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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】防火扉
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/16 20060101AFI20230208BHJP
   A62C 2/06 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
E06B5/16
A62C2/06 502
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020155665
(22)【出願日】2020-09-16
(65)【公開番号】P2022049447
(43)【公開日】2022-03-29
【審査請求日】2022-11-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】山崎 貴文
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-185423(JP,A)
【文献】特開平08-028135(JP,A)
【文献】特開2010-043433(JP,A)
【文献】特開2018-204229(JP,A)
【文献】特開2016-214621(JP,A)
【文献】特開平07-176587(JP,A)
【文献】特開2019-059596(JP,A)
【文献】特開2019-182642(JP,A)
【文献】中国実用新案第210217559(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第109908511(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/06
E06B 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する壁体の壁面に取り付けられる防火扉であって、
前記壁体に固定された外枠と、前記外枠に案内されて前記壁面に沿うスライド方向に移動することにより前記開口部を開閉する扉体と、前記外枠に取り付けられた中桟と、を備え、
前記開口部を閉じた状態の前記扉体が配置される領域を第一領域とし、前記開口部を開いた状態の前記扉体が配置される領域を第二領域とし、前記壁体の壁面に直交する方向を壁直交方向とし、前記壁直交方向に沿う壁直交方向視で前記スライド方向に直交する方向を幅方向とし、前記スライド方向における前記第二領域から前記第一領域へ向かう側をスライド方向第一側とし、前記スライド方向における前記第一領域から前記第二領域へ向かう側をスライド方向第二側として、
前記外枠は、前記第一領域及び前記第二領域に対して前記幅方向の一方側である幅方向第一側において前記スライド方向に沿って配置された第一枠部と、前記第一領域及び前記第二領域に対して前記幅方向の他方側である幅方向第二側において前記スライド方向に沿って配置された第二枠部と、を備え、
前記第一領域における前記壁直交方向視で前記開口部よりも前記スライド方向第二側の領域を対象領域として、前記中桟は、前記壁直交方向視で前記対象領域と重複すると共に、前記対象領域に対して前記壁体の側とは反対側において前記第一枠部と前記第二枠部とに亘って前記幅方向に延在するように配置され、
前記中桟と前記第一枠部とが互いに固定され、前記中桟と前記第二枠部とが係合機構を介して係合され、
前記係合機構は、前記中桟の前記第二枠部に対する前記幅方向の相対移動を許容すると共に前記壁直交方向及び前記スライド方向の相対移動を規制するように構成されている、防火扉。
【請求項2】
前記中桟における前記壁直交方向視で前記第一枠部と重複する部分を第一部分とし、前記中桟における前記壁直交方向視で前記第二枠部と重複する部分を第二部分として、前記第一部分が前記第一枠部に固定され、前記第二部分が前記係合機構を介して前記第二枠部に係合されている、請求項1に記載の防火扉。
【請求項3】
前記第一領域と前記第二領域とが一部重複するように前記扉体の前記スライド方向の移動範囲が設定されており、
前記第一領域と前記第二領域とが重複する領域を重複領域として、前記中桟は、前記壁直交方向視で前記重複領域とも重複するように配置されている、請求項1又は2に記載の防火扉。
【請求項4】
前記係合機構は、前記中桟に対して前記スライド方向の両側及び前記壁直交方向の両側を囲む包囲部を備え、
前記包囲部は、前記幅方向に貫通して前記中桟が挿通される挿通孔を形成している、請求項1から3のいずれか一項に記載の防火扉。
【請求項5】
前記第一枠部における前記幅方向に前記扉体と対向する面を第一対向面とし、前記第二枠部における前記幅方向に前記扉体と対向する面を第二対向面として、
前記第一対向面と前記第二対向面との前記幅方向の間隔は、常温での前記扉体の前記幅方向の寸法に、火災時の加熱による前記扉体の前記幅方向の膨張量を加えた寸法よりも大きい、請求項1から4のいずれか一項に記載の防火扉。
【請求項6】
前記壁直交方向視で前記対象領域と重複すると共に、前記対象領域に対して前記壁体の側において前記第一枠部と前記第二枠部とに亘って前記幅方向に延在するように配置された裏中桟を更に備え、
前記第一枠部及び前記第二枠部のいずれか一方を対象枠部とし、他方を非対象枠部として、
前記裏中桟と前記対象枠部とが互いに固定され、前記中桟と前記非対象枠部とが裏側係合機構を介して係合され、
前記裏側係合機構は、前記裏中桟の前記非対象枠部に対する前記幅方向の相対移動を許容すると共に前記壁直交方向及び前記スライド方向の相対移動を規制するように構成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の防火扉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開口部を有する壁体の壁面に取り付けられる防火扉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の防火扉が、特開2018-204229号公報(特許文献1)に開示されている。以下、背景技術の説明において括弧内に示された符号は、特許文献1のものである。
【0003】
特許文献1の防火扉は、開口枠部(7)と扉体(8)と案内機構(9)とを備えており、案内機構(9)は、扉体(8)をスライド方向Yに開放位置から閉塞位置まで移動自在に案内する。ここで、扉体(8)は、壁体(2)に対向する第一対向面を有し、開口枠部(7)は、閉塞位置にある扉体(8)の第一対向面に対向する第二対向面を有しており、案内機構(9)は、扉体(8)が開放位置から閉塞位置へ移動するに伴って、扉体(8)の第一対向面を第二対向面に接近させる方向に扉体(8)を移動させる。
【0004】
この防火扉では、開放位置の扉体を、スライド方向に沿って閉塞位置まで移動させると、扉体の第一対向面が開口枠部の第二対向面に接近した状態となる。このため扉体と開口枠部との間の隙間を無くす又は小さくできるため、火災時に閉塞位置にある扉体による開口部の閉塞性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-204229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このようなスライド式の防火扉では、火災が発生すると、火炎の熱により扉体(8)や開口枠部(7)が膨張し、隙間が生じる場合がある。例えば、開口枠部7の中桟(第二縦枠(15))が熱により膨張することで扉体(8)との隙間が大きくなった場合には、扉体(8)が壁体(2)又は開口枠部(7)から離れないように押さえる機能が低下する。そうすると、扉体(8)と壁体(2)又は開口枠部(7)との隙間が大きくなるなどして、防火性能が低下する可能性があった。
【0007】
そこで、スライド式の防火扉において、中桟の膨張による扉体との隙間の拡大を抑制し、中桟による扉体の押さえ機能の低下を抑制することができる技術の実現が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記に鑑みた、防火扉の特徴構成は、開口部を有する壁体の壁面に取り付けられる防火扉であって、前記壁体に固定された外枠と、前記外枠に案内されて前記壁面に沿うスライド方向に移動することにより前記開口部を開閉する扉体と、前記外枠に取り付けられた中桟と、を備え、
前記開口部を閉じた状態の前記扉体が配置される領域を第一領域とし、前記開口部を開いた状態の前記扉体が配置される領域を第二領域とし、前記壁体の壁面に直交する方向を壁直交方向とし、前記壁直交方向に沿う壁直交方向視で前記スライド方向に直交する方向を幅方向とし、前記スライド方向における前記第二領域から前記第一領域へ向かう側をスライド方向第一側とし、前記スライド方向における前記第一領域から前記第二領域へ向かう側をスライド方向第二側として、前記外枠は、前記第一領域及び前記第二領域に対して前記幅方向の一方側である幅方向第一側において前記スライド方向に沿って配置された第一枠部と、前記第一領域及び前記第二領域に対して前記幅方向の他方側である幅方向第二側において前記スライド方向に沿って配置された第二枠部と、を備え、前記第一領域における前記壁直交方向視で前記開口部よりも前記スライド方向第二側の領域を対象領域として、前記中桟は、前記壁直交方向視で前記対象領域と重複すると共に、前記対象領域に対して前記壁体の側とは反対側において前記第一枠部と前記第二枠部とに亘って前記幅方向に延在するように配置され、前記中桟と前記第一枠部とが互いに固定され、前記中桟と前記第二枠部とが係合機構を介して係合され、前記係合機構は、前記中桟の前記第二枠部に対する前記幅方向の相対移動を許容すると共に前記壁直交方向及び前記スライド方向の相対移動を規制するように構成されている点にある。
【0009】
この構成によれば、中桟によって扉体の対象領域を壁体とは反対側から押さえることができるため、扉体が壁体から離れる側に膨張して、扉体と壁体との隙間が大きくなることを抑制することができる。また、中桟自体にも熱による膨張が生じるが、中桟と第一枠部とが互いに固定されている一方、係合機構によって中桟の第二枠部に対する幅方向の相対移動が許容される構成のため、中桟が火災時の熱により膨張した場合であっても、当該膨張を幅方向に逃がすことができ、中桟が扉体から離れる側に湾曲して扉体との隙間が拡大しないようにすることができる。従って、中桟が膨張することによる扉体の押さえ機能の低下を抑制することができる。
このように、本構成によれば、スライド式の防火扉において、中桟の膨張による扉体との隙間の拡大を抑制し、中桟による扉体の押さえ機能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】扉体が第二領域に位置する状態での防火扉の正面図
図2】扉体が第一領域に位置する状態での防火扉の正面図
図3】扉体及び外枠のスライド方向に直交する断面図
図4】防火扉に配置される各領域の位置関係を示す概念図
図5】中桟及び外枠の正面図
図6】中桟及び外枠の幅方向に直交する断面図(図5におけるVI-VI断面図)
図7】中桟、裏中桟、及び外枠のスライド方向に直交する断面図
図8】裏中桟と外枠の背面図
図9】裏中桟と外枠の幅方向に直交する断面図(図8におけるIX-IX断面図)
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.実施形態
スライド式の防火扉の実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態では、防火扉1は物品搬送設備に用いられている。図1に示すように、この物品搬送設備は、開口部3を有する壁体2と、壁体2に設けられて開口部3を開閉するスライド式の防火扉1と、天井搬送車(図示せず)を支持して天井搬送車を走行経路に沿って案内する走行レール9と、を備えている。
【0012】
走行レール9は、開口部3を貫通する状態で設置されており、壁体2に対して壁直交方向第一側Z1の領域と壁体2に対して壁直交方向第二側Z2の領域とに亘って設置されている。天井搬送車は、開口部3を壁直交方向Zに通過するように走行レール9に沿って走行して、物品を搬送する。なお、壁体2の壁面に直交する方向を壁直交方向Zとし、壁直交方向Zの一方側を壁直交方向第一側Z1、その反対側を壁直交方向第二側Z2とする。図1においては、紙面手前側(防火扉1の正面側)が壁直交方向第一側Z1であり、紙面奥側(防火扉1の背面側)が壁直交方向第二側Z2である。
【0013】
防火扉1は、壁体2の壁直交方向第一側Z1を向く壁面に設置されている。防火扉1は、壁体2に固定された外枠10と、外枠10に案内されて壁面に沿うスライド方向Yに移動することにより開口部3を開閉する扉体4と、外枠10に取り付けられた中桟20とを備えている。また、本実施形態では、防火扉1は、外枠10に取り付けられた裏中桟40も備えている。
【0014】
以下の説明では、図4に示すように、開口部3を閉じた状態の扉体4が配置される領域を第一領域5とし、開口部3を開いた状態の扉体4が配置される領域を第二領域6とする。そして壁直交方向Zに沿う壁直交方向Z視でスライド方向Yに直交する方向を幅方向Xとし、スライド方向Yにおける第二領域6から第一領域5へ向う側をスライド方向第一側Y1とし、スライド方向Yにおける第一領域5から第二領域6へ向かう側をスライド方向第二側Y2とする。本実施形態では、スライド方向Yが上下方向に沿うように防火扉1が設置されている。
【0015】
1-1.扉体
図1及び図2に示すように、扉体4はスライド方向Y及び幅方向Xに沿う姿勢で設置されている。本実施形態では、扉体4は板状に形成されている。より詳しくは、扉体4は壁直交方向Z視で矩形状であり、壁直交方向Zの厚さが一定の板状に形成されている。そして、扉体4は、外枠10によりスライド方向Yに移動自在に支持されている。また、扉体4はスライド方向Yに沿って移動することで、開口部3を開放した状態の扉体4の配置領域である第二領域6と、開口部3を閉塞した状態の扉体4の配置領域である第一領域5と、に亘って配置領域が変化する。そして、図2に示すように、扉体4が第一領域5に配置されている状態では、壁直交方向Z視で開口部3の全域を覆うように扉体4が配置される。一方、本例では、図1に示すように、扉体4が第二領域6に配置されている状態では、壁直交方向Z視で開口部3の全域と重複しないように扉体4が配置される。
【0016】
本実施形態では、図4に示すように、第一領域5と第二領域6とが一部重複するように、扉体4のスライド方向の移動範囲が設定されている。すなわち、第一領域5と第二領域6とが重複する領域が重複領域8を形成するように、扉体4のスライド方向Yの移動範囲が設定されている。
【0017】
1-2.外枠
外枠10は、第一領域5及び第二領域6に対して幅方向Xの一方側である幅方向第一側X1においてスライド方向Yに沿って配置された第一枠部11と、第一領域5及び第二領域6に対して幅方向Xの他方側である幅方向第二側X2においてスライド方向Yに沿って配置された第二枠部12と、を備えている。また、本実施形態では、外枠10は、更に、第一枠部11のスライド方向第二側Y2の端部と第二枠部12のスライド方向第二側Y2の端部とを連結する第三枠部13と、第一枠部11のスライド方向第一側Y1の端部と第二枠部12のスライド方向第一側Y1とを連結する第四枠部14とを備えている。
【0018】
第一枠部11と第二枠部12とは、それぞれ長尺状の部材である。本実施形態では、第一枠部11と第二枠部12とは、それぞれ、壁直交方向Z視で、スライド方向Yに長い長方形状に形成されている。そして、第一枠部11と第二枠部12とは、壁直交方向Z視で開口部3と重複しないように幅方向Xに離間して配置されている。また、第一枠部11は、壁直交方向Z視で扉体4の配置領域である第一領域5及び第二領域6の幅方向第一側X1の端部と重複するような幅方向Xの位置において、スライド方向Yに沿って延在するように配置されている。同様に、第二枠部12は、壁直交方向Z視で、第一領域5及び第二領域6の幅方向第二側X2の端部と重複するような幅方向Xの位置においてスライド方向Yに沿って延在するように配置されている。このように配置することで、外枠10は扉体4をスライド方向Yに移動自在に案内可能とすると共に、扉体4が第一領域5に配置されている状態で開口部3の全体を扉体4によって閉塞することができる。
【0019】
本実施形態では、図3に示すように、第一枠部11は、第一表側本体部11Aと、第一壁側本体部11Bと、第一中間部材11Cとを備えている。本例では、第一表側本体部11Aと、第一壁側本体部11Bと、第一中間部材11Cとのそれぞれが、スライド方向Yに長い長方形の板状に形成されている。
第一表側本体部11Aと第一壁側本体部11Bとは、幅方向X及びスライド方向Yの寸法が互いに同じとなっている。なお、図示の例では、第一表側本体部11Aと第一壁側本体部11Bとの壁直交方向Zの寸法も同じとなっている。そして、第一中間部材11Cは、スライド方向Yの寸法が第一表側本体部11A及び第一壁側本体部11Bと同じであるが、幅方向Xの寸法が第一表側本体部11A及び第一壁側本体部11Bに比べて小さく設定されている。なお、図示の例では、第一中間部材11Cの壁直交方向Zの寸法は、第一表側本体部11A及び第一壁側本体部11Bの壁直交方向Zの寸法よりも大きく設定されている。
【0020】
第一壁側本体部11Bは、扉体4に対して壁体2側に配置される。第一表側本体部11Aは、扉体4に対して壁体2とは反対側に配置される。第一中間部材11Cは、第一壁側本体部11Bと第一表側本体部11Aとを壁直交方向Zに連結するように配置される。また、第一中間部材11Cは、第一壁側本体部11B及び第一表側本体部11Aと幅方向第一側X1の端部の位置を合せて配置され、且つ、第一壁側本体部11B及び第一表側本体部11Aのスライド方向Yの全域に亘って配置されている。これにより、第一枠部11は、スライド方向Yに直交する断面の形状が、幅方向第二側X2に開口する凹状に形成されている。なお本例では、第一表側本体部11Aと、第一壁側本体部11Bと、第一中間部材11Cとはボルト等の固定部材により、或いは溶接により、互いに固定されている。
【0021】
本実施形態では、第二枠部12は、第二表側本体部12Aと、第二壁側本体部12Bと、第二中間部材12Cとを備えている。本例では、第二表側本体部12Aと、第二壁側本体部12Bと、第二中間部材12Cとのそれぞれが、スライド方向Yに長い長方形の板状に形成されている。
第二表側本体部12Aと第二壁側本体部12Bとは、幅方向X及びスライド方向Yの寸法が互いに同じとなっている。なお、図示の例では、第二表側本体部12Aと第二壁側本体部12Bとの壁直交方向Zの寸法も同じとなっている。そして、第二中間部材12Cは、スライド方向Yの寸法が第二表側本体部12A及び第二壁側本体部12Bと同じであるが、幅方向Xの寸法が第二表側本体部12A及び第二壁側本体部12Bに比べて小さく設定されている。なお、図示の例では、第二中間部材12Cの壁直交方向Zの寸法は、第二表側本体部12A及び第二壁側本体部12Bの壁直交方向Zの寸法よりも大きく設定されている。
【0022】
第二壁側本体部12Bは、扉体4に対して壁体2側に配置される。第二表側本体部12Aは、扉体4に対して壁体2とは反対側に配置される。第二中間部材12Cは、第二壁側本体部12Bと第二表側本体部12Aとを壁直交方向Zに連結するように配置される。また、第二中間部材12Cは、第二壁側本体部12B及び第二表側本体部12Aと幅方向第二側X2の端部の位置を合せて配置され、且つ、第二壁側本体部12B及び第二表側本体部12Aのスライド方向Yの全域に亘って配置されている。これにより、第二枠部12は、スライド方向Yに直交する断面の形状が、幅方向第一側X1に開口する凹状に形成されている。なお本例では、第二表側本体部12Aと、第二壁側本体部12Bと、第二中間部材12Cとはボルト等の固定部材により、或いは溶接により、互いに固定されている。
【0023】
また、第一枠部11及び第二枠部12は、第一枠部11における幅方向Xに扉体4と対向する面を第一対向面F1とし、第二枠部12における幅方向Xに扉体4と対向する面を第二対向面F2として、第一対向面F1と第二対向面F2との幅方向Xの間隔Lが、常温での扉体4の幅方向Xの寸法Mに、火災時の過熱による扉体4の幅方向Xの膨張量を加えた寸法Nよりも大きくなるように構成されている(L>N>M)。つまり、扉体4は、第一枠部11の第一対向面F1と第二枠部12の第二対向面F2とに対して、幅方向Xに隙間を有する状態で配置されている。そして、当該隙間は、第一枠部11と第二枠部12とが設けられたスライド方向Yの全域に亘って形成されている。そして、当該隙間の幅方向Xの寸法が、火災時の過熱による扉体4の幅方向Xの膨張量よりも大きく設定されている。このため、過熱により扉体4が膨張した場合でも、扉体4の幅方向Xの両端が第一対向面F1及び第二対向面F2の双方に当たることがなく、扉体4の熱膨張が妨げられないようになっている。従って、扉体4の幅方向Xの膨張が第一枠部11と第二枠部12とに妨げられることにより、扉体4が壁直交方向Zに撓むことを抑制することができる。よって、扉体4の膨張に伴う湾曲によって扉体4と壁体2又は外枠10との隙間が拡大し、火災の炎が当該隙間から防火扉1の反対側に漏れやすくなることを抑制できる。
【0024】
本実施形態では、第一中間部材11Cの幅方向第二側X2の面が第一対向面F1である。第一対向面F1は、扉体4の幅方向第一側X1の面である第一扉面G1と対向している。また、第二中間部材12Cの幅方向第一側X1の面が第二対向面F2である。第二対向面F2は、扉体4の幅方向第二側X2の面である第二扉面G2と対向している。従って、第一対向面F1と第一扉面G1との間に空間Sが形成される。同様に、第二対向面F2と第二扉面G2との間にも空間Sが形成される。図3では、扉体4が第一対向面F1と第二対向面F2との間における幅方向Xの中央に位置する状態を示しているため、第一対向面F1と第一扉面G1との幅方向Xの間隔と、第二対向面F2と第二扉面G2との幅方向Xの間隔とが等しくなっている。
【0025】
なお、本例では、常温での扉体4の幅方向Xの寸法Mとは、例えば20℃の環境における扉体4の幅方向Xの寸法Mとしている。また、火災時の過熱による扉体4の幅方向Xの膨張量を加えた寸法Nとは、実際の火災において想定される最も高い温度の熱により膨張した寸法である。ここで、実際の火災において想定される最も高い温度は、防火扉1の規格試験(例えば、JIS規格試験等)において加熱される温度以上の温度に設定されると好適である。
【0026】
また、第三枠部13と第四枠部14とは、それぞれ長尺状の部材である。本実施形態では、第三枠部13と第四枠部14とは、それぞれ、壁直交方向Z視で、幅方向Xに長い長方形状に形成されている。第三枠部13及び第四枠部14のそれぞれは、第一枠部11と第二枠部12とを幅方向Xに連結するように構成されている。
【0027】
本実施形態では、図1及び図2に示すように、第三枠部13は、第一枠部11のスライド方向第二側Y2の端部と第二枠部12のスライド方向第二側Y2の端部とに亘って幅方向Xに延在するように配置されている。そして、第三枠部13の幅方向第一側X1の端部が第一枠部11に連結され、第三枠部13の幅方向第二側X2の端部が第二枠部12に連結されている。ここでは、第三枠部13の構造の詳細な図示は省略するが、第三枠部13は、幅方向Xに直交する断面の形状が、スライド方向第一側Y1に開口する凹状に形成されている。このような形状を実現するために、第三枠部13は、第一枠部11及び第二枠部12と同様の構造を備えていると好適である。
【0028】
また、第四枠部14は、第一枠部11のスライド方向第一側Y1の端部と第二枠部12のスライド方向第一側Y1とに亘って幅方向Xに延在するように配置されている。そして、第四枠部14の幅方向第一側X1の端部が第一枠部11に連結され、第四枠部14の幅方向第二側X2の端部が第二枠部12に連結されている。ここでは、第四枠部14の構造の詳細な図示は省略するが、第四枠部14は、幅方向Xに直交する断面の形状が、スライド方向第二側Y2に開口する凹状に形成されている。このような形状を実現するために、第四枠部14は、第一枠部11及び第二枠部12と同様の構造を備えていると好適である。
【0029】
1-3.中桟
図4に示すように、第一領域5における壁直交方向Z視で開口部3よりもスライド方向第二側Y2の領域を対象領域7として、中桟20は、壁直交方向Z視で対象領域7と重複するように配置されている。また、中桟20は、対象領域7に対して壁体2の側とは反対側において第一枠部11と第二枠部12とに亘って幅方向Xに延在するように配置されている。これにより、壁直交方向Z視で開口部3と重複しない位置であって、開口部3を閉塞する第一領域5に配置された扉体4のスライド方向第二側Y2の領域を壁直交方向第一側Z1から適切に支えることができる位置に、中桟20を配置することができている。
【0030】
また、本実施形態では、上記のとおり、扉体4の第一領域5と第二領域6とが重複する領域を形成するように、扉体4のスライド方向Yの移動範囲が設定されている。従って、対象領域7の中に、重複領域8が形成されている。そして、本実施形態では、中桟20は、この重複領域8とも重複するように配置されている。中桟20をこのように配置することにより、扉体4が開口部3を閉じた状態と開いた状態とのいずれにおいても、中桟20が扉体4と壁直交方向Z視で重複する位置に配設されることになる。従って、火災時及び火災が生じていない通常時との双方で、中桟20により扉体4を適切に補強することができるようになっている。
【0031】
そして、中桟20と第一枠部11とが互いに固定され、中桟20と第二枠部12とが係合機構30を介して係合されている。そして、係合機構30は、中桟20の第二枠部12に対する幅方向Xの相対移動を許容すると共に、壁直交方向Z及びスライド方向Yの相対移動を規制するように構成されている。上記のとおり、火災の熱によって扉体4が熱膨張するが、火災時には、中桟20も熱によって膨張する。この構成によれば、中桟20と第一枠部11とが互いに固定されている一方、係合機構30によって中桟20の第二枠部12に対する幅方向Xの相対移動が許容される構成となっている。そのため、中桟20が火災時の熱により膨張した場合であっても、当該膨張を幅方向Xに逃がすことができる。従って、中桟20が扉体4から離れる側に湾曲して扉体4との隙間が拡大しないようにすることができ、中桟20による扉体4の押さえ機能の低下を抑制することができる。
【0032】
本実施形態では、中桟20における壁直交方向Z視で第一枠部11と重複する部分を第一部分21とし、中桟20における壁直交方向Z視で第二枠部12と重複する部分を第二部分22として、第一部分21が第一枠部11に固定され、第二部分22が後述する係合機構30を介して第二枠部12に係合されている。この構成によれば、中桟20における第一枠部11と重複する第一部分21が第一枠部11に固定されるため、簡易な構成で、中桟20と第一枠部11とを強固に固定することができる。また、中桟20における第二枠部12と重複する第二部分22が係合機構30を介して第二枠部12に係合されているため、係合機構30の構成を簡略なものとし易い。この係合機構30の構成については、後で詳細に説明する。
【0033】
本実施形態では、中桟20は、幅方向Xに長い長尺状の部材とされている。図示の例では、中桟20は、壁直交方向Z視で長方形状の板状に形成されている。また、中桟20の幅方向Xにおける寸法は、扉体4の寸法より長く設定されている。更に本例では、中桟20の幅方向Xの寸法は、外枠10の外縁の幅方向Xの寸法よりも短く形成されている。これにより、本例では、中桟20を外枠10に取り付けた状態で、壁直交方向Z視で第一枠部11と重複する第一部分21が、中桟20の幅方向第一側X1の端部に形成される。また、壁直交方向Z視で第二枠部12と重複する第二部分22が、中桟20の幅方向第二側X2の端部に形成されている。
【0034】
次に、中桟20と第一枠部11とが互いに固定された部分、すなわち固定部26の構成について説明する。図5及び図7に示すように、固定部26では、中桟20が第一枠部11に重ね合わされて固定部材25によって固定されている。固定部26は中桟20の幅方向第一側X1の領域であって、第一部分21を含む領域に配置される。本例では、中桟20の第一部分21が、第一枠部11に重ね合わされて固定部材25により固定されることで、固定部26が構成されている。
【0035】
固定部材25は、平板状の板状部材23と第1締結部材24とを有する。本例では、第1締結部材24は、第1締結ボルト24Aと第2締結ボルト24Bとを含んでいる。第1締結ボルト24Aは、板状部材23と中桟20とに亘って壁直交方向に挿通され、これらを互いに締結している。第2締結ボルト24Bは、板状部材23と第一枠部11とに亘って壁直交方向に挿通され、これらを互いに締結している。
【0036】
本実施形態では、板状部材23は幅方向Xに長い長方形状である。また本例では、板状部材23は、中桟20とスライド方向Yの寸法が同じである。板状部材23の幅方向Xの寸法は、第一部分21の寸法よりも長く形成されている。
【0037】
図7に示すように、本実施形態では、第一枠部11の第一表側本体部11Aに第1凹部S1が形成されている。第1凹部S1は、第一表側本体部11Aにおける最も壁直交方向第一側Z1の面に対して部分的に壁直交方向第二側Z2に窪むように形成されている。ここでは、第1凹部S1は、中桟20の第一部分21のスライド方向Yの寸法以上のスライド方向Yの範囲に形成されている。ここでは、第1凹部S1は、壁直交方向第一側Z1を向く面と、幅方向第二側X2を向く面と、スライド方向Yに対向する一対の面とに囲まれて形成されている。そして、この第1凹部S1の中に、中桟20の第一部分21が収まる。
【0038】
板状部材23は、中桟20の第一部分21が第1凹部S1に収まった状態で、中桟20及び第一枠部11に対して壁直交方向第一側Z1から重ね合わせられる。図5に示すように、本例では、板状部材23のスライド方向Yの両側縁のそれぞれが、中桟20のスライド方向Yの両側縁のそれぞれに沿うように重ね合わされる。更に、幅方向Xでは、図5及び図7に示すように、板状部材23は、第一表側本体部11A、第一部分21、及び、中桟20の第一部分21よりも幅方向第二側X2の部分と重複するように重ね合わされる。そして、第1締結ボルト24Aが、壁直交方向第一側Z1から板状部材23と第一表側本体部11Aとに亘って挿通され、板状部材23と第一表側本体部11Aとが互いに締結される。また、第2締結ボルト24Bが、壁直交方向第一側Z1から板状部材23と中桟20とに亘って挿通され、板状部材23と中桟20とが互いに締結される。このように構成することにより、板状部材23を介して、第一枠部11の第一表側本体部11Aと中桟20とが互いに固定される。
【0039】
1-4.係合機構
上記のとおり、係合機構30は、中桟20の第二枠部12に対する幅方向Xの相対移動を許容すると共に、壁直交方向Z及びスライド方向Yの相対移動を規制するように構成されている。この構成によれば、中桟20が火災時の熱により膨張した場合であっても、当該膨張を幅方向Xに逃がすことができる。更に、係合機構30によって中桟20の第二枠部12に対する壁直交方向Z及びスライド方向Yの相対移動が規制される構成となっている。このようにすることで、中桟20の第二部分22の位置、特に壁直交方向Z及びスライド方向Yの位置を適切に保持することができる。
【0040】
図5及び図6に示すように、係合機構30は、中桟20に対してスライド方向Yの両側及び壁直交方向Zの両側を囲む包囲部34を備え、包囲部34は、幅方向Xに貫通して中桟20が挿通される挿通孔32を形成している。この包囲部34により、中桟20のスライド方向Yの両側及び壁直交方向Zの両側への移動を規制することができる。包囲部34は、幅方向Xに貫通する挿通孔32を形成している。本実施形態では、中桟20の幅方向第二側X2の部分(ここでは第二部分22)が挿通孔32に挿通された状態で包囲部34に係止される。これにより、中桟20は第二枠部12に適切に保持される。
【0041】
本実施形態では、係合機構30は、係合部材31と第2締結部材33とを有している。更に本例では、係合機構30は、第二枠部12の第二表側本体部12Aに形成された第2凹部S2を備えている。そして、係合機構30は、係合部材31と第2凹部S2とにより、中桟20を包囲する包囲部34を形成している。
【0042】
係合部材31は、中桟20の第二枠部12に対して、少なくとも壁直交方向第一側Z1の相対移動を規制する部材である。第2締結部材33は、係合部材31を第二枠部12に固定するための部材である。係合部材31は壁直交方向第一側Z1から、第二枠部12と中桟20との双方に重複するように、第二枠部12に取り付けられる。第2締結部材33は、係合部材31と第二枠部12とに亘って壁直交方向Zにおいて挿通される。このようにして係合部材31は第二枠部12に締結される。
【0043】
本実施形態では、図5から図7に示すように、第二枠部12の第二表側本体部12Aに第2凹部S2が形成されている。第2凹部S2は、第二表側本体部12Aにおける最も壁直交方向第一側Z1の面に対して部分的に壁直交方向第二側Z2に窪むように形成されている。ここでは、第2凹部S2は、中桟20の第二部分22のスライド方向Yの寸法以上のスライド方向Yの範囲に形成されている。また、第2凹部S2の幅方向第一側X1の端部は開口している。そして、第2凹部S2は、固定部26において固定された中桟20が過熱により最大限まで膨張した状態での、当該中桟20の幅方向第二側X2の端部の位置よりも幅方向第二側X2までの範囲に形成されている。ここでは、第2凹部S2は、壁直交方向第一側Z1を向く面と、幅方向第一側X1を向く面と、スライド方向Yに対向する一対の面とに囲まれて形成されている。そして、この第2凹部S2の中に、中桟20の第二部分22が収まる。なお、第2凹部S2が幅方向第一側X1を向く面を備えず、第2凹部S2の幅方向第二側X2の端部が開口するように形成されていても良い。
【0044】
上記のように、第2凹部S2に中桟20を収める構成としたため、本例での係合部材31は、スライド方向Yに長い長方形状の板状部材としている。図5に示すように、本例では、係合部材31の幅方向第一側X1の側縁が、第二表側本体部12Aの幅方向第一側X1の側縁に沿うように取付けられている。また、係合部材31は、第2凹部S2に対してスライド方向Yの両側に亘って配置されている。そして、係合部材31は、第2凹部S2に対してスライド方向Yの両側において、第2締結部材33により、第二表側本体部12Aに対して壁直交方向第一側Z1から取付けられている。そのため、本例では、第2締結部材33として一対のボルトが用いられている。一対のボルトのそれぞれは、壁直交方向第一側Z1から係合部材31と第二表側本体部12Aとに亘って挿通される。このようにして係合部材31は第二表側本体部12Aに固定されている。
【0045】
そして、本実施形態では、図6に示すように、包囲部34は、第2凹部S2における、壁直交方向第一側Z1を向く面と、スライド方向Yに対向する一対の面と、第2凹部S2に対して壁直交方向第一側Z1から取り付けられた係合部材31の壁直交方向第二側Z2を向く面とを有して構成されている。これにより、包囲部34は、中桟20の第二部分22をスライド方向Yの両側及び壁直交方向Zの両側を囲むようになっている。一方、上記のように、第2凹部S2の幅方向第一側X1の端部は開口しているため、図5に示すように、包囲部34は、幅方向第一側X1に開口している。これにより、中桟20を包囲部34に対して幅方向第一側X1から挿通することができる。このように、包囲部34は、幅方向Xに貫通して中桟20が挿通される挿通孔32を形成している。そして、中桟20の第二部分22が包囲部34に収まることで、中桟20の第二枠部12に対する幅方向Xの相対移動が許容されると共に、壁直交方向Z及びスライド方向Yの相対移動が規制された状態で、中桟20と第二枠部12とが、係合機構30を介して係合される。
【0046】
また、上記のとおり、第2凹部S2が、過熱により最大限まで膨張した状態での中桟20の幅方向第二側X2の端部の位置よりも幅方向第二側X2までの範囲に形成されている。そのため、図5及び図7に示すように、常温の状態では、中桟20の幅方向第二側X2の端部よりも幅方向第二側X2に、膨張用空間Tが形成されている。本実施形態では、膨張用空間Tは、第2凹部S2内に形成されている。この膨張用空間Tが形成されていることにより、中桟20が火災時の熱により最大限まで膨張した場合であっても、中桟20の幅方向第二側X2の端部が、第2凹部S2における幅方向第一側X1を向く面に当接することが回避される。従って、中桟20の膨張を幅方向に逃がすことができ、中桟20の湾曲が大きくなることを抑制することができる。なお、膨張用空間Tの幅方向Xの寸法は、中桟20の幅方向Xの寸法の、常温から火災時の熱により最大限まで膨張した状態までの膨張量よりも大きく構成されていると好適である。
【0047】
1-5.裏中桟
裏中桟40は、壁直交方向Z視で対象領域7と重複すると共に、対象領域7に対して壁体2の側において第一枠部11と第二枠部12とに亘って幅方向Xに延在するように配置されている(図4参照)。これにより、壁直交方向Z視で開口部3と重複しない位置であって、開口部3を閉塞する第一領域5に配置された扉体4のスライド方向第二側Y2の領域を壁直交方向第二側Z2から適切に支えることができる位置に、裏中桟40を配置することができている。
【0048】
また、裏中桟40は、第一枠部11及び第二枠部12のいずれか一方を対象枠部とし、他方を非対象枠部として、裏中桟40と前記対象枠部とが互いに固定され、裏中桟40と非対象枠部とが裏側係合機構50を介して係合されている。そして、裏側係合機構50は、裏中桟40の非対象枠部に対する幅方向Xの相対移動を許容すると共に、壁直交方向Z及びスライド方向Yの相対移動を規制するように構成されている。この構成によれば、裏中桟40の一端側を対象枠部に固定し、裏中桟40の他端側を、裏側係合機構50を介して非対象枠部に対して幅方向Xの相対移動を許容する状態で係合させることができる。
【0049】
更に、上記のとおり、火災の熱によって扉体4が熱膨張するが、火災時には、裏中桟40も熱によって膨張する。この構成によれば、裏中桟40と対象枠部とが互いに固定されている一方、裏側係合機構50によって裏中桟40の非対象枠部に対する幅方向Xの相対移動が許容される構成となっている。そのため、裏中桟40が火災時の熱により膨張した場合であっても、当該膨張を幅方向Xに逃がすことができる。このため、裏中桟40の湾曲等による変形を抑制することができる。従って裏中桟40による扉体4の押さえ機能の低下を抑制可能することができる。裏側係合機構50の構成については、後で詳細に説明する。
【0050】
本実施形態では、裏中桟40と第一枠部11とが互いに固定され、裏中桟40と第二枠部12とが裏側係合機構50を介して係合されている。すなわち、第一枠部11が対象枠部に相当し、第二枠部12が非対象枠部に相当する。裏中桟40は、幅方向Xに長い長尺状の部材とされている。図示の例では、裏中桟40は、壁直交方向Z視で長方形状の板状に形成されている。また、裏中桟40の幅方向Xにおける寸法は、扉体4の寸法より長く設定されている。更に本例では、裏中桟40の幅方向Xの寸法は、外枠10の外縁の幅方向Xの寸法よりも短く形成されている。これにより、本例では、裏中桟40を外枠10に取り付けた状態で、壁直交方向Z視で第一枠部11と重複する裏側第一部分42が、裏中桟40の幅方向第一側X1の端部に形成される。また、壁直交方向Z視で第二枠部12と重複する裏側第二部分43が、裏中桟40の幅方向第二側X2の端部に形成される。本例では、裏中桟40のうち裏側第一部分42と裏側第二部分43とを除いた部分を非重複部分41とする。図7に示すように、非重複部分41の壁直交方向Zにおける寸法は、裏側第一部分42と裏側第二部分43との壁直交方向Zの寸法より大きく設定されている。
【0051】
次に、裏中桟40と第一枠部11とが互いに固定された部分、すなわち裏側固定部61の構成について説明する。図7及び図8に示すように、裏側固定部61では、裏中桟40が第一枠部11に重ね合わされて裏側固定部材54によって固定されている。裏側固定部61は裏中桟40の幅方向第一側X1の領域であって、裏側第一部分42を含む領域に配置されている。本例では、裏側固定部61は、裏中桟40の裏側第一部分42が、第一枠部11に重ね合わされて裏側固定部材54により固定されることで、裏側固定部61が構成されている。
【0052】
裏側固定部材54は、平板状の裏側板状部材60と第3締結部材52とを有する。本例では、第3締結部材52は第3締結ボルト52Aと第4締結ボルト52Bとを含んでいる。第3締結ボルト52Aは、裏側板状部材60と裏中桟40とに亘って壁直交方向Zに挿通され、これらを互いに締結している。第4締結ボルト52Bは、裏側板状部材60と第一枠部11とに亘って壁直交方向Zに挿通され、これらを互いに締結している。なお、図示の例では、第3締結ボルト52A及び第4締結ボルト52Bとして、第1締結ボルト24A及び第2締結ボルト24Bに比べて、壁直交方向第二側Z2への突出が少ないボルト、ここでは皿ボルトを用いている。
【0053】
本実施形態では、裏側板状部材60は幅方向Xに長い長方形状である。また本例では、裏側板状部材60は、裏中桟40とスライド方向Yの寸法が同じである。裏側板状部材60の幅方向Xの寸法は、裏側第一部分42の寸法よりも長く形成されている。
【0054】
図示の例では、裏側板状部材60が第一枠部11及び裏中桟40に対して、壁直交方向第二側Z2へ突出しないように、裏側板状部材60は、第一枠部11及び裏中桟40に形成された凹部に収まるように配置されている。具体的には、第一枠部11に第5凹部S5が形成され、裏中桟40に第6凹部S6が形成され、これらの凹部に収まるように、裏側板状部材60が配置されている。第5凹部S5及び第6凹部S6は、これらの凹部が合わさって、裏側板状部材60の形状に合致する形状となるように形成されている。第5凹部S5は、第一枠部11の第一壁側本体部11Bにおける最も壁直交方向第二側Z2の面に対して部分的に壁直交方向第一側Z1に窪むように、第一壁側本体部11Bに形成されている。第6凹部S6は、裏中桟40における最も壁直交方向第二側Z2の面に対して部分的に壁直交方向第一側Z1に窪むように、裏中桟40に形成されている。本例では、第6凹部S6は、裏中桟40のスライド方向Yの全域に亘って形成されている。
【0055】
また本実施形態では、図7に示すように、第一枠部11の第一壁側本体部11Bに第3凹部S3が形成されている。第3凹部S3は、壁直交方向視で第5凹部S5と重複する領域内に形成されている。また、第3凹部S3は、第5凹部S5よりも更に壁直交方向第一側Z1に窪むように形成されている。ここでは、第3凹部S3は、裏中桟40の裏側第一部分42のスライド方向Yの寸法以上のスライド方向Yの範囲に形成されている。また、第3凹部S3は、壁直交方向第二側Z2を向く面と、幅方向第二側X2を向く面と、スライド方向Yに対向する一対の面とに囲まれて形成されている。そして、この第3凹部S3の中に、裏中桟40の裏側第一部分42が収まる。本例では、第5凹部S5は、スライド方向Yの寸法が第3凹部S3と同じであり、幅方向Xの第3凹部S3よりも長く形成されている。
【0056】
図7及び図8に示すように、裏側板状部材60は、裏中桟40の裏側第一部分42が第3凹部S3に収まった状態で、第5凹部S5及び第6凹部S6に収容される。そして、裏側板状部材60は、裏中桟40及び第一壁側本体部11Bに対して壁直交方向第二側Z2から重ね合わせられる。そして、第3締結ボルト52Aが、壁直交方向第二側Z2から裏側板状部材60と裏中桟40とに亘って挿通され、裏側板状部材60と裏中桟40とが互いに締結される。また、第4締結ボルト52Bが、壁直交方向第二側Z2から裏側板状部材60と第一壁側本体部11Bとに亘って挿通され、裏側板状部材60と第一壁側本体部11Bとが互いに締結される。このように構成することにより、裏側板状部材60を介して、第一枠部11の第一壁側本体部11Bと裏中桟40とが互いに固定される。
【0057】
1-6.裏側係合機構
裏側係合機構50は、裏中桟40の非対象枠部に対する幅方向Xの相対移動を許容すると共に、壁直交方向Z及びスライド方向Yの相対移動を規制するように構成されている。この構成によれば、裏中桟40が火災時の熱により膨張した場合であっても、当該膨張を幅方向Xに逃がすことができる。更に、裏側係合機構50によって裏中桟40の非対象枠部に対する壁直交方向Z及びスライド方向Yの相対移動が規制される構成となっている。このようにすることで、裏中桟40の非対象枠部の位置、特に壁直交方向Z及びスライド方向Yの位置を適切に保持することができる。
【0058】
図8及び図9に示すように、裏側係合機構50は、裏中桟40に対してスライド方向Yの両側及び壁直交方向Zの両側を囲む裏側包囲部62を備え、裏側包囲部62は、幅方向Xに貫通して裏中桟40が挿通される裏側挿通孔53を形成している。この裏側包囲部62により、裏中桟40のスライド方向Yの両側及び壁直交方向Zの両側への移動を規制することができる。裏側包囲部62は、幅方向Xに貫通する裏側挿通孔53を形成している。本実施形態では、裏中桟40の幅方向第二側X2の部分(ここでは裏側第二部分43)が裏側挿通孔53に挿通された状態で裏側包囲部62に係止される。これにより、裏中桟40は裏側第二部分43に適切に保持される。
【0059】
本実施形態では、裏側係合機構50は、裏側係合部材51と第4締結部材55とを有している。更に本例では、裏側係合機構50は、第二枠部12の第二壁側本体部12Bに形成された第4凹部S4及び第7凹部S7を備えている。そして、裏側係合機構50は、裏側係合部材51と第4凹部S4とにより、裏中桟40を包囲する裏側包囲部62を形成している。
【0060】
裏側係合部材51は、裏中桟40の第二枠部12に対して、少なくとも壁直交方向第二側Z2の相対移動を規制する部材である。第4締結部材55は、裏側係合部材51を第二枠部12に固定するための部材である。裏側係合部材51は壁直交方向第二側Z2から、第二枠部12と裏中桟40との双方に重複するように、第二枠部12に取り付けられる。第4締結部材55は、裏側係合部材51と第二枠部12とに亘って壁直交方向Zにおいて挿通される。このようにして裏側係合部材51は第二枠部12に締結される。
【0061】
本実施形態では、図7から図9に示すように、第二枠部12の第二壁側本体部12Bに第4凹部S4が形成されている。第4凹部S4は、第二壁側本体部12Bにおける最も壁直交方向第二側Z2の面に対して部分的に壁直交方向第一側Z1に窪むように形成されている。ここでは、第4凹部S4は、裏中桟40の裏側第二部分43のスライド方向Yの寸法以上のスライド方向Yの範囲に形成されている。また、第4凹部S4の幅方向第一側X1の端部は開口している。そして、第4凹部S4は、裏側固定部61において固定された裏中桟40が過熱により最大限まで膨張した状態での、当該裏中桟40の幅方向第二側X2の端部の位置よりも幅方向第二側X2までの範囲に形成されている。ここでは、第4凹部S4は、壁直交方向第二側Z2を向く面と、幅方向第一側X1を向く面と、スライド方向Yに対向する一対の面とに囲まれて形成されている。そして、この第4凹部S4の中に、裏中桟40の裏側第二部分43が収まる。なお、第4凹部S4が幅方向第一側X1を向く面を備えず、第4凹部S4の幅方向第二側X2の端部が開口するように形成されていても良い。
【0062】
また、図示の例では、裏側係合部材51が第二枠部12及び裏中桟40に対して、壁直交方向第二側Z2へ突出しないように、裏側係合部材51は、第二枠部12及び裏中桟40に形成された凹部に収まるように配置されている。具体的には、第二枠部12に第7凹部S7が形成され、裏中桟40に第8凹部S8が形成され、これらの凹部に収まるように、裏側係合部材51が配置されている。第7凹部S7は、第4凹部S4に対してスライド方向Yの両側に分かれて配置され、それぞれにおいて第二枠部12の第二壁側本体部12Bにおける最も壁直交方向第二側Z2の面に対して部分的に壁直交方向第一側Z1に窪むように、第二壁側本体部12Bに形成されている。第7凹部S7は、裏側係合部材51の形状に合致する形状となるように形成されている。また、第7凹部S7は、第二壁側本体部12Bの幅方向第一側X1の側縁に沿うように形成されている。第8凹部S8は、裏中桟40における最も壁直交方向第二側Z2の面に対して部分的に壁直交方向第一側Z1に窪むように、裏中桟40に形成されている。本例では、第8凹部S8は、裏中桟40のスライド方向Yの全域に亘って形成されている。
【0063】
本実施形態では、裏側係合部材51は、スライド方向Yに長い長方形状の板状部材である。図8に示すように、本例では、裏側係合部材51の幅方向第一側X1の側縁が、第二壁側本体部12Bの幅方向第一側X1の側縁に沿うように取付けられている。また、裏側係合部材51は、第4凹部S4に対してスライド方向Yの両側に亘って配置されている。そして、図8及び図9に示すように、裏側係合部材51は、第4凹部S4に対してスライド方向Yの両側において、第4締結部材55により、第二壁側本体部12Bに対して壁直交方向第二側Z2から取付けられている。そのため、本例では、第4締結部材55として一対のボルトが用いられている。一対のボルトのそれぞれは、壁直交方向第二側Z2から裏側係合部材51と第二壁側本体部12Bとに亘って挿通される。本例では、一対のボルトのそれぞれは、第7凹部S7における、第4凹部S4に対してスライド方向Yの両側に分かれて形成された一対の領域のそれぞれに配置されている。このようにして裏側係合部材51は第二壁側本体部12Bに固定されている。なお、図示の例では、第4締結部材55を構成するボルトとして、第2締結部材33に比べて、壁直交方向第二側Z2への突出が少ないボルト、ここでは皿ボルトを用いている。
【0064】
そして、本実施形態では、図9に示すように、裏側包囲部62は、第4凹部S4における、壁直交方向第二側Z2を向く面と、スライド方向Yに対向する一対の面と、裏側係合部材51の壁直交方向第一側Z1を向く面とを有して構成されている。これにより、裏側包囲部62は、裏中桟40の裏側第二部分43をスライド方向Yの両側及び壁直交方向Zの両側を囲むようになっている。一方、上記のように、第4凹部S4の幅方向第一側X1の端部は開口しているため、図8に示すように、裏側包囲部62は、幅方向第一側X1に開口している。これにより、裏中桟40を裏側包囲部62に対して幅方向第一側X1から挿通することができる。このように、裏側包囲部62は、幅方向Xに貫通して裏中桟40が挿通される裏側挿通孔53を形成している。そして、裏中桟40の裏側第二部分43が裏側包囲部62に収まることで、裏中桟40の裏側第二部分43に対する幅方向Xの相対移動が許容されると共に、壁直交方向Z及びスライド方向Yの相対移動が規制された状態で、裏中桟40と裏側第二部分43とが、裏側係合機構50を介して係合される。
【0065】
また、上記のとおり、第4凹部S4が、過熱により最大限まで膨張した状態での裏中桟40の幅方向第二側X2の端部の位置よりも幅方向第二側X2までの範囲に形成されている。そのため、図7及び図8に示すように、常温の状態では、裏中桟40の幅方向第二側X2の端部よりも幅方向第二側X2に、膨張用空間Uが形成されている。本実施形態では、膨張用空間Uは、第4凹部S4内に形成されている。この膨張用空間Uが形成されていることにより、裏中桟40が火災時の熱により最大限まで膨張した場合であっても、裏中桟40の幅方向第二側X2の端部が、第4凹部S4における幅方向第一側X1を向く面に当接することが回避される。従って、裏中桟40の膨張を幅方向に逃がすことができ、裏中桟40の湾曲が大きくなることを抑制することができる。なお、膨張用空間Uの幅方向Xの寸法は、裏中桟40の幅方向Xの寸法の、常温から火災時の熱により最大限まで膨張した状態までの膨張量よりも大きく構成されていると好適である。
【0066】
2.その他の実施形態
次に、防火扉1のその他の実施形態について説明する。
【0067】
(1)上記の実施形態では、扉体4は外枠10によりスライド方向Yが上下方向(鉛直方向)とされた構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、スライド方向Yが水平方向に沿う方向であり、扉体4が当該水平方向に沿う方向に移動自在に支持される構成としても良い。或いは、スライド方向Yが、上下方向及び水平方向の双方に対して傾斜した方向に設定されていても良い。
【0068】
(2)上記の実施形態では、外枠10として第一枠部11と第二枠部12とに加えて、第三枠部13と第四枠部14とを備えた構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、外枠10は、第一枠部11と第二枠部12とを備えていればよく、第三枠部13と第四枠部14とを備えない構成としても良い。この場合であっても、扉体4は第一枠部11と第二枠部12とに案内されてスライド方向Yに移動自在な構成となる。ただし、第一枠部11と第二枠部12との位置関係は固定されている必要があるため、例えば、第一枠部11と第二枠部12とを連結する連結部材を別途備えた構成とすると好適である。あるいは、このような連結部材を備えない場合には、第一枠部11と第二枠部12とが壁体2にそれぞれ固定されていても良い。
【0069】
(3)上記の実施形態では、中桟20における壁直交方向Z視で第一枠部11と重複する部分である第一部分21が第一枠部11に固定され、壁直交方向Z視で第二枠部12と重複する部分である第二部分22が係合機構30を介して第二枠部12に係合されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成には限定されない。例えば、中桟20における壁直交方向Z視で第一枠部11と重複しない部分が、第一枠部11に固定された構成としても良い。具体的には、中桟20の幅方向第一側X1の端部が、第一枠部11の幅方向第二側X2を向く側面に固定されていても良い。また、例えば、中桟20における壁直交方向Z視で第二枠部12と重複しない部分が、係合機構30を介して第二枠部12に係合された構成としても良い。具体的には、中桟20における壁直交方向Z視で第二枠部12と重複する部分よりも幅方向第二側X2の部分が、第二枠部12よりも幅方向第二側X2に配置された係合機構30によって第二枠部12に係合されていても良い。
【0070】
(4)上記の実施形態では、扉体4の配置領域である第一領域5と第二領域6とが一部重複する重複領域8を有するように、扉体4のスライド方向Yの移動範囲が設定されている構成を例として説明した。しかしそのような構成に限定されることなく、例えば、第一領域5と第二領域6とが重複しない構成としても良い。この場合であっても、中桟20は対象領域7と壁直交方向Z視で重複するように配置される。これにより、中桟20によって開口部3が狭められることがなく、且つ、開口部3を閉じた状態である第一領域5に扉体4が配置された状態では、中桟20により、扉体4を適切に補強することができる。
【0071】
(5)上記の実施形態では、中桟20は、壁直交方向Z視で重複領域8と重複するように配置されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、中桟20を壁直交方向Z視で重複領域8と重複せず、対象領域7のみと重複する構成としても良い。このような構成であっても、扉体4が開口部3を閉じる第一領域5に配置された状態では、扉体4を適切に補強することができる。
【0072】
(6)上記の実施形態では、係合機構30が、第二枠部12の第二表側本体部12Aに形成された第2凹部S2と、当該第2凹部S2を壁直交方向第一側Z1から覆うように配置された板状の係合部材31とを備えた構成を例としてした。しかし、そのような構成には限定されない。例えば、第二枠部12に第2凹部S2が形成されておらず、係合部材31の側に、中桟20が収まる凹部が形成された構成としても良い。或いは、第二枠部12と係合部材31との双方に凹部が形成され、これらの凹部に中桟20が収まる構成としても良い。これらの場合、係合部材31は、例えば、当該凹部に相当する部分が幅方向Xに沿う幅方向視で角ばったU字状となるように、屈曲された板状部材であっても良い。
【0073】
(7)上記の実施形態では、係合機構30が中桟20に対してスライド方向Yの両側及び壁直交方向Zの両側を囲む包囲部34を備える構成を例として説明した。しかし、そのような構成には限定されない。例えば、係合機構30は、中桟20に対してスライド方向Yの両側と壁直交方向Zのいずれか一方側とを囲むように形成された包囲部を34備えた構成としても良い。また、係合機構30の構成は、これらの包囲部34を備えるものには限定されない。例えば、係合機構30は、中桟20の壁直交方向第二側Z2を向く面と、第二枠部12の壁直交方向第一側Z1を向く面との間に配置された直動案内機構(リニアガイド)を備えた構成としても良い。この場合、直動案内機構は、中桟20の第二枠部12に対する幅方向Xの相対移動を許容すると共に壁直交方向Z及びスライド方向Yの相対移動を規制するように設置される。なお、このことは、裏中桟40の裏側係合機構50についても同様である。
【0074】
(8)上記の実施形態では、第一枠部11の第一対向面F1と第二枠部12の第二対向面F2との幅方向Xの間隔Lが、常温での扉体4の幅方向Xの寸法Mに、火災時の過熱による扉体4の幅方向Xの膨張量を加えた寸法Nよりも大きくなるように構成されている例について説明した。しかし、これには限定されず、例えば、第一枠部11の第一対向面F1と第二枠部12の第二対向面F2との幅方向Xの間隔Lが、常温での扉体4の幅方向Xの寸法Mに、火災時の過熱による扉体4の幅方向Xの膨張量を加えた寸法Nと同じになるように構成されていても良い。
【0075】
(9)上記の実施形態では、裏中桟40と第一枠部11とが互いに固定され、裏中桟40と第二枠部12とが裏側係合機構50を介して係合されている構成、すなわち、図7に示すように、中桟20が固定されている側の枠部(第一枠部11)に裏中桟40も固定され、中桟20が係合機構30を介して係合されている側の枠部(第二枠部12)に裏中桟40も裏側係合機構50を介して係合されている構成を例として説明した。しかし、このような構成には限定されない。例えば、中桟20が固定されている側の枠部(第一枠部11)に裏中桟40が裏側係合機構50を介して係合され、中桟20が係合機構30を介して係合されている側の枠部(第二枠部12)に裏中桟40が固定されている構成であっても良い。
【0076】
(10)上記の実施形態では、第一枠部11と第二枠部12とに亘って幅方向Xに延在するように配置された裏中桟40を備える構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、防火扉1は、裏中桟40を備えない構成としても良い。
【0077】
(11)上記の実施形態では、中桟20と第一枠部11との固定を行うために、固定部材25に第1締結部材24としてのボルトを用いた構成を例として説明した。しかしこれには限定されない。中桟20と第一枠部11との固定を、例えば、リベット等のボルト以外の締結部材を用いて行っても良いし、溶接により行っても良い。係合部材31と第二枠部12との固定、裏中桟40と対象枠部との固定、及び、裏側係合部材51と非対象枠部との固定についても同様である。
【0078】
(12)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0079】
4.上記実施形態の概要
以下、上記において説明した防火扉の概要について説明する。
【0080】
防火扉は、開口部を有する壁体の壁面に取り付けられる防火扉であって、前記壁体に固定された外枠と、前記外枠に案内されて前記壁面に沿うスライド方向に移動することにより前記開口部を開閉する扉体と、前記外枠に取り付けられた中桟と、を備え、
前記開口部を閉じた状態の前記扉体が配置される領域を第一領域とし、前記開口部を開いた状態の前記扉体が配置される領域を第二領域とし、前記壁体の壁面に直交する方向を壁直交方向とし、前記壁直交方向に沿う壁直交方向視で前記スライド方向に直交する方向を幅方向とし、前記スライド方向における前記第二領域から前記第一領域へ向かう側をスライド方向第一側とし、前記スライド方向における前記第一領域から前記第二領域へ向かう側をスライド方向第二側として、前記外枠は、前記第一領域及び前記第二領域に対して前記幅方向の一方側である幅方向第一側において前記スライド方向に沿って配置された第一枠部と、前記第一領域及び前記第二領域に対して前記幅方向の他方側である幅方向第二側において前記スライド方向に沿って配置された第二枠部と、を備え、前記第一領域における前記壁直交方向視で前記開口部よりも前記スライド方向第二側の領域を対象領域として、前記中桟は、前記壁直交方向視で前記対象領域と重複すると共に、前記対象領域に対して前記壁体の側とは反対側において前記第一枠部と前記第二枠部とに亘って前記幅方向に延在するように配置され、前記中桟と前記第一枠部とが互いに固定され、前記中桟と前記第二枠部とが係合機構を介して係合され、前記係合機構は、前記中桟の前記第二枠部に対する前記幅方向の相対移動を許容すると共に前記壁直交方向及び前記スライド方向の相対移動を規制するように構成されている点にある。
【0081】
この構成によれば、中桟によって扉体の対象領域を壁体とは反対側から押さえることができるため、扉体が壁体から離れる側に膨張して、扉体と壁体との隙間が大きくなることを抑制することができる。また、中桟自体にも熱による膨張が生じるが、中桟と第一枠部とが互いに固定されている一方、係合機構によって中桟の第二枠部に対する幅方向の相対移動が許容される構成のため、中桟が火災時の熱により膨張した場合であっても、当該膨張を幅方向に逃がすことができ、中桟が扉体から離れる側に湾曲して扉体との隙間が拡大しないようにすることができる。従って、中桟が膨張することによる扉体の押さえ機能の低下を抑制することができる。
このように、本構成によれば、スライド式の防火扉において、中桟の膨張による扉体との隙間の拡大を抑制し、中桟による扉体の押さえ機能の低下を抑制することができる。
【0082】
ここで、前記中桟における前記壁直交方向視で前記第一枠部と重複する部分を第一部分とし、前記中桟における前記壁直交方向視で前記第二枠部と重複する部分を第二部分として、前記第一部分が前記第一枠部に固定され、前記第二部分が前記係合機構を介して前記第二枠部に係合されていると好適である。
【0083】
本構成によれば、中桟における第一枠部と重複する第一部分が第一枠部に固定されるため、簡易な構成で、中桟と第一枠部とを強固に固定することができる。また、中桟における第二枠部と重複する第二部分が係合機構を介して第二枠部に係合されているため、係合機構の構成を簡略なものとし易い。
【0084】
また、前記第一領域と前記第二領域とが一部重複するように前記扉体の前記スライド方向の移動範囲が設定されており、前記第一領域と前記第二領域とが重複する領域を重複領域として、前記中桟は、前記壁直交方向視で前記重複領域とも重複するように配置されていると好適である。
【0085】
本構成によれば、扉体が開口部を閉じた状態と開いた状態とのいずれにおいても、中桟が扉体と壁直交方向で重複する位置に配置されることになるため、火災時及び火災が生じていない通常時との双方で中桟により扉体を適切に補強することができる。
【0086】
また、前記係合機構は、前記中桟に対して前記スライド方向の両側及び前記壁直交方向の両側を囲む包囲部を備え、前記包囲部は、前記幅方向に貫通して前記中桟が挿通される挿通孔を形成していると好適である。
【0087】
本構成によれば、中桟は包囲部に囲まれた挿通孔に挿通された状態で第二枠部と係合している。従って、中桟が火災時の熱により膨張した場合であっても、当該膨張を幅方向に適切に逃がすことができると共に、中桟が第二枠部から外れることを防止して、中桟と第二枠部とが係合された状態を適切に維持することができる。
【0088】
また、前記第一枠部における前記幅方向に前記扉体と対向する面を第一対向面とし、前記第二枠部における前記幅方向に前記扉体と対向する面を第二対向面として、前記第一対向面と前記第二対向面との前記幅方向の間隔は、常温での前記扉体の前記幅方向の寸法に、火災時の加熱による前記扉体の前記幅方向の膨張量を加えた寸法よりも大きいと好適である。
【0089】
本構成によれば、火災時の熱による膨張後の扉体の幅方向の寸法よりも、外枠の第一対向面と第二対向面との幅方向の間隔の方が大きい。そのため、扉体の幅方向の膨張が第一枠部と第二枠部とに妨げられることにより扉体が壁直交方向に撓むことを抑制することができる。よって、扉体の膨張に伴う湾曲によって扉体と壁体又は外枠との隙間が拡大することを抑制できる。
【0090】
また、前記壁直交方向視で前記対象領域と重複すると共に、前記対象領域に対して前記壁体の側において前記第一枠部と前記第二枠部とに亘って前記幅方向に延在するように配置された裏中桟を更に備え、前記第一枠部及び前記第二枠部とのいずれか一方を対象枠部とし、他方を非対象枠部として、前記裏中桟と前記対象枠部とが互いに固定され、前記中桟と前記非対象枠部とが裏側係合機構を介して係合され、前記裏側係合機構は、前記裏中桟の前記非対象枠部に対する前記幅方向の相対移動を許容すると共に前記壁直交方向及び前記スライド方向の相対移動を規制するように構成されていると好適である。
【0091】
本構成によれば、裏中桟によって扉体の対象領域を壁体側から押さえることができるため、扉体が壁体側に膨張して、扉体と壁体との隙間が大きくなることを抑制することができる。また、裏中桟自体にも熱による膨張が生じるが、裏中桟と対象枠部とが互いに固定されている一方、裏側係合機構によって裏中桟の非対象枠部に対する幅方向の相対移動が許容される構成のため、裏中桟が火災時の熱により膨張した場合であっても、当該膨張を幅方向に逃がすことができ、裏中桟が扉体から離れる側に湾曲して扉体との隙間が拡大しないようにすることができる。従って、裏中桟が膨張することによる扉体の押さえ機能の低下を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本開示に係る技術は、開口部を有する壁体に設けられたスライド式の防火扉に利用することができる。
【符号の説明】
【0093】
1:防火扉
2:壁体
3:開口部
4:扉体
5:第一領域
6:第二領域
10:外枠
11:第一枠部
12:第二枠部
F1:第一対向面
F2:第二対向面
20:中桟
30:係合機構
32:挿通孔
34:包囲部
40:裏中桟
50:裏側係合機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9