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特許7222335蓄電モジュール、及び蓄電モジュールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】蓄電モジュール、及び蓄電モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20230208BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20230208BHJP
   H01G 11/12 20130101ALI20230208BHJP
   H01G 11/80 20130101ALI20230208BHJP
   H01G 11/82 20130101ALI20230208BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/184 A
H01G11/12
H01G11/80
H01G11/82
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019163022
(22)【出願日】2019-09-06
(65)【公開番号】P2021044079
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100171583
【弁理士】
【氏名又は名称】梅景 篤
(72)【発明者】
【氏名】田丸 耕二郎
(72)【発明者】
【氏名】植田 浩生
(72)【発明者】
【氏名】合田 泰之
【審査官】小川 進
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-174079(JP,A)
【文献】特開2008-117626(JP,A)
【文献】国際公開第2020/203101(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 50/184
H01G 11/12
H01G 11/80
H01G 11/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータを介して第1方向に積層された複数の電極を有する電極積層体と、
前記複数の電極のうちの互いに隣り合う2つの電極の間にそれぞれ形成される内部空間を封止するための封止体と、
を備え、
前記複数の電極は、正極終端電極と、負極終端電極と、前記正極終端電極及び前記負極終端電極の間に設けられた複数のバイポーラ電極と、を備え、
前記複数のバイポーラ電極のそれぞれは、電極板と、前記電極板の第1面に設けられた正極と、前記電極板の前記第1面と反対側の第2面に設けられた負極と、を備え、
前記封止体は、前記電極板の周縁部に接合された環状の第1封止部と、積層された前記第1封止部の周囲に設けられた第2封止部と、を備え、
前記第1封止部は、前記電極板の前記周縁部に接合された接合面と、前記接合面と反対側に設けられた環状の段差部と、を備え、
前記段差部は、前記セパレータが載置される載置面と、前記第1封止部が接合されている前記電極板と前記第1方向において向かい合う別の電極板と接触する上面と、前記載置面と前記上面とを接続する壁面と、を備え、
前記第1封止部には、前記内部空間と前記第1封止部の外部とを接続するように、前記壁面を貫通して前記第1方向と交差する第2方向に延びる連通路が設けられ、
前記第2封止部には、前記連通路に連なるとともに前記第2方向に延びる連通孔が設けられ、
前記第1封止部は、前記連通路が設けられた第1辺部と、前記連通路が設けられていない第2辺部と、を備え、
前記第1辺部における前記第1封止部の内周縁から前記壁面までの距離は、前記第2辺部における前記第1封止部の内周縁から前記壁面までの距離よりも長い、蓄電モジュール。
【請求項2】
前記第1辺部における前記セパレータの外周端面から前記壁面までの距離は、前記第2辺部における前記セパレータの外周端面から前記壁面までの距離よりも長い、請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
前記第2封止部は、前記第1封止部の周囲に設けられた第1樹脂部と、前記第1樹脂部の周囲に設けられた第2樹脂部と、を備え、
前記第1辺部における前記セパレータの外周端面から前記壁面までの距離は、前記第2樹脂部の厚みよりも長い、請求項1又は請求項2に記載の蓄電モジュール。
【請求項4】
前記第1封止部は、前記電極板に接合される環状の第1樹脂層と、前記第1樹脂層の上に設けられた環状の第2樹脂層と、を備え、
前記連通路は、前記第2樹脂層に設けられる、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の蓄電モジュール。
【請求項5】
前記複数の電極のそれぞれの平面視形状は、一対の短辺と一対の長辺とを有する長方形状であり、
前記第1辺部は、前記一対の短辺のうちの一方の短辺に設けられる、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の蓄電モジュール。
【請求項6】
正極終端電極、負極終端電極、及び複数のバイポーラ電極を含む複数の電極を準備する工程と、
前記複数の電極のそれぞれの電極板の周縁部に環状の第1封止部を形成する工程と、
前記正極終端電極及び前記負極終端電極の間に前記複数のバイポーラ電極が位置するように、前記第1封止部が形成された前記複数の電極を、セパレータを介して第1方向に積層することでユニット積層体を形成する工程と、
前記ユニット積層体の前記第1封止部の周囲に射出成形によって第2封止部を形成する工程と、
を備え、
前記複数のバイポーラ電極のそれぞれは、前記電極板と、前記電極板の第1面に設けられた正極と、前記電極板の前記第1面と反対側の第2面に設けられた負極と、を備え、
前記第1封止部は、前記電極板の前記周縁部に接合された接合面と、前記接合面と反対側に設けられた環状の段差部と、を備え、
前記段差部は、前記セパレータが載置される載置面と、前記第1封止部が接合されている前記電極板と前記第1方向において向かい合う別の電極板と接触する上面と、前記載置面と前記上面とを接続する壁面と、を備え、
前記第1封止部には、前記壁面を貫通して前記第1方向と交差する第2方向に延びるとともに前記第1方向に窪む凹部が設けられ、
前記ユニット積層体を形成する工程では、連通孔形成部材が前記凹部に嵌め合わされるとともに、前記連通孔形成部材の先端が前記壁面と前記セパレータの外縁との間に位置するように、前記第1封止部上に前記連通孔形成部材を配置しながら、前記複数の電極を積層し、
前記第2封止部を形成する工程では、前記連通孔形成部材が前記ユニット積層体の前記凹部に嵌め合わされるとともに、前記連通孔形成部材の先端が前記壁面と前記セパレータの外縁との間に位置する状態を保ちながら、射出成形が行われる、蓄電モジュールの製造方法。
【請求項7】
前記第2封止部を形成する工程は、
前記第1封止部の周囲に射出成形によって第1樹脂部を形成する工程と、
前記第1樹脂部の周囲に射出成形によって第2樹脂部を形成する工程と、
を備え、
前記第1樹脂部を形成する工程では、前記連通孔形成部材が前記凹部によって構成された第1連通孔に嵌め合わされるとともに、前記連通孔形成部材の先端が前記壁面と前記セパレータの外縁との間に位置する状態で、射出成形が行われ、
前記第2樹脂部を形成する工程では、前記連通孔形成部材が前記第1連通孔に嵌め合わされた状態を保ちながら、前記連通孔形成部材を前記ユニット積層体の外側に向かって移動させ、前記連通孔形成部材が前記第1連通孔に嵌め合わされた状態で射出成形が行われる、請求項6に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項8】
前記第2樹脂部を形成する工程では、前記連通孔形成部材の先端が前記壁面と前記セパレータの外縁との間に位置している状態で射出成形が行われる、請求項7に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項9】
前記第1封止部は、前記凹部が設けられた第1辺部と、前記第1辺部とは異なる第2辺部と、を備え、
前記第1辺部における前記第1封止部の内周縁から前記壁面までの距離は、前記第2辺部における前記第1封止部の内周縁から前記壁面までの距離よりも長い、請求項6~請求項8のいずれか一項に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電モジュール、及び蓄電モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蓄電モジュールとして、電極板の一方の面に正極が形成され、他方の面に負極が形成されたバイポーラ電極を備えるバイポーラ電池が知られている(例えば、特許文献1参照)。バイポーラ電池は、バイポーラ電極とセパレータとが積層方向に沿って交互に積層された積層体を備えている。積層体の側面には、積層方向に互いに隣り合うバイポーラ電極間を封止する封止体が設けられており、バイポーラ電極間に形成された内部空間に電解液が収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-204386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような蓄電モジュールの封止体には、内部空間に電解液を注入するための連通孔が設けられることがある。また、上記封止体は、多段階に形成されることがある。例えば、積層体の側面に内側封止体を形成した後、当該内側封止体の側面に外側封止体を形成することによって、上記封止体が形成される。この場合、内側封止体と外側封止体とには、それぞれ対応する位置に連通孔が設けられる。外側封止体は、例えば、内側封止体が形成された積層体を金型内に配置した後、樹脂の射出成形によって形成される。外側封止体を形成する際には、電解液の注液性を確保するために、内側封止体に設けられた連通孔が埋没することを防ぐ必要がある。内側封止体の連通孔の埋没を防止する方法の一例として、外側封止体に連通孔を形成するための連通孔形成部材を、積層体の内側封止体に設けられた連通孔に挿入した状態で、射出成形によって外側封止体を形成することが挙げられる。この方法では、内側封止体の連通孔に挿入された連通孔形成部材の先端は、積層体の内側封止体よりも内部に配置されたセパレータに向かい合う。連通孔形成部材の挿入時に、連通孔形成部材の先端がセパレータに接触すると、セパレータの破損及び捲れ等が生じ、セパレータによる対向電極間の絶縁性能が低下するおそれがある。
【0005】
本開示は、電解液の注液性を確保しつつ、セパレータの絶縁性能を維持することが可能な蓄電モジュール、及び蓄電モジュールの製造方法を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る蓄電モジュールは、セパレータを介して第1方向に積層された複数の電極を有する電極積層体と、複数の電極のうちの互いに隣り合う2つの電極の間にそれぞれ形成される内部空間を封止するための封止体と、を備える。複数の電極は、正極終端電極と、負極終端電極と、正極終端電極及び負極終端電極の間に設けられた複数のバイポーラ電極と、を備える。複数のバイポーラ電極のそれぞれは、電極板と、電極板の第1面に設けられた正極と、電極板の第1面と反対側の第2面に設けられた負極と、を備える。封止体は、電極板の周縁部に接合された環状の第1封止部と、積層された第1封止部の周囲に設けられた第2封止部と、を備える。第1封止部は、電極板の周縁部に接合された接合面と、接合面と反対側に設けられた環状の段差部と、を備える。段差部は、セパレータが載置される載置面と、第1封止部が接合されている電極板と第1方向において向かい合う別の電極板と接触する上面と、載置面と上面とを接続する壁面と、を備える。第1封止部には、内部空間と第1封止部の外部とを接続するように、壁面を貫通して第1方向と交差する第2方向に延びる連通路が設けられる。第2封止部には、連通路に連なるとともに第2方向に延びる連通孔が設けられる。第1封止部は、連通路が設けられた第1辺部と、第1辺部とは異なる第2辺部と、を備える。第1辺部における第1封止部の内周縁から壁面までの距離は、第2辺部における第1封止部の内周縁から壁面までの距離よりも長い。
【0007】
この蓄電モジュールでは、第1封止部が、電極板の周縁部に接合された接合面と、接合面と反対側に設けられた環状の段差部と、を備え、段差部は、セパレータが載置される載置面と、第1封止部が接合されている電極板と第1方向において向かい合う別の電極板と接触する上面と、載置面と上面とを接続する壁面と、を備える。そして、第1封止部では、連通路が設けられた第1辺部における第1封止部の内周縁から壁面までの距離は、第2辺部における第1封止部の内周縁から壁面までの距離よりも長い。この構成においては、積層された第1封止部の周囲に射出成形により第2封止部を形成する場合に、連通孔形成部材の先端が第1封止部の壁面とセパレータの外縁との間に位置するように、連通孔形成部材を連通路に配置しやすくなる。これにより、連通孔形成部材はセパレータに接触しないように連通路に配置され得るので、第2封止部を形成する際に、連通路が埋没することを防ぎつつ、セパレータの破損等を抑制することができる。一方、第2辺部においては、第1辺部よりも、第1封止部の内周縁から壁面までの距離を短くすることで、蓄電モジュールが大型化することを回避することができる。その結果、蓄電モジュールを大型化することなく、電解液の注液性を確保しつつ、セパレータの絶縁性能を維持することが可能となる。
【0008】
第1辺部におけるセパレータの外周端面から壁面までの距離は、第2辺部におけるセパレータの外周端面から壁面までの距離よりも長くてもよい。この構成では、積層された第1封止部の周囲に射出成形により第2封止部を形成する場合に、連通孔形成部材の先端が第1封止部の壁面とセパレータの外縁との間に位置するように、連通孔形成部材を連通路に配置しやすくなる。これにより、連通孔形成部材はセパレータに接触しないように連通路に配置され得るので、第2封止部を形成する際に、連通路が埋没することを防ぎつつ、セパレータの破損等を抑制することができる。
【0009】
第2封止部は、第1封止部の周囲に設けられた第1樹脂部と、第1樹脂部の周囲に設けられた第2樹脂部と、を備えてもよい。第1辺部におけるセパレータの外周端面から壁面までの距離は、第2樹脂部の厚みよりも長くてもよい。この場合、第1樹脂部の形成に用いられた連通孔形成部材が連通路に嵌め合わされた状態を保ちながら、第2樹脂部の厚み分だけ連通孔形成部材をユニット積層体の外側に向かって移動させることで、連通孔形成部材の先端が第1封止部の壁面とセパレータの外縁との間に位置している状態で第2樹脂部を形成するための射出成形を行うことができる。このため、第2樹脂部の形成においても、電解液の注液性を確保しつつ、セパレータの絶縁性能を維持することが可能となる。さらに、第1樹脂部及び第2樹脂部を形成する際に、連通孔形成部材の抜き差しを行う必要がないので、蓄電モジュールの生産性を向上させることが可能となる。
【0010】
第1封止部は、電極板に接合される環状の第1樹脂層と、第1樹脂層の上に設けられた環状の第2樹脂層と、を備えてもよい。連通路は、第2樹脂層に設けられてもよい。このように、第1封止部は、第1樹脂層と第2樹脂層との2層構成とすることができる。
【0011】
複数の電極のそれぞれの平面視形状は、一対の短辺と一対の長辺とを有する長方形状であってもよい。第1辺部は、一対の短辺のうちの一方の短辺に設けられてもよい。この場合、第1封止部の内周縁から壁面までの距離を長くする第1辺部が、短辺に設けられるので、蓄電モジュールの大型化をさらに抑制することが可能となる。
【0012】
本開示の別の側面に係る蓄電モジュールの製造方法は、正極終端電極、負極終端電極、及び複数のバイポーラ電極を含む複数の電極を準備する工程と、複数の電極のそれぞれの電極板の周縁部に環状の第1封止部を形成する工程と、正極終端電極及び負極終端電極の間に複数のバイポーラ電極が位置するように、第1封止部が形成された複数の電極を、セパレータを介して第1方向に積層することでユニット積層体を形成する工程と、ユニット積層体の第1封止部の周囲に射出成形によって第2封止部を形成する工程と、を備える。複数のバイポーラ電極のそれぞれは、電極板と、電極板の第1面に設けられた正極と、電極板の第1面と反対側の第2面に設けられた負極と、を備える。第1封止部は、電極板の周縁部に接合された接合面と、接合面と反対側に設けられた環状の段差部と、を備える。段差部は、セパレータが載置される載置面と、第1封止部が接合されている電極板と第1方向において向かい合う別の電極板と接触する上面と、載置面と上面とを接続する壁面と、を備える。第1封止部には、壁面を貫通して第1方向と交差する第2方向に延びるとともに第1方向に窪む凹部が設けられる。ユニット積層体を形成する工程では、連通孔形成部材が凹部に嵌め合わされるとともに、連通孔形成部材の先端が壁面とセパレータの外縁との間に位置するように、第1封止部上に連通孔形成部材を配置しながら、複数の電極が積層される。第2封止部を形成する工程では、連通孔形成部材がユニット積層体の凹部に嵌め合わされた状態を保ちながら、射出成形が行われる。
【0013】
この蓄電モジュールの製造方法では、第1封止部に設けられた凹部に連通孔形成部材が嵌め合わされるとともに、連通孔形成部材の先端が第1封止部の壁面とセパレータの外縁との間に位置するように、第1封止部上に連通孔形成部材を配置しながら、複数の電極を積層することで、ユニット積層体が形成される。このため、第2封止部を形成する際に、凹部によって構成される第1連通孔が埋没することを防ぎつつ、セパレータの破損等を抑制することができる。その結果、電解液の注液性を確保しつつ、セパレータの絶縁性能を維持することが可能となる。
【0014】
第2封止部を形成する工程は、第1封止部の周囲に射出成形によって第1樹脂部を形成する工程と、第1樹脂部の周囲に射出成形によって第2樹脂部を形成する工程と、を備えてもよい。第1樹脂部を形成する工程では、連通孔形成部材が凹部によって構成された第1連通孔に嵌め合わされた状態で、射出成形が行われてもよい。第2樹脂部を形成する工程では、連通孔形成部材が第1連通孔に嵌め合わされた状態を保ちながら、連通孔形成部材をユニット積層体の外側に向かって移動させ、連通孔形成部材が第1連通孔に嵌め合わされた状態で射出成形が行われてもよい。この場合、第1樹脂部の形成に用いられた連通孔形成部材を引き抜くことなく、第2樹脂部が形成される。このため、第1樹脂部及び第2樹脂部を形成する際に、連通孔形成部材の抜き差しを行う必要がないので、蓄電モジュールの生産性を向上させることが可能となる。
【0015】
第2樹脂部を形成する工程では、連通孔形成部材の先端が壁面とセパレータの外縁との間に位置している状態で射出成形が行われてもよい。この場合、第2樹脂部を形成する工程においても、連通孔形成部材がセパレータに接触しないように第1連通孔に嵌め合わされた状態で、射出成形が行われる。その結果、電解液の注液性を確保しつつ、セパレータの絶縁性能を維持することが可能となる。
【0016】
第1封止部は、凹部が設けられた第1辺部と、第1辺部とは異なる第2辺部と、を備えてもよい。第1辺部における第1封止部の内周縁から壁面までの距離は、第2辺部における第1封止部の内周縁から壁面までの距離よりも長くてもよい。この場合、第1封止部の内周縁から壁面までの距離を第1封止部のすべての辺部において長くする必要が無いので、蓄電モジュールの大型化を回避することができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、電解液の注液性を確保しつつ、セパレータの絶縁性能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、一実施形態に係る蓄電モジュールを備える蓄電装置の一例を示す概略断面図である。
図2図2は、図1に示された蓄電モジュールの内部構成の一例を示す概略断面図である。
図3図3は、図2に示された蓄電モジュールの斜視図である。
図4図4は、図3に示された蓄電モジュールの一部を示す斜視図である。
図5図5は、図4に示されたV-V線に沿った断面図である。
図6図6は、図5に示された蓄電モジュールの断面図の一部を拡大した図である。
図7図7は、第1封止部の構成を説明するための断面図である。
図8図8は、第1封止部の構成を説明するための平面図である。
図9図9は、図1に示された蓄電モジュールの製造方法の一例を示す工程図である。
図10図10は、第1樹脂部を形成する工程における連通孔形成部材の配置を説明するための平面図である。
図11図11は、第1樹脂部を形成するために用いられる下型及び入れ子型を説明するための平面図である。
図12図12は、第1樹脂部を形成する工程におけるユニット積層体及び型の断面図である。
図13図13は、第2樹脂部を形成する工程における連通孔形成部材の配置を説明するための平面図である。
図14図14は、第2樹脂部を形成する工程におけるユニット積層体、第1樹脂部、及び型の断面図である。
図15図15は、第3樹脂部を形成する工程におけるユニット積層体、第1樹脂部、第2樹脂部、及び型の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら一実施形態を詳細に説明する。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0020】
図1は、一実施形態に係る蓄電モジュールを備える蓄電装置の一例を示す概略断面図である。図1に示される蓄電装置1は、例えば、フォークリフト、ハイブリッド自動車、又は電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電装置1は、モジュール積層体2と、拘束部材3と、を備えている。
【0021】
モジュール積層体2は、複数(本実施形態では4つ)の蓄電モジュール4と、複数(本実施形態では3つ)の導電板5と、を含む。複数の蓄電モジュール4は、積層方向D1(第1方向)に沿って積層されている。蓄電モジュール4は、バイポーラ電池であり、積層方向D1から見て矩形状を呈している。蓄電モジュール4は、例えばニッケル水素二次電池及びリチウムイオン二次電池等の二次電池、又は電気二重層キャパシタである。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
【0022】
積層方向D1において互いに隣り合う2つの蓄電モジュール4同士は、導電板5を介して互いに電気的に接続されている。ここでは、モジュール積層体2の積層端には、いずれも蓄電モジュール4が配置されており、導電板5は、積層方向D1において互いに隣り合う2つの蓄電モジュール4の間にそれぞれ配置されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の積層方向D1における外側には、導電板5とは異なる導電板Pが配置されている。積層下端に位置する導電板Pには、正極端子6が接続されている。積層上端に位置する導電板Pには、負極端子7が接続されている。正極端子6及び負極端子7は、例えば導電板Pの縁部から積層方向D1と交差(直交)する方向D2(第2方向)に引き出されている。正極端子6及び負極端子7により、蓄電装置1の充放電が実施される。
【0023】
導電板5には、複数の流路5aが設けられている。流路5aは、空気等の冷却用流体を流通させるための貫通孔である。流路5aは、例えば、積層方向D1と方向D2とにそれぞれ交差(直交)する方向D3(図3参照)に導電板5を貫通しており、方向D3に沿って延在している。複数の流路5aは方向D2に沿って配列されている。導電板5は、積層方向D1において互いに隣り合う2つの蓄電モジュール4同士を電気的に接続する接続部材としての機能のほか、これらの流路5aに冷却用流体を流通させることにより、蓄電モジュール4で発生した熱を放出する放熱板としての機能を併せ持つ。図1の例では、積層方向D1から見た導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積よりも小さいが、放熱性の向上の観点から、導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積と同じであってもよく、蓄電モジュール4の面積よりも大きくてもよい。
【0024】
拘束部材3は、モジュール積層体2に対してモジュール積層体2の積層方向D1に拘束荷重を付加する部材である。拘束部材3は、モジュール積層体2を積層方向D1に挟む一対のエンドプレート8と、一対のエンドプレート8同士を締結する締結ボルト9及びナット10と、を含んでいる。エンドプレート8は、積層方向D1から見た蓄電モジュール4、導電板5、及び導電板Pの面積よりも一回り大きい面積を有する矩形の金属板である。エンドプレート8と導電板Pとの間には、電気絶縁性を有する絶縁板Fが設けられている。絶縁板Fにより、エンドプレート8と導電板Pとの間が絶縁されている。
【0025】
エンドプレート8の縁部には、モジュール積層体2よりも外側の位置に挿通孔8aが設けられている。締結ボルト9は、一方のエンドプレート8の挿通孔8aから他方のエンドプレート8の挿通孔8aに向かって通され、他方のエンドプレート8の挿通孔8aから突出した締結ボルト9の先端部分には、ナット10が螺合されている。これにより、蓄電モジュール4、導電板5、及び導電板Pが一対のエンドプレート8によって挟持されてモジュール積層体2としてユニット化される。モジュール積層体2に対し、積層方向D1に拘束荷重が付加されている。
【0026】
次に、蓄電モジュール4の構成について詳細に説明する。図2は、図1に示された蓄電モジュールの内部構成の一例を示す概略断面図である。図2に示されるように、蓄電モジュール4は、電極積層体11と、電極積層体11を封止する樹脂製の封止体12とを備えている。電極積層体11は、セパレータ13を介して積層方向D1に沿って積層された複数の電極によって構成されている。これらの複数の電極は、負極終端電極18と、正極終端電極19と、負極終端電極18及び正極終端電極19の間に設けられた複数のバイポーラ電極14と、を含む。これらの電極の積層方向D1から見た形状(平面視形状)は、一対の短辺と一対の長辺とを有する長方形状である。
【0027】
セパレータ13は、例えばシート状に形成されている。セパレータ13としては、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、並びに、ポリプロピレン及びメチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。セパレータ13は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されていてもよい。
【0028】
負極終端電極18、複数のバイポーラ電極14、及び正極終端電極19は、その順でセパレータ13を介して積層方向D1に沿って積層されている。複数のバイポーラ電極14のそれぞれは、電極板15と、正極16と、負極17と、を含んでいる。電極板15は、例えばニッケルからなる金属箔、又はニッケルメッキ鋼板からなり、矩形状を呈している。電極板15は、上面15a(第1面)と、上面15aと反対側の下面15b(第2面)と、を含む。電極板15の周縁部15cは、正極活物質及び負極活物質が塗工されていない未塗工領域である。
【0029】
正極16は、電極板15の上面15aに設けられる。正極16は、正極活物質が上面15aに塗工されることによって形成された正極活物質層である。正極16を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。負極17は、電極板15の下面15bに設けられる。負極17は、負極活物質が下面15bに塗工されることによって形成された負極活物質層である。負極17を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。本実施形態では、電極板15の下面15bにおける負極17の形成領域は、電極板15の上面15aにおける正極16の形成領域よりも一回り大きい。
【0030】
電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の正極16は、セパレータ13を挟んで積層方向D1に隣り合う一方のバイポーラ電極14の負極17と向かい合っている。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の負極17は、セパレータ13を挟んで積層方向D1に隣り合う他方のバイポーラ電極14の正極16と向かい合っている。
【0031】
負極終端電極18は、積層方向D1における電極積層体11の一端に配置されている。負極終端電極18は、電極板15と、電極板15の下面15bに設けられた負極17とを含んでいる。負極終端電極18の負極17は、セパレータ13を介して積層方向D1の一端に位置するバイポーラ電極14の正極16と向かい合っている。負極終端電極18の電極板15の上面15aには、蓄電モジュール4に隣接する一方の導電板5又は導電板P(図1参照)が接触している。
【0032】
正極終端電極19は、積層方向D1における電極積層体11の一端とは反対側の他端に配置されている。正極終端電極19は、電極板15と、電極板15の上面15aに設けられた正極16とを含んでいる。正極終端電極19の正極16は、セパレータ13を介して積層方向D1の他端に位置するバイポーラ電極14の負極17と向かい合っている。正極終端電極19の電極板15の下面15bには、蓄電モジュール4に隣接する他方の導電板5又は導電板P(図1参照)が接触している。
【0033】
封止体12は、例えば絶縁性の樹脂によって、全体として矩形の筒状に形成されている。封止体12は、電極板15の周縁部15cを包囲するように電極積層体11の側面11aに設けられている。封止体12は、側面11aにおいて周縁部15cを保持している。封止体12は、電極板15の周縁部15cに接合された複数の第1封止部21と、積層方向D1に沿って側面11aに延び、積層された複数の第1封止部21の周囲に設けられた第2封止部22とを有している。第1封止部21及び第2封止部22は、耐アルカリ性を有する絶縁性の樹脂によって構成されている。第1封止部21及び第2封止部22の構成材料としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、又は変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等が挙げられる。
【0034】
第1封止部21は、電極板15の上面15aにおいて周縁部15cの全周にわたって連続的に設けられ、積層方向D1から見て矩形枠状をなしている(図3参照)。本実施形態では、バイポーラ電極14の電極板15のみならず、負極終端電極18の電極板15及び正極終端電極19の電極板15に対しても第1封止部21が設けられている。負極終端電極18では、電極板15の上面15aの周縁部15cに第1封止部21が設けられ、正極終端電極19では、電極板15の上面15a及び下面15bの双方の周縁部15cに第1封止部21が設けられている。
【0035】
第1封止部21は、電極板15の周縁部15cに重ねられ、重なり部分Kが形成されている。重なり部分Kにおいて、第1封止部21は、例えば超音波又は熱圧着によって電極板15に気密に溶着されている。第1封止部21は、例えば積層方向D1に所定の厚さを有するフィルムを用いて形成されている。第1封止部21の内側は、積層方向D1に互いに隣り合う2つの電極板15の周縁部15c同士の間に位置している。第1封止部21の外側は、電極板15の縁よりも外側に張り出しており、その先端部分は、第2封止部22によって保持されている。積層方向D1に沿って互いに隣り合う2つの第1封止部21同士は、互いに離間していてもよく、接していてもよい。また、第1封止部21の外縁部分同士は、例えば熱板溶着などによって互いに結合していてもよい。
【0036】
第2封止部22は、電極積層体11及び第1封止部21の外側に設けられ、蓄電モジュール4の外壁(筐体)を構成している。第2封止部22は、例えば樹脂の射出成形によって形成され、積層方向D1に沿って電極積層体11の全長にわたって延在している。第2封止部22は、積層方向D1を軸方向として延在する矩形の枠状を呈している。第2封止部22は、例えば射出成形時の熱によって第1封止部21の外縁部分に溶着されている。
【0037】
第2封止部22は、積層方向D1における両端部にオーバーハング部22eをそれぞれ有している。一方のオーバーハング部22eは、積層方向D1の一端部において第1封止部21の内縁に向かって張り出し、負極終端電極18を構成する電極板15の上面15aに溶着された第1封止部21に結合している。他方のオーバーハング部22eは、積層方向D1の他端部において第1封止部21の内縁に向かって張り出し、正極終端電極19を構成する電極板15の下面15bに溶着された第1封止部21に結合している。一方及び他方のオーバーハング部22eの張り出し長さは、互いに等しく、これらのオーバーハング部22eの先端22fは、積層方向D1から見て電極板15と第1封止部21との重なり部分Kに重なるように位置している。
【0038】
封止体12(第1封止部21及び第2封止部22)は、互いに隣り合う2つの電極の間にそれぞれ形成される内部空間Vを封止する。より具体的には、第2封止部22は、第1封止部21と共に、積層方向D1に沿って互いに隣り合う2つのバイポーラ電極14の間、積層方向D1に沿って互いに隣り合う負極終端電極18とバイポーラ電極14との間、及び積層方向D1に沿って互いに隣り合う正極終端電極19とバイポーラ電極14との間をそれぞれ封止している。これにより、隣り合う2つのバイポーラ電極14の間、負極終端電極18とバイポーラ電極14との間、及び正極終端電極19とバイポーラ電極14との間には、それぞれ気密に仕切られた内部空間Vが形成されている。この内部空間Vには、例えば水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液を含む水系の電解液(不図示)が収容されている。電解液は、セパレータ13、正極16、及び負極17内に含浸されている。
【0039】
図3は、図2に示された蓄電モジュールの斜視図である。図3に示されるように、蓄電モジュール4は、複数(ここでは4つ)の圧力調整弁28をさらに備えている。圧力調整弁28は、内部空間V内のガスを蓄電モジュール4の外部に放出することによって、内部空間Vの圧力を調整できる。第1封止部21のそれぞれは、辺部21a(第1辺部)と、辺部21b(第2辺部)と、一対の辺部21c(第2辺部)と、を有する。辺部21a及び辺部21bは、方向D3に延在する。各辺部21cは、方向D2に延在し、辺部21a及び辺部21bを互いに接続している。積層方向D1から見て、辺部21a及び辺部21bが第1封止部21の短辺部分に相当し、一対の辺部21cが第1封止部21の長辺部分に相当する。つまり、辺部21a及び辺部21bは、各電極の短辺に設けられ、一対の辺部21cは、各電極の長辺に設けられる。
【0040】
第2封止部22は、辺部22aと、辺部22bと、一対の辺部22cを有する。辺部22aは、辺部21aを覆う。辺部22bは、辺部21bを覆う。一対の辺部22cは、一対の辺部21cをそれぞれ覆う。積層方向D1から見て、辺部22a及び辺部22bが第2封止部22の短辺部分に相当し、一対の辺部22cが第2封止部22の長辺部分に相当する。圧力調整弁28は、辺部22aに取り付けられているが、辺部22cに取り付けられてもよい。
【0041】
図4は、図3に示された蓄電モジュールの一部を示す斜視図である。図5は、図4に示されたV-V線に沿った断面図である。図6は、図5に示された蓄電モジュールの断面図の一部を拡大した図である。図4及び図5では、圧力調整弁28が省略されている。
【0042】
図4図6に示されるように、第2封止部22は、第1樹脂部23と第2樹脂部24と第3樹脂部25とを備える。第1樹脂部23は、第1封止部21の周囲に設けられている。第1樹脂部23の外形は、積層方向D1から見て例えば矩形筒状を有する。第1樹脂部23は、積層方向D1から見て、第1封止部21と第2樹脂部24との間に配置されている。第1樹脂部23は、積層方向D1から見て第1封止部21を取り囲む。第1樹脂部23は、第1封止部21の積層方向D1に延在する側面21sに設けられている。第2樹脂部24は、第1樹脂部23の周囲に設けられている。第2樹脂部24の外形は、積層方向D1から見て例えば矩形筒状を有する。第2樹脂部24は、積層方向D1から見て第1樹脂部23を取り囲む。第2樹脂部24は、第1樹脂部23の積層方向D1に延在する側面23sに設けられている。
【0043】
第3樹脂部25は、第2樹脂部24の周囲に設けられている。第3樹脂部25の外形は、積層方向D1から見て例えば矩形筒状を有する。第3樹脂部25は、積層方向D1から見て第2樹脂部24を取り囲む。第3樹脂部25は、第2樹脂部24の積層方向D1に延在する側面24sに設けられている。第3樹脂部25は、方向D2に突出する複数の突起部25pを有する。各突起部25pは、複数(ここでは6個)の開口25hを形成する枠形状を有する。各突起部25pは、圧力調整弁28を接続するための接続用突起部として機能する。よって、突起部25pの数は、圧力調整弁28の数と同じである。第3樹脂部25のうち、辺部22aに含まれる部分が突起部25pを有する。
【0044】
図5に示されるように、第1樹脂部23、第2樹脂部24、及び第3樹脂部25は、方向D2において、第1封止部21と電極積層体11とを備えるユニット積層体30の外側に位置する。ユニット積層体30は、積層方向D1に交差する矩形状の第1面30aと、第1面30aとは反対側の矩形状の第2面30bと、積層方向D1に延在する4つの矩形状の側面30cとを有する。第1面30aは負極終端電極18の表面を含む。第2面30bは正極終端電極19の表面を含む。側面30cは、積層方向D1に延在する第1封止部21の側面21s(図6参照)を含む。側面30cは、第1面30aと第2面30bとの間を繋いでいる。
【0045】
第1樹脂部23は、各側面30c上に設けられ、積層方向D1から見てユニット積層体30を取り囲む筒形状を有する。第2樹脂部24は、第1面30aの周縁部上に設けられた庇部24bと、第1樹脂部23を取り囲む側部24cとを有する。庇部24bは、第2樹脂部24における積層方向D1の一端から電極積層体11の内側に向かって延びる。庇部24bは、第1面30aの周縁部を全周にわたって覆う枠形状を有する。側部24cは、積層方向D1から見て第1樹脂部23を取り囲む筒形状を有する。第2樹脂部24の側部24cの方向D2における長さL2(厚み)は、例えば、第1樹脂部23の方向D2における長さL1(厚み)よりも短い。第3樹脂部25は、第2面30bの周縁部上に設けられた庇部25bと、第2樹脂部24の側部24c上に位置する側部25cとを有する。庇部25bは、第2面30bの周縁部を全周にわたって覆う枠形状を有する。側部25cは、積層方向D1から見て第2樹脂部24の側部24cを取り囲む筒形状を有する。
【0046】
第1封止部21には、各内部空間Vと第1封止部21の外部とを接続するように、内周面27a(壁面)を貫通して方向D2に延びる連通孔21d(第1連通孔、連通路)が形成される(図6参照)。第2封止部22には、方向D2に延びるとともに各連通孔21dと連通された複数の連通孔22d(第2連通孔)が形成される。複数の連通孔22dのそれぞれは、第1樹脂部23に形成された連通孔23aと、第2樹脂部24に形成された連通孔24aと、第3樹脂部25に形成された連通孔25aと、によって構成される。連通孔23aは、連通孔21dと連通されている。連通孔24aは、連通孔23aと連通されている。連通孔25aは、連通孔24aと連通されている。連通孔21dの幅(積層方向D1における連通孔21dの長さ)、連通孔23aの幅(積層方向D1における連通孔23aの長さ)、連通孔24aの幅(積層方向D1における連通孔24aの長さ)、及び連通孔25aの幅(積層方向D1における連通孔25aの長さ)は例えば同じである。連通孔21dの幅は、例えば後述の第2樹脂層27の内周面27aの高さ(積層方向D1における内周面27aの長さ)と同じである。
【0047】
方向D2から見て、突起部25pは各連通孔25aを取り囲むように配置される。各連通孔25aは、突起部25pにより形成された開口25hと連通されている。開口25hの幅(積層方向D1における開口25hの長さ)は、連通孔25aの幅(積層方向D1における連通孔25aの長さ)よりも大きい。
【0048】
続いて、上述した第1封止部21の構成について更に詳細に説明する。図7は、第1封止部の構成を説明するための断面図である。図8は、第1封止部の構成を説明するための平面図である。
【0049】
図7に示されるように、積層方向D1における内層に位置する第1封止部21は、電極板15に接合される環状の第1樹脂層26と、第1樹脂層26上に設けられた環状の第2樹脂層27と、を有している。第1樹脂層26は、電極板15の上面15aに設けられる。第1樹脂層26は、内周面26aと、載置面26bと、接合面26cと、を有している。内周面26aは、正極16の端面と互いに離間して向かい合う。載置面26bにはセパレータ13の外縁部が配置されている。積層方向D1から見て、第1樹脂層26とセパレータ13の外縁部とは互いに重なっている。接合面26cは、電極板15の周縁部15cに接合される。接合面26cと周縁部15cとが接合している部分が、重なり部分Kに相当する。
【0050】
第2樹脂層27は、内周面27aと、上面27bと、下面27cと、を有している。内周面27aは、セパレータ13の端面13a(外周端面)と互いに離間して向かい合う。上面27bは、第1封止部21が接合されている電極板15と積層方向D1において向かい合う別の電極板15と接触する。下面27cは、内周面27aと反対側の面である。下面27cは、載置面26bと接触している。内周面27aは、上面27bと下面27c(載置面26b)とを接続する。
【0051】
第1樹脂層26の厚さは、正極16の厚さと同等であるが、同等以上であってもよい。第1樹脂層26の内周面26aは、第2樹脂層27の内周面27aよりも内部空間V側(電極積層体11の内側)に位置している。つまり、第2樹脂層27の内周面27aは、第1樹脂層26に載置されたセパレータ13の外縁部よりも外側に壁面を形成する。本実施形態では、内周面27aの高さ(積層方向D1の長さ)は、セパレータ13の厚さと負極17の厚さとの和と同等であるが、同等以上であってもよい。内周面27aは、セパレータ13の外縁から離間している。辺部21b及び一対の辺部21cにおいては、内周面27aはセパレータ13の外縁と接触していてもよい。
【0052】
載置面26bと、内周面27aと、上面27bと、によって、環状の段差部29が構成されている。段差部29は、接合面26cと反対側に設けられている。
【0053】
本実施形態では、第1封止部21を構成するフィルムの外縁部分を内側に折り返すことによって、第1樹脂層26及び第2樹脂層27が形成されている。第1樹脂層26及び第2樹脂層27は、2枚のフィルムを重ね合わせることによって形成されてもよい。
【0054】
図8に示されるように、第1封止部21の辺部21aには、内周面27aを貫通して方向D2に延びるとともに積層方向D1に窪む凹部27dが設けられている。凹部27dは、第2樹脂層27が欠落した部分である。つまり、凹部27dが形成されている部分では、第1樹脂層26上には第2樹脂層27が設けられていない。辺部21b及び一対の辺部21cには、凹部27dは設けられていない。電極積層体11においては、互いに隣り合う2つの第1封止部21のうちの上側に位置する第1封止部21の第1樹脂層26によって、下側に位置する第1封止部21の凹部27dが覆われることで、上述の連通孔21dが形成される。つまり、電極積層体11においては、第2樹脂層27に連通孔21dが形成されている。また、電極積層体11においては、辺部21aに連通孔21dが形成されており、辺部21b及び一対の辺部21cには連通孔21dは形成されていない。
【0055】
なお、凹部27dは、積層方向D1において隣り合う別の第1封止部21の凹部27dと、積層方向D1から見て互いに重ならず、方向D3にずれた位置に設けられてもよい。複数の凹部27dが階段状にずれるように、各第1封止部21の辺部21aに凹部27dが設けられてもよい。
【0056】
辺部21aにおける第1樹脂層26の内周面26a(内周縁)から第2樹脂層27の内周面27aまでの長さ(離間距離)La1は、辺部21bにおける第1樹脂層26の内周面26a(内周縁)から第2樹脂層27の内周面27aまでの長さ(離間距離)Lb1、一方の辺部21cにおける第1樹脂層26の内周面26a(内周縁)から第2樹脂層27の内周面27aまでの長さ(離間距離)Lc11、及び他方の辺部21cにおける第1樹脂層26の内周面26a(内周縁)から第2樹脂層27の内周面27aまでの長さ(離間距離)Lc12よりも長い。長さLb1、長さLc11、及び長さLc12は、互いに等しい。
【0057】
辺部21aにおけるセパレータ13の端面13aから第2樹脂層27の内周面27aまでの長さ(離間距離)La2は、辺部21bにおけるセパレータ13の端面13aから第2樹脂層27の内周面27aまでの長さ(離間距離)Lb2、一方の辺部21cにおけるセパレータ13の端面13aから第2樹脂層27の内周面27aまでの長さ(離間距離)Lc21、及び他方の辺部21cにおけるセパレータ13の端面13aから第2樹脂層27の内周面27aまでの長さ(離間距離)Lc22よりも長い。長さLb2、長さLc21、及び長さLc22は、互いに等しい。長さLa2は、第2樹脂部24の厚みよりも長い。
【0058】
次に、図9図15をさらに参照して、蓄電モジュール4の製造方法を説明する。図9は、図1に示された蓄電モジュールの製造方法の一例を示す工程図である。図10は、第1樹脂部を形成する工程における連通孔形成部材の配置を説明するための平面図である。図11は、第1樹脂部を形成するために用いられる下型及び入れ子型を説明するための平面図である。図12は、第1樹脂部を形成する工程におけるユニット積層体及び型の断面図である。図13は、第2樹脂部を形成する工程における連通孔形成部材の配置を説明するための平面図である。図14は、第2樹脂部を形成する工程におけるユニット積層体、第1樹脂部、及び型の断面図である。図15は、第3樹脂部を形成する工程におけるユニット積層体、第1樹脂部、第2樹脂部、及び型の断面図である。図9に示されるように、蓄電モジュール4の製造方法は、工程S1~S6を含む。
【0059】
まず、複数の電極を準備する工程S1が行われる。工程S1では、負極終端電極18、正極終端電極19、及び複数のバイポーラ電極14を含む複数の電極が準備される。
【0060】
続いて、複数の電極(負極終端電極18、正極終端電極19、及び複数のバイポーラ電極14)のそれぞれの電極板15の周縁部15cに第1封止部21を形成する工程S2が行われる。工程S2では、各電極板15の上面15aの周縁部15cに枠状(環状)の第1封止部21が形成される。正極終端電極19については、電極板15の下面15bの周縁部15cにも第1封止部21が形成される。例えば、射出成形等によって予め形成された第1封止部21が溶着により周縁部15cに取り付けられる。工程S2では、辺部21aに凹部27dが予め形成された第1封止部21が用いられる。
【0061】
続いて、ユニット積層体30を形成する工程S3が行われる。工程S3では、まず、各電極にセパレータ13が取り付けられる。本実施形態では、複数のバイポーラ電極14のそれぞれと、正極終端電極19と、にセパレータ13が取り付けられる。図7及び図8に示されるように、第1封止部21の第1樹脂層26の載置面26bに、セパレータ13の外縁部が配置される。その後、セパレータ13の外縁部に沿って並ぶ複数箇所において、セパレータ13の外縁部が溶着等により第1樹脂層26に固定されてもよい。
【0062】
そして、負極終端電極18と正極終端電極19との間に複数のバイポーラ電極14が位置するように、セパレータ13を介して複数の電極を積層方向D1に積層することで、ユニット積層体30が形成される。具体的には、第1封止部21及びセパレータ13が設けられた正極終端電極19が積層治具(不図示)上に載置される。その後、正極終端電極19に設けられた第1封止部21上に連通孔形成部材43が配置され、連通孔形成部材43が配置された状態で、第1封止部21及びセパレータ13が設けられたバイポーラ電極14が正極終端電極19上に積層される。連通孔形成部材43は、矩形板状の部材である。連通孔形成部材43は、例えば、ステンレス鋼材等の金属によって構成されている。連通孔形成部材43は、凹部27dの幅(方向D3における長さ)と同程度かわずかに小さい幅(方向D3における長さ)を有する。連通孔形成部材43の方向D2における長さは、凹部27dの方向D2における長さと第2樹脂部24の長さL2との和よりも長い。
【0063】
このとき、図10に示されるように、連通孔形成部材43が第1封止部21の凹部27dに嵌め合わされるとともに、連通孔形成部材43の先端43aが第2樹脂層27の内周面27aとセパレータ13の外縁との間に位置するように、第1封止部21上に連通孔形成部材43が配置される。言い換えると、連通孔形成部材43の先端43aは、セパレータ13の外縁から離間しており、セパレータ13とは接触していない。
【0064】
同様に、積層治具に積層されている最上段のバイポーラ電極14に形成された第1封止部21の凹部27dに連通孔形成部材43が嵌め合わせられ、当該バイポーラ電極14の上に、第1封止部21及びセパレータ13が設けられたバイポーラ電極14が積層される。この動作が所定回数繰り返される。そして、積層治具に積層されている最上段のバイポーラ電極14に形成された第1封止部21の凹部27dに連通孔形成部材43が嵌め合わせられ、当該バイポーラ電極14の上に、第1封止部21が設けられた負極終端電極18が積層される。これにより、ユニット積層体30が形成される。
【0065】
続いて、ユニット積層体30の第1封止部21同士を溶着する工程S4が行われる。工程S4では、例えば、連通孔形成部材43を避けて、第1封止部21の端面に熱板を押し付けることによって、第1封止部21を溶融させ、これにより第1封止部21同士が溶着される。その結果、積層方向D1から見て、複数の第1封止部21の端面の位置が、互いに一致するように揃えられる。
【0066】
第1封止部21同士が溶着することで、連通孔形成部材43の形状に対応する形状を有するとともに、内部空間Vと連通された連通孔21dが形成される。連通孔形成部材43の側面と凹部27dの内面との間に隙間が存在する場合も、当該隙間が溶融樹脂によって塞がれる。上述のように、ユニット積層体30における積層位置によって、凹部27dの位置が異なるので、ユニット積層体30における積層位置によって、異なる位置(方向D3における位置)に連通孔21dが形成される。
【0067】
続いて、ユニット積層体30(複数の第1封止部21)の周囲に射出成形によって第2封止部22を形成する工程S5が行われる。工程S5では、連通孔形成部材43がユニット積層体30の凹部27dに嵌め合わされた状態を保ちながら、射出成形が行われる。工程S5は、工程S51~S53を含む。まず、第1封止部21の周囲に射出成形によって第1樹脂部23を形成する工程S51が行われる。工程S51では、連通孔形成部材43が各連通孔21dに嵌め合わされた状態で、射出成形が行われる。
【0068】
図11及び図12に示されるように、工程S51では、下型M1、上型M2、及び入れ子型40が用いられる。下型M1及び上型M2は、第1樹脂部23を形成するための金型である。下型M1及び上型M2は、例えば金属製の金型である。下型M1及び上型M2は、積層方向D1において互いに向かい合う。入れ子型40は、第1樹脂部23を形成するために用いられる。図11には、下型M1に入れ子型40が取り付けられた状態が示されている。入れ子型40は、下型M1に取り付けられる。
【0069】
入れ子型40は、複数の連通孔形成部材43と、複数の把持部44と、本体部45と、押さえ部46と、を備えている。複数の把持部44のそれぞれは、連通孔形成部材43を把持する部材である。把持部44は、連通孔形成部材43ごとに設けられ、1つの連通孔形成部材43を把持する。本体部45は、複数の把持部44を下型M1に取り付けるための部材である。本体部45は方向D3に延び、方向D3と交差する断面はL字形状を有している。本実施形態では、積層方向D1に2個の把持部44が積み重ねられ、方向D3に12個の把持部44が配列されている。これらの把持部44は、本体部45に載置されており、本体部45によって把持部44の位置が決められる。押さえ部46は、本体部45に載置された複数の把持部44を本体部45に固定するための部材である。押さえ部46は、複数の把持部44上を覆うように本体部45に取り付けられる。複数の把持部44は、本体部45と押さえ部46とによって挟持されることで、本体部45に固定される。
【0070】
工程S51では、まず、ユニット積層体30に挿入された(嵌め合わされた)複数の連通孔形成部材43が複数の把持部44によってそれぞれ把持される。そして、本体部45が下型M1内に配置された後、複数の把持部44が本体部45に載置されるように、ユニット積層体30が下型M1内に配置される。その後、下型M1に上型M2が組み合わせられる。その結果、下型M1、上型M2、入れ子型40、及びユニット積層体30によって囲まれた空間CS1が形成される。空間CS1は、第1樹脂部23の形成材料である溶融状態の樹脂材料が充填されるキャビティ空間であり、第1樹脂部23の形状に対応する形状を有している。なお、図11では、連通孔形成部材43の図示が省略されている。本実施形態では、下型M1が固定型であり、上型M2が可動型であるが、上型M2が固定型で、下型M1が可動型であってもよい。
【0071】
そして、溶融状態の樹脂材料が、上型M2に設けられたゲート(不図示)から、所定の射出圧で空間CS1に注入される。樹脂材料が冷却されて固化することによって、連通孔23aが設けられた第1樹脂部23が形成される。そして、上型M2が取り外され、第1樹脂部23が形成されたユニット積層体30が入れ子型40とともに下型M1から取り出される。
【0072】
続いて、第1樹脂部23の周囲に射出成形によって第2樹脂部24を形成する工程S52が行われる。図14に示されるように、工程S52では、下型M3、上型M4、及び入れ子型40が用いられる。下型M3及び上型M4は、第2樹脂部24を形成するための金型である。下型M3及び上型M4は、例えば金属製の金型である。下型M3及び上型M4は、積層方向D1において互いに向かい合う。ここでは、入れ子型40は、第2樹脂部24を形成するために用いられる。入れ子型40は、下型M3に取り付けられる。
【0073】
図13に示されるように、工程S52では、まず、連通孔形成部材43が連通孔21d及び連通孔23aに挿入された(嵌め合わされた)状態を保ちながら、連通孔形成部材43が第2樹脂部24の長さL2分だけユニット積層体30の外側に向かって移動される。移動後においても、連通孔形成部材43の先端43aは、第2樹脂層27の内周面27aとセパレータ13の外縁との間に位置している。そして、第1樹脂部23が形成されたユニット積層体30が入れ子型40とともに、下型M3内に配置される。その後、下型M3に上型M4が組み合わせられる。その結果、下型M3、上型M4、入れ子型40、及び第1樹脂部23が形成されたユニット積層体30によって囲まれた空間CS2が形成される。空間CS2は、第2樹脂部24の形成材料である溶融状態の樹脂材料が充填されるキャビティ空間であり、第2樹脂部24の形状に対応する形状を有している。なお、本実施形態では、下型M3が固定型であり、上型M4が可動型であるが、上型M4が固定型で、下型M3が可動型であってもよい。
【0074】
そして、溶融状態の樹脂材料が、上型M4に設けられたゲート(不図示)から、所定の射出圧で空間CS2に注入される。樹脂材料が冷却されて固化することによって、連通孔24aが設けられた第2樹脂部24が形成される。そして、上型M4が取り外され、入れ子型40が方向D2に移動されることによって、連通孔形成部材43が連通孔24aから引き抜かれる。そして、第1樹脂部23及び第2樹脂部24が形成されたユニット積層体30が下型M3から取り出される。
【0075】
続いて、第2樹脂部24の周囲に射出成形によって第3樹脂部25を形成する工程S53が行われる。図15に示されるように、工程S53では、下型M5、上型M6、及び入れ子型50が用いられる。下型M5及び上型M6は、第3樹脂部25を形成するための金型である。下型M5及び上型M6は、例えば金属製の金型である。下型M5及び上型M6は、積層方向D1において互いに向かい合う。下型M5は、下型M3と同じであってもよい。上型M6は、上型M4と同じであってもよい。
【0076】
入れ子型50は、第3樹脂部25を形成するために用いられ、第3樹脂部25の形状に対応する形状を有している。入れ子型50は、下型M5に取り付けられる。入れ子型50は、複数の連通孔形成部材53と、基部54と、を備えている。基部54は、入れ子型50が下型M5及び上型M6に取り付けられた状態で、下型M5及び上型M6に接触配置される。基部54は、下型M5及び上型M6によって画成される空間に臨む矩形状の側面50aを有している。側面50aには、突起部25pを形成するための凹部50bが形成されている。基部54は、例えば、下型M5及び上型M6と同じ金属材料により形成されている。
【0077】
複数の連通孔形成部材53は、側面50aに突設されている。複数の連通孔形成部材53は、方向D2に沿って、側面50aから下型M5及び上型M6によって画成される空間に突出する。複数の連通孔形成部材53のそれぞれは、連通孔24a、連通孔23a、及び連通孔21dに挿入され、第3樹脂部25に連通孔25aを形成するために用いられる。連通孔形成部材53は、例えば金属プレートである。連通孔形成部材53は、例えば、基部54よりも高強度の金属材料により形成されている。連通孔形成部材53の形状は、連通孔24a、連通孔23a、及び連通孔21dの形状に対応している。
【0078】
工程S53では、まず、第1樹脂部23及び第2樹脂部24が形成されたユニット積層体30が下型M5に配置される。そして、入れ子型50の側面50aが第2樹脂部24の側面24sと向かい合うとともに、連通孔形成部材53が対応する連通孔24aと向かい合うように、入れ子型50が配置される。この状態で、連通孔形成部材53が突出する方向、すなわち方向D2に沿って、入れ子型50が第2樹脂部24の側面24sに向かって移動され、これにより、連通孔形成部材53が対応する連通孔24aに挿入される。このとき、連通孔形成部材53の先端53aは、第2樹脂層27の内周面27aとセパレータ13の外縁との間に位置している。言い換えると、連通孔形成部材53の先端53aは、セパレータ13の外縁から離間しており、セパレータ13とは接触していない。
【0079】
その後、下型M5に上型M6が組み合わせられる。その結果、下型M5、上型M6、入れ子型50、並びに、第1樹脂部23及び第2樹脂部24が形成されたユニット積層体30によって囲まれた空間CS3が形成される。空間CS3は、第3樹脂部25の形成材料である溶融状態の樹脂材料が充填されるキャビティ空間であり、第3樹脂部25の形状に対応する形状を有している。なお、本実施形態では、下型M5が固定型であり、上型M6が可動型であるが、上型M6が固定型で、下型M5が可動型であってもよい。
【0080】
そして、溶融状態の樹脂材料が、上型M6に設けられたゲートから、所定の射出圧で空間CS3に注入される。樹脂材料が冷却されて固化することによって、連通孔25aが設けられた第3樹脂部25が形成される。そして、上型M6が取り外され、入れ子型50が方向D2に移動されることによって取り外される。そして、封止体12が形成された電極積層体11が下型M5から取り出される。
【0081】
続いて、連通孔22d及び連通孔21dを介して電解液を内部空間Vに注入する工程S6が行われる。その後、圧力調整弁28を突起部25pに接続することによって、連通孔25aが封止される。このようにして、蓄電モジュール4が製造される。
【0082】
以上説明したように、蓄電モジュール4では、連通孔21dが設けられた辺部21aにおける第1樹脂層26の内周面26a(内周縁)から第2樹脂層27の内周面27aまでの長さLa1は、辺部21b及び一対の辺部21cにおける第1樹脂層26の内周面26a(内周縁)から第2樹脂層27の内周面27aまでの長さLb1,Lc11,Lc12よりも長い。この構成においては、積層された第1封止部21の周囲に射出成形により第2封止部22(第1樹脂部23)を形成する場合に、連通孔形成部材43の先端43aが第2樹脂層27の内周面27aとセパレータ13の外縁との間に位置するように、連通孔形成部材43を連通孔21dに配置しやすくなる。つまり、セパレータ13の取り付け位置のずれ、及び連通孔形成部材43の配置ずれ等の製造上の公差を吸収することができる。これにより、連通孔形成部材43はセパレータ13に接触しないように連通孔21dに配置され得るので、第2封止部22(第1樹脂部23)を形成する際に、連通孔21dが埋没することを防ぎつつ、セパレータ13の破損等を抑制することができる。一方、辺部21b及び一対の辺部21cにおいては、辺部21aよりも、第1樹脂層26の内周面26a(内周縁)から第2樹脂層27の内周面27aまでの長さを短くすることで、蓄電モジュール4が大型化することを回避することができる。その結果、蓄電モジュール4を大型化することなく、電解液の注液性を確保しつつ、セパレータ13の絶縁性能を維持することが可能となる。
【0083】
辺部21aにおけるセパレータ13の端面13aから第2樹脂層27の内周面27aまでの長さLa2は、辺部21b及び一対の辺部21cにおけるセパレータ13の端面13aから第2樹脂層27の内周面27aまでの長さLb2,Lb21,Lb22よりも長い。この構成においては、積層された第1封止部21の周囲に射出成形により第2封止部22を形成する場合に、連通孔形成部材43の先端43aが第2樹脂層27の内周面27aとセパレータ13の端面13a(外縁)との間に位置するように、連通孔形成部材43を連通孔21dに配置しやすくなる。これにより、連通孔形成部材43はセパレータ13に接触しないように連通孔21dに配置され得るので、第2封止部22(第1樹脂部23)を形成する際に、連通孔21dが埋没することを防ぎつつ、セパレータ13の破損等を抑制することができる。
【0084】
長さLa2は、第2樹脂部24(側部24c)の方向D2における長さL2(厚み)よりも長い。このため、第1樹脂部23の形成に用いられた連通孔形成部材43が連通孔21dに嵌め合わされた状態を保ちながら、連通孔形成部材43を長さL2分だけユニット積層体30の外側に向かって移動させることで、連通孔形成部材43の先端43aが第2樹脂層27の内周面27aとセパレータ13の外縁との間に位置している状態で第2樹脂部24を形成するための射出成形を行うことができる。したがって、第2樹脂部24の形成においても、電解液の注液性を確保しつつ、セパレータ13の絶縁性能を維持することが可能となる。さらに、第1樹脂部23及び第2樹脂部24を形成する際に、連通孔形成部材43の抜き差しを行う必要がないので、蓄電モジュール4の生産性を向上させることが可能となる。
【0085】
第1封止部21は、電極板15に接合される環状の第1樹脂層26と、第1樹脂層26の上に設けられた環状の第2樹脂層27と、を備えている。連通孔21dは、第2樹脂層27に設けられる。このように、第1封止部21は、第1樹脂層26と第2樹脂層27との2層構成である。
【0086】
辺部21aは、複数の電極を積層方向D1から見た場合の一対の短辺のうちの一方の短辺に設けられている。このため、第1封止部21の内周縁から第2樹脂層27の内周面27aまでの距離を長くする辺部21aが、短辺に設けられるので、蓄電モジュール4の大型化をさらに抑制することが可能となる。
【0087】
蓄電モジュール4の製造方法では、連通孔形成部材43が第2樹脂層27に設けられた凹部27dに嵌め合わされるとともに、連通孔形成部材43の先端43aが第2樹脂層27の内周面27aとセパレータ13の外縁との間に位置するように、第1封止部21上に連通孔形成部材43を配置しながら、複数の電極(負極終端電極18、正極終端電極19、及び複数のバイポーラ電極14)を積層することで、ユニット積層体30が形成される。このため、第2封止部22(第1樹脂部23)を形成する際に、凹部27dによって構成される連通孔21dが埋没することを防ぎつつ、セパレータ13の破損等を抑制することができる。その結果、電解液の注液性を確保しつつ、セパレータ13の絶縁性能を維持することが可能となる。
【0088】
また、上述のように、長さLa1は、長さLb1,Lc11,Lc12よりも長い。このため、第1樹脂層26の内周面26a(内周縁)から第2樹脂層27の内周面27aまでの長さを第1封止部21のすべての辺部(辺部21a,21b,21c)において長くする必要が無いので、蓄電モジュール4の大型化を回避することができる。
【0089】
工程S52では、連通孔形成部材43が連通孔21dに嵌め合わされた状態を保ちながら、連通孔形成部材43をユニット積層体30の外側に向かって移動させ、連通孔形成部材43が連通孔21dに嵌め合わされた状態で射出成形が行われる。このため、第1樹脂部23の形成に用いられた連通孔形成部材43を引き抜くことなく、第2樹脂部24が形成される。このように、第1樹脂部23及び第2樹脂部24を形成する際に、連通孔形成部材43の抜き差しを行う必要がないので、蓄電モジュール4の生産性を向上させることが可能となる。
【0090】
工程S52では、連通孔形成部材43の先端43aが第2樹脂層27の内周面27aとセパレータ13の外縁との間に位置している状態で射出成形が行われる。このため、工程S52においても、連通孔形成部材43がセパレータ13に接触しないように連通孔21d,23aに嵌め合わされた状態で、射出成形が行われる。その結果、電解液の注液性を確保しつつ、セパレータ13の絶縁性能を維持することが可能となる。
【0091】
工程S53でも同様に、連通孔形成部材53の先端53aが第2樹脂層27の内周面27aとセパレータ13の外縁との間に位置している状態で射出成形が行われる。このため、工程S53においても、連通孔形成部材53がセパレータ13に接触しないように連通孔21d,23a,24aに嵌め合わされた状態で、射出成形が行われる。その結果、電解液の注液性を確保しつつ、セパレータ13の絶縁性能を維持することが可能となる。
【0092】
以上、本開示の一実施形態について詳細に説明されたが、本開示は上記実施形態に限定されない。
【0093】
例えば、長さLb1、長さLc11、及び長さLc12の少なくともいずれかは、長さLa1と同程度であってもよい。長さLb2、長さLc21、及び長さLc22の少なくともいずれかは、長さLa2と同程度であってもよい。これらの場合も、連通孔形成部材43の先端43aが第2樹脂層27の内周面27aとセパレータ13の外縁との間に位置するように、連通孔形成部材43を凹部27d(連通孔21d)に配置することで、連通孔21dが埋没することを防ぎつつ、セパレータ13の破損等を抑制することができる。その結果、電解液の注液性を確保しつつ、セパレータ13の絶縁性能を維持することが可能となる。
【0094】
第2樹脂部24の形成において、第1樹脂部23の形成に用いられる連通孔形成部材43と異なる別の連通孔形成部材が用いられてもよい。この場合、長さLa2は、長さL2よりも小さくてもよい。この構成においても、別の連通孔形成部材の先端が第2樹脂層27の内周面27aとセパレータ13の外縁との間に位置するように、別の連通孔形成部材を連通孔23a及び連通孔21dに挿入することで、連通孔21d,23aが埋没することを防ぎつつ、セパレータ13の破損等を抑制することができる。
【0095】
上記実施形態では、第1封止部21は、第1樹脂層26と第2樹脂層27との2層構造を有しているが、第1封止部21は、一体成型によって形成されてもよい。この場合も、第1封止部21は、段差部29を有する。辺部21a及び辺部21bは、各電極の長辺に設けられてもよく、一対の辺部21cは、各電極の短辺に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0096】
4…蓄電モジュール、11…電極積層体、12…封止体、13…セパレータ、14…バイポーラ電極、15…電極板、15a…上面(第1面)、15b…下面(第2面)、15c…周縁部、16…正極、17…負極、18…負極終端電極、19…正極終端電極、21…第1封止部、21a…辺部(第1辺部)、21b…辺部(第2辺部)、21c…辺部(第2辺部)、21d…連通孔(第1連通孔、連通路)、22…第2封止部、22d…連通孔(第2連通孔)、23…第1樹脂部、24…第2樹脂部、26…第1樹脂層、26a…内周面、26b…載置面、26c…接合面、27…第2樹脂層、27a…内周面(壁面)、27b…上面、27d…凹部、29…段差部、30…ユニット積層体、43…連通孔形成部材、43a…先端、D1…積層方向(第1方向)、D2…方向(第2方向)、L2…長さ、La1…長さ、Lb1…長さ、Lc11…長さ、Lc12…長さ、La2…長さ、Lb2…長さ、Lc21…長さ、Lc22…長さ、V…内部空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15