(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】マニピュレーションシステム及びマニピュレーションシステムの駆動方法
(51)【国際特許分類】
G02B 21/32 20060101AFI20230208BHJP
B25J 7/00 20060101ALI20230208BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20230208BHJP
G02B 21/26 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
G02B21/32
B25J7/00
B25J13/08 A
G02B21/26
(21)【出願番号】P 2019145713
(22)【出願日】2019-08-07
【審査請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】リチャード ハウス
(72)【発明者】
【氏名】嵯峨山 功幸
(72)【発明者】
【氏名】倉持 尚史
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸明
【審査官】藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/063898(WO,A1)
【文献】特開2006-035132(JP,A)
【文献】特開平11-346764(JP,A)
【文献】特開2010-261929(JP,A)
【文献】特開平07-027539(JP,A)
【文献】特開2003-095800(JP,A)
【文献】特開2017-071020(JP,A)
【文献】国際公開第2005/026238(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0217007(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0209382(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0116732(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 21/06 -21/36
B25J 7/00
B25J 13/08
C12M 1/00 - 3/10
G01N 1/00 - 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶化タンパク質及び前記結晶化タンパク質を内包する液滴が収容される容器と、
前記容器が載置される試料ステージと、
前記液滴の表面を覆う液滴表面膜を破砕する破砕用器具と、
前記破砕用器具を軸方向に移動させるための微動機構と、
前記試料ステージ、前記破砕用器具及び前記微動機構を制御し、前記破砕用器具の先端を前記液滴表面膜に接触させた状態で、前記微動機構に前記破砕用器具を加振させ、かつ、加振後に前記液滴表面膜が破砕されたか否かを判断するコントローラと、
を備えるマニピュレーションシステム。
【請求項2】
前記破砕用器具を回動させる電動モータをさらに備える
請求項1に記載のマニピュレーションシステム。
【請求項3】
前記微動機構は、圧電素子を含む
請求項1又は2に記載のマニピュレーションシステム。
【請求項4】
前記結晶化タンパク質、前記液滴及び前記破砕用器具を撮像する撮像装置を備える
請求項1から3のいずれか1項に記載のマニピュレーションシステム。
【請求項5】
前記コントローラは、前記撮像装置の画像データに基づいて、前記液滴表面膜が破砕されたか否かを判断する
請求項4に記載のマニピュレーションシステム。
【請求項6】
前記結晶化タンパク質を採取する採取用器具を備え、
前記破砕用器具は、前記結晶化タンパク質を採取する前記採取用器具である
請求項1から5のいずれか1項に記載のマニピュレーションシステム。
【請求項7】
前記採取用器具は、輪状の採取部を先端に含む
請求項6に記載のマニピュレーションシステム。
【請求項8】
前記結晶化タンパク質を採取する採取用器具を備え、
前記破砕用器具は、毛細管であり、
前記コントローラは、前記液滴表面膜を破砕させた後、前記液滴表面膜を破砕させた位置から前記採取用器具を前記液滴に挿入して前記結晶化タンパク質を採取させる
請求項1から5のいずれか1項に記載のマニピュレーションシステム。
【請求項9】
前記毛細管は、先端から液体を吐出可能であり、
前記コントローラは、前記液滴表面膜を破砕させた後、前記毛細管の先端から前記液滴に前記液体を注入させる
請求項8に記載のマニピュレーションシステム。
【請求項10】
結晶化タンパク質及び前記結晶化タンパク質を内包する液滴が収容される容器と、
前記容器が載置される試料ステージと、
前記液滴の表面を覆う液滴表面膜を破砕する破砕用器具と、
前記破砕用器具を軸方向に移動させるための微動機構と、
を備えるマニピュレーションシステムの駆動方法であって、
前記破砕用器具の先端を前記液滴表面膜に接触させるステップと、
前記微動機構に前記破砕用器具を加振させるステップと、
加振後に前記液滴表面膜が破砕されたか否かを判断するステップと、
を含むマニピュレーションシステムの駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マニピュレーションシステム及びマニピュレーションシステムの駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
創薬スクリーニングの分野において、X線分析装置を用いて結晶化タンパク質のX線回析データを測定することによって、タンパク質の立体構造の解明する手法が知られている。結晶化タンパク質は、生成液の中から1つずつ採取され、凍結されてからX線分析装置に設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、結晶化タンパク質を内包する液滴の表面は、硬質の液滴表面膜で覆われることがある。このため、作業者は、採取用器具を押し込んで液滴表面膜を破砕する必要があった。しかしながら、結晶化タンパク質を傷付けることなく、採取用器具で液滴表面膜を破砕するには、熟練の技術を必要としていた。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、操作者の技術及び熟練度によらず、効率よくかつ好適に結晶化タンパク質を採取できるマニピュレーションシステム及びマニピュレーションシステムの駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るマニピュレーションシステムは、結晶化タンパク質及び前記結晶化タンパク質を内包する液滴が収容される容器と、前記容器が載置される試料ステージと、前記液滴の表面を覆う液滴表面膜を破砕する破砕用器具と、前記破砕用器具を軸方向に移動させるための微動機構と、前記試料ステージ、前記破砕用器具及び前記微動機構を制御し、前記破砕用器具の先端を前記液滴表面膜に接触させた状態で、前記微動機構に前記破砕用器具を加振させ、かつ、加振後に前記液滴表面膜が破砕されたか否かを判断するコントローラと、を備える。
【0007】
これによれば、破砕用器具を液滴表面膜に接触させた状態において、微動機構が破砕用器具を加振させることによって破砕するため、液滴表面膜を破砕する際の液滴に内包される結晶化タンパク質への損傷を抑制することができる。また、破砕用器具を液滴表面膜に接触させる制御、及び破砕用器具を加振させる制御が、コントローラによって自動で行われるため、結晶化タンパク質の損傷を抑制して、効率よくかつ好適に液滴表面膜を破砕することができる。液滴表面膜が除去されることにより、結晶化タンパク質の損傷を抑制して、効率よくかつ好適に結晶化タンパク質を採取することができる。
【0008】
本発明の一態様に係るマニピュレーションシステムは、前記破砕用器具を回動させる電動モータをさらに備える。これによれば、破砕用器具が、より好適な方向及び姿勢によって液滴表面膜を破砕することができる。
【0009】
本発明の一態様に係るマニピュレーションシステムにおいて、前記微動機構は、圧電素子を含む。これによれば、所定の周期の周波数に基づいて圧電素子に直接電圧を印加することによって、破砕用器具を軸方向に振動させることができる。圧電素子に直接電圧を印加することによって、破砕用器具の振動をより好適に制御することができる。したがって、操作者の熟練度及び技術によらず、液滴表面膜の破砕操作時の結晶化タンパク質への損傷を抑制することができる。
【0010】
本発明の一態様に係るマニピュレーションシステムは、前記結晶化タンパク質、前記液滴及び前記破砕用器具を撮像する撮像装置を備える。これによれば、例えば、撮像装置の画像データに基づいて結晶化タンパク質、液滴及び破砕用器具の位置情報を検出することが可能である。例えば、検出された位置情報に基づいて、好適な破砕位置を決定することによって、操作者の技術及び熟練度によらず、効率よくかつ好適に液滴表面膜を破砕することができる。
【0011】
本発明の一態様に係るマニピュレーションシステムにおいて、前記コントローラは、前記撮像装置の画像データに基づいて、前記液滴表面膜が破砕されたか否かを判断する。これによれば、コントローラが、画像データに基づいて液滴表面膜が破砕用器具に破砕されたか否かを自動で判断するので、操作者の技術及び熟練度によらず、効率よくかつ好適に液滴表面膜が破砕されたか否かを判断することができる。
【0012】
本発明の一態様に係るマニピュレーションシステムは、前記結晶化タンパク質を採取する採取用器具を備える。マニピュレーションシステムにおいて、前記破砕用器具は、前記結晶化タンパク質を採取する前記採取用器具である。これによれば、液滴表面膜を破砕するための専用の器具が不要であり、破砕用器具を採取用器具に交換する必要もないので、装置構成及びシステムのプログラムを簡略化することができる。
【0013】
本発明の一態様に係るマニピュレーションシステムにおいて、前記採取用器具は、輪状の採取部を先端に含む。これによれば、採取用器具が、結晶化タンパク質を含む生成液を、生成液の表面張力によって、採取部の内側の領域において保持することができる。結晶化タンパク質が採取用器具に触れないので、結晶化タンパク質の損傷を抑制することができる。
【0014】
本発明の一態様に係るマニピュレーションシステムは、前記結晶化タンパク質を採取する採取用器具を備える。マニピュレーションシステムにおいて、前記破砕用器具は、毛細管であり、前記コントローラは、前記液滴表面膜を破砕させた後、前記液滴表面膜を破砕させた位置から前記採取用器具を前記液滴に挿入して前記結晶化タンパク質を採取させる。これによれば、微動機構が毛細管を加振させることによって破砕するため、より好適に液滴表面膜を破砕することができる。
【0015】
本発明の一態様に係るマニピュレーションシステムにおいて、前記毛細管は、先端から液体を吐出可能であり、前記コントローラは、前記液滴表面膜を破砕させた後、前記毛細管の先端から前記液滴に前記液体を注入させる。これによれば、液滴の体積が増加して膨張し、液滴表面膜が大きく破砕する。確実に液滴表面膜を除去することにより、結晶化タンパク質の損傷を抑制して、効率よくかつ好適に結晶化タンパク質を採取することができる。
【0016】
本発明の一態様に係るマニピュレーションシステムの駆動方法は、結晶化タンパク質及び前記結晶化タンパク質を内包する液滴が収容される容器と、前記容器が載置される試料ステージと、前記液滴の表面を覆う液滴表面膜を破砕する破砕用器具と、前記破砕用器具を軸方向に移動させるための微動機構と、を備えるマニピュレーションシステムの駆動方法であって、前記破砕用器具の先端を前記液滴表面膜に接触させるステップと、前記微動機構に前記破砕用器具を加振させるステップと、加振後に前記液滴表面膜が破砕されたか否かを判断するステップと、を含む。
【0017】
これによれば、破砕用器具を液滴表面膜に接触させた状態において、微動機構が破砕用器具を加振させることによって破砕するため、液滴表面膜を破砕する際の液滴に内包される結晶化タンパク質への損傷を抑制することができる。また、破砕用器具を液滴表面膜に接触させる制御、及び破砕用器具を加振させる制御が、コントローラによって自動で行われるため、結晶化タンパク質の損傷を抑制して、効率よくかつ好適に液滴表面膜を破砕することができる。液滴表面膜が除去されることにより、結晶化タンパク質の損傷を抑制して、効率よくかつ好適に結晶化タンパク質を採取することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、操作者の技術及び熟練度によらず、効率よくかつ好適に結晶化タンパク質を採取できるマニピュレーションシステム及びマニピュレーションシステムの駆動方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るマニピュレーションシステムの構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すマニピュレーションシステムの一部を拡大して示す斜視図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係るマニピュレーションシステムの構成例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係るマニピュレーションシステムの構成例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、検出部の構成例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、記憶部の構成例を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、表示部の画面の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係る採取用ワイヤープローブ及びプローブ保持部の構成例を示す模式図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係る採取用ワイヤープローブの先端部を拡大して示す模式図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係る微動機構の一例を示す断面図である。
【
図11】
図11は、第1実施形態に係る液滴表面膜の破砕動作を説明する説明図である。
【
図13】
図13は、第1実施形態に係る動作の一例を示すフローチャート図である。
【
図14】
図14は、第2実施形態に係る毛細管及びプローブ保持部の構成例を示す模式図である。
【
図15】
図15は、第2実施形態に係る毛細管の先端部を拡大して示す模式図である。
【
図16】
図16は、第2実施形態に係る液滴表面膜の破砕動作を説明する説明図である。
【
図17】
図17は、第2実施形態に係る動作の一例を示すフローチャート図である。
【
図18】
図18は、第3実施形態に係る毛細管及びプローブ保持部の構成例を示す模式図である。
【
図19】
図19は、第3実施形態に係る微動機構の一例を示す断面図である。
【
図20】
図20は、第3実施形態に係る液滴表面膜の破砕動作を説明する説明図である。
【
図21】
図21は、第3実施形態に係る動作の一例を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0021】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るマニピュレーションシステムの構成例を示す斜視図である。
図2は、
図1に示すマニピュレーションシステムの一部を拡大して示す斜視図である。
図3は、第1実施形態に係るマニピュレーションシステムの構成例を示す模式図である。
図1から
図3に示すマニピュレーションシステム100は、容器38内の液滴Dr(
図7参照)から、所望の結晶化タンパク質CP(
図7参照)を1個ずつ分取する装置である。
【0022】
図1から
図3に示すように、マニピュレーションシステム100は、基台1と、採取用ワイヤープローブ10と、プローブ保持部15と、マニピュレータ20と、試料ステージ30と、第1撮像装置45を含む第1顕微鏡ユニット40と、コントローラ50と、第2撮像装置65を含む第2顕微鏡ユニット60と、第3撮像装置75と、ジョイスティック57と、入力部58と、表示部80と、を備える。実施形態において、X軸方向は、試料ステージ30の載置面30aに平行な一方向である。実施形態において、Y軸方向は、載置面30aに平行で、かつ、X軸方向と直交する方向である。実施形態において、Z軸方向は、載置面30aの法線方向である。θ軸方向は、採取用ワイヤープローブ10の長手方向を回転軸とする回転方向である。基台1の配置は、例えば、載置面30aが鉛直方向と直交する水平面となるように調整されている。
【0023】
採取用ワイヤープローブ10は、結晶化タンパク質CPを採取するための採取用器具である。採取用ワイヤープローブ10は、第1実施形態において、液滴表面膜Sf(
図7参照)を破砕するための破砕用器具でもある。採取用ワイヤープローブ10の詳細は、後述にて
図8、
図9及び
図10を参照して説明する。
【0024】
プローブ保持部15は、採取用ワイヤープローブ10を保持するための器具である。プローブ保持部15の一端は、採取用ワイヤープローブ10に連結している。プローブ保持部15の他端は、マニピュレータ20の電動モータ29に接続されている。プローブ保持部15は、後述の連結部28を介してマニピュレータ20に連結されている。プローブ保持部15の詳細は、後述にて
図8、
図9及び
図10を参照して説明する。
【0025】
マニピュレータ20は、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に動作することによって、プローブ保持部15及び採取用ワイヤープローブ10を動作させることができる。マニピュレータ20は、X軸テーブル21と、Y軸テーブル22と、Z軸テーブル23と、駆動装置26、27と、連結部28、71と、電動モータ29と、を備える。X軸テーブル21は、駆動装置26が駆動することによって、X軸方向に移動する。Y軸テーブル22は、駆動装置26が駆動することによって、Y軸方向に移動する。Z軸テーブル23は、駆動装置27が駆動することによって、Z軸方向に移動する。駆動装置26、27と、電動モータ29は、コントローラ50に接続されている。
【0026】
連結部28は、プローブ保持部15をマニピュレータ20に連結している。連結部71は、第1顕微鏡ユニット40の鏡筒411をマニピュレータ20に連結している。連結部28、71は、例えば金属製である。連結部28、71は、例えばZ軸テーブル23に取り付けられている。これにより、プローブ保持部15及び第1顕微鏡ユニット40は、Z軸テーブル23の移動にしたがって、Z軸テーブル23と同じ距離だけZ軸方向に移動することができる。
【0027】
マニピュレータ20において、Z軸テーブル23はY軸テーブル22上に取り付けられている。これにより、プローブ保持部15及び第1顕微鏡ユニット40は、Y軸テーブル22の移動にしたがって、Y軸テーブル22と同じ距離だけY軸方向に移動することができる。さらに、Y軸テーブル22はX軸テーブル21上に取り付けられている。これにより、プローブ保持部15及び第1顕微鏡ユニット40は、X軸テーブル21の移動にしたがって、X軸テーブル21と同じ距離だけX軸方向に移動することができる。このように、プローブ保持部15及び第1顕微鏡ユニット40は、連結部28、71を介して、互いに固定されている。プローブ保持部15及び第1顕微鏡ユニット40は、マニピュレータ20の動作にしたがって、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に一体となって移動することができる。
【0028】
試料ステージ30は、容器38を支持する。例えば、試料ステージ30の載置面30aに容器38が載置される。容器38は、実施形態において、ウェルプレートである。容器38は、実施形態において、6つのウェル38aを含む。容器38のウェル38aには、結晶化タンパク質CPを含む液滴Drが収容される(
図7参照)。試料ステージ30は、X軸ステージ31と、Y軸ステージ32と、駆動装置36と、を備える。X軸ステージ31は、駆動装置36が駆動することによって、X軸方向に移動する。Y軸ステージ32は、駆動装置36が駆動することによって、Y軸方向に移動する。X軸ステージ31はY軸ステージ32上に取り付けられている。駆動装置36は、コントローラ50に接続されている。
【0029】
実施形態においては、試料ステージ30上に1個の容器38が載置されている場合を示しているが、試料ステージ30上に載置される容器38の数は1個に限定されず複数個でもよい。容器38は、実施形態において、平面形状が矩形であるが、矩形でなくてもよく、例えば、円形でもよい。容器38は、シャーレ又はディッシュでもよい。試料ステージ30は、実施形態において、平面視による形状(以下、平面形状)が矩形であるが、矩形でなくてもよく、例えば、円形でもよい。
【0030】
第1顕微鏡ユニット40は、試料ステージ30の上方に配置されている。第1顕微鏡ユニット40は、第1顕微鏡41と、第1撮像装置45と、試料ステージ30の載置面30aに向けて光を照射する光源と、を含む。第1顕微鏡41は、鏡筒411と、対物レンズ412と、駆動装置414と、を含む。第1顕微鏡41は、対物レンズ412が容器38の上方に位置する実体顕微鏡である。対物レンズ412は、駆動装置414が駆動することによって、Z軸方向に移動する。これにより、第1顕微鏡41は、焦点位置を調節することができる。対物レンズ412は、所望の倍率に合わせて複数種類が用意されていてもよい。第1撮像装置45は、例えば、CMOSイメージセンサ又はCCDイメージセンサ等の固体撮像素子を含む。第1撮像装置45は、第1顕微鏡41を介して、採取用ワイヤープローブ10の先端をZ軸方向から撮像することができる。第1顕微鏡ユニット40は、接眼レンズを備えてもよい。第1顕微鏡ユニット40は、駆動装置414が駆動することによって、Z軸方向に動作する。駆動装置414は、後述の制御部55によって駆動される。鏡筒411は、連結部71によってマニピュレータ20に連結されている。これにより、マニピュレータ20、プローブ保持部15及び採取用ワイヤープローブ10は、第1顕微鏡ユニット40のZ軸方向の動作に合わせてZ軸方向に動作する。
【0031】
第2顕微鏡ユニット60は、試料ステージ30の側方に配置されている。第2顕微鏡ユニット60は、第2顕微鏡61と、第2撮像装置65と、を含む。第2顕微鏡61は、鏡筒611と、対物レンズ612と、駆動装置613と、を含む。対物レンズ612は、駆動装置613が駆動することによって、Y軸方向に移動する。これにより、第2顕微鏡61は、焦点位置を調節することができる。第2撮像装置65は、例えば、CMOSイメージセンサ又はCCDイメージセンサ等の固体撮像素子を含む。第2撮像装置65は、第2顕微鏡61を介して、採取用ワイヤープローブ10の先端をY軸方向から撮像することができる。第2顕微鏡ユニット60は、固定具3を介して基台1に固定されている。
【0032】
第3撮像装置75は、固定具4を介して基台1に固定されている。固定具4は、X軸方向及びY軸方向に動くことができ、Z軸方向に延伸することができる。これにより、第3撮像装置75は、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向とそれぞれ交差する、試料ステージ30の斜め上方向から、試料ステージ30側を撮像することができる。
【0033】
入力部58は、キーボード又はタッチパネル等である。ジョイスティック57及び入力部58は、コントローラ50に接続されている。操作者は、ジョイスティック57及び入力部58を介して、コントローラ50にコマンドを入力することができる。操作者がジョイスティック57を操作することによって、ジョイスティック57からコントローラ50に制御信号Vsig1が出力される。操作者が入力部58を操作することによって、入力部58からコントローラ50に制御信号Vsig2が出力される。
【0034】
次に、コントローラ50の機能について、
図4を参照して説明する。
図4は、第1実施形態に係るマニピュレーションシステムの構成例を示すブロック図である。コントローラ50は、演算手段としてのCPU(中央演算処理装置)及び記憶手段としてのハードディスク、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のハードウェア資源を備える。
【0035】
図4に示すように、コントローラ50は、その機能として、画像入力部51aと、画像出力部51bと、画像処理部52と、検出部53と、画像編集部54と、制御部55と、記憶部56と、を含む。画像入力部51a、画像出力部51b、画像処理部52、検出部53、画像編集部54及び制御部55は、上記の演算手段により実現される。記憶部56は、上記の記憶手段により実現される。コントローラ50は、記憶部56に格納されたプログラムに基づいて各種の演算を行い、演算結果にしたがって制御部55が各種の制御を行うように駆動信号を出力する。
【0036】
制御部55は、第1顕微鏡ユニット40の駆動装置414と、マニピュレータ20の駆動装置26、27及び電動モータ29と、試料ステージ30の駆動装置36と、第2顕微鏡ユニット60の駆動装置613とを制御する。制御部55は、駆動装置414、26、27、36、613に駆動信号Vz1、Vxy2、Vz2、Vxy3、Vy4(
図3参照)をそれぞれ供給する。制御部55は、電動モータ29に駆動信号Vθ(
図3参照)を供給する。制御部55は、必要に応じて設けられたドライバやアンプ等を介して、駆動信号Vz1、Vxy2、Vz2、Vxy3、Vy4、Vθをそれぞれ供給してもよい。
【0037】
第1撮像装置45から出力される第1画像信号Vpix1(
図3参照)と、第2撮像装置65から出力される第2画像信号Vpix2(
図3参照)と、第3撮像装置75から出力される第3画像信号Vpix3(
図3参照)は、画像入力部51aにそれぞれ入力される。画像処理部52は、画像入力部51aから第1画像信号Vpix1、第2画像信号Vpix2、第3画像信号Vpix3を受け取って、画像処理を行う。画像出力部51bは、画像処理部52で画像処理された画像情報を記憶部56及び表示部80へ出力する。
【0038】
例えば、第1画像信号Vpix1には、第1顕微鏡41を通して第1撮像装置45が撮像した第1画像と、その撮像時刻とが含まれている。第1画像は動画である。同様に、第2画像信号Vpix2には、第2顕微鏡61を通して第2撮像装置65が撮像した第2画像と、その撮像時刻とが含まれている。第2画像も動画である。第3画像信号Vpix3には、第3撮像装置75が撮像した第3画像と、その撮像時刻とが含まれている。第3画像も動画である。
【0039】
第1画像、第2画像及び第3画像は、それぞれカラー画像又はグレー画像である。グレー画像は、白色及び黒色と、白色と黒色の中間色である灰色を含む画像である。グレー画像は、灰色に複数の階調を含む。階調とは、色や明るさの濃淡の段階数のことである。
【0040】
画像処理部52は、採取用ワイヤープローブ10のループ部11(
図9参照)、結晶化タンパク質CP(
図7参照)及び液滴表面膜Sf(
図7参照)の検出を容易にするために、第1画像又は第2画像の少なくとも一方について、画像の拡大や2値化等の画像処理をする。画像の2値化とは、カラー画像又はグレー画像(以下、元画像)を、濃淡がなく、白色と黒色としかない2値画像(binary image)に変換することである。画像処理部52は、第1画像又は第2画像の少なくとも一方について、元画像を拡大した拡大画像や、元画像を2値化した2値画像を生成する。画像処理部52は、元画像を拡大し、2値化した拡大2値画像を生成してもよい。画像処理部52は、拡大画像、2値画像、拡大2値画像の少なくとも1種類以上を画像情報として、検出部53と画像編集部54とに出力する。
【0041】
検出部53は、画像処理部52から画像情報を受け取る。検出部53は、受け取った画像情報に基づいて、例えば、採取用ワイヤープローブ10のループ部11(
図9参照)の位置、姿勢及び形状を自動で検出する。検出部53は、受け取った画像情報に基づいて、例えば、結晶化タンパク質CP(
図7参照)の位置及び個数を自動で検出する。検出部53は、受け取った画像情報に基づいて、例えば、液滴表面膜Sf(
図7参照)の外形状を自動で検出する。検出部53は、受け取った画像情報に基づいて、例えば、液滴表面膜Sfの外形状の中にあり、液滴表面膜Sfに形成された破砕孔TH(
図12参照)を自動で検出する。そして、検出部53は検出結果を画像編集部54及び記憶部56に出力する。
【0042】
図5は、検出部の構成例を示すブロック図である。
図5に示すように、検出部53は、その機能として、位置検出部531と、距離検出部532と、個数検出部533と、外形状検出部534、破砕孔検出部535と、を含む。位置検出部531は、画像処理部52によって画像処理された第1画像又は第2画像に基づいて、結晶化タンパク質CP(
図7参照)の位置を自動で検出する。距離検出部532は、位置検出部531によって検出された結晶化タンパク質CPと採取用ワイヤープローブ10のループ部11(
図9参照)との離隔距離を自動で検出する。個数検出部533は、画像処理部52によって画像処理された第1画像又は第2画像に基づいて、結晶化タンパク質CPの位置及び個数を自動で検出する。外形状検出部534は、画像処理部52によって画像処理された第1画像又は第2画像に基づいて、液滴表面膜Sf(
図7参照)の外形状を検出する。破砕孔検出部535は、画像処理部52によって画像処理された第1画像又は第2画像に基づいて、液滴表面膜Sfの外形状の中にあり、液滴表面膜Sfに形成された破砕孔TH(
図12参照)を検出する。画像処理部52によって画像処理された画像として、例えば、拡大画像、2値画像及び拡大2値画像の少なくとも1種類以上が挙げられる。位置検出部531、距離検出部532、個数検出部533、外形状検出部534及び破砕孔検出部535の各検出結果は、画像編集部54及び記憶部56にそれぞれ出力される。
【0043】
画像編集部54は、第1画像信号Vpix1、第2画像信号Vpix2、第3画像信号Vpix3を、撮像時刻に基づいて互いに関連付けして、編集画像信号Vpix4を生成する。編集画像信号Vpix4には、編集画像が含まれている。編集画像は、互いに同じ時刻に撮像された第1画像、第2画像及び第3画像を並べて表示する動画である。編集画像において、第1画像、第2画像及び第3画像はそれぞれ、元画像でもよいし、元画像を画像処理した拡大画像、2値画像又は拡大2値画像であってもよい。画像出力部51bは、第1画像信号Vpix1、第2画像信号Vpix2、第3画像信号Vpix3及び編集画像信号Vpix4を記憶部56に出力する。
【0044】
画像編集部54は、検出部53からループ部11(
図9参照)、結晶化タンパク質CP(
図7参照)、液滴表面膜Sf(
図7参照)及び破砕孔TH(
図12参照)の検出結果を受信する。検出部53が結晶化タンパク質CPの位置を検出した場合、画像編集部54は、その検出結果を編集画像に反映させてもよい。例えば、画像編集部54は、画像処理部52から受け取った拡大画像、2値画像又は拡大2値画像において、検出部53が検出した結晶化タンパク質CPの位置を矢印によって自動で示したり、検出部53が検出した結晶化タンパク質CPの位置を枠線によって自動で囲んだりしてもよい。検出部53が液滴表面膜Sfの外形状を検出した場合、画像編集部54は、その検出結果を編集画像に反映させてもよい。例えば、画像編集部54は、画像処理部52から受け取った拡大画像、2値画像又は拡大2値画像において、検出部53が検出した液滴表面膜Sfの外形状を強調表示してもよい。検出部53が破砕孔THを検出した場合、画像編集部54は、その検出結果を編集画像に反映させてもよい。例えば、画像編集部54は、画像処理部52から受け取った拡大画像、2値画像又は拡大2値画像において、検出部53が検出した破砕孔THの外形状を強調表示してもよい。
【0045】
図6は、記憶部の構成例を示すブロック図である。
図6に示すように、記憶部56は、その機能として、マニピュレーションシステム100を動作させるためのプログラムを記憶したプログラム記憶部56aと、画像信号を記憶する画像記憶部56bと、を含む。画像記憶部56bは、第1画像信号Vpix1を記憶する第1画像記憶部561と、第2画像信号Vpix2を記憶する第2画像記憶部562と、第3画像信号Vpix3を記憶する第3画像記憶部563と、編集画像信号Vpix4を記憶する編集画像記憶部564と、を含む。
【0046】
画像出力部51bは、第1画像信号Vpix1、第2画像信号Vpix2、第3画像信号Vpix3及び編集画像信号Vpix4のうち、少なくとも1つ以上の画像信号を表示部80に出力する(
図3参照)。画像出力部51bは、コントローラ50に入力された制御信号Vsig1に従って、表示部80に出力する画像信号を選択して表示部80に出力する。画像出力部51bは、コントローラ50に入力された制御信号Vsig2に従って、表示部80に出力する画像信号を選択して表示部80に出力してもよい。
【0047】
表示部80は、例えば液晶パネル等である。表示部80は、コントローラ50に接続されている。表示部80は、種々の文字情報や画像等を画面に表示する。
図7は、表示部の画面の一例を示す図である。
図7は、表示部80の画面81に編集画像が表示されている場合を例示している。編集画像では、互いに同じタイミングで撮像された第1画像811、第2画像812、第3画像813が並んで配置されている。表示部80は、編集画像をリアルタイム又はほぼリアルタイムで表示してもよいし、編集画像記憶部564に記憶されている編集画像を読み出して再生表示してもよい。
【0048】
操作者がジョイスティック57又は入力部58を操作することによって、画面81に表示される画像を切り替えることが可能である。操作者がジョイスティック57又は入力部58を操作することによって、画面81に表示される編集画像(動画)を一時停止させることが可能である。プログラム記憶部56a(
図6参照)が記憶しているプログラムに基づいて、制御部55(
図4参照)が所定の画像を画面81に自動で表示させたり、画面81に表示される画像を自動で切り替えたりしてもよい。
【0049】
画面81に表示される画像は、編集画像に限定されることはなく、第1画像811、第2画像812又は第3画像813のみでもよい。画面81に表示される画像は、元画像に限定されることはなく、画像処理部52によって画像処理された画像(例えば、拡大画像、2値画像及び拡大2値画像の少なくとも1種以上)であってもよい。例えば、画面81に表示される画像は、第1画像811と、第1画像811の一部が拡大された拡大画像と、拡大画像が2値化された拡大2値画像と、であってもよい。
【0050】
図8は、第1実施形態に係る採取用ワイヤープローブ及びプローブ保持部の構成例を示す模式図である。
図9は、第1実施形態に係る採取用ワイヤープローブの先端部を拡大して示す模式図である。
図10は、第1実施形態に係る微動機構の一例を示す断面図である。
【0051】
採取用ワイヤープローブ10は、結晶化タンパク質CPを採取するための採取用器具である。採取用ワイヤープローブ10は、針状の器具である。採取用ワイヤープローブ10の一端は、結晶化タンパク質CPを採取するためのループ部11を含む。採取用ワイヤープローブ10の他端は、プローブ保持部15に連結している。
【0052】
ループ部11は、結晶化タンパク質CPを採取する採取部である。ループ部11は、採取用ワイヤープローブ10の長手方向に交差する方向に中心軸を含む輪状である。ループ部11は、内周面11aに囲まれた領域において、結晶化タンパク質CPを採取する。ループ部11は、液滴Drの表面張力によって、結晶化タンパク質CPを含む液滴Drを内周面11aに囲まれた領域において保持する。
【0053】
プローブ保持部15は、採取用ワイヤープローブ10を保持するための器具である。プローブ保持部15は、本体151と、芯出し機構152と、接続ジグ153と、微動機構18と、を備える。
【0054】
本体151は、
図1に示す連結部28を介してマニピュレータ20に連結されている。本体151は、コントローラ50からの駆動信号に基づいて駆動するマニピュレータ20によってX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動する。本体151は、電動モータ29を搭載する。
【0055】
芯出し機構152は、接続ジグ153を介して採取用ワイヤープローブ10をθ軸方向に回動させる機構である。芯出し機構152は、本体151に設けられる。芯出し機構152は、接続ジグ153をθ軸方向に回動させる。芯出し機構152は、コントローラ50からの駆動信号に基づいて駆動する電動モータ29によって、接続ジグ153をθ軸方向に回動させる。
【0056】
接続ジグ153は、棒状の器具である。接続ジグ153の一端は、採取用ワイヤープローブ10におけるループ部11とは反対側の端部に連結している。接続ジグ153の他端は、芯出し機構152及び微動機構18に連結している。接続ジグ153は、芯出し機構152及び微動機構18に支持される。接続ジグ153は、芯出し機構152及び微動機構18を介して本体151に連結している。接続ジグ153は、微動機構18を介してマニピュレータ20の電動モータ29に接続している。
【0057】
微動機構18は、接続ジグ153を駆動対象とする圧電アクチュエータ181を備える。圧電アクチュエータ181は、筒状のハウジング182と、ハウジング182の内部に設けられた転がり軸受183と、圧電素子184とを含む。ハウジング182の軸方向に接続ジグ153が挿通される。転がり軸受183は、接続ジグ153を回転可能に支持する。圧電素子184は、印加される電圧に応じて接続ジグ153の長手方向に沿って伸縮する。
【0058】
接続ジグ153は、転がり軸受183を介してハウジング182に支持される。転がり軸受183は、内輪183aと、外輪183bと、内輪183aと外輪183bとの間に設けられたボール183cとを備える。外輪183bがハウジング182の内周面に固定され、内輪183aが接続ジグ153の外周面に固定される。このように、転がり軸受183は、接続ジグ153を回転自在に支持するようになっている。
【0059】
円環状のスペーサ185は、転がり軸受183と同軸に外輪183bの軸方向後端側に配置される。スペーサ185の軸方向後端側には、円環状の圧電素子184がスペーサ185と略同軸に配置され、さらにその軸方向後端側にはハウジング182の蓋186が配置される。蓋186は、圧電素子184を軸方向に固定するためのもので、接続ジグ153が挿通する孔部を有する。蓋186は、例えば、ハウジング182の側面にボルトにより締結されていてもよい。なお、圧電素子184は、棒状又は角柱状としてスペーサ185の周方向に略等配となるように並べても良く、接続ジグ153を挿通する孔部を有した角筒としても良い。
【0060】
圧電素子184はスペーサ185を介して転がり軸受183と接している。圧電素子184は、リード線(図示せず)を介して制御回路としてのコントローラ50に接続されている。圧電素子184は、コントローラ50からの印加電圧に応答して接続ジグ153の軸方向に沿って伸縮し、接続ジグ153をその軸方向に沿って微動させるようになっている。接続ジグ153が軸方向に沿って微動すると、この微動が採取用ワイヤープローブ10に伝達され、採取用ワイヤープローブ10の位置が微調整されることになる。また、圧電素子184により接続ジグ153が軸方向に振動すると、採取用ワイヤープローブ10も軸方向に振動する。
【0061】
次に、採取用ワイヤープローブ10による液滴表面膜Sfの破砕動作について説明する。
図11は、第1実施形態に係る液滴表面膜の破砕動作を説明する説明図である。
図12は、
図11において破砕された液滴表面膜の画像データの一例を示す図である。結晶化タンパク質CPを内包する液滴Drは、表面が硬質の液滴表面膜Sfで覆われている。マニピュレーションシステム100は、結晶化タンパク質CPを採取する前に、液滴表面膜Sfを破砕する。
【0062】
マニピュレーションシステム100は、まず、採取用ワイヤープローブ10のループ部11を液滴表面膜Sfに接触させる。ループ部11は、マニピュレータ20及び芯出し機構152によって、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向及びθ軸方向のうち少なくとも1つの駆動が可能である。これにより、ループ部11は、様々な方向から液滴表面膜Sfに接触させることができる。マニピュレーションシステム100は、次に、微動機構18を駆動させ、採取用ワイヤープローブ10をθ軸方向に加振させる。微動機構18による振動は、ループ部11を介して液滴表面膜Sfに伝達する。液滴表面膜Sfは、微動機構18による振動によって破砕する。マニピュレーションシステム100は、採取用ワイヤープローブ10のループ部11を、液滴表面膜Sfが破砕したことによって形成された孔から、結晶化タンパク質CPを含む液滴Drに挿入させる。
【0063】
マニピュレーションシステム100は、例えば、結晶化タンパク質CPがループ部11の内周面11a(
図9参照)に囲まれた領域を潜るようにループ部11を移動させる。これにより、ループ部11は、液滴Drの表面張力によって、結晶化タンパク質CPを含む液滴Drを内周面11aに囲まれた領域において保持する。ループ部11は、結晶化タンパク質CPを液滴Drごと拾い上げることによって採取する。ループ部11は、マニピュレータ20及び芯出し機構152によって、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向及びθ軸方向のうち少なくとも1つの駆動が可能である。これにより、ループ部11は、様々な方向から結晶化タンパク質CPを採取することができる。
【0064】
液滴表面膜Sfをループ部11で破砕させる位置、方向及び移動経路、結晶化タンパク質CPを採取する位置及び移動経路は、予め検出したループ部11の位置、姿勢及び形状と、結晶化タンパク質CPの位置と、液滴表面膜Sfの外形状と、に基づいて設定される。液滴表面膜Sfの破砕位置は、液滴表面膜Sfの表面にループ部11の先端が接触する状態におけるループ部11の位置である。結晶化タンパク質CPの採取位置は、結晶化タンパク質CPがループ部11の内周面11aに囲まれた領域に存在する状態におけるループ部11の位置である。ループ部11の移動経路は、初期位置から破砕位置及び採取位置まで、ループ部11が移動する経路である。移動経路は、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向及びθ軸方向の移動の組み合わせである。
【0065】
液滴表面膜Sfをループ部11で破砕させる位置、方向及び移動経路を設定する前に、
図4に示すコントローラ50の画像処理部52は、第1撮像装置45、第2撮像装置65及び第3撮像装置75が撮像したループ部11、結晶化タンパク質CP及び液滴表面膜Sfの画像データの画像処理を行う。コントローラ50の検出部53は、画像処理によって、ループ部11の位置、姿勢及び形状と、結晶化タンパク質CPの位置と、液滴表面膜Sfの外形状と、を検出する。
【0066】
ループ部11による破砕動作が行われた後に、画像処理部52は、ループ部11の画像データを取得する。破砕動作を行ったループ部11は、液滴表面膜Sfに接触している又は液滴表面膜Sfを貫通しているので、画像データは、液滴表面膜Sfを含む。画像処理部52は、画像データのコントラストの数値化を行う。
図12に示すように、液滴表面膜Sfが破砕された場合、破損箇所に界面が発生するため、破損箇所である破砕孔THの外形状の明度は、周囲よりも低くなる。例えば、2値化処理された画像データにおいて、画像破砕孔THは、黒色に表示される。検出部53は、画像データから液滴表面膜Sfに形成された破砕孔THを検出する。より詳しくは、検出部53は、液滴表面膜Sfの破砕位置近傍に明度が所定閾値以下である領域が所定面積以上あった場合、破砕孔THとして検出する。コントローラ50の制御部55は、取得した液滴表面膜Sfの画像データに基づいて、破砕位置近傍の明度が所定閾値以下であるか否かによって、液滴表面膜Sfの破砕が成功したか否かを判断する。
【0067】
ループ部11による採取動作が行われた後に、画像処理部52は、ループ部11の画像データを取得する。検出部53は、画像データから結晶化タンパク質CPの位置を検出する。コントローラ50の制御部55は、取得した結晶化タンパク質CPの位置情報に基づいて、結晶化タンパク質CPの採取が成功したか否かを判断する。
【0068】
次に、マニピュレーションシステム100において、結晶化タンパク質CPを採取して、回収する方法について説明する。マニピュレーションシステム100の動作を開始する前に、操作者は、まず、
図1に示す採取用ワイヤープローブ10をプローブ保持部15に取り付ける。操作者は、次に、第1顕微鏡41、第2顕微鏡61及び第3撮像装置75の視野内に、採取用ワイヤープローブ10を配置する。ここで、採取用ワイヤープローブ10の先端の高さは、少なくとも容器38が設置される高さより上方の位置とする。操作者は、次に、採取される結晶化タンパク質CPを含む液滴Drが入れられた容器38を試料ステージ30に設置する。操作者は、次に、容器38のウェル38aが、第1顕微鏡41、第2顕微鏡61及び第3撮像装置75の視野と重なるように試料ステージ30を移動させる。操作者は、次に、駆動装置414を駆動させることによって第1顕微鏡41の対物レンズ412を移動させて、第1顕微鏡41の焦点を結晶化タンパク質CPに合わせる。操作者は、駆動装置613を駆動させることによって第2顕微鏡61の対物レンズ612を移動させて、第2顕微鏡61の焦点を結晶化タンパク質CPに合わせる。
【0069】
図13は、第1実施形態に係る動作の一例を示すフローチャート図である。マニピュレーションシステム100は、1つの結晶化タンパク質CPに対して操作を実行する。コントローラ50は、結晶化タンパク質CPに対する操作を自動で実行する。マニピュレーションシステム100による自動操作は、例えば、入力部58の開始ボタンを押すことでスタートする。
【0070】
まず、ステップST10において、コントローラ50の画像処理部52は、第1撮像装置45、第2撮像装置65及び第3撮像装置75が撮像したループ部11の画像データを取得する。画像処理部52は、画像データの画像処理を行う。ステップST12において、コントローラ50の検出部53は、画像処理によって、ループ部11の位置、姿勢及び形状を検出する。記憶部56は、ループ部11の位置、姿勢及び形状の情報を記憶する。
【0071】
次に、ステップST14において、画像処理部52は、第1撮像装置45、第2撮像装置65及び第3撮像装置75が撮像した結晶化タンパク質CPの画像データを取得する。画像処理部52は、画像データの画像処理を行う。ステップST16において、検出部53は、画像処理によって、結晶化タンパク質CPの位置を検出する。記憶部56は、結晶化タンパク質CPの位置情報を記憶する。
【0072】
次に、ステップST18において、画像処理部52は、第1撮像装置45、第2撮像装置65及び第3撮像装置75が撮像した液滴Drの画像データを取得する。画像処理部52は、画像データの画像処理を行う。ステップST20において、検出部53は、画像処理によって、液滴表面膜Sfの外形状を検出する。記憶部56は、液滴表面膜Sfの外形状情報を記憶する。
【0073】
ステップST22において、制御部55は、記憶部56に記憶されたループ部11、結晶化タンパク質CP及び液滴表面膜Sfの情報に基づいて、液滴表面膜Sfの破砕位置、結晶化タンパク質CPの採取位置及び採取用ワイヤープローブ10の移動経路を設定する。制御部55は、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向及びθ軸方向の移動距離及び順序を記憶部56に記憶させる。ステップST24において、制御部55は、マニピュレータ20を駆動して、採取用ワイヤープローブ10を液滴表面膜Sfの破砕位置へ移動経路に沿って移動させる。ステップST26において、制御部55は、微動機構18を駆動して、採取用ワイヤープローブ10をθ軸方向に加振させる。
【0074】
ステップST28において、画像処理部52は、第1撮像装置45、第2撮像装置65及び第3撮像装置75が撮像した液滴Drの画像データを取得する。画像処理部52は、画像データの画像処理を行う。ステップST30において、検出部53は、画像処理によって、破砕孔THを検出する。
【0075】
ステップST32において、制御部55は、液滴表面膜Sfの画像データに基づいて、液滴表面膜Sfの破砕が成功したか否かを判断する。ステップST32において、液滴表面膜Sfの破砕が失敗した場合(ステップST32;No)、マニピュレーションシステム100は、ステップST26の処理を実行する。ステップST32において、液滴表面膜Sfの破砕が成功した場合(ステップST32;Yes)、マニピュレーションシステム100は、ステップST34の処理を実行する。
【0076】
ステップST34において、制御部55は、マニピュレータ20を駆動して、採取用ワイヤープローブ10を結晶化タンパク質CPの採取位置へ移動経路に沿って移動させる。ステップST36において、制御部55は、マニピュレータ20を駆動して、採取用ワイヤープローブ10によって結晶化タンパク質CPを採取させる。ステップST34とステップST36とは、連続して実行されてもよいし、一連の動作として実行されてもよい。
【0077】
ステップST38において、画像処理部52は、第1撮像装置45、第2撮像装置65及び第3撮像装置75が撮像したループ部11の画像データを取得する。画像処理部52は、画像データの画像処理を行う。ステップST40において、検出部53は、画像処理によって、結晶化タンパク質CPの位置を検出する。
【0078】
ステップST42において、制御部55は、結晶化タンパク質CPの位置情報に基づいて、結晶化タンパク質CPの採取が成功したか否かを判断する。例えば、結晶化タンパク質CPがループ部11の内周面11aに囲まれた領域に位置しない場合、制御部55は、結晶化タンパク質CPの採取が失敗したと判断する。ステップST42において、結晶化タンパク質CPの採取が失敗した場合(ステップST42;No)、マニピュレーションシステム100は、ステップST44の処理を実行する。例えば、結晶化タンパク質CPがループ部11の内周面11aに囲まれた領域に位置する場合、制御部55は、結晶化タンパク質CPの採取が成功したと判断する。ステップST42において、結晶化タンパク質CPの採取が成功した場合(ステップST42;Yes)、マニピュレーションシステム100は、ステップST46の処理を実行する。
【0079】
ステップST44において、制御部55は、結晶化タンパク質CPの採取位置、及び採取用ワイヤープローブ10の移動経路を再設定する。移動経路は、液滴表面膜Sfの破砕位置を通過するように設定される。マニピュレーションシステム100は、ステップST34に戻り、ステップST42において結晶化タンパク質CPの採取が成功したと判断されるまで、ステップST34からステップST44の処理を繰り返し実行する。
【0080】
ステップST46において、マニピュレーションシステム100は、結晶化タンパク質CPを凍結させ、回収容器に収納する。制御部55は、例えば、マニピュレータ20及び試料ステージ30を駆動して、採取用ワイヤープローブ10を液体窒素で満たされた所定の凍結容器へ移動させる。制御部55は、マニピュレータ20を駆動して、採取用ワイヤープローブ10を凍結容器の液体窒素に沈め、ループ部11に保持された結晶化タンパク質CPを凍結させる。制御部55は、例えば、予め設定された時間が経過すると、採取用ワイヤープローブ10を凍結容器から引き上げる。制御部55は、マニピュレータ20及び試料ステージ30を駆動して、採取用ワイヤープローブ10を所定の回収容器へさせる。制御部55は、採取用ワイヤープローブ10をプローブ保持部15から分離させ、採取用ワイヤープローブ10のみを回収容器内に収納する。制御部55は、マニピュレータ20を駆動して、プローブ保持部15を初期位置へ移動させる。プローブ保持部15が初期位置に戻ると、マニピュレーションシステム100は、一連の操作を終了する。
【0081】
以上説明したように、第1実施形態のマニピュレーションシステム100は、容器38と、試料ステージ30と、破砕用器具(採取用ワイヤープローブ10)と、微動機構18と、コントローラ50と、を備える。容器38は、結晶化タンパク質CP及び結晶化タンパク質CPを内包する液滴Drが収容される。試料ステージ30は、容器38が載置される。破砕用器具は、液滴Drの表面を覆う液滴表面膜Sfを破砕する。微動機構18は、破砕用器具をθ軸方向に移動させる。コントローラ50は、試料ステージ30、破砕用器具及び微動機構18を制御する。コントローラ50は、破砕用器具の先端(ループ部11)を液滴表面膜Sfに接触させた状態で、微動機構18に破砕用器具を加振させ、かつ、加振後に液滴表面膜Sfが破砕されたか否かを判断する。
【0082】
これによれば、破砕用器具(採取用ワイヤープローブ10)を液滴表面膜Sfに接触させた状態において、微動機構18が破砕用器具を加振させることによって破砕するため、液滴表面膜Sfを破砕する際の液滴Drに内包される結晶化タンパク質CPへの損傷を抑制することができる。また、破砕用器具を液滴表面膜Sfに接触させる制御、及び破砕用器具を加振させる制御が、コントローラ50によって自動で行われるため、結晶化タンパク質CPの損傷を抑制して、効率よくかつ好適に液滴表面膜Sfを破砕することができる。液滴表面膜Sfが除去されることにより、結晶化タンパク質CPの損傷を抑制して、効率よくかつ好適に結晶化タンパク質CPを採取することができる。
【0083】
第1実施形態のマニピュレーションシステム100は、破砕用器具(採取用ワイヤープローブ10)を回動させる電動モータ29をさらに備える。これによれば、破砕用器具が、より好適な方向及び姿勢によって液滴表面膜Sfを破砕することができる。
【0084】
第1実施形態のマニピュレーションシステム100において、微動機構18は、圧電素子184を含む。これによれば、所定の周期の周波数に基づいて圧電素子184に直接電圧を印加することによって、破砕用器具(採取用ワイヤープローブ10)をθ軸方向に振動させることができる。圧電素子184に直接電圧を印加することによって、破砕用器具の振動をより好適に制御することができる。したがって、操作者の熟練度及び技術によらず、液滴表面膜Sfの破砕操作時の結晶化タンパク質CPへの損傷を抑制することができる。
【0085】
第1実施形態のマニピュレーションシステム100は、結晶化タンパク質CP、液滴Dr及び破砕用器具(採取用ワイヤープローブ10)を撮像する撮像装置(第1撮像装置45、第2撮像装置65及び第3撮像装置75)を備える。これによれば、例えば、第1実施形態のように、撮像装置の画像データに基づいて結晶化タンパク質CP、液滴Dr及び破砕用器具の位置情報を検出することが可能である。例えば、検出された位置情報に基づいて、好適な破砕位置を決定することによって、操作者の技術及び熟練度によらず、効率よくかつ好適に液滴表面膜Sfを破砕することができる。
【0086】
第1実施形態のマニピュレーションシステム100において、コントローラ50は、撮像装置(第1撮像装置45、第2撮像装置65及び第3撮像装置75)の画像データに基づいて、液滴表面膜Sfが破砕されたか否かを判断する。これによれば、コントローラ50が、画像データに基づいて液滴表面膜Sfが破砕用器具(採取用ワイヤープローブ10)に破砕されたか否かを自動で判断するので、操作者の技術及び熟練度によらず、効率よくかつ好適に液滴表面膜Sfが破砕されたか否かを判断することができる。
【0087】
第1実施形態のマニピュレーションシステム100は、結晶化タンパク質CPを採取する採取用器具(採取用ワイヤープローブ10)を備える。マニピュレーションシステム100において、破砕用器具(採取用ワイヤープローブ10)は、結晶化タンパク質CPを採取する採取用器具である。これによれば、液滴表面膜Sfを破砕するための専用の器具が不要であり、破砕用器具を採取用器具に交換する必要もないので、装置構成及びシステムのプログラムを簡略化することができる。
【0088】
第1実施形態のマニピュレーションシステム100において、採取用器具(採取用ワイヤープローブ10)は、輪状の採取部(ループ部11)を先端に含む。これによれば、採取用器具が、結晶化タンパク質CPを含む生成液を、生成液の表面張力によって、採取部の内側の領域において保持することができる。結晶化タンパク質CPが採取用器具に触れないので、結晶化タンパク質CPの損傷を抑制することができる。
【0089】
第1実施形態のマニピュレーションシステム100の駆動方法において、マニピュレーションシステム100は、容器38と、試料ステージ30と、破砕用器具(採取用ワイヤープローブ10)と、微動機構18と、を備える。容器38は、結晶化タンパク質CP及び結晶化タンパク質CPを内包する液滴Drが収容される。試料ステージ30は、容器38が載置される。破砕用器具は、液滴Drの表面を覆う液滴表面膜Sfを破砕する。微動機構18は、破砕用器具をθ軸方向に移動させる。マニピュレーションシステム100の駆動方法は、破砕用器具の先端(ループ部11)を液滴表面膜Sfに接触させるステップST24と、微動機構18に破砕用器具を加振させるステップST26と、加振後に液滴表面膜Sfが破砕されたか否かを判断するステップST32と、を含む。
【0090】
これによれば、破砕用器具(採取用ワイヤープローブ10)を液滴表面膜Sfに接触させた状態において、微動機構18が破砕用器具を加振させることによって破砕するため、液滴表面膜Sfを破砕する際の液滴Drに内包される結晶化タンパク質CPへの損傷を抑制することができる。また、破砕用器具を液滴表面膜Sfに接触させる制御、及び破砕用器具を加振させる制御が、コントローラ50によって自動で行われるため、結晶化タンパク質CPの損傷を抑制して、効率よくかつ好適に液滴表面膜Sfを破砕することができる。液滴表面膜Sfが除去されることにより、結晶化タンパク質CPの損傷を抑制して、効率よくかつ好適に結晶化タンパク質CPを採取することができる。
【0091】
(第2実施形態)
図14は、第2実施形態に係る毛細管及びプローブ保持部の構成例を示す模式図である。
図15は、第3実施形態に係る毛細管の先端部を拡大して示す模式図である。第2実施形態のマニピュレーションシステム100Aにおいて、第1実施形態のマニピュレーションシステム100と同様の構成については同一の参照符号を付して適宜説明を省略し、異なる構成について説明する。マニピュレーションシステム100Aは、基本的な構成において、マニピュレーションシステム100と同様である。マニピュレーションシステム100Aは、マニピュレーションシステム100と比較して、プローブ保持部15の代わりにプローブ保持部15Aを備え、採取用ワイヤープローブ10の代わりに毛細管12によって液滴表面膜Sfの破砕を行う点で相違する。
【0092】
毛細管12は、液滴表面膜Sfを破砕するための破砕用器具である。毛細管12は、第2実施形態において、流路13を含む中空の毛細管である。毛細管12は、中実の極細のガラス棒に置換されてもよい。
【0093】
プローブ保持部15Aは、基本的な構成において、プローブ保持部15と同様である。プローブ保持部15Aは、採取用ワイヤープローブ10に加え、毛細管12を保持するための器具である。プローブ保持部15Aの一端は、接続ジグ153Aにおいて採取用ワイヤープローブ10又は毛細管12のいずれかを連結することができる。
【0094】
次に、毛細管12による液滴表面膜Sfの破砕動作について説明する。
図16は、第2実施形態に係る液滴表面膜の破砕動作を説明する説明図である。結晶化タンパク質CPを内包する液滴Drは、表面が硬質の液滴表面膜Sfで覆われている。マニピュレーションシステム100Aは、結晶化タンパク質CPを採取する前に、液滴表面膜Sfを破砕する。
【0095】
マニピュレーションシステム100Aは、まず、毛細管12の先端を液滴表面膜Sfに接触させる。毛細管12は、マニピュレータ20及び芯出し機構152によって、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向及びθ軸方向のうち少なくとも1つの駆動が可能である。これにより、毛細管12の先端は、様々な方向から液滴表面膜Sfに接触させることができる。マニピュレーションシステム100Aは、次に、微動機構18を駆動させ、毛細管12をθ軸方向に加振させる。微動機構18による振動は、毛細管12を介して液滴表面膜Sfに伝達する。液滴表面膜Sfは、微動機構18による振動によって破砕する。操作者は、プローブ保持部15Aから毛細管12を分離させ、プローブ保持部15Aに採取用ワイヤープローブ10に付け替える。マニピュレーションシステム100Aによって、自動的にプローブ保持部15Aに採取用ワイヤープローブ10を付け替えてもよい。マニピュレーションシステム100Aは、採取用ワイヤープローブ10のループ部11を、液滴表面膜Sfが破砕したことによって形成された孔から、結晶化タンパク質CPを含む液滴Drに挿入させる。マニピュレーションシステム100Aによる結晶化タンパク質CPの採取動作は、第1実施形態のマニピュレーションシステム100と同様であるため、説明を省略する。
【0096】
液滴表面膜Sfを毛細管12で破砕させる位置、方向及び移動経路、結晶化タンパク質CPを採取する位置及び移動経路は、予め検出した毛細管12の先端の位置、姿勢及び形状と、結晶化タンパク質CPの位置と、液滴表面膜Sfの外形状と、に基づいて設定される。液滴表面膜Sfの破砕位置は、液滴表面膜Sfの表面に毛細管12の先端が接触する状態における毛細管12の位置である。毛細管12の移動経路は、初期位置から破砕位置まで、毛細管12が移動する経路である。移動経路は、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向及びθ軸方向の移動の組み合わせである。
【0097】
液滴表面膜Sfを毛細管12で破砕させる位置、方向及び移動経路を設定する前に、
図4に示すコントローラ50の画像処理部52は、第1撮像装置45、第2撮像装置65及び第3撮像装置75が撮像した毛細管12の画像データの画像処理を行う。コントローラ50の検出部53は、画像処理によって、毛細管12の位置、姿勢及び形状を検出する。毛細管12による破砕動作が行われた後に、画像処理部52は、毛細管12の画像データを取得する。破砕動作を行った毛細管12は、液滴表面膜Sfに接触している又は液滴表面膜Sfを貫通しているので、画像データは、液滴表面膜Sfを含む。検出部53は、画像処理部52によって画像処理された画像データから液滴表面膜Sfに形成された破砕孔THを検出する。より詳しくは、検出部53は、液滴表面膜Sfの破砕位置近傍に明度が所定閾値以下である領域が所定面積以上あった場合、破砕孔THとして検出する。コントローラ50の制御部55は、取得した液滴表面膜Sfの画像データに基づいて、破砕位置近傍の明度が所定閾値以下であるか否かによって、液滴表面膜Sfの破砕が成功したか否かを判断する。
【0098】
次に、マニピュレーションシステム100Aにおいて、結晶化タンパク質CPを採取して、回収する方法について説明する。マニピュレーションシステム100Aの動作を開始する前に、操作者は、まず、
図14に示す毛細管12をプローブ保持部15Aに取り付ける。操作者は、次に、第1顕微鏡41、第2顕微鏡61及び第3撮像装置75の視野内に、毛細管12を配置する。ここで、毛細管12の先端の高さは、少なくとも容器38が設置される高さより上方の位置とする。操作者は、次に、採取される結晶化タンパク質CPを含む液滴Drが入れられた容器38を試料ステージ30に設置する。操作者は、次に、容器38のウェル38aが、第1顕微鏡41、第2顕微鏡61及び第3撮像装置75の視野と重なるように試料ステージ30を移動させる。操作者は、次に、駆動装置414を駆動させることによって第1顕微鏡41の対物レンズ412を移動させて、第1顕微鏡41の焦点を結晶化タンパク質CPに合わせる。操作者は、駆動装置613を駆動させることによって第2顕微鏡61の対物レンズ612を移動させて、第2顕微鏡61の焦点を結晶化タンパク質CPに合わせる。
【0099】
図17は、第2実施形態に係る動作の一例を示すフローチャート図である。マニピュレーションシステム100Aは、1つの結晶化タンパク質CPに対して操作を実行する。コントローラ50は、結晶化タンパク質CPに対する操作を自動で実行する。マニピュレーションシステム100Aによる自動操作は、例えば、入力部58の開始ボタンを押すことでスタートする。
【0100】
まず、ステップST50において、コントローラ50の画像処理部52は、第1撮像装置45、第2撮像装置65及び第3撮像装置75が撮像した毛細管12の画像データを取得する。画像処理部52は、画像データの画像処理を行う。ステップST52において、コントローラ50の検出部53は、画像処理によって、毛細管12の位置、姿勢及び形状を検出する。記憶部56は、毛細管12の位置、姿勢及び形状の情報を記憶する。
【0101】
ステップST54において、画像処理部52は、第1撮像装置45、第2撮像装置65及び第3撮像装置75が撮像した結晶化タンパク質CPの画像データを取得する。画像処理部52は、画像データの画像処理を行う。ステップST56において、検出部53は、画像処理によって、結晶化タンパク質CPの位置を検出する。記憶部56は、結晶化タンパク質CPの位置情報を記憶する。
【0102】
次に、ステップST58において、画像処理部52は、第1撮像装置45、第2撮像装置65及び第3撮像装置75が撮像した液滴Drの画像データを取得する。画像処理部52は、画像データの画像処理を行う。ステップST60において、検出部53は、画像処理によって、液滴表面膜Sfの外形状を検出する。記憶部56は、液滴表面膜Sfの外形状情報を記憶する。
【0103】
ステップST62において、制御部55は、記憶部56に記憶された毛細管12、結晶化タンパク質CP及び液滴表面膜Sfの情報に基づいて、液滴表面膜Sfの破砕位置及び毛細管12の移動経路を設定する。制御部55は、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向及びθ軸方向の移動距離及び順序を記憶部56に記憶させる。ステップST64において、制御部55は、マニピュレータ20を駆動して、毛細管12の先端を液滴表面膜Sfの破砕位置へ移動経路に沿って移動させる。ステップST66において、制御部55は、微動機構18を駆動して、毛細管12をθ軸方向に加振させる。
【0104】
ステップST68において、画像処理部52は、第1撮像装置45、第2撮像装置65及び第3撮像装置75が撮像した液滴Drの画像データを取得する。画像処理部52は、画像データの画像処理を行う。ステップST70において、検出部53は、画像処理によって、破砕孔THを検出する。
【0105】
ステップST72において、制御部55は、液滴表面膜Sfの画像データに基づいて、液滴表面膜Sfの破砕が成功したか否かを判断する。ステップST72において液滴表面膜Sfの破砕が失敗した場合(ステップST72;No)、マニピュレーションシステム100Aは、ステップST66の処理を実行する。ステップST72において液滴表面膜Sfの破砕が成功した場合(ステップST72;Yes)、マニピュレーションシステム100Aは、ステップST74の処理を実行する。
【0106】
ステップST74において、制御部55は、マニピュレータ20を駆動して、プローブ保持部15Aを初期位置へ移動させる。操作者は、プローブ保持部15Aから毛細管12を分離させ、プローブ保持部15Aに採取用ワイヤープローブ10に付け替える。操作者は、例えば、入力部58を操作して、採取用ワイヤープローブ10への付け替えが完了したことをコントローラ50に入力する。ステップST76において、制御部55は、毛細管12から採取用ワイヤープローブ10への付け替えが完了したか否かを判断する。ステップST76において採取用ワイヤープローブ10への付け替えが完了した場合(ステップST76;Yes)、マニピュレーションシステム100Aは、ステップST78の処理を実行する。ステップST76において採取用ワイヤープローブ10への付け替えが完了していない場合(ステップST76;No)、マニピュレーションシステム100Aは、ステップST76を繰り返し実行する。
【0107】
ステップST78において、画像処理部52は、第1撮像装置45、第2撮像装置65及び第3撮像装置75が撮像したループ部11の画像データを取得する。画像処理部52は、画像データの画像処理を行う。ステップST80において、検出部53は、画像処理によって、ループ部11の位置、姿勢及び形状を検出する。記憶部56は、ループ部11の位置、姿勢及び形状の情報を記憶する。
【0108】
ステップST82において、制御部55は、記憶部56に記憶されたループ部11、結晶化タンパク質CP及び液滴表面膜Sfの情報に基づいて、結晶化タンパク質CPの採取位置及び採取用ワイヤープローブ10の移動経路を設定する。マニピュレーションシステム100Aは、ステップST82の処理を終了すると、ステップST84の処理を実行する。
図17に示すステップST84からステップST96までの処理は、
図13に示すステップST34からステップST46と同様の処理であるため、説明を省略する。
【0109】
以上説明したように、第2実施形態のマニピュレーションシステム100Aは、結晶化タンパク質CPを採取する採取用ワイヤープローブ10(採取用器具)を備える。マニピュレーションシステム100Aにおいて、破砕用器具は、毛細管12である。コントローラ50は、液滴表面膜Sfを破砕させた後、液滴表面膜Sfを破砕させた位置から採取用ワイヤープローブ10を液滴Drに挿入して結晶化タンパク質CPを採取させる。
【0110】
これによれば、微動機構18が毛細管12を加振させることによって破砕するため、より好適に液滴表面膜Sfを破砕することができる。
【0111】
(第3実施形態)
図18は、第3実施形態に係る毛細管及びプローブ保持部の構成例を示す模式図である。
図19は、第3実施形態に係る微動機構の一例を示す断面図である。第3実施形態のマニピュレーションシステム100Aにおいて、第2実施形態のマニピュレーションシステム100Aと同様の構成については同一の参照符号を付して適宜説明を省略し、異なる構成について説明する。マニピュレーションシステム100Bは、基本的な構成において、マニピュレーションシステム100Aと同様である。マニピュレーションシステム100Bは、マニピュレーションシステム100Aと比較して、プローブ保持部15Aの代わりにプローブ保持部15B及び送液ポンプ19を備える点で相違する。
【0112】
プローブ保持部15Bは、基本的な構成において、プローブ保持部15Aと同様である。プローブ保持部15Bは、流路154Bを含む。流路154Bは、芯出し機構152B及び接続ジグ153Bの内部に設けられる。流路154Bの一端は、毛細管12の流路13に連通する。流路154Bの他端は、芯出し機構152Bに設けられた挿入口155Bに連通する。プローブ保持部15Bは、送液管191を介して送液ポンプ19に接続する。
【0113】
送液ポンプ19は、液体を送液管191へ送り出す。液体は、例えば、液滴Drと同様の生成液である。送液管191は、プローブ保持部15Bの挿入口155Bを介して流路154Bに連通する。送液ポンプ19から送り出された液体は、送液管191、流路154B及び流路13を介して、毛細管12の先端から吐出する。送液管191には、接続バルブ192が設けられている。送液ポンプ19及び接続バルブ192は、コントローラ50の制御部55によって制御される。
【0114】
次に、毛細管12による液滴表面膜Sfの破砕動作について説明する。
図20は、第3実施形態に係る液滴表面膜の破砕動作を説明する説明図である。結晶化タンパク質CPを内包する液滴Drは、表面が硬質の液滴表面膜Sfで覆われている。マニピュレーションシステム100Bは、結晶化タンパク質CPを採取する前に、液滴表面膜Sfを破砕する。
【0115】
マニピュレーションシステム100Bは、まず、毛細管12の先端を液滴表面膜Sfに接触させる。毛細管12は、マニピュレータ20及び芯出し機構152によって、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向及びθ軸方向のうち少なくとも1つの駆動が可能である。これにより、毛細管12の先端は、様々な方向から液滴表面膜Sfに接触させることができる。マニピュレーションシステム100Bは、次に、微動機構18を駆動させ、毛細管12をθ軸方向に加振させる。微動機構18による振動は、毛細管12を介して液滴表面膜Sfに伝達する。液滴表面膜Sfは、微動機構18による振動によって穿孔(破砕)する。マニピュレーションシステム100Bは、次に、毛細管12の先端を液滴Dr内に挿入する。マニピュレーションシステム100Bは、送液ポンプ19を駆動させ、毛細管12の流路13を介して液滴Dr内に液体を注入する。これにより、液滴Drの体積が増加して膨張し、液滴表面膜Sfが破砕する。操作者は、プローブ保持部15Bから毛細管12を分離させ、プローブ保持部15Bに採取用ワイヤープローブ10に付け替える。マニピュレーションシステム100Bによって、自動的にプローブ保持部15Bに採取用ワイヤープローブ10を付け替えてもよい。マニピュレーションシステム100Bは、採取用ワイヤープローブ10のループ部11を、液滴表面膜Sfが破砕したことによって形成された孔から、結晶化タンパク質CPを含む液滴Drに挿入させる。
【0116】
マニピュレーションシステム100Bによる結晶化タンパク質CPの採取動作は、第1実施形態のマニピュレーションシステム100と同様であるため、説明を省略する。また、液滴表面膜Sfを毛細管12で穿孔(破砕)させる位置、方向及び移動経路、結晶化タンパク質CPを採取する位置及び移動経路の設定方法は、第2実施形態のマニピュレーションシステム100Aと同様であるため、説明を省略する。また、液滴表面膜Sfの穿孔及び破砕が成功したか否かの判断方法は、第2実施形態のマニピュレーションシステム100Aにおける液滴表面膜Sfの破砕が成功したか否かの判断方法と同様であるため、説明を省略する。
【0117】
次に、マニピュレーションシステム100Bにおいて、結晶化タンパク質CPを採取して、回収する方法について説明する。マニピュレーションシステム100Bの動作を開始する前に、操作者は、まず、
図18に示す毛細管12をプローブ保持部15Bに取り付ける。操作者は、次に、第1顕微鏡41、第2顕微鏡61及び第3撮像装置75の視野内に、毛細管12を配置する。ここで、毛細管12の先端の高さは、少なくとも容器38が設置される高さより上方の位置とする。操作者は、次に、採取される結晶化タンパク質CPを含む液滴Drが入れられた容器38を試料ステージ30に設置する。操作者は、次に、容器38のウェル38aが、第1顕微鏡41、第2顕微鏡61及び第3撮像装置75の視野と重なるように試料ステージ30を移動させる。操作者は、次に、駆動装置414を駆動させることによって第1顕微鏡41の対物レンズ412を移動させて、第1顕微鏡41の焦点を結晶化タンパク質CPに合わせる。操作者は、駆動装置613を駆動させることによって第2顕微鏡61の対物レンズ612を移動させて、第2顕微鏡61の焦点を結晶化タンパク質CPに合わせる。
【0118】
図21は、第3実施形態に係る動作の一例を示すフローチャート図である。マニピュレーションシステム100Bは、1つの結晶化タンパク質CPに対して操作を実行する。コントローラ50は、結晶化タンパク質CPに対する操作を自動で実行する。マニピュレーションシステム100Bによる自動操作は、例えば、入力部58の開始ボタンを押すことでスタートする。
【0119】
まず、ステップST100において、コントローラ50の画像処理部52は、第1撮像装置45、第2撮像装置65及び第3撮像装置75が撮像した毛細管12の画像データを取得する。画像処理部52は、画像データの画像処理を行う。ステップST102において、コントローラ50の検出部53は、画像処理によって、毛細管12の位置、姿勢及び形状を検出する。記憶部56は、毛細管12の位置、姿勢及び形状の情報を記憶する。
【0120】
ステップST104において、画像処理部52は、第1撮像装置45、第2撮像装置65及び第3撮像装置75が撮像した結晶化タンパク質CPの画像データを取得する。画像処理部52は、画像データの画像処理を行う。ステップST106において、検出部53は、画像処理によって、結晶化タンパク質CPの位置を検出する。記憶部56は、結晶化タンパク質CPの位置情報を記憶する。
【0121】
次に、ステップST108において、画像処理部52は、第1撮像装置45、第2撮像装置65及び第3撮像装置75が撮像した液滴Drの画像データを取得する。画像処理部52は、画像データの画像処理を行う。ステップST110において、検出部53は、画像処理によって、液滴表面膜Sfの外形状を検出する。記憶部56は、液滴表面膜Sfの外形状情報を記憶する。
【0122】
ステップST112において、制御部55は、記憶部56に記憶された毛細管12、結晶化タンパク質CP及び液滴表面膜Sfの情報に基づいて、液滴表面膜Sfの破砕位置及び毛細管12の移動経路を設定する。制御部55は、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向及びθ軸方向の移動距離及び順序を記憶部56に記憶させる。ステップST114において、制御部55は、マニピュレータ20を駆動して、毛細管12の先端を液滴表面膜Sfの破砕位置へ移動経路に沿って移動させる。ステップST116において、制御部55は、微動機構18を駆動して、毛細管12をθ軸方向に加振させる。
【0123】
ステップST118において、画像処理部52は、第1撮像装置45、第2撮像装置65及び第3撮像装置75が撮像した液滴Drの画像データを取得する。画像処理部52は、画像データの画像処理を行う。ステップST120において、検出部53は、画像処理によって、破砕孔THを検出する。
【0124】
ステップST122において、制御部55は、液滴表面膜Sfの画像データに基づいて、液滴表面膜Sfの穿孔が成功したか否かを判断する。ステップST122において液滴表面膜Sfの穿孔が失敗した場合(ステップST122;No)、マニピュレーションシステム100Bは、ステップST116の処理を実行する。ステップST122において液滴表面膜Sfの穿孔が成功した場合(ステップST122;Yes)、マニピュレーションシステム100Bは、ステップST124の処理を実行する。
【0125】
ステップST124において、制御部55は、送液ポンプ19を駆動する。送液ポンプ19は、液体を送液管191へ送り出す。送液ポンプ19から送り出された液体は、送液管191、流路154B及び流路13を介して、毛細管12の先端から吐出する。毛細管12の先端から吐出した液体は、液滴Dr内に注入される。液体が注入された液滴Drは、体積が増加して膨張する。
【0126】
ステップST126において、画像処理部52は、第1撮像装置45、第2撮像装置65及び第3撮像装置75が撮像した液滴Drの画像データを取得する。画像処理部52は、画像データの画像処理を行う。ステップST128において、検出部53は、画像処理によって、破砕孔THを検出する。
【0127】
ステップST130において、制御部55は、液滴表面膜Sfの画像データに基づいて、液滴表面膜Sfの破砕が成功したか否かを判断する。ステップST130において液滴表面膜Sfの破砕が失敗した場合(ステップST130;No)、マニピュレーションシステム100Bは、ステップST124の処理を実行する。ステップST130において液滴表面膜Sfの穿孔が成功した場合(ステップST130;Yes)、マニピュレーションシステム100Bは、ステップST132の処理を実行する。
図17に示すステップST132からステップST154までの処理は、
図17に示すステップST74からステップST96と同様の処理であるため、説明を省略する。
【0128】
以上説明したように、第3実施形態のマニピュレーションシステム100Bにおいて、毛細管12は、先端から液体を吐出可能である。コントローラ50は、液滴表面膜Sfを穿孔させた後、毛細管12の先端から液滴Drに液体を注入させる。
【0129】
これによれば、液滴Drの体積が増加して膨張し、液滴表面膜Sfが大きく破砕する。確実に液滴表面膜Sfを除去することにより、結晶化タンパク質CPの損傷を抑制して、効率よくかつ好適に結晶化タンパク質CPを採取することができる。
【0130】
各実施形態のマニピュレーションシステム100及びマニピュレーションシステム100の駆動方法は適宜変更してもよい。例えば、採取用ワイヤープローブ10のループ部11は、各実施形態において輪状であるが、C字状でもよい。ループ部11は、液滴Drの表面張力により、結晶化タンパク質CPを含む液滴Drを保持できるのであれば、形状を限定されない。また、結晶化タンパク質CPを採取する採取用器具は、採取用ワイヤープローブ10に限定されない。マニピュレーションシステムは、採取用ワイヤープローブ10に代えて、中空の毛細管とマイクロポンプとを備えてもよい。この場合、マニピュレーションシステムは、マイクロポンプによって毛細管の内部の圧力を調整し、結晶化タンパク質CPを毛細管の内部に取り込むことによって採取する。結晶化タンパク質CPの採取操作は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜手順の一部を省略してもよく、また、手順を置換して実行してもよい。また、本実施形態においては、操作者が手作業で採取用ワイヤープローブ10をプローブ保持部15に取り付けるが、マニピュレーションシステム100又は別の装置によって自動的に取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0131】
1 基台
10 採取用ワイヤープローブ
11 ループ部
11a 内周面
12 毛細管
13 流路
15、15A、15B プローブ保持部
151 本体
152、152B 芯出し機構
153、153A、153B 接続ジグ
154B 流路
155B 挿入口
18 微動機構
181 圧電アクチュエータ
184 圧電素子
19 送液ポンプ
191 送液管
192 接続バルブ
20 マニピュレータ
26、27、36 駆動装置
29 電動モータ
30 試料ステージ
30a 載置面
38 容器
38a ウェル
40 第1顕微鏡ユニット
41 第1顕微鏡
414 駆動装置
45 第1撮像装置
50 コントローラ
57 ジョイスティック
58 入力部
60 第2顕微鏡ユニット
61 第2顕微鏡
613 駆動装置
65 第2撮像装置
75 第3撮像装置
80 表示部
81 画面
100、100A、100B マニピュレーションシステム
CP 結晶化タンパク質
Dr 液滴
Sf 液滴表面膜
TH 破砕孔