(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】モータアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02K 5/22 20060101AFI20230208BHJP
H02K 5/14 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
H02K5/22
H02K5/14 A
(21)【出願番号】P 2018217919
(22)【出願日】2018-11-21
【審査請求日】2021-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000220125
【氏名又は名称】東京パーツ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(72)【発明者】
【氏名】阿部 浩和
(72)【発明者】
【氏名】木下 勉
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-091992(JP,A)
【文献】国際公開第2018/150743(WO,A1)
【文献】特開平10-326651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/22
H02K 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータケースと、前記モータケースに装着されたブラケットと、前記モータケースと前記ブラケットに軸支された回転軸と、前記回転軸に固定された整流子と、
前記整流子に接するブラシと、前記ブラケットに固定されて前記整流子に給電する
一対の給電端子と、を有するモータと、
一対の給電用ターミナルを有するコネクタ側ターミナルと、
前記モータと前記コネクタ側ターミナルを内部で固定する、下ケースと上ケースとからなるハウジングを備え、
前記給電用ターミナルは、前記コネクタ側ターミナルから、前記下ケースと前記上ケースの組み込み方向および前記モータの軸方向に対して垂直な第1方向に引き出されており、
前記給電端子は、前記ブラケットの径方向外側から、前記第1方向に引き出され、
一対の前記給電用ターミナルと
一対の前記給電端子は、
それぞれ前記軸方向に異なる位置において、溶接により電気的に接続されており、
前記ブラシは、一端が前記ブラケット内側に固定されて前記整流子と接しており、他端が前記ブラケットの径方向外側で前記給電端子となっている、切れ目のない同一部材により構成されており、
前記給電用ターミナルと前記給電端子のどちらか一方は、弾性部を有することを特徴とするモータアクチュエータ。
【請求項2】
前記給電用ターミナルと前記給電端子のどちらか一方は、一方の先端部と、前記一方の先端部と連続して形成された前記弾性部を有し、
前記給電用ターミナルと前記給電端子のどちらか他方は、他方の先端部を有し、
前記一方の先端部と前記他方の先端部が溶接により電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のモータアクチュエータ。
【請求項3】
前記給電用ターミナルと前記給電端子のどちらか一方は、前記弾性部と連続して形成された本体部を有しており、
前記弾性部の厚みは、前記本体部の厚みより薄肉であることを特徴とする請求項1に記載のモータアクチュエータ。
【請求項4】
前記弾性部は、突状の弾性湾曲部であることを特徴とする請求項1に記載のモータアクチュエータ。
【請求項5】
前記弾性湾曲部は、断面U字型であることを特徴とする請求項
4に記載のモータアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両用空調装置における送風経路切換ドアを作動させるためのモータアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のモータアクチュエータとして、例えば、特許文献1には、駆動源としての給電端子を有するモータと、外部コネクタの差し込み口に配されて外部の電力をモータに供給するコネクタ側ターミナルと、コネクタ側ターミナルに接続されてモータの給電端子に弾性力が付与される状態で接触する一対の給電用ターミナルと、を備えるアクチュエータ装置が記載されている。これにより、外部の電力をモータの給電端子に供給することができ、モータが動作すると、このアクチュエータ装置に接続された送風経路切換ドアが動作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のアクチュエータ装置では、給電用ターミナルがモータの給電端子に弾性力が付与される状態で接触しているため、モータ自体や車両等の振動により、給電用ターミナルとモータの給電端子の接触部で接触不良になりやすく接触信頼性が低下したり、びびり音が生じて特に静粛性が求められる電気自動車では問題が生じる可能性がある。
【0005】
また、特許文献1に記載されたアクチュエータ装置は、給電用ターミナルとモータの給電端子との接続を容易に行うことができるという観点では有用な技術ではあるが、モータをケースに取付ける際に、給電用ターミナルとモータの給電端子との位置関係に組み込みずれが生じると、接触不良が生じる可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、びびり音をなくして接触信頼性を高めたモータアクチュエータを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のモータアクチュエータは、
モータケースと、前記モータケースに装着されたブラケットと、前記モータケースと前記ブラケットに軸支された回転軸と、前記回転軸に固定された整流子と、前記整流子に接するブラシと、前記ブラケットに固定されて前記整流子に給電する一対の給電端子と、を有するモータと、
一対の給電用ターミナルを有するコネクタ側ターミナルと、
前記モータと前記コネクタ側ターミナルを内部で固定する、下ケースと上ケースとからなるハウジングを備え、
前記給電用ターミナルは、前記コネクタ側ターミナルから、前記下ケースと前記上ケースの組み込み方向および前記モータの軸方向に対して垂直な第1方向に引き出されており、
前記給電端子は、前記ブラケットの径方向外側から、前記第1方向に引き出され、
一対の前記給電用ターミナルと一対の前記給電端子は、それぞれ軸方向に異なる位置において、溶接により電気的に接続されており、
前記ブラシは、一端が前記ブラケット内側に固定されて前記整流子と接しており、他端が前記ブラケットの径方向外側で前記給電端子となっている、切れ目のない同一部材により構成されており、
前記給電用ターミナルと前記給電端子のどちらか一方は、弾性部を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のモータアクチュエータは、給電用ターミナルと給電端子が溶接により電気的に接続されたため、接触信頼性が向上する。しかし、コネクタ側ターミナルとモータが一方のケース内に組み込まれてから、給電用ターミナルと給電端子が溶接される場合、ケース内の溶接作業のため、溶接しにくく、ケース内を汚してしまう可能性がある。
そこで、本発明のモータアクチュエータでは、溶接作業をしやすく、ケース内を汚さないように、ケース外で給電用ターミナルと給電端子を溶接して一体化してから、これらをケース内に組み込むことが考えられる。
しかし、この場合には、溶接作業をしやすく、ケース内を汚さずにすむものの、溶接して一体化したコネクタ側ターミナルとモータのケースへの組み込みずれが生じると、溶接部分に過度な負荷が加わり、接続不良が生じてしまう可能性がある。
そこで、本発明のモータアクチュエータでは、給電用ターミナルと給電端子のどちらか一方は、弾性部を有する。そして、溶接されて一体化したコネクタ側ターミナルとモータがケースに対して組み込みずれを生じたときに、弾性部がこのずれを吸収する。
このように、本発明のモータアクチュエータは、給電用ターミナルと給電端子が溶接されたため、びびり音をなくして接触信頼性を高めると共に、ケースに対する組み込みずれがあっても、溶接部分に過度な負荷が加わらず、さらに、ケース外のため溶接しやすく、ケース内を溶接により汚さないですむ。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係るモータアクチュエータ1の完成品であって、(a)は平面図であり、(b)は(a)の切断線A-Aの断面図である。
【
図2】(a)は
図1(a)の上ケース20を内側から見た平面図であり、(b)は
図1(a)の上ケースを除いた平面図である。
【
図3】(a)は
図2(b)の出力軸32と減速ギヤ31を除いた平面図であり、(b)は(a)の切断線B-Bの断面図である。
【
図4】(a)は
図3(a)の矢視Cの拡大図であり、(b)は
図3(b)の矢視Dの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書では、
図1(b)において、上ケース20と下ケース10の組み込み方向を「組み込み方向」(X方向)と呼び、
図1(b)において、組み込み方向に対して垂直な第1方向を「第1方向」(Y方向)と呼び、
図2(b)において、組み込み方向と第1方向に対して垂直な回転軸53に対して平行な方向を「軸方向」(Z方向)と呼び、
図2(b)において、回転軸53を中心とする径方向を単に「径方向」と呼ぶ。
【0011】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を例示的に説明する。
【0012】
本発明のモータアクチュエータ1は、
図1ないし
図4に示されており、例えば、空気調整装置の気流調節弁の駆動源などに用いられる。
【0013】
モータアクチュエータ1は、下ケース(一方のケース)10と、上ケース(他方のケース)20と、減速ギヤ31と、出力軸32と、コネクタ側ターミナル40と、モータ50とを有する。
【0014】
下ケース10は、略四辺形の底板11と、底板11の周縁から立設された側板12と、側板12により形成された開口端部を有する。
上ケース20は、略四辺形の上板21と、上板21の周縁から下設された側板22と、側板22により形成された開口端部を有する。
【0015】
上ケース20の開口端部が下ケース10の開口端部に組み込みされて所定の内部空間を有するハウジング2が形成されている。このハウジング2の内部には、モータ50と、減速ギヤ31と、出力軸32と、コネクタ側ターミナル40等が配されている。
また、下ケース10には、モータ50を挿入して固定する凹部16が形成されており、上ケース20には、モータ50を挿入して固定する凹部26が形成されている。
【0016】
また、ハウジング2の側板12、22の一つには、その側板12、22から突出する1個の外部コネクタの差し込み口14、24が形成されている。この差し込み口14、24には、外部装置から不図示のコネクタが差し込まれる。外部装置は、そのコネクタを差し込み口14、24に差し込んだとき、差し込み口14、24に設けられた後述のコネクタピン43に電気的に接続されている。
【0017】
また、差し込み口14、24は、モータ50の後述のブラケット52と直接対向する側板12、22に形成されている。この側板12、22は軸方向と垂直方向に形成されている。また、差し込み口14、24とモータ50は、モータの軸方向に重畳せずに配置されている。また、差し込み口の挿入方向は、モータの軸方向と平行となっている。
【0018】
減速ギヤ31は、2個有し、後述のウォームギヤ58に連結される。
出力軸32は、硬質樹脂で形成され、外周に溝を有するフランジ状の出力ギヤを有し、出力ギヤは、減速ギヤ31に連結される。また、出力軸32は、下ケース10と上ケース20に形成された軸孔により軸支される。
出力軸32の一面には、出力軸32の回転位置を検出するパターン基板33が固定されており、パターン基板33は出力軸32の回転に対応して一体に回転する。
【0019】
コネクタ側ターミナル40は、パターン基板33と接触するパターン用ブラシ41と、給電端子56bに接続された給電用ターミナル42と、外部装置との接続用のコネクタピン43と、これらを保持する絶縁樹脂による保持部44と、からなる。
このコネクタ側ターミナル40は、保持部44に一体的に設けられた取付部の穴に、下ケース10に設けられた突起を挿通して、熱かしめにて固定されている。
【0020】
パターン用ブラシ41は、パターン基板33と摺接することにより、出力軸32の位置に相当する電圧値が検出され、出力軸32の回転位置が分かる。
【0021】
2つの給電用ターミナル42は、外部装置からの電力をモータの給電端子56bに供給するものである。
2つの給電用ターミナル42は、剛性のある導電材料からなり、断面四角形状に形成されている。
2つの給電用ターミナル42は、一方の給電用ターミナルと、他方の給電用ターミナルを有し、保持部44から、第1方向に、それぞれ引き出されている。つまり、2つの給電用ターミナル42は、組み込み方向から見て重畳しないように、軸方向の上側と下側に位置を変えて配置されており、かつ、軸方向から見て同じ高さに配置されており、かつ、保持部44から、第1方向に、それぞれ同じ長さに引き出されている。
【0022】
2つの給電用ターミナル42は、直線状の第1先端部(一方の先端部)42cと、第1先端部42cと連続して形成された直線状の第1本体部(一方の本体部)42dを有する。
【0023】
コネクタピン43は、差し込み口14、24に固定され、外部装置のコネクタと接続できる。
【0024】
モータ50は、モータケース51と、ブラケット52と、固定子と、回転子と、モータ用ブラシ56と、を有し、下ケース10と上ケース20の凹部16、26に挿入されて固定されている。
【0025】
モータケース51は、金属材料により形成され、円筒部と上板からなり、上板の中央部にはラジアル軸受が圧入されている。
ブラケット52は、モータケース51の開口部に嵌着され、樹脂等の絶縁材料によって一体成形されている。ブラケット52の中央部には、円形の凹部が形成されており、凹部の底面はスラスト軸受となっている。凹部にはラジアル軸受が圧入されている。ブラケット52の外径は、モータケース51の円筒部の内径と略同一である。
【0026】
固定子は、モータケース51の円筒部の内周面に固着されており、円筒形状で円周方向に沿ってN極、S極が交互に着磁された永久磁石からなる。
回転子は、回転軸53と、回転軸53に固定され薄い鋼鈑を複数枚積層してなる電機子コアと、電機子コアにコイル状に巻回された銅線と、回転軸53に固定されて銅線に電気的に接続された整流子54と、を有する。
回転軸53がラジアル軸受に挿通されて回転自在に支承される。そして、回転軸53の一端はモータケース51から突出してウォームギヤ58が固着され、他端はスラスト軸受により支承されている。
【0027】
また、ブラケット52の下端には、側板12、22が近接して配されている。
【0028】
ブラケット52には、整流子54に摺接して電流を流すように一対のモータ用ブラシ56が設けられている。
モータ用ブラシ56は、銅若しくは銅合金のような剛性のある導電材料からなり、平面56baと側面56bbを有する略薄平板状に形成されている。この平面56baは側面56bbに対して幅広であり、側面56bbは平面56baに対して幅狭である。
【0029】
2つのモータ用ブラシ56は、
図3(b)に示すように、ブラケット52の内側に回転軸53を中心に線対称に配置されている。
モータ用ブラシの一端56aは、整流子54に接しながらブラケット52の内側に固定されており、モータ用ブラシの他端56bは、ブラケット52から径方向外側に(第1方向に)引き出された給電端子となっている。モータ用ブラシの一端56aと給電端子56bは切れ目のない同一部材により構成されている。
【0030】
モータ用ブラシ56は、ブラケット52の内側に挿入されて固定されている。具体的に、モータ用ブラシ56は、側面56bbから、軸方向に、ブラケット52の内側に挿入されて固定されている。このため、
図4(a)に示すように、組み込み方向から見ると、給電端子56bは、幅広となる平面56baが見えることになる。
【0031】
そして、2つのモータ用ブラシ56があるため、給電端子56bは、一方の給電端子と、他方の給電端子を有する。給電端子56bは、モータの径方向に突出する、所謂、横出しとなっている。
【0032】
また、2つのモータ用ブラシの一端56aは、組み込み方向から見て軸方向の同じ位置に固定されている。仮に、モータ用ブラシの全体形状が平板状である場合、2つの給電端子56bがブラケット52から径方向外側に引き出されると、組み込み方向から見て、2つの給電端子56bが重畳してしまう。すると、組み込み方向から見て、重畳した2つの給電端子56bと、軸方向の上側と下側に位置を変えた2つの給電用ターミナル42は、電気的に接続しにくくなる。
【0033】
そこで、2つの給電端子56bは、組み込み方向から見て、軸方向の上側と下側に変形させた形状となっている(
図4(a))。このため、2つの給電用ターミナル42と、2つの給電端子56bは、容易に電気的な接続をできる。つまり、一方の給電用ターミナルと一方の給電端子は、電気的に接続できて、また、他方の給電用ターミナルと他方の給電端子は、電気的に接続できる。
【0034】
また、2つの給電端子56bは、ブラケット52から径方向外側に(第1方向に)それぞれ引き出されている。仮に、モータ用ブラシの全体形状が平板状である場合、この2つの給電端子56bは、軸方向から見て、組み込み方向に異なる高さに配置される。すると、軸方向から見て、異なる高さに配置された2つの給電端子56bと、同じ高さに配置された2つの給電用ターミナル42は、電気的に接続しにくくなるが、本実施形態では、異なる高さに配置された2つの給電端子56bを利用して、電気的に接続している。具体的に、
図4(b)に示すように、軸方向から見て、組み込み方向に高い位置にある一方の給電端子は、一方の給電用ターミナルの上側に接しており、また、組み込み方向に低い位置にある他方の給電端子は、他方の給電用ターミナルの下側に接するように配置している。このように構成すると、一方の給電用ターミナルと一方の給電端子は、電気的に接続できて、また、他方の給電用ターミナルと他方の給電端子は、電気的に接続できる。
【0035】
また、2つの給電端子56bは、組み込み方向から見ると、ブラケット52から径方向外側に(第1方向に)それぞれ引き出されている。
給電端子56bは、モータケース51から径方向外側に(第1方向に)引き出された部分において、直線状の第2先端部(他方の先端部)56cと、第2先端部56cと連続して形成された弾性部56dと、弾性部56dと連続して形成された第2本体部(他方の本体部)56eを有する。
【0036】
弾性部56dは、具体的に、
図4(b)に示すように、組み込み方向の上側ないし下側に突出する突状の断面U字型の弾性湾曲部であり、一方の端部と他方の端部を有する。一方の端部は第2先端部56cと連続して形成されており、他方の端部は第2本体部56eと連続して形成されている。
この弾性湾曲部は、プレス加工により、第2先端部56cと第2本体部56eの厚みより薄肉に形成されている。このため、弾性湾曲部の厚みH1は、第2本体部の厚みH2より薄肉となっている。
【0037】
そして、給電端子の第2先端部56cが組み込み方向あるいは第1方向あるいは軸方向から力を加えられると、弾性湾曲部の一方の端部が、弾性湾曲部の他方の端部(第2本体部56eの端部)を基点として、弾性変形範囲内で、組み込み方向あるいは第1方向あるいは軸方向に移動し、力がなくなると、元の形状に復元する。
【0038】
本発明では、給電端子の第2先端部56cと第2本体部56eの弾性率が、給電端子の弾性湾曲部の弾性率に比べて高く設定されており、例えば20倍以上、好ましくは50倍以上、より好ましくは100倍以上となっている。このため、給電端子の第2先端部56cに力が加わった場合、第2先端部56cと第2本体部56eは極めて僅かに弾性変形するものの、第2先端部と第2本体部の弾性変形は無視できるほど小さい。
【0039】
そして、第1先端部42cと第2先端部56cを溶接する場合、第1先端部42cと第2先端部56cを接触させてから、第1先端部と第2先端部を両外側から不図示の溶接電極で加圧しながら、溶接電極に溶接電流を流す。これにより、第1先端部42cと第2先端部56cとの点接触部分に電流が集中して流れ、スポット溶接が行われる。この溶接部分は、弾性部を含まない、つまり、弾性部以外の箇所とする。なぜなら、この溶接部分が弾性部であると、弾性部が所定の弾性変形をしないためである。
【0040】
上述の構成により、モータの回転が、ウォームギヤ58、減速ギヤ31、出力軸32を介して、例えば、空気調整装置の気流調節弁の回転軸に伝達できる。
【0041】
本例のモータアクチュエータ1は、モータ50と、コネクタ側ターミナル40と、ハウジング2を有する。
モータ50は、モータケース51と、モータケース51に装着されたブラケット52と、モータケース51とブラケット52に軸支された回転軸53と、回転軸53に固定された整流子54と、ブラケット52に固定されて整流子54に給電する給電端子56bと、を有する。
コネクタ側ターミナル40は、給電用ターミナル42を有する。
ハウジング2は、モータ50とコネクタ側ターミナル40を内部で固定する、下ケース10と上ケース20とからなる。
【0042】
給電用ターミナル42と給電端子56bは、溶接により電気的に接続されている。
給電用ターミナル42は、弾性部を有する。
【0043】
よって、本例のモータアクチュエータは、給電用ターミナルと給電端子が溶接により電気的に接続されたため、接触信頼性が向上する。しかし、コネクタ側ターミナルとモータが下ケース内に組み込まれてから、給電用ターミナルと給電端子が溶接される場合、ケース内の溶接作業のため、溶接しにくく、ケース内を汚してしまう可能性がある。
そこで、本例のモータアクチュエータでは、溶接作業をしやすく、ケース内を汚さないように、ケース外で給電用ターミナルと給電端子を溶接して一体化してから、これらをケース内に組み込むことが考えられる。
しかし、この場合には、溶接作業をしやすく、ケース内を汚さずにすむものの、溶接して一体化したコネクタ側ターミナルとモータのケースへの組み込みずれが生じると、溶接部分に過度な負荷が加わり、接続不良が生じてしまう可能性がある。
そこで、本例の給電端子は、弾性部を有する。そして、溶接されて一体化したコネクタ側ターミナルとモータがケースに対して組み込みずれを生じたときに、弾性部がこのずれを吸収する。
このように、本例のモータアクチュエータは、給電用ターミナルと給電端子が溶接されたため、びびり音をなくして接触信頼性を高めると共に、ケースに対する組み込みずれがあっても、溶接部分に過度な負荷が加わらず、さらに、ケース外のため溶接しやすく、ケース内を溶接により汚さないですむ。
【0044】
なお、本発明では、給電用ターミナルの第1先端部42cと第1本体部42dの弾性率が、給電端子の弾性部の弾性率に比べて高く設定されており、例えば20倍以上、好ましくは50倍以上、より好ましくは100倍以上となっている。よって、溶接されて一体化したコネクタ側ターミナルとモータがケースに対して組み込みずれを生じたときに、第1先端部42cと第1本体部42dは極めて僅かに弾性変形するものの、第1先端部42cと第1本体部42dの弾性変形は無視できるほど小さい。
また、溶接して一体化したコネクタ側ターミナルとモータが下ケースに組み込まれた時の組み込みずれは、弾性部の弾性変形範囲内である。よって、組み込みずれがあった場合、溶接部分に過度な負荷が加わらず、溶接部分において電気的に良好な接続状態が維持される。
【0045】
また、給電用ターミナル42は、第1先端部42cを有する。
給電端子56bは、第2先端部56cと、第2先端部56cと連続して形成された弾性部56dを有する。
第1先端部42cと第2先端部56cは、溶接により電気的に接続されている。
【0046】
よって、本例のモータアクチュエータは、第1先端部と第2先端部が溶接により電気的に接続されたため、接触信頼性が向上する。しかし、コネクタ側ターミナルとモータが下ケース内に組み込まれてから、第1先端部と第2先端部が溶接される場合、ケース内の溶接作業のため、溶接しにくく、また、ケース内を汚してしまう可能性がある。
そこで、本例のモータアクチュエータは、溶接作業をしやすく、ケース内を汚さないように、ケース外で第1先端部と第2先端部を溶接して一体化してから、これらをケース内に組み込むことが考えられる。
しかし、この場合には、溶接作業をしやすく、ケース内を汚さずにすむものの、コネクタ側ターミナルとモータが下ケースへの組み込みずれが生じると、溶接部分に過度な負荷が加わり、接続不良が生じてしまう可能性がある。
そこで、給電端子は、第2先端部と、第2先端部と連続して形成された弾性部を有している。
そして、第1先端部と第2先端部が溶接されて一体化したコネクタ側ターミナルとモータが下ケースに対して組み込みずれを生じたときに、弾性部がこのずれを吸収する。
このように、本例のモータアクチュエータは、第1先端部と第2先端部が溶接されたため、びびり音をなくして接触信頼性を高めると共に、ケースに対する組み込みずれがあっても、溶接部分に過度な負荷が加わらず、さらに、ケース外のため溶接しやすく、ケース内を溶接により汚さないですむ。
【0047】
また、給電用ターミナル42は、コネクタ側ターミナル40から、下ケース10と上ケース20の組み込み方向に対して垂直な第1方向に引き出されている。
また、給電端子56bは、モータ50から、第1方向に引き出されている。
よって、本例のモータアクチュエータにおいて、給電用ターミナルと給電端子は、第1方向に配置されているため、コネクタ側ターミナルとモータから、最も短い距離で電気的に接続でき、端子の引き回しの空間を小さくできる。
【0048】
また、第1方向は、モータの径方向の一方向である。
モータ50は、モータ用ブラシ56を有する。
モータ用ブラシの一端56aは、整流子54に接しながらブラケット52の内側に固定されており、モータ用ブラシの他端は、給電端子56bである。
そして、モータ用ブラシの一端56aとモータ用ブラシの他端である給電端子56bは、切れ目のない同一部材により構成されている。
よって、本例のモータアクチュエータにおいて、このモータは、横出しの給電端子となり、モータ用ブラシがモータの径方向に延出されると、延出された部分がこのまま給電端子となり、端子の引き回しを容易にできる。
【0049】
また、給電端子56bは、弾性部と連続して形成された第2本体部56eを有している。
また、弾性部である弾性湾曲部の厚みH1は、第2本体部の厚みH2より薄肉であるため、弾性湾曲部は、弾性変形しやすい。
【0050】
また、弾性部56dは、突状の弾性湾曲部であるため、容易に構成できる。
【0051】
また、弾性湾曲部は、断面U字型であるため、容易に構成できる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述に限定されるものではなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上述以外にも種々変形して実施することが可能である。
【0053】
上述の実施形態の説明では、給電端子56bは、モータケースからモータの径方向に突出する、横出しとなっているが、本発明はこれに限らない。
例えば、給電端子は、横出しではなく、ブラケット52からモータの軸方向に突出する縦出しでもよい。この縦出しの給電端子は、ブラケットの外側を引き回すような形状となり、給電用ターミナルと給電端子が溶接により電気的に接続される。
【0054】
また、上述の実施形態の説明では、弾性部56dは、断面U字型の弾性湾曲部である。給電端子の先端部が、組み込み方向あるいは第1方向あるいは軸方向に対して、力を加えられると、弾性変形可能内で、弾性変形して、力がなくなると、元の形状に戻るものなら、断面U字型に限られない。
弾性部は、例えば、断面V字型あるいは断面W字型の弾性湾曲部でもよい。
【0055】
また、上述の実施形態の説明では、弾性部は弾性湾曲部であるが、本発明はこれに限らない。弾性部は、例えば、直線状の板ばねである弾性非湾曲部でもよい。この弾性非湾曲部は、例えば、プレス加工により、第2先端部と第2本体部の厚みより薄い板状の板ばねに形成される。この弾性非湾曲部は、第1方向に僅かに変形可能である。
【0056】
また、上述の実施形態の説明では、給電端子56bは、直線状の第2先端部(他方の先端部)56cと、第2先端部56cと連続して形成された弾性湾曲部である弾性部56dと、弾性部56dと連続して形成された第2本体部56eを有するが、本発明はこれに限らない。
例えば、給電端子は、直線状の第2先端部(他方の先端部)が形成されず、断面U字型の弾性湾曲部と、この弾性湾曲部と連続して形成された第2本体部を有するものでもよい。この場合、断面U字型である弾性湾曲部の一方の端部が第1先端部(一方の先端部)42cと溶接される。
この例も、上述の作用効果が得られる。
【0057】
また、上述の説明では、弾性部56dは給電端子56bに形成されているが、本発明はこれに限らず、例えば、弾性部は、給電端子に形成されずに、給電用ターミナルに形成されてもよい。
具体的に、給電用ターミナルは、直線状の第3先端部(一方の先端部)と、第3先端部と連続して形成された上述の弾性部と、この弾性部と連続して形成された第3本体部(一方の本体部)を有する。また。給電端子は、直線状の第4先端部(他方の先端部)と、第4先端部と連続して形成された直線状の第4本体部(他方の本体部)を有する。
そして、第3先端部と第4先端部が溶接により電気的に接続される。
【0058】
また、上述の説明では、溶接方法は、スポット溶接であるが、半田接続でもよい。
【0059】
また、上述の説明では、給電用ターミナルと給電端子の先端部が溶接されたが、この溶接された部分をケースにより支持するため、次のような構成にしてもよい。
例えば、下ケース10には、内側に1つの立上部が形成されてもよい。この立上部は、底板11から組み込み方向に立設されており、平面状の端部を有する。
そして、上述の給電用ターミナルと給電端子の溶接部分が、立上部の端部に載置されて支持されている。
なお、立上部の端面に溝が設けられて、この溝に、給電用ターミナルと給電端子の溶接された部分が嵌合されてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 モータアクチュエータ
2 ハウジング
10 下ケース
11 下ケースの底板
12 下ケースの側板
13 立上部
14 下ケースの差し込み口
16 凹部
20 上ケース
21 上ケースの上板
22 上ケースの側板
24 上ケースの差し込み口
26 凹部
31 減速ギヤ
32 出力軸
33 パターン基板
40 コネクタ側ターミナル
41 パターン用ブラシ
42 給電用ターミナル
42a 給電用ターミナルの平面
42b 給電用ターミナルの側面
42c 第1先端部(一方の先端部)
42d 第1本体部(一方の本体部)
43 コネクタピン
44 保持部
50 モータ
51 モータケース
52 ブラケット
53 回転軸
54 整流子
56 モータ用ブラシ
56a モータ用ブラシの一端
56b モータ用ブラシの他端(給電端子)
56ba モータ用ブラシの他端の平面
56bb モータ用ブラシの他端の側面
56c 第2先端部(他方の先端部)
56d 弾性部(断面U字型の弾性湾曲部)
56e 第2本体部(他方の本体部)
58 ウォームギヤ