進める。
【0106】
ステップSB620にて制御装置40は、右目標速度となるように(右)走行用駆動手段64Rを制御し、左目標速度となるように(左)走行用駆動手段64Lを制御し、処理を終了する(リターンする)。
【0107】
ステップSB610、SB620の処理を実行している制御装置40は、進行速度と対地速度補正量(と中央位置速度補正量)とに基づいて求めた目標速度となるように走行用駆動手段を制御する、最終速度調整手段40I(図5参照)に相当する。そして図5に示すように、進行速度調整手段40Bは、上述した対地速度補正量算出手段40F、持ち手前後中央位置算出手段40G、中央位置速度補正量算出手段40H、最終速度調整手段40Iを含んでいる。従って、制御装置40は、歩行支援装置の進行方向の速度を正の速度とした場合にそれぞれの持ち手対地速度の少なくとも一方が負の速度である場合、歩行支援装置を進行方向に加速させるように走行用駆動手段を制御する、進行速度調整手段40B(図5参照)を有している。
【0108】
●[使用者の腕振り歩行状態と歩行支援装置の移動状態の例(図15)]
図15は、使用者が右手で(右)持ち手20Rを把持し、左手で(左)持ち手20Lを把持し、左腕を前方から後方に振りながら歩行している状態(右腕は後方から前方に振られている)の例を示している。
【0109】
(左)持ち手20Lが後方に移動する際、地面から見た(左)持ち手20Lの移動速度である(左)持ち手対地速度が「負」になると、対地速度補正量にて歩行支援装置10は前方に加速するので、図15中に一点鎖線で示すように、(左)持ち手20Lは、地面から見た際、あたかも静止しているように見える。つまり、歩行支援装置10は、地面から見た際に、後方に移動された(左)持ち手20Lがあたかも静止して見えるように、進行速度を調整しながら進行する。
【0110】
●[本願の効果]
以上に説明したように、本実施の形態にて説明した歩行支援装置10は、対地速度補正量を用いて進行速度を調整することで、ストックを突きながら腕振り歩行する歩行動作を模擬することができる。従って、体幹を真っ直ぐにして腕を振りながら歩行することを支援することができる。また、本実施の形態にて説明した歩行支援装置10は、中央位置速度補正量を用いて進行速度を調整することで、使用者が仮想前後基準位置の近傍に維持されるように歩行支援装置10を進行させるので、使用者に対して歩行支援装置の前後方向の位置がズレることを適切に防止することができる。
【0111】
本発明の、歩行支援装置は、本実施の形態で説明した構成、構造、形状、処理手順等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
【0112】
本実施の形態では、複数の車輪を有する歩行支援装置を、四輪車として2個の駆動輪を設けた例を説明したが、歩行支援装置を前一輪、後ろ二輪の三輪車にして、前輪を駆動輪、後輪の二輪をキャスタ輪としてもよい。つまり、歩行支援装置は、少なくとも1つの駆動輪を有していればよい。
【0113】
本実施の形態の説明では、レール30R、30Lが上方向に凹状に湾曲した形状を有している例を説明したが、レール30R、30Lを、直線形状としても良い。また、本実施の形態にて説明した歩行支援装置は、レールと持ち手を備え、持ち手をレールに沿って、前後方向に移動させる構成の例を説明した。しかし、レールに代えて、フレームに設けられた回転軸に揺動可能に突出して設けられたストック状の部材の先端に持ち手を備え、当該持ち手を、フレームに対して前後方向に揺動させるものでも良い。この場合、ストック状の部材が、持ち手案内手段に相当する。
【0114】
また、フレーム50に対してそれぞれの持ち手20R、20Lを前後方向に移動させる持ち手用駆動手段32R、32Lは、本実施の形態にて説明した電動モータとプーリー及びワイヤーの構成に限定されず、種々の構成にて、フレーム50に対してそれぞれの持ち手20R、20Lを前後方向に移動させることができる。また、それぞれの持ち手20R、20Lの位置を検出する右持ち手位置検出手段34R、左持ち手位置検出手段34Lの構成や配置等は、本実施の形態にて示した構成や配置等に限定されず、種々の構成や配置とすることができる。また、それぞれの持ち手20R、20Lの傾斜方向及び傾斜角度を検出する右持ち手傾き検出手段33R、左持ち手傾き検出手段33Lの構成や配置等は、本実施の形態にて示した構成や配置等に限定されず、種々の構成や配置とすることができる。また、それぞれの持ち手20R、20Lに印加された力を検出する把持検出手段25RF、25LF、25RB、25LBの構成や配置等は、本実施の形態にて示した構成や配置等に限定されず、種々の構成や配置とすることができる。また、それぞれの持ち手20R、20Lには、種々の付勢手段(バネ等)が設けられている例(図3図4参照)を説明したが、バネ等に限定されず、種々の弾性部材を適用するようにしてもよい。
【0115】
本実施の形態の説明では、対地速度補正量と中央位置速度補正量を用いて進行速度を調整する例を説明したが、中央位置速度補正量を省略して対地速度補正量にて進行速度を調整するようにしてもよい。また本実施の形態の説明では、進行速度が大きくなるにしたがって対地速度補正量を小さくする例を説明したが、これに限定されるものではない。また、以上(≧)、以下(≦)、より大きい(>)、未満(<)等は、等号を含んでも含まなくてもよい。また、0(ゼロ)を、「正」に含んでもよいし、「負」に含んでもよい。
【0116】
本実施の形態の説明では、地面に対するそれぞれの持ち手のフレーム前後方向の速度であるそれぞれの持ち手対地速度に関連する情報を検出する対地速度検出手段として、進行速度検出手段64RE、64LEと、右持ち手位置検出手段34R、左持ち手位置検出手段34Lを用いた例を説明したが、対地速度検出手段は、これらに限定されるものではない。例えば、それぞれの持ち手に、直接的に対地速度を検出可能な速度センサ等を設けるようにしてもよいし、それぞれの持ち手の動きと地面(または後輪(駆動輪))の動画等を撮像し、画像解析等を行って、それぞれの持ち手対地速度を求めるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0117】
10 歩行支援装置
20R、20L 持ち手
21a 持ち手軸部
21b 軸部嵌入孔
22 スライダ
22A 持ち手保持部
22B アンカー部
24 付勢手段
25RF、25LF、25RB、25LB 把持検出手段(持ち手状態検出手段)
26a グリップ部
26b、26c スイッチグリップ部
28 グリップ付勢手段
30R、30L レール(持ち手案内手段)
32R、32L 持ち手用駆動手段(電動モータ)
33R 右持ち手傾き検出手段(持ち手状態検出手段)
33L 左持ち手傾き検出手段(持ち手状態検出手段)
34R 右持ち手位置検出手段(持ち手状態検出手段、対地速度検出手段)
34L 左持ち手位置検出手段(持ち手状態検出手段、対地速度検出手段)
35R、35L 持ち手移動制限手段
36 信号ケーブル
38 レールスリット部
40 制御装置
40A 持ち手対地速度算出手段
40B 進行速度調整手段
40C 装置対地速度算出手段
40D 持ち手移動速度算出手段
40E 最終対地速度算出手段
40F 対地速度補正量算出手段
40G 持ち手前後中央位置算出手段
40H 中央位置速度補正量算出手段
40I 最終速度調整手段
42 持ち手状態検出手段
44 記憶手段
50 フレーム
52 3軸加速度・角速度センサ
60FR、60FL 前輪
60RR、60RL 後輪(駆動輪)
62 ベルト
64R、64L 走行用駆動手段(電動モータ)
64RE、64LE 進行速度検出手段(対地速度検出手段)
70 コントロールパネル
72 メインスイッチ
74a アシスト量調整ボリューム
74b 負荷量調整ボリューム
76 移動負荷制御モード切替
78 モニター
B バッテリ
BKL ブレーキレバー
JK 持ち手支持軸
PB、PF プーリー
Pmc 持ち手前後中央位置
PmL、PmR 持ち手前後位置
Ps 仮想前後基準位置
W ワイヤー

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15