IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニバーシティ・オブ・ダラムの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】超伝導磁石
(51)【国際特許分類】
   H01F 6/06 20060101AFI20230208BHJP
   H10N 60/81 20230101ALI20230208BHJP
【FI】
H01F6/06 140
H01F6/06 150
H01L39/04
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019562280
(86)(22)【出願日】2018-05-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-16
(86)【国際出願番号】 GB2018051242
(87)【国際公開番号】W WO2018206944
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-03-31
(31)【優先権主張番号】1707392.5
(32)【優先日】2017-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】508341957
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ダラム
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100137903
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 亨
(72)【発明者】
【氏名】ハンプシャー ダミアン
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04268353(US,A)
【文献】特開昭61-189485(JP,A)
【文献】特開2004-259944(JP,A)
【文献】特開2017-069556(JP,A)
【文献】特開昭55-163808(JP,A)
【文献】特開昭53-72995(JP,A)
【文献】特開2007-208122(JP,A)
【文献】特開昭55-39070(JP,A)
【文献】米国特許第4749540(US,A)
【文献】米国特許第4472344(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 6/06
H01F 17/06
H01L 39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的にトロイダル型の磁場の一部を装置内に生じさせる超伝導の磁石であって、前記トロイダル型の磁場は、回転軸及びこれに垂直なミッドプレーンを有し、前記超伝導の磁石は、
数の第1の伝導体と、複数の第2の伝導体とを含む1組の伝導体であって、前記複数の第1の超伝導体の各々は、前記複数の第2の超伝導体の各々よりも前記回転軸から小さい距離で前記ミッドプレーンを通過する、1組の伝導体と、
1組のジョイントと、
を備え、
前記ジョイントの各々は、前記トロイダル型の磁場のミッドプレーンから離れて配置され、かつ、前記ジョイントは、前記ミッドプレーンのそれぞれの側に交互に配置され、
ジョイントは、前記第1の伝導体の細長い接続領域を前記第2の伝導体の細長い接続領域と接続し
各ジョイントは、異なる前記第1及び第2の超伝導体を接続して、前記磁石の巻線の少なくとも一部に対応する一連の交互に並ぶ第1及び第2の伝導体を形成し、
それぞれの前記ジョイントによって接続されたそれぞれの前記第1の超伝導体の前記細長い接続領域は、当該第1の超伝導体の端部か又はその近くにあり、当該第1の超伝導体の前記端部は、当該第1の超伝導体における、前記ミッドプレーンから最も遠い延在部か又はその近くにあり、
前記それぞれのジョイントによって接続されたそれぞれの前記第2の超伝導体の前記細長い接続領域は、当該第2の超伝導体の端部か又はその近くにあり、当該第2の超伝導体の前記端部は、当該第2の超伝導体における、前記ミッドプレーンから最も遠い延在部か又はその近くにあり、
前記細長い接続領域の各々は、その細長く延びる方向が前記回転軸に対し実質的に平行になるように延在する、磁石。
【請求項2】
それぞれの前記ジョイントによって接続された前記第1及び第2の超伝導体は、各々、前記ミッドプレーンから少なくとも部分的に離れる方向に延在する少なくとも1つの部分を含み、前記第1及び第2の超伝導体の前記部分は、実質的に隣接して配置されている、請求項1に記載の磁石。
【請求項3】
前記第1の超伝導体に関連付けられたそれぞれのジョイントの各々は、前記回転軸からそれぞれ異なる距離であって且つ前記ミッドプレーンからそれぞれ異なる距離に配置されている、請求項1又は2に記載の磁石。
【請求項4】
前記第1の超伝導体に関連付けられたそれぞれのジョイントの各々は、前記回転軸に対して平行な線上であって且つ前記ミッドプレーンからそれぞれ異なる距離に配置されている、請求項1又は2に記載の磁石。
【請求項5】
前記ジョイントは、上方臨界磁場を有するハンダを含み、
該ハンダは、使用時における前記ジョイントの位置での最大動作磁場よりも高い上方臨界磁場を有するように選択されている、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の磁石。
【請求項6】
3つの前記第1の超伝導体と、3つの前記第2の超伝導体とを備える、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の磁石。
【請求項7】
D字形状を有する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の磁石。
【請求項8】
前記第1の超伝導体は第1の超伝導特性を有し、前記第2の超伝導体は、前記第1の超伝導特性とは異なる第2の超伝導特性を有する、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の磁石。
【請求項9】
前記第1の超伝導体又は前記第2の超伝導体のどちらか一方が高温超伝導特性を有し、前記第1の超伝導体又は前記第2の超伝導体の他方が低温超伝導特性を有する、請求項8に記載の磁石。
【請求項10】
1組の動作条件の下で、
前記第1の伝導体が、第1の磁場において、第1の臨界電流を有し、
前記第2の伝導体が、前記第1の磁場よりも低い第2の磁場において、第2の臨界電流を有し、
前記第1及び第2の磁場が、それぞれ前記第1及び第2伝導体によって占有されることとなる前記装置の領域内の最大動作磁場に対応し、
前記第1及び第2の臨界電流が、それぞれ、第1及び第2の余裕だけ動作電流を超える、請求項8又は9に記載の磁石。
【請求項11】
1組の動作条件の下で、
前記第1の伝導体が、第1の値に対応する上方臨界磁場を備えた超伝導体を含み、
前記第2の伝導体が、第2の値に対応する上方臨界磁場を備えた超伝導体を含み、前記第1の値が、前記第2の値よりも高い、請求項8乃至10のいずれか1項に記載の磁石。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、超伝導磁石に関し、特に、トカマクなどの装置において実質的にトロイダル型の磁場の一部を生じさせる超伝導の磁石に関する。
【背景技術】
【0002】
知られているトカマク
図1図5を参照して、トカマク1の知られている設計が、説明される。トカマク1は、磁気閉じ込め核融合炉である。トカマク1は、約30メートルの高さと、約2万トンの重量とを有する。
【0003】
特に(断面図である)図1を参照すると、トカマク1は、真空容器2と、いくつかの超伝導磁石システム3、4、5とを含む。
【0004】
真空容器2は、動作の最中は、摂氏1億度を超えた温度まで加熱され、核融合反応に関係する重水素とトリチウムとのプラズマを保持する。
【0005】
特に図2Aおよび図2Bを参照すると、真空容器2は、実質的にD字形状の断面を備えたトロイダル型の形状を有する。真空容器2は、二重の壁を有するステンレス鋼で構築されている。真空容器2は、いわゆるブランケット(図示せず)を保持するが、このブランケットは、真空容器2の内側表面を裏打ちしていて、反応によって生じる高エネルギーの中性子に対するシールドとして作用する。真空容器2は、ダイバータ(図示せず)も保持しており、このダイバータは、反応によって生じる熱を抽出する。
【0006】
図1を再度参照すると、トカマク1は、16個のトロイダル型の磁場コイル3(以下では、全体として、TFコイルと称される)の組を含んでおり、図には、その約半分が示されている。
【0007】
特に図2Aおよび図2Bを参照すると、それぞれのTFコイル3は、実質的にD字形状を有し、トロイダル型の真空容器2の断面を包囲している。動作中は、TFコイル3は、(磁)場6(以下では、トロイダル型の磁場と称される)を生成する。トロイダル型の磁場6は、TFコイル3によって囲まれた領域におおよそ対応する断面を備えたトロイダル型の形状を有する。トロイダル型の磁場6は、主軸7(これも、下記の段落において定義される)の周囲を円運動する実質的に円状の磁力線を有する。トロイダル型の磁場6は、プラズマ3を閉じ込めるように機能する一次磁場である。
【0008】
トロイダル型の磁場6に対応するトロイドの回転軸7は、以下、一般的に、主軸と称される。主軸7は、実質的に垂直方向である。トロイダル型の磁場6のミッドプレーン8、すなわち、主軸7に垂直でありトロイダル型の磁場6を2つの実質的に等しい部分に分割する平面は、以下、一般的に「ミッドプレーン」と称される。ミッドプレーン8は、実質的に水平方向である。主軸7とミッドプレーン8とは、本明細書において、位置や方向などを記述するのに用いられる。
【0009】
特に図2Aを参照すると、それぞれのTFコイル3は、シェル3aを含む。特に図3A-Cを参照すると、それぞれのTFコイル3は、シェル3aの内部の巻線パック3bを含む。巻線パック3bは、7つのいわゆる二重パンケーキ3cを含む。それぞれの二重パンケーキ3cは、プレート3dを含んでおり、プレート3dは、実質的にD字形状であり、その主平面の両方の上に巻線溝3eを有する。単一のケーブル・イン・コンジット伝導体3f(以下では、一般的に、「伝導体」と称される)が、2つの溝3eに配列される。
【0010】
特に図4を参照すると、伝導体3fは、多数(約1000)の超伝導ストランド3fbを含むジャケット3faと、動作中、約4.5ケルビンの温度のヘリウムの流体を運ぶ(中心)冷却チャネル3fcとを有する。超伝導ストランド3fbは、低温超伝導体であるニオブ-スズ(NbSn)を含む。
【0011】
再び図3Aを参照すると、隣接する二重パンケーキ3cにおける伝導体3fは、TFコイル3の底部において、「パンケーキ間(inter-pancake)」ジョイント3gによって結合される。最初および最後の二重パンケーキ3cのそれぞれにおける伝導体3fは、「終端」ジョイント3hによって電源システムに結合される。パンケーキ間ジョイント3gは、それぞれが、いわゆる祈り手構成(praying-hands configuration)を有する。終端ジョイント3hは、それぞれが、いわゆる握手構成(shaking-hands configuration)を有する。
【0012】
特に、(水平方向の断面図である)図5を参照すると、それぞれのパンケーキ間ジョイント3gは、2つの箱3gaを含む。それぞれの箱3gaは、ステンレス鋼の部分3gbと銅の部分3gcとを含む。ステンレス鋼の部分3gbと銅の部分3gcとは、爆着されている。ある長さの伝導体3fは、(いくらかのその絶縁部分なしで)それぞれの箱3gaにおける開口の中に強制される。箱3gaの銅の部分3gcは、スズ-鉛のハンダ3gdを用いて相互にハンダ付けされ、2つの箱3gaは、スチール・クランプ3geを用いて相互にクランプされる。
【0013】
再び図1を参照すると、トカマク1は、6つのポロイダル型の磁場コイル4(以下では、PFコイルと称される)を含む。それぞれのPFコイル4は、リングの形状を有する。それぞれのPFコイル4は、主軸7上に中心を有し、水平方向に向けられている。最上位および最下位のPFコイル4は、PFコイル4の中で最小であり、それぞれが、TFコイル3の上側および下側に位置する。残りのPFコイル4は、TFコイル3を包囲する。それぞれのPFコイル4は、低温超伝導体であるニオブ-チタン(NbTi)を用いて作られる。動作中には、PFコイル4は、プラズマの形状を決定し安定化させるように機能する磁場(以下では、ポロイダル型の磁場と称される)を生じさせる。
【0014】
トカマク1は、中心ソレノイド5を含む。中心ソレノイド5は、TFコイル3の組の中心にある開口を通過して垂直方向に延在する。中心ソレノイド5は、NbSnを用いて作られる。動作中は、プラズマにおいて電流を誘導することによってプラズマを加熱するのを助けるように機能する、時間変動する磁場を、中心ソレノイド5は生じさせる。
【0015】
トカマク1の多数の他のコンポーネントは、図に示されていない。たとえば、トカマク1は、超伝導補正コイル、支持構造、低温システム、電源システムなどを含む。
【0016】
トカマク1のさらなる詳細は、たとえば、M. Huguet, “Key engineering features of the ITER-FEAT magnet system and implications for the R&D programme”, Nuclear Fusion, vol.41, p.1503, 2011, および N. Mitchell et al., “The ITER Magnet System”, IEEE Transactions on Applied Superconductivity, vol.18, p.435, 2008において提供されている。
【発明の概要】
【0017】
知られているトカマクの短所
そのようなトカマク1の短所は、たとえば、TFコイル3の中の1つが故障を生じる場合であっても、特に真空容器2を少なくとも部分的に分解せずに、それを容易に交換することは不可能であるように、TFコイル3と真空容器2とが相互にリンクされていることである。
【0018】
取り外し可能なジョイント
上述された短所に対応する1つの方法は、取り外し可能なジョイントを有するTFコイル3を用いることである。取り外し可能なジョイントとは、たとえば、そのジョイントによって接続されている伝導体の性能を著しく劣化させることなく、破壊され再度作られることが可能なジョイントである。
【0019】
たとえば、Y. Tsui et al, “Soldered joints-an essential component of demountable high temperature superconducting fusion magnets”, Superconductor Science and Technology, vol.29, p.075005, 2016において説明されているように、取り外し可能なジョイントは、モノリシックなTFコイル構造の単一障害点(single point failure)を除去し、非常に大型で複雑な超伝導磁石のモジュール構成を可能にし、アクセスを向上させることによって、反応炉のメンテナンスを向上させ、核融合反応炉の利用可能性を増大させ、簡略化された材料コンポーネントの試験を可能にする。
【0020】
Z.S. Hartwig et al, “An initial study of demountable high-temperature superconducting toroidal field magnets for the Vulcan tokamak conceptual design”, Fusion Engineering and Design, vol.87, p.201, 2012には、取り外し可能な高温超伝導(HTS)TF磁石システムの技術的課題と低温に依存するコストおよびパラメータとの初期評価が、バルカン・トカマク概念設計(長半径R=1.2m、短半径a=0.3m、軸上の磁場B=7T)をベースラインとして用いて、実行されたことの記載がある。主たる真空容器の垂直方向の取り外しとコア・コンポーネントの日常的なメンテナンスを許容するためにミッドプレーンにおいて結合されることにより、構造的なD字形状のスチール製支持ケースが、内部的にルーティングされたイットリウム-バリウム-銅-酸化物(YBCO)の超伝導ケーブルのための低温冷却を提供する。
【0021】
B.N. Sorbom et al, “ARC: A compact, high-field, fusion nuclear science facility and demonstration power plant with demountable magnets”, Fusion Engineering and Design, vol.100, p.378, 2015には、長半径が3.3m、短半径が1.1m、軸上の磁場が9.2TであるARC200-250MWeトカマク反応炉の記載がある。ARCは、希土類-バリウム-銅-酸化物(REBCO)超伝導トロイダル型磁場コイルを有しており、これは、分解を可能にするジョイントを有する。ジョイントは、外側ミッドプレーンとコイルの頂部とに配置される。また、磁石の4つのコーナー全部にあるジョイントが取り外し可能である磁石構成が可能であることを表す「額縁(picture frame)」型のTFコイル配列についても記載がある。
【0022】
概要
本発明の一態様によれば、実質的にトロイダル型の磁場の一部を装置において生じさせる超伝導磁石が提供され、この磁石は、
1つまたは複数の第1の伝導体と、1つまたは複数の第2の伝導体とを含む1組の伝導体と、
1組のジョイントであって、ジョイントの各々が、磁石の巻線の少なくとも一部に対応する、一連の交互に並ぶ第1の伝導体と第2の伝導体とを形成するように、第1の伝導体の領域と第2の伝導体の領域とを接続する、1組のジョイントと
を備え、
ジョイントの各々が、トロイダル型の磁場のミッドプレーンから離れて位置決めされ、ジョイントが、ミッドプレーンの交互に並ぶ側面(alternating sides)に位置決めされ、各第1の伝導体が、各第2の伝導体よりも、トロイダル型の磁場の回転軸から小さい距離で、ミッドプレーンを通過し、
領域の各々が、ミッドプレーンから少なくとも部分的に離れる方向に、細長く延在する。
【0023】
よって、この磁石は、様々な長所を有し得る構成を有する。たとえば、ジョイントは、比較的低い磁場領域に位置決めされ得る。
【0024】
ジョイント自体は、より低い領域に延在し得、より大きな表面積を有し得るが、これら両方が、ジョイントの抵抗値を低下させ得る。さらに、磁石における利用可能な空間が、有効に用いられ得る。
【0025】
本装置は、トカマクとすることができ、一般的に、本明細書では、「トカマク」と称される。しかし、この磁石は、他のタイプの装置でも用いられ得る。この磁石は、異なる磁場(たとえば、直線状、円筒状の磁場)を生じさせるためにも用いられ得るが、その場合には、本明細書に記載されている長所のいくつかを有しない可能性があり得る。
【0026】
少なくとも1つの第1の伝導体または少なくとも1つの第2の伝導体は、実質的な直線として延在する少なくとも1つの細長い部分を含み得る。よって、この磁石は、好ましくは直線状である伝導体(たとえば、曲げることにより損傷を受ける伝導体)を含み得る。
【0027】
少なくとも1つの第1の伝導体または少なくとも1つの第2の伝導体は、連続的な第1、第2および第3の細長い部分を含み得る。第1および第3の部分は、実質的な直線の中の線分に沿って延在し得る。第2の部分は、実質的に曲線状の経路に沿って延在し得る。
【0028】
したがって、この磁石は、いわゆるΦの半分の形状を有し得る(たとえば、図6Bを参照)。そのような磁石は、本明細書に記載された長所のうちのいくつかまたは全部を有し得る。さらに、そのような磁石は、トカマクにおいて用いられるのに特に適し得るが、その理由は、その内側表面が、トカマクのD字形状を有する真空容器の外側表面と、実質的に一致し得るからである。
【0029】
第1および/または第2の伝導体の形状は、その伝導体において好ましい動作応力/歪みを生じるように、適合させることが可能である。さらに、超伝導体の結晶構造の相対的方位と、磁場とに依存する臨界電流を有する超伝導体については、動作磁場に対するその超伝導体の好ましい向きは、適切で適合させた形状を用いて、達成され得る。
【0030】
1組のジョイントのうちの少なくとも1つについて、1組の動作条件の下で、そのジョイント、および/またはジョイントによって接続される第1の伝導体の領域、および/またはジョイントによって接続される第2の伝導体の領域は、ハンダを含み得るが、そのハンダは、最大動作磁場がそのハンダの上方臨界磁場未満である装置の領域を占有すべきである。この結果、このハンダは、超伝導性を有し得るので、ジョイントの(電気)抵抗値を、したがって、ジョイントのオーム加熱を低下させる。これが、ひいては、冷却要件や熱的不安定性などを緩和し得る。
【0031】
1組のジョイントのうちの少なくとも1つについて、ジョイントによって接続される第1の伝導体と第2の伝導体とは、各々が細長く、各々がミッドプレーンから少なくとも部分的に離れる方向に延在する少なくとも1つの部分を含み得る。よって、これらの伝導体は、ミッドプレーンからさらに離れた領域に延在し得るが、そのような領域では、動作磁場は一般的により低く、上で説明されたように、ジョイントは効果的に位置決めされ得る。さらに、これらの伝導体の臨界電流は、そのようなより低い動作磁場ではより大きくなり得、このことが、ジョイントにおける抵抗値をさらに低下させ得る。
【0032】
第1の伝導体および第2の伝導体のこれらの部分は、実質的に並ぶように位置決めされ得る。よって、この形状は、磁場エネルギーを過度に上昇させることを必要としない。
【0033】
1組のジョイントのうちの少なくとも1つについて、そのジョイントによって接続される第1の伝導体の領域は、第1の伝導体の端部にまたはその近傍にあり得る。第1の伝導体の端部は、第1の伝導体のミッドプレーンから最も遠い延在部に、またはその近傍にあり得る。代替的にまたは付加的に、そのジョイントによって接続される第2の伝導体の領域は、第2の伝導体の端部に、またはその近傍にあり得る。第2の伝導体の端部は、第2の伝導体のミッドプレーンから最も遠い延在部に、またはその近傍にあり得る。このように、伝導体の与えられた形状に対して、ジョイントは、ミッドプレーンからの最大距離に、またはその近傍に位置決めされ、よって、最小の動作磁場に、または最小の動作磁場の近傍に、効果的に位置決めされる。
【0034】
1組のジョイントのうちの少なくとも1つについて、そのジョイントによって接続される第1の伝導体の領域は、第1の表面を含み得、そのジョイントによって接続される第2の伝導体の領域は、第2の一致する表面を含み得る。こうして、2つの領域の間に、低抵抗値および/または強力な接続が、獲得され得る。
【0035】
1組のジョイントのうちの少なくとも1つは、祈り手ジョイントであってもよい。そのようなジョイントは、本明細書に記載されている伝導体の配列のいくつかと共に用いることに特に適し得る。
【0036】
1組のジョイントのうちの少なくとも1つは、取り外し可能であってもよい。
【0037】
第2の伝導体は、第1の伝導体とは異なるタイプとし得る。よって、第1および第2の伝導体は、軸からおよび/またはミッドプレーンからの距離がより遠い「外側の」領域と比較すると、軸からおよび/またはミッドプレーンからの距離がより近い「中心の」領域では、異なる条件に応じて、(たとえば、特に適切な特性を有するように)適合させ得る。これらの異なる条件には、動作磁場、応力、放射線、利用可能な空間などが含まれ得る。
【0038】
少なくとも1つの第1の伝導体は、第1の超伝導体を含み得、少なくとも1つの第2の伝導体は、第2の、異なる超伝導体を含み得る。よって、異なる超伝導体の異なる特性(たとえば、臨界電流、上方臨界磁場、臨界温度)を利用し得る。
【0039】
本発明のさらなる態様によれば、実質的にトロイダル型の磁場の一部を装置において生じさせる超伝導磁石が提供され、この磁石は、
各々が第1の超伝導体を含む、1つまたは複数の第1の伝導体と、
各々が第2の異なる超伝導体を含む、1つまたは複数の第2の伝導体と
を備え、
各第1の伝導体は、各第2の伝導体よりも、トロイダル型の磁場の回転軸から小さい距離で、トロイダル型の磁場のミッドプレーンを通過する。
【0040】
よって、ここでも、第1および第2の伝導体は、中心領域および外側領域のそれぞれにおいて、異なる条件に応じるように適合させ得、特に、異なる超伝導体の(たとえば、臨界電流、上方臨界磁場、臨界温度などの)異なる特性が利用され得る。
【0041】
この磁石は、1組のジョイントをさらに含み得る。これらのジョイントの各々は、磁石の巻線の少なくとも一部に対応する、一連の交互に並ぶ第1の伝導体と第2の伝導体とを形成するように、第1の伝導体の領域と第2の伝導体の領域とを接続し得る。これらのジョイントの各々は、ミッドプレーンから離れて位置決めされ得、これらのジョイントは、ミッドプレーンの交互に並ぶ側面に位置決めされ得る。
【0042】
これらの領域の各々は、ミッドプレーンから少なくとも部分的に離れる方向に、細長く延在し得る。
【0043】
この磁石は、1組のジョイントを含み得、これらのジョイントの各々は、第1の伝導体と第2の伝導体とを間接的に接続して、磁石の巻線の少なくとも一部に対応し、交互に並ぶ第1の伝導体と第2の伝導体とを含む一連の伝導体を形成する。巻線は、第1の伝導体と第2の伝導体との間にさらなる伝導体(および、さらなるジョイント)を含み得る。
【0044】
換言すると、この磁石は、1組のさらなる伝導体と、1組のジョイントとをさらに含み得る。これらのジョイントの各々は、伝導体(たとえば、第1の伝導体と第2の伝導体、第1の伝導体とさらなる伝導体、第2の伝導体とさらなる伝導体、または2つのさらなる伝導体)のうちの2つを、一連の伝導体を形成するように接続し得る。この一連の伝導体は、第1の伝導体と第2の伝導体とが交互に生じる磁石の巻線の少なくとも一部に対応し得る。
【0045】
第1の超伝導体および第2の超伝導体のうちの一方は、高温超伝導体(HTS)であってもよく、第1の超伝導体および第2の超伝導体のうちの他方は、低温超伝導体(LTS)であってもよい。よって、特性は、著しく異なる場合があり得る。
【0046】
第1の伝導体と第2の伝導体とは、同一の超伝導体を含み得る。第1の伝導体と第2の伝導体とは、異なるサイズ、異なる形状、異なる非超伝導成分、その他を有し得る。第1の伝導体と第2の伝導体とは、同一の超伝導体の異なるバージョンを有し得る。同一のタイプの伝導体でも、厳密に同一ではないことがあり得る。1組の伝導体のうちの少なくともいくつかが、一連のうちのそれらの順序に従って、異なる形状および/または特性を有し得る。以上のように言明したものの、同一のタイプの伝導体間のいかなる差異も、一般的に、異なるタイプの伝導体間の差異よりも小さい。
【0047】
1組の(動作温度、動作応力、その他を含む)動作条件の下で、少なくとも1つの第1の伝導体は、第1の磁場において、第1の臨界電流を有し得、少なくとも1つの第2の伝導体は、第2の、より低い磁場において、第2の臨界電流を有し得る。第1の磁場および第2の磁場は、それぞれ第1の伝導体および第2の伝導体によって占有されるべき装置の領域における最大動作磁場に対応し得る。第1の臨界電流および第2の臨界電流は、それぞれ第1の余裕および第2の余裕だけ、動作電流を超え得る。臨界電流とは、(事実上)抵抗値がゼロの状態で、超伝導体が運ぶことができる最大電流である。
【0048】
動作磁場は、一般的に、第1の伝導体によって占有される、より中心に近い領域ほど、第2の伝導体によって占有される、より外側の領域よりも、高い。第1の伝導体と第2の伝導体とは、該当する磁場での使用のために、最適化され得る。特に、第1の伝導体と第2の伝導体とは、該当する磁場においてゼロの抵抗値で動作電流を本当に安全に(すなわち、適切な余地を有しながら)運ぶことができるように、選択され得る。
【0049】
動作磁場は、(動作電流を運ぶ)磁石や(たとえば、他のトロイダル型磁場コイル、中心ソレノイドなどの)他の磁石、その他によって、生じ得る。動作磁場は、時間変動し得るが、その場合に、本明細書では、その(時間経過に伴う)最高値が関連する。
【0050】
第1の伝導体は、より高い磁場において抵抗値ゼロで動作電流を運ばなければならないので、第1の伝導体の方が、一般的に、第2の伝導体よりも高コストである。第1の伝導体を、全体には有しないことにより、磁石は、従来型の(1部品型の)磁石よりも低コストで特定の動作磁場を生じさせることが可能になり得る。
【0051】
1組の動作条件の下で、少なくとも1つの第1の伝導体は、第1の値に対応する上方臨界磁場を備えた超伝導体を含み得、少なくとも1つの第2の伝導体は、第2の値に対応する上方臨界磁場を備えた超伝導体を含み得る。第1の値は、第2の値より高いことがあり得る。上方臨界磁場とは、(タイプIIの)超伝導体が超伝導状態を維持する最高の磁場であり、したがって、特定の磁場において用いられるための超伝導体の適合性を示す。
【0052】
少なくとも1つの第1の伝導体と、少なくとも1つの第2の伝導体とは、異なる動作温度を有し得る。よって、磁石において用いられ得る超伝導体については、より多くの選択肢が存在する。磁石の冷却がより複雑であり得る場合であっても、これにより、改善された磁石が製造されることが、可能になり得る。
【0053】
放射線によって生じる性能(たとえば、臨界電流)のいかなる低下も、少なくとも1つの第2の伝導体に対するものよりも、少なくとも1つの第1の伝導体に対するものの方が、小さくなる場合があり得る。トカマクにおけるプラズマによって放出される放射線は、一般的に、外側領域においてよりも、中心領域における方が、より強い。よって、中心領域においてだけ、放射線による損傷を生じにくい伝導体を有することにより、磁石の動作/サービス寿命を、そのコストを過度に増大させることなく、伸ばすことが可能になり得る。
【0054】
巻線は、整数値または非整数値である巻回数Nで構成され得るが、このNは、100の前後、または、それよりも多いもしくは少ないことがあり得る。
【0055】
1組の伝導体の各々は、1ターンの4分の1から4分の3に対応し得るが、好ましくは、1ターンの2分の1である。
【0056】
平均では、1ターン当たり、1組の伝導体のうちの2つ(たとえば、1つの第1の伝導体と1つの第2の伝導体)と、1組のジョイントのうちの2つであり得る。最初のターンと最後のターンとは、異なり得る。したがって、磁石は、約2N個の伝導体(たとえば、約N個の第1の伝導体および約N個の第2の伝導体)と、約2N個のジョイントとを有し得る。
【0057】
この磁石は、それが特に適した、球状トカマクにおいて用いられるように、構成され得る。
【0058】
この磁石は、たとえば、トロイダル型の真空容器から容易に除去されるなど、取り外し可能であり得、トロイダル型の真空容器の周囲に容易に再度組み立てられ得る。これには、ジョイントの全部が取り外し可能であることが要求される。
【0059】
この磁石は、
各々が第1の伝導体のうちの少なくともいくつかを含む、1つまたは複数の第1のユニットと、
各々が第2の伝導体のうちの少なくともいくつかを含む、1つまたは複数の第2のユニットと
を含み得る。
【0060】
これらのユニットは、磁石のレッグに対応し得、この場合、磁石は、ただ1つの第1のユニットと、ただ1つの第2のユニットとを含み得る。
【0061】
これらのユニットは、磁石のパンケーキの一部に対応し得、この場合には、磁石は、それぞれの対がパンケーキに対応する、第1および第2のユニットの中の1つまたは複数の対を含み得る。同一のパンケーキにおいて伝導体を接続するジョイントは、異なるパンケーキにおいて伝導体を接続するものとは異なり得る。
【0062】
本発明のさらなる態様によると、上述された磁石の第1のユニットおよび/または第2のユニットが提供される。そのようなユニットは、別々に供給され得る。
【0063】
複数の上述された磁石と、プラズマのためのトロイダル型の真空容器とを含むトカマクが提供され得る。
【0064】
本発明のさらなる態様によると、上述されたトカマクを構築する方法が提供され、この方法は、
真空容器の少なくとも一部を提供するステップと、次に、
伝導体を、真空容器の周囲に配列するステップと、
1組のジョイントを作成するステップと
を含む。
【0065】
よって、この磁石は、トロイダル型の真空容器の周囲に組み立てられ得ることにより、トカマクの製造を容易にする。
【0066】
本発明のさらなる態様によると、上述されたトカマクを動作させる方法が提供され、この方法は、
磁石の少なくとも一部が交換されるべきであると決定するステップと、
1組のジョイントのうちの少なくとも1つを取り外すステップと、
磁石の一部を交換するステップと、
1組のジョイントのうちの少なくとも1つを作成するステップと
を含む。
【0067】
このように、この磁石またはこの磁石の一部は、完全にまたは部分的に取り外し可能であり得、すなわち、たとえば、トロイダル型の真空容器を分解することなく、交換可能になり得る。これが、トカマクの手入れと修理とを容易にし得る。
【0068】
この決定するステップは、動作寿命またはサービス寿命が終了したと決定することを含み得る。こうして、磁石故障のリスクを、減少させ得る。
【0069】
この方法は、第1の伝導体(より強い放射線の影響を受ける可能性がある)の各々を、第2の伝導体の各々よりも、より頻繁に交換するステップを含み得る。よって、放射線の効果が、有効にかつ効率的に管理され得る。
【0070】
ここで、本発明の特定の実施形態が、添付の図面を参照することにより、例として、説明される。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1】トカマクの知られている設計の断面図である。
図2A図1に示されているトカマクの真空容器およびトロイダル型磁場コイルのうちの1つの図である。
図2B図2Aに示されている真空容器およびトロイダル型磁場コイルの半径方向の断面図である。
図3A図1に示されているトカマクのトロイダル型磁場コイルの巻線パックおよびジョイントの図である。
図3B図3Aに示されている巻線パックの断面図である。
図3C図3Aに示されている巻線パックの二重パンケーキの図である。
図4図1に示されているトカマクのトロイダル型磁場コイルにおいて用いられ得るケーブル・イン・コンジット型伝導体の断面図である。
図5図3に示されている巻線パックのパンケーキ間ジョイントの水平方向の断面図である。
図6A】さらなるトカマクの真空容器および磁石のうちの1つの図である。
図6B図6Bに示されている真空容器および磁石の半径方向の断面図である。
図6C図6Aに示されている真空容器および磁石の取り外しの間の図である。
図7図6Aに示されている磁石のパンケーキの図である。
図8A図6Aに部分的に示されているトカマクを(A)構築する方法の流れ図である。
図8B図6Aに部分的に示されているトカマクを動作させる方法の流れ図である。
図9図6Aに示されている磁石において用いられ得るさらなるパンケーキの図である。
図10図6Aに部分的に示されているトカマクにおいて用いられ得る磁石のいくつかの特徴の図である。
図11図6Aに部分的に示されているトカマクにおいて用いられ得る様々な磁石の図である。
図12図11Dに示されている磁石の一部であり得る(A)ジョイント、およびジョイントの領域における(B)磁場の図である。
図13図6Aに部分的に示されているトカマクにおいて用いられ得る2つの動作温度を有する磁石の一部の図である。
図14】たとえば図6Aに示されている磁石において用いられ得る様々な超伝導体について、約4.2ケルビンの温度における磁場と臨界電流密度とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
超伝導磁石
ここで、図6図7を参照して、(超伝導)磁石30が説明される。磁石30は、「第1の」トカマク10のTFコイル30に対応する。
【0073】
磁石30といくつかの関係するコンポーネントとを除くと、第1のトカマク10は、上述された「知られている」トカマク1と同一のコンポーネントを有し得る。特に、第1のトカマク10は、真空容器20、PFコイル(図示せず)、および中心ソレノイド(図示せず)を含み得るが、これらは、それぞれ、知られているトカマク1の真空容器2、PFコイル4、および中心ソレノイド5と同一である。
【0074】
第1のトカマク10は、複数の磁石を含んでいるが、これら複数の磁石の各々は、図6A~Cに示されており、かつ後述される磁石30と実質的に同一であり得る。
【0075】
磁石30は、「Φの半分」の形状を有しており、これは、「D」の形状であってDの縦方向の線が延在したものに対応する。Φの半分の形状によって囲まれた領域は、概ねD字形状である。磁石30は、トロイダル型の真空容器20の一部分を取り囲んでいる。動作中、磁石30は、トロイダル型の磁場60の一部を生成する。トロイダル型の磁場60は、磁石30によって囲まれた領域におおよそ対応する断面を備えたトロイダル型の形状を有する。トロイダル型の磁場60は、(実質的に垂直方向の)主軸70と、(実質的に水平方向の)ミッドプレーン80とを有しており、これらは、知られているトカマク1における場合と同様に定義される。トロイダル型の磁場60は、主軸70の周囲を循環する実質的に円形の磁力線(field lines)を有する。
【0076】
磁石30は、2つの部分31、32(以後、内側レッグおよび外側レッグと称される)を備えている。特に図6Cを参照すると、部分31は分離可能であり、それにより、後述されるように、磁石30が取り外し可能になる。内側レッグ31は、細長く、主軸70と平行な方向に実質的に直線として、延在している。内側レッグ31は、トロイダル型の真空容器20における開口を通過する。外側レッグ32は、細長く、曲線状の経路に沿って延在している。外側レッグ32の最上位部分は、内側レッグ31の最上位部分と実質的に平行であり、内側レッグ31の最上位部分と並ぶように配置されている。外側レッグ32の最下位部分は、内側レッグ31の最下位部分と実質的に平行であり、内側レッグ31の最下位部分と並ぶように配置されている。外側レッグ32の残りの部分は、最上位部分と最下位部分とのそれぞれに向かって滑らかな曲線状になっていることを除いて、おおよそD字形状を有している。外側レッグ32は、真空容器20の外側を包囲するように通っている。
【0077】
したがって、外側レッグ32は、全体として、内側レッグ32よりも、主軸70および/またはミッドプレーン80から、より離れて(すなわち、中心から離れて)いる。トロイダル型の磁場60は、一般的に、主軸70からの距離が増大するにつれて、および、ミッドプレーン80からの距離が増大するにつれて、減少する。したがって、外側レッグ32は、一般的に、内側レッグ31よりも、より小さな(動作)磁場の影響を受ける。トカマクにおける他の磁場(特に、他の磁場の中で最大である、中心ソレノイドによって生成される磁場)は、同様の態様で変動し得るので、この差異を強調することになる。
【0078】
図6Aを特に参照すると、磁石30は、シェル30aを含んでおり、このシェル30aは、内側レッグ31と外側レッグ32とにそれぞれ関連する「内側」部分31aと「外側」部分32aとに分割され得る。
【0079】
(シェル30aが取り外されている)図6Cを特に参照すると、内側レッグ31は、磁石30の巻線パック30bの「内側」部分31bを含み、外側レッグ32は、巻線パック30bの「外側」部分を含む。特に、内側レッグ31は、1つまたは複数の「内側」パンケーキ部分31cのいくつかを含み、外側レッグ32は、それと同数の「外側」パンケーキ部分32cを含む。それぞれの内側パンケーキ部分31cは、対応する外側パンケーキ部分32cと対になり、パンケーキ30cを形成する。
【0080】
次は、特に図7を参照し、パンケーキ30cの1つについて、説明される。
【0081】
内側のパンケーキ部分31cは「内側」プレート31cを含み、外側のパンケーキ部分32cは「外側」プレート32dを含む。内側プレート31dは内側レッグ31と類似の形状を有し、外側プレート32dは外側レッグ32と類似の形状を有するが、内側プレート31dと外側プレート32dとの最上位部分と最下位部分とはより複雑な形状を有する点が異なっており、これについては、後述される。
【0082】
内側部分31dと外側部分32dとは相互に接している場合があり得、任意の適切な態様で、着脱自在の態様で相互に接続され得る。
【0083】
パンケーキ30aは、単一のパンケーキである。あるいは、パンケーキ30aは、二重パンケーキまたは別のタイプのパンケーキであり得る。内側プレート31dはその主な表面のうちの1つの上に1組の溝31e(以下では、内側溝と称される)を有し、外側プレート32dはその主な表面のうちの同じ向きを有する1つの上に1組の溝32e(以下では、外側溝と称される)を有する。
【0084】
伝導体31f(以下では、内側伝導体と称される)が、内側溝31eのそれぞれに配置され、伝導体32f(以下では、外側伝導体と称される)が、外側溝32eのそれぞれに配置されている。内側伝導体31fは外側伝導体32fと実質的に同一であり得、内側伝導体31fと外側伝導体32fとのそれぞれは、図4に示された伝導体3fと実質的に同一であり得る。あるいは、以下で説明されるように、内側伝導体31fが、外側伝導体32fと異なり得る。
【0085】
図には、3つの内側伝導体31f、31f、31fと、3つの外側伝導体32f、32f、32fとだけが、図示されている。しかし、任意の個数の内側伝導体31fと外側伝導体32fとが存在し得る。
【0086】
内側伝導体31fは、外側伝導体32fと、ジョイント33(以下では、パンケーキ内ジョイントと称される)において接触するが、これについては後述される。
【0087】
伝導体31fと伝導体32fとは、両者で、(Φの半分のような)歪んだ渦巻を形成する。この渦巻は、左回りまたは右回りであり得る。
【0088】
それぞれの内側伝導体31fは、直線状の経路に従う。それぞれの外側伝導体32fは、外側プレート32dの形状におおよそ対応する経路に従うが、ただし、外側伝導体32fのそれぞれの最上位部分と最下位部分とが、より複雑な経路に従うことが異なっており、これについては後述される。
【0089】
異なる内側伝導体31fと関連付けられているパンケーキ内ジョイント33は、主軸70からの距離が異なるように位置決めされる。これにより、各内側伝導体31fが主軸70と平行な直線経路に従うことが可能になる。さらに、異なる外側伝導体32fと関連付けられているパンケーキ内ジョイント33は、ミッドプレーン80からの距離が異なるように位置決めされる。これにより、各外側伝導体32fが、他のパンケーキ内ジョイント33を回避しながら、該当する(relevant)パンケーキ内ジョイント33への滑らかな経路に従うことが可能になる。パンケーキ内ジョイント33のサイズに応じ、外側伝導体32fは、それらの端部に向かって広がる経路に従い得る。
【0090】
内側プレート31dと外側プレート32dとは、パンケーキ内ジョイント33との間で内側伝導体31fと外側伝導体32fとをそれぞれ運ぶような形状を有しながら、それぞれのパンケーキ内ジョイント33の近傍で接触する。したがって、図に示されているように、内側プレート31dは、その最上位端部と最下位端部とに向かって段階的に狭くなり、外側プレート32dは、相補的な態様で、広くなる。
【0091】
渦巻において最も中心に近い伝導体(この場合には、第3の外側伝導体32f)は、パンケーキ間ジョイント30gまたは(この場合には)終端ジョイント30hのための適切な位置まで適切な態様で延在する。たとえば、そのような伝導体は、部分的に上昇されたまたは下降された経路に従うことがあり得る。二重パンケーキでは、そのような伝導体は、内側プレート31dおよび/または外側プレート32dを通過して延在し得、内側プレート31dと外側プレート32dとの他方の主な表面における類似の渦巻の中心に最も近い伝導体に対応し得る(または、結合され得る)。
【0092】
各パンケーキ内ジョイント33は、内側伝導体31fと外側伝導体32fとの間に、(電気的)接続を形成する(そして、他のパンケーキ内ジョイント33からは絶縁されている)。したがって、伝導体31f、32fは、磁石30の巻線の一部を形成する。各パンケーキ内ジョイント33は、任意の適切な態様で、形成され得る。たとえば、各パンケーキ内ジョイント33は、知られているトカマク1のパンケーキ間ジョイント3g(特に、図5を参照)の特徴の中のいくつかまたは全部を有し得る。そのようなパンケーキ内ジョイント33は、細長いことがあり得、主軸70と実質的に平行に向けられることがあり得る。内側プレート31dおよび/または外側プレート32dは、各パンケーキ内ジョイント33を少なくとも部分的に収容するため、切欠領域(cut-out region)を有し得る。内側プレート31dおよび/または外側プレート32dは、各パンケーキ内ジョイント33を少なくとも部分的にクランプするように、機能し得る。
【0093】
この図に示されているパンケーキ30cは、巻線パック30bにおける最初または最後のパンケーキ30cに対応し得るものであり、(組み立てられるときには)1つのパンケーキ間ジョイント30gと1つの終端ジョイント30hとを有する。
【0094】
パンケーキ間ジョイント30gは、知られているトカマク1のパンケーキ間ジョイント3g(特に、図5を参照)と、おおよそ同一であり得る。パンケーキ間ジョイント30gは、適切な伝導体(この場合は、第1の内側伝導体31f)を別のパンケーキ30cの適切な伝導体と接続するためのものである。
【0095】
終端ジョイント30hは、知られているトカマク1の終端ジョイント3hとおおよそ同一であり得る。終端ジョイント30hは、適切な伝導体(この場合は、第3の外側伝導体32f)を電源システムと接続するためのものである。
【0096】
磁石30におけるジョイントのそれぞれ(すなわち、各パンケーキ内ジョイント33、各パンケーキ間ジョイント30g、および各終端ジョイント30h)は、着脱自在のクランプや、容易に溶融可能なハンダなど、取り外しを容易にする特徴を含み得る。
【0097】
巻線パック30bにおける中間的なパンケーキ30cに対応し得る他のパンケーキ30cは、2つのパンケーキ間ジョイント30gを有し得、これら2つのパンケーキ間ジョイントのそれぞれは、パンケーキ30cの適切な伝導体を別のパンケーキ30cの適切な伝導体と接続するためのものである。
【0098】
パンケーキ30cは、電流の同一の回転を維持する任意の適切な態様で、相互に接続され得る。
【0099】
巻線パック30bがただ1つのパンケーキ30cを含む場合には、そのパンケーキ30cは、2つの終端ジョイント30hを含み得る。
【0100】
磁石30は、取り外しが可能であり、それは、磁石30におけるジョイントのいくつかのまたは全部(すなわちパンケーキ内ジョイント33、パンケーキ間ジョイント30g、および終端ジョイント30hの中のいくつかまたは全部)が取り外し可能であることを含む。
【0101】
トカマクを構築し動作させる方法
図8Aを参照して、第1のトカマク10を構築する方法が、簡潔に説明される。
【0102】
第1のステップS1では、真空容器20の少なくとも一部が、提供される(たとえば、組み立てられる)。第1のトカマク10のいくつかの他のコンポーネントもまた、この段階で、提供され得る。
【0103】
第2のステップS2では、内側伝導体31fと外側伝導体32fとが、真空容器20の周囲に配置される。たとえば、事前に組み立てられた内側レッグ31と外側レッグ32とが、あるべき場所に配置され得る。第2のステップS2は、トロイダル型の真空容器20などが既に完全に組み立てられている(そして、その分解が要求されていない)場合でも、実行され得る。
【0104】
第3のステップS3では、磁石30におけるジョイントのいくつかまたは全部が作られる。これは、たとえば、これらのジョイントをハンダ付けおよび/またはクランプすることを含み得る。
【0105】
その後で、磁石30の組み立てを完了させ(たとえば、シェル30aを追加する)、第1のトカマク10の構築を完了させるため、様々なさらなるステップが行われ得る。
【0106】
図8Bを参照して、第1のトカマク10の動作方法が、簡潔に説明される。
【0107】
第1のステップS11では、磁石30の少なくとも一部が置き換えられるべきであると決定される。たとえば、巻線パック31b、32bの一方もしくは両方、1つもしくは複数のパンケーキ部分31c、32c、または1つもしくは複数の伝導体31f、32fが置き換えられるべきであると決定され得る。この決定は、任意の適切な態様で、なされ得る。たとえば、それは、磁石30と関連する1つまたは複数のセンサからのデータに基づき得る。それは、磁石30または磁石30の一部の動作/サービス寿命が終了したということであり得る。
【0108】
内側伝導体31fは、それらが中心位置により近いことに起因して、より強烈な放射線の影響を受け得る。したがって、一般的に、内側伝導体31fは、外側伝導体32fよりも、寿命がより短く、より頻繁な交換を要求することになる。これは、球状のトカマクでは特に妥当するが、それは、球状のトカマクにおいては、プラズマが(したがって、内側伝導体31fが)主軸70に特に近接しているからである。
【0109】
第2のステップS12では、該当するジョイントが取り外される。たとえば、ただ1つの伝導体(たとえば、内側伝導体31f)が交換されるべき場合であっても、該当するジョイントは、その伝導体31fと関連する2つのジョイント、またはその伝導体31fが含まれるパンケーキ30cと関連するジョイント、または磁石30におけるパンケーキ30cの2つもしくはそれより多くもしくは全部と関連するジョイントであり得る。磁石30の他のコンポーネント(たとえば、シェル30a)および/または第1のトカマク10の他のコンポーネントが、該当のジョイントを取り外す前に分解されることがあり得る。
【0110】
第3のステップS13では、磁石30または磁石30の一部が、交換される。たとえば、内側レッグ31が取り出され、新たな内側レッグ31が、元の外側レッグ32と共に、適切な位置に配置されることがあり得る。第3のステップS13は、トロイダル型の真空容器20の分解を要求することなく、実行され得る。
【0111】
第4のステップS14では、該当するジョイントが作られる。上述されたように、これには、たとえば、これらのジョイントをハンダ付けおよび/またはクランプすることが含まれ得る。
【0112】
この後では、様々なさらなるステップが、磁石30を完全に再度組み立てる(たとえば、シェル30aを追加する)および/または第1のトカマク10を完全に再度組み立てるために、行われ得る。
【0113】
異なるパンケーキ
次は、図9を参照して、異なる「第2の」パンケーキ130cについて、説明される。
【0114】
第2のパンケーキ130cは、上述された磁石30における第1のパンケーキ30cの代わりに用いられ得る。第2のパンケーキ130cは、以下の点を除くと、第1のパンケーキ30cと実質的に同一である。
- 第2のパンケーキ130のパンケーキ内ジョイント133は、全部が、主軸70と平行な直線上に位置決めされている。
- 内側プレート131dと外側プレート132dとは、この直線上で接触する。
- それぞれの内側溝131eと関連する伝導体131fとは、その端部の一方または両方に向かって曲線状になっており該当するパンケーキ内ジョイント133に至る経路に従う。
【0115】
第2のパンケーキ130cは、内側パンケーキの部分131cと外側パンケーキの部分132cとの間の接続がシンプルであるという潜在的な長所と、内側伝導体131fが曲線状であるという潜在的な短所とを有する。
【0116】
異なる磁石
次には、図10を参照して、別の(「第2の」)磁石230について、説明される。
【0117】
第2の磁石230は、第1のトカマク10と同等のトカマクにおいて、用いられ得る。
【0118】
第2の磁石230は、(内側伝導体に対応し得る)複数の直線状の伝導体231と、(外側伝導体に対応し得る)複数の曲線状の伝導体232とを含む。上述された「第1の」磁石30とは対照的に、直線状の伝導体231の全部が、相互に実質的に同一であり得、曲線状の伝導体232の全部が、相互に実質的に同一であり得る。曲線状の伝導体232は、それぞれが、上述された磁石30の外側伝導体32fの形状におおよそ対応する(3次元の)経路に従い得る。第2の磁石230は、複数のジョイント233を含む。各ジョイント233は、直線状の伝導体231と曲線状の伝導体232とを接続し、一連の直線状の伝導体と曲線状の伝導体とが交互になったもの231、232、231、232を形成する。伝導体231、232は、共同して、(Φの半分のような)歪んだ螺旋を形成する。
【0119】
したがって、第2の磁石230の伝導体231、232は、(歪んだ渦巻で)実質的に2次元的に配列されている第1の磁石30の伝導体31f、32fとは対照的に、(歪んだ螺旋で)3次元的に配列されている。
【0120】
他の磁石が、渦巻と螺旋との両方の特性を備えた伝導体の配列を有することもあり得る。
【0121】
第2の磁石230は、伝導体231、232を支持する任意の適切な構造(図示せず)を有し得る。
【0122】
図11のA-Dを参照して、いくつかのさらなる磁石について、述べられる。
【0123】
各磁石は、第1の磁石30の変形であり、第1のトカマク10と同等のトカマクにおいて用いられ得る。特に、各磁石は、第1の磁石30とは異なる形状を有する内側レッグと外側レッグとを有する。各磁石は、全体として、(適切に異なった形状を有してはいるが)第1の磁石30と実質的に同一のコンポーネントを有する。
【0124】
図11のAを参照すると、「第3の」磁石330は、外側レッグ322の曲率を部分的に反映するように僅かに曲がった内側レッグ331を含み得る。こうして、第3の磁石330は、曲がる程度がより少ない外側レッグ332、および/または、中心からより離れより低い磁場領域に位置決めされているジョイントを有するという潜在的な長所を有する。
【0125】
図11のBを参照すると、「第4の」磁石430は、実質的に対称的な内側レッグ431と外側レッグ432とを有し得るが、これは、潜在的な長所である。
【0126】
図11のCを参照すると、「第5の」磁石530は、主軸から離れ、その最上位端部と最下位端部とに向かって実質的に一定の曲率で曲がる内側レッグ531を含む。外側レッグ532は、一致する最上位部分と最下位部分とを有する。外側レッグ532は、一致する最上位部分と最下位部分とを有する。
【0127】
一般的に、磁石の形状と、それゆえに磁石における伝導体とは、たとえば、伝導体において好ましい動作応力/歪みを生じさせること、(動作中における)磁場に対して異方性の超伝導体の好ましい向きを生じさせること、直線状の伝導体が使われることを可能にすること、などによって、よりよい性能のために適合され得る。
【0128】
図11のDを参照すると、「第6の」磁石630は、延在した内側レッグ631と、延在した最上位部分と最下位部分とを有する外側レッグ632とを含む。
【0129】
次に、図12のA-Bを参照して、第6の磁石630の内側伝導体631fと外側伝導体632fとの間にあるパンケーキ内ジョイント(intra-pancake joint)633について、述べられる。
【0130】
後で説明されるように、パンケーキ内ジョイントは、ハンダ633aを含み得、内側伝導体631fおよび/または外側伝導体632fは、ハンダを含み得る。
【0131】
内側伝導体631fと外側伝導体632fとは、ミッドプレーンから特に大きく離れた距離まで延在している。ジョイント633は、内側伝導体631fと外側伝導体632fとのそれぞれの最も遠い延在部(たとえば、頂部)に位置決めされる。
【0132】
したがって、ジョイント633は、特に低い磁場領域90に位置決めされるが、ここで、(動作中の)磁場91は、ジョイント633の領域においてハンダ(たとえば、ハンダ633a)の上方臨界磁場92よりも下であり得る。
【0133】
伝導体631f、632fの一方から他方に流れる電流は、一般的には、ハンダ(たとえば、ハンダ633a)を介して流れるが、そのハンダが超伝導状態にある場合には、これは、ジョイント633の抵抗値を効果的に低下させ得る。
【0134】
下の表は、いくつかのハンダのいくつかの特性を示している。
【表1】
【0135】
たとえばセロロー(Cerrolow)136など、ある種のハンダの上方臨界磁場は、比較的高い(すなわち、約4-5ケルビンの動作温度で、1テスラのオーダー)。そのようなハンダは、ジョイント633の上述された位置決めを容易にするために、用いられ得る。
【0136】
第6の磁石630では、各ジョイント633は、(たとえば、図7に示されているジョイント33と比較すると)特に細長いことがあり得る。したがって、各ジョイント633は、より大きな表面積を有することがあり、これも、その抵抗値を低下させ得る。
【0137】
ジョイント633の長さと関係なく、内側伝導体631fと外側伝導体632fとの(延在した)最上位部分と最下位部分とは、磁場エネルギーの過度の上昇を回避するため、並んで位置決めされることがあり得る。
【0138】
図に概略的に示されているように、各伝導体631f、632fは、超伝導部分631fa、632faと、平行な常伝導部分631fb、632fbとを含み得る。各超伝導部分631fa、632faは、いくつかの(円型の断面積を有する)超伝導ストランドまたは(矩形の断面積を有する)テープを含み、ハンダも含み得る。各常伝導部分631fb、632fbは、銅、銅合金または銀合金など伝導率の高い金属を含む。伝導体631f、632fの一方から他方に流れる電流は、一般的に、常伝導部分631fb、632fbを介して流れる。
【0139】
ハンダ633aは、ジョイント633から除外され得、ジョイント633は、単に伝導体631fと伝導体632fとを相互に押し付けることによって、作成されることがあり得る。そのような場合には、伝導体631f、632fの関連する表面は、実質的に共形であることが好ましい。
【0140】
異なる動作温度を有する磁石
次に、図13を参照して、「第7の」磁石730の一部について、説明される。
【0141】
第7の磁石730では、内側伝導体731fが、外側伝導体732fとは異なる動作温度を有する。後でより詳細に説明されるように、これは、超伝導体のより広い選択につながり得るのであって、それにより、(磁石730の冷却がより複雑になる場合があり得るが)改良された磁石730が製造されることが可能になり得る。
【0142】
内側伝導体731fと外側伝導体732fとの間の単一のジョイント733だけが、図面に示されており、後述される。第7の磁石730の他のジョイント及び他の伝導体は、実質的に同じであり得る。
【0143】
内側伝導体731fと外側伝導体732fとのそれぞれは、好ましくは、ケーブル・イン・コンジット伝導体であり、すなわち、(中心)冷却チャネル731fc、732fcを含む。それぞれの冷却チャネル731fc、732fcは、該当するジョイントによって(たとえば、図で示されているようにパンケーキ内ジョイント733によって)、または、任意の適切な態様で、その端部のそれぞれにおいて閉じられる。
【0144】
「第1の」(低温の)流体F1は、第1の流体入力734を経由して、内側伝導体731fの冷却チャネル731fcの中に導かれる。第1の流体入力734と冷却チャネル731fcとの間の接続は、任意の適切な態様でなされ得、たとえば、(図で示されているように)内側伝導体731fの側方を介して、または、内側伝導体731fの端部を介して、なされ得る。この接続は、好ましくは、内側伝導体731fの端部の近傍にある。第1の流体F1は、冷却チャネル731fcを通過し、第1の流体入力と類似であり得る第1の流体出力(図示せず)を介して、内側伝導体731の他方の端部の近傍から外に出る。
【0145】
「第2の」(低温の)流体F2は、適切な第2の流体入力735を経由して、外側伝導体732fの冷却チャネル732fcの中に導かれる。第2の流体F2は、冷却チャネル732fcを通過し、適切な第2の流体出力(図示せず)を経由して、外に出る。
【0146】
第7の磁石730の内側伝導体731fのそれぞれの第1の流体入力と第1の流体出力とは、「第1の」低温システムに接続され得る。第1の低温システムは、たとえば、第1の流体F1の温度と圧力とを制御する。同様に、第7の磁石730の外側伝導体732fのそれぞれの第2の流体入力と第2の流体出力とは、「第2の」低温システムに接続され得る。適切な低温流体は、たとえば、ヘリウムまたは窒素を含む。
【0147】
異なる内側伝導体および外側伝導体
上で説明されたように、磁石(たとえば、第1の磁石30)は、同一の伝導体から作成され同一の超伝導体を含む内側伝導体と外側伝導体(たとえば、内側伝導体31fと外側伝導体32f)とを有し得る。
【0148】
しかし、この磁石が異なる伝導体から作成されるおよび/または異なる超伝導体を含む内側伝導体と外側伝導体とを有する場合には、付加的な(たとえば、ジョイントの着脱自在性や効果的な位置決めなどを超える)長所が獲得され得る。そのような磁石は、着脱自在である必要はない。
【0149】
上で説明されたように、外側レッグ(たとえば、外側レッグ32)は、全体として、内側レッグ(たとえば、内側レッグ31)とは異なる条件、たとえば、より低い磁場の影響下にある。内側伝導体と外側伝導体とは、これらの異なる条件に対して、適合させることができる。これは、たとえば、高温超伝導体(HTS)と低温超伝導体(LTS)との間の差異など、異なる超伝導体の特性の間の差異を利用することを含み得る。
【0150】
図14は、様々な候補としての超伝導体の臨界電流密度と4.2ケルビンの温度における(ただし、ニオブについては5ケルビンであり、異なっている)磁場とを示している。臨界電流密度は、超伝導体における超伝導コンポーネントの単位面積当たりの臨界電流に対応する。異方性超伝導体については、黒塗りされた(closed)記号と黒塗りされていない(open)記号とが、それぞれ、a-b平面に平行な磁場と垂直な磁場との場合のデータを表している。
【0151】
すべての超伝導体について、臨界電流(すなわち、超伝導体が、ほぼゼロの抵抗値で運ぶことが可能な最大電流)は、磁場および/または温度の上昇につれて、低下する。臨界電流は、上方臨界磁場(すなわち、超伝導体が超伝導状態を維持する最高の磁場)において、ゼロになる。上方臨界磁場は、温度の上昇に伴い低下する。
【0152】
この図から理解可能なように、HTSイットリウム-バリウム-銅-酸化物(YBCO)伝導体は、高い磁場において、比較的高い臨界電流を有する。さらに、適切に配列された(すなわち、a-b平面が、磁場に対してほぼ平行である)異方性YBCO伝導体を用いることにより、この臨界電流は、さらに、増大され得る。
【0153】
したがって、YBCO伝導体は、(動作中の)磁場が最高である磁石の内側レッグで効果的に用いられ得る。原理的には、これにより、磁石が、極めて高い磁場を生じさせることが可能になり得る。
【0154】
YBCO伝導体は、また、比較的高い温度(たとえば、約30ケルビン)で動作され得る。これは、冷却コストの著しい減少を生じさせ得る。上述されたように、内側レッグは、外側レッグと比較すると、はるかに高いレベルの放射線の影響下にあり、したがって、放射線に起因して、はるかに大きな熱の影響下にある。したがって、内側レッグを比較的低い温度(たとえば、約4-5ケルビン)に維持するためには、比較的高い冷却用の電力が必要とされる。
【0155】
しかし、YBCO伝導体自体が、比較的高コストであり得る。
【0156】
したがって、コストがより低い超伝導体を、磁石の外側レッグにおいて用いることが効果的であり得る。
【0157】
たとえば、LTSであるニオブ-チタン(NbTi)伝導体が、外側レッグにおいて用いられ得る。そのような伝導体は、比較的低コストであり、(特に、それらは、可撓性を有するので)作業が容易である。NbTiは、4ケルビンでは、約10テスラという上方臨界磁場を有し、したがって、その使用は、比較的低い磁場(約10テスラ未満)と比較的低い温度(約5ケルビン未満)とに制限される。
【0158】
この場合には、内側レグが比較的高い温度(約30ケルビン)で動作されるYBCO伝導体を含むので、磁石は、2つの低温システムを必要とすることになる。これらは、第7の磁石730との関係で上述されたように、構成され得る。
【0159】
あるいは、HTSビスマス-ストロンチウム-カルシウム-銅-酸化物(Bi-2212)伝導体が、外側レッグにおいて用いられ得る。これらは、NbTi伝導体と比較すると、より高コストであるが、内側伝導体と外側伝導体との両方を同様の温度(約30ケルビン)まで冷却するのに単一の低温システムが用いられ得ることを含む利点を有する。
【0160】
内側伝導体と外側伝導体とは、該当する磁場での使用のために、最適化され得る。たとえば、内側伝導体と外側伝導体とは、それらが、該当する磁場において、ほぼゼロの抵抗値で動作電流をまさに安全に(すなわち、適切な余裕を有しながら)運ぶことができるように、選択され得る。
【0161】
内側伝導体の上方臨界磁場は、一般的に、外側伝導体の上方臨界磁場よりも高くなる。
【0162】
また、異なる内側伝導体と外側伝導体とを用いることにより、そのコストを不必要に上昇させることなく、磁石の放射線耐性を向上させることが可能になり得る。上で説明されたように、内側レッグは、外側レッグよりも高いレベルの放射線の影響下にある。したがって、より高コストであっても放射線障害をより生じにくい伝導体が、内側レッグにおいては、効果的に用いられ得る。
【0163】
理解されるように、異なる内側伝導体と外側伝導体とによって提供される柔軟性は、より高い磁場、より低いコスト、より大きな信頼性などを備えた商用のトカマクのための磁石に対して、複数の可能性を開くことになる。
【0164】
他の変形例
上述された実施形態には、多くの他の変形例が存在し得るということが、理解されるであろう。
【0165】
たとえば、トカマク10のTFコイルに対応する磁石の代わりに、この磁石は、別の異なるタイプのトカマクにおいても用いられ得る。たとえば、この磁石は、球状トカマクにおいて、用いられ得る。球状トカマクは、比較的小さな(たとえば、2未満または1.5未満)アスペクト比(すなわち、プラズマによって占有されるトロイダル領域の短半径に対する長半径の比)を有する。換言すると、プラズマは、したがって、トロイダル型の真空容器は、比較的小さな中心孔を有する。したがって、磁石の内側レッグは、より高い磁場とより高レベルの放射線との影響下にあり得、そのために、それが利用可能な空間は、より小さなものになり得る(よって、より高い臨界電流密度が要求されることがあり得る)。これらの状況では、磁石を、異なる特性を有する異なる超伝導体を含む異なる内側レッグと外側レッグとに分割することが、合理的なコストでこれらの要件を満たすために、特に重要であり得る。
【0166】
さらに、磁石は、ステラレータなど、トカマク以外の装置においても、用いられ得る。
【0167】
磁石は、追加のパンケーキ内ジョイント(よって、追加の伝導体)を含み得る。たとえば、内側伝導体と外側伝導体との間に1対のジョイントが存在してもよい。
【0168】
ジョイントは、任意の適切な形状、サイズおよび方向を有し得る。
【0169】
ジョイントにおける比較的高レベルのオーム加熱は、いくつかの場合に、許容され得る。これは、ジョイントと、トロイダル型の磁場を生じさせる磁石の部分との間の距離が理由であり得る。
【0170】
伝導体は、任意の適切な形状を有し得る。たとえば、1つまたは複数の伝導体が曲がり、実質的にミッドプレーンに向かう方向にジョイントに近づく経路に従ってもよい。
【0171】
内側伝導体と外側伝導体とは、同一の超伝導体を含み得るが、たとえば、異なるサイズや形状、非超伝導性コンポーネント、同一の超伝導体の異なるバージョンなど、それ以外の差異を有し得る。伝導体は、2つ以上の異なる超伝導体の組合せを含み得る。内側伝導体は、外側伝導体とは異なるそのような組合せを含むことがあり得る。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14