IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マックス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-打ち込み工具 図1
  • 特許-打ち込み工具 図2
  • 特許-打ち込み工具 図3
  • 特許-打ち込み工具 図4
  • 特許-打ち込み工具 図5
  • 特許-打ち込み工具 図6
  • 特許-打ち込み工具 図7
  • 特許-打ち込み工具 図8
  • 特許-打ち込み工具 図9
  • 特許-打ち込み工具 図10
  • 特許-打ち込み工具 図11
  • 特許-打ち込み工具 図12
  • 特許-打ち込み工具 図13
  • 特許-打ち込み工具 図14
  • 特許-打ち込み工具 図15
  • 特許-打ち込み工具 図16
  • 特許-打ち込み工具 図17
  • 特許-打ち込み工具 図18
  • 特許-打ち込み工具 図19
  • 特許-打ち込み工具 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】打ち込み工具
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/48 20060101AFI20230208BHJP
   F16F 9/19 20060101ALI20230208BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20230208BHJP
   B25C 7/00 20060101ALI20230208BHJP
   B25C 1/04 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
F16F9/48
F16F9/19
F16F9/32 J
B25C7/00 Z
B25C1/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020503597
(86)(22)【出願日】2019-02-27
(86)【国際出願番号】 JP2019007712
(87)【国際公開番号】W WO2019168075
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2018036896
(32)【優先日】2018-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏司
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-175647(JP,U)
【文献】実開昭57-164335(JP,U)
【文献】特開平08-276375(JP,A)
【文献】特開平10-156753(JP,A)
【文献】特開2016-179526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/48
F16F 9/19
F16F 9/32
B25C 7/00
B25C 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノーズ部に供給されたファスナーを打ち込む打込機構と、
前記打込機構の作動の有無を切り替えるコンタクトレバーと、
前記コンタクトレバーの移動速度を制御する流体ダンパと、を備え、
前記液体ダンパは、
流体が充填されるシリンダ筒部と、
前記シリンダ筒部の内部を移動可能に設けられ、流体による抵抗で移動速度が制御されるピストンと、
前記ピストンの位置に応じて伸縮し、伸縮量に応じた力を前記ピストンに作用させる付勢部材を備え、
前記ピストンの位置に応じて変化する、前記付勢部材から前記ピストンに作用する力の変化に応じて、前記ピストンが移動する際の流体による抵抗を変化させる
打ち込み工具
【請求項2】
前記付勢部材の伸縮量に応じて前記付勢部材から前記ピストンに作用する力が変化し、前記ピストンが、前記付勢部材から作用する力が大きな位置から小さな位置に移動すると、前記ピストンが移動する際の流体による抵抗を減少させる
請求項1に記載の打ち込み工具
【請求項3】
流体が通る流路の面積を変化させることによって、前記ピストンが移動する際の流体による抵抗を変化させる
請求項1または請求項2に記載の打ち込み工具
【請求項4】
前記付勢部材から作用する力で移動する前記ピストンの移動範囲の終端位置に合わせて、流体が通る流路の面積を拡大する流路拡張部を備えた
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の打ち込み工具
【請求項5】
ノーズ部に供給されたファスナーを打ち込む打込機構と、
前記打込機構を作動させる一の操作を受けるトリガと、
往復移動可能に設けられ、前記打込機構を作動させる他の操作を受けるコンタクトアームと、
前記トリガ及び前記コンタクトアームの動作で作動可能に設けられ、前記打込機構の作動の有無を切り替えるコンタクトレバーと、
前記コンタクトレバーの移動速度を制御する流体ダンパと、を備える打込み工具であって、
前記流体ダンパは、
流体が充填されるシリンダ筒部と、
前記シリンダ筒部の内部を移動可能に設けられ、流体による抵抗で移動速度が制御されるピストンと、
前記ピストンの位置に応じて伸縮し、伸縮量に応じた力を前記ピストンに作用させる付勢部材を備え、
前記ピストンの位置に応じて変化する、前記付勢部材から前記ピストンに作用する力の変化に応じて、前記ピストンが移動する際の流体による抵抗を変化させる
打込み工具。
【請求項6】
前記コンタクトレバーの前記コンタクトアームによる作動の有無を切り替える規制部を更に備え、
前記規制部は、前記コンタクトレバーの位置を、前記コンタクトレバーを前記コンタクトアームで作動させることが可能な作動待機位置に規制する規制部材と、前記流体ダンパとを備え、
前記流体ダンパは、前記規制部材を作動させる移動部材の移動速度を制御する
請求項5に記載の打込み工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の抵抗で作動対称物の移動速度を制御して機械的な計時を可能とした流体ダンパを使用した打込み工具に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮空気等の流体を動力源として打込機構で打込ピストンを作動させ、打込ピストンに結合したドライバを駆動してノーズに供給された釘等のファスナーを打ち込むようにした釘打機と称す打込み工具が知られている。このような釘打機では、ハンドルに設けられたトリガを引く一の操作と、ノーズの先端に突出させて往復移動可能に設けられたコンタクトアームを被打込材へ押し付ける他の操作の2つの部材の操作により打込機構を作動させて、釘を打ち込むように構成されている。
【0003】
以下の説明で、一の操作でトリガが引かれた状態をトリガのON、一の操作が解除されてトリガが引かれていない状態をトリガのOFFと称す。また、他の操作でコンタクトアームが押し付けられた状態をコンタクトアームのON、他の操作が解除されてコンタクトアームが押し付けられていない状態をコンタクトアームのOFFと称す。
【0004】
釘打機では、例えば、コンタクトアームをONとした後、コンタクトアームをONとした状態でトリガをONとすることで打込機構が作動し、釘の打ち込みが行われる。
【0005】
釘の打ち込み後、トリガ及びコンタクトアームをOFFにし、上述したようにトリガ及びコンタクトアームを再びONとすることで打込機構が作動し、次の釘の打ち込みが行われる。このように、釘の打込み毎に、トリガ及びコンタクトアームをOFFにした後、トリガ及びコンタクトアームをONにすると、次の釘の打ち込みが行われる動作を単発打ちモードと称す。
【0006】
これに対し、釘の打ち込み後、トリガをONの状態としたままコンタクトアームをOFFにし、トリガをONの状態としたままコンタクトアームを再びONとすることで打込機構が作動し、次の釘の打ち込みが行われるようにした技術も提案されている。このように、トリガをONの状態としたままコンタクトアームのONとOFFを繰り返すことで、連続的な釘の打ち込みが行われる動作を連続打ちモードと称す。
【0007】
連続打ちモードでは、釘の打ち込み後、トリガを引いたままでコンタクトアームを被打込材へ押し付ける毎に連続的に釘の打込みが行えるので、素早い作業に向いている。一方、単発打ちモードでは、釘の打ち込み後、トリガ及びコンタクトアームの操作を解除し、再びコンタクトアームを被打込材へ押し付けてからトリガを引く操作をすることで次の釘の打ち込みが行われるので、不用意な動作を規制する効果はあるが、素早い作業には不向きである。そこで、コンタクトアームを被打込材に押し付け、次にトリガを引く操作をすることで1回目の釘の打ち込みを行った後、一定時間はトリガの操作を解除することなく、コンタクトアームを被打込材へ押し付ける動作のみで釘の連続打ち動作を可能とした技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】日本国特開2016-179526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
トリガの操作を解除することなく、コンタクトアームを被打込材へ押し付ける動作のみで釘等の連続打ちを行えるようにした構成では、一定時間連続打ち動作を可能とする制御を、電気的なタイマを使用して行うことで、計時を安定して行うことができる。しかし、圧縮空気で駆動される釘打機は、電気の供給源を備えていない。このため、電気的なタイマを使用するためには、電源及び回路が必要となる。
【0010】
また、トリガに機械的な計時機構を組み込む構成も考えられる。しかし、限られたスペースで機械的な計時機構を組み込む必要があり、計時を安定して行うことが困難である。計時を安定して行うことができないと、連続打ち動作が可能となる時間が一定せず、操作感が悪化する。
【0011】
機械的な計時機構としては、各種ダンパ、例えばオイルダンパの応用が考えられる。オイルダンパは、オイルの抵抗によりピストンの移動に負荷を与える構成で、バネの力でピストンを移動させる構成であれば、バネの力によるピストンの移動速度を減速して一定に保つことで、移動に要する時間を計時に利用することができる。
【0012】
このようなオイルダンパでは、バネがピストンの位置に応じて伸縮し、伸縮量に応じた力がピストンに掛かる。このため、バネによりピストンに掛かる力が弱く、オイルの粘性抵抗を上回る力をピストンに掛けられない状態では、ピストンを等速で移動させることができなくなる。このようなオイルダンパを計時機構として適用した打込み工具は、計時を安定して行うことが困難で、連続打ち動作が可能となる時間が一定しない。
【0013】
一方、ピストンのストロークに対して長いバネを使用することで、ピストンに掛かる力の変化を抑制することが考えられるが、バネの長さが長くなると、オイルダンパが大型化する。そして、このようなオイルダンパを計時機構として適用した打込み工具はやはり大型化する。
【0014】
本発明は、このような課題を解決するためなされたもので、バネからピストンに掛かる力の変化に応じて、ピストンの移動速度を適切に制御できるようにした流体ダンパを用いることで、コンタクトアームの動作による連続打ち動作の実行の有無の切り替えを、機械的な構成で安定して行えるようにした打込み工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決するため、本発明は、ノーズ部に供給されたファスナーを打ち込む打込機構と、打込機構の作動の有無を切り替えるコンタクトレバーと、コンタクトレバーの移動速度を制御する流体ダンパと、を備え、液体ダンパは、流体が充填されるシリンダ筒部と、シリンダ筒部の内部を移動可能に設けられ、流体による抵抗で移動速度が制御されるピストンと、ピストンの位置に応じて伸縮し、伸縮量に応じた力をピストンに作用させる付勢部材を備え、ピストンの位置に応じて変化する、付勢部材からピストンに作用する力の変化に応じて、ピストンが移動する際の流体による抵抗を変化させる打ち込み工具である。
【0016】
本発明では、ピストンの位置に応じて付勢部材からピストンに作用する力が変化する。この付勢部材からピストンに作用する力の変化に応じて、ピストンが移動する際の流体による抵抗を変化させることで、バネからピストンに掛かる力に適した負荷をピストンに与えることができる。
【0018】
更に、本発明は、ノーズ部に供給されたファスナーを打ち込む打込機構と、打込機構を作動させる一の操作を受けるトリガと、往復移動可能に設けられ、打込機構を作動させる他の操作を受けるコンタクトアームと、トリガ及びコンタクトアームの動作で作動可能に設けられ、打込機構の作動の有無を切り替えるコンタクトレバーと、前記コンタクトレバーの移動速度を制御する流体ダンパと、を備えた打込み工具であって、流体ダンパは、流体が充填されるシリンダ筒部と、シリンダ筒部の内部を移動可能に設けられ、流体による抵抗で移動速度が制御されるピストンと、ピストンの位置に応じて伸縮し、伸縮量に応じた力をピストンに作用させる付勢部材を備え、ピストンの位置に応じて変化する、前記付勢部材から前記ピストンに作用する力の変化に応じて、ピストンが移動する際の流体による抵抗を変化させる打込み工具である。
【0019】
本発明では、流体ダンパは、ピストンの位置に応じて付勢部材からピストンに作用する力が変化する。この付勢部材からピストンに作用する力の変化に応じて、ピストンが移動する際の流体による抵抗を変化させることで、付勢部材からピストンに作用する力に適した負荷をピストンに与えることができる。これにより、付勢部材の力で移動部材を移動させる構成で、流体の抵抗による負荷で移動部材の移動速度が適切に制御される。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、流体ダンパ、付勢部材からピストンに作用する力に適した負荷をピストンに与えることができるので、付勢部材からピストンに作用する力の影響を排除して、ピストンの移動速度を適切に制御できる。
【0021】
本発明の打込み工具では、上述した流体ダンパを備えることで、機械的な計時機構で安定した計時が可能となり、打込機構の作動の有無を、所定のタイミングで切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1の実施の形態の釘打機の一例を示す要部構成図である。
図2】第1の実施の形態の釘打機の一例を示す全体構成図である。
図3】第1の実施の形態のオイルダンパを示す断面図である。
図4】第1の実施の形態の釘打機の動作の一例を示す説明図である。
図5】第1の実施の形態の釘打機の動作の一例を示す説明図である。
図6】第1の実施の形態の釘打機の動作の一例を示す説明図である。
図7】第1の実施の形態の釘打機の動作の一例を示す説明図である。
図8】第1の実施の形態の釘打機の動作の一例を示す説明図である。
図9】第1の実施の形態の釘打機の動作の一例を示す説明図である。
図10】第1の実施の形態のオイルダンパの動作の一例を示す説明図である。
図11】第1の実施の形態のオイルダンパの動作の一例を示す説明図である。
図12】第1の実施の形態のオイルダンパの動作の一例を示す説明図である。
図13】第1の実施の形態のオイルダンパの動作の一例を示す説明図である。
図14】第1の実施の形態のオイルダンパの動作の一例を示す説明図である。
図15】第2の実施の形態のオイルダンパを示す断面図である。
図16】第2の実施の形態のオイルダンパの動作の一例を示す説明図である。
図17】第2の実施の形態のオイルダンパの動作の一例を示す説明図である。
図18】第2の実施の形態のオイルダンパの動作の一例を示す説明図である。
図19】第2の実施の形態のオイルダンパの動作の一例を示す説明図である。
図20】第2の実施の形態のオイルダンパの動作の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の流体ダンパの一例であるオイルダンパ及び本発明の打込み工具の一例である釘打機の実施の形態について説明する。
【0024】
<第1の実施の形態の釘打機の構成例>
図1は、第1の実施の形態の釘打機の一例を示す要部構成図、図2は、第1の実施の形態の釘打機の一例を示す全体構成図である。
【0025】
第1の実施の形態の釘打機1Aは、動力源である流体としての圧縮空気で作動して打撃動作を行う打込シリンダ2と、図示しない外部のエアコンプレッサから供給された圧縮空気が貯留されるエアチャンバ3を備える。釘打機1Aは、一の方向に延伸する形状のハウジング10の内部に打込シリンダ2が設けられ、ハウジング10から他の方向に延伸するハンドル11の内部にエアチャンバ3が設けられる。また、釘打機1Aは、ハウジング10の内部で打込シリンダ2の下部の周囲に、ブローバックチャンバ31が設けられる。
【0026】
打込シリンダ2は打込機構の一例で、図示しない釘等を打ち出すドライバ20と、ドライバ20が設けられた打込ピストン21を備え、打込ピストン21が摺動可能に設けられる。打込シリンダ2は、打込ピストン21が圧縮空気で押圧されることで打込ピストン21が移動し、ドライバ20を駆動する。
【0027】
エアチャンバ3は、ハンドル11の端部に設けたエアプラグ30を介して、エアコンプレッサ等の圧縮空気源から圧縮空気が供給される。ブローバックチャンバ31は、打込動作後の打込ピストン21を初期位置にリターン駆動させるため、圧縮空気が供給される。
【0028】
釘打機1Aは、ハウジング10の一方の端部に、ドライバ20が入るノーズ12を備えると共に、ノーズ12に図示しない釘を供給するマガジン13を備える。ノーズ12は、ドライバ20の移動方向に沿って延伸する。なお、釘打機1Aの使用形態を考慮して、ノーズ12を備える側を下方向とする。
【0029】
釘打機1Aは、エアチャンバ3内の圧縮空気の流入・流出を規制して打込ピストン21を往復移動させるメインバルブ4と、メインバルブ4を作動させる起動バルブ5を備える。メインバルブ4は、エアチャンバ3から打込シリンダ2内への圧縮空気の流入、打込シリンダ2内から外部への圧縮空気の排出を切り替えることで、打込ピストン21を往復移動させる。起動バルブ5は、往復移動可能に設けられるバルブステム50を備え、バルブステム50が所定量移動することで流路40を開き、メインバルブ4を作動させる。
【0030】
釘打機1Aは、起動バルブ5を作動させる一の操作を受けるトリガ6と、釘が打たれる被打込材に押し付けられる他の操作を受けて移動するコンタクトアーム8と、一の操作を受けたトリガ6の動作及び他の操作を受けたコンタクトアーム8の動作で作動可能に設けられ、起動バルブ5の作動の有無を切り替えるコンタクトレバー7を備える。また、釘打機1Aは、コンタクトレバー7の移動、移動速度または移動量を所定の時間の間規制して、コンタクトアーム8によるコンタクトレバー7の作動の有無を、本例では、コンタクトレバー7とコンタクトアーム8との係止の有無で切り替える規制部9を備える。
【0031】
トリガ6は、ノーズ12が設けられる側であるハンドル11の一の側に設けられる。トリガ6は、ハウジング10に近い側である一方の端部側が軸60により回転可能に支持される。また、トリガ6は、軸60で支持される側と反対側、すなわち、ハウジング10から遠い側である他方の端部側が、軸60を支点とした回転動作で、ノーズ12が備えられている側に移動する方向にバネ61で付勢される。
【0032】
トリガ6は、軸60を支点とした回転動作による移動範囲が、本例では、ハウジング10及びハンドル11に形成された突き当て部にトリガ6が突き当たることで規制される。
【0033】
コンタクトレバー7は、一方の端部にコンタクトアーム8が係止可能な係止部70を備え、他方の端部が軸71によりトリガ6に回転可能に支持される。また、係止部70と軸71の間に、起動バルブ5のバルブステム50を押圧可能な押圧部72を備える。更に、コンタクトレバー7は、軸71で支持される側と反対側、すなわち、係止部70が備えられる一方の端部側が、軸71を支点とした回転動作で、ノーズ12が備えられている側に移動する方向に、捩じりコイルばね等のバネ73で付勢される。
【0034】
コンタクトアーム8は、ノーズ12の延伸方向に沿って移動可能に設けられ、ノーズ12の先端側に、被打込材に突き当てられる突き当て部80を備える。また、コンタクトアーム8は、コンタクトレバー7を作動させる第1の押圧部81と、規制部9を作動させる第2の押圧部82を備える。コンタクトアーム8は、バネ83でノーズ12の先端側から突出する方向に付勢される。
【0035】
トリガ6は、操作が解除された状態では、バネ61に付勢されて、軸60を支点とした回転動作で初期位置に移動する。トリガ6は、引く操作により、軸60を支点とした回転動作で、初期位置から、コンタクトレバー7で起動バルブ5を作動させることが可能な操作位置まで移動する。
【0036】
コンタクトレバー7は、コンタクトアーム8に押されることで、軸71を支点とした回転動作で、初期位置からトリガ6の位置に応じて打込シリンダ2を作動させることが可能な位置、本例では、バルブステム50を押して起動バルブ5を作動させることが可能な作動可能位置まで移動する。
【0037】
コンタクトアーム8は、被打込材に突き当て部80が突き当てられて押されることで、初期位置から、第1の押圧部81でコンタクトレバー7を作動させ、第2の押圧部82で規制部9を作動させる作動位置まで移動する。
【0038】
コンタクトアーム8は、初期位置から作動位置に移動する動作で、第1の押圧部81がコンタクトレバー7の係止部70と係止すると、コンタクトアーム8の動作でコンタクトレバー7を作動させ、コンタクトレバー7を初期位置から作動可能位置に移動させる。また、コンタクトアーム8は、トリガ6の位置及びコンタクトレバー7の位置に応じて、コンタクトレバー7の係止部70とコンタクトアーム8の第1の押圧部81の係止の有無が切り替えられる。
【0039】
すなわち、コンタクトレバー7は、トリガ6が操作されると、軸60を支点としたトリガ6の回転動作で、トリガ6と共に移動する。これにより、コンタクトレバー7の初期位置及び作動可能位置は、トリガ6の位置に応じて変化する相対的な位置であり、コンタクトレバー7の係止部70及び押圧部72の位置は、トリガ6が初期位置にあるか操作位置にあるかに応じて変化する。
【0040】
トリガ6及びコンタクトレバー7が初期位置に移動した状態では、コンタクトレバー7の押圧部72が起動バルブ5のバルブステム50に接しない。また、コンタクトレバー7が初期位置に移動した状態では、トリガ6が操作位置に移動しても、コンタクトレバー7の押圧部72が起動バルブ5のバルブステム50に接しない。
【0041】
これに対し、トリガ6が初期位置に移動している状態で、コンタクトアーム8が作動位置に移動すると、コンタクトアーム8の第1の押圧部81がコンタクトレバー7の係止部70と係止し、コンタクトレバー7が作動可能位置に移動する。これにより、トリガ6が操作位置に移動すると、コンタクトレバー7の押圧部72が起動バルブ5のバルブステム50を押し、コンタクトレバー7で起動バルブ5を作動させることが可能となる。
【0042】
一方、コンタクトアーム8が初期位置に移動している状態で、トリガ6が操作位置に移動すると、コンタクトアーム8が移動しても、第1の押圧部81がコンタクトレバー7の係止部70と係止できず、トリガ6が操作位置に移動しても、コンタクトレバー7の押圧部72が起動バルブ5のバルブステム50を押すことができない。
【0043】
これにより、トリガ6を先に操作し、次にコンタクトアーム8を操作しても、起動バルブ5を作動させることができず、コンタクトアーム8を被打込材に押し付ける操作による連続打ちができない構成としていた。本実施の形態では、規制部9を備えることで、コンタクトアーム8を先に操作し、次にトリガ6を操作すると、所定時間、コンタクトアーム8の操作の有無で、連続打ちを可能としている。
【0044】
規制部9は、コンタクトレバー7の位置を、コンタクトアーム8で作動させることが可能な作動待機位置に規制する規制部材90を備える。また、規制部9は、コンタクトレバー7が作動待機位置にある状態を所定時間保持するオイルダンパ91を備える。
【0045】
コンタクトレバー7の作動待機位置は、コンタクトレバー7がコンタクトアーム8と係止可能な位置または範囲であり、この位置または範囲にコンタクトレバー7がある間は、コンタクトアーム8でコンタクトレバー7を作動させることが可能である。以下の説明では、作動待機位置を係止可能位置と称す。
【0046】
規制部材90は、コンタクトアーム8の移動方向に沿って移動可能に設けられ、移動方向に沿った一方の端部に、コンタクトレバー7を押圧する押圧部90aを備える。規制部材90は、押圧部90aがコンタクトアーム8の第1の押圧部81と隣接して設けられる。また、規制部材90は、オイルダンパ91と係止可能な被係止部90bを備える。
【0047】
規制部材90は、バネ90cにより押圧部90aがコンタクトレバー7に近づく方向に付勢される。
【0048】
そして、規制部材90は、押圧部90aがコンタクトレバー7と接しない初期位置から、コンタクトレバー7の位置を、コンタクトレバー7とコンタクトアーム8が係止可能な係止可能位置に規制する復帰規制位置まで移動する。規制部材90の復帰規制位置は、規制部材90がバネ90cで押されて移動する動作で、コンタクトアーム8が初期位置に移動した状態での第1の押圧部81より押圧部90aが突出し、押圧部90aがコンタクトレバー7の係止部70と接することが可能とした位置である。
【0049】
オイルダンパ91は、規制部材90を移動させる移動部材92を備え、移動部材92の移動、移動速度または移動量を制御する。オイルダンパ91は、本例では、移動部材92の移動速度を制御する。移動部材92は、規制部材90の移動方向に沿って移動可能に設けられ、コンタクトアーム8の第2の押圧部82に押圧される被押圧部92aと、規制部材90の被係止部90bに係止する係止部92bを備える。
【0050】
オイルダンパ91は、初期位置から作動位置に移動するコンタクトアーム8の第2の押圧部82の移動経路に、移動部材92の被押圧部92aが設けられる。移動部材92は、規制部材90を初期位置に移動させる初期位置から、コンタクトアーム8の操作が解除されて係止可能位置に移動したコンタクトレバー7の移動を規制する時間、本例では、復帰規制位置に移動した規制部材90を初期位置に移動させるまでの時間の計時を開始する計時開始位置まで移動する。
【0051】
規制部材90は、移動部材92の移動による係止部92bの移動経路に被係止部90bが設けられる。オイルダンパ91は、移動部材92が初期位置から計時開始位置まで移動する動作で、移動部材92の係止部92bと規制部材90の被係止部90bの係止が解除される。これにより、規制部材90がバネ90cで押されて、初期位置から復帰規制位置まで移動する。
【0052】
また、オイルダンパ91は、移動部材92が計時開始位置から初期位置まで移動する動作で、移動部材92の係止部92bと規制部材90の被係止部90bが係止される。これにより、規制部材90が復帰規制位置から初期位置まで移動する。
【0053】
<第1の実施の形態のオイルダンパの構成例>
図3は、第1の実施の形態のオイルダンパを示す断面図である。第1の実施の形態のオイルダンパ91は、オイルが充填されるシリンダ筒部93aと、シリンダ筒部93aの内部を移動可能に設けられ、オイルの粘性等による抵抗で移動速度が制御されるピストン93bと、ピストン93bの動きを移動部材92に伝達するピストン軸部93cを備える。
【0054】
シリンダ筒部93aは、略円筒形状でオイルが充填される空間が設けられる。ピストン93bは、シリンダ筒部93aの内周面の形状に合わせた円形で、オイルが通過する孔部93dが、表裏を貫通する形態で設けられる。本例では、複数の孔部93dが、ピストン93bの円周方向に沿って設けられる。ピストン軸部93cは、一方の端部にピストン93bが取り付けられ、シリンダ筒部93aから突出した他方の端部に移動部材92が連結される。
【0055】
オイルダンパ91は、ピストン93bが移動する方向に応じて孔部93dを開閉することで、ピストン93bが移動する方向に応じて負荷を切り替える逆止弁93eを備える。逆止弁93eは、ピストン93bにおいてピストン軸部93cが突出する側であるピストン93bの一の面に設けられ、孔部93dを塞ぐことが可能な形状を有する。逆止弁93eは、ピストン93bの移動方向に沿って、ピストン93b対して離接する方向に移動可能で、弁開閉バネ93fでピストン93bに押し付けられる方向に付勢される。
【0056】
移動部材92が初期位置から計時開始位置へ移動する方向へピストン93bが移動する動作では、ピストン93bの他の面から一の面側へオイルが流れる。これにより、孔部93dを通るオイルにより逆止弁93eが押されることで、弁開閉バネ93fを圧縮しながら逆止弁93eがピストン93bの一の面から離れ、孔部93dが開かれる。
【0057】
これに対し、移動部材92が計時開始位置から初期位置へ移動する方向へピストン93bが移動する動作では、ピストン93bの一の面から他の面側へオイルが流れる。これにより、逆止弁93eが弁開閉バネ93f及びオイルに押されることでピストン93bに押し付けられ、逆止弁93eで孔部93dが閉じられる。
【0058】
このように、逆止弁93eによりピストン93bの孔部93dを開閉することで、ピストン93bが移動する際にオイルが通る流路の面積が変化する。孔部93dが開くと、ピストン93bが移動する際にオイルが通る流路の面積が大きくなり、オイルが流れる際の抵抗が減少する。これに対し、孔部93dが閉じられると、ピストン93bが移動する際にオイルが通る流路の面積が小さくなり、オイルが流れる際の抵抗が増加する。
【0059】
オイルダンパ91は、ピストン93bの位置に応じて伸縮し、伸縮量に応じた力をピストン93bに作用させるバネ93gを備える。バネ93gは付勢部材の一例で、コイルバネで構成され、シリンダ筒部93aの内部に設けたバネ押さえ93hと、ピストン93bの他の面の間に設けられる。
【0060】
バネ93gは、移動部材92が初期位置に移動した状態で、所定量圧縮された状態であり、ピストン軸部93cがシリンダ筒部93aから突出する方向にピストン93bを付勢する。ピストン軸部93cがシリンダ筒部93aから突出する方向は、移動部材92が計時開始位置から初期位置へ移動する方向である。
【0061】
移動部材92が初期位置から計時開始位置へ移動する方向へピストン93bが移動する動作では、バネ押さえ93hとピストン93bの間でバネ93gが圧縮される。圧縮されたバネ93gが延びる力で、移動部材92が計時開始位置から初期位置へ移動する方向へピストン93bが押される。
【0062】
オイルダンパ91は、ピストン93bが移動する際の負荷を低減する第1のバイパス流路93i1と第2のバイパス流路93i2を備える。第1のバイパス流路93i1は流路拡張部の一例で、バネ93gから作用する力で移動するピストン93bの移動範囲の終端位置である、移動部材92が初期位置の近傍に移動した状態でのピストン93bの位置に対向して設けられる。第1のバイパス流路93i1は、シリンダ筒部93aの内周面に凹部を設けて構成される。シリンダ筒部93aは、第1のバイパス流路93i1が設けられている部位の内径が、第1のバイパス流路93i1が設けられていない部位の内径より大きく構成される。
【0063】
これにより、ピストン93bが第1のバイパス流路93i1と対向した状態では、ピストン93bが第1のバイパス流路93i1が設けられていない部位でシリンダ筒部93aの内周面と対向した場合と比較して、ピストン93bの外周面とシリンダ筒部93aの内周面との間隔が広くなる。
【0064】
従って、移動部材92が初期位置と計時開始位置の間に移動し、ピストン93bが第1のバイパス流路93i1と対向しない位置に移動すると、ピストン93bが移動する際にオイルが通る流路の面積が小さくなる。よって、ピストン93bが移動する動作で、ピストン93bの外周面とシリンダ筒部93aの内周面との間にオイルが流れる際の抵抗が増加し、ピストン93bが移動する際の負荷が増加する。
【0065】
これに対し、移動部材92が初期位置の近傍に移動することで、ピストン93bが第1のバイパス流路93i1と対向する位置に移動すると、ピストン93bが移動する際にオイルが通る流路の面積が大きくなる。よって、ピストン93bが移動する動作で、ピストン93bの外周面とシリンダ筒部93aの内周面との間にオイルが流れる際の抵抗が低減され、ピストン93bが移動する際の負荷が低減される。
【0066】
第2のバイパス流路93i2は流路拡張部の一例で、移動部材92が計時開始位置の近傍に移動した状態でのピストン93bの位置に対向して設けられる。第2のバイパス流路93i2は、シリンダ筒部93aの内周面に凹部を設けて構成される。シリンダ筒部93aは、第2のバイパス流路93i2が設けられている部位の内径が、第2のバイパス流路93i2が設けられていない部位の内径より大きく構成される。
【0067】
これにより、ピストン93bが第2のバイパス流路93i2と対向した状態では、ピストン93bが第2のバイパス流路93i2が設けられていない部位でシリンダ筒部93aの内周面と対向した場合と比較して、ピストン93bの外周面とシリンダ筒部93aの内周面との間隔が広くなる。
【0068】
従って、移動部材92が計時開始位置の近傍に移動することで、ピストン93bが第2のバイパス流路93i2と対向する位置に移動すると、ピストン93bが移動する際にオイルが通る流路の面積が大きくなる。よって、ピストン93bが移動する動作で、ピストン93bの外周面とシリンダ筒部93aの内周面との間にオイルが流れる際の抵抗が低減され、ピストン93bが移動する際の負荷が低減される。
【0069】
オイルダンパ91は、ピストン93bの位置によらず、シリンダ筒部93a内の体積を略一定に保つダイアフラム93jを備える。ダイアフラム93jは、弾性変形可能な部材で構成され、シリンダ筒部93aの他方の端部側に設けられる。
【0070】
オイルダンパ91は、ピストン93bの位置に応じてシリンダ筒部93a内に突出するピストン軸部93cの長さが変化することで、ピストン軸部93cの体積分、シリンダ筒部93a内の体積が変化する。そこで、シリンダ筒部93a内に突出するピストン軸部93cの長さに応じてダイアフラム93jが変形することで、シリンダ筒部93a内の体積を略一定に保たれ、オイルが圧縮されることが抑制される。
【0071】
以上の構成のオイルダンパ91は、バネ93gが延びる力で移動部材92を計時開始位置から初期位置まで移動させると共に、シリンダ筒部93a内をピストン93bが移動する際のオイルの粘性による負荷で移動部材92の移動速度を制御する。また、バネ93gが延びる力で移動部材92が初期位置の近傍まで移動すると、ピストン93bが第1のバイパス流路93i1と対向する位置に移動し、ピストン93bの外周面とシリンダ筒部93aの内周面との間にオイルが流れる際の抵抗が低減され、移動部材92が初期位置へ移動する際にピストン93bに掛かる負荷が低減される。
【0072】
これにより、移動部材92が計時開始位置から初期位置まで移動する時間が制御され、規制部材90が復帰規制位置から初期位置に移動する時間が制御される。従って、コンタクトアーム8が初期位置へ移動する動作で係止可能位置に移動したコンタクトレバー7は、初期位置に戻るまでの時間が、規制部材90及び移動部材92の動作で制御される。
【0073】
<第1の実施の形態の釘打機の動作例>
図4図9は、第1の実施の形態の釘打機の動作の一例を示す説明図、図10図14は、第1の実施の形態のオイルダンパの動作の一例を示す説明図であり、以下に、各図を参照して、第1の実施の形態の釘打機1Aの動作について説明する。
【0074】
初期状態では、図1に示すように、トリガ6が引かれておらず、初期位置にあり、また、コンタクトアーム8が被打込材に押しけられておらず、初期位置にある。このため、コンタクトレバー7、規制部材90及び移動部材92もそれぞれ初期位置にある。
【0075】
トリガ6が初期位置、コンタクトレバー7が初期位置にある初期状態では、コンタクトレバー7の係止部70が、コンタクトアーム8の第1の押圧部81の移動経路に位置する。
【0076】
図1に示す初期状態から、コンタクトアーム8が被打込材に押し付けられて、当該コンタクトアーム8が初期位置から作動位置に移動すると、図4に示すように、コンタクトアーム8の第1の押圧部81が、コンタクトレバー7の係止部70を押す。これにより、コンタクトレバー7が、軸71を支点とした回転動作で、初期位置から起動バルブ5のバルブステム50を押して起動バルブ5を作動させることが可能な作動可能位置に移動する。なお、コンタクトレバー7が作動可能位置に移動しても、トリガ6が操作位置に移動しなければ、コンタクトレバー7でバルブステム50は押されない。
【0077】
また、コンタクトアーム8が作動位置に移動すると、コンタクトアーム8の第2の押圧部82が、オイルダンパ91の移動部材92の被押圧部92aを押す。これにより、オイルダンパ91の移動部材92が初期位置から計時開始位置に移動する。
【0078】
更に、移動部材92が計時開始位置に移動すると、移動部材92の係止部92bと規制部材90の被係止部90bの係止が解除され、規制部材90がバネ90cで押されて、初期位置から復帰規制位置まで移動する。
【0079】
また、移動部材92が初期位置に移動していると、オイルダンパ91では、図10に示すように、ピストン93bが第1のバイパス流路93i1に対向する。これにより、矢印Uに示すように、移動部材92が初期位置から計時開始位置へ移動する方向へピストン93bが移動する動作で、移動部材92が初期位置近傍に位置している間は、ピストン93bの外周面とシリンダ筒部93aの内周面との間に、矢印O1で示すようにオイルが流れる際の抵抗が低減され、ピストン93bが移動する際の負荷が低減される。
【0080】
更に、移動部材92が初期位置から計時開始位置へ移動する方向へピストン93bが移動する動作で、ピストン93bの他の面から一の面側へオイルが流れる。
【0081】
これにより、孔部93dを通るオイルにより逆止弁93eが押されることで、弁開閉バネ93fを圧縮しながら逆止弁93eがピストン93bの一の面から離れ、孔部93dが開かれる。
【0082】
移動部材92が初期位置から計時開始位置に移動する動作で、図11に示すように、ピストン93bが第1のバイパス流路93i1に対向した位置を通過すると、ピストン93bの外周面とシリンダ筒部93aの内周面との間隔が狭くなる。一方、ピストン93bの孔部93dが開くことで、矢印O2に示すように、オイルが孔部93dを通り、ピストン93bの他の面から一の面側へ流れる。これにより、ピストン93bが移動する際の負荷が低減される。
【0083】
ピストン93bは、移動部材92を介してコンタクトアーム8に押されるので、ピストン93bが移動する際の負荷が低減されることで、コンタクトアーム8の操作荷重が低減される。
【0084】
また、移動部材92が計時開始位置の近傍に移動すると、図12に示すように、ピストン93bが第2のバイパス流路93i2に対向する。これにより、移動部材92が初期位置から計時開始位置へ移動する方向へピストン93bが移動する動作で、ピストン93bの外周面とシリンダ筒部93aの内周面との間にオイルが流れる際の抵抗が低減され、ピストン93bが移動する際の負荷が低減される。
【0085】
移動部材92が計時開始位置の近傍まで移動した状態では、バネ93gの圧縮量が多くなり、ピストン93bを戻そうとする反力が大きくなる。このような状態で、ピストン93bが移動する際の負荷が低減されることで、コンタクトアーム8の操作荷重が低減される。
【0086】
移動部材92が計時開始位置の近傍まで移動して停止すると、逆止弁93eが弁開閉バネ93fに押されることでピストン93bに押し付けられ、逆止弁93eで孔部93dが塞がれる。
【0087】
初期状態からコンタクトアーム8が被打込材に押し付けられて作動位置に移動した後、トリガ6が引かれて、当該トリガ6が初期位置から操作位置に移動すると、図5に示すように、作動可能位置にあるコンタクトレバー7の押圧部72が起動バルブ5のバルブステム50を押す。これにより、メインバルブ4が制御されて打込シリンダ2が圧縮空気で作動して、打込ピストン21が図示しないファスナー、本例では釘を打ち出す方向に移動し、ドライバ20で図示しない釘の打ち込み動作が行われる。また、打込シリンダ2内の空気の一部がブローバックチャンバ31に供給される。打ち込み動作後、ブローバックチャンバ31から打込シリンダ2に圧縮空気が供給され、ドライバ20を復帰させる方向に打込ピストン21が移動する。
【0088】
打ち込み動作後、トリガ6を引いた状態で操作位置としたまま、コンタクトアーム8を押し付ける力が解除されることで、図6に示すように、コンタクトアーム8がバネ83の力で作動位置から初期位置に移動する。
【0089】
コンタクトアーム8が初期位置に移動すると、第1の押圧部81によるコンタクトレバー7の押圧が解除され、コンタクトレバー7が、バネ73の力による軸71を支点とした回転動作で、作動可能位置から初期位置へ復帰する方向へ移動を開始する。
【0090】
復帰規制位置に移動している規制部材90は、押圧部90aがコンタクトレバー7の移動軌跡上に位置し、作動可能位置から初期位置へ復帰する方向へ移動するコンタクトレバー7の移動を規制する。
【0091】
これにより、コンタクトアーム8が初期位置に移動すると、コンタクトレバー7は、規制部材90の押圧部90aに接するまで移動し、係止可能位置で停止する。そして、係止可能位置に移動したコンタクトレバー7は、係止部70がコンタクトアーム8の第1の押圧部81の移動軌跡上に位置する。
【0092】
また、コンタクトアーム8が初期位置に移動すると、コンタクトアーム8の第2の押圧部82によるオイルダンパ91の移動部材92の押圧が解除されることで、オイルダンパ91では、図13に示すように、圧縮されたバネ93gが延びる力でピストン93bが押され、矢印Dに示すように、移動部材92が計時開始位置から初期位置へ復帰する方向へ移動を開始する。
【0093】
移動部材92が計時開始位置から初期位置へ移動する方向へピストン93bが移動する動作では、ピストン93bの一の面から他の面側へオイルが流れる。これにより、逆止弁93eが弁開閉バネ93f及びオイルに押されることでピストン93bに押し付けられ、逆止弁93eで孔部93dが塞がれた状態が維持される。
【0094】
また、移動部材92が計時開始位置から初期位置に移動する動作で、ピストン93bが第2のバイパス流路93i2に対向した位置を通過すると、ピストン93bの外周面とシリンダ筒部93aの内周面との間隔が狭くなる。
【0095】
これにより、移動部材92が計時開始位置から初期位置へ移動する方向へピストン93bが移動する動作で、オイルがピストン93bの孔部93dを通ることはできず、また、ピストン93bの外周面とシリンダ筒部93aの内周面との間にオイルが流れる際の抵抗が大きくなり、ピストン93bが移動する際の負荷が大きくなる。従って、バネ93gが延びる力で移動するピストン93bの移動速度が減速され、負荷の大きさに応じた一定の速度になる。
【0096】
このように、移動部材92は、バネ93gの力で計時開始位置から初期位置へ移動するが、移動部材92の移動速度がオイルダンパ91で制御される。これにより、図7に示すように、移動部材92が計時開始位置から初期位置へ移動するまでの時間が制御され、移動部材92の係止部92bと規制部材90の被係止部90bが非係止状態である間は、規制部材90は復帰規制位置で停止している。
【0097】
このため、移動部材92が計時開始位置から初期位置に移動する所定時間の間で、移動部材92の係止部92bと規制部材90の被係止部90bが非係止状態である間は、コンタクトレバー7は係止可能位置で停止し、係止部70がコンタクトアーム8の第1の押圧部81の移動軌跡上に位置する。
【0098】
これにより、トリガ6を引いた状態で操作位置としたまま、コンタクトアーム8が初期位置に移動した後、移動部材92が計時開始位置から初期位置に移動するまでの所定時間が経過するより前に、コンタクトアーム8が再度被打込材に押し付けられて、当該コンタクトアーム8が初期位置から作動位置に移動すると、コンタクトアーム8の第1の押圧部81が、コンタクトレバー7の係止部70を押すことが可能である。
【0099】
従って、トリガ6を引いた状態で操作位置としたまま、コンタクトアーム8を初期位置へ移動させた後、所定時間内に再度コンタクトアーム8を作動位置に移動させると、図5に示すように、コンタクトアーム8の第1の押圧部81でコンタクトレバー7の係止部70が押され、コンタクトレバー7が作動可能位置に移動して、押圧部72が起動バルブ5のバルブステム50を押す。
【0100】
よって、トリガ6を引いた状態で操作位置としたまま、所定時間の間にコンタクトアーム8を被打込材に押し付ける動作で、連続的な打ち込み動作が可能となる。
【0101】
これに対し、トリガ6を引いた状態で操作位置としたまま、コンタクトアーム8が初期位置に移動してから、所定の時間が経過すると、移動部材92がオイルダンパ91により初期位置まで移動する。
【0102】
移動部材92が初期位置の近傍に移動すると、図14に示すように、ピストン93bが第1のバイパス流路93i1に対向する。これにより、矢印Dに示すように、移動部材92が計時開始位置から初期位置へ移動する方向へピストン93bが移動する動作で、ピストン93bの外周面とシリンダ筒部93aの内周面との間に、矢印O3で示すようにオイルが流れる際の抵抗が低減され、ピストン93bが移動する際の負荷が低減される。
【0103】
移動部材92が初期位置の近傍まで移動した状態では、バネ93gの圧縮量が少なくなり、ピストン93bを戻そうとする反力が小さくなる。このような状態で、ピストン93bが移動する際の負荷が低減されることで、バネ93gが延びる力で確実に移動部材92を初期位置に移動させることができる。
【0104】
移動部材92が初期位置まで移動すると、図8に示すように、移動部材92の係止部92bと規制部材90の被係止部90bが係止される。これにより、オイルダンパ91により移動する移動部材92に押圧されて、規制部材90が復帰規制位置から初期位置まで移動する。
【0105】
規制部材90が初期位置に移動すると、コンタクトレバー7がバネ73による軸71を支点とした回転動作で、トリガ6が操作位置にある場合における係止可能位置から初期位置まで移動する。トリガ6を操作位置としたまま、コンタクトレバー7が初期位置に移動すると、コンタクトレバー7の係止部70が、コンタクトアーム8の第1の押圧部81の移動経路から退避する。
【0106】
これにより、コンタクトアーム8が初期位置に移動してから、トリガ6を引いた状態で操作位置としたまま、所定時間が経過すると、図9に示すように、コンタクトアーム8を被打込材に押し付ける動作で、コンタクトアーム8が作動位置に移動しても、コンタクトアーム8の第1の押圧部81がコンタクトレバー7の係止部70と接せず、コンタクトレバー7が押されない。
【0107】
よって、コンタクトレバー7で起動バルブ5が押されず、打ち込み動作は行われない。従って、トリガ6を引いた状態で操作位置としたままで、コンタクトアーム8を被打込材に押し付けることでの連続的な打ち込み動作を、機械的な構成を使用して、時間の経過で規制できる。
【0108】
上述したように、打ち込み動作が終了して所定時間が経過すると、コンタクトレバー7が初期位置に移動する。コンタクトレバー7が初期位置に移動した後、コンタクトアーム8を押し付ける力が解除されることで、当該コンタクトアーム8が初期位置に移動する。また、トリガ6を引く力が解除されることで、当該トリガ6が初期位置に移動する。これにより、図1に示すように初期状態に戻る。初期状態では、コンタクトレバー7の係止部70が、コンタクトアーム8の第1の押圧部81の移動経路に移動する。
【0109】
これにより、図4に示すように、コンタクトアーム8を被打込材に押し付ける動作で、コンタクトアーム8が作動位置に移動した後、図5に示すように、トリガ6が引かれて操作位置に移動すると、作動可能位置に移動しているコンタクトレバー7で起動バルブ5のバルブステム50が押され、打ち込み動作が行われる。
【0110】
なお、図1に示す初期状態から、コンタクトアーム8を被打込材に押し付ける前に、トリガ6が引かれて当該トリガ6が操作位置に移動すると、コンタクトレバー7の係止部70が、コンタクトアーム8の第1の押圧部81の移動経路から退避する。
【0111】
これにより、初期状態からトリガ6を引いた状態で操作位置とした後、コンタクトアーム8を被打込材に押し付ける動作で、コンタクトアーム8が作動位置に移動しても、コンタクトアーム8の第1の押圧部81がコンタクトレバー7の係止部70と接せず、コンタクトレバー7が押されない。
【0112】
よって、コンタクトレバー7で起動バルブ5のバルブステム50が押されず、打ち込み動作は行われない。従って、トリガ6を引く前に、コンタクトアーム8を被打込材に押し付けるという正規の手順以外での動作による打ち込み動作を規制できる。
【0113】
<第1の実施の形態のオイルダンパの作用効果例>
オイルダンパ91は、移動部材92が計時開始位置から初期位置へ移動する動作での移動速度を減速させるために設けられ、オイルの粘性でピストン93bが移動する際の負荷を与えている。一方、コンタクトアーム8が被打込材に押し付けられることで、移動部材92が初期位置から計時開始位置へ移動する動作では、オイルの粘性が、ピストン93bが移動する際の負荷となり、コンタクトアーム8の操作荷重が増加する。
【0114】
そこで、オイルダンパ91は、ピストン93bに逆止弁93eを備え、コンタクトアーム8が被打込材に押し付けられる動作によるピストン93bの移動方向では、ピストン93bの孔部93dが開くことで、ピストン93bが移動する際の負荷が低減される。これにより、コンタクトアーム8の操作荷重が低減される。また、移動部材92が計時開始位置から初期位置へ移動する動作によるピストン93bの移動方向では、逆止弁93eでピストン93bの孔部93dが閉じられることで、ピストン93bが移動する際に必要とされる負荷を与えることができる。
【0115】
更に、オイルダンパ91は、第1のバイパス流路93i1を備えることで、移動部材92が計時開始位置から初期位置へ移動する方向へピストン93bが移動する動作で、移動部材92が初期位置の近傍に移動すると、ピストン93bの外周面とシリンダ筒部93aの内周面との間にオイルが流れる際の抵抗が低減され、ピストン93bが移動する際の負荷が低減される。
【0116】
バネ93gの圧縮量が少なくなり、ピストン93bを戻そうとする力が小さくなった状態で、ピストン93bが移動する際の負荷が大きいままであると、所定時間の間に移動部材92を初期位置に移動させることができない可能性がある。このような場合、トリガ6を引いた状態で操作位置としたまま、コンタクトアーム8を被打込材に押し付ける動作で、所定時間を超えても連続的な打ち込み動作が可能となる可能性がある。
【0117】
これに対し、バネ93gの圧縮量が少なくなり、ピストン93bを戻そうとする力が小さくなった状態で、ピストン93bが移動する際の負荷が低減されることで、バネ93gが延びる力で所定時間の間に確実に移動部材92を初期位置に移動させることができる。従って、トリガ6を引いた状態で操作位置としたまま、コンタクトアーム8を被打込材に押し付ける動作で、連続的な打ち込み動作が可能となる時間を確実に制御できる。
【0118】
そして、負荷を低減させたいピストン93bの位置に合わせて第1のバイパス流路93i1を備えることで、バネ93gからピストン93bに掛かる力が小さくなると、ピストン93bが移動する際のオイルによる抵抗を減少させることででき、バネ93gからピストン93bに掛かる力の変化に応じて、ピストン93bが移動する際のオイルによる抵抗を変化させる構成を、簡単に実現できる。
【0119】
なお、オイルダンパ91は、第2のバイパス流路93i2を備えることで、移動部材92が初期位置から計時開始位置へ移動する方向へピストン93bが移動する動作で、移動部材92が計時開始位置の近傍に移動すると、ピストン93bの外周面とシリンダ筒部93aの内周面との間にオイルが流れる際の抵抗が低減され、ピストン93bが移動する際の負荷が低減される。
【0120】
バネ93gの圧縮量が多くなり、ピストン93bを戻そうとする反力が大きくなった状態で、ピストン93bが移動する際の負荷が低減されることで、コンタクトアーム8の操作荷重が低減される。ここで、第2のバイパス流路93i2は備えなくても良い。
【0121】
<第2の実施の形態のオイルダンパの構成例>
図15は、第2の実施の形態のオイルダンパを示す断面図である。第2の実施の形態のオイルダンパ91は、オイルが充填されるシリンダ筒部93kと、シリンダ筒部93kの内部を移動可能に設けられ、オイルの粘性で移動速度が制御されるピストン93bと、ピストン93bの動きを移動部材92に伝達するピストン軸部93cを備える。
【0122】
シリンダ筒部93kは、略円筒形状でオイルが充填される空間が設けられる。ピストン93bは、シリンダ筒部93kの内周面の形状に合わせた円形で、オイルが通過する複数の孔部93dが、表裏を貫通する形態で設けられる。ピストン軸部93cは、一方の端部にピストン93bが取り付けられ、シリンダ筒部93kから突出した他方の端部に移動部材92が連結される。
【0123】
オイルダンパ91は、ピストン93bが移動する方向に応じて孔部93dを開閉することで、ピストン93bが移動する方向に応じて負荷を切り替える逆止弁93eを備える。逆止弁93eは、ピストン93bの移動方向に沿って、ピストン93b対して離接する方向に移動可能で、弁開閉バネ93fでピストン93bに押し付けられる方向に付勢される。
【0124】
移動部材92が初期位置から計時開始位置へ移動する方向へピストン93bが移動する動作では、孔部93dを通るオイルにより逆止弁93eが押されることで、弁開閉バネ93fを圧縮しながら逆止弁93eがピストン93bの一の面から離れ、孔部93dが開かれる。
【0125】
これに対し、移動部材92が計時開始位置から初期位置へ移動する方向へピストン93bが移動する動作では、逆止弁93eが弁開閉バネ93f及びオイルに押されることでピストン93bに押し付けられ、逆止弁93eで孔部93dが塞がれる。
【0126】
オイルダンパ91は、ピストン93bを押圧するバネ93gを備える。バネ93gは付勢部材の一例で、コイルバネで構成され、シリンダ筒部93kの内部に設けたバネ押さえ93hと、ピストン93bの他の面の間に設けられる。
【0127】
オイルダンパ91は、ピストン93bが移動する際の負荷を低減するバイパス流路93mを備える。バイパス流路93mは、流路拡張部の一例で、バネ93gから作用する力で移動するピストン93bの移動範囲の終端位置である、移動部材92が初期位置の近傍に移動した状態でのピストン93bの位置に対向して設けられる。シリンダ筒部93kの内周面は、移動部材92が初期位置の近傍に移動した状態でのピストン93bに対向する部位に向かって、内径が徐々に大きくなるテーパ状で、バイパス流路93mが設けられている部位の内径が、バイパス流路93mが設けられていない部位の内径より大きく構成される。
【0128】
これにより、移動部材92が計時開始位置から初期位置へ移動する動作で、ピストン93bの外周面とシリンダ筒部93kの内周面との間隔が徐々に広くなり、ピストン93bが移動する際にオイルが通る流路の面積が徐々に大きくなる。
【0129】
従って、移動部材92が初期位置の近傍に移動することで、ピストン93bがバイパス流路93mと対向する位置に移動すると、ピストン93bが移動する動作で、ピストン93bの外周面とシリンダ筒部93kの内周面との間にオイルが流れる際の抵抗が低減され、ピストン93bが移動する際の負荷が低減される。
【0130】
オイルダンパ91は、ピストン93bの位置によらず、シリンダ筒部93k内の体積を略一定に保つダイアフラム93jを備える。ダイアフラム93jは、弾性変形可能な部材で構成され、シリンダ筒部93kの他方の端部側に設けられる。
【0131】
以上の構成のオイルダンパ91は、バネ93gが延びる力で移動部材92を計時開始位置から初期位置まで移動させると共に、シリンダ筒部93k内をピストン93bが移動する際のオイルの粘性による負荷で移動部材92の移動速度を制御する。また、バネ93gが延びる力で移動部材92が初期位置の近傍まで移動すると、ピストン93bがバイパス流路93mと対向する位置に移動し、ピストン93bの外周面とシリンダ筒部93kの内周面との間にオイルが流れる際の抵抗が低減され、移動部材92が初期位置へ移動する際にピストン93bに掛かる負荷が低減される。
【0132】
図16図20は、第2の実施の形態のオイルダンパの動作の一例を示す説明図であり、釘打機1Aの動作の中で、第2の実施の形態のオイルダンパの動作について説明する。
【0133】
図1に示すように、移動部材92が初期位置に移動していると、オイルダンパ91では、図16に示すように、ピストン93bがバイパス流路93mに対向する。これにより、矢印Uに示すように、移動部材92が初期位置から計時開始位置へ移動する方向へピストン93bが移動する動作で、移動部材92が初期位置近傍に位置している間は、ピストン93bの外周面とシリンダ筒部93kの内周面との間に、矢印O1で示すようにオイルが流れる際の抵抗が低減され、ピストン93bが移動する際の負荷が低減される。
【0134】
更に、移動部材92が初期位置から計時開始位置へ移動する方向へピストン93bが移動する動作で、ピストン93bの他の面から一の面側へオイルが流れる。
【0135】
これにより、孔部93dを通るオイルにより逆止弁93eが押されることで、弁開閉バネ93fを圧縮しながら逆止弁93eがピストン93bの一の面から離れ、孔部93dが開かれる。
【0136】
移動部材92が初期位置から計時開始位置に移動する動作では、図17に示すように、ピストン93bの外周面とシリンダ筒部93kの内周面との間隔が徐々に狭くなる。一方、ピストン93bの孔部93dが開くことで、矢印O2に示すように、オイルが孔部93dを通り、ピストン93bの他の面から一の面側へ流れる。これにより、ピストン93bが移動する際の負荷が低減される。
【0137】
ピストン93bは、移動部材92を介してコンタクトアーム8に押されるので、ピストン93bが移動する際の負荷が低減されることで、コンタクトアーム8の操作荷重が低減される。
【0138】
移動部材92が計時開始位置の近傍まで移動して停止すると、図18に示すように、逆止弁93eが弁開閉バネ93fに押されることでピストン93bに押し付けられ、逆止弁93eで孔部93dが塞がれる。
【0139】
打ち込み動作後、コンタクトアーム8を押し付ける力が解除されることで、コンタクトアーム8が初期位置に移動すると、コンタクトアーム8の第2の押圧部82によるオイルダンパ91の移動部材92の押圧が解除されることで、オイルダンパ91では、図19に示すように、圧縮されたバネ93gが延びる力でピストン93bが押され、矢印Dに示すように、移動部材92が計時開始位置から初期位置へ復帰する方向へ移動を開始する。
【0140】
移動部材92が計時開始位置から初期位置へ移動する方向へピストン93bが移動する動作では、ピストン93bの一の面から他の面側へオイルが流れる。これにより、逆止弁93eが弁開閉バネ93f及びオイルに押されることでピストン93bに押し付けられ、逆止弁93eで孔部93dが塞がれた状態が維持される。
【0141】
これにより、移動部材92が計時開始位置から初期位置へ移動する方向へピストン93bが移動する動作で、オイルがピストン93bの孔部93dを通ることはできず、また、ピストン93bの外周面とシリンダ筒部93kの内周面との間にオイルが流れる際の抵抗が大きくなり、ピストン93bが移動する際の負荷が大きくなる。従って、バネ93gが延びる力で移動するピストン93bの移動速度が減速され、負荷の大きさに応じた一定の速度になる。
【0142】
移動部材92が初期位置の近傍に移動すると、図20に示すように、ピストン93bがバイパス流路93mに対向する。これにより、矢印Dに示すように、移動部材92が計時開始位置から初期位置へ移動する方向へピストン93bが移動する動作で、ピストン93bの外周面とシリンダ筒部93kの内周面との間に、矢印O3で示すようにオイルが流れる際の抵抗が低減され、ピストン93bが移動する際の負荷が低減される。
【0143】
移動部材92が初期位置の近傍まで移動した状態では、バネ93gの圧縮量が少なくなり、ピストン93bを戻そうとする力が小さくなる。このような状態で、ピストン93bが移動する際の負荷が低減されることで、バネ93gが延びる力で確実に移動部材92を初期位置に移動させることができる。また、移動部材92が計時開始位置から初期位置へ移動する動作で、ピストン93bが移動する際にオイルが通る流路の面積が徐々に大きくなるので、オイルが流れる際の抵抗の急激な増減を抑制できる。
上述の実施の形態において、ピストン93bが移動する際にオイルが通る流路の面積が変化することについて説明した。計時するときは、孔部93dが塞がれて流路として機能しないため、この「流路の面積の変化」は、ピストン93bの外周面とシリンダ筒部93aの内周面との間の「断面積の変化」と言い換えることができる。
上述の実施の形態において、本発明の流体ダンパの一例としてオイルの粘性による抵抗を利用したオイルダンパを説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明は、各種シリンダダンパ、例えば、オイルとは異なる液体をシリンダに充填及び封入するダンパ、オイルの代わりに窒素ガス等の気体をシリンダに充填及び封入するダンパ、又はシリンダ内への気体の流入及びシリンダ内からの気体の流出を制御する構成を有するダンパ等にも適用可能である。
上述の実施の形態において、本発明の打込み工具の一例として釘を打込む釘打機を説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明は、例えば、ねじを打込むねじ打機にも適用可能である。
本出願は、2018年3月1日出願の日本特許出願特願2018-036896に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0144】
1A・・・釘打機(打込み工具)、10・・・ハウジング、11・・・ハンドル、12・・・ノーズ、13・・・マガジン、2・・・打込シリンダ(打込機構)、20・・・ドライバ、21・・・打込ピストン、3・・・エアチャンバ、30・・・エアプラグ、31・・・ブローバックチャンバ、4・・・メインバルブ、5・・・起動バルブ、50・・・バルブステム、6・・・トリガ、60・・・軸、61・・・バネ、7・・・コンタクトレバー、70・・・係止部、71・・・軸、72・・・押圧部、73・・・バネ、8・・・コンタクトアーム、80・・・突き当て部、81・・・第1の押圧部、82・・・第2の押圧部、83・・・バネ、9・・・規制部、90・・・規制部材、90a・・・押圧部、90b・・・被係止部、90c・・・バネ、91・・・オイルダンパ、92・・・移動部材、92a・・・被押圧部、92b・・・係止部、93a・・・シリンダ筒部、93b・・・ピストン、93c・・・ピストン軸部、93d・・・孔部、93e・・・逆止弁、93f・・・弁開閉バネ、93g・・・バネ(付勢部材)、93h・・・バネ押さえ、93i1・・・第1のバイパス流路(流路拡張部)、93i2・・・第2のバイパス流路(流路拡張部)、93j・・・ダイアフラム、93k・・・シリンダ筒部、93m・・・バイパス流路(流路拡張部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20