(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】誘電体粉末及びそれを用いた積層型セラミック電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20230208BHJP
C04B 35/465 20060101ALI20230208BHJP
C04B 35/628 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
H01G4/30 515
H01G4/30 201L
C04B35/465
C04B35/628 050
(21)【出願番号】P 2018073500
(22)【出願日】2018-04-05
【審査請求日】2021-03-24
(31)【優先権主張番号】10-2017-0108794
(32)【優先日】2017-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジン ウー
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、チャン ハク
(72)【発明者】
【氏名】ファ、カン ヘオン
(72)【発明者】
【氏名】ヨーン、ソク ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】リー、セウン ホー
【審査官】北原 昂
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-044735(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0086735(US,A1)
【文献】国際公開第2013/027500(WO,A1)
【文献】特開2008-010530(JP,A)
【文献】特開平10-310469(JP,A)
【文献】国際公開第2017/073621(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/012793(WO,A1)
【文献】特開2000-223351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
C04B 35/465
C04B 35/628
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ABO
3(Aは、Ba、Sr、及びCaのうち少なくとも1つであり、Bは、Ti、Zr、及びHfのうち少なくとも1つである)で表される母材及び希土類元素を含むドープ物質を含む半導性または導電性のコア領域と、
前記コア領域を囲む絶縁性のシェル領域と、を含み、
前記ドープ物質は、前記コア領域内に、前記コア領域の全体mol%を基準に、1mol%~10mol%の含量でドープされ、
前記シェル領域は、Ba、Sr、及びNbのうち、前記母材と異なる少なくとも1つの元素を含む第1副成分を含む、
誘電体粉末。
【請求項2】
前記母材はBaTiO
3であり、前記第1副成分は、Sr及びNbのうち少なくとも1つを含む、請求項
1に記載の誘電体粉末。
【請求項3】
ABO
3
(Aは、Ba、Sr、及びCaのうち少なくとも1つであり、Bは、Ti、Zr、及びHfのうち少なくとも1つである)で表される母材及び希土類元素を含むドープ物質を含む半導性または導電性のコア領域と、
前記コア領域を囲む絶縁性のシェル領域と、を含み、
前記ドープ物質は、前記コア領域内に、前記コア領域の全体mol%を基準に、1mol%~10mol%の含量でドープされ、
前記シェル領域は、
Si、Ba、及びAlのうち少なくとも1つの第2副成分と、
Na、Li、K、及びBのうち少なくとも1つの第3副成分と、
Zr、Mg、Mn、及びVのうち少なくとも1つの第4副成分と、を含む
、誘電体粉末。
【請求項4】
前記ドープ物質は、Dy、Ho、Sm、La、Gd、Er、及びYのうち少なくとも1つを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の誘電体粉末。
【請求項5】
前記コア領域の直径と前記シェル領域の厚さとの比は、2.5:1~4:1の範囲である、請求項1から
4のいずれか一項に記載の誘電体粉末。
【請求項6】
ABO
3(Aは、Ba、Sr、及びCaのうち少なくとも1つであり、Bは、Ti、Zr、及びHfのうち少なくとも1つである)で表される母材及び希土類元素を含むドープ物質を含む半導性または導電性のコア領域と、
前記コア領域を囲む絶縁性のシェル領域と、を含み、
Ba、Sr、及びNbのうち、前記母材と異なる少なくとも1つの元素を含む第1副成分を含む最外側層をさらに含む、誘電体粉末。
【請求項7】
前記最外側層内の前記第1副成分の濃度は前記シェル領域においてさらに高い、請求項
6に記載の誘電体粉末。
【請求項8】
誘電層、及び前記誘電層を挟んで互いに対向するように配置される内部電極を含む本体部と、
前記本体部の外側に配置され、前記内部電極と電気的に連結される外部電極と、を含む積層型セラミック電子部品であって、
前記誘電層は、ABO
3(Aは、Ba、Sr、及びCaのうち少なくとも1つであり、Bは、Ti、Zr、及びHfのうち少なくとも1つである)で表される母材及び希土類元素を含むドープ物質を含む半導性または導電性の結晶粒(grain)コア領域と、前記結晶粒コア領域を囲む絶縁性の結晶粒シェル領域と、を含む結晶粒を含み、
前記ドープ物質は、前記結晶粒コア領域に、前記結晶粒コア領域の全体mol%を基準に、1mol%~10mol%の含量で含まれ、
前記結晶粒シェル領域は、Ba、Sr、及びNbのうち、前記母材と異なる少なくとも1つの元素を含む第1副成分を含む、
積層型セラミック電子部品。
【請求項9】
前記母材はBaTiO
3であり、前記第1副成分は、Sr及びNbのうち少なくとも1つを含む、請求項
8に記載の積層型セラミック電子部品。
【請求項10】
前記母材はSrTiO
3であり、前記第1副成分は、Ba及びNbのうち少なくとも1つを含む、請求項
8に記載の積層型セラミック電子部品。
【請求項11】
前記誘電層は、前記結晶粒コア領域及び前記結晶粒シェル領域を含む複数の結晶粒を含み、
前記結晶粒の平均サイズは50nm~500nmである、請求項
8から
10のいずれか一項に記載の積層型セラミック電子部品。
【請求項12】
前記ドープ物質は、Dy、Ho、Sm、La、Gd、Er、及びYのうち少なくとも1つである、請求項
8から
11のいずれか一項に記載の積層型セラミック電子部品。
【請求項13】
前記結晶粒シェル領域も前記ドープ物質を含み、
前記ドープ物質の濃度は、前記結晶粒コア領域に比べて前記結晶粒シェル領域においてさらに低い、請求項
8から
12のいずれか一項に記載の積層型セラミック電子部品。
【請求項14】
前記ドープ物質は、前記結晶粒シェル領域に、前記結晶粒シェル領域の全体mol%を基準に、0.5mol%より低い含量で含まれる、請求項
13に記載の積層型セラミック電子部品。
【請求項15】
誘電層、及び前記誘電層を挟んで互いに対向するように配置される内部電極を含む本体部と、
前記本体部の外側に配置され、前記内部電極と電気的に連結される外部電極と、を含む積層型セラミック電子部品であって、
前記誘電層は、ABO
3
(Aは、Ba、Sr、及びCaのうち少なくとも1つであり、Bは、Ti、Zr、及びHfのうち少なくとも1つである)で表される母材及び希土類元素を含むドープ物質を含む半導性または導電性の結晶粒(grain)コア領域と、前記結晶粒コア領域を囲む絶縁性の結晶粒シェル領域と、を含む結晶粒を含み、
前記ドープ物質は、前記結晶粒コア領域に、前記結晶粒コア領域の全体mol%を基準に、1mol%~10mol%の含量で含まれ、
前記結晶粒シェル領域は、
Si、Ba、及びAlのうち少なくとも1つの第2副成分と、
Na、Li、K、及びBのうち少なくとも1つの第3副成分と、
Zr、Mg、Mn、及びVのうち少なくとも1つの第4副成分と、を含む
、積層型セラミック電子部品。
【請求項16】
誘電層、及び前記誘電層を挟んで互いに対向するように配置される内部電極を含む本体部と、
前記本体部の外側に配置され、前記内部電極と電気的に連結される外部電極と、を含む積層型セラミック電子部品であって、
前記誘電層は、ABO
3
(Aは、Ba、Sr、及びCaのうち少なくとも1つであり、Bは、Ti、Zr、及びHfのうち少なくとも1つである)で表される母材及び希土類元素を含むドープ物質を含む半導性または導電性の結晶粒(grain)コア領域と、前記結晶粒コア領域を囲む絶縁性の結晶粒シェル領域と、を含む結晶粒を含み、
前記ドープ物質は、前記結晶粒コア領域に、前記結晶粒コア領域の全体mol%を基準に、1mol%~10mol%の含量で含まれ、
前記誘電層は結晶粒界をさらに含み、
Ba、Sr、及びNbのうち、前記母材と異なる少なくとも1つの元素を含む第1副成分の濃度は前記結晶粒シェル領域に比べて前記結晶粒界においてさらに高い
、積層型セラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体粉末及びそれを用いた積層型セラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、積層型セラミックキャパシタ(MLCC:Multilayered Ceramic Capacitor)は、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという利点を有する電子部品であって、移動通信端末、ノート型パソコン、コンピュータ、携帯情報端末(PDA)などの種々の電子製品の回路基板に装着され、電気を充電または放電させる役割を果たすチップ形態のコンデンサである。
【0003】
かかる積層型セラミック電子部品には、近年、電子製品の小型化及び高速化の傾向に伴い、超小型化及び超高容量化が要求されている。しかし、積層型セラミック電子部品は、積層可能な誘電体層の数に限界があり、これによって、静電容量の増加において限界が生じている。そこで、超小型製品において、同一のサイズで高誘電率を実現するためには、誘電体材料そのものの高誘電率を実現することが求められる。
【0004】
また、誘電体材料の微粒化により、完全な焼成を行う際に粒成長が伴われるため、DC電界で有効容量を確保することが困難であるという問題がある。したがって、高温でも粒成長を伴うことなく、且つ粒成長を伴わないことで誘電率の低下を改善した誘電体組成物が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的の一つは、誘電率が高く、且つ信頼性に優れた誘電体粉末及びそれを用いた積層型セラミック電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するための方法として、本発明は、一実施形態を挙げて誘電体粉末を提案する。具体的に、上記誘電体粉末は、ABO3(Aは、Ba、Sr、及びCaのうち少なくとも1つであり、Bは、Ti、Zr、及びHfのうち少なくとも1つである)で表される母材及び希土類元素を含むドープ物質を含む半導性または導電性のコア領域と、上記コア領域を囲む絶縁性のシェル領域と、を含む。
【0007】
また、本発明は、上記誘電体粉末を用いた積層型セラミック電子部品を提案する。具体的に、上記積層型セラミック電子部品は、誘電層、及び上記誘電層を挟んで互いに対向するように配置される内部電極を含む本体部と、上記本体部の外側に配置され、上記内部電極と電気的に連結される外部電極と、を含み、上記誘電層は、ABO3(Aは、Ba、Sr、及びCaのうち少なくとも1つであり、Bは、Ti、Zr、及びHfのうち少なくとも1つである)で表される母材及び希土類元素を含むドープ物質を含む半導性または導電性の結晶粒(grain)コア領域と、上記結晶粒コア領域を囲む絶縁性の結晶粒シェル領域と、を含む結晶粒を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、半導性または導電性のコアと絶縁性のシェルとを含むコア-シェル構造を有することで、高誘電率及び向上した信頼性を有する誘電体粉末を提供することができる。また、本発明は、半導性または導電性のコアと絶縁性のシェルとを含むコア-シェル構造を有することで、静電容量の大容量化を実現し、且つ信頼性が向上した積層型セラミック電子部品を実現することができる。
【0009】
本発明の多様かつ有益な利点と効果は上述の内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態による誘電体粉末を概略的に示す部分斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態による誘電体粉末を概略的に示す部分斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態による誘電体粉末を用いた誘電体の微細構造を概略的に示す断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態による積層型セラミック電子部品を概略的に示す斜視図である。
【
図5】
図4のV-V´の切断線に沿った積層型セラミック電子部品の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(または強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上において同一の符合で示される要素は同一の要素である。
【0012】
誘電体粉末
図1及び
図2は、本発明の一実施形態による誘電体粉末を概略的に示す部分斜視図である。
【0013】
図1を参照すると、誘電体粉末10は、コア領域1及びシェル領域5を含む。誘電体粉末10は、コア-シェル構造を有することができる。誘電体粉末10は、平均粒径が100nmより小さい球状を有し、例えば、30nm~80nmの範囲を有することができる。したがって、誘電体粉末10を焼成して製造される焼結体において、結晶粒(grain)のサイズも相対的に小さく製造されることができる。
【0014】
コア領域1は、半導性(semiconducting)または導電性領域であることができる。コア領域1は、例えば、比抵抗が数~数十オーム(Ωm)であることができる。コア領域1は球状を有することができる。
【0015】
コア領域1は、ABO3で表されるペロブスカイト構造の母材及び希土類元素を含むドープ物質を含むことができる。Aは、Ba、Sr、及びCaのうち少なくとも1つであり、Bは、Ti、Zr、及びHfのうち少なくとも1つであることができる。例えば、上記母材は、BaTiO3、SrTiO3、(Ba1-xSrx)TiO3、(Ba1-xCax)TiO3、Ba(Ti1-yHfy)O3、(Ba1-xSrx)(Ti1-yZry)O3、及びBa(Ti1-yZry)O3のうち1つであることができる。
【0016】
上記希土類元素は、誘電体粉末が導電性または半導性を有するようにするために、コア領域1に含まれることができる。上記希土類元素は、上記母材のBaまたはSrと置換されることができる。上記希土類元素は、Dy、Ho、Sm、La、Gd、Er、及びYのうち少なくとも1つであることができ、酸化数3+であることができる。上記希土類元素は、コア領域1内に、コア領域1の全体mol%を基準に、1mol%~10mol%の含量で含まれることができる。
【0017】
シェル領域5は絶縁領域であることができる。シェル領域5はコア領域1を囲むように配置されることができる。高誘電率を確保するために、コア領域1の直径DCは、シェル領域5の厚さTSより大きいかまたは同一であればよい。コア領域1の直径DCとシェル領域5の厚さTSとの比は、例えば、約2.5:1~4:1の範囲であることができる。
【0018】
シェル領域5は、ABO3で表されるペロブスカイト構造の母材及び副成分を含むことができる。Aは、Ba、Sr、及びCaのうち少なくとも1つであり、Bは、Ti、Zr、及びHfのうち少なくとも1つであることができる。例えば、上記母材は、BaTiO3、SrTiO3、(Ba1-xSrx)TiO3、(Ba1-xCax)TiO3、Ba(Ti1-yHfy)O3、(Ba1-xSrx)(Ti1-yZry)O3、及びBa(Ti1-yZry)O3のうち1つであり、コア領域1の母材と同一でも異なってもよい。上記副成分は、第1~第4副成分であることができる。
【0019】
上記第1副成分は、Ba、Sr、及びNbのうち、コア領域1の母材と異なる少なくとも1つの元素を含むことができる。例えば、コア領域1の母材がBaTiO3である場合、上記第1副成分はSr及びNbのうち少なくとも1つを含むことができる。例えば、コア領域1の母材がSrTiO3である場合、上記第1副成分はBa及びNbのうち少なくとも1つを含むことができる。上記第1副成分は、誘電体粉末10の誘電率を上昇させるための成分である。
【0020】
上記第2副成分は、Si、Ba、及びAlのうち少なくとも1つを含むことができる。上記第2副成分はガラス成分であることができ、シェル領域5の絶縁特性のために含まれるものである。
【0021】
上記第3副成分は、Na、Li、Kなどのアルカリ金属及びBのうち少なくとも1つを含むことができる。上記第3副成分は、焼結助剤として含まれるものであって、焼成温度を下げる役割を果たすことができる。
【0022】
上記第4副成分は、遷移金属を含むことができ、Zr、Mg、Mn、及びVのうち少なくとも1つを含むことができる。上記第4副成分はアクセプタ(acceptor)成分であり、抵抗特性の確保に寄与することができる。
【0023】
図2を参照すると、誘電体粉末10aは、コア領域1及びシェル領域5aの他に、最外側層7をさらに含む。
【0024】
最外側層7は、上述の実施形態の誘電体粉末10におけるシェル領域5の第1副成分と同一の成分を含むことができる。最外側層7は、Ba、Sr、及びNbのうち、コア領域1の母材に含まれていない少なくとも1つの元素を含む。例えば、コア領域1の母材がBaTiO3である場合、最外側層7はSr及びNbのうち少なくとも1つを含むことができる。例えば、コア領域1の母材がSrTiO3である場合、最外側層7はBa及びNbのうち少なくとも1つを含むことができる。最外側層7は、誘電体粉末10aの誘電率を上昇させる役割を果たすことができる。
【0025】
この際、シェル領域5aは、上述の実施形態の誘電体粉末10におけるシェル領域5の上記第1副成分を除いて上記第2~第4副成分のみを含むか、上記第1副成分を相対的に低い濃度で含むことができる。上記第1副成分の濃度は、シェル領域5aに比べて最外側層7においてさらに高ければよい。例えば、シェル領域5aは、コア領域1の全体mol%を基準に、0.1mol%以下の濃度で上記第1副成分を含むことができる。すなわち、最外側層7は、上述の実施形態の誘電体粉末10と類似の構造を有するが、シェル領域5における特定の成分が最外側層7に主に配置されている構造を有すると理解されることができる。
【0026】
以下、本発明の一実施形態による誘電体粉末の製造方法について説明する。
【0027】
一実施形態によると、誘電体粉末10、10aは、液相法、特に水熱法を用いて製造されることができる。先ず、Ba(OH)2及びSr(OH)2のうち少なくとも1つを準備し、これにドープのための希土類元素及びTiO2を投入した後、置換及びドープして粒成長させることで、コア領域1を形成する。
【0028】
次に、シェル領域5、5aを成すシード(seed)物質及び上記副成分に該当する物質を投入して粒成長させることで、コア領域1の周りにシェル領域5、5aを形成する。上記シード物質は、BaTiO3系またはSrTiO3系物質であることができる。
【0029】
その後、実施形態によって、シェル領域5aの表面に最外側層7をさらに形成することができる。
【0030】
次に、乾燥工程を行って、最終的に誘電体粉末10、10aを製造することができる。
【0031】
図3は本発明の一実施形態による誘電体粉末を用いた誘電体の微細構造を概略的に示す断面図である。
【0032】
図3を参照すると、誘電体100は、結晶粒コア領域101及び結晶粒シェル領域105を含む結晶粒Gと、結晶粒界GBと、を含む。誘電体100は、本発明の誘電体粉末を焼成して形成された焼結体である。
【0033】
結晶粒Gは、多角形状を有することができるが、これに限定されるものではない。それぞれの結晶粒Gにおいて、結晶粒コア領域101は結晶粒シェル領域105により囲まれた形態で配置されることができる。結晶粒シェル領域105は結晶粒界GBに隣接した領域であることができる。結晶粒Gは、平均サイズが500nmより小さく、例えば、50nm~500nmの範囲を有することができる。上記平均サイズとは、結晶粒Gの直径の平均を意味する。
【0034】
結晶粒コア領域101は半導性または導電性領域であることができる。結晶粒コア領域101は、内部に電荷キャリアを含んで界面分極効果を実現するため、双極子(dipole)による分極特性に比べて高い変位(displacement)特性を示す。したがって、高誘電率を確保することができる。
【0035】
結晶粒コア領域101は、上述の誘電体粉末10のコア領域1と類似の成分からなることができる。結晶粒コア領域101は、ABO3で表されるペロブスカイト構造の母材及び希土類元素を含むドープ物質を含むことができる。Aは、Ba、Sr、及びCaのうち少なくとも1つであり、Bは、Ti、Zr、及びHfのうち少なくとも1つであることができる。上記希土類元素は、Dy、Ho、Sm、La、Gd、Er、及びYのうち少なくとも1つであり、酸化数3+の金属元素であることができる。上記希土類元素は、結晶粒コア領域101内に、コア領域1の全体mol%を基準に、1mol%~10mol%の含量で含まれることができる。
【0036】
結晶粒コア領域101は、その他にも、結晶粒シェル領域105を成す物質を0.1mol%以下で含むことができる。
【0037】
結晶粒シェル領域105は絶縁領域であることができる。結晶粒シェル領域105は結晶粒コア領域101を囲むように配置されることができる。結晶粒シェル領域105の少なくとも一部は絶縁特性を有し、結晶粒コア領域101による比抵抗の減少を補うことで、絶縁抵抗特性を確保することができる。
【0038】
結晶粒シェル領域105は、上述の誘電体粉末10のシェル領域5と類似の成分からなることができる。結晶粒シェル領域105は、ABO3で表されるペロブスカイト構造の母材及び副成分を含むことができる。Aは、Ba、Sr、及びCaのうち少なくとも1つであり、Bは、Ti、Zr、及びHfのうち少なくとも1つであることができる。上記副成分は第1~第4副成分であることができる。
【0039】
上記第1副成分は、Ba、Sr、及びNbのうち、結晶粒コア領域101の母材に含まれていない少なくとも1つの元素を含むことができる。例えば、結晶粒コア領域101の母材がBaTiO3である場合、上記第1副成分はSr及びNbのうち少なくとも1つを含むことができる。例えば、結晶粒コア領域101の母材がSrTiO3である場合、上記第1副成分はBa及びNbのうち少なくとも1つを含むことができる。
【0040】
上記第2副成分は、Si、Ba、及びAlのうち少なくとも1つを含むことができる。上記第3副成分は、Na、Li、Kなどのアルカリ金属及びBのうち少なくとも1つを含むことができる。上記第4副成分は、Zr、Mg、Mn、及びVのうち少なくとも1つを含むことができる。本発明の一実施形態において、
図2を参照して上述した誘電体粉末10aを焼成して製造された誘電体100は、特に、結晶粒界GBに上記第1副成分であるBa、Sr、及びNbのうち少なくとも1つが含まれることができる。上記第1副成分の濃度は、結晶粒シェル領域105に比べて結晶粒界GBにおいてさらに高ければよい。
【0041】
結晶粒シェル領域105は、その他にも、結晶粒コア領域101を成す物質を相対的に少量で含むことができる。これは、結晶粒コア領域101から拡散されて含有されることができる。例えば、結晶粒シェル領域105は、結晶粒シェル領域105の全体mol%を基準に、上記希土類元素を0.5mol%より低い含量で含むことができる。
【0042】
このように構成された誘電体100は、それぞれの結晶粒Gの内部に導電性または半導性の結晶粒コア領域101が配置され、結晶粒界GBに沿っては絶縁性の結晶粒シェル領域105が互いに連結された形態で配置されることができる。したがって、結晶粒コア領域101によって高誘電率が確保されるとともに、結晶粒シェル領域105によって抵抗特性が確保されるため、DC電界下でも有効容量を確保することができる。
【0043】
積層型セラミック電子部品
図4は本発明の一実施形態による積層型セラミック電子部品を概略的に示す斜視図である。
【0044】
図5は
図4のV-V´の切断線に沿った積層型セラミック電子部品の概略的な断面図である。
【0045】
図4及び
図5を参照すると、一実施形態による積層セラミックキャパシタ1000は、本体部110と、本体部110の外側に配置される第1及び第2外部電極131、132と、を含む。以下では、電子部品の一例として積層セラミックキャパシタについて説明するが、本発明は、本発明の誘電体粉末を用いる様々な電子製品、例えば、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、またはサーミスタなどにも適用可能である。
【0046】
本体部110は、交互に積層された誘電層111ならびに第1及び第2内部電極121、122を含むことができる。本体部110は、例えば、六面体形状を有することができる。
【0047】
誘電層111は、
図3を参照して上述した誘電体100からなる誘電層であることができる。誘電層111は、ABO
3で表されるペロブスカイト構造の母材及び希土類元素を含むドープ物質を含む半導性または導電性の結晶粒コア領域と、上記結晶粒コア領域を囲む絶縁性の結晶粒シェル領域と、を含む結晶粒を含む焼結体からなることができる。上記Aは、Ba、Sr、及びCaのうち少なくとも1つであり、上記Bは、Ti、Zr、及びHfのうち少なくとも1つであることができる。
【0048】
誘電層111の平均厚さは2μm以下であり、例えば、0.5μm以下であることができるが、これに限定されない。本発明の一実施形態による誘電層111は、誘電層111を成す上記結晶粒のサイズが相対的に小さく形成されることができるため、誘電層111の厚さも最小化することができる。
【0049】
第1及び第2内部電極121、122はそれぞれの誘電層111を挟んで互いに対向するように配置されることができる。第1内部電極121は少なくとも一側面が本体部110の一端部と接し、第2内部電極122は少なくとも一側面が本体部110の他端部と接するように交互に積層されることができる。第1及び第2内部電極121、122は、例えば、銀(Ag)、鉛(Pb)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、及びこれらの合金のうち少なくとも1つを含むことができる。第1及び第2内部電極121、122は導電性ペーストを用いて形成されることができる。
【0050】
第1及び第2外部電極131、132は、本体部110の両端部に配置されることができる。第1及び第2外部電極131、132は第1及び第2内部電極121、122と電気的に連結されてキャパシタ回路を構成することができる。第1及び第2外部電極131、132は、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、銀-パラジウム(Ag-Pd)、及びこれらの合金のうち少なくとも1つを含むことができる。
【0051】
以下、本発明の一実施形態による積層型セラミック電子部品の製造方法について説明する。
【0052】
一実施形態によると、先ず、本発明の誘電体粉末を用いてセラミックグリーンシートを製造する。次に、上記セラミックグリーンシートに第1及び第2内部電極121、122を印刷する。次に、第1及び第2内部電極121、122が印刷された上記セラミックグリーンシートを積層及び圧着し、切断することで本体部110を製造し、それを焼成する。次に、焼成された本体部110に、銅(Cu)ペーストを用いたターミネート工程及び電極焼成を行うことで第1及び第2外部電極131、132を形成する。
【0053】
本発明で用いられた一実施例という表現は、互いに同一の実施例を意味せず、それぞれ互いに異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されるものである。しかし、上記提示された一実施例は、他の実施例の特徴と結合して実施されることを排除しない。例えば、特定の一実施例で説明された事項が他の実施例で説明されていなくても、他の実施例でその事項と反対であるか矛盾する説明がない限り、他の実施例に関連する説明であると理解されることができる。
【0054】
また、本発明で用いられた用語は、一例を説明するために説明されたものであるだけで、本発明を限定しようとする意図ではない。このとき、単数の表現は文脈上明確に異なる意味でない限り、複数を含む。
【符号の説明】
【0055】
1 コア領域
5、5a シェル領域
7 最外側層
10、10a 誘電体粉末
100 誘電体
101 結晶粒コア領域
105 結晶粒シェル領域
110 本体部
111 誘電層
121 第1内部電極
122 第2内部電極
131 第1外部電極
132 第2外部電極