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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/04 20060101AFI20230208BHJP
   F16C 19/18 20060101ALI20230208BHJP
   F16C 35/077 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
B62D5/04
F16C19/18
F16C35/077
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019024672
(22)【出願日】2019-02-14
(65)【公開番号】P2020131806
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金井 知幸
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-168879(JP,A)
【文献】特開2015-054609(JP,A)
【文献】特表2003-509632(JP,A)
【文献】特開2015-186949(JP,A)
【文献】特開2007-303530(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0062505(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/04
F16C 19/18
F16C 35/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに配置されるナット、及び前記ナットを貫通するねじ軸を備えるボールねじ装置と、
前記ハウジングに嵌合する外輪、及び前記ナットと共に回転する内輪を備える軸受と、
前記外輪との間に隙間を空けて配置される環状の本体部、及び前記本体部から突出し前記外輪の端面に面する保持部を備えるプレートと、
前記ねじ軸の径方向において前記保持部の内側であり且つ前記外輪と前記本体部との間である位置に配置される皿バネと、
を備え、
前記皿バネは、前記径方向における外側に向かって前記外輪に近付くように傾斜しており、
前記ねじ軸の軸方向における前記皿バネの一端である第1端部は、前記外輪の端面に接し、
前記軸方向における前記皿バネの他端である第2端部は、前記本体部に接し、
前記本体部は、前記ナットの外周面に面し、
前記皿バネと前記内輪との間の隙間長さは、前記本体部と前記ナットとの間の隙間長さよりも小さい
電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
ハウジングと、
前記ハウジングに配置されるナット、及び前記ナットを貫通するねじ軸を備えるボールねじ装置と、
前記ハウジングに嵌合する外輪、及び前記ナットと共に回転する内輪を備える軸受と、
前記外輪との間に隙間を空けて配置される環状の本体部、及び前記本体部から突出し前記外輪の端面に面する保持部を備えるプレートと、
前記ねじ軸の径方向において前記保持部の内側であり且つ前記外輪と前記本体部との間である位置に配置される皿バネと、
を備え、
前記皿バネは、前記径方向における外側に向かって前記外輪に近付くように傾斜しており、
前記ねじ軸の軸方向における前記皿バネの一端である第1端部は、前記外輪の端面に接し、
前記軸方向における前記皿バネの他端である第2端部は、前記本体部に接し、
前記本体部は、前記ナットに取り付けられて前記内輪を位置決めする位置決め部材の外周面に面し、
前記皿バネと前記内輪との間の隙間長さは、前記本体部と前記位置決め部材との間の隙間長さよりも小さい
電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
電動モータと、
前記電動モータと接続される第1プーリ、前記ナットと接続される第2プーリ、並びに前記第1プーリ及び前記第2プーリに巻きかけられる動力伝達部材を備える伝達機構と、
を備え、
前記プレート及び前記皿バネは、前記軸受に対して、前記伝達機構側に配置される
請求項に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
前記皿バネが前記外輪に接する前であり且つ前記第2端部が前記本体部に接した状態において、前記本体部から前記皿バネの前記径方向の外側端部までの前記軸方向の距離を第1距離とし、前記本体部から前記保持部の先端までの前記軸方向の距離を第2距離とし、前記本体部から前記第1端部までの前記軸方向の距離を第3距離とした場合、
前記第1距離は、前記第2距離よりも小さく、
前記第2距離は、前記第3距離よりも小さい
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
前記プレートは、前記軸方向において前記軸受の両側に配置され、
前記皿バネは、前記軸方向において前記軸受の両側に配置される
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータの動力がラックに伝達されるラックアシスト式の電動パワーステアリング装置が知られている。ラックアシスト式の電動パワーステアリング装置にはボールねじ装置が用いられる。例えば、特許文献1には、電動パワーステアリング装置に用いられるボールねじ装置の一例が記載される。特許文献1に記載されるように、ボールねじ装置のナットを支持する軸受とハウジングとの間に、弾性部材(皿バネ)が配置されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-227047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、軸受を支持する皿バネの性能は、形状によって変化する。皿バネの性能を適切に設定するために、皿バネの形状設計においてできるだけ制約が少ないことが望ましい。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、軸受を支持する皿バネの形状設計を容易にできる電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様に係る電動パワーステアリング装置は、ハウジングと、前記ハウジングに配置されるナット、及び前記ナットを貫通するねじ軸を備えるボールねじ装置と、前記ハウジングに嵌合する外輪、及び前記ナットと共に回転する内輪を備える軸受と、前記外輪との間に隙間を空けて配置される環状の本体部、及び前記本体部から突出し前記外輪の端面に面する保持部を備えるプレートと、前記ねじ軸の径方向において前記保持部の内側であり且つ前記外輪と前記本体部との間である位置に配置される皿バネと、を備え、前記皿バネは、前記径方向における外側に向かって前記外輪に近付くように傾斜しており、前記ねじ軸の軸方向における前記皿バネの一端である第1端部は、前記外輪の端面に接し、前記軸方向における前記皿バネの他端である第2端部は、前記本体部に接する。
【0007】
これにより、皿バネの内径を外輪の端部内径(端面における内径)よりも小さくすることが可能である。皿バネの形状については、内輪及びナットに接触しない範囲で自由に設計できる。したがって、電動パワーステアリング装置は、軸受を支持する皿バネの形状設計を容易にできる。
【0008】
上記の電動パワーステアリング装置の望ましい態様として、前記皿バネが前記外輪に接する前であり且つ前記第2端部が前記本体部に接した状態において、前記本体部から前記皿バネの前記径方向の外側端部までの前記軸方向の距離を第1距離とし、前記本体部から前記保持部の先端までの前記軸方向の距離を第2距離とし、前記本体部から前記第1端部までの前記軸方向の距離を第3距離とした場合、前記第1距離は、前記第2距離よりも小さく、前記第2距離は、前記第3距離よりも小さい。
【0009】
第2距離が第3距離よりも小さいことによって、外輪、皿バネ及びプレートを組み立てると、外輪が保持部に接する前に皿バネに接する。このため、皿バネに予圧を付与することができる。また、外輪、皿バネ及びプレートを組み立てる前に、皿バネ及びプレートを予め組み立てておくことがある。第1距離が第2距離よりも小さいことによって、皿バネがプレートから脱落することが抑制される。したがって、電動パワーステアリング装置は、外輪、皿バネ及びプレートの組立を容易にできる。
【0010】
上記の電動パワーステアリング装置の望ましい態様として、前記本体部は、前記ナットの外周面に面し、前記皿バネと前記内輪との間の隙間長さは、前記本体部と前記ナットとの間の隙間長さよりも小さい。
【0011】
これにより、皿バネが、軸受の外輪と内輪との間の隙間への異物の侵入を抑制する。したがって、電動パワーステアリング装置は、軸受の寿命を向上させることができる。
【0012】
上記の電動パワーステアリング装置の望ましい態様として、電動モータと、前記電動モータと接続される第1プーリ、前記ナットと接続される第2プーリ、並びに前記第1プーリ及び前記第2プーリに巻きかけられる動力伝達部材を備える伝達機構と、を備え、前記プレート及び前記皿バネは、前記軸受に対して、前記伝達機構側に配置される。
【0013】
これにより、皿バネが、軸受の外輪と内輪との間の隙間に伝達機構で生じる摩耗粉が侵入することを抑制する。したがって、電動パワーステアリング装置は、軸受の寿命を向上させることができる。
【0014】
上記の電動パワーステアリング装置の望ましい態様として、前記本体部は、前記ナットに取り付けられて前記内輪を位置決めする位置決め部材の外周面に面し、前記皿バネと前記内輪との間の隙間長さは、前記本体部と前記位置決め部材との間の隙間長さよりも小さい。
【0015】
これにより、皿バネが、軸受の外輪と内輪との間の隙間への異物の侵入を抑制する。したがって、電動パワーステアリング装置は、軸受の寿命を向上させることができる。
【0016】
上記の電動パワーステアリング装置の望ましい態様として、前記プレートは、前記軸方向において前記軸受の両側に配置され、前記皿バネは、前記軸方向において前記軸受の両側に配置される。
【0017】
これにより、軸受が2つの皿バネによって弾性的に支持される。このため、電動パワーステアリング装置は、軸受の振動がハウジングに伝達することを抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
本開示の電動パワーステアリング装置は、軸受を支持する皿バネの形状設計を容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本実施形態の電動パワーステアリング装置の模式図である。
図2図2は、本実施形態のラックの正面図である。
図3図3は、本実施形態のボールねじ装置の断面図である。
図4図4は、図3の軸受の周辺を拡大した断面図である。
図5図5は、図4の第1皿バネの周辺を拡大した断面図である。
図6図6は、図4の第2皿バネの周辺を拡大した断面図である。
図7図7は、第1皿バネが外輪に接する前の状態における第1皿バネ及び第1プレートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0021】
(実施形態)
図1は、本実施形態の電動パワーステアリング装置の模式図である。図2は、本実施形態のラックの正面図である。図1に示すように、電動パワーステアリング装置80は、ステアリングホイール81と、ステアリングシャフト82と、ユニバーサルジョイント84と、ロアシャフト85と、ユニバーサルジョイント86と、ピニオンシャフト87と、ピニオン88aと、ラック88bと、を備える。
【0022】
図1に示すように、ステアリングホイール81は、ステアリングシャフト82に連結される。ステアリングシャフト82の一端は、ステアリングホイール81に連結される。ステアリングシャフト82の他端は、ユニバーサルジョイント84に連結される。ロアシャフト85の一端は、ユニバーサルジョイント84を介してステアリングシャフト82に連結される。ロアシャフト85の他端は、ユニバーサルジョイント86を介してピニオンシャフト87に連結される。ピニオンシャフト87は、ピニオン88aに連結される。ピニオン88aは、ラック88bに噛み合う。ピニオン88aが回転すると、ラック88bが車両の車幅方向に移動する。ピニオン88a及びラック88bは、ピニオンシャフト87に伝達された回転運動を直進運動に変換する。ラック88bは、タイロッド89に連結される。ラック88bが移動することで車輪の角度が変化する。なお、ステアリングホイール81の操作が電気信号に変換され、電気信号によって車輪の角度が変化させられてもよい。すなわち、電動パワーステアリング装置80に、ステアバイワイヤシステムを適用してもよい。
【0023】
図1に示すように、電動パワーステアリング装置80は、電動モータ93と、トルクセンサ94と、ECU(Electronic Control Unit)90と、を備える。電動モータ93は、例えばブラシレスモータであるが、ブラシ(摺動子)及びコミュテータ(整流子)を備えるモータであってもよい。電動モータ93は、後述するハウジング100に配置される。トルクセンサ94は、例えばピニオン88aに取り付けられている。トルクセンサ94は、ピニオン88aに伝達された操舵トルクをCAN(Controller Area Network)通信によりECU90に出力する。車速センサ95は、電動パワーステアリング装置80が搭載される車体の走行速度(車速)を検出する。車速センサ95は、車体に備えられ、車速をCAN通信によりECU90に出力する。電動モータ93、トルクセンサ94及び車速センサ95は、ECU90と電気的に接続される。
【0024】
ECU90は、電動モータ93の動作を制御する。ECU90は、トルクセンサ94及び車速センサ95のそれぞれから信号を取得する。ECU90には、イグニッションスイッチ98がオンの状態で、電源装置99(例えば車載のバッテリ)から電力が供給される。ECU90は、操舵トルク及び車速に基づいて補助操舵指令値を算出する。ECU90は、補助操舵指令値に基づいて電動モータ93へ供給する電力値を調節する。ECU90は、電動モータ93から誘起電圧の情報又は電動モータ93に設けられたレゾルバ等から出力される情報を取得する。
【0025】
図3は、本実施形態のボールねじ装置の断面図である。図4は、図3の軸受の周辺を拡大した断面図である。図5は、図4の第1皿バネの周辺を拡大した断面図である。図6は、図4の第2皿バネの周辺を拡大した断面図である。図7は、第1皿バネが外輪に接する前の状態における第1皿バネ及び第1プレートの断面図である。
【0026】
図3に示すように、電動パワーステアリング装置80は、ハウジング100と、ボールねじ装置10と、伝達機構20と、軸受30と、第1プレート50と、第1皿バネ40と、第2プレート70と、第2皿バネ60と、を備える。
【0027】
ハウジング100は、例えばアルミニウム合金又はマグネシウム合金等の軽金属で形成される。図2及び図3に示すように、ハウジング100は、第1本体101と、第2本体103と、第3本体105と、を備える。
【0028】
第1本体101は、軸受30を支持する。第1本体101は、略円筒状であって、軸受30及びボールねじ装置10を覆う。第2本体103は、第1本体101と第3本体105との間に配置される。第2本体103は、ボルト等によって第1本体101と連結される。第3本体105は、電動モータ93を支持する。第3本体105は、略円筒状であって、電動モータ93を覆う。第3本体105は、ボルト等によって第2本体103と連結される。
【0029】
図3に示すように、ボールねじ装置10は、ナット13と、ねじ軸11と、複数の転動体15と、を備える。ナット13は、ハウジング100の第1本体101の内部に配置される。ナット13は、内周面にねじ溝を備える。ねじ軸11は、ナット13を貫通する。ねじ軸11は、外周面にねじ溝を備える。ねじ軸11は、ラック88bの一部である。すなわち、ねじ軸11は、ラック88bと一体である。転動体15は、ナット13とねじ軸11との間に配置される。転動体15は、ボールである。転動体15は、ナット13のねじ溝とねじ軸11のねじ溝で形成される転動路を無限循環する。ナット13が回転すると、ねじ軸11(ラック88b)が車幅方向に移動する。ボールねじ装置10は、回転運動を直進運動に変換する。
【0030】
以下の説明において、ねじ軸11の軸方向は、単に軸方向と記載される。ねじ軸11の軸方向に対して直交する方向は、単に径方向と記載される。径方向は、放射方向とも呼ばれる方向である。
【0031】
伝達機構20は、電動モータ93の動力をナット13に伝達する。図3に示すように、伝達機構20は、第1プーリ21と、第2プーリ23と、動力伝達部材25と、を備える。第1プーリ21は、電動モータ93のシャフトに固定される。第1プーリ21は、電動モータ93のシャフトと一体となって回転する。第2プーリ23は、ナット13に固定される。第2プーリ23は、ナット13と一体となって回転する。動力伝達部材25は、第1プーリ21及び第2プーリ23に巻きかけられる。動力伝達部材25は、第1プーリ21から第2プーリ23に伝達する。動力伝達部材25は、例えばベルトである。伝達機構20が作動している時、第1プーリ21と動力伝達部材25との噛み合い部、及び第2プーリ23と動力伝達部材25との噛み合い部に摩耗が生じる。摩耗によって、摩耗粉が生じることがある。
【0032】
軸受30は、ハウジング100に対してナット13が回転できるようにナット13を支持する。軸受30は、例えば軸受鋼等の鋼で形成される。図3に示すように、軸受30は、複列軸受である。軸受30は、背面組合せされた2つのアンギュラ軸受の2つの外輪を一体化することによって形成される。軸受30は、外輪31と、内輪33と、複数の転動体35と、を備える。外輪31は、第1本体101の内周面に隙間嵌合する。外輪31は、第1本体101の内周面に圧入嵌合してもよい。外輪31は、第1皿バネ40及び第2皿バネ60によって挟まれる。外輪31は、第1皿バネ40及び第2皿バネ60によって、軸方向の両側から押される。外輪31は、2列の転動体35の間に配置される凸部311を備える。内輪33は、ナット13の外周面に嵌合する。内輪33は、背面組合せされた2つのアンギュラ軸受の2つの内輪を連結することによって形成される。内輪33は、位置決め部材17及びナット13によって、軸方向に位置決めされる。位置決め部材17は、ロックナットと呼ばれる。内輪33は、ナット13と一体となって回転する。転動体35は、外輪31と内輪33との間に配置される。転動体35は、ボールである。転動体35は、第1列と、第1列に対して軸方向にずれた第2列と、に配置される。
【0033】
電動モータ93が駆動すると、電動モータ93で生じた動力が伝達機構20を介してナット13に伝達される。これにより、軸受30に支持されるナット13が回転する。ナット13が回転すると、ラック88b(ねじ軸11)に軸方向の力が作用する。これにより、ラック88bを移動させるために要する力が小さくなる。すなわち、電動パワーステアリング装置80は、ラックアシスト式である。
【0034】
図4に示すように、第1プレート50は、環状の部材である。第1プレート50は、第1本体101の内部に配置される。第1プレート50は、第1本体101に設けられた凹部に隙間嵌合される。第1プレート50は、軸受30に対して、伝達機構20側に配置される。第1プレート50は、本体部51と、保持部53と、を備える。
【0035】
図4に示すように、本体部51は、環状であり且つ板状の部材である。本体部51は、第2本体103に接する。本体部51は、軸受30の外輪31に対して隙間を空けて配置される。本体部51の内周面は、ナット13の外周面に面する。本体部51の内径は、ナット13の外径よりも大きい。本体部51の外径は、外輪31の外径よりも大きい。
【0036】
図4に示すように、保持部53は、本体部51から外輪31に向かって突出する。保持部53は、外輪31に対して軸方向の隙間54を空けて配置される。また、保持部53は、第1本体101に対して軸方向の隙間55を空けて配置される。隙間55の大きさは、隙間54の大きさよりも大きい。
【0037】
図4に示すように、第2プレート70は、環状の部材である。第2プレート70は、第1本体101の内部に配置される。第2プレート70は、軸受30に対して、伝達機構20及び第1プレート50とは反対側に配置される。第2プレート70は、本体部71と、保持部73と、を備える。
【0038】
図4に示すように、本体部71は、環状であり且つ板状の部材である。本体部71は、軸受30の外輪31に対して隙間を空けて配置される。本体部71の内周面は、位置決め部材17の外周面に面する。本体部71の内径は、位置決め部材17の外径よりも大きい。本体部71の外径は、第1本体101の第2プレート70に面する部分の内径よりも小さい。
【0039】
図4に示すように、保持部73は、本体部71から外輪31に向かって突出する。保持部73は、外輪31に対して軸方向の隙間74を空けて配置される。
【0040】
図4に示すように、第1皿バネ40は、軸受30に対して、伝達機構20側に配置される。図5に示すように、第1皿バネ40は、軸方向において、外輪31と第1プレート50の本体部51との間に配置される。第1皿バネ40は、径方向において、第1プレート50の保持部53の内側に配置される。第1皿バネ40は、保持部53とナット13との間に配置される。図4に示すように、第1皿バネ40の内径I40は、外輪31の端部内径I31よりも小さい。端部内径I31は、外輪31の端面における内径である。さらに、第1皿バネ40の内径I40は、外輪31の最小内径I311よりも小さい。最小内径I311は、外輪31の凸部311における内径である。第1皿バネ40は、例えば鋼で形成される。
【0041】
図5に示すように、第1皿バネ40は、径方向の外側に向かって外輪31に近付くように傾斜している。より具体的には、ナット13の回転軸を含む断面(図5の断面)において、第1皿バネ40を厚さ方向に2等分する線分M1は、径方向の外側に向かって外輪31に近付くように傾斜している。軸方向における第1皿バネ40の一端である第1端部41は、外輪31の端面に接する。第1皿バネ40は、外輪31を第2皿バネ60の方向に押す。軸方向における第1皿バネ40の他端である第2端部43は、本体部51に接する。第2端部43は、第1端部41に対して径方向で内側に配置される。第1皿バネ40の外形E40は、保持部53の内径I53よりも小さい。第1皿バネ40と保持部53との間には、径方向の隙間が設けられる。第1皿バネ40と内輪33との間の隙間長さG2は、本体部51とナット13との間の隙間長さG1よりも小さい。
【0042】
図4に示すように、第2皿バネ60は、軸受30に対して、伝達機構20とは反対側に配置される。図6に示すように、第2皿バネ60は、軸方向において、外輪31と第2プレート70の本体部71との間に配置される。第2皿バネ60は、径方向において、第2プレート70の保持部73の内側に配置される。第2皿バネ60は、径方向において、保持部73と位置決め部材17との間に配置される。図4に示すように、第2皿バネ60の内径I60は、外輪31の端部内径I31よりも小さい。さらに、第2皿バネ60の内径I60は、外輪31の最小内径I311よりも小さい。第2皿バネ60は、例えば鋼で形成される。
【0043】
図6に示すように、第2皿バネ60は、径方向の外側に向かって外輪31に近付くように傾斜している。より具体的には、ナット13の回転軸を含む断面(図6の断面)において、第2皿バネ60を厚さ方向に2等分する線分M2は、径方向の外側に向かって外輪31に近付くように傾斜している。軸方向における第2皿バネ60の一端である第1端部61は、外輪31の端面に接する。第2皿バネ60は、外輪31を第1皿バネ40の方向に押す。第1皿バネ40及び第2皿バネ60は、外輪31を、互いに反対方向に押す。軸方向における第2皿バネ60の他端である第2端部63は、本体部71に接する。第2端部63は、第1端部61に対して径方向で内側に配置される。第2皿バネ60の外径E60は、保持部73の内径I73よりも小さい。第2皿バネ60と保持部73との間には、径方向の隙間が設けられる。第2皿バネ60と内輪33との間の隙間長さG4は、本体部71と位置決め部材17との間の隙間長さG3よりも小さい。
【0044】
図7は、第1皿バネ40が外輪31に接する前であり、且つ第1皿バネ40の第2端部43が本体部51に接した状態を示す。図7の状態において、第1距離H1は、第2距離H2よりも小さい。図7の状態において、第2距離H2は、第3距離H3よりも小さい。第1距離H1は、本体部51から第1皿バネ40の径方向の外側端部45までの軸方向の距離である。第2距離H2は、本体部51から保持部53の先端までの軸方向の距離である。第3距離H3は、本体部51から第1皿バネ40の第1端部41までの軸方向の距離である。上述した第1距離H1、第2距離H2及び第3距離H3の説明は、第2皿バネ60についても適用できる。
【0045】
本実施形態の電動パワーステアリング装置80においては、軸受30が荷重を受けた場合、第1皿バネ40及び第2皿バネ60は、それぞれ弾性変形する。第1皿バネ40及び第2皿バネ60は、軸受30を弾性的に支持する。また、第1皿バネ40及び第2皿バネ60が変形することによって、組立誤差(ミスアライメント)等が吸収される。さらに、ボールねじ装置10の周辺の振動が抑制され、いわゆるラトル音が低減する。
【0046】
例えば、車両が停止している時にステアリングホイール81が大きく操作された場合等においては、路面から伝達する荷重と比較して大きい荷重が軸受30に入力されることがある。このような場合、第1皿バネ40及び第2皿バネ60が塑性変形し破損する可能性がある。これに対して、本実施形態においては、第1皿バネ40及び第2皿バネ60がある程度変形すると、保持部53及び保持部73が外輪31の端面に接する。第1皿バネ40及び第2皿バネ60に過剰な荷重が加わる前に、第1皿バネ40及び第2皿バネ60の変形が規制される。第1皿バネ40及び第2皿バネ60の変形量が所定量以下に保たれるので、第1皿バネ40及び第2皿バネ60の破損が抑制される。
【0047】
本実施形態において、第1皿バネ40に面する本体部51の表面は、平坦であり且つ軸方向に直交する。仮に第1皿バネ40に面する本体部51の表面が段差を有する場合、段差の部分が第1皿バネ40に接することになる。しかし、段差の位置は、製造誤差によって設計された位置に対してずれる可能性がある。このような場合、第1皿バネ40に、設計上の理想的な変形とは異なる変形が生じる。また、第1皿バネ40の径方向における外側端部及び内側端部に過大な応力が生じやすい。なお、第1皿バネ40の径方向における外側端部及び内側端部は、第1皿バネ40が圧縮された時に伸びる部分である。このため、第1皿バネ40の寿命が低下する可能性がある。これに対して、第1皿バネ40に面する本体部51の表面は、平坦であり且つ軸方向に直交する。このため、第1皿バネ40における過大な応力の発生が抑制される。電動パワーステアリング装置80は、第1皿バネ40の寿命を向上させることができる。また、上述した第1皿バネ40及び本体部51に関する説明は、第2皿バネ60及び本体部71にも適用できる。
【0048】
なお、保持部53及び保持部73は、必ずしも全周に亘って配置されなくてもよい。保持部53は、本体部51の一部のみから軸方向に突出していてもよい。保持部73は、本体部71の一部のみから軸方向に突出していてもよい。
【0049】
電動パワーステアリング装置80は、必ずしも第1プレート50及び第2プレート70の両方を備えていなくてもよい。電動パワーステアリング装置80は、第1プレート50及び第2プレート70の少なくとも一方を備えていればよい。電動パワーステアリング装置80は、必ずしも第1皿バネ40及び第2皿バネ60の両方を備えていなくてもよい。電動パワーステアリング装置80は、第1皿バネ40及び第2皿バネ60の少なくとも一方を備えていればよい。
【0050】
軸受30は、別体としての2つのアンギュラ軸受が連結されることによって形成されていてもよい。すなわち、軸受30は、2つの内輪と、2つの外輪と、を備えていてもよい。軸受30は、必ずしも複列軸受でなくてもよい。また、軸受30の内輪33は、ボールねじ装置10のナット13と一体であってもよい。すなわち、内輪33は、ナット13の一部であってもよい。
【0051】
以上で説明したように、電動パワーステアリング装置80は、ハウジング100と、ボールねじ装置10と、軸受30と、プレート(例えば、第1プレート50)と、皿バネ(例えば、第1皿バネ40)と、を備える。ボールねじ装置10は、ハウジング100に配置されるナット13、及びナット13を貫通するねじ軸11を備える。軸受30は、ハウジング100に嵌合する外輪31、及びナット13と共に回転する内輪33を備える。第1プレート50は、外輪31との間に隙間を空けて配置される環状の本体部51、及び本体部51から突出し外輪31の端面に面する保持部53を備える。第1皿バネ40は、径方向において保持部53の内側であり且つ外輪31と本体部51との間である位置に配置される。第1皿バネ40は、径方向における外側に向かって外輪31に近付くように傾斜している。軸方向における第1皿バネ40の一端である第1端部41は、外輪31の端面に接する。軸方向における第1皿バネ40の他端である第2端部43は、本体部51に接する。
【0052】
これにより、第1皿バネ40の内径I40を外輪31の端部内径I31(端面における内径)よりも小さくすることが可能である。第1皿バネ40の形状については、内輪33及びナット13に接触しない範囲で自由に設計できる。したがって、電動パワーステアリング装置80は、軸受30を支持する皿バネの形状設計を容易にできる。
【0053】
電動パワーステアリング装置80は、ハウジング100と、ボールねじ装置10と、軸受30と、プレート(例えば、第2プレート70)と、皿バネ(例えば、第2皿バネ60)と、を備える。ボールねじ装置10は、ハウジング100に配置されるナット13、及びナット13を貫通するねじ軸11を備える。軸受30は、ハウジング100に嵌合する外輪31、及びナット13と共に回転する内輪33を備える。第2プレート70は、外輪31との間に隙間を空けて配置される環状の本体部71、及び本体部71から突出し外輪31の端面に面する保持部73を備える。第2皿バネ60は、径方向において保持部73の内側であり且つ外輪31と本体部71との間である位置に配置される。第2皿バネ60は、径方向における外側に向かって外輪31に近付くように傾斜している。軸方向における第2皿バネ60の一端である第1端部61は、外輪31の端面に接する。軸方向における第2皿バネ60の他端である第2端部63は、本体部71に接する。
【0054】
これにより、第2皿バネ60の内径I60を外輪31の端部内径I31(端面における内径)よりも小さくすることが可能である。第2皿バネ60の形状については、内輪33及び位置決め部材17に接触しない範囲で自由に設計できる。したがって、電動パワーステアリング装置80は、軸受30を支持する皿バネの形状設計を容易にできる。
【0055】
電動パワーステアリング装置80において、第1皿バネ40が外輪31に接する前であり且つ第2端部43が本体部51に接した状態において、本体部51から第1皿バネ40の径方向の外側端部45までの軸方向の距離を第1距離H1とし、本体部51から保持部53の先端までの軸方向の距離を第2距離H2とし、本体部51から第1端部41までの軸方向の距離を第3距離H3とする。この場合、第1距離H1は、第2距離H2よりも小さい。第2距離H2は、第3距離H3よりも小さい。
【0056】
第2距離H2が第3距離H3よりも小さいことによって、外輪31、第1皿バネ40及び第1プレート50を組み立てると、外輪31が保持部53に接する前に第1皿バネ40に接する。このため、第1皿バネ40に予圧を付与することができる。また、外輪31、第1皿バネ40及び第1プレート50を組み立てる前に、第1皿バネ40及び第1プレート50を予め組み立てておくことがある。第1距離H1が第2距離H2よりも小さいことによって、第1皿バネ40が第1プレート50から脱落することが抑制される。したがって、電動パワーステアリング装置80は、外輪31、皿バネ及びプレートの組立を容易にできる。
【0057】
電動パワーステアリング装置80において、本体部51は、ナット13の外周面に面する。第1皿バネ40と内輪33との間の隙間長さG2は、本体部51とナット13との間の隙間長さG1よりも小さい。
【0058】
これにより、第1皿バネ40が、軸受30の外輪31と内輪33との間の隙間への異物の侵入を抑制する。したがって、電動パワーステアリング装置80は、軸受30の寿命を向上させることができる。
【0059】
電動パワーステアリング装置80は、電動モータ93と、伝達機構20と、を備える。伝達機構20は、電動モータ93と接続される第1プーリ21、ナット13と接続される第2プーリ23、並びに第1プーリ21及び第2プーリ23に巻きかけられる動力伝達部材25を備える。第1プレート50及び第1皿バネ40は、軸受30に対して、伝達機構20側に配置される。
【0060】
これにより、第1皿バネ40が、軸受30の外輪31と内輪33との間の隙間に伝達機構20で生じる摩耗粉が侵入することを抑制する。したがって、電動パワーステアリング装置80は、軸受30の寿命を向上させることができる。
【0061】
電動パワーステアリング装置80において、本体部71は、ナット13に取り付けられて内輪33を位置決めする位置決め部材17の外周面に面する。第2皿バネ60と内輪33との間の隙間長さG4は、本体部71と位置決め部材17との間の隙間長さG3よりも小さい。
【0062】
これにより、第2皿バネ60が、軸受30の外輪31と内輪33との間の隙間への異物の侵入を抑制する。したがって、電動パワーステアリング装置80は、軸受30の寿命を向上させることができる。
【0063】
電動パワーステアリング装置80において、プレート(第1プレート50及び第2プレート70)は、軸方向において軸受30の両側に配置される。皿バネ(第1皿バネ40及び第2皿バネ60)は、軸方向において軸受30の両側に配置される。言い換えると、電動パワーステアリング装置80は、2つのプレートと、2つの皿バネを備える。2つのプレートの一方(第1プレート50)が軸方向において軸受30の一方側に配置される。2つのプレートの他方(第2プレート70)が軸方向において軸受30の他方側に配置される。2つの皿バネの一方(第1皿バネ40)が軸方向において軸受30の一方側に配置される。2つの皿バネの他方(第2皿バネ60)が軸方向において軸受30の他方側に配置される。
【0064】
これにより、軸受30が2つの皿バネによって弾性的に支持される。このため、電動パワーステアリング装置80は、軸受30の振動がハウジング100に伝達することを抑制できる。
【符号の説明】
【0065】
10 ボールねじ装置
11 ねじ軸
13 ナット
15 転動体
17 位置決め部材
20 伝達機構
21 第1プーリ
23 第2プーリ
25 動力伝達部材
30 軸受
31 外輪
311 凸部
33 内輪
35 転動体
40 第1皿バネ
41 第1端部
43 第2端部
45 外側端部
50 第1プレート
51 本体部
53 保持部
54、55 隙間
60 第2皿バネ
61 第1端部
63 第2端部
70 第2プレート
71 本体部
73 保持部
74 隙間
80 電動パワーステアリング装置
81 ステアリングホイール
82 ステアリングシャフト
84 ユニバーサルジョイント
85 ロアシャフト
86 ユニバーサルジョイント
87 ピニオンシャフト
88a ピニオン
88b ラック
89 タイロッド
90 ECU
93 電動モータ
94 トルクセンサ
95 車速センサ
98 イグニッションスイッチ
99 電源装置
100 ハウジング
101 第1本体
103 第2本体
105 第3本体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7