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特許7222442回転電機の固定子コイルの製造方法及び固定子コイル
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  • 特許-回転電機の固定子コイルの製造方法及び固定子コイル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】回転電機の固定子コイルの製造方法及び固定子コイル
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/085 20060101AFI20230208BHJP
   H02K 15/04 20060101ALI20230208BHJP
   H02K 3/04 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
H02K15/085
H02K15/04 F
H02K3/04 E
H02K3/04 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022503129
(86)(22)【出願日】2021-01-05
(86)【国際出願番号】 JP2021000064
(87)【国際公開番号】W WO2021171786
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-01-05
(31)【優先権主張番号】P 2020032093
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺内 哲行
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-169037(JP,A)
【文献】特開2000-350422(JP,A)
【文献】特開2018-121396(JP,A)
【文献】特開2014-204597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/00- 3/28
H02K 15/00- 15/02
H02K 15/04- 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機の円筒状の固定子鉄心に形成された複数の軸方向のスロットに挿入されるコイル構成部材を接続して成る固定子コイルを製造するに際して、
前記軸方向のスロットにそれぞれ挿入される互いに周方向に並ぶ前記コイル構成部材の前記固定子鉄心の少なくとも一方の端面側に突出する各端部を互いに接近する方向に向けてそれぞれ周方向で且つ前記固定子鉄心の一方の端面に沿わせるべく形成すると共に、該端部同士を互いに径方向にずらすべく形成し、
互いに周方向に並ぶ前記コイル構成部材の互いに径方向にずらした前記端部同士を重ねて接合する固定子コイルの製造方法。
【請求項4】
円筒状の固定子鉄心とともに回転電機の固定子を構成する固定子コイルであって、
前記固定子鉄心に形成された複数の軸方向のスロットに挿入される複数のコイル構成部材を有し、
前記軸方向のスロットにそれぞれ挿入される互いに周方向に並ぶ前記コイル構成部材の前記固定子鉄心の少なくとも一方の端面側に突出する各端部は、互いに接近する方向に向けてそれぞれ周方向で且つ前記固定子鉄心の一方の端面に沿って形成され、
互いに周方向に並ぶ前記コイル構成部材の前記端部同士は、互いに径方向に重ねて接合されている固定子コイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動機や発電機等の回転電機の固定子コイルの製造方法及び固定子コイルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記したような電動機としては、例えば、特許文献1に記載されている乗用車やトラック等に搭載される交流発電機がある。
この交流発電機は、薄い鋼板を重ねて成る円筒状の固定子鉄心と、この固定子鉄心とともに固定子を構成する固定子コイルを備えている。
【0003】
円筒状の固定子鉄心は、その内周面で開口する複数の軸方向のスロットを有している。一方、固定子コイルには、矩形断面を有する複数のコイル構成部材を接続して成る環状の固定子コイルが採用されている。
【0004】
固定子コイルのコイル構成部材は、固定子鉄心のスロットに挿入される胴部を有し、胴部をスロットに挿入した状態で固定子鉄心の一方の端面側に位置するコイル構成部材の突出部分は、環状に並ぶ他のコイル構成部材の各突出部分とともにコイルエンド群を形成している。
【0005】
この場合、固定子鉄心のスロットには、2本のコイル構成部材の胴部が内周側及び外周側として挿入されている。コイルエンド群において固定子鉄心の一方の端面側に位置する内周側突出部分及び外周側突出部分には、周方向で且つ互いに反対方向に傾斜する傾斜部と軸方向に立ち上げた軸方向端部が連続して形成されている。
【0006】
そして、異なる側の異なるコイル構成部材における軸方向端部同士を軸方向の溶接線に沿って溶接により接合することで、環状の固定子コイルを形成するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2000-069729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した従来の固定子コイルの製造方法にあっては、絶縁被膜をコーティングした電線を巻いて固定子コイルを形成する場合と比べて、規則的に配置されたコイルが形成し易いという利点がある。しかし、コイルエンド群において軸方向の溶接を行うための軸方向端部を立ち上げている分だけ、固定子コイルの軸方向長さが大きくなってしまい、その結果、コンパクト化の妨げになるという問題がある。
【0009】
この問題に対応するべく、コイルエンド群において内周側突出部分及び外周側突出部分を径方向に折り曲げて径方向の溶接線に沿って溶接により接合することが考えられている。また、コイルエンド群において内周側突出部分及び外周側突出部分を周方向で且つ互いに反対方向に向く突合せ端部として形成して、異なる側の異なるコイル構成部材における突合せ端部同士を溶接により突合せ接合することも考えられている。
【0010】
しかしながら、上記のように、径方向の溶接線に沿って溶接する場合には、内周側突出部分及び外周側突出部分を周方向とほぼ直交する径方向に折り曲げる分だけ、コイル形状が複雑なものとなってしまう。
【0011】
一方、コイル構成部材における突合せ端部同士を溶接により突合せ接合する場合には、突合せ端部間に生じる溶接後の熱収縮によってコイル構成部材の胴部とこれを収容する固定子鉄心のスロットとの間にストレスが発生してしまうという問題を有しており、これらの問題を解決することが従来の課題となっている。
【0012】
本開示は、上記した従来の課題を解決するためになされたもので、コンパクト化を実現したうえで、コイル形状の単純化に寄与することができると共に、溶接後の熱収縮により生じるストレスを少なく抑えることが可能である回転電機の固定子コイルの製造方法及び固定子コイルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の第1の態様は、回転電機の円筒状の固定子鉄心に形成された複数の軸方向のスロットに挿入されるコイル構成部材を接続して成る固定子コイルを製造するに際して、前記軸方向のスロットにそれぞれ挿入される互いに周方向に並ぶ前記コイル構成部材の前記固定子鉄心の少なくとも一方の端面側に突出する各端部を互いに接近する方向に向けてそれぞれ周方向に沿わせるべく形成すると共に、該端部同士を互いに径方向にずらすべく形成し、互いに周方向に並ぶ前記コイル構成部材の互いに径方向にずらした前記端部同士を重ねて接合する構成としている。
【発明の効果】
【0014】
本開示に係る回転電機の固定子コイルの製造方法によれば、固定子コイルのコンパクト化を実現することができるうえ、コイル形状の単純化をも実現することができると共に、溶接後の熱収縮により生じるストレスを抑制することが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示に係る回転電機の固定子コイルの一実施形態を示す回転電機の部分断面説明図である。
図2図1に示した回転電機の固定子における固定子鉄心の内周面を軸心側から見た部分拡大説明図である。
図3図1に示した回転電機の固定子における固定子コイルの鳥観図である。
図4図2矢視B方向からの部分拡大平面説明図である。
図5図2A-A線位置に基づく固定子鉄心の部分断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1図5は、本開示に係る回転電機の固定子コイルの一実施形態を示しており、本実施形態では、本開示に係る回転電機の固定子コイルの製造方法を3相の交流発電機の固定子コイルに用いた場合を例に挙げて説明する。
【0017】
図1に部分的に示すように、この交流発電機1は、外殻2と、この外殻2に支持される電機子としての固定子3と、この固定子3と同じく外殻2に支持されてシャフト4と一体に回転する回転子5を備えている。
【0018】
固定子3は、円筒状の固定子鉄心31を具備している。この固定子鉄心31は薄い鋼板を重ねて成っており、図2に示すように、その内周面31Aで開口する複数の軸方向のスロット31aを有している。
【0019】
また、固定子3は、固定子鉄心31とともに固定子3を構成するU相,V相及びW相の合計3相の固定子コイル32を具備している。U相,V相及びW相の各固定子コイル32はいずれも同じ構成を成しているため、以下、U相の固定子コイル32について説明し、V相及びW相の固定子コイル32については説明を省略する。
【0020】
この固定子コイル32は、複数のコイル構成部材33を接続して成っており、この実施形態において、コイル構成部材33は、矩形断面を有する無酸素銅の棒材から成っている。このコイル構成部材33は、プレス加工により略U字状を成すようにして形成されている。このコイル構成部材33は、2本の胴部33a,33a及び折り返し部33bを有しており、後述する接合端部33d以外は絶縁皮膜でコーティングされている。
【0021】
複数のコイル構成部材33は、図3にも示すように、コイル構成部材33の一方の胴部33aが互いに周方向に並ぶコイル構成部材33の他方の胴部33aに重なるようにして配置されている。
【0022】
具体的に説明すると、複数のコイル構成部材33は、図2の左側に位置するコイル構成部材33L(33)の右方の胴部33a2が図2の中央に位置するコイル構成部材33C(33)の左方の胴部33a1の図示奥側に重なるようにして、周方向に並べて配置されている。これと同じく、複数のコイル構成部材33は、図2の中央に位置するコイル構成部材33C(33)の右方の胴部33a2が図2の右側に位置するコイル構成部材33R(33)の左方の胴部33a1の図示奥側に重なるようにして、周方向に並べて配置されている。
【0023】
つまり、複数のコイル構成部材33を周方向に並べて配置した状態では、コイル構成部材33の一方の胴部33a2、及び、これの隣側に位置するコイル構成部材33の他方の胴部33a1は、U相用のスロット31aに径方向(図2奥行き方向)に並べて収容されるようになっている。
【0024】
この場合、上記のようにして複数のコイル構成部材33を周方向に並べて配置した状態において、互いに異なるスロット31aに収容されているコイル構成部材33の胴部33a,33aの各先端側は、固定子鉄心31の一方の端面側(図2上端面側)にそれぞれ突出するようになっている。
【0025】
このコイル構成部材33の両突出部分33c,33cは、互いに離間する方向に向けてそれぞれ周方向に沿うようにして形成されており、これらの突出部分33c,33cの各先端部は、固定子鉄心31の一方の端面に沿った状態で互いに径方向にずれて配置される接合端部33d,33dとして形成されている。
【0026】
この際、図2において左右に位置するコイル構成部材33L,33Rの絶縁皮膜非コーティングの各接合端部33d,33dは、固定子鉄心31の他方の端面側(図2下端面側)に突出する図2中央のコイル構成部材33Cにおける折り返し部33bの図示上方において、図4に示すように、互いに径方向にずれた状態で重なり合うことになる。これらの接合端部33d,33dが重なり合う部分において、その両端33e間に設定した溶接線33fに沿って溶接接合することで、左右に位置するコイル構成部材33L,33Rを電気的に接続するようになっている。
【0027】
そして、複数個所において互いに径方向にずれた状態で重なり合う接合端部33d,33d同士を上記と同様に溶接接合することで、環状の固定子コイル32が組み上げられるようになっている。
【0028】
ここで、コイル構成部材33の折り返し部33bが平面視で略S字状を成していると共に、接合端部33d,33d同士が径方向にずれた状態で接合するので、固定子コイル32は凹凸のない環状に形成される。
【0029】
さらに、この実施形態において、上記のように組み上げた環状の固定子コイル32の外側に同一構成の固定子コイル32を重ねて互いに電気的に連続させている。つまり、図5に示すように、固定子鉄心31のU相用のスロット31aには、4つの胴部33aが径方向(図5上下方向)に並べて収容されている。すなわち、上記した環状の固定子コイル32の外側に重ねた固定子コイル32における一方の胴部33a4、及び、他方の胴部33a3がU相用のスロット31aの奥側に順次収容されている。そして、上記した内側に位置する固定子コイル32の一方の胴部33a2、及び、他方の胴部33a1がU相用のスロット31aの手前側に順次収容されている。なお、図5における符号35は絶縁材である。
【0030】
また、図2における二点鎖線は、V相用のスロット31aに挿入されるV相のコイル構成部材33Vの胴部を示している。図2における一点鎖線は、W相用のスロット31aに挿入されるW相のコイル構成部材33Wの胴部を示している。
【0031】
そこで、上記した交流発電機1に採用した環状の固定子コイル32を製造するに際しては、矩形断面を有する無酸素銅の棒材に対して、プレス成型機によるプレス加工を行って、略U字状を成すコイル構成部材33を形成する。この際、接合端部33d,33dも合わせて形成する。
【0032】
次いで、プレス加工で得られた略U字状のコイル構成部材33に、接合端部33dを除いて絶縁皮膜のコーティングを施す。
【0033】
この後、複数のコイル構成部材33をコイル構成部材33の一方の胴部33aがこれの隣側に位置するコイル構成部材33の他方の胴部33aに重なるようにして、周方向に並べて配置する。
【0034】
より具体的に説明すると、図2の左側に位置するコイル構成部材33L(33)の右方の胴部33a2が図2の中央に位置するコイル構成部材33C(33)の左方の胴部33a1の図示奥側に重なるようにして、コイル構成部材33を周方向に並べて配置する。同じく、図2の中央に位置するコイル構成部材33Cの右方の胴部33a2が図2の右側に位置するコイル構成部材33R(33)の左方の胴部33a1の図示奥側に重なるようにして、コイル構成部材33を周方向に並べて配置する。
【0035】
次に、このようにして複数のコイル構成部材33を周方向に並べて配置した状態では、図2において左右に位置するコイル構成部材33L,33Rの各接合端部33d,33d図2中央のコイル構成部材33Cにおける折り返し部33bの図示上方に位置している。そして、折り返し部33bの図示上方において、接合端部33d,33dは、図4に示すように、互いに径方向にずれた状態で重なり合っており、これらの接合端部33d,33dを溶接接合することで、左右に位置するコイル構成部材33L,33Rを電気的に接続する。
【0036】
そして、これと同様に、複数個所において互いに径方向にずれた状態で重なり合う接合端部33d,33d同士を溶接接合することで、環状の固定子コイル32を組み上げる。
【0037】
上記したように、この実施形態に係る固定子コイルの製造方法では、固定子コイル32を構成するコイル構成部材33同士の接合が、互いに径方向にずらして重ね合わせた接合端部33d,33dの溶接接合で成されるようにしている。
【0038】
したがって、この実施形態に係る固定子コイルの製造方法では、図4に示すように、溶接後の熱収縮による応力が径方向にかかるので、コイル構成部材33の胴部33aとこれを収容する固定子鉄心31のスロット31aとの間に発生するストレスを少なく抑え得ることとなる。
【0039】
また、この実施形態に係る固定子コイルの製造方法では、コイル構成部材33同士を接合する接合端部33d,33dが固定子鉄心31の端面に沿うようにしているので、固定子コイル32の軸方向長さを大きくする必要がなく、その分だけ、コンパクト化が図られることとなる。
加えて、接合端部33dを周方向とほぼ直交する径方向に折り曲げる必要もないので、コイル形状の複雑化も回避し得ることとなる。
【0040】
さらに、この実施形態に係る固定子コイルの製造方法では、固定子コイル32を構成するコイル構成部材33同士を接合するための接合端部33d,33dの接合を高周波ヒュージング,レーザビーム溶接,電子ビーム溶接,プラズマアーク溶接等のエネルギー密度の高い接合手段(高エネルギー密度接合手段)により行うようにしているので、高密度な局所入熱の施工が可能となり、絶縁皮膜を損傷してしまうといった事態の発生を回避し得ることとなる。
【0041】
さらにまた、この実施形態に係る固定子コイルの製造方法では、略U字状を成すコイル構成部材33を接合端部33dも含めてプレス成型機によるプレス加工により形成するようにしているので、固定子コイルの製造の容易化にも貢献し得ることとなる。
【0042】
上記した実施形態では、本開示に係る回転電機の固定子コイルの製造方法を3相の交流発電機に用いた場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。
【0043】
また、上記した実施形態では、固定子コイル32を構成するコイル構成部材33が折り返し部33bを有する略U字状を成すものとしているが、これに限定されるものではなく、接合端部33d,33d同士の接合構造を折り返し部33bに代えて採用してもよい。
【0044】
本開示に係る回転電機の固定子コイルの製造方法及び固定子コイルの構成は、上記した実施形態に限られるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
【0045】
本開示の第1の態様は、回転電機の円筒状の固定子鉄心に形成された複数の軸方向のスロットに挿入されるコイル構成部材を接続して成る固定子コイルを製造するに際して、前記軸方向のスロットにそれぞれ挿入される互いに周方向に並ぶ前記コイル構成部材の前記固定子鉄心の少なくとも一方の端面側に突出する各端部を互いに接近する方向に向けてそれぞれ周方向に沿わせるべく形成すると共に、該端部同士を互いに径方向にずらすべく形成し、互いに周方向に並ぶ前記コイル構成部材の互いに径方向にずらした前記端部同士を重ねて接合する構成としている。
【0046】
この第1の態様に係る固定子コイルの製造方法では、互いに周方向に並ぶコイル構成部材の互いに径方向にずらした端部同士を、例えば、溶接により重ねて接合した場合、溶接後の熱収縮による応力が径方向にかかるので、コイル構成部材とこれを収容する固定子鉄心のスロットとの間に発生するストレスを少なく抑え得ることとなる。
【0047】
また、この態様に係る固定子コイルの製造方法では、コイル構成部材同士を接合する端部が互いに接近する方向に向けてそれぞれ周方向に沿うようにしている。すなわち、コイル構成部材同士を接合する端部が固定子鉄心の端面に沿うようにしているので、固定子コイルの軸方向長さを大きくする必要がなく、その分だけ、コンパクト化が図られることとなる。
【0048】
加えて、コイル構成部材の端部を周方向とほぼ直交する径方向に折り曲げる必要もないので、コイル形状の複雑化も回避し得ることとなる。
【0049】
また、本開示の第2の態様は、互いに周方向に並ぶ前記コイル構成部材の前記端部同士を重ねて高エネルギー密度接合手段で接合する構成としている。
【0050】
この態様に係る固定子コイルの製造方法では、固定子コイルを構成するコイル構成部材同士を接合するための端部の接合をエネルギー密度の高い高エネルギー密度接合手段により行うようにしているので、高密度な局所入熱の施工が可能となり、絶縁皮膜を損傷してしまうといった事態の発生を回避し得ることとなる。
【0051】
さらに、本開示の第3の態様は、プレス成形により前記コイル構成部材の端部を形成する構成としている。
【0052】
この態様に係る固定子コイルの製造方法では、コイル構成部材を端部も含めてプレス成型機によるプレス加工により形成するようにしているので、固定子コイルの製造の容易化にも貢献し得ることとなる。
【0053】
一方、本開示の第4の態様は、円筒状の固定子鉄心とともに回転電機の固定子を構成する固定子コイルであって、前記固定子鉄心に形成された複数の軸方向のスロットに挿入される複数のコイル構成部材を有し、前記軸方向のスロットにそれぞれ挿入される互いに周方向に並ぶ前記コイル構成部材の前記固定子鉄心の少なくとも一方の端面側に突出する各端部は、互いに接近する方向に向けてそれぞれ周方向に沿って形成され、互いに周方向に並ぶ前記コイル構成部材の前記端部同士は、互いに径方向に重ねて接合されている構成としている。
【0054】
この態様に係る固定子コイルでは、コイル構成部材同士を、例えば、溶接により接合するに際して、互いに周方向に並ぶコイル構成部材の端部同士を互いに径方向にずらして重ねて接合するので、溶接後の熱収縮による応力が径方向にかかることとなり、コイル構成部材とこれを収容する固定子鉄心のスロットとの間に発生するストレスを少なく抑え得ることとなる。
【0055】
また、この態様に係る固定子コイルでは、コイル構成部材同士を接合する端部が互いに接近する方向に向けてそれぞれ周方向に沿っている。すなわち、コイル構成部材同士を接合する端部が固定子鉄心の端面に沿っているので、固定子コイルの軸方向長さが小さくて済む分だけ、コンパクト化が図られることとなる。加えて、コイル形状の複雑化も回避し得ることとなる。
【符号の説明】
【0056】
1 交流発電機(回転電機)
3 固定子
31 固定子鉄心
31a スロット
32 固定子コイル
33 コイル構成部材
33d 接合端部
図1
図2
図3
図4
図5