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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】検査方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20230208BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20230208BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01G13/00 361D
H01G13/00 361Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019097839
(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公開番号】P2020194631
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(72)【発明者】
【氏名】岡本 亮太
(72)【発明者】
【氏名】南形 厚志
(72)【発明者】
【氏名】小島 晶
(72)【発明者】
【氏名】杉本 祐樹
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-204151(JP,A)
【文献】特開2015-095333(JP,A)
【文献】特開2014-017056(JP,A)
【文献】特開2015-125091(JP,A)
【文献】特開2009-252459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 10/24
H01M 10/44
H01M 10/48
H01G 11/04
H01G 11/84
H01G 13/00
G01R 31/385
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電モジュールにおける微小短絡の有無を検査する検査方法であって、
前記蓄電モジュールを所定の充電レートで初期充電する第一充電工程と、
前記第一充電工程において充電された前記蓄電モジュールのSOCが所定の第一SOCとなるまで放電させる放電工程と、
前記放電工程において放電された前記蓄電モジュールを、前記第一充電工程における充電レートよりも低い充電レートで、SOCが0%よりも大きく20%以下の予め定められた目標SOCとなるまで充電する第二充電工程と、
前記第二充電工程において充電された前記蓄電モジュールを第一所定時間放置する第一放置工程と、
前記第一放置工程において放置された前記蓄電モジュールの電圧を測定する第一測定工程と、
前記第一測定工程において測定された前記蓄電モジュールを第二所定時間放置する第二放置工程と、
前記第二放置工程において放置された前記蓄電モジュールの電圧を測定する第二測定工程と、
前記第一測定工程において測定された電圧と前記第二測定工程において測定された電圧との差に基づいて、前記微小短絡の有無を判定する判定工程と、を含み、
前記第二充電工程では、充電レートを0.01C以上1C以下の低充電レートとして前記蓄電モジュールを充電する、検査方法。
【請求項2】
前記第二充電工程では、SOCが2%よりも大きく10%以下の前記予め定められた目標SOCとなるまで前記蓄電モジュールを充電する、請求項記載の検査方法。
【請求項3】
前記放電工程は、前記第一充電工程において充電された前記蓄電モジュールを前記第一SOCまで放電させる第一放電工程と、前記第一放電工程の後に実施され、前記蓄電モジュールを前記第一SOCよりも低い第二SOCまで放電する追加放電工程と、を含む、請求項1又は2記載の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電モジュールの検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電モジュールの製造工程には、コンディショニング工程と、エージング工程とが含まれる。コンディショニング工程は、蓄電モジュールの充放電を複数サイクル繰り返し行うことにより、蓄電モジュールを電池として活性化させる工程である。エージング工程は、コンディショニング工程にて初期充電した蓄電モジュールを所定電圧にまで放電した後、所定時間及び所定温度の恒温槽にて放置する工程である。
【0003】
例えば、特許文献1には、このような蓄電モジュールの製造工程において、蓄電モジュールにおける微小短絡の有無を判定する検査方法が開示されている。特許文献1に記載の検査方法は、(a)初期充電されたアルカリ蓄電池(蓄電モジュール)を所定電圧まで放電させる工程と、(b)放電されたアルカリ蓄電池を第1の所定時間放置する工程と、(c)第1の所定時間放置されたアルカリ蓄電池の電圧を測定する工程と、(d)電圧測定後にアルカリ蓄電池を第2の所定時間放置する工程と、(e)第2の所定時間放置されたアルカリ蓄電池の電圧を再度測定する工程と、(f)前記工程cにおいて測定された電圧と前記工程eにおいて測定された電圧との差を算出する工程と、(g)算出された電圧の差と良否判定用基準値とを比較する工程とを含んでいる。
【0004】
ここで、コンディショニング工程後に蓄電モジュールを放電すると、蓄電モジュールの電圧は、一旦が上昇したあと下降に転じ、やがて所定の電圧値に収束することが知られている。微小短絡の有無は、上昇後の電圧値(以後、「最高電圧値」と称することもある。)と収束後の電圧値(以後、「収束電圧値」と称することもある。)との差に基づいて判定されることが精度を高める点で望ましい。このため、特許文献1の検査方法では、工程aのあとにすぐに蓄電モジュールの電圧を測定するのではなく、蓄電モジュールを第1の所定時間放置する(工程c)を実施することによって最高電圧値を取得し、当該最高電圧値と工程dの後の収束電圧値との差に基づいて微小短絡の有無を判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-252459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、蓄電モジュールを放電した(工程a)の後に、蓄電モジュールの電圧が最高値に到達するまでの時間は蓄電モジュールによってばらつきがある。このため、比較的に長い時間が必要となる(特許文献1の例では12時間以上24時間以下。)。また、蓄電モジュールの電圧が最高値に到達した後に電圧が収束するまでの時間も比較的長くなる傾向があり、エージング工程において収束しきれない場合もある。この場合、微小短絡の有無の判定精度が低くなる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、短時間かつ高い精度で、蓄電モジュールにおける微小短絡の有無を判定できる検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る検査方法は、蓄電モジュールにおける微小短絡の有無を検査する検査方法であって、蓄電モジュールを所定の充電レートで初期充電する第一充電工程と、第一充電工程において充電された蓄電モジュールのSOCが所定の第一SOCとなるまで放電させる放電工程と、放電工程において放電された蓄電モジュールを、第一充電工程における充電レートよりも低い充電レートで、SOCが0%よりも大きく20%以下の予め定められた目標SOCとなるまで充電する第二充電工程と、第二充電工程において充電された蓄電モジュールを第一所定時間放置する第一放置工程と、第一放置工程において放置された蓄電モジュールの電圧を測定する第一測定工程と、第一測定工程において測定された蓄電モジュールを第二所定時間放置する第二放置工程と、第二放置工程において放置された蓄電モジュールの電圧を測定する第二測定工程と、第一測定工程において測定された電圧と第二測定工程において測定された電圧との差に基づいて、微小短絡の有無を判定する判定工程と、を含む。
【0009】
上記検査方法では、第一充電工程よりも低い充電レートで、SOCが0%よりも大きく20%以下の予め定められた目標SOCとなるまで充電する第二充電工程を実施することによって、放電工程後の蓄電モジュールにおける電圧値が最高電圧値となるまでの時間を短縮することができる。これにより、第二充電工程を実施しない場合と比べて、第一放置工程における時間を短縮することができるので、検査に要する時間を短縮することができる。更に、上記検査方法では、最高電圧値と収束電圧値との差に基づいて蓄電モジュールごとに微小短絡の判定がなされるので、第二放置工程後の電圧値に基づいて他の蓄電モジュールとの相対的な関係で微小短絡の有無を判定することと比べて微小短絡の判定精度を高めることができる。この結果、短時間かつ高い精度で、蓄電モジュールにおける微小短絡の有無を判定できる。
【0010】
本発明に係る検査方法の第二充電工程では、充電レートを0.01C以上1C以下の低充電レートとして蓄電モジュールを充電してもよい。これにより、第二充電工程に要する時間が長くなることを抑制しつつ、第二充電工程終了後の分極によって電圧がだらだらと低下し続けることを抑制できる。
【0011】
本発明に係る検査方法の第二充電工程では、SOCが2%よりも大きく10%以下の予め定められた目標SOCとなるまで蓄電モジュールを充電してもよい。これにより、微小短絡によってSOCが低下するときの第一測定工程において測定された電圧と第二測定工程において測定された電圧との差が適度に確保されるので、微小短絡の有無の判定が容易となる。
【0012】
本発明に係る検査方法の第一充電工程では、第一充電工程において充電された蓄電モジュールを第一SOCまで放電させる第一放電工程と、第一放電工程の後に実施され、蓄電モジュールを第一SOCよりも低い第二SOCまで放電する追加放電工程と、を含んでもよい。この検査方法では、第二充電工程前の蓄電モジュールのSOCを0%に近づけることができ、第二充電工程でより正確に、狙いのSOC(予め定められた目標SOC)まで充電することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、短時間かつ高い精度で、蓄電モジュールにおける微小短絡の有無を判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態に係る検査方法によって検査される蓄電モジュールを含む蓄電装置を示す概略断面図である。
図2】一実施形態に係る検査方法によって検査される蓄電モジュールを示す概略断面図である。
図3】一実施形態に係る検査方法のフローチャートである。
図4】放電後の蓄電モジュールにおける電圧低下の変化を示したグラフである。
図5】放電後の蓄電モジュールにおける電圧低下の変化を示したグラフである。
図6】追加充電後の蓄電モジュールにおける電圧の変化を示したグラフである。
図7図2の蓄電モジュール放電したときの電圧値の変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら一実施形態を詳細に説明する。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0016】
最初に、一実施形態に係る検査方法において検査される蓄電装置1の一例について、主に図1及び図2を見ながら説明する。蓄電装置1は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。図1及び図2に示されるように、蓄電装置1は、積層された複数の蓄電モジュール4を含むモジュール積層体2と、モジュール積層体2に対してモジュール積層体2の積層方向D1に拘束荷重を付加する拘束部材3と、を備えている。
【0017】
モジュール積層体2は、複数の蓄電モジュール4と、複数の導電板5と、を含む。蓄電モジュール4は、バイポーラ電池であり、積層方向D1から見て矩形状をなしている。蓄電モジュール4は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池、又は電気二重層キャパシタである。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
【0018】
積層方向D1に互いに隣り合う蓄電モジュール4同士は、導電板5を介して電気的に接続されている。ここでは、モジュール積層体2の積層端には、いずれも蓄電モジュール4が配置されており、導電板5は、積層方向D1に互いに隣り合う蓄電モジュール4間にそれぞれ配置されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の積層方向外側には、導電板5とは別の導電板Pが配置されている。一方の導電板Pには正極端子6が接続され、他方の導電板Pには負極端子7が接続されている。正極端子6及び負極端子7は、例えば導電板Pの縁部から積層方向D1に交差する方向に引き出されている。正極端子6及び負極端子7により、蓄電装置1の充放電が実施される。
【0019】
蓄電モジュール4間に配置された導電板5の内部には、空気等の冷却用媒体を流通させる複数の流路5aが設けられている。流路5aは、例えば積層方向D1と、正極端子6及び負極端子7の引き出し方向とにそれぞれ交差(直交)する方向に沿って延在している。導電板5は、蓄電モジュール4同士を電気的に接続する接続部材としての機能を有している。また、導電板5は、これらの流路5aに冷媒を流通させることにより、蓄電モジュール4で発生した熱を放熱する放熱板としての機能を併せ持っている。図1の例では、積層方向D1から見た導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積よりも小さくなっているが、放熱性の向上の観点から、導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積と同じであってもよく、蓄電モジュール4の面積よりも大きくなっていてもよい。
【0020】
拘束部材3は、モジュール積層体2を積層方向D1に挟む一対のエンドプレート8と、エンドプレート8同士を締結する締結ボルト9及びナット10とによって構成されている。エンドプレート8は、積層方向D1から見た蓄電モジュール4、導電板5、及び導電板Pの面積よりも一回り大きい面積を有する矩形の金属板である。エンドプレート8におけるモジュール積層体2側の面には、電気絶縁性を有する板状もしくはフィルム状の絶縁部材Fが設けられている。絶縁部材Fにより、エンドプレート8と導電板Pとの間が絶縁されている。
【0021】
エンドプレート8の縁部8bには、モジュール積層体2よりも外側となる位置に挿通孔8aが設けられている。締結ボルト9は、一方のエンドプレート8の挿通孔8aから他方のエンドプレート8の挿通孔8aに向かって挿通されている。他方のエンドプレート8の挿通孔8aから突出した締結ボルト9の先端部分には、ナット10が螺合されている。これにより、蓄電モジュール4、導電板5、及び導電板Pがエンドプレート8によって挟持され、モジュール積層体2としてユニット化されている。また、モジュール積層体2は、エンドプレート8,8によって積層方向D1に拘束荷重が付加されている。
【0022】
次に、蓄電モジュール4の構成について詳細に説明する。図2に示されるように、蓄電モジュール4は、電極積層体11と、電極積層体11を封止する樹脂製の封止体12とを備えている。電極積層体11は、セパレータ13を介して蓄電モジュール4の積層方向D1に沿って積層された複数の電極によって構成されている。これらの電極は、複数のバイポーラ電極14と、負極終端電極18と、正極終端電極19と、を含む。
【0023】
バイポーラ電極14は、一方面15a及び一方面15aの反対側の他方面15bを含む金属板15と、一方面15aに設けられた正極16と、他方面15bに設けられた負極17と、を有している。正極16は、正極活物質が金属板15に塗工されることにより形成されている。正極16を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。負極17は、負極活物質が金属板15に塗工されることにより形成されている。負極17を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。
【0024】
本実施形態では、金属板15の他方面15bにおける負極17の形成領域は、金属板15の一方面15aにおける正極16の形成領域に対して一回り大きくなっている。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の正極16は、セパレータ13を挟んで積層方向D1の一方に隣り合う別のバイポーラ電極14の負極17と対向している。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の負極17は、セパレータ13を挟んで積層方向D1の他方に隣り合う別のバイポーラ電極14の正極16と対向している。
【0025】
負極終端電極18は、金属板15と、金属板15の他方面15bに設けられた負極17とを有している。負極終端電極18は、他方面15bが電極積層体11における積層方向D1の中央側を向くように、積層方向D1の一端に配置されている。負極終端電極18の金属板15の一方面15aは、電極積層体11の積層方向D1における一方の外側面を構成し、蓄電モジュール4に隣接する一方の導電板5又は導電板P(図1参照)と電気的に接続されている。負極終端電極18の金属板15の他方面15bに設けられた負極17は、セパレータ13を介して、積層方向D1の一端のバイポーラ電極14の正極16と対向している。
【0026】
正極終端電極19は、金属板15と、金属板15の一方面15aに設けられた正極16とを有している。正極終端電極19は、一方面15aが電極積層体11における積層方向D1の中央側を向くように、積層方向D1の他端に配置されている。正極終端電極19の一方面15aに設けられた正極16は、セパレータ13を介して、積層方向D1の他端のバイポーラ電極14の負極17と対向している。正極終端電極19の金属板15の他方面15bは、電極積層体11の積層方向D1における他方の外側面を構成し、蓄電モジュール4に隣接する他方の導電板5又は導電板P(図1参照)と電気的に接続されている。
【0027】
金属板15は、例えば表面にめっきが施されたニッケル板や、表面にめっきが施された鋼板等からなる。ここでは、金属板15は、鋼板の表面にニッケルによるめっきを施してなるめっき鋼板によって構成されている。めっき鋼板の基材となる鋼板には、例えば圧延鋼等の普通鋼や、ステンレス鋼等の特殊鋼が用いられる。金属板15の縁部15cは、矩形枠状をなし、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっている。
【0028】
セパレータ13は、例えばシート状に形成されている。セパレータ13としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。セパレータ13は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されたものであってもよい。
【0029】
封止体12は、例えば絶縁性の樹脂によって、全体として矩形の筒状に形成されている。封止体12は、金属板15の縁部15cを包囲するように電極積層体11の側面11aに設けられている。封止体12は、側面11aにおいて縁部15cを保持している。封止体12は、金属板15の縁部15cに結合された複数の第一封止部21と、積層方向D1に沿って側面11aに延び、第一封止部21のそれぞれに結合された第二封止部22とを有している。第一封止部21及び第二封止部22は、耐アルカリ性を有する絶縁性の樹脂によって構成されている。第一封止部21及び第二封止部22の構成材料としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等が挙げられる。
【0030】
第一封止部21は、金属板15の一方面15aにおいて縁部15cの全周にわたって連続的に設けられ、積層方向D1から見て矩形枠状をなしている。本実施形態では、バイポーラ電極14の金属板15のみならず、負極終端電極18の金属板15及び正極終端電極19の金属板15に対しても第一封止部21が設けられている。負極終端電極18では、金属板15の一方面15aの縁部15cに第一封止部21が設けられ、正極終端電極19では、金属板15の一方面15a及び他方面15bの双方の縁部15cに第一封止部21が設けられている。
【0031】
第一封止部21は、金属板15の縁部15cに重ねられ、重なり部分Kが形成されている。重なり部分Kにおいて、第一封止部21は、例えば超音波又は熱圧着によって金属板15に気密に溶着されている。第一封止部21は、例えば積層方向D1に所定の厚さを有するフィルムを用いて形成されている。第一封止部21の内側は、積層方向D1に互いに隣り合う金属板15の縁部15c同士の間に位置している。第一封止部21の外側は、金属板15の縁よりも外側に張り出しており、その先端部分は、第二封止部22によって保持されている。積層方向D1に沿って互いに隣り合う第一封止部21同士は、互いに離間していてもよく、接していてもよい。また、第一封止部21の外縁部分同士は、例えば熱板溶着等によって互いに結合していてもよい。
【0032】
電極積層体11において、積層方向D1について内層に位置する第一封止部21の内縁側には、セパレータ13の縁部を載置するための段部23が設けられている。段部23は、第一封止部21を構成するフィルムの外縁部分を内側に折り返すことによって形成されていてもよい。段部23は、下段を構成するフィルムに上段を構成するフィルムを重ね合わせることによって形成されていてもよい。
【0033】
第二封止部22は、電極積層体11及び第一封止部21の外側に設けられ、蓄電モジュール4の外壁(筐体)を構成している。第二封止部22は、例えば樹脂の射出成型によって形成され、積層方向D1に沿って電極積層体11の全長にわたって延在している。第二封止部22は、積層方向D1を軸方向として延在する矩形の枠状を呈している。第二封止部22は、例えば射出成型時の熱によって第一封止部21の外縁部分に溶着されている。
【0034】
第二封止部22は、積層方向D1における両端部にオーバーハング部24をそれぞれ有している。一方のオーバーハング部24は、積層方向D1の一端部において第一封止部21の内縁側に張り出し、負極終端電極18を構成する金属板15の一方面15a側に溶着された第一封止部21に結合している。他方のオーバーハング部24は、積層方向D1の他端部において第一封止部21の内縁側に張り出し、正極終端電極19を構成する金属板15の他方面15b側に溶着された第一封止部21に結合している。一方及び他方のオーバーハング部24の張り出し長さは、互いに等しくなっており、これらのオーバーハング部24の先端24aは、積層方向D1から見て金属板15と第一封止部21との重なり部分Kに重なるように位置している。
【0035】
第一封止部21及び第二封止部22は、隣り合う電極の間に内部空間Vを形成すると共に、内部空間Vを封止する。より具体的には、第二封止部22は、第一封止部21と共に、積層方向D1に沿って互いに隣り合うバイポーラ電極14の間、積層方向D1に沿って互いに隣り合う負極終端電極18とバイポーラ電極14との間、及び積層方向D1に沿って互いに隣り合う正極終端電極19とバイポーラ電極14との間をそれぞれ封止している。これにより、隣り合うバイポーラ電極14の間、負極終端電極18とバイポーラ電極14との間、及び正極終端電極19とバイポーラ電極14との間には、それぞれ気密に仕切られた内部空間Vが形成されている。この内部空間Vには、例えば水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液を含む水系の電解液(不図示)が収容されている。電解液は、セパレータ13、正極16、及び負極17内に含浸されている。
【0036】
第一封止部21を金属板15に溶着するにあたり、上述した金属板15の表面は、例えば電解めっきによって粗面化されている。粗面化は、金属板15において、少なくとも第一封止部21が溶着される面に施されていればよい。本実施形態では、バイポーラ電極14を構成する金属板15及び負極終端電極18を構成する金属板15については、一方面15aのみが粗面化されていればよく、正極終端電極19を構成する金属板15については、一方面15a及び他方面15bの両面が粗面化されていればよい。
【0037】
次に、上記蓄電モジュール4の検査方法の一例について、主に図3を用いて説明する。本実施形態の検査方法は、図3に示されるように、第一充電工程S1と、放電工程(第一放電工程)S2と、追加放電工程S3と、第二充電工程S4と、第一放置工程S5と、第一測定工程S6と、第二放置工程S7と、第二測定工程S8と、判定工程S9と、を含んでいる。
【0038】
第一充電工程S1は、蓄電モジュール4を初期充電する、コンディショニング工程と呼ばれる工程である。第一充電工程S1は、所定のSOC(state of charge)(以下、「第一SOC」と称する。)までの放電と、所定のSOC(以下、「第三SOC」と称する。)までの充電とを少なくとも一回以上行う工程である。本実施形態では、第一SOCと第三SOCとの間で蓄電モジュール4を繰り返し(例えば、10回)充放電させ、最後は第三SOCまで充電させる。第一SOCの例は、0%~20%であり、第三SOCの例は、70%~160%である。
【0039】
放電工程S2は、第一充電工程S1によって充電された蓄電モジュール4を第一SOC(所定SOC)まで放電させる工程である。放電工程S2は、例えば、1C~5Cの充電レートで蓄電モジュール4を放電させる。追加放電工程S3は、放電工程S2に引き続き実施され、第一SOCよりも更に低い第二SOCとなるように蓄電モジュール4を放電する工程である。追加放電工程S3は、例えば、0.1C~1Cの充電レートで蓄電モジュール4を放電させる。
【0040】
第二充電工程S4は、追加放電工程S3において放電された蓄電モジュール4を、第一充電工程S1よりも低い充電レートで、SOCが0%よりも大きく20%以下の予め定められた目標SOCとなるまで充電する工程である。第二充電工程S4では、例えば、0.01C以上1C以下の低充電レートで蓄電モジュール4が充電される。なお、第二充電工程S4における充電は、SOCが2%以上10%以下であることが好ましく、SOCが3%以上5%以下であることがより好ましい。
【0041】
第一放置工程S5は、第二充電工程S4において充電された蓄電モジュール4を第一所定時間放置する工程である。第一放置工程S5における放置は、第二充電工程S4終了後に分極が原因で上昇する電圧値が下降に転じてその下降の割合が一定以下となるまでの時間を確保するための時間である。第一放置工程S5では、例えば、室温(例えば15℃~30℃)にて0.2(hr)~1(hr)の間、蓄電モジュール4を放置する。
【0042】
第一測定工程S6は、第一放置工程S5において放置された蓄電モジュール4の電圧を測定する工程である。第一測定工程S6における蓄電モジュール4の測定は、公知の機器を用いて測定する。
【0043】
第二放置工程S7は、第一測定工程S6において測定された蓄電モジュール4を第二所定時間放置する工程である。第二放置工程S7は、エージング(負極活物質の活性化)と同時に、正極に混入している可能性ある異物を電解液に溶かして負極で再析出させる工程である。具体的には、第二放置工程S7は、例えば、25℃~70℃の恒温槽の中に、第一測定工程S6において測定された蓄電モジュール4を投入し、例えば、24(hr)~168(hr)の間、蓄電モジュール4を放置する。なお、当該恒温槽の中には、蓄電モジュール4の電圧を測定する機器は設けられていない。
【0044】
第二測定工程S8は、第二放置工程S7において放置された蓄電モジュール4の電圧を測定する工程である。第二測定工程S8における蓄電モジュール4の測定は、公知の機器を用いて測定する。
【0045】
判定工程S9は、第一測定工程S6において測定された電圧と第二測定工程S8において測定された電圧との差(以下、単に「電圧差」と称する。)に基づいて、微小短絡の有無を判定する工程である。具体的には、予め定められた閾値に基づいて、電圧差が当該閾値よりも大きければ蓄電モジュール4には微小短絡が有ると判定し、電圧差が当該閾値以下であれば蓄電モジュール4には微小短絡が無いと判定する。
【0046】
次に、本実施形態の検査方法によって、短時間かつ高い精度で、蓄電モジュールにおける微小短絡の有無を判定できることが下記の実施例によって説明される。本実施形態の実施例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0047】
まず、上段にて説明した蓄電モジュール4を準備した。次に、SOCが5%~90%の間で蓄電モジュール4を繰り返し充放電させた(第一充電工程S1)。次に、SOCが約3%となるまで蓄電モジュール4を放電させた(放電工程S2)。より詳細には、4Cで蓄電モジュール4を放電させた。次に、放電された蓄電モジュール4のSOCが3%(第一SOC)よりも更に低い0%(第二SOC)となるまで蓄電モジュール4を放電した(追加放電工程S3)。より詳細には、0.4Cで蓄電モジュール4を放電させた。
【0048】
次に、蓄電モジュール4を、充電レートを0.1CとしてSOC(予め定められたSOC)が3%となるまで充電した(第二充電工程S4)。ここで、第二充電工程に要した時間は、0.3(hr)であった。次に、蓄電モジュール4を0.7(hr)放置した(第一放置工程S5)。この期間において、第二充電工程S4終了後に分極が原因で上昇する電圧値が下降に転じ、その後、時間の経過に対する電圧の下降の割合が一定以下となって電圧が安定した。本実施例の蓄電モジュール4では、放置後、0.5(hr)が経過したところで、下降の割合が一定以下となった。すなわち、蓄電モジュール4の端子間電圧が安定した。次に、下降の割合が一定以下となった蓄電モジュール4の電圧を測定した(第一測定工程S6)。
【0049】
次に、50℃に調温された恒温槽の中に蓄電モジュール4を投入し、例えば、48(hr)の間、蓄電モジュール4を放置した(第二放置工程S7)。そして、48(hr)後に当該蓄電モジュール4の電圧を測定した(第二測定工程S8)。最後に、第一測定工程S6において測定された電圧と第二測定工程S8において測定された電圧との差に基づいて、微小短絡の有無を判定した。具体的には、予め定められた閾値(例えば、1.5V)に基づいて、電圧差が当該閾値よりも大きければ蓄電モジュール4には微小短絡が有ると判定し、電圧差が当該閾値以下であれば蓄電モジュール4には微小短絡が無いと判定する。
【0050】
特許文献1に示される方法では、各モジュールの個体ごとの電圧変化をみるための基準電圧となる電圧の最高値を取得するために、放電工程S2後に12(hr)以上24(hr)以下の時間を要していたところ、本実施形態の検査方法では、各モジュールの個体ごとの電圧変化をみるための基準電圧となる安定電圧値を、1(hr)という極短時間で取得することが可能となる。これは、第二充電工程S4を実施することによって、放電工程・追加放電工程で生じた、水素イオンの濃度分布を極短時間で解消できるからであると考えられる。
【0051】
次に、上記実施形態の作用効果について説明する。図4のL1及びL2は、上記実施形態の第二充電工程S4後の蓄電モジュール4の電圧の変化を示した図である。そして、L1は、「微小短絡無し」と判定された蓄電モジュール4、L2は「微小短絡有り」と判定された蓄電モジュール4を示している。
【0052】
なお、後段にて詳述するが、図4のL3,L4は、第二充電工程S4を実施しなかった場合の放電工程S2後の蓄電モジュール4の電圧の変化を示す。図4のL3,L4に示されるように、初期充電(コンディショニング)後に蓄電モジュール4を放電すると、蓄電モジュール4の電圧は、一旦、上昇したあと下降に転じ、その後下降の割合が緩やかとなり、やがて収束していくことが知られていた。このような、自己放電及び微小短絡に起因した電圧低下の一例を示したのが図4のL3及びL4である。
【0053】
従来の検査方法では、蓄電モジュール4を放電した後、蓄電モジュール4を恒温槽に収容して放置(エージング工程)し、エージング工程終了後、蓄電モジュール4を恒温槽から取り出して電圧値を測定し、当該測定値を微小短絡の有無の判定要素としていた。この検査方法では、複数の蓄電モジュール4の電圧を測定し、それら複数の測定値の中で大きく乖離する測定値となった個体を微少短絡ありと判定したり、予め設定された閾値と比較して閾値よりも低い電圧となった個体を微少短絡ありと判定したりしていた。このような複数の蓄電モジュール4の相対的な関係に基づいた判定では、個体間のバラつきが考慮されておらず、その判定精度を高めることができなかった。判定精度を高める方法として、エージング工程後の電圧値を取得するだけではなく、それぞれの個体についてエージング工程における電圧の変化を測定することが考えられる。ところが、エージング工程で用いられる恒温槽の内部には、コスト低減のため電圧測定装置は設けておらず、現実的ではなかった。
【0054】
これに対して、上述した特許文献1のように、初期充電された蓄電モジュール4を放電した後、最高電圧値になるまで放置し、そのときの電圧値を取得した後、恒温槽に放置することが提案されている。図5は、複数の蓄電モジュール4について、放電後の電圧推移を測定した結果を示したグラフである。図5に示されるように、放電された蓄電モジュール4が最高電圧値に到達するまでの時間は蓄電モジュール4によってばらつきがある。ときには、放電された蓄電モジュール4が最高電圧値に到達するまでに20時間以上要することもあり得る。したがって、この検査方法では判定精度を高めることはできるものの、検査時間が長くなる。
【0055】
そこで、本実施形態の検査方法では、第一充電工程S1における充電レートよりも低い充電レートで、SOCが0%よりも大きく20%以下の予め定められた目標SOCとなるまで充電する第二充電工程S4を実施している。これにより、放電工程S2(追加放電工程S3)後の蓄電モジュール4が最高電圧値となるまでの時間を短縮することができる。具体的には、図4のL1及L2に示されるように、ポイントP11及びポイントP21までの時間を従来の検査方法の場合(図4のL3のポイントP31及びL4のポイントP41)に比べて短くすることができる。このため、第二充電工程S4を実施しない場合と比べて、第一放置工程S5における時間を短縮することができるので、検査に要する時間を短縮することができる。
【0056】
なお、第二充電工程S4を実施すると、図6に示されるように、分極が原因となって、電池電圧が充電終了時の電圧(図6に示されるH部)から降下することとなる。本実施形態では、当該充電終了時からの電池電圧の変化を観測し、その電圧降下の割合が0、もしくは最小となったポイントP5,P6地点の電圧を、その電池の最高電圧値と規定している。図6は、第二充電工程S4後の蓄電モジュール4の電圧値の変化を示した図である。図6のL5は、第二充電工程S4においてSOCが3%となるまで充電した蓄電モジュール、L6は、SOCが5%となるまで充電した蓄電モジュール4の電圧値の変化を示している。
【0057】
また、本実施形態の検査方法では第二充電工程S4を実施することによって、第二放置工程S7における正常電池の自己放電に起因する電圧降下の幅が小さくなる。このため、第二放置工程S7終了後の判定工程S9における正常判定値(電圧降下量)を狭い範囲として設定することができる。この結果、判定工程S9における異常と正常との判定精度が向上する。
【0058】
従来の検査方法では、エージング工程(第二放置工程S7)終了時点で測定される電圧値に基づいて微小短絡の有無が判定されるので、例えば、予め設定された閾値に対して高い電圧値を示すL4の個体が「微小短絡無し」と判定され、閾値に対して低い電圧値を示すL3の個体が「微小短絡有り」と判定される可能性がある。ところが、「微小短絡無し」と判定されたL4は、最高電圧値P41とエージング工程後の電圧値N2との電圧差が大きく、本来であれば、「微小短絡有り」と判定されるべき蓄電モジュール4であり、また「微小短絡あり」と判定されたL3は、最高電圧値P31とエージング工程後の電圧値G2との電圧差が小さく、本来であれば、「微小短絡なし」と判定されるべき蓄電モジュール4である。このように、従来の検査方法では、個体間のバラつきを考慮した判定を行うことができなかった。本実施形態の検査方法では、個体ごとに、エージング工程の前と後の電圧を取得して、その差に基づいて判定しているので、誤判定を生じる可能性が少なくなる。これにより、検査精度を高めることが可能となる。本実施形態では、第二放置工程S7における正確な電圧降下量を取得することで検査精度を高めることができるのに加え、このような要素も加わり、より一層の高精度化が可能となる。
【0059】
また、本実施形態の検査方法における第二充電工程S4では、SOCが0%よりも大きく20%以下となる予め定められた目標SOCまで充電している。ここで上限を20%としたのは次の理由による。図7は、蓄電モジュール4を放電したときの電圧値の変化(電圧カーブ)を示している。図7に示されるように、上記実施形態において検査される蓄電モジュール4は、SOCが20%を超えるとSOCが低下したときの電圧降下量が小さくなる傾向がある。このため、SOCが20%を超えて充電すると、微小短絡によって電圧低下があったとしても、その電圧差を検出し難くなる。この点、本実施形態の第二充電工程S4では、SOC20%以下となるようにしているので、微小短絡による電圧低下があったことが検出し易くなる。
【0060】
また、上記実施形態の検査方法における第二充電工程では、0.01C以上1C以下の充電レートで蓄電モジュール4を充電している。これにより、第二充電工程S4に要する時間を長くすることを抑制しつつ、第二充電工程S4終了後の分極によって電圧がだらだらと低下し続けることを抑制できる。
【0061】
以上、一実施形態について詳細に説明されたが、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0062】
上記実施形態では、追加放電工程S3を実施する例を挙げて説明したが、当該工程は省略してもよい。
【0063】
上記実施形態では、ニッケル水素二次電池として構成された蓄電モジュール4を検査する例を挙げて説明したが、リチウムイオン二次電池として構成された蓄電モジュールにも適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1…蓄電装置、4…蓄電モジュール、S1…第一充電工程、S2…放電工程(第一放電工程)、S3…追加放電工程、S4…第二充電工程、S5…第一放置工程、S6…第一測定工程、S7…第二放置工程、S8…第二測定工程、S9…判定工程。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7