(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】口腔装着具
(51)【国際特許分類】
A61C 13/007 20060101AFI20230208BHJP
A61C 13/01 20060101ALI20230208BHJP
A63B 71/08 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
A61C13/007
A61C13/01
A63B71/08 Z
(21)【出願番号】P 2022121505
(22)【出願日】2022-07-29
【審査請求日】2022-08-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521349266
【氏名又は名称】医療法人社団武蔵会
(73)【特許権者】
【識別番号】522305324
【氏名又は名称】池田 昭
(73)【特許権者】
【識別番号】522304279
【氏名又は名称】溝口 琴乃
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】池田 昭
(72)【発明者】
【氏名】溝口 琴乃
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-197161(JP,A)
【文献】特開2018-050728(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0267029(US,A1)
【文献】米国特許第05031611(US,A)
【文献】特開平2-124157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 13/007
A61C 13/01
A63B 71/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工歯と、義歯床を有する口腔装着具であって、
前記義歯床は、
人工歯を配置する人工歯配置部と、人体の歯茎と接する接触部と、中空部
と、を有
し、
前記中空部が、
歯列弓形状、又は歯列弓形状の一部に沿って、前記人工歯配置部と前記接触部との間に形成されてなり、
前記義歯床を歯列弓形状の延伸方向に対して垂直に切断したときの前記中空部の断面形状が、前記義歯床の内周面により画定された形状である、
口腔装着具。
【請求項2】
人工歯と、義歯床を有する口腔装着具であって、
前記義歯床は、人工歯を配置する人工歯配置部と、人体の歯茎と接する接触部と、中空部と、を有し、
前記中空部が、前記人工歯配置部と前記接触部との間に形成されてなり、連続的に形成された1つの中空部である、
口腔装着具。
【請求項3】
人工歯と、義歯床を有する口腔装着具であって、
前記義歯床は、人工歯を配置する人工歯配置部と、人体の歯茎と接する接触部と、中空部と、を有し、
前記中空部が、前記人工歯配置部と前記接触部との間に形成されてなり、
さらに、前記中空部と前記義歯床の外面とを連通する孔部を有する、
口腔装着具。
【請求項4】
前記口腔装着具が、総義歯、部分義歯、又はマウスピースである、請求項1
~3の何れか一項に記載に口腔装着具。
【請求項5】
人工歯と、義歯床を有し、前記義歯床は中空部を有する口腔装着具と、スキューバダイビング用マウスピースとを備える、スキューバダイビング用口腔装着具であって、
前記口腔装着具として、上顎用口腔装着具及び下顎用口腔装着具を備え、
前記スキューバダイビング用マウスピースの咬合部が、前記上顎用口腔装着具の少なくとも一部の人工歯の咬合面と、前記下顎用口腔装着具の人工歯であって、前記上顎用口腔装着具の人工歯と相対する人工歯の咬合面とに挟持され、
前記上顎用口腔装着具、前記下顎用口腔装着具、及び前記スキューバダイビング用マウスピースが一体成形されてなる、
スキューバダイビング用口腔装着具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入れ歯とマウスピースが一体となった口腔装着具、及びスキューバダイビング用マウスピースに関する。
【背景技術】
【0002】
スポーツ用マウスピースは、アメリカンフットボール、ボクシング、空手等のコンタクトスポーツにおいて、衝撃から歯や口腔内を守るため着用が義務づけられている。また、野球、テニス、一部陸上競技等の非コンタクトスポーツにおいては着用が許可されており、マウスピースを強く噛みしめることでパフォーマンスが向上し、集中力も高められることが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、スポーツ中に歯が欠損することを防止するために、左右の臼歯の咬合面を覆う一対の保護部を備えるスポーツ用マウスピースが記載されている。
【0004】
また、歯を失った人のQOL(Quality Of Life)を向上させる口腔装着具として、入れ歯が広く普及しており、日本人の約4人に1人が入れ歯を使用しているといわれている。近年では、極めて身近な存在である入れ歯の装着感や使用性を高めるために、様々な技術が開発されている。
【0005】
例えば、特許文献2には、装着ピンを備え、残存歯に馴染みやすく、且つワンタッチで簡単に脱着が可能な入れ歯が記載されている。
また、特許文献3には、総入れ歯の着用時に発音し難いと言われている「さ行」あるいは「た行」の発音を的確に行うために、床底面に発音促進用のリブ状突起が設けられた総入れ歯が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-014499号公報
【文献】特開2020-130902号公報
【文献】特開2013-085929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、スポーツ用マウスピースは、歯で噛みしめることでその効果を最大限に発揮することができるものであり、歯が部分的、又は全体的に無い人にとっては、その効果を十分に発揮することができない。
【0008】
そのため、歯が一部又は全部無い人がスポーツ用マウスピースを適切に使用するには、差し歯、部分入れ歯、又は総入れ歯を装着した上で、スポーツ用マウスピースを装着する必要があり、手間であった。
【0009】
そこで、本願発明は、入れ歯として使用でき、かつマウスピースとしての機能を有する口腔装着具を提供することを課題とする。
【0010】
また、スキューバダイビングでは、水中で呼吸するためのレギュレータと接続する、スキューバダイビング用のマウスピースが使用される。スキューバダイビング用のマウスピースは、歯で噛みしめて装着する必要があるため、歯が無い人は、入れ歯を装着した状態でスキューバダイビング用マウスピースを使用する必要がある。
ここで、従来の入れ歯は、水に浮かない性質であるため、スキューバダイビング中に入れ歯が外れると、回収することが不可能であった。
【0011】
そこで、本願発明は、水に浮く性質を有する口腔装着具を提供することをさらなる課題とする。
本発明の特定実施形態では、水に浮く性質を有する口腔装着具と、スキャーバダイビング用マウスピースが一体となったスキューバダイビング用口腔装着具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決する本発明は、
人工歯と、義歯床を有する口腔装着具であって、
前記義歯床は、中空部を有する。
【0013】
本発明の口腔装着具は、人工歯と義歯床を有し、入れ歯としての機能を有する。その一方で、義歯床が中空部を有することで、義歯床が高い柔軟性を有する。この柔軟性から、口腔装着具を装着して噛みしめることで、スポーツ用マウスピースとしての機能を発揮することができる。
【0014】
さらに、本発明の口腔装着具は、中空部を有することで、水に浮く性質を有する。
【0015】
本発明の好ましい形態では、
前記義歯床は、人工歯を配置する人工歯配置部と、人体の歯茎と接する接触部と、を備え、
前記中空部は、前記人工歯配置部と前記接触部との間に形成されてなる。
【0016】
中空部が、人工歯配置部と接触部との間に形成されることで、口腔装着具を噛みしめたときに力がかかる方向に中空部が存することとなり、より効果的にマウスピース様機能を発揮することができる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、
前記接触部は、歯列弓形状、又は歯列弓形状の一部を覆う凹状部であり、
前記中空部は、歯列弓形状、又は歯列弓形状の一部に沿って形成されてなる。
【0018】
歯列弓形状又はその一部に沿って中空部が形成されることで、より効果的にマウスピース様機能を発揮することができる。
【0019】
本発明の好ましい形態では、前記口腔装着具は、
前記中空部と、前記義歯床の外面とを連通する孔部を有する。
【0020】
本形態の口腔装着具は、中空部に保湿剤等の口腔ケア成分、又は口腔ケア成分を含む組成物を充填することができる。具体的には、孔部から、注射器等のシリンジを用いて中空部に口腔ケア成分を充填することができる。使用者は、口腔ケア成分が充填された口腔装着具を充填し、噛みしめることで、中空部から孔部を通って口腔ケア成分が口腔内に漏出し、口腔内に口腔ケア成分を適用することができる。
【0021】
本発明の好ましい形態では、
前記口腔装着具が、総義歯、部分義歯、又はマウスピースである。
【0022】
また、前記課題を解決する本発明は、
前記口腔装着具と、スキューバダイビング用マウスピースとを備える、スキューバダイビング用口腔装着具であって、
前記口腔装着具として、上顎用口腔装着具及び下顎用口腔装着具を備え、
前記スキューバダイビング用マウスピースの咬合部が、前記上顎用口腔装着具の少なくとも一部の人工歯の咬合面と、前記下顎用口腔装着具の人工歯であって、前記上顎用口腔装着具の人工歯と対応する人工歯の咬合面とに挟持され、
記上顎用口腔装着具、前記下顎用口腔装着具、及び前記スキューバダイビング用マウスピースが一体成形されてなる。
【0023】
本発明のスキューバダイビング用口腔装着具は、義歯床に中空部を有する口腔装着具を備えるため、水に浮く性質を有する。また、スキューバダイビング用マウスピースと口腔装着具とが一体成形されているため、容易に装着することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の口腔装着具は、入れ歯としての機能と、マウスピースとしての機能を併せ持つ。また、本発明の口腔装着具は、水に浮く性質を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本実施形態に係る口腔装着具を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る上顎用口腔装着具のA-A‘断面図である。
【
図3】本実施形態に係る下顎用口腔装着具のB-B‘断面図である。
【
図4】本実施形態に係るスキャーバダイビング用口腔装着具の正面図である。
【
図5】本実施形態に係るスキャーバダイビング用口腔装着具の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本実施形態に係る口腔装着具について詳細に説明する。
【0027】
(1)口腔装着具
図1に、本実施形態の口腔装着具10を示す。本発明の口腔装着具10は、上顎用口腔装着具11と、下顎用口腔装着具12を備える。
上顎用口腔装着具11及び下顎用口腔装着具12は、複数の人工歯20、及び人工歯20を配置する義歯床30を備える。義歯床30は、人工歯が配される凹状部である人工歯配置部31と、人体の歯茎と接触する部分である接触部32を備える。本実施形態に係る口腔装着具10は、従来の入れ歯(義歯)と同様の形状を有しており、同様に装着することができる。接触部32は、人体の歯列弓(歯茎部分)にはめ込むことができる凹状の歯列弓形状であり、複数の人工歯配置部31が歯列弓形状に配列されている。
【0028】
人工歯20の材料は特に限定されず、公知の材料を用いることができる。人工歯20の材料として、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリニトリル系樹脂、ポリビニル系樹脂、セルロース系樹脂、フッ素系樹脂、イミド系樹脂、及びシリコン系樹脂等の樹脂、ジルコニア等のセラミック等が例示できる。
【0029】
義歯床30の材料は特に限定されず、公知の材料を用いることができる。義歯床30の材料として、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリニトリル系樹脂、ポリビニル系樹脂、セルロース系樹脂、フッ素系樹脂、及びイミド系樹脂等が例示できる。また、前述した樹脂材料に有機フィラー、無機フィラー、有機-無機複合フィラー等のフィラーを添加して用いてもよく、義歯床30の一部に金属材料を使用してもよい。
【0030】
人工歯20及び/又は義歯床30の材料として、光硬化性樹脂を用いることが好ましい。
また、人工歯20及び/又は義歯床30の材料として、3Dプリンター造形用樹脂を用いることがより好ましい。
3Dプリンター造形用樹脂として、例えば、「ディーマ プリント ソフト スプリント(クルツァージャパン株式会社製)」が好ましく例示できる。
【0031】
本実施形態の口腔装着具10は、義歯床30の内部に中空部33を有することを特徴とする。
口腔装着具10は、中空部33を備えることで、高い柔軟性を有する。この柔軟性により、装着時の咬合力が向上し、パフォーマンスの向上及び集中力の向上等のマウスピース様効果を発揮することができる。
また、本実施形態に係る口腔装着具10は、中空部33を有することで、口腔装着具全体の比重が水より小さくなり、水に浮く性質を有する。この性質により、水中や海中で口腔装着具が外れてしまった場合でも、容易に発見、回収することができる。
【0032】
図2に、
図1におけるA-A‘線で切断したA-A’断面図を示す。
図3に
図1にB-B‘線で切断したB-B’断面図を示す。
図2、
図3に示す通り、本実施形態における中空部33は、人工歯配置部31と、接触部32の間に形成される。また、中空部33は、歯列弓形状、又は歯列弓形状の一部に沿って形成されてなる。
【0033】
人工歯配置部31から中空部33までの厚みは、場所によって異なることがあるが、約0.5mm~6mmであり、好ましくは0.5mm~5mmであり、より好ましくは1mm~4mmであり、さらに好ましくは1mm~3mmである。
接触部32から中空部33までの厚みは、場所によって異なることがあるが、約0.5mm~6mmであり、好ましくは0.5mm~5mmであり、より好ましくは1mm~4mmであり、さらに好ましくは1mm~3mmである。
【0034】
上顎用口腔装着具11全体の体積(中空部33の体積を含む体積)に対する中空部33の体積は、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは15%以上、特に好ましくは18%以上であり、最も好ましくは20%以上である。
また、上顎用口腔装着具11全体の体積(中空部33の体積を含む体積)に対する中空部33の体積は、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下、特に好ましくは25%以下であり、最も好ましくは23%以下である。
【0035】
下顎用口腔装着具12全体の体積(中空部33の体積を含む体積)に対する中空部33の体積は、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは15%以上、特に好ましくは18%以上であり、最も好ましくは20%以上である。
また、下顎用口腔装着具12全体の体積(中空部33の体積を含む体積)に対する中空部33の体積は、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下、特に好ましくは25%以下であり、最も好ましくは23%以下である。
【0036】
口腔装着具10全体(上顎用口腔装着具11の体積と下顎用口腔装着具12の体積の和、中空部33を含む体積)の体積に対する中空部33の体積は、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは15%以上、特に好ましくは18%以上であり、最も好ましくは20%以上である。
口腔装着具10全体(上顎用口腔装着具11の体積と下顎用口腔装着具12の体積の和、中空部33を含む体積)の体積に対する中空部33の体積は、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下、特に好ましくは25%以下であり、最も好ましくは23%以下である。
【0037】
なお、中空部33は、歯列弓形状全体に渡って形成されていてもよく、歯列弓形状の一部を構成するよう形成されていてもよい。また、中空部33は、連続的に形成された1つの中空部であってもよく、断続的に形成された複数の中空部であってもよい。
【0038】
中空部33の形状は、上顎用口腔装着具11と下顎用口腔装着具12との間で同一でも異なっていてもよい。例えば、本実施形態において、上顎用口腔装着具11は、複数の人工歯配置部31に相当する位置に突起状空洞を有する中空部33が形成されているが、下顎用口腔装着具12は、このような突起状空洞を有していなくてもよい。
【0039】
さらに、本実施形態に係る上顎用口腔装着具11は、中空部33と、装着時に上顎側を向く面とを連通する孔部34を有する。
【0040】
孔部34は、注射器等のシリンジを用いて、中空部33の内部に保湿剤等の口腔ケア成分、又は口腔ケア成分を含む組成物(以下、単に組成物等という)を充填することができる。
使用者は、組成物等が充填された上顎用口腔装着具11を装着して噛みしめることで、上顎用口腔装着具11が変形し、中空部33に充填された組成物等が孔部34を通って口腔内部に漏出する。したがって、本実施形態に係る口腔装着具は、その使用中に保湿等の口腔ケアを行うことができる。
【0041】
本実施形態では、孔部34が、中空部33と、装着時に上顎、又は下顎を向く面とを連通する形態について例示したが、孔部34は、中空部33と、義歯床30の外面とを連通するものであれば、特に限定されない。
また、孔部34は、上顎用口腔装着具11及び下顎用口腔装着具12の何れか一方に形成されていてもよく、両方に形成されていてもよい。なお、本発明の口腔装着具は、孔部34を有することが必須の要件でない。
【0042】
本実施形態では、口腔装着具10が総義歯である形態について例示したが、本発明の口腔装着具は、有床義歯であればよく、部分義歯であってもよい。
口腔装着具が部分義歯である場合には、義歯床は、使用者の歯列弓形状の一部を構成する形状を有している。
【0043】
(2)スキューバダイビング用口腔装着具
図4に本実施形態に係るスキューバダイビング用口腔装着具40の正面図を示す。
図5に、スキューバダイビング用口腔装着具40の右側面図を示す。
【0044】
スキューバダイビング用口腔装着具40は、上述した口腔装着具10(上顎用口腔装着具11及び下顎用口腔装着具12)と、スキューバダイビング用マウスピース50が一体成形されてなる。
【0045】
スキューバダイビング用マウスピース50としては、一般に使用されているものを採用することができる。本実施形態におけるスキューバダイビング用マウスピース50は、レギュレータと接続し、空気を取り込む気体導入筒51と、歯で咬む部分である咬合部52と有する。
【0046】
スキューバダイビング用マウスピース50における口腔装着具10は、中切歯(歯式の1番)、側切歯(歯式の2番)に相当する人工歯20が欠けた形状となることで、空気の通り道が確保される。すなわち、気体導入筒51の連通方向に位置する人工歯20の少なくとも一部分が欠けた形状をしているか、又は同位置に人工歯20が存在しないことで、空気の通り道が確保される。本実施形態においては、
図4に示す領域Aが欠けた部分となる。
【0047】
各部材は、スキューバダイビング用マウスピース50の咬合部52が、上顎用口腔装着具11の少なくとも一部の人工歯の咬合面と、下顎用口腔装着具12の人工歯20であって、前記上顎用口腔装着具の人工歯20と相対する人工歯20の咬合面とに挟持される形状で一体となっている。何れの人工歯20で挟持される形状とするかは、咬合部52の形状に応じて、適宜設定することができる。
【0048】
また、スキューバダイビング用口腔装着具40における口腔装着具10は、上顎用口腔装着具11の側面と下顎用口腔装着具12の側面の少なくとも一部が連続的に成形されてなる(
図5)。
【0049】
本実施形態では、スキューバダイビング用マウスピース50を挟持する人工歯20よりも奥歯側の側面が連続的に成形されてなる。具体的には、小臼歯及び/又は大臼歯に相当する部分が連続的に成形されてなる。本実施形態では、
図5に示す領域Bが上顎用口腔装着具11の側面と下顎用口腔装着具12の側面とが連続的に成形されている部分である。
【0050】
本実施形態に係るスキューバダイビング用口腔装着具40は、口腔装着具10とスキューバダイビング用マウスピース50が一体に成形されてなり、水中で入れ歯のみが外れてしまい、スキューバダイビング用マウスピース50を歯で固定することができなくなることを防止することができる。
【0051】
また、スキューバダイビング用口腔装着具40の口腔装着具10は、上述した中空部33を有し、口から外れてしまった場合には浮上するため、容易に回収することができる。
【0052】
(3)口腔装着具の製造方法
本発明の口腔装着具は、付加製造装置(3Dプリンター)を用いて製造することができる。3Dプリンターを使用した入れ歯、又はマウスピースの製造技術は既に確立されており、この技術を導入しているデンタルクリニックが存在する。本発明の口腔装着具は、この技術を活用して製造することができる。
【0053】
まず、製造方法の一態様として、本発明の口腔装着具の使用者が既に使用している入れ歯を、口腔スキャナ、技工用スキャナ、CT撮影装置等の撮影装置を用いて撮影し、3Dデータを取得する。
【0054】
得られた入れ歯の3Dデータを、既存の3Dデータ加工ソフトを用いて、中空形状を有する口腔装着具のデータに加工する。このとき、出力時に余分なインクが中空部に貯まるのを防ぐため、インクを抜くための穴を形成させる。必要に応じて、出力物を支えるサポートピンを形成させてもよい。
【0055】
次いで、最終的な3Dデータを3Dプリンターに送信し、出力を開始する。造形が完了したら、余分なインクを洗い流す。
【0056】
インクを洗い流すための空けた穴は、孔部34としてそのまま用いる場合には、穴をそのままとしてもよく、必要に応じてインク(樹脂)で防いでもよい。
【0057】
次いで、出力した造形物に紫外線を照射して、樹脂を最終硬化(二次硬化)させる。最後に、造形物を確認し、必要に応じて微調整を行うことで、本発明の口腔装着具を製造することができる。
【0058】
口腔装着具の製造方法について一例を示したが、製造方法はこれに限定されない。
3Dデータは、使用者の口腔内を、口腔内スキャナを用いて採取し(印象データ採取)、この印象データから、既存の歯科用CADソフトウェア等を用いて、造形物のデザイン、設計を行う形態であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
10 口腔装着具
11 上顎用口腔装着具
12 下顎用口腔装着具
20 人工歯
30 義歯床
31 人工歯配置部
32 接触部
33 中空部
34 孔部
40 スキューバダイビング用口腔装着具
50 スキューバダイビング用マウスピース
51 気体導入筒
52 咬合部
【要約】 (修正有)
【課題】入れ歯として使用でき、かつマウスピースとしての機能を有する口腔装着具を提供する。
【解決手段】人工歯20と、義歯床30を有する口腔装着具10であって、義歯床は、中空部33を有する、口腔装着具。
【選択図】
図1