(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】電子部品実装構造
(51)【国際特許分類】
H05K 3/34 20060101AFI20230208BHJP
H05K 1/18 20060101ALI20230208BHJP
H05K 1/11 20060101ALI20230208BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20230208BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20230208BHJP
【FI】
H05K3/34 501A
H05K1/18 S
H05K1/11 D
H01L25/04 C
(21)【出願番号】P 2019161449
(22)【出願日】2019-09-04
【審査請求日】2022-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】萩田 和洋
(72)【発明者】
【氏名】石川 嘉明
(72)【発明者】
【氏名】森次 正治
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-023849(JP,A)
【文献】特開2013-069835(JP,A)
【文献】特開2008-140891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/34
H05K 1/18
H05K 1/11
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に電子部品群を実装した電子部品実装構造であって、
前記基板は、電流の流入口及び流出口と、前記流入口と前記流出口との間の電流路を構成するパターンとを有し、
前記電子部品群は、前記流入口と前記流出口との間に直列に接続された複数の電子部品で構成され、
前記電子部品は、前記流入口に電気的に接続される電流の流入端子と、前記流出口に電気的に接続される電流の流出端子と、を有し、
前記流入口と前記流入端子との間の各々の第1空間距離群、及び前記流出口と前記流出端子との間の各々の第2空間距離群のいずれか一方の空間距離群が、当該空間距離群内で等しい空間距離となっている、電子部品実装構造。
【請求項2】
前記電子部品群は、同一規格の前記複数の電子部品を備える、請求項1に記載の電子部品実装構造。
【請求項3】
前記流入口と前記流入端子との間の各々の第1熱抵抗群、及び前記流出口と前記流出端子との間の各々の第2熱抵抗群のいずれか一方の熱抵抗群が、当該熱抵抗群内で等しい熱抵抗となっている、請求項1又は2に記載の電子部品実装構造。
【請求項4】
前記流入口と前記流入端子との間の各々のパターンが有する第1直流抵抗群、及び前記流出口と前記流出端子との間の各々のパターンが有する第2直流抵抗群のいずれか一方の直流抵抗群が、当該直流抵抗群内で等しい直流抵抗となっている、請求項1~3の何れか一項に記載の電子部品実装構造。
【請求項5】
前記流入口と前記流入端子との間の各々のパターンが有する第1インピーダンス群、及び前記流出口と前記流出端子との間の各々のパターンが有する第2インピーダンス群のいずれか一方のインピーダンス群が、当該インピーダンス群内で等しいインピーダンスとなっている、請求項1~4の何れか一項に記載の電子部品実装構造。
【請求項6】
基板上に電子部品群を実装した電子部品実装構造であって、
前記基板は、電流の流入口及び流出口と、前記流入口と前記流出口との間の電流路を構成するパターンとを有し、
前記電子部品群は、前記流入口と前記流出口との間に直列に接続され、複数の電子部品で構成され、
前記電子部品は、
前記流入口に電気的に接続される電流の流入端子と、前記流出口に電気的に接続される電流の流出端子と、を有し、
複数の前記電子部品は、前記流入口及び前記流出口のいずれか一方を基準として周方向に並ぶように配置されている、電子部品実装構造。
【請求項7】
前記パターンは、
前記流入口及び前記流出口のいずれか一方と電気的に接続される、内周側の第1のパターンと、
前記流入口及び前記流出口のいずれか他方と電気的に接続される、外周側の第2のパターンと、を有し、
前記第2のパターンに対して積層方向に積層された積層パターンが設けられ、
前記流入口及び前記流出口のいずれか他方寄りの位置には、前記第2のパターンと前記積層パターンとを電気的に接続する第1のスルーホール導体が形成され、当該第1のスルーホール導体から周方向に離間した位置には、第2のスルーホール導体が形成される、請求項6に記載の電子部品実装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品実装構造として、特許文献1に示すものが知られている。この電子部品実装構造は、基板上に複数の電子部品を配列することによって構成されている。複数の電子部品は、直線状に並ぶように配列されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、複数の電子部品を直線状に配列させた場合、電流の流入口、電流の流出口、または放熱構造体との位置関係によって、電子部品間で、熱抵抗、直流抵抗、インピーダンス、及び配線インダクタンスが不均等となることにより、本来均一としたい電子部品毎の部品発熱、及び電流値が不均一になる場合がある。従って、複数の電子部品間において、電子部品毎の部品発熱、及び電流値が不均一になる要因である熱抵抗、直流抵抗、インピーダンス、及び配線インダクタンスの均等化を図ることが求められていた。
【0005】
本発明は、複数の電子部品間において、電子部品毎の部品発熱、及び電流値の均等化を図ることができる電子部品実装構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電子部品実装構造は、基板上に電子部品群を実装した電子部品実装構造であって、基板は、電流の流入口及び流出口と、流入口と流出口との間の電流路を構成するパターンとを有し、電子部品群は、流入口と流出口との間に直列に接続された複数の電子部品で構成され、電子部品は、流入口に電気的に接続される電流の流入端子と、流出口に電気的に接続される電流の流出端子と、を有し、流入口と流入端子との間の各々の第1空間距離群、及び流出口と流出端子との間の各々の第2空間距離群のいずれか一方の空間距離群が、当該空間距離群内で等しい空間距離となっている。
【0007】
本発明に係る電子部品実装構造では、流入口と流入端子との間の各々の第1空間距離群、及び流出口と流出端子との間の各々の第2空間距離群のいずれか一方の空間距離群が、当該空間距離群内で等しい空間距離となっている。このような構成とすることで、各々の電子部品の流入端子の流入口に対する空間距離、または各々の電子部品の流出端子の流出口に対する空間距離を等しくすることができる。この場合、複数の電子部品間において、流入口と流入端子との間の配線インダクタンスの均等化を図ることができるか、または流出口と流入端子との間の配線インダクタンスの均等化を図ることができる。以上より、複数の電子部品間において、電子部品毎の部品発熱、及び電流値の均等化を図ることができる。
【0008】
電子部品群は、同一規格の複数の電子部品を備えてよい。電子部品同士が同一規格であるため、上記構成を採用することによる、電子部品毎の部品発熱、及び電流値の均等化の効果がより顕著となる。
【0009】
流入口と流入端子との間の各々の第1熱抵抗群、及び流出口と流出端子との間の各々の第2熱抵抗群のいずれか一方の熱抵抗群が、当該熱抵抗群内で等しい熱抵抗となっていてよい。この場合、複数の電子部品間において、熱抵抗の均等化も図ることができる。
【0010】
流入口と流入端子との間の各々のパターンが有する第1直流抵抗群、及び流出口と流出端子との間の各々のパターンが有する第2直流抵抗群のいずれか一方の直流抵抗群が、当該直流抵抗群内で等しい直流抵抗となっていてよい。この場合、複数の電子部品間において、直流抵抗の均等化も図ることができる。
【0011】
流入口と流入端子との間の各々のパターンが有する第1インピーダンス群、及び流出口と流出端子との間の各々のパターンが有する第2インピーダンス群のいずれか一方のインピーダンス群が、当該インピーダンス群内で等しいインピーダンスとなっていてよい。この場合、複数の電子部品間において、インピーダンスの均等化も図ることができる。
【0012】
本発明に係る電子部品実装構造は、基板上に電子部品群を実装した電子部品実装構造であって、基板は、電流の流入口及び流出口と、流入口と流出口との間の電流路を構成するパターンとを有し、電子部品群は、流入口と流出口との間に直列に接続され、複数の電子部品で構成され、電子部品は、流入口に電気的に接続される電流の流入端子と、流出口に電気的に接続される電流の流出端子と、を有し、複数の電子部品は、流入口及び流出口のいずれか一方を基準として周方向に並ぶように配置されている。
【0013】
本発明に係る電子部品実装構造では、複数の電子部品は、流入口及び流出口のいずれか一方を基準として周方向に並ぶように配置されている。このような構成とすることで、各々の電子部品の流入口に対する空間距離、または各々の電子部品の流出口に対する空間距離の均等化を図ることができる。この場合、複数の電子部品間において、流入口と電子部品との間の配線インダクタンスの均等化を図ることができるか、または流出口と電子部品との間の配線インダクタンスの均等化を図ることができる。以上より、複数の電子部品間において、電子部品毎の部品発熱、及び電流値の均等化を図ることができる。
【0014】
パターンは、流入口及び流出口のいずれか一方と電気的に接続される、内周側の第1のパターンと、流入口及び流出口のいずれか他方と電気的に接続される、外周側の第2のパターンと、を有し、第2のパターンに対して積層方向に積層された積層パターンが設けられ、流入口及び流出口のいずれか他方寄りの位置には、第2のパターンと積層パターンとを電気的に接続する第1のスルーホール導体が形成され、当該第1のスルーホール導体から周方向に離間した位置には、第2のスルーホール導体が形成されてよい。この場合、電子部品から流入口及び流出口のいずれか他方へ向かう電流は、第2のパターンの電流経路のみならず、第2のスルーホール導体、積層パターン、及び第1のスルーホール導体を通る電流経路を通過する。この場合、流入口及び流出口のいずれか他方に対しても、電子部品間の電子部品毎の部品発熱、及び電流値を均等化することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の電子部品間において、電子部品毎の部品発熱、及び電流値の均等化を図ることができる電子部品実装構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の本実施形態に係る電子部品実装構造を示す平面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る電子部品実装構造1の回路図である。
【
図3】電子部品3Aとカソード接続部との間の電流経路について説明するための図である。
【
図5】電子部品3Cとカソード接続部との間の電流経路について説明するための図である。
【
図6】電子部品3Bとカソード接続部との間の電流経路について説明するための図である。
【
図7】磁束の打ち消しについて説明するための図である。
【
図8】変形例に係る電子部品実装構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1及び
図2を参照して、本発明の実施形態に係る電子部品実装構造1について説明する。
図1は、本発明の本実施形態に係る電子部品実装構造1を示す平面図である。
図2は、本発明の実施形態に係る電子部品実装構造1の回路図である。
【0018】
図1に示すように、電子部品実装構造1は、基板2上に電子部品群3を実装した実装構造である。すなわち、電子部品実装構造1は、基板2と、当該基板2上に実装された電子部品群3と、を備えている。電子部品実装構造1は、所定の電子機器100に対して適用される構造である。電子機器100として、電源装置、充電装置、インバータ装置などが挙げられる。電子機器100は、電子部品実装構造1と、電子部品群3を冷却する放熱構造体101と、を備えてよい。放熱構造体101は、基板2に対して、電子部品群3とは反対側の主面に設けられる。放熱構造体101として、例えば放熱フィンなどを備えたベースプレート等が採用される。
【0019】
基板2は、各種電子部品等を実装するための板状の部材である。基板2は、電子部品が電流の流入端子としてのアノード端子と電流の出力端子としてのカソード端子を有するダイオードの場合、電流の流入口であるアノード接続部4と、電流の流出口であるカソード接続部6と、アノード接続部4とカソード接続部6との間の電流路を構成するパターン5と、を有する。また、基板2には、グランドに対して接地されて起電力部12への電流の戻り(電流の向きによっては電流の流出)を担うグランド端子7が設けられている。
【0020】
図2に示すように、アノード接続部4は、起電力部12と接続されており、当該起電力部12からの電流が流入してくる部分である。起電力部12として、例えば、バッテリー、スイッチングDC/DCコンバータのトランス等が挙げられる。アノード接続部4は、起電力部12と電子部品群3とを接続する中継点となる部分である。起電力部12は、アノード接続部4とは反対側において、グランド15に対して接地されている。カソード接続部6は、電装機器11と接続されている。なお、ここでの電装機器11とは、電流によって所定の機能を発揮する機器を指している。電装機器11は、電子機器100の構成要素の一部である。電装機器11として、例えば、エンジンコントロールユニット(ECU)、アクセサリー機器等が挙げられるが、これらのものに限定されない。
【0021】
カソード接続部6は、起電力部12からアノード接続部4を介して流れてきた電流を流出させて、電装機器11へ電流を供給する。カソード接続部6は、電子部品群3と電装機器11とを接続する中継点となる部分である。電装機器11は、カソード接続部6とは反対側において、グランド15に対して接地されている。
【0022】
図1に戻り、アノード接続部4は、グランド端子7の周囲を囲むように形成された電極であり、円弧状の扇形状を有している。なお、アノード接続部4は、グランド端子7の中心点を基準として180°の角度で広がっている。なお、アノード接続部4の周方向における中央位置(90°の位置)に対して、中心線CLを設定する。中心線CLは、グランド端子7の中心点CPを通過する。以降の説明においては、中心点CPを基準とし、中心点CPから遠ざかる方向を「径方向」とし、中心点CP周りの方向を「周方向」とする。カソード接続部6は、グランド端子7及びアノード接続部4に対して、径方向において離間する位置に形成された電極である。カソード接続部6は、中心線CL上に形成されている。
【0023】
パターン5は、基板2の表面に形成された導体パターンによって構成されている。パターン5は、第1のパターン8(アノードパターン)と、第2のパターン9(カソードパターン)と、を有する。第1のパターン8は、アノード接続部4と電気的に接続される内周側のパターンである。第2のパターン9は、カソード接続部6と電気的に接続される外周側のパターンである。本実施形態では、第1のパターン8は、アノード接続部4から更に外周側に拡大するように広がる、円弧状の扇形状を有している。第2のパターン9は、第1のパターン8から外周側に離間した位置にて、当該第1のパターン8を取り囲むように形成された円弧状の帯状の形状を有している。第2のパターン9は、周方向における中央位置(90°の位置)が中心線CLと一致するように配置されている。なお、パターン5の形状は当該形状に限定されない。
【0024】
第1のパターン8の外周縁部8aと、第2のパターン9の内周縁部9aとは、互いに周方向に離間した状態で対向するように配置されている。このように、第1のパターン8の外周縁部8aと、第2のパターン9の内周縁部9aとの間には、余白部31が形成されている。第1のパターン8と第2のパターン9とは、余白部31にて分断されることにより、互いに電気的に接続されていない状態となる。
【0025】
電子部品群3は、アノード接続部4とカソード接続部6との間に直列に接続される。電子部品群3は、第1のパターン8を介してアノード接続部4と接続される。電子部品群3は、第2のパターン9を介してカソード接続部6と接続される。また、電子部品群3は、本実施形態では、同一規格の複数の電子部品3A~3Fで構成される。電子部品群は複数あってもよい。その場合は各電子部品群内では、同一規格の複数の電子部品で構成される。例えば、
図1の例では、三つの電子部品が同一規格であり、他の三つの電子部品が同一規格(先の三つの規格とは異なる規格)であってもよい。また、同一規格の複数の電子部品で構成される電子部品群に対して、異なる規格の電子部品が配列されていてもよい。例えば、
図1の例において、六つの電子部品のうちの一つ(又は複数)の電子部品だけ規格が異なり、残りの電子部品が同一規格であってもよい。電子部品3A~3Fとして、基板2上に実装可能なあらゆる電子部品が採用されてよい。例えば、電子部品3A~3Fとして、半導体、インダクタ、コンデンサ、抵抗、ヒューズなどが挙げられる。また、半導体として、スイッチングDC/DCコンバータの整流素子としてのダイオード、(同期整流で用いられる)FETなどが挙げられる。なお、ダイオードを採用した場合の電子部品実装構造の例については後述する。「複数の電子部品」が、互いに「同一規格」である状態とは、少なくとも電子部品としての機能が同一であり(例えば、一の電子部品がダイオードである場合は、他の電子部品もダイオードである状態)、且つ、サイズ、電気的特性などが同一である状態を指す。複数の電子部品3A~3Fは、放熱構造体101に、略同一の熱伝導係数で接続されている。略同一の熱伝導係数で接続されている状態とは、電子部品3A~3Fと放熱構造体101との間に存在する部材の熱伝導係数が略同一であることを意味する。
【0026】
複数の電子部品3A~3Fは、アノード接続部4を基準として周方向に並ぶように配置されている。これにより、複数の電子部品3A~3Fは、アノード接続部4を円弧状に囲むように配置されている。複数の電子部品がアノード接続部4を基準として周方向に並ぶ状態とは、複数の電子部品の配列方向が、アノード接続部4を中心とした円弧を描くように配列された状態である。例えば、一の電子部品3Eの中心位置に対して、アノード接続部4の中心点CPから基準線SL1を設定する。基準線SL1に直交し、電子部品3Eの中心位置を通過する基準線SL2を設定する。このとき、電子部品3Eと隣り合う電子部品3D,3Fは、基準線SL2よりもアノード接続部4よりも近い位置に配置されている。
【0027】
本実施形態では、複数の電子部品3A~3Fは、第1のパターン8の外周縁部8a、及び第2のパターン9の内周縁部9aに沿うように円弧を描くように配列されている。複数の電子部品3A~3Fは、余白部31上に配置されるように、周方向に延びる余白部31に沿って所定ピッチで配置される。なお、複数の電子部品3A~3Fは、等ピッチで配置されてもよく、互いに異なるピッチで配置されてもよく、一部が等ピッチとなるように配置されてもよい。
図1に示す例では、電子部品3A~3C及び電子部品3D~3Fが等ピッチで配置され、電子部品3Cと電子部品3Dとの間のピッチだけ、他のピッチと異なっている。
【0028】
電子部品3A~3Fは、アノード接続部4に電気的に接続される電流の流入端子3aと、カソード接続部6に電気的に接続される電流の流出端子3bと、を有する。流入端子3aは、外周縁部8a付近の箇所にて、第1のパターン8と接続されている。流出端子3bは、内周縁部9a付近の箇所にて、第2のパターン9と接続されている。このように、電子部品3A~3Fは、余白部31を径方向に跨ぐように配置され、流入端子3aと流出端子3bとが、余白部31を挟むように配置される。
【0029】
アノード接続部4と流入端子3aとの間の各々の空間距離L1の集合を第1空間距離群とする。カソード接続部6と流出端子3bとの間の各々の空間距離L2の集合を第2空間距離群とする。ここで、アノード接続部4と流入端子3aとの空間距離L1とは、アノード接続部4と流入端子3aとの間の三次元的に空間を通る最短距離と定義できる。カソード接続部6と流出端子3bとの空間距離L2とは、カソード接続部6と流出端子3bとの間の三次元的な最短距離と定義できる。各構成要素は、基板2上に平面的に配置されている。従って、
図1に示すような平面視における距離が、空間距離L1,L2となる。本実施形態では、第1空間距離群は、当該空間距離群内で等しい空間距離L1となっている。すなわち、電子部品3Aの流入端子3aにおける空間距離L1は、電子部品3Bの流入端子3aにおける空間距離L1と等しい。また、電子部品3Aの流入端子3aにおける空間距離L1は、その他の電子部品3C~3Fの流入端子3aにおける空間距離L1とも等しい。なお、本明細書において空間距離L1が「等しい」状態とは、寸法が完全に一致する場合のみならず、製造上の誤差によるずれや、他の部品との配置の都合上で生じる僅かなずれは許容される。例えば、一の電子部品に対する空間距離L1と、他の電子部品に対する空間距離L1との間で差があったとしても、当該差が、空間距離L1の全長の10%以下である場合は、「等しい」状態に含まれるものとする。なお、本実施形態では、電子部品3A~3Fの空間距離L2は、互いに異なっている。
【0030】
また、アノード接続部4と流入端子3aとの間の各々の熱抵抗の集合を第1熱抵抗群とする。カソード接続部6と流出端子3bとの間の各々の熱抵抗の集合を第2熱抵抗群とする。ここで、アノード接続部4と流入端子3aとの間の熱抵抗とは、「電子部品の消費電力/(流入端子温度-アノード接続部温度)」と定義できる。カソード接続部6と流出端子3bとの間の熱抵抗とは、「電子部品の消費電力/(流出端子温度-カソード接続部温度)」と定義できる。本実施形態では、第1熱抵抗群は、当該熱抵抗群内で等しい熱抵抗となっている。すなわち、電子部品3Aの流入端子3aにおける熱抵抗は、電子部品3Bの流入端子3aにおける熱抵抗と等しい。また、電子部品3Aの流入端子3aにおける熱抵抗は、その他の電子部品3C~3Fの流入端子3aにおける熱抵抗とも等しい。
【0031】
また、アノード接続部4と流入端子3aとの間の各々のパターンが有する直流抵抗の集合を第1直流抵抗群とする。カソード接続部6と流出端子3bとの間の各々のパターンが有する直流抵抗の集合を第2直流抵抗群とする。なお、直流抵抗は、直流回路の基本法則であるオームの法則による直流電圧と直流電流の比により、当業者にとって一般的な方法で定義されるものである。本実施形態では、第1直流抵抗群は、当該直流抵抗群内で等しい直流抵抗となっている。すなわち、電子部品3Aの流入端子3aのパターンにおける直流抵抗は、電子部品3Bの流入端子3aのパターンにおける直流抵抗と等しい。また、電子部品3Aの流入端子3aのパターンにおける直流抵抗は、その他の電子部品3C~3Fの流入端子3aのパターンにおける直流抵抗とも等しい。
【0032】
また、アノード接続部4と流入端子3aとの間の各々のパターンが有するインピーダンスの集合を第1インピーダンス群とする。カソード接続部6と流出端子3bとの間の各々のパターンが有するインピーダンスの集合を第2インピーダンス群とする。なお、インピーダンスは、交流回路におけるベクトル表示された電圧と電流の比であって、当業者にとって一般的な方法で定義されるものである。本実施形態では、第1インピーダンス群は、当該インピーダンス群内で等しいインピーダンスとなっている。すなわち、電子部品3Aの流入端子3aのパターンにおけるインピーダンスは、電子部品3Bの流入端子3aのパターンにおけるインピーダンスと等しい。また、電子部品3Aの流入端子3aのパターンにおけるインピーダンスは、その他の電子部品3C~3Fの流入端子3aのパターンにおけるインピーダンスとも等しい。
【0033】
前述のように、なお、本実施形態では、電子部品3A~3Fの空間距離L2は、互いに異なっている。これに対し、カソード接続部6側には、カソード接続部6と電子部品3A~3Fとの間の各々の電気的特性(熱抵抗、直流抵抗、インピーダンス、インダクタンス等)のばらつきを低減するための構造が設けられている。
図3を参照して、当該構造について説明する。
【0034】
まず、
図3(b)に示すように、第2のパターン9に対しては、基板2の内部に向けて、積層方向に積層パターン21A,21B,21Cが設けられている。積層方向とは、基板2の厚さ方向のことである。積層パターン21A,21B,21Cは、導電性の部材によって構成されている。積層パターン21A,21B,21Cは、積層方向から見て(すなわち平面視において)、第2のパターン9と同じ形状を有していることが望ましい。第2のパターン9と積層パターン21Aとの間には絶縁層22Aが介在している。積層パターン21Aと積層パターン21Bとの間には絶縁層22Bが介在している。積層パターン21Bと積層パターン21Cとの間には、絶縁層22Cが介在している。
【0035】
図3(a)に示すように、第2のパターン9には、スルーホール導体10A,10B,10Cが形成される。スルーホール導体10A,10B,10Cは、積層方向に延びる導体であって、第2のパターン9と積層パターン21A、21Bとを電気的に接続する。なお、スルーホール導体10Aは、一部の領域(
図3(a)において破線で示す矩形の領域)内において、密集した状態で複数形成されても良い。スルーホール導体10B,10Cも同様である。
【0036】
第2のパターン9のうち、カソード接続部6寄りの位置には、スルーホール導体10C(第1のスルーホール導体)が形成される。スルーホール導体10Cは、カソード接続部6と近接した位置、すなわち周方向における、電子部品3Cと電子部品3Dとの間の位置に形成される。また、第2のパターン9のうち、スルーホール導体10Cから周方向に離間した位置には、スルーホール導体10A,10B(第2のスルーホール導体)が形成される。スルーホール導体10Aは、周方向における、電子部品3Aと電子部品3Bとの間の位置に形成される。当該位置のうち、スルーホール導体10Aは、電子部品3A寄りの位置に形成される。スルーホール導体10Bは、周方向における、電子部品3Fと電子部品3Eとの間の位置に形成される。当該位置のうち、スルーホール導体10Bは、電子部品3F寄りの位置に形成される。なお、スルーホール導体10A,10B,10Cは、径方向において、第2のパターン9の外周縁部9b寄りの位置に配置される。
【0037】
上述のような構成の場合、各電子部品3A~3Fからカソード接続部6へ流れる電流の経路は、第2のパターン9のみならず、スルーホール導体10A、10B,10C、及び積層パターン21A,21Bにも形成される。
【0038】
まず、
図3を参照して、電子部品3Aから第2のパターン9へ向かう電流について説明する。電子部品3Aからの電流の一部は、第2のパターン9の電流経路C1を通ってカソード接続部6へ流れる。その一方、電子部品3Aからの電流の一部は、スルーホール導体10A,10Cを介して内層へ向かう電流経路C2を通ってカソード接続部6へ流れる。電流経路C2を流れる電流は、電子部品3Aから第2のパターン9を通過してスルーホール導体10Aへ向かう。内層では、電流経路C2を流れる電流は、スルーホール導体10A、積層パターン21A,21B、及びスルーホール導体10Cの順で流れる。そして、電流経路C2を流れる電流は、スルーホール導体10Cから第2のパターン9を通過してカソード接続部6へ流れる。内層では、電流経路C2は、積層パターン21Aを通る電流経路C2aと、積層パターン21Bを通る電流経路C2bと、で分岐する。
【0039】
ここで、
図4(a)に、電流経路C1を通過する電流に対する配線抵抗R1と、電流経路C2aを通過する電流に対する配線抵抗R2と、電流経路C2bを通過する電流に対する配線抵抗R3の模式図を示す。この場合、配線抵抗R1,R2,R3は、電子部品3Aとカソード接続部6との間で並列に接続された状態となる。ここで、
図4(b)に示すように、配線の長さ「l」、厚さ「t」、及び幅「w」と配線抵抗Rとの間には、「R=ρ×(l/tw)」という関係が成り立つ。すなわち、配線の長さが長いほど配線抵抗Rが大きくなり、配線の厚みが薄いほど配線抵抗Rが大きくなる。電子部品3Aは、カソード接続部6から最も離れている。よって、
図3に示す電子部品3Aからカソード接続部6へ向かう電流経路C1は、長さが長く、厚みが厚い状態にある。当該状態における配線抵抗R1を「1Ω」とし、配線抵抗R2,R3を「1.2Ω」とする。このときの合成抵抗は「0.375Ω」と見なすことができる。
【0040】
次に、
図5を参照して、電子部品3Cから第2のパターン9へ向かう電流について説明する。電子部品3Cは、カソード接続部6に最も近いため、電流経路C1は短くなる。一方、電流経路C2では、電子部品3Cからスルーホール導体10Aに向かうまでの距離が長くなる。この場合、
図5に示す電子部品3Cからカソード接続部6へ向かう電流経路C1は、長さが短く、厚みが薄い状態にある。電流経路C1の長さが短くなることで、配線抵抗R1は
図3の例よりも低い「0.5Ω」となる。一方、電流経路C2が長くなる分、配線抵抗R2,R3は
図3の例よりも高い「3Ω」となる。このときの合成抵抗は「0.375Ω」と見なすことができる。
【0041】
次に、
図6を参照して、電子部品3Bから第2のパターン9へ向かう電流について説明する。電子部品3Bは、カソード接続部6に対して中間の距離であるため、電流経路C1は電子部品3Aよりは短く、電子部品3Cよりは長くなる。一方、電流経路C2では、電子部品3Bからスルーホール導体10Aに向かうまでの距離が、電子部品3A,3Cの中間の長さとなる。この場合、
図6に示す電子部品3Bからカソード接続部6へ向かう電流経路C1は、長さ及び厚みは、電子部品3A、3Cの中間の状態にある。電流経路C1の長さが中間の長さとなることで、配線抵抗R1は
図3及び
図5の例の中間の「0.6Ω」となる。一方、電流経路C2が中間となることで、配線抵抗R2,R3は
図3及び
図5の例の中間の「2Ω」となる。このときの合成抵抗は「0.375Ω」と見なすことができる。以上のように、電子部品3A,3B,3Cとカソード接続部6との間の合成抵抗は、いずれも「0.375Ω」と見なすことができる。なお、電子部品3D,3E,3Fについても同趣旨の関係が成り立つ。
【0042】
図7に示すように、アノード接続部4からの電流は、第1のパターン8を介して電子部品3Bへ向かって電流経路C3を流れる。これに対し、電子部品3Bから電装機器11へ向かう電流は、グランド15(
図2参照)を介して積層パターン21C内の電流経路C4を流れる。そして、当該電流は、グランド端子7を介して起電力部12へ向かう。このとき、第1のパターン8の電流経路C3を流れる電流と、積層パターン21Cの電流経路C4を流れる電流とは、互いに磁束を打ち消し合うような関係にある。これにより、電子部品実装構造1は、構造内の磁束を低減する効果を得ることができる。
【0043】
次に、本実施形態に係る電子部品実装構造1の作用・効果について説明する。
【0044】
電子部品実装構造1では、アノード接続部4と流入端子3aとの間の各々の第1空間距離群が、当該空間距離群内で等しい空間距離L1となっている。このような構成とすることで、各々の電子部品3A~3Fの流入端子3aのアノード接続部4に対する空間距離L1を等しくすることができる。この場合、複数の電子部品3A~3F間において、アノード接続部4と流入端子3aとの間の配線インダクタンスの均等化を図ることができる。以上より、複数の電子部品間において、電子部品毎の部品発熱、及び電流値の均等化を図ることができる。
【0045】
電子部品群3は、同一規格の複数の電子部品3A~3Fを備えている。電子部品3A~3F同士が同一規格であるため、上記構成を採用することによる、電子部品毎の部品発熱、及び電流値の均等化の効果がより顕著となる。
【0046】
アノード接続部4と流入端子3aとの間の各々の第1熱抵抗群が、当該熱抵抗群内で等しい熱抵抗となっている。この場合、複数の電子部品間において、熱抵抗の均等化も図ることができる。
【0047】
アノード接続部4と流入端子3aとの間の各々のパターンが有する第1直流抵抗群が、当該直流抵抗群内で等しい直流抵抗となっている。この場合、複数の電子部品間において、直流抵抗の均等化も図ることができる。
【0048】
アノード接続部4と流入端子3aとの間の各々のパターンが有する第1インピーダンス群が、当該インピーダンス群内で等しいインピーダンスとなっている。この場合、複数の電子部品間において、インピーダンスの均等化も図ることができる。
【0049】
電子部品実装構造1では、複数の電子部品3A~3Fは、アノード接続部4を基準として周方向に並ぶように配置されている。このような構成とすることで、各々の電子部品3A~3Fのアノード接続部4に対する空間距離L1の均等化を図ることができる。この場合、複数の電子部品3A~3F間において、アノード接続部4と電子部品3A~3Fとの間の配線インダクタンスの均等化を図ることができる。以上より、複数の電子部品間において、配線インダクタンスの均等化を図ることができる。
【0050】
パターン5は、アノード接続部4と電気的に接続される内周側の第1のパターン8と、カソード接続部6と電気的に接続される、外周側の第2のパターン9と、を有する。第2のパターン9に対して積層方向に積層された積層パターン21A,21Bが設けられ、カソード接続部6寄りの位置には、第2のパターン9と積層パターン21A,21Bとを電気的に接続するスルーホール導体10Cが形成され、当該スルーホール導体10Cから周方向に離間した位置には、スルーホール導体10A,10Bが形成される。この場合、電子部品3A~3Fからカソード接続部6へ向かう電流は、第2のパターン9の電流経路C1のみならず、スルーホール導体10A,10B、積層パターン21A,21B、及びスルーホール導体10Cを通る電流経路C2を通過する。この場合、カソード接続部に対しても、電子部品間の配線インダクタンスを均等化することができる。
【0051】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0052】
例えば、電流の流入口と電流の流出口との関係は、上述の実施形態と逆であってもよい。すなわち、流入口が外周側に設けられ、流出口が中心側に設けられてよい。この場合、空間距離L1が第2空間距離群の空間距離となる。
【0053】
また、電子部品の数などは特に限定されず、各パターンなどの形状も特に限定されない。
【0054】
例えば、
図8に示すように、第1のパターン8が中央で分断されており、電子部品3A~3Cと電子部品3D~3Fとが、異なる並列回路となっていてよい。
図8は、スイッチングDC/DCコンバータにおいて、本発明の電子部品実装構造を適用したものである。カソード接続部6は、平滑用インダクタDC/DCコンバータ103に接続されている。また、起電力部12として、絶縁型スイッチングDC/DCコンバータのトランスが採用されている。このときの電子部品3A~3Fとして、整流用のダイオードが採用される。
【符号の説明】
【0055】
1…電子部品実装構造、2…基板、3…電子部品群、3A~3F…電子部品、4…アノード接続部(流入口)、6…カソード接続部(流出口)、8…第1のパターン、9…第2のパターン、10A,10B…スルーホール導体(第2のスルーホール導体)、10C…スルーホール導体(第1のスルーホール導体)、21A,21B…積層パターン。