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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】レール張出し検出システム
(51)【国際特許分類】
   E01B 35/00 20060101AFI20230208BHJP
   G01B 11/16 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
E01B35/00
G01B11/16 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019012495
(22)【出願日】2019-01-28
(65)【公開番号】P2020118003
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503295448
【氏名又は名称】計測ネットサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093687
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 元成
(74)【代理人】
【識別番号】100139789
【氏名又は名称】町田 光信
(74)【代理人】
【識別番号】100168468
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 曜
(72)【発明者】
【氏名】奥村 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】後藤 悠
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 槙太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】小川 和宏
(72)【発明者】
【氏名】土屋 潤一
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-039157(JP,U)
【文献】特開2006-258613(JP,A)
【文献】特開2003-232611(JP,A)
【文献】特開2003-278102(JP,A)
【文献】特開昭63-177008(JP,A)
【文献】特開2012-102498(JP,A)
【文献】特開2011-094415(JP,A)
【文献】特開平11-247108(JP,A)
【文献】特開2018-009394(JP,A)
【文献】特開2011-137750(JP,A)
【文献】特開2013-097698(JP,A)
【文献】特開2004-227045(JP,A)
【文献】特開2002-099903(JP,A)
【文献】登録実用新案第3194871(JP,U)
【文献】実開昭58-171901(JP,U)
【文献】米国特許第05671540(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 35/00
G01B 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光(12)を通過させる貫通穴(24)を有する複数の穴空き板(20)と、
前記レーザ光(12)を反射させるターゲット(11)と、
前記レーザ光(12)をターゲット(11)に照射して該ターゲットまでの距離を計測するレーザー距離計(10)と、
前記穴空き板(20)、前記ターゲット(11)及び前記レーザー距離計(10)を個別にそれぞれレール(1)に一体化して取り付けるブラケット(30)と、
データを所定の搬送波に変調して空間に発信する送信機(40)と、
前記レーザー距離計(10)及び前記送信機(40)に電力を供給する電源部(50)と、を備えたレール張出し検出システム(100)であって、
全ての前記穴空き板(20)は、前記レーザー距離計(10)と前記ターゲット(11)との間に配置され且つ初期状態において前記レーザー距離計(10)から照射された前記レーザ光(12)が各前記貫通穴(24)を通過するようにそれぞれ設定され、
前記レーザー距離計(10)は、計測値が異常であると判定するとき、アラーム信号を前記送信機(40)から所定の無線又は有線電気通信回線網(60)を経由して所定のコンピュータ(70)へ送信するように構成されていることを特徴とするレール張出し検出システム。
【請求項2】
請求項1に記載のレール張出し検出システム(100)において、
前記アラーム信号を受信した前記コンピュータ(70)は、所定の管理者にその旨の電子メールを送信するように構成されていることを特徴とするレール張出し検出システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のレール張出し検出システム(100)において、
前記ブラケット(30)は、前記レール(1)の底部斜面(1a)に係合するカール部(31a)を有するベース部(31)と、前記底部斜面の反対斜面(1b)に係合するL形プレート部(32)と、前記L形プレート部(32)に直交しながら連結し且つ前記穴空き板(20)を前記ベース部(31)上に載置・固定する固定プレート部(33)とから構成されることを特徴とするレール張出し検出システム。
【請求項4】
請求項3に記載のレール張出し検出システム(100)において、
前記L形プレート部(32)は、第1ボルト(35V)を介して前記レール(1)の底部端面(1c)に係合する垂直部(32V)と、第2ボルト(35H)を介して前記反対斜面(1b)に係合する水平部(32H)とから構成されることを特徴とするレール張出し検出システム。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のレール張出し検出システム(100)において、
前記L形プレート部(32)は、前記カール部(31a)と協働して前記レール(1)の底部を挟み込むように前記ベース部(31)上に配置されことを特徴とするレール張出し検出システム。
【請求項6】
請求項3から5の何れか1項に記載のレール張出し検出システム(100)において、
前記固定プレート部(33)は切り欠き部(33a)を有すると共に、第3ボルト(35F)を介して前記ベース部(31)に係合することを特徴とするレール張出し検出システム。
【請求項7】
請求項6に記載のレール張出し検出システム(100)において、
前記穴空き板(20)は切り欠き部(22a)を有すると共に、第4ボルト(25)を介して前記固定プレート部(33)に係合することを特徴とするレール張出し検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レール張出し検出システムに関し、より詳細には簡易な機構でレールの張出し・陥没等を瞬時に検出すると共に、列車の運行に関係なくレールの張出し・陥没等を常時監視することが可能なレール張出し検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば夏場の炎天下等のレールに対する熱的負荷が極めて高くなる環境下において、列車が通過することによりレールに圧縮荷重が繰り返し負荷され、その部位が歪んでレールの伸長(張出し)が発生する場合がある。レールの張出し・陥没等は、列車の走行を不安定にし、最悪の場合、列車の脱線を引き起こす場合がある。そのため、作業員が目視によりレールの張出し・陥没等の有無をあらかじめ指定した弱点箇所全てにおいてチェックしている。
【0003】
近年、人的コストの削減のため、レーザ光を使用してレールの張出し・陥没等を自動的に検出する方法及び装置が多数公開されている。一例を挙げると、高さの基準となる基準レーザビームを照射する基準設定部と、その基準レーザビームを受光する自走可能で移動距離を計測可能な台車とを備え、台車をレール路面に沿って自走させながらその基準レーザビームを受光することにより、基準レーザビームに対する台車の高さの変化量と位置を検出し、その検出結果を基にレール路面の凹凸の量を計算するように構成されたレール路面凹凸測定装置が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
その他には、ロングレールの変動量を計測するために、レールの側方に固定された基準物に取り付けられた水糸代替レーザ光を出力する『レーザ発振器』と、車両に取り付けられたその水糸代替レーザ光を受光する『受光センサ』と、同じく車両に取り付けられ、ポンチマーク代替物と遊間/ロング識別体を検知する『識別センサ』と、車輪の回転速度を測定する『レーザ・ドップラ・センサ』と、レールの遊間を検知する『遊間識別センサ』と、レールの温度を測定する『温度センサ』とを備え、上記受光センサが出力する水糸代替信号と、識別センサが出力するポンチマーク代替信号又は遊間/ロング判別信号と、レーザ・ドップラ・センサが出力するドップラ信号とに基づいて、ロングレールの変動量を計測するように構成されたレール変動量測定装置が知られている(例えば、特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭63-177008号公報
【文献】特開2003-278102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載のレール路面凹凸測定装置について、レール路面の凹凸を検出するためには、基準レーザビームを受光する上記台車をレール路面上を実際に走行させる必要がある。
【0007】
しかし、列車が運行している間は、上記台車を走行させることができないため、レールの伸長(張出し)を検出することが出来ないことになる。つまり、上記特許文献1に記載のレール路面凹凸測定装置は、列車が運行していない間に限り、レールの張出し・陥没等を検出することができることになる。従って、上記特許文献1に記載のレール路面凹凸測定装置は、レールの張出し・陥没等を常時監視することはできないという問題がある。
【0008】
他方、上記特許文献2に記載のレール変動量測定装置について、レーザ発振器はレールから離れた定位置に設置される。それと対に使用される受光センサは車両(列車)に取り付けられる。また、ポンチマーク代替物はレールの側方に取り付けられ、遊間/ロング識別体はレール端に取り付けられる。それと対に使用される識別センサは列車に取り付けられる。遊間識別センサも列車に取り付けられる。つまり、上記特許文献2に記載のレール変動量測定装置は、列車が運行している間に限り、レールの変動量を検出することができることになる。従って、上記特許文献2に記載のレール変動量測定装置も、レールの変動量を常時監視することはできないという問題が考えられる。
【0009】
それに加えて、受光センサ、識別センサ、レーザ・ドップラ・センサ、及び遊間識別センサ、並びに各信号を処理する信号処理装置が個別に必要になるため、システムが複雑になり、これによりコストが増大するという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであり、その目的は簡易な機構でレールの張出し・陥没等を瞬時に検出すると共に、列車の運行に関係なくレールの張出し・陥没等を常時監視することが可能なレール張出し検出システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係るレール張出し検出システムは、レーザ光(12)を通過させる貫通穴(24)を有する複数の穴空き板(20)と、前記レーザ光(12)を反射させるターゲット(11)と、前記レーザ光(12)をターゲット(11)に照射して該ターゲットまでの距離を計測するレーザー距離計(10)と、前記穴空き板(20)、前記ターゲット(11)及び前記レーザー距離計(10)をレール(1)に一体化して取り付けるブラケット(30)と、データを所定の搬送波に変調して空間に発信する送信機(40)と、前記レーザー距離計(10)及び前記送信機(40)に電力を供給する電源部(50)と、を備えたレール張出し検出システム(100)であって、全ての前記穴空き板(20)は、前記レーザー距離計(10)と前記ターゲット(11)との間に配置され且つ初期状態において前記レーザー距離計(10)から照射された前記レーザ光(12)が各前記貫通穴(24)を通過するようにそれぞれ設定され、前記レーザー距離計(10)は、計測値が異常であると判定するとき、アラーム信号を前記送信機(40)から所定の無線又は有線電気通信回線網(60)を経由して所定のコンピュータ(70)へ送信するように構成されていることを特徴とする。
【0012】
上記構成では、レール(1)の張出しが発生する場合又は道床陥没によりレール1が上下方向に変形する場合、レーザ光(12)が何れかの穴空き板(20)によって遮られるため、レーザー距離計(10)の計測値が変動することになる。これにより、レール(1)の張出し等を瞬時に検出することができる。また、ブラケット(30)はレール(1)の底部に一体化して取り付けられるため、列車の運行に関係なく、ターゲット(11)までの距離を計測することができることになる。これにより、レール(1)の張出しを常時監視することが可能になる。
【0013】
また、計測値が異常であるか否かの判定は、レーザー距離計(10)によって判定される。つまり、監視は無人で行われるため、人的コストが低減する。
【0014】
本発明に係るレール張出し検出システムの第2の特徴は、前記アラーム信号を受信した前記コンピュータ(70)は、所定の管理者にその旨の電子メールを送信するように構成されていることである。
【0015】
上記構成では、レールの張出し・陥没等を瞬時に検出し、瞬時に管理者に通知することが可能となる。これにより、レールの張出し・陥没等を迅速に修正することが可能となる。
【0016】
本発明に係るレール張出し検出システムの第3の特徴は、前記ブラケット(30)は、前記レール(1)の底部斜面(1a)に係合するカール部(31a)を有するベース部(31)と、前記底部斜面の反対斜面(1b)に係合するL形プレート部(32)と、前記L形プレート部(32)に直交しながら連結し且つ前記穴空き板(20)を前記ベース部(31)上に載置・固定する固定プレート部(33)とから構成されることである。
【0017】
上記構成では、ベース部(31)のカール部(31a)と、L形プレート部(32)とによってレール(1)の底部を挟み込むことが可能となる。また、穴空き板(20)は固定プレート部(33)によって固定されることになる。これにより、上記ブラケット(30)を介して穴空き板(20)をレール(1)に一体化することが可能になる。
【0018】
本発明に係るレール張出し検出システムの第4の特徴は、前記L形プレート部(32)は、第1ボルト(35V)を介して前記レール(1)の底部端面(1c)に係合する垂直部(32V)と、第2ボルト(35H)を介して前記反対斜面(1b)に係合する水平部(32H)とから構成されることである。
【0019】
上記構成では、第1ボルト(35V)をねじ込むことにより、水平方向に関しL形プレート部(32)をレール(1)に密に一体化させることが可能になる。さらに第2ボルト(35H)をねじ込むことにより、高さ方向に関しL形プレート部(32)をレール(1)に密に一体化させることが可能になる。
【0020】
本発明に係るレール張出し検出システムの第5の特徴は、前記L形プレート部(32)は、前記カール部(31a)と協働して前記レール(1)の底部を挟み込むように前記ベース部(31)上に配置されことである。
【0021】
上記構成では、水平方向に関しL形プレート部(32)をレール(1)に密に一体化させることが可能になる。
【0022】
本発明に係るレール張出し検出システムの第6の特徴は、前記固定プレート部(33)は切り欠き部(33a)を有すると共に、第3ボルト(35F)を介して前記ベース部(31)に係合することである。
【0023】
上記構成では、固定プレート部(33)はベース部(31)に対し水平方向(横方向)に相対変位すことが可能になる。これにより、穴空き板(20)は水平方向(横方向)の位置を調整することが可能になる。また、第3ボルト(35)をねじ込むことにより、固定プレート部(33)をベース部(31)に安定に固定することが可能になる。これにより、穴空き板(20)は安定に固定プレート部(33)に一体化されることになる。その結果、ブラケット(30)を介して穴空き板(20)をレール(1)に密に一体化させることが可能になる。
【0024】
本発明に係るレール張出し検出システムの第7の特徴は、前記穴空き板(20)は切り欠き部(22a)を有すると共に、第4ボルト(25)を介して前記固定プレート部(33)に係合することである。
【0025】
上記構成では、穴空き板(20)は固定プレート部(33)に対し水平方向(横方向)に相対変位すことが可能になる。これにより、穴空き板(20)は水平方向(横方向)の位置を2段階で調整することが可能になる。また、第4ボルト(35)をねじ込むことにより、穴空き板(20)を固定プレート部(33)に安定に固定することが可能になる。これにより、穴空き板(20)は安定にレール(1)に一体化されることになる。その結果、ブラケット(30)を介して穴空き板(20)をレール(1)に密に一体化させることが可能になる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のレール張出し検出システムによれば、簡易な機構でレールの張出し・陥没等を瞬時に検出すると共に、列車の運行に関係なくレールの張出し・陥没等を常時監視することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係るレール張出し検出システムを示す説明図である。
図2】本発明に係るレーザ光通過穴部及びレーザ光通過穴部用ブラケットを示す正面図である。
図3】本発明に係るレーザ光通過穴部及びレーザ光通過穴部用ブラケットを示す平面図である。
図4】本発明に係るレーザ光照射部及びレーザ光照射部用ブラケットを示す正面図である。
図5】本発明に係るレーザ光照射部及びレーザ光照射部用ブラケットを示す平面図である。
図6】本発明に係るレーザ光通過穴部及びターゲットのレールへの固定手順の一例を示す説明図である。
図7】本発明に係るレーザ光通過穴部及びターゲットのレールへの固定手順の一例を示す説明図である。
図8】本発明に係るレーザ光照射部及びレーザ光照射部用ブラケットのレールへの固定手順の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態に係るレール張出し検出システム100を示す説明図である。
【0030】
このレール張出し検出システム100は、レーザ光12を照射して原点(器械点)からターゲット11(計測点)までの距離を常時計測するレーザー距離計10と、レーザー距離計10とターゲット11までの間に置かれ、レーザ光12を順に通過させる複数のレーザ光通過穴部20と、レーザ光通過穴部20をレール1に一体化して固定するレーザ光通過穴部用ブラケット30と、レーザー距離計10をレール1に一体化して固定するレーザ光照射部用ブラケット30Aと、レーザー距離計10が出力するアラーム信号(警報)を所定の双方向電気通信回線60を介してサーバー70に送信する送信部40と、レーザー距離計10及び送信部40に電力を供給する電源部50と、アラーム信号(警報)を受信して所定の管理者に電子メールを送信するサーバー70とを具備して構成される。
【0031】
レーザー距離計10は、ターゲット11までの距離を常時計測すると共に、取得した計測データについて異常か否かを判定するデータ判定機能と、計測データが異常である場合にアラーム信号(警報)を送信部40に送信する無線LAN又は有線LAN機能を備えている。無線LAN機能としてWi-Fi(登録商標)又はBluetooth(登録商標)又はその他の近距離無線通信規格をレーザー距離計10は備えている。
【0032】
レール1の張出しが発生する場合、レーザ光通過穴部20がレーザ光12の一部又は全部を遮ることになる。これにより、レーザー距離計10によって計測される計測データ(計測値)が変動する。例えば、レール1が張出し変形を生じていない場合、レーザー距離計10による計測値は、L1+L2+L3+L4を示すことになる。レール1が張出し変形を生じている場合、レーザー距離計10による計測値は、L1+L2+L3+L4以外の値を示すことになる。なお、計測値がL1を示す場合は、L1~L1+L2+L3+L4の区間に張出しが生じていることになる。計測値がL1+L2を示す場合は、L1+L2~L1+L2+L3+L4の区間に張出しが生じていることになる。計測値がL1+L2+L3を示す場合は、L1+L2+L3~L1+L2+L3+L4の区間に張出しが生じていることになる。
【0033】
レーザー距離計10は計測値の変動値を判定し、異常であると判定する場合、レーザー距離計10はアラーム信号(警報)を所定のLAN機能を介して送信部40に送信する。アラーム信号(警報)を受信した送信部40は、双方向電気通信回線60を介してアラーム信号(警報)をサーバー70に送信する。
【0034】
レーザ光通過穴部20は、詳細については図2を参照しながら後述するが、レーザ光通過穴部用ブラケット30によってレーザ光12の進行方向に対し直交するように配置されたプレート(第1垂直板21)によって構成されている。その第1垂直板21には、レーザ光12を通すための長穴(通過穴24)が形成されている。従って、レーザー距離計10から照射されたレーザ光12は、複数の通過穴24を順に通過しターゲット11に到達し、その後ターゲット11で反射して複数の通過穴24を順に通過しレーザー距離計10に入射するように初期設定される。なお、本実施形態では、例えば3個のレーザ光通過穴部20がレーザー距離計10とターゲット11との間に配置されている。また、レーザー距離計10とターゲット11との距離は、例えば30mに設定されている。従って、本実施形態では、レール張出し検出システム100はレール1に沿って30m毎に複数設定されることになる。
【0035】
なお、ターゲット11はレーザ光通過穴部20の第1垂直板21に対し通過穴24を塞いだものに相当する。それ以外の構成についてはレーザ光通過穴部20と同じである。ターゲット11はレーザ光12を反射角ゼロで反射させるように初期設定されている。
【0036】
レーザ光通過穴部20及びターゲット11を支持するレーザ光通過穴部用ブラケット30は、詳細については図2から図8を参照しながら後述するが、ボルトによってレール1の底部に密に一体化される。これにより、レーザ光通過穴部20とレール1が密に一体化されることになる。その結果、レール1が張出し変形を生じる場合又は道床陥没によりレール1が上下方向に変形する場合、レーザ光通過穴部用ブラケット30もレール1と一緒に変位し、レーザ光通過穴部20の通過穴24の位置も変位することになる。その結果、レーザ光の一部又は全部がレーザ光通過穴部20(通過穴24を除く第1垂直板21)によって遮られることになる。その結果、レーザー距離計30による計測値が変動し、レール1の張出しが瞬時に検出されることになる。
【0037】
送信部40は、アラーム信号(警報)又は計測データを所定周波数帯域の搬送波に変調して空間に放出する。周波数帯域は携帯電話会社に割り当てられた周波数帯域が使用される。
【0038】
電源部50は、太陽光を電気エネルギーに変換するソーラーパネル51と、ソーラーパネル51が休止する場合に系統を蓄電池54に切り替えると共に、ソーラーパネル51の余剰電力量を蓄電池54に蓄えるように制御するソーラーコントローラ52と、電力をレーザー距離計10及び送信部40に分配する配電部53と、夜間又は曇り等においてソーラーパネル51の発電量が低下する場合に電力を系統に補充する蓄電池54とから構成される。
【0039】
双方向電気通信回線60は、例えば3G又は4G回線等とインターネットとの組合せである。或いは3G又は4G回線等のみで構成しても良い。或いはインターネットのみで構成しても良い。
【0040】
サーバー70は、自社サーバー又は他社サーバー(例えばクラウドサーバー)を使用することが出来る。
【0041】
図2及び図3は、本発明に係るレーザ光通過穴部20及びレーザ光通過穴部用ブラケット30を示す説明図である。図2はレーザ光通過穴部20及びレーザ光通過穴部用ブラケット30の正面図である。図3(a)はレーザ光通過穴部20及びレーザ光通過穴部用ブラケット30の平面図である。図3(b)は同(a)の左側面図である。
【0042】
図2及び図3に示されるように、このレーザ光通過穴部20は、レーザ光12を通過させるための縦長穴24が形成された第1垂直板21と、第1垂直板21に直交しながら連結し且つ長手方向にスライド可能な水平板23と、第1垂直板21と水平板23に直交しながら連結した第2垂直板22とから構成される。
【0043】
図3に示されるように、水平板23には長手方向(レーザ光12の進行方向に交差する横方向)に沿って切り欠き部22aが形成されている。従って、第2垂直板22を押引して固定プレート部33上をスライドさせることにより、レーザ光通過穴部20の横方向の位置を調整することが可能となる。従って、位置調整後、レーザ光通過穴部20はボルト25及びナット26によってレーザ光通過穴部用ブラケット30の固定プレート部33上に固定される。次に、レーザ光通過穴部用ブラケット30について説明する。
【0044】
図2に示されるように、このレーザ光通過穴部用ブラケット30は、レール1の底部右斜面1a(図6(a))に係合するベース部31と、レール1の底部左斜面1b(図6(a))に係合するL形プレート部32と、L形プレート部32に直交しながら連結し且つレーザ光通過穴部20を載置・固定するための固定プレート部33とから構成される。
【0045】
図3(b)に示されるように、ベース部31は、断面が下向きコ形状(冠形状)のプレートから成り、一方の端部が折り曲げられている。その折り曲げられたカール部31aは、レール1の底部右斜面1a(図6(a))が嵌ることになる。このカール部31aは、レーザ光通過穴部用ブラケット30がレール1に対し図上左方へ相対変位しようとする際に、ストッパとしても機能することになる。
【0046】
また、図2に示されるように、カール部31aにはレール1に圧着・係合するボルト35Rを通すための貫通穴(図示せず)が2箇所に設けられている。
【0047】
同じく図2に示されるように、L形プレート部32は、水平部32Hと垂直部32Vとから成る。水平部32Hには、レール1に圧着・係合するボルト35Hとねじ結合するナット34Hが、水平部32Hと一体に固定されている。従って、ボルト35Hをナット34Hにねじ込むことにより、水平部32Hから飛び出したねじ部35Haがレール1の底部左斜面1b(図6(b))に圧着・係合することになる。このねじ部35Haは、レーザ光通過穴部用ブラケット30がレール1に対し図上右方へ相対変位しようとする際に、ストッパとしても機能することになる。
【0048】
図3(b)に示されるように、垂直部32Vは中央部がベース部31を通すために下向きコ形状(冠形状)に切り欠かれている。また、図2に示されるように、垂直部32Vには、レール1に圧着・係合するボルト35Vとねじ結合するナット34Vが、垂直部32Vと一体に固定されている。従って、ボルト35Vをナット34Vにねじ込むことにより、垂直部32Vから飛び出したねじ部35Vaがレール1の底部左端1c(図7(a))を押して、L形プレート部32がレール1に密に圧着・係合することになる。
【0049】
また、図3(a)に示されるように、固定プレート部33には長手方向に沿って切り欠き部33aが形成されている。従って、固定プレート部33をスライドさせることにより、レーザ光通過穴部20の横方向の位置を調整することが可能となる。また、ベース部31にはナット34Fとねじ結合するボルト35Fを通すための貫通穴(図示せず)が形成されている。従って、ボルト35Fをナット34Fにねじ込むことにより、固定プレート部33がベース部31に安定に固定されることになる。次に、レーザ光照射部20A及びレーザ光照射部用ブラケット30Aについて説明する。
【0050】
図4及び図5は、本発明に係るレーザ光照射部20A及びレーザ光照射部用ブラケット30Aを示す説明図である。図4はレーザ光照射部20A及びレーザ光照射部用ブラケット30Aの正面図である。図5(b)はレーザ光照射部20A及びレーザ光照射部用ブラケット30Aの平面図である。図5(b)は同(a)の左側面図である。
【0051】
なお、レーザ光照射部用ブラケット30Aは、上記レーザ光通過穴部用ブラケット30に対し、レーザ光照射部用ストッパ36が備え付けられている。それ他の構成については上記レーザ光通過穴部用ブラケット30と同じである。従って、ここではレーザ光照射部20Aについて説明することにする。
【0052】
図4及び図5に示されるように、レーザ光照射部20Aは、レーザー距離計10を収納するケース24Aと、ケース24Aを載置するH状の水平板23Aと、水平板23Aに直交して連結し且つケース24Aを挟むように水平板23Aの長手方向(レーザ光12の進行方向)に沿って設けられた第1垂直板21A及び第2垂直板22Aとから構成される。
【0053】
図4に示されるように、ケース24Aは形状が中空直方体を成し、レーザ光12を照射・受光するための照射窓24aが形成されている。
【0054】
ケース24Aが水平板23Aと接する面にはボルト27を通す貫通穴(図示せず)が形成されている。従って、ケース24Aはボルト27及びナット(図示せず)によって水平板23A上に固定されている。
【0055】
図5に示されるように、水平板23Aは、固定プレート部33上の切り欠き部33aを介してボルト25及びナット26a,26b,26cによって固定プレート部33上に固定されている。従って、第2垂直板22Aを押引して固定プレート部33上をスライドさせることにより、レーザ光照射部20Aの横方向(レーザ光12の進行方向と直交する方向)の相対位置を調整することが可能となる。
【0056】
レーザ光照射部用ストッパ36は第2垂直板22Aに当接してレーザ光照射部20Aの横方向(レーザ光12の進行方向と直交する方向)の相対変位を抑止する。
【0057】
図6及び図7は、レーザ光通過穴部20及びターゲット11のレール1への固定手順の一例を示す説明図である。
【0058】
図6(a)に示されるように、レール1を持ち上げてベース部31をレール1と道床の間に挿入する。カール部31aを押してベース部31をレール1に対し図上左方へ相対変位させ、カール部31aを底部右斜面1aに係合させる。ボルト35Rを締めて、ベース部31をレール1に密着させる。
【0059】
次に、図6(b)に示されるように、固定プレート部33をスライドさせながら、或いはレーザ光通過穴部20をスライドさせながら、レーザ光12が通過穴24を通るようにレーザ光通過穴部20を位置決めする。位置決め後、ナット34Fを締めてレーザ光通過穴部20の位置を確定する。
【0060】
次に、図7(a)に示されるように、ボルト35Hをナット34Hにねじ込み、水平部32Hから飛び出したねじ部35Haをレール1の底部左斜面1bに係合させる。次に、ボルト35Vをナット34Vにねじ込み、垂直部34Vから飛び出したねじ部35Vaをレール1の底部左端1cに係合させ、L形プレート部32をレール1に密着させる。これにより、レーザ光通過穴部20がレール1に固定される。
【0061】
図7(b)に示されるように、ターゲット11についてもレーザ光通過穴部20と同様にレール1に固定することができる。
【0062】
図8は、レーザ光照射部20Aのレール1への定手順の一例を示す説明図である。固定プレート部33をスライドさせながら、或いはレーザ光照射部20Aをスライドさせながら、レーザ光照射部20Aを所定の位置に位置決めする。位置決め後、ボルト25(図5(b))を締めてレーザ光照射部20Aの位置を確定する。
【0063】
次に、ボルト35Hをナット34Hにねじ込み、水平部32Hから飛び出したねじ部35Haをレール1の底部左斜面1bに係合させる。次に、ボルト35Vをナット34Vにねじ込み、垂直部34Vから飛び出したねじ部35Vaをレール1の底部左端1cに係合させ、L形プレート部32をレール1に密着させる。これにより、レーザ光照射部20Aがレール1に固定される。
【0064】
従って、レール1が張出し変形を生じる場合、レーザ光通過穴部20の通過穴24の位置が変位し、或いはレーザ光照射部20Aの位置が変位し、レーザー距離計20の計測値が変動することになる。これにより、レール1の張出し等を瞬時に検出することができる。
【0065】
レーザー距離計10は計測値が異常の場合はアラーム信号を送信するため、レール1の張出しを管理者に瞬時に通知することができるようになる。これにより、レール1の張出しは迅速に修正されることになる。
【0066】
以上の通り、本発明の一実施形態に係るレール張出し装置100によれば、簡易な機構でレール1の張出し等を瞬時に検出すると共に、列車の運行に関係なくレール1の張出しを常時監視することが可能になる。異常の場合はアラーム信号(警報)を管理者に電子メールで通知するため、レール1の張出しを迅速に修正することが可能になる。
【0067】
なお、図1から図8を参照しながら本発明の一実施形態に係るレール張出し装置100について説明してきたが、本発明の実施形態は上記のみに限定されない。本発明の技術的特徴を逸脱しない範囲において種々の修正・変更を加えることが可能である。例えば、ナット34H,34V,34R等を水平部32H、垂直部32V及びカール部31aの各表面に設けずに、同じ規格の雌ネジ部を水平部32H、垂直部32V及び固定プレート部33の各内部に設けるようにしても良い。
【0068】
また、コンピュータ端末をレーザー距離計10と送信部40との間に別個に設け、レーザー距離計10は距離計測のみを行い、計測データの異常か否かを判定するデータ判定、並びに計測データ異常時におけるアラーム信号の送信については、コンピュータ端末が行うようにしても良い。この場合、サーバー70を経由せずに、コンピュータ端末から管理者に電子メールを直接送信するようにしても良い。
【0069】
1 レール
2 枕木
10 レーザー距離計
11 ターゲット
12 レーザ光
20 レーザ光通過穴部
21 横スライド板
22 縦スライド板
23 サポート板
24 通過穴
25 ボルト
26 ナット
30 レーザ光通過穴部用ブラケット
31 ベース部
32 L形プレート部
33 固定プレート部
36 レーザ光照射部用ストッパ
40 送信部(送信機)
50 電源部
60 双方向電気通信回線(無線又は有線電気通信回線網)
70 サーバー
100 レール張出し検出システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8