(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】クロスフロー水車装置
(51)【国際特許分類】
F03B 1/00 20060101AFI20230208BHJP
F03B 11/02 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
F03B1/00 A
F03B11/02
(21)【出願番号】P 2018202118
(22)【出願日】2018-10-26
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】517456451
【氏名又は名称】株式会社JSE
(73)【特許権者】
【識別番号】517025970
【氏名又は名称】株式会社藤巻建設
(73)【特許権者】
【識別番号】509204194
【氏名又は名称】北洞 貴也
(73)【特許権者】
【識別番号】518381880
【氏名又は名称】モクポデハキョ・サンハクヒョプリョクダン
(73)【特許権者】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100192773
【氏名又は名称】土屋 亮
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 守人
(72)【発明者】
【氏名】藤巻 篤
(72)【発明者】
【氏名】北洞 貴也
(72)【発明者】
【氏名】チェ・ヨンド
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 昭一郎
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-007376(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03249215(EP,A1)
【文献】特開昭60-085259(JP,A)
【文献】特開2016-079892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 1/00
F03B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に延びる回転軸を中心に複数の羽根を前記回転軸の周方向に配列した円筒状に形成され、外周から液体が流入されることで前記回転軸を中心として一方向に回転する羽根車と、
前記羽根車の鉛直方向上側に配され、前記羽根車の外周に開口して前記液体を前記羽根車に流入させる流入口を有する流入管路部と、
前記流入口の反対側において前記羽根車の外周に開口し、前記羽根車を通過した前記液体が流出する流出空間を有する流出部と、を備え、
前記流出部は、前記流入口よりも前記羽根車の回転方向前側において前記羽根車の外周に接する接点部を含み、前記接点部から前記羽根車の回転方向前側に向かうにしたがって前記羽根車の外周から離れるように延びるガイド面を有し、
前記ガイド面は、その延長方向において凸状に湾曲し、
前記接点部において前記羽根車の外周の接線に対する前記ガイド面の角度は、前記接点部の近傍において前記羽根車から前記流出空間に流出した前記液体が前記ガイド面に沿って流れる角度であ
り、
前記羽根車の回転方向において前記流入口と前記流出空間との間に設けられ、前記羽根車の外周に開口するキャビティを備え、
前記キャビティの内面は、前記回転軸の軸方向から見た断面で、前記羽根車の回転方向に間隔をあけて位置する前記キャビティの開口の第一端と第二端との間で凹状に湾曲するクロスフロー水車装置。
【請求項2】
前記接点部における前記接線に対する前記ガイド面の角度は、0度以上かつ70度以下である請求項1に記載のクロスフロー水車装置。
【請求項3】
前記キャビティの内面は、前記回転軸の軸方向から見た断面で、前記回転軸の軸線に平行するキャビティ中心線を中心とする円弧状に形成されている
請求項1又は請求項2に記載のクロスフロー水車装置。
【請求項4】
前記キャビティ中心線は、前記羽根車の外周の外側に位置する
請求項3に記載のクロスフロー水車装置。
【請求項5】
前記羽根車の回転方向後側に位置する前記キャビティの開口の第一端は、前記羽根車の回転方向前側に位置する前記流入口の第一端に対して間隔をあけずに位置する
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のクロスフロー水車装置。
【請求項6】
前記流入管路部が、
前記羽根車の鉛直方向上側に配され、前記液体を前記水平方向に流す直線管路部と、
前記直線管路部の下流端から前記羽根車の外周に沿って前記羽根車の回転方向前側に延びると共に、前記流入口を有する湾曲管路部と、を備え、
前記流入口は、前記羽根車の鉛直方向上側に位置する請求項1から
請求項5のいずれか一項に記載のクロスフロー水車装置。
【請求項7】
前記羽根車の回転方向後側に位置する前記流入口の第二端は、前記回転軸の軸線に対して鉛直方向上側に位置する前記羽根車の上端に位置する
請求項6に記載のクロスフロー水車装置。
【請求項8】
前記羽根車の回転方向前側に位置する前記流入口の第一端は、前記羽根車の回転方向後側に位置する前記流入口の第二端に対して前記羽根車の回転方向前側に90度以上ずれて位置する
請求項6又は請求項7に記載のクロスフロー水車装置。
【請求項9】
前記湾曲管路部は、前記羽根車の径方向における前記湾曲管路部の寸法が前記回転方向前側に向かうにしたがって小さくなるように形成されている
請求項6から請求項8のいずれか一項に記載のクロスフロー水車装置。
【請求項10】
前記流出部の鉛直方向下側に連ねて設けられ、鉛直方向下側に延びるドラフト管と、
鉛直方向上側に開口する箱状に形成されて前記液体が貯留されると共に、前記ドラフト管の延長方向の下端部が挿入される貯水槽と、を備える請求項1から
請求項9のいずれか一項に記載のクロスフロー水車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロスフロー水車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水力発電に用いるクロスフロー水車装置が知られている。クロスフロー水車装置は、回転軸を中心として周方向に複数の羽根を配列することで円筒状に形成され、回転幾を中心に回転可能とされた羽根車を備える。クロスフロー水車装置では、液体が羽根車の外側から内側に流入する際、及び、羽根車の内側から外側に流出する際に、液体が羽根に当たることで羽根車が回転する。
特許文献1には、羽根車を効率よく回転させるために、羽根車の内側に、当該内側における液体の流れを整える整流板を設けたクロスフロー水車装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、クロスフロー水車装置では、羽根車の回転効率をさらに向上できる余地がある。羽根車の回転効率は、例えば、回転軸に作用する動力を、羽根車に通る液体の動力で割ったものである。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、羽根車の回転効率をさらに向上できるクロスフロー水車装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様に係るクロスフロー水車装置は、水平方向に延びる回転軸を中心に複数の羽根を前記回転軸の周方向に配列した円筒状に形成され、外周から液体が流入されることで前記回転軸を中心として一方向に回転する羽根車と、前記羽根車の鉛直方向上側に配され、前記羽根車の外周に開口して前記液体を前記羽根車に流入させる流入口を有する流入管路部と、前記流入口の反対側において前記羽根車の外周に開口し、前記羽根車を通過した前記液体が流出する流出空間を有する流出部と、を備え、前記流出部は、前記流入口よりも前記羽根車の回転方向前側において前記羽根車の外周に接する接点部を含み、前記接点部から前記羽根車の回転方向前側に向かうにしたがって前記羽根車の外周から離れるように延びるガイド面を有し、前記ガイド面は、その延長方向において凸状に湾曲し、前記接点部において前記羽根車の外周の接線に対する前記ガイド面の角度は、前記接点部の近傍において前記羽根車から前記流出空間に流出した前記液体が前記ガイド面に沿って流れる角度であり、前記羽根車の回転方向において前記流入口と前記流出空間との間に設けられ、前記羽根車の外周に開口するキャビティを備え、前記キャビティの内面は、前記回転軸の軸方向から見た断面で、前記羽根車の回転方向に間隔をあけて位置する前記キャビティの開口の第一端と第二端との間で凹状に湾曲する。
【0007】
前記クロスフロー水車装置において、前記接点部における前記接線に対する前記ガイド面の角度は、0度以上かつ70度以下であってよい。
【0009】
前記クロスフロー水車装置において、前記キャビティの内面は、前記回転軸の軸方向から見た断面で、前記回転軸の軸線に平行するキャビティ中心線を中心とする円弧状に形成されてよい。
【0010】
前記クロスフロー水車装置において、前記キャビティ中心線は、前記羽根車の外周の外側に位置してよい。
【0011】
前記クロスフロー水車装置において、前記羽根車の回転方向後側に位置する前記キャビティの開口の第一端は、前記羽根車の回転方向前側に位置する前記流入口の第一端に対して間隔をあけずに位置してよい。
【0013】
前記クロスフロー水車装置においては、前記流入管路部が、前記羽根車の鉛直方向上側に配され、前記液体を前記水平方向に流す直線管路部と、前記直線管路部の下流端から前記羽根車の外周に沿って前記羽根車の回転方向前側に延びると共に、前記流入口を有する湾曲管路部と、を備え、前記流入口は、前記羽根車の鉛直方向上側に位置してよい。
【0014】
前記クロスフロー水車装置において、前記羽根車の回転方向後側に位置する前記流入口の第二端は、前記回転軸の軸線に対して鉛直方向上側に位置する前記羽根車の上端に位置してよい。
【0015】
前記クロスフロー水車装置において、前記羽根車の回転方向前側に位置する前記流入口の第一端は、前記羽根車の回転方向後側に位置する前記流入口の第二端に対して前記羽根車の回転方向前側に90度以上ずれて位置してよい。
【0016】
前記クロスフロー水車装置において、前記湾曲管路部は、前記羽根車の径方向における前記湾曲管路部の寸法が前記回転方向前側に向かうにしたがって小さくなるように形成されてよい。
【0017】
前記クロスフロー水車装置は、前記流出部の鉛直方向下側に連ねて設けられ、鉛直方向下側に延びるドラフト管と、鉛直方向上側に開口する箱状に形成されて前記液体が貯留されると共に、前記ドラフト管の延長方向の下端部が挿入される貯水槽と、を備えてよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、羽根車の回転効率をさらに向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るクロスフロー水車装置を示す断面図である。
【
図2】
図1のクロスフロー水車装置において、羽根車、流入管路部、キャビティ及び流出部を示す拡大断面図である。
【
図3】
図1,2のクロスフロー水車装置において、流出部のガイド面を示す拡大断面図である。
【
図4】
図1,2のクロスフロー水車装置の動作を説明するための図である。
【
図5】本発明の第二実施形態に係るクロスフロー水車装置の要部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔第一実施形態〕
以下、
図1~4を参照して本発明の第一実施形態について説明する。
図1,2に示すように、本実施形態のクロスフロー水車装置1は、羽根車2(ランナ)と、流入管路部3と、流出部6と、を備える。また、本実施形態のクロスフロー水車装置1は、キャビティ5をさらに備える。
【0021】
図2に示すように、羽根車2は、回転軸11と、複数の羽根12と、を備える。
回転軸11は、水平方向に延びる。
図1,2において、回転軸11は紙面に直交する方向(X軸方向)に延びている。回転軸11は、例えば後述する流出部6に対して回転可能に支持されてよい。
複数の羽根12は、回転軸11(軸線O1)を中心として回転軸11の周方向に配列されている。羽根車2は、これら複数の羽根12によって内側に空間13(内側空間13)を有する円筒状に形成されている。具体的に、複数の羽根12は、それぞれ回転軸11の軸方向(X軸方向)に延びており、各羽根12の両端が円板14に接続されることで、円筒状に配列される。複数の羽根12は、円板14を介して回転軸11に接続されている。本実施形態において、回転軸11は内側空間13を貫通しているが、例えば貫通しなくてもよい。
【0022】
各羽根12は、回転軸11の軸方向から見た断面で、径方向において回転軸11から離れるにしたがって回転軸11の周方向の一方側(
図2において矢印D1で示す方向と逆の方向)に向かうように湾曲して延びている。これにより、羽根車2は、その外周から液体が流入されることで回転軸11を中心として一方向(回転方向D1)に回転する。本実施形態において、羽根車2は時計回りに回転する。
【0023】
流入管路部3は、羽根車2に対して鉛直方向(Z軸方向)の上側に配される。流入管路部は、羽根車2の外周に開口して液体を羽根車2に流入させる流入口21を有する。流入口21は羽根車2の外周に接する。流入管路部3の具体的な構成は任意であってよい。本実施形態の流入管路部3は、直線管路部9と、湾曲管路部10と、を備える。
【0024】
直線管路部9は、羽根車2に対して鉛直方向上側に配される。直線管路部9は、水平方向に延びており、液体を水平方向に流す。本実施形態において、直線管路部9は鉛直方向及び回転軸11の軸線O1に直交する方向に延びている。すなわち、直線管路部9では、液体が鉛直方向及び回転軸11の軸線O1に直交する方向に流れる。
図2における矢印D2は、直線管路部9における流れ方向を示している。
【0025】
湾曲管路部10は、直線管路部9の下流端に連ねて形成されている。湾曲管路部10は、直線管路部9の下流端から羽根車2の外周に沿って羽根車2の回転方向D1の前側に湾曲して延びる。湾曲管路部10は、前述した流入口21を含む。
湾曲管路部10は、直線管路部9に流れる液体の流れ方向D2を羽根車2の回転方向D1に対応する方向に変化させた上で、液体を羽根車2に流入させる役割を果たす。
図2における矢印D3、D4は、湾曲管路部10における流れ方向を示している。
【0026】
流入口21は、羽根車2の鉛直方向上側に位置する。羽根車2の回転方向D1の後側に位置する流入口21の第二端22は、例えば、回転軸11の軸線O1に対して鉛直方向上側に位置する羽根車2の上端15に対し、羽根車2の回転方向D1の前側又は後側にずれて位置してよい。本実施形態において、流入口21の第二端22は、羽根車2の上端15に位置している。
羽根車2の回転方向D1の前側に位置する流入口21の第一端23は、少なくとも流入口21の第二端22に対して羽根車2の回転方向D1の前側に間隔をあけて位置すればよい。羽根車2の回転方向D1において流入口21の第二端22から第一端23に至る角度は、例えば90度未満であってよいが、90度以上であることがより好ましい。
図2において、流入口21の第一端23は、流入口21の第二端22に対して羽根車2の回転方向D1の前側に90度ずれて位置している。
【0027】
湾曲管路部10の延長方向に直交する湾曲管路部10の流路断面は、例えば湾曲管路部10の延長方向において一定であってよい。本実施形態では、湾曲管路部10の流路断面が、羽根車2の回転方向D1の前側に向かうにしたがって小さくなる。具体的に、湾曲管路部10は、羽根車2の径方向における湾曲管路部10の寸法が回転方向D1の前側に向かうにしたがって小さくなるように形成されている。
【0028】
本実施形態の湾曲管路部10には、ガイドベーン24が設けられている。ガイドベーン24は、湾曲管路部10を開閉することで羽根車2に流入する液体の流量(水量)を調整する。
ガイドベーン24は、回転軸11の軸線O1に平行する軸部25を中心に回転可能となるように湾曲管路部10に対して支持されている。ガイドベーン24は、湾曲管路部10を閉じる第一回転位置P1と、湾曲管路部10を完全に開いた第二回転位置P2との間で揺動可能とされている。ガイドベーン24が第一回転位置P1に配された状態では、液体が羽根車2に流入しない。また、ガイドベーン24が第二回転位置P2に配された状態では、羽根車2に流入する液体の流量が最大となる。
【0029】
また、ガイドベーン24は、湾曲管路部10を開いた状態において、液体を、ガイドベーン24よりも湾曲管路部10の径方向内側の領域と、ガイドベーン24よりも湾曲管路部10の径方向外側の領域と、に分けて流す。湾曲管路部10においてガイドベーン24よりも湾曲管路部10の径方向内側の領域に流れる液体(流れ方向D3に流れる液体)は、流入口21のうち流入口21の第二端22側の領域を通じて羽根車2に流入する。一方、湾曲管路部10においてガイドベーン24よりも湾曲管路部10の径方向外側の領域に流れる液体(流れ方向D4に流れる液体)は、流入口21のうち流入口21の第一端23側の領域を通じて羽根車2に流入する。
【0030】
キャビティ5は、羽根車2の回転方向D1において湾曲管路部10と後述する流出部6の流出空間41との間に設けられ、羽根車2の外周に開口する空洞である。キャビティ5の開口31は、羽根車2の外周に接する。キャビティ5の内面32は、回転軸11の軸方向から見た断面で、羽根車2の回転方向D1に間隔をあけて位置するキャビティ5の開口31の第一端33と第二端34との間で凹状に湾曲している。
【0031】
キャビティ5の内面32は、回転軸11の軸方向から見た断面で、例えば楕円弧状などに形成されてよい。楕円弧とは、楕円の周方向の一部に対応する。本実施形態において、キャビティ5の内面32は、回転軸11の軸方向から見た断面で、回転軸11の軸線O1に平行するキャビティ中心線O2を中心とする円弧状に形成されている。円弧とは、円(例えば真円)の周方向の一部に対応する。
【0032】
キャビティ5の内面32の中心をなすキャビティ中心線O2は、例えば羽根車2の外周よりも内側に位置してよいし、例えば羽根車2の外周に一致してもよい。本実施形態において、キャビティ中心線O2は、羽根車2の外周の外側に位置する。
断面円弧状に形成されたキャビティ5の径寸法は、例えば羽根車2の径寸法以上であってもよいが、本実施形態では羽根車2の径寸法よりも小さい。
【0033】
羽根車2の回転方向D1の後側に位置するキャビティ5の開口31の第一端33は、例えば湾曲管路部10の流入口21の第一端23に対して回転方向D1の前側に間隔をあけて位置してよい。本実施形態において、キャビティ5の開口31の第一端33は、流入口21の第一端23に対して回転方向D1の前側に間隔をあけずに位置する。すなわち、キャビティ5の開口31の第一端33及び流入口21の第一端23の位置は、互いに一致する。
羽根車2の回転方向D1の前側に位置するキャビティ5の開口31の第二端34は、例えば後述する流出部6の流出空間41に対して羽根車2の回転方向D1の後側に間隔をあけて位置してよい。本実施形態において、キャビティ5の開口31の第二端34は、流出部6の流出空間41に対して羽根車2の回転方向D1の後側に間隔をあけずに位置する。
【0034】
流出部6は、羽根車2を通過した液体が流出する流出空間41を有する。流出空間41は、流入口21の反対側において羽根車2の外周に開口する。言い換えれば、流出空間41は、流入口21よりも羽根車2の回転方向D1の前側や後側において羽根車2の外周に開口する。本実施形態のクロスフロー水車装置1はキャビティ5を備えるため、流出空間41は、キャビティ5の開口31よりも羽根車2の回転方向D1の前側において羽根車2の外周に開口する。
【0035】
流出空間41は、羽根車2の外周のうち、少なくとも羽根車2を通った液体(特に羽根車2の内側空間13を通った液体)が流出する領域に開口していればよい。羽根車2の外周のうち羽根車2を通った液体が流出する領域は、例えばキャビティ5の開口31の第二端34から、当該開口31の第二端34よりも羽根車2の回転方向D1の前側において回転軸11の軸線O1と同じ高さに位置する点に至る領域であってよい。すなわち、流出空間41の鉛直方向の上端42は、例えば回転軸11の軸線O1と同じ高さに位置してよい。図示例において、流出空間41の上端42は、回転軸11の軸線O1よりも高く位置している。また、流出空間41の上端42は、羽根車2の上端15(流入口21の第二端22)よりも低く位置している。
【0036】
図2,3に示すように、流出部6は、流出空間41の内面をなすガイド面45を有する。ガイド面45は、湾曲管路部10の流入口21よりも羽根車2の回転方向D1の前側において羽根車2の外周に接する接点部46を含む。ガイド面45は、羽根車2の回転方向D1の前側に向いている。ガイド面45は、接点部46から羽根車2の回転方向D1の前側に向かうにしたがって羽根車2の外周から離れるように延びる。
【0037】
接点部46が羽根車2の外周に接することは、
図3に例示するように、接点部46が羽根車2の外周に対して微小に間隔をあけて位置することも含む。接点部46は、例えば尖っていてもよいが、図示例のように丸みを帯びていてもよい。本実施形態において、接点部46は、キャビティ5の開口31の第二端34に対して羽根車2の回転方向D1の後側に間隔をあけずに位置する。すなわち、接点部46及びキャビティ5の開口31の第二端34の位置は、互いに一致する。
【0038】
ガイド面45は、その延長方向において凸状に湾曲している。すなわち、接点部46における羽根車2の外周の接線VL1に対するガイド面45の角度θ(θ0、θ1)は、ガイド面45がその延長方向において羽根車2の外周から離れるにしたがって大きくなっている。
図3において、角度θ0は、接点部46におけるガイド面45の角度を示している。また、角度θ1は、接点部46からガイド面45の延長方向に離れた位置におけるガイド面45の角度を示している。なお、接点部46が丸みを帯びている場合、接点部46におけるガイド面45の角度θ0は、接点部46とガイド面45の他の部分との境界におけるガイド面45の角度であってよい。
【0039】
接点部46における接線VL1に対するガイド面45の角度θ0は、ガイド面45のうち接点部46の近傍において羽根車2から流出空間41に流出した液体がガイド面45に沿って流れる角度である。液体がガイド面45に沿って流れることは、液体がガイド面45から剥離しないように、あるいは、当該剥離が小さくなるように、液体が流れることを意味する。具体的に、接点部46におけるガイド面45の角度θ0は、例えば0度以上かつ70度以下であるとよい。また、角度θ0は、例えば45度程度(例えば40度以上かつ50度以下)であってよい。
【0040】
図2に示すように、本実施形態の流出部6には、流出空間41を外部に連通させる吸気用孔43が形成されている。吸気用孔43は、羽根車2の下端16よりも鉛直方向上側に位置する。本実施形態の吸気用孔43は、鉛直方向において羽根車2の回転軸11と同じ高さに位置している。吸気用孔43は、例えば回転軸11の軸方向において羽根車2の中間に位置するとよい。また、本実施形態の吸気用孔43は、羽根車2の下端16よりも羽根車2の回転方向D1の前側に位置する。
さらに、本実施形態の流出部6には、吸気用孔43を開閉するバルブ44が設けられている。
【0041】
図1に示すように、本実施形態のクロスフロー水車装置1は、ドラフト管7と、貯水槽8と、をさらに備える。
ドラフト管7は、流出部6の鉛直方向下側に連ねて設けられ、鉛直方向下側に延びる。ドラフト管7は、鉛直方向下側に順番に配列された縮径部51と、拡径部52とを有する。縮径部51は、流出部6の下端から鉛直方向下側に向かうにしたがって流路断面が小さくなるように形成されている。拡径部52は、縮径部51の下端から鉛直方向下側に向かうにしたがって流路断面が大きくなるように形成されている。
【0042】
貯水槽8は、鉛直方向上側に開口する箱状に形成され、液体が貯留される。貯水槽8には、ドラフト管7の下端部が挿入される。ドラフト管7の下端部は、貯水槽8に貯留された液体の水位WL2よりも鉛直方向下側に位置する。
【0043】
次に、本実施形態のクロスフロー水車装置1の動作について説明する。
図4に示すように、ガイドベーン24によって湾曲管路部10を開いた状態において直線管路部9から湾曲管路部10に向けて液体が流れると、液体は湾曲管路部10の流入口21から羽根車2に流入する。
ここで、湾曲管路部10の流路断面は羽根車2の回転方向D1の前側に向かうにしたがって小さくなっている。このため、流入口21が羽根車2の回転方向D1に長く延びていても、流入口21から羽根車2に流入する液体の流速が、羽根車2の周方向の位置に応じてばらつくことを抑制できる。例えば、流入口21のうち流入口21の第二端22側の領域から羽根車2に流入する液体の流速が、流入口21の第一端23側の領域から羽根車2に流入する液体の流速よりも大きくなることを抑制できる。
【0044】
流入口21を通じて羽根車2に流入した液体は、流入口21に対向する羽根12に当たることで羽根車2を回転方向D1に回転駆動する。
ここで、湾曲管路部10の流入口21は、羽根車2の鉛直方向上側、かつ、羽根車2の上端15から羽根車2の回転方向D1前側に位置する。このため、液体全てを羽根車2に対して鉛直方向下側に流入させることができる。すなわち、流入口21から羽根車2に流入する液体には重力が必ず作用する。これにより、直線管路部9及び湾曲管路部10において流れる液体の水圧に加え、液体に作用する重力も利用して、羽根車2を回転駆動することができる。
【0045】
流入口21に対向する羽根12に当たった液体は、主に矢印D5で示すように羽根車2の内側空間13において鉛直方向下側かつ羽根車2の回転方向D1の前側に向けて流れ、羽根車2のうち鉛直方向下側に位置する羽根12に再び当たることで羽根車2をさらに回転駆動する。鉛直方向下側に位置する羽根12に当たった液体は、流出部6の流出空間41に流れ出る。
【0046】
ここで、流出部6は凸状に湾曲するガイド面45を有する。また、接点部46における接線VL1に対するガイド面45の角度θ0(
図3参照)は、ガイド面45のうち接点部46の近傍において羽根車2から流出空間41に流出した液体がガイド面45に沿って流れる角度となっている。このため、ガイド面45の接点部46の近傍の領域(近傍領域)において羽根車2から流出部6の流出空間41に流出する液体は、矢印D6で示すように、ガイド面45から剥離しにくく、ガイド面45に沿って流れる。また、ガイド面45の接点部46が丸みを帯びていることでも、ガイド面45の接点部46の近傍領域において羽根車2から流出部6の流出空間41に流出する液体は、ガイド面45から剥離しにくくなり、ガイド面45に沿って流れやすくなる。これにより、液体が羽根車2の内側において矢印D5で示すように羽根車2の回転方向D1の前側に流れていても、当該液体が羽根車2から流出空間41に流出する際には、当該液体の流れの向きを、矢印D7で示すように羽根車2の回転方向D1から羽根車2の径方向外側に偏向することができる。すなわち、羽根車2から流出空間41に流出する液体の周方向速度(羽根車2の回転方向D1に対応する液体の速度)を減らすことができる。これにより、羽根車2から流出空間41に流出する液体が羽根12に当たる際に、液体の動力を効率よく羽根車2に伝達することができる。
【0047】
また、本実施形態では、羽根車2から流出空間41に流出する液体の流れの向きが鉛直方向下側に偏向されるため、流出空間41に流出する液体には重力も効果的に作用する。これにより、液体が流出空間41に流出する際には、液体に作用する重力も効果的に利用して、羽根車2を回転駆動することができる。
【0048】
また、キャビティ5内においては、羽根車2の回転に伴って、液体が凹状に湾曲したキャビティ5の内面32に沿ってキャビティ5の開口31の第二端34から第一端33に向かうように流れる旋回流D8が生じる。すなわち、旋回流D8は、羽根車2の回転方向と逆向き(図示例では反時計回り)に流れる。旋回流D8の一部は、羽根車2の内側に入り込む。
【0049】
そして、旋回流D8と、羽根車2の内側において流入口21から流出空間41に向かう液体の流れ(流れ方向D5,D6を含む噴流F1)との間には、流れの境界面BSが形成される。流れの境界面BSは、キャビティ5の開口31の第一端33と第二端34(接点部46)とをつなぐように形成される。また、流れの境界面BSは、旋回流D8の一部が羽根車2の内側に入り込むことで、キャビティ5の開口31に対して羽根車2の内側に凸状に膨出する。
【0050】
このように流れの境界面BSが形成されることで、噴流F1のうち流れの境界面BSの近傍において流れる液体の流れ方向(矢印D6で示す流れ)を、羽根車2の回転方向D1から羽根車2の径方向外側に近づけることができる。また、流れの境界面BSを流出部6のガイド面45に滑らかにつなげることができる。このため、接点部46の近傍領域において羽根車2から流出部6の流出空間41に流出する液体の流れ(矢印D6で示す流れ)が、ガイド面45から剥離することを効果的に抑制できる。
【0051】
また、羽根車2の内側において流入口21から流出空間41に向けて流れる液体の一部は、羽根車2の回転に伴う遠心力によってキャビティ5の開口31の第二端34の近傍からキャビティ5内に吐出される。また、キャビティ5内に吐出された液体の一部は、旋回流D8によってキャビティ5の内面32に沿って開口31の第一端33まで流れ、羽根車2に再度流入する。羽根車2に再度流入した液体は、キャビティ5の開口31に対向する羽根12に当たり、羽根車2をさらに回転駆動する。すなわち、流入口21から羽根車2に流入した液体に作用する遠心力を利用して、羽根車2をさらに回転駆動することができる。
図1に示すように、流出部6の流出空間41に流れ出た液体は、矢印D9で示すように、主にドラフト管7に向けて鉛直方向下側に流れる。
【0052】
本実施形態のクロスフロー水車装置1では、ドラフト管7に溜まる液体の水位WL1を、貯水槽8に貯留された液体の水位WL2よりも高く位置させる。これにより、ドラフト管7において貯水槽8の水位WL2よりも上方に位置する液体の重みによって、流出部6の流出空間41における気圧、水圧を大気圧よりも低下させることができる。このため、液体を湾曲管路部10から羽根車2を通して流出空間41に引き込みやすくなる。
なお、ドラフト管7に溜まる液体の水位WL1は、ドラフト管7に位置してもよいが、例えば
図1において二点鎖線で示すように、流出部6の流出空間41に位置し、羽根車2に到達してもよい。
【0053】
流出部6の流出空間41における気圧、水圧は、前述したドラフト管7及び貯水槽8によって流出空間41の外側における気圧(大気圧)よりも低くなる。このため、バルブ44によって流出部6の吸気用孔43を開いた状態では、空気が吸気用孔43を通して流出空間41に流入する。なお、流出部6の流出空間41における気圧、水圧は、大気圧よりも低いため、ドラフト管7に溜まる液体の水位WL1が吸気用孔43よりも上側に位置していても、外部の空気は、吸気用孔43を通して流出空間41に流入できる。流出空間41に流入した空気は、
図4に示すように、羽根車2の内側に入り込んで空気層ALを形成する。この空気層ALが羽根車2の回転軸11を取り囲むことで、羽根車2の内側を通る液体(噴流F1)が回転軸11に衝突することを防ぐ。羽根車2の内側を通る噴流F1が回転軸11に衝突しないことで、羽根車2を効率よく回転駆動することができる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態に係るクロスフロー水車装置1によれば、流出部6が凸状に湾曲するガイド面45を有する。また、接点部46における接線VL1に対するガイド面45の角度θ0は、ガイド面45のうち接点部46の近傍において羽根車2から流出空間41に流出した液体がガイド面45に沿って流れる角度(例えば0度以上かつ70度以下)となっている。これにより、羽根車2から流出空間41に流出する液体の周方向速度(羽根車2の回転方向D1に対応する液体の速度)を減らして、羽根車2から流出空間41に流出する液体が羽根12に当たる際に、液体の動力を効率よく羽根車2に伝達することができる。したがって、羽根車2の回転効率を向上することができる。
【0055】
また、流出部6がガイド面45を有する場合には、ガイドベーン24による流入管路部3(湾曲管路部10)の開き量を変えて羽根車2から流出空間41に流出する液体の流量や流速を変化させても、当該液体の流出方向がほとんど変わらない。このため、羽根車2や流出部6(流出空間41)を小さく形成することができる。これにより、クロスフロー水車装置1を構成する材料を節約して、製造コストを削減することができる。
【0056】
また、本実施形態のクロスフロー水車装置1によれば、羽根車2の回転方向D1における流入口21と流出空間41との間にキャビティ5が設けられている。このため、接点部46の近傍領域において羽根車2から流出部6の流出空間41に流出する液体の流れ(矢印D6で示す流れ)が、ガイド面45から剥離することを効果的に抑制できる。これにより、液体の動力を効率よく羽根車2に伝達することができ、羽根車2の回転効率をさらに向上できる。
また、キャビティ5が設けられていることで、羽根車2の回転に伴う遠心力によってキャビティ5に吐出された液体を羽根車2に再度流入させて、羽根車2をさらに回転駆動することもできる。したがって、羽根車2の回転効率をさらに向上できる。
【0057】
また、本実施形態のクロスフロー水車装置1によれば、キャビティ5の内面32がキャビティ中心線O2を中心とする円弧状に形成されている。これにより、キャビティ5の内面32に沿って開口31の第一端33から第二端34に至る方向において、当該内面32の曲率は変化しない。このため、キャビティ5の内面32に沿って流れる液体の旋回流D8の損失を小さく抑えることができる。
【0058】
また、本実施形態のクロスフロー水車装置1によれば、キャビティ中心線O2が羽根車2の外周の外側に位置する。このため、羽根車2の内側において流入口21から流出空間41に向かう液体の流れ(噴流F1)と、キャビティ5による旋回流D8との間にある流れの境界面BSを流出部6のガイド面45に対してさらに滑らかにつなげることができる。これにより、接点部46の近傍領域において羽根車2から流出部6の流出空間41に流出する液体の流れ(矢印D6で示す流れ)が、ガイド面45から剥離することをさらに効果的に抑制できる。したがって、液体の動力をさらに高い効率で羽根車2に伝達することができ、羽根車2の回転効率をさらに向上できる。
【0059】
また、キャビティ中心線O2が羽根車2の外周の外側に位置する場合には、キャビティ5の内面32を半円よりも大きな円弧状に形成できる。これにより、液体を羽根車2に再度流入する際の液体の流れ方向を、羽根車2の径方向に対して羽根車2の回転方向D1の前側に傾斜させることができる。したがって、キャビティ5から羽根車2に再度流入する液体の流れを、羽根車2の回転駆動に有効に活用することができる。すなわち、羽根車2の回転効率をさらに向上できる。
【0060】
また、本実施形態のクロスフロー水車装置1によれば、キャビティ5の開口31の第一端33は、流入口21の第一端23に対して回転方向D1の前側に間隔をあけずに位置する。このため、流入口21から羽根車2に流入して遠心力が作用する液体を高い効率でキャビティ5に引き込むことができる。これにより、羽根車2の回転効率をさらに向上できる。
【0061】
また、本実施形態に係るクロスフロー水車装置1によれば、湾曲管路部10の流入口21が、羽根車2の鉛直方向上側に位置する。このため、重力が作用する液体を羽根車2に流入させることができる。すなわち、重力を有効に利用して、羽根車2を回転させることができる。したがって、羽根車2の回転効率をさらに向上することができる。
【0062】
さらに、本実施形態に係るクロスフロー水車装置1によれば、湾曲管路部10の流入口21が、羽根車2の上端15から羽根車2の回転方向D1の前側に位置する。このため、重力が作用する液体だけが羽根車2に流入する。すなわち、重力をさらに有効に利用して、羽根車2を回転させることができる。したがって、羽根車2の回転効率をさらに向上することができる。
【0063】
また、本実施形態のクロスフロー水車装置1において、流入口21の第一端23が、羽根車2の上端15に位置する流入口21の第二端22に対して羽根車2の回転方向D1の前側に90度以上ずれて位置する場合には、鉛直方向上側から見て、羽根車2の外周に対向する流入口21の大きさが最大となる。これにより、湾曲管路部10から羽根車2に向けて鉛直方向下側に流入する液体、すなわち重力が作用する液体を、羽根車2の回転駆動に最大限利用することができる。したがって、羽根車2の回転効率をさらに向上できる。
【0064】
また、本実施形態のクロスフロー水車装置1によれば、湾曲管路部10の流路断面が羽根車2の回転方向D1の前側に向かうにしたがって小さくなる。このため、流入口21から流入する液体の流速が、羽根車2の周方向の位置に応じてばらつくことを抑制できる。すなわち、羽根12に作用する液体の力(水圧や重力)が、羽根車2の周方向の位置に応じてばらつくことを抑制できる。したがって、羽根車2を効率よく回転駆動することができる。
【0065】
また、本実施形態のクロスフロー水車装置1によれば、流出部6の鉛直方向下側に連ねて形成されるドラフト管7と、ドラフト管7の下端部が挿入される貯水槽8と、を備える。このため、流出部6の流出空間41における気圧、水圧を大気圧よりも低下させて、液体を湾曲管路部10から羽根車2を通して流出空間41に引き込みやすくなる。これにより、羽根車2の回転効率をさらに向上させることができる。
【0066】
また、本実施形態のクロスフロー水車装置1によれば、吸気用孔43が、羽根車2の下端16よりも鉛直方向上側に位置し、かつ、羽根車2の下端16よりも羽根車2の回転方向D1の前側に位置する。このため、吸気用孔43を通して流出空間41に流入した空気は、羽根車2から流出空間41に流出した液体の流れを通過することなく、羽根車2の内側に到達することができる。すなわち、吸気用孔43を通して流出空間41に流入した空気が、羽根車2から流出空間41に流出した液体の流れ(噴流F1)に巻き込まれることを抑制できる。これにより、少量の空気で回転軸11に対する液体の衝突を防ぐための空気層ALを形成することができる。したがって、吸気用孔43を通して流出空間41に流入した空気によって流出空間41における気圧、水圧が高くなる(大気圧に近くなる)ことを抑制し、前述したドラフト管7及び貯水槽8による効果(液体を湾曲管路部10から流出空間41に引き込む効果)を高めることができる。
【0067】
また、本実施形態のクロスフロー水車装置1によれば、流出部6に形成された吸気用孔43が、回転軸11(羽根車2)の軸方向において羽根車2の中間に位置する。このため、外気が吸気用孔43を通じて流出空間41に流入する際に、羽根車2の軸方向における気圧差、水圧差を小さく抑えることができる。これにより、羽根12に当たる液体の流速の差が軸方向において大きくなることを抑制できるため、液体による羽根車2の回転駆動を効率よく行うことができる。
【0068】
〔第二実施形態〕
次に、
図5を参照して本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態においては、第一実施形態と同様の構成要素について同一符号を付す等して、その説明を省略する。
【0069】
図5に示すように、本実施形態のクロスフロー水車装置1Aは、第一実施形態と同様の羽根車2、流入管路部3、流出部6などを備える。ただし、本実施形態のクロスフロー水車装置1Aは、キャビティ5(
図2等参照)に代えて円弧壁60Aを備える。
【0070】
円弧壁60Aは、羽根車2の回転方向D1において流入口21から流出空間41まで羽根車2の外周に沿って延びる円弧面61Aを有する。具体的に、円弧面61Aは、回転方向D1において流入口21の第一端23から流出空間41をなすガイド面45の接点部46まで羽根車2の外周に接するように延びる。円弧面61Aが羽根車2の外周に接することは、円弧面61Aが羽根車2の外周に対して微小に間隔をあけて位置することも含む。
円弧面61Aとガイド面45とは、接点部46が丸みを帯びた形状に形成される等して、滑らかにつながっているとよい。同様に、円弧面61Aと流入口21の第一端23から延びる湾曲管路部10の内面とは、滑らかにつながっているとよい。
【0071】
第二実施形態のクロスフロー水車装置1Aによれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、第二実施形態のクロスフロー水車装置1Aでは、羽根車2の外周のうち流入管路部3の流入口21から流出部6のガイド面45の接点部46に至る領域が円弧壁60Aによって覆われる。このため、当該領域において羽根車2の内側に空気が入り込むことを防止できる。これにより、羽根車2から流出した液体とガイド面45との間に空気が入り込むことを抑制できる。したがって、ガイド面45上における当該液体の流れが空気によって剥離することを抑制できる。その結果として、第一実施形態の場合と同様に、羽根車2の回転効率を向上できる。
【0072】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0073】
1,1A…クロスフロー水車装置、2…羽根車、3…流入管路部、5…キャビティ、6…流出部、7…ドラフト管、8…貯水槽、9…直線管路部、10…湾曲管路部、11…回転軸、12…羽根、13…内側空間、15…羽根車2の上端、21…流入口、22…流入口21の第二端、23…流入口21の第一端、24…ガイドベーン、31…キャビティ5の開口、32…キャビティ5の内面、33…開口31の第一端、34…開口31の第二端、41…流出空間、43…吸気用孔、44…バルブ、45…ガイド面、46…接点部、51…縮径部、52…拡径部、60A…円弧壁、61A…円弧面、D1…回転方向(一方向)、O1…軸線、O2…キャビティ中心線、θ,θ0,θ1…ガイド面45の角度