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特許7222501末端シアル酸残基がα2,3結合でガラクトースに結合した糖鎖に特異的に結合するモノクローナル抗体、及び、末端シアル酸残基がα2,3結合でガラクトースに結合した糖鎖の測定方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】末端シアル酸残基がα2,3結合でガラクトースに結合した糖鎖に特異的に結合するモノクローナル抗体、及び、末端シアル酸残基がα2,3結合でガラクトースに結合した糖鎖の測定方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/18 20060101AFI20230208BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230208BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230208BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230208BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
C12P21/08
G01N33/53 S
C12N15/13
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022545793
(86)(22)【出願日】2021-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2021011034
(87)【国際公開番号】W WO2022195796
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2022-07-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504229284
【氏名又は名称】国立大学法人弘前大学
(73)【特許権者】
【識別番号】392017303
【氏名又は名称】システム・インスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(74)【代理人】
【識別番号】100214215
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼梨 航
(74)【代理人】
【識別番号】100190355
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 紀央
(72)【発明者】
【氏名】大山 力
(72)【発明者】
【氏名】米山 徹
(72)【発明者】
【氏名】濱田 和幸
【審査官】井関 めぐみ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/057983(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/130578(WO,A1)
【文献】特開2002-055108(JP,A)
【文献】大山 力,癌特異的PSAは存在するか?:PSAの糖鎖構造解析から,Urology View,2005年08月01日,Vol.3,No.4,p.77-82
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/18
G01N 33/53
C12N 15/13
C12P 21/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端シアル酸残基がα2,3結合でガラクトースに結合した糖鎖に結合し、末端シアル酸残基がα2,3結合でガラクトースに結合した糖鎖に結合後、前記糖鎖から解離しない、モノクローナル抗体又は前記抗体の抗原結合性を有するその抗体断片であって、
前記抗体又はその抗体断片の重鎖可変領域(以下、VHとも称する)の相補性決定領域(Complementarity determining region;以下、CDRとも称する)1のアミノ酸配列が、配列番号1で表されるアミノ酸配列を含み、VHのCDR2のアミノ酸配列が、配列番号2で表されるアミノ酸配列を含み、VHのCDR3のアミノ酸配列が、配列番号3で表されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域(以下、VLとも称する)のCDR1のアミノ酸配列が、配列番号4で表されるアミノ酸配列を含み、VLのCDR2のアミノ酸配列が、配列番号5で表されるアミノ酸配列を含み、VLのCDR3のアミノ酸配列が、配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む、モノクローナル抗体又は前記抗体の抗原結合性を有するその抗体断片
【請求項2】
末端シアル酸残基がα2,3結合でガラクトースに結合した糖鎖との解離定数が、3.0×10-8以下である、請求項1に記載のモノクローナル抗体又は前記抗体の抗原結合性を有するその抗体断片。
【請求項3】
末端にシアル酸が結合していないガラクトースが結合した糖鎖に結合しないか、又は、末端シアル酸が結合していないガラクトースが結合した糖鎖との解離定数が、9.0×10-5以上である、請求項1又は2に記載のモノクローナル抗体又は前記抗体の抗原結合性を有するその抗体断片。
【請求項4】
前記抗体又はその抗体断片のVHのアミノ酸配列が、配列番号13で表されるアミノ酸配列を含み、VLのアミノ酸配列が、配列番号14で表されるアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体又は前記抗体の抗原結合性を有するその抗体断片。
【請求項5】
末端シアル酸残基がα2,3結合でガラクトースに結合した糖鎖に特異的に結合し、末端シアル酸残基がα2,3結合でガラクトースに結合した糖鎖に結合後、前記糖鎖から解離しない、モノクローナル抗体又は前記抗体の抗原結合性を有するその抗体断片であって、
前記抗体又はその抗体断片のVHのCDR1のアミノ酸配列が、配列番号7で表されるアミノ酸配列を含み、VHのCDR2のアミノ酸配列が、配列番号8で表されるアミノ酸配列を含み、VHのCDR3のアミノ酸配列が、配列番号9で表されるアミノ酸配列を含み、VLのCDR1のアミノ酸配列が、配列番号10で表されるアミノ酸配列を含み、VLのCDR2のアミノ酸配列が、配列番号11で表されるアミノ酸配列を含み、VLのCDR3のアミノ酸配列が、配列番号12で表されるアミノ酸配列を含む、モノクローナル抗体又は前記抗体の抗原結合性を有するその抗体断片。
【請求項6】
末端シアル酸残基がα2,3結合でガラクトースに結合した糖鎖との解離定数が、3.0×10 -8 以下である、請求項5に記載のモノクローナル抗体又は前記抗体の抗原結合性を有するその抗体断片。
【請求項7】
末端にシアル酸が結合していないガラクトースが結合した糖鎖に結合しないか、又は、末端シアル酸が結合していないガラクトースが結合した糖鎖との解離定数が、9.0×10 -5 以上である、請求項5又は6に記載のモノクローナル抗体又は前記抗体の抗原結合性を有するその抗体断片。
【請求項8】
前記抗体又はその抗体断片のVHのアミノ酸配列が、配列番号15で表されるアミノ酸配列を含み、VLのアミノ酸配列が、配列番号16で表されるアミノ酸配列を含む、請求項5~7のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体又は前記抗体の抗原結合性を有するその抗体断片。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体又は前記抗体の抗原結合性を有するその抗体断片を用いる、末端シアル酸残基がα2,3結合でガラクトースに結合した糖鎖の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、末端シアル酸残基がα2,3結合でガラクトースに結合した糖鎖に特異的に結合するモノクローナル抗体、及び、末端シアル酸残基がα2,3結合でガラクトースに結合した糖鎖の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
前立腺癌のマーカーとして知られているPSA(Prostate specific antigen)の糖鎖は、2本鎖で末端にシアル酸がα2,6結合でガラクトースに結合したN型糖鎖と、末端のシアル酸が、α2,3結合でガラクトースに結合しているN型糖鎖が存在し、癌化に伴い、α2,6結合よりも、α2,3結合でガラクトースに結合する糖鎖が増加することが知られている(非特許文献1)。従って、末端シアル酸残基がα2,3結合でガラクトースに結合した糖鎖を検出することは、前立腺癌の検出に有用である。
【0003】
末端シアル酸残基がα2,3結合でガラクトースに結合した糖鎖を検出可能なプローブとして、イヌエンジュレクチン(Maackia amurensis Aggulutinin;MAA)が知られており、シアル酸を含む糖鎖の検出のプローブとして用いられている(特許文献1)。また、末端シアル酸残基がα2,3結合でガラクトースに結合した糖鎖を有する糖脂質を免疫原として、末端シアル酸残基がα2,3結合でガラクトースに結合した糖鎖を認識するマウスモノクローナル抗体が報告されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4514919号
【文献】特許第6381033号
【非特許文献】
【0005】
【文献】Tajiri M,Ohyama C,Wada Y,Glycobiology,2008;18:2-8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、イヌエンジュレクチンは、原料となる植物由来の天然物であり、製品のロットによってその結合性が変化するため、これをプローブとして使用した腫瘍バイオマーカーの臨床応用は困難である。組み換えレクチンの開発も進められているが、実用化には至っていない。
また、癌化したPSAの検出には、より高感度で、末端シアル酸残基がα2,3結合でガラクトースに結合した糖鎖を認識する抗体が必要である。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、末端シアル酸残基がα2,3結合でガラクトースに結合した糖鎖に高い結合性を有するモノクローナル抗体、及び、末端シアル酸残基がα2,3結合でガラクトースに結合した糖鎖の測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、Siaα2-3Galβ1-4GlcNAc-BSAを免疫原として、ウサギに免疫し、得られた陽性ウサギB細胞を単離し、シングルセルPCRにより、抗体遺伝子を取得し、該抗体遺伝子を宿主細胞に導入することにより得られた、モノクローナル抗体が、高い結合性で、末端シアル酸残基がα2,3結合でガラクトースに結合した糖鎖に結合し、末端シアル酸残基がα2,3結合でガラクトースに結合した糖鎖に結合後、当該糖鎖から解離しないことを見出し、本発明を完成させた。
本発明は以下の態様を含む。
【0009】
[1]末端シアル酸残基がα2,3結合でガラクトースに結合した糖鎖に特異的に結合し、末端シアル酸残基がα2,3結合でガラクトースに結合した糖鎖に結合後、前記糖鎖から解離しない、モノクローナル抗体又はその抗体断片。
[2]末端シアル酸残基がα2,3結合でガラクトースに結合した糖鎖との解離定数が、3.0×10-8以下である、[1]に記載のモノクローナル抗体又はその抗体断片。
[3]末端にシアル酸が結合していないガラクトースが結合した糖鎖に結合しないか、又は、末端シアル酸が結合していないガラクトースが結合した糖鎖との解離定数が、9.0×10-5以上である、[1]又は[2]に記載のモノクローナル抗体又はその抗体断片。
[4]前記抗体又はその抗体断片の重鎖可変領域(以下、VHとも称する)の相補性決定領域(Complementarity determining region;以下、CDRとも称する)1のアミノ酸配列が、配列番号1で表されるアミノ酸配列を含み、VHのCDR2のアミノ酸配列が、配列番号2で表されるアミノ酸配列を含み、VHのCDR3のアミノ酸配列が、配列番号3で表されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域(以下、VLとも称する)のCDR1のアミノ酸配列が、配列番号4で表されるアミノ酸配列を含み、VLのCDR2のアミノ酸配列が、配列番号5で表されるアミノ酸配列を含み、VLのCDR3のアミノ酸配列が、配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む、[1]~[3]のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体又はその抗体断片。
[5]前記抗体又はその抗体断片のVHのアミノ酸配列が、配列番号13で表されるアミノ酸配列を含み、VLのアミノ酸配列が、配列番号14で表されるアミノ酸配列を含む、[4]に記載のモノクローナル抗体又はその抗体断片。
[6]前記抗体又はその抗体断片のVHのCDR3のアミノ酸配列が、配列番号9で表されるアミノ酸配列を含み、VLのCDR3のアミノ酸配列が、配列番号12で表されるアミノ酸配列を含む、[1]~[3]のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体又はその抗体断片。
[7]前記抗体又はその抗体断片のVHのCDR1のアミノ酸配列が、配列番号7で表されるアミノ酸配列を含み、VHのCDR2のアミノ酸配列が、配列番号8で表されるアミノ酸配列を含み、VHのCDR3のアミノ酸配列が、配列番号9で表されるアミノ酸配列を含み、VLのCDR1のアミノ酸配列が、配列番号10で表されるアミノ酸配列を含み、VLのCDR2のアミノ酸配列が、配列番号11で表されるアミノ酸配列を含み、VLのCDR3のアミノ酸配列が、配列番号12で表されるアミノ酸配列を含む、[6]に記載のモノクローナル抗体又はその抗体断片。
[8]前記抗体又はその抗体断片のVHのアミノ酸配列が、配列番号15で表されるアミノ酸配列を含み、VLのアミノ酸配列が、配列番号16で表されるアミノ酸配列を含む、[7]に記載のモノクローナル抗体又はその抗体断片。
[9][1]~[8]のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体又はその抗体断片を用いる、末端シアル酸残基がα2,3結合でガラクトースに結合した糖鎖の測定方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、末端シアル酸残基がα2,3結合でガラクトースに結合した糖鎖(以下、α2,3糖鎖とも称する)に高い結合性を有するモノクローナル抗体、及び、α2,3糖鎖の測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1で得られた抗体のα2,3糖鎖、及び、末端シアル酸残基がα2,6結合でガラクトースに結合した糖鎖(以下、α2,6糖鎖とも称する)に対する結合性を、ELISAで確認した結果を示す。
図2A】実施例2における、α2,6糖鎖を固定化したバイオセンサーに対するNo.14抗体のセンサーグラムの結果を示す。
図2B】実施例2における、α2,3糖鎖を固定化したバイオセンサーに対するNo.14抗体のセンサーグラムの結果を示す。
図2C】実施例2における、末端にシアル酸が結合していないガラクトースが結合した糖鎖(以下、ガラクトース結合糖鎖とも称する)を固定化したバイオセンサーに対するNo.14抗体のセンサーグラムの結果を示す。
図3A】実施例2における、α2,6糖鎖を固定化したバイオセンサーに対するNo.19抗体のセンサーグラムの結果を示す。
図3B】実施例2における、α2,3糖鎖を固定化したバイオセンサーに対するNo.19抗体のセンサーグラムの結果を示す。
図3C】実施例2における、ガラクトース結合糖鎖を固定化したバイオセンサーに対するNo.19抗体のセンサーグラムの結果を示す。
図4A】比較例1における、α2,6糖鎖を固定化したバイオセンサーに対するHYB4抗体のセンサーグラムの結果を示す。
図4B】比較例1における、α2,3糖鎖を固定化したバイオセンサーに対するHYB4抗体のセンサーグラムの結果を示す。
図4C】比較例1における、ガラクトース結合糖鎖を固定化したバイオセンサーに対するHYB4抗体のセンサーグラムの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<モノクローナル抗体及びその抗体断片>
本明細書において「抗体」とは、天然に存在するか、遺伝子組換え技術によって産生される、全長の免疫グロブリン分子をいい、「抗体断片」とはかかる免疫グロブリン分子の抗原結合性の断片をいう。かかる抗体および抗体断片は、慣用技術を用いて作製することができる。抗体断片としては、F(ab’)、F(ab)、Fab’、Fab、Fv、scFv、それらの変異体、抗体部分を含む融合タンパク質又は融合ペプチド、及び、α2,3糖鎖結合部位を含む、免疫グロブリン分子以外の修飾構造体等を挙げることができる。
【0013】
本明細書において、抗体が「特異的に結合する」とは、末端シアル酸残基がα2,3結合でガラクトースに結合した糖鎖とは異なる他の糖鎖に実質的に結合することなく、α2,3糖鎖に結合することを意味する。また、本明細書において、「α2,3糖鎖」は、「Siaα2-3Galβ1-4GlcNAc」とも称する。
【0014】
本発明において、「モノクローナル抗体」とは、実質的に均一な抗体のポピュレーションから得られる抗体を意味し、そのポピュレーションに含まれる個々の抗体は、若干存在し得る可能性のある天然の突然変異体を除いて同一である。モノクローナル抗体は、抗原の特定のエピトープに対して1つの結合特異性及び親和性を示す抗体である。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体ポピュレーションから得られる抗体の特性を示し、特定の方法による抗体の生産を必要とするものとして限定的に解されるべきではない。
【0015】
本明細書において使用する、抗体の「重鎖」は、その天然に存在するコンフォメーションで全ての抗体分子に存在するポリペプチド鎖の2つのタイプのうち、より大きいほうを指す。本明細書において用いられる、抗体「軽鎖」は、その天然に存在するコンフォメーションで全ての抗体分子に存在するポリペプチド鎖の2つのタイプのうち、より小さいほうを指す。
ここで、相補性決定領域(CDR)とは、重鎖相補性決定領域および軽鎖相補性決定領域で構成される。重鎖及び軽鎖の可変領域は、それぞれ、3つのCDRと、CDRにより連結される4つのフレームワーク領域(FR)からなる。各鎖におけるCDRは、FRにより、近傍に保持されており、他方の鎖におけるCDRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している。
【0016】
CDRを決定するための技術としては、限定はされないが、例えば、(1)異種間配列可変性に基づくアプローチ(例えば、Kabat et al. Sequences of Proteins of Immunological interest, 5th ed., 1991、National Instittutes of Health, Bethesda MD);及び(2)抗原-抗体複合体の結晶構造学的研究に基づくアプローチ(Al-lazikani et al., J. Molec. Biol. 273,927-948,1997)を挙げることができる。これらのアプローチや、他のアプローチを組み合わせて用いてもよい。
【0017】
本発明のモノクローナル抗体又はその抗体断片は、α2,3糖鎖に特異的に結合し、α2,3糖鎖に結合後、前記糖鎖から解離しない、モノクローナル抗体又はその抗体断片である。以下、本発明のモノクローナル抗体を、抗α2,3糖鎖モノクローナル抗体とも称する。
【0018】
本発明の抗α2,3糖鎖モノクローナル抗体は、ヒト抗体であっても、非ヒト動物抗体であってもよい。非ヒト動物としては、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ニワトリ等が挙げられるが、ウサギモノクローナル抗体が抗原との結合性が高いため好ましい。
【0019】
本発明の抗α2,3糖鎖モノクローナル抗体又はその抗体断片は、α2,6糖鎖に結合しない、モノクローナル抗体又はその抗体断片であることが好ましい。
本発明の抗α2,3糖鎖モノクローナル抗体又はその抗体断片の、α2,3糖鎖、α2,6糖鎖等の抗原との結合性は、解離定数(KD値)で表わすことができる。KDの単位はMであり、結合性が高いほどKD値はより低くなる。
【0020】
本発明の抗α2,3糖鎖モノクローナル抗体又はその抗体断片のα2,3糖鎖とのKD値は、3.0×10-8以下であることが好ましく、2.7×10-8以下であることがより好ましく、2.5×10-8以下であることがさらに好ましく、2.0×10-8以下であることが特に好ましい。
【0021】
上記KD値は、例えば、抗原となる糖鎖を固定化したバイオセンサーを用いて算出することができる。具体的には、バイオセンサーに抗原となる糖鎖を固定させ、抗体溶液に浸漬して、抗体をバイオセンサーに固定化された抗原に結合させる。その後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)等の緩衝液に浸漬し、バイオセンサーに結合する抗体数、又は、バイオセンサーから解離する抗体数の変化によって生じる波長シフトΔλの変化を計測し、抗体の濃度を変化させたときのセンサーグラムから、KD値を算出することができる。
【0022】
本発明の抗α2,3糖鎖モノクローナル抗体又はその抗体断片は、末端シアル酸残基がα2,3結合でガラクトースに結合した糖鎖に結合後、前記糖鎖から解離しない。本発明の抗α2,3糖鎖モノクローナル抗体又はその抗体断片は、α2,3糖鎖に結合後、前記糖鎖から解離しないことは、前述した、バイオセンサーにより確認することができる。具体的には、バイオセンサーに固定化されたα2,3糖鎖に、本発明のモノクローナル抗体又はその抗体断片を結合させた後、前記糖鎖を含まない緩衝液に浸漬させて、前記糖鎖からの結合及び解離を示す反応プロファイルにより確認することができる。本発明の抗α2,3糖鎖モノクローナル抗体又はその抗体断片は、バイオセンサーに固定化されたα2,3糖鎖に結合すると、前記糖鎖を含まない緩衝液に浸漬しても、バイオセンサーに固定化された、α2,3糖鎖から解離しない。一方、本発明の抗α2,3糖鎖モノクローナル抗体又はその抗体断片は、バイオセンサーに固定化されたα2,3糖鎖以外の糖鎖、例えば、α2,6糖鎖には結合しても、前記糖鎖を含まない緩衝液に浸漬すると、バイオセンサーに固定化されたα2,6糖鎖から速やかに解離する。従って、α2,6糖鎖は、本発明の抗α2,3糖鎖モノクローナル抗体又はその抗体断片に結合しても、α2,3糖鎖が存在すると、α2,3糖鎖と置換することになり、α2,6糖鎖に対するKD値が低く、α2,3糖鎖に対するKD値が高くても、本発明の抗α2,3糖鎖モノクローナル抗体又はその抗体断片は、α2,3糖鎖に対して特異性が高くなる。
【0023】
本発明の抗α2,3糖鎖モノクローナル抗体又はその抗体断片は、ガラクトース結合糖鎖に結合しないか、又は、ガラクトース結合糖鎖に、ほぼ結合しないモノクローナル抗体又はその抗体断片であることが好ましい。ここで、ガラクトース結合糖鎖に、ほぼ結合しないモノクローナル抗体又はその抗体断片とは、例えば、ガラクトース結合糖鎖との解離定数(KD値)が、9.0×10-5以上であるモノクローナル抗体又はその抗体断片が挙げられる。
【0024】
本発明の抗α2,3糖鎖モノクローナル抗体又はその抗体断片は、公知の方法を用いて製造することができる。具体的には、まず、α2,3糖鎖とキャリアータンパク質とのコンジュゲートを免疫原として非ヒト動物に免疫し、免疫された非ヒト動物のリンパ球について、抗原との結合性をELISAで確認し、α2,3糖鎖との結合性の高いリンパ球を選択する。免疫する非ヒト動物としては、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ニワトリ等が挙げられる。次に、選択したリンパ球からからシングルセルPCR法で、抗体遺伝子を取得し、PCR法により増幅する。PCR増幅産物について、抗原との結合性をELISAで確認する。α2,3糖鎖との結合性が高いPCR増幅産物を、ヒト胎児腎細胞293(Human Embryonic Kidney cells 293)等の細胞にトランスフェクションし、分泌抗体が含まれる培養上清を回収し、回収サンプルについて、抗原との結合性をELISAで確認し、α2,3糖鎖との結合性の高いクローンを得る。得られたクローンから抗体遺伝子を取得し、ベクターに挿入し、抗体産生細胞を得る。得られた抗体産生細胞を培養し、本発明の抗α2,3糖鎖モノクローナル抗体又はその抗体断片を生成蓄積させ、該培養物から本発明の抗α2,3糖鎖モノクローナル抗体又はその抗体断片を製造することができる。
【0025】
本発明の抗α2,3糖鎖モノクローナル抗体又はその抗体断片としては、VHのCDR1のアミノ酸配列が、配列番号1で表されるアミノ酸配列を含み、VHのCDR2のアミノ酸配列が、配列番号2で表されるアミノ酸配列を含み、VHのCDR3のアミノ酸配列が、配列番号3で表されるアミノ酸配列を含み、VLのCDR1のアミノ酸配列が、配列番号4で表されるアミノ酸配列を含み、VLのCDR2のアミノ酸配列が、配列番号5で表されるアミノ酸配列を含み、VLのCDR3のアミノ酸配列が、配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む、抗α2,3糖鎖モノクローナル抗体No.14(以下、No.14抗体とも称する)又はその抗体断片等が挙げられる。
【0026】
前記抗体No.14は、配列番号13で表されるアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号14で表されるアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0027】
また、本発明の抗α2,3糖鎖モノクローナル抗体又はその抗体断片としては、VHのCDR3のアミノ酸配列が、配列番号9で表されるアミノ酸配列を含み、VLのアミノ酸配列が、配列番号12で表されるアミノ酸配列を含む、抗α2,3糖鎖モノクローナル抗体又はその抗体断片等が挙げられる。
【0028】
VHのCDR3のアミノ酸配列が、配列番号9で表されるアミノ酸配列を含み、VLのアミノ酸配列が、配列番号12で表されるアミノ酸配列を含む、抗α2,3糖鎖モノクローナル抗体又はその抗体断片としては、具体的には、VHのCDR1のアミノ酸配列が、配列番号7で表されるアミノ酸配列を含み、VHのCDR2のアミノ酸配列が、配列番号8で表されるアミノ酸配列を含み、VHのCDR3のアミノ酸配列が、配列番号9で表されるアミノ酸配列を含み、VLのCDR1のアミノ酸配列が、配列番号10で表されるアミノ酸配列を含み、VLのCDR2のアミノ酸配列が、配列番号11で表されるアミノ酸配列を含み、VLのCDR3のアミノ酸配列が、配列番号12で表されるアミノ酸配列を含む、抗α2,3糖鎖モノクローナル抗体No.19(以下、No.19抗体とも称する)又はその抗体断片等が挙げられる。
【0029】
前記抗体No.19は、配列番号15で表されるアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号16で表されるアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0030】
上記配列番号1~12で表されるアミノ酸配列を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
上記配列番号13~16で表されるアミノ酸配列を表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
これらのVHのCDR1~CDR3及びVLのCDR1~CDR3を含む、本発明の抗α2,3糖鎖モノクローナル抗体又はその抗体フラグメントは、公知の遺伝子組換え技術を用いて製造することができる。具体的には、VHのCDR1~CDR3及びVLのCDR1~CDR3をそれぞれコードする遺伝子を、前記抗体のFRと前記抗体の定常領域をそれぞれコードする遺伝子を含むベクターに組み込み、これを宿主細胞に導入して形質転換させることによって、前記抗体を発現する細胞を取得し、これを細胞培養することによって製造することができる。この調製に使用される細胞、ベクターの種類、細胞の種類、培養条件等は、当業者の技術的範囲内であり、適宜適切な条件を設定することができる。
【0035】
前記VH及びVLのCDR1~3のアミノ酸配列において、1つ以上のアミノ酸が欠失、付加、置換又は挿入され、かつ本発明のモノクローナル抗体又はその抗体断片と同様な特異性を有するモノクローナル抗体又はその抗体断片も、本発明のモノクローナル抗体又はその抗体断片に包含される。
【0036】
欠失、置換、挿入及び/又は付加されるアミノ酸の数は1個以上でありその数は特に限定されないが、部位特異的変異導入法[Molecular Cloning 2nd Edition、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols inmolecular Biology、John Wiley&Sons(1987-1997)、Nucleic Acids Research、10、6487(1982)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、79、6409(1982)、Gene、34、315(1985)、Nucleic Acids Research、13、4431(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、82、488(1985)]などの周知の技術により、欠失、置換もしくは付加できる程度の数である。例えば、好ましくは1~数十個、より好ましくは1~20個、さらに好ましくは1~10個、特に好ましくは1~5個である。
【0037】
<測定方法>
本発明のα2,3糖鎖の測定方法は、本発明の抗α2,3糖鎖モノクローナル抗体又はその抗体断片を用いる、α2,3糖鎖の測定方法である。本発明の抗α2,3糖鎖モノクローナル抗体又はその抗体断片を用いる、α2,3糖鎖の測定方法としては、検体中のα2,3糖鎖と、本発明の抗α2,3糖鎖モノクローナル抗体又はその抗体断片とを反応させた後、前記抗α2,3糖鎖モノクローナル抗体又はその抗体断片に標識が結合した標識化抗体又は標識化抗体断片を添加し、α2,3糖鎖、前記抗α2,3糖鎖モノクローナル抗体又はその抗体断片、及び前記標識化抗体又は標識化抗体断片からなる免疫複合体を生成させ、生成した前記免疫複合体中の標識量を測定する、検体中のα2,3糖鎖の免疫学的測定方法等が挙げられる。
【0038】
本発明の抗α2,3糖鎖モノクローナル抗体又はその抗体断片を用いる測定方法において、検体としては、ヒトをはじめとする動物の血清、血漿又は全血等の血液、リンパ液、組織液、髄液、体腔液、消化液、鼻水、涙液、汗及び尿等が挙げられる。また、前記検体は、対象から採取した検体そのものであっても、採取した検体に通常行われる希釈、濃縮等の処理を行ったものであってもよい。また、検体は、前記測定方法の実施時に採取又は調製されたものでもよく、予め採取又は調製され保存されたものであってもよい。
【0039】
前記免疫学的測定方法としては、前記標識化検出抗体の標識により、エンザイムイムノアッセイ(EIA又はELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光イムノアッセイ(FIA) 、蛍光偏光イムノアッセイ(FPIA)、化学発光イムノアッセイ(CLIA)、電気化学発光イムノアッセイ等に分類され、これらのいずれも本発明の測定方法に用いることができるが、ELISAが、簡便且つ迅速に検出対象を測定することができ好ましい。
【0040】
上記免疫複合体を洗浄後、免疫複合体中の標識を測定することにより、検体中のα2,3糖鎖を測定することができる。例えば、ELISAの場合、標識である酵素と当該酵素の基質とを反応させ、発色した生成物の吸光度を測定することにより、検体中のα2,3糖鎖を測定することができる(サンドイッチ法)。また、固体支持体に固定した本発明の抗α2,3糖鎖モノクローナル抗体又はその抗体断片と検体中のα2,3糖鎖とを反応させた後、非標識抗α2,3糖鎖モノクローナル抗体又はその抗体断片(一次抗体)を添加し、この非標識抗体又はその抗体断片に対する抗体(二次抗体)に酵素標識した標識化二次抗体をさらに添加し、当該二次抗体の標識を測定することにより、検体中のα2,3糖鎖を測定することもできる。また、当該二次抗体をビオチンで標識し、酵素等で標識したアビジン又はストレプトアビジンをビオチンと結合させて、当該二次抗体を酵素等で標識し、当該二次抗体の標識を測定することにより検体中のα2,3糖鎖を測定することもできる。
【0041】
また、固体支持体に固定したα2,3糖鎖叉はα2,3糖鎖とBSA等の蛋白質とのコンジュゲートに、非標識抗α2,3糖鎖モノクローナ抗体又はその抗体断片(一次抗体)を添加して、固体支持体に、α2,3糖鎖と一次抗体とからなる免疫複合体を生成させた後、検体を添加し、さらに、この非標識抗体に対する抗体(二次抗体)を標識化した二次抗体を添加し、当該標二次抗体の標識を測定することにより、検体中のα2,3糖鎖を測定することもできる(競合法)。
【0042】
前記固体支持体としては、抗体又は抗体断片を安定に保持できるものであれば特に制限はない。固体支持体の好ましい素材としてはポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルトルエン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリメタクリレート、ゼラチン、アガロース、セルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテート、酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート等の高分子素材、ガラス、セラミックス、磁性粒子や金属等が挙げられる。固体支持体の好ましい形状としてはチューブ、ビーズ、プレート、ラテックス等の微粒子、スティック等が挙げられる。
【0043】
前記標識としては、ELISAでは、パーオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ等の酵素、RIA法では、125I、131I、35S、H等の放射性物質、FPIA法では、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ダンシルクロリド、フィコエリスリン、テトラメチルローダミンイソチオシアネート、近赤外蛍光材料等の蛍光物質、CLIA法では、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ等の酵素と各酵素で発光物質に変化する発光基質、及びルシフェリン、エクオリン等の発光物質を用いることができる。その他、金コロイド、量子ドットなどのナノ粒子を標識として用いることもできる。
【0044】
ELISAにおいて、標識となる酵素の基質は、酵素がパーオキシダーゼの場合3、3’-diaminobenzidine(DAB)、3,3’,5,5’-tetramethylbenzidine(TMB)、O-phenylenediamine(OPD)等を用いることができ、アルカリホスファターゼの場合、p-nitropheny phosphate(pNPP)等を用いることができる。
【実施例
【0045】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0046】
[実施例1]
Siaα2-3Galβ1-4GlcNAc-BSAを免疫原として、ウサギ(slc:JW/CSK、13週齢)に免疫し、得られたウサギB細胞について、Siaα2-3Galβ1-4GlcNAcに結合する細胞(シングルセル)をELISA法により試験し、56個の陽性クローンを選択した。選択された陽性クローンから、シングルセルPCRにより、抗体遺伝子を取得した。得られた抗体遺伝子配列をヒト胎児腎細胞293(Human Embryonic Kidney cells 293)細胞にトランスフェクションし、培養上清に分泌された組み換えウサギ抗体について、α2,3糖鎖及びα2,6糖鎖との結合性を、以下のELISA法により確認し、α2,3糖鎖に結合性が高く、α2,6糖鎖に結合性が低い2個の抗体(No.14、19)を得た。図1に、これら2個の抗体のELISA試験の結果を示す。なお、対照として、上記において選択されなかった3つの抗体(No.29、41、38)の結果も合わせて示す。
【0047】
[α2,3糖鎖への結合性]
96wellプレートにSiaα2,3Gal抗原BSA-MBS-ペプチド結合物(BSA-MBS-シアル酸α(2,3)β1,4GlcNAc)を1μl/ml(×2500)で50μl添加し、37℃で1時間インキュベートし、抗原をプレートにウェル上に固定化した。PBST(0.1%Tween20を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS))で3回洗浄後、1%BSA/PBSを100μl添加し、4℃で一晩振とうし、ブロッキングした。PBSTで3回洗浄後、実施例1で得られた各クローンの培養上清を2倍希釈し、50μl添加し、室温で1時間、振とうした。PBSTで3回洗浄後、anti-Rabbit IgG HRP(×10000;ab97080、abcam社製)50μlを添加し、室温で1時間、振とうした。PBSTで3回洗浄後、TMB substrate solution(組成:3.3’,5.5’-tetramethylbenzidine、カタログナンバー:N301、ThermoFisher scientific社製)を100μl/well添加し、5分間インキュベートした。次に、0.1N HClを100μl/well添加し、450nmにおける吸光度を測定した。
【0048】
[α2,6糖鎖への結合性]
Siaα2,3Gal抗原BSA-MBS-ペプチド結合物の代わりに、Siaα2,6Gal抗原BSA-MBS-ペプチド結合物を用いる以外は上記と同様に行い、450nmにおける吸光度を測定した。
【0049】
[実施例2]
実施例1で得られたNo.14抗体及びNo.19抗体のKD値を以下のようにして算出した。
Amino reactiveバイオセンサー(AR2G;FORTEBIO社製)を超純水で親水化し、20μg/mLのBSA-MBS-シアル酸α(2,3)β1,4GlcNAc抗原溶液、又は、BSA-MBS-シアル酸α(2,6)β1,4GlcNAc抗原溶液に10分間浸漬し、各抗原をセンサーに固定化した。EDC-/sNHS溶液(組成:1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide(FORTEBIO社製)とsulfo-N-hydroxysuccinimide(FORTEBIO社製)とを1:1で混合)にセンサーを浸漬し、ブロッキングした。BSA-MBS-β1,4GlcNAc抗原固定化センサーは、ブロッキング後にシアリダーゼ溶液(組成:3μL α(2→3,6,8,9)Neuraminidase from Arthrobacter ureafaciens(N3786-1SET、Sigma社製)+47μL 100mM acetate buffer(pH5.5))に37℃、3時間浸漬し、シアル酸を遊離させて作製した。PBSで洗浄後、30℃条件下で、3.75から60nMの各抗体溶液中にバイオセンサーを300秒間浸漬し、抗原への抗体の結合状態を測定した。その後、PBSに300秒間浸漬し、抗原からの抗体の解離状態を測定した。バイオセンサーに結合する抗体、またはバイオセンサーから解離する抗体数の変化によって生じる波長シフトΔλの変化を、リアルタイムに計測し、Octetシステム上(FORTEBIO社製)で反応プロファイルを生成した。3.75nMから60nMの各濃度の抗体溶液中で得られた結合および解離のセンサーグラムから、KD値を算出した。算出されたKD値を表3に示す。また、No.14抗体、No.19抗体の上記センサーグラムの結果を、それぞれ図2A図2C図3A図3Cに示す。
【0050】
[比較例1]
No.14抗体及びNo.19抗体の代わりに、公知のマウス抗α2,3糖鎖モノクローナル抗体であるHYB4抗体(富士フィルム和光純薬社製)を用いる以外は、実施例2と同様にして、KD値を算出した。HYB4抗体のKD値の値を表3に、HYB4抗体のセンサーグラムの結果を図4A図4Cに示す。
【0051】
【表3】
【0052】
表3に示したように、No.14抗体のα2,3糖鎖に対するKD値は、2.7×10-8±3.9×10-9であり、α2,6糖鎖に対する解離定数KD値である、9.1×10-9±2.5×10-24に対して、33.7倍高い結果であったが、図2Aに示すように、α2,6糖鎖へは、結合後速やかに解離するのに対し、α2,3糖鎖へは、図2Bに示すように、一度結合すると解離しないことが明らかとなった。また、図2Cに示すように、ガラクトース結合糖鎖への結合を認めなかった。従って、No.14抗体に結合した、α2,6糖鎖は、α2,3糖鎖が存在すると、α2,3糖鎖と置換することになり、No.14抗体は、α2,3糖鎖への結合性が高い抗体であることが明らかとなった。
【0053】
また、No.19抗体のα2,3糖鎖に対するKD値は、1.6×10-8±1.9×10-15であり、α2,6糖鎖に対するKD値である、6.3×10-6±1.6×10-19に対して、25.4倍低い結果であった。また、図3Cに示すように、ガラクトース結合糖鎖への結合を認めなかった。さらに、No.19抗体は、図3Aに示すように、α2,6糖鎖へは、結合後速やかに解離するのに対し、α2,3糖鎖へは、図3Bに示すように、一度結合すると解離しないことが明らかとなった。これらの結果から、No.19抗体は、α2,3糖鎖に結合性が高い抗体であることが明らかとなった。
【0054】
それに対し、HYB4抗体のα2,3糖鎖に対するKD値は、8.6×10-6±1.6×10-4であり、No.14抗体のKD値の31.4倍、No.19抗体のKD値の18.6倍であった。また、HYB4抗体は、図4Bに示すように、α2,3糖鎖に結合後、PBSに浸漬すると、α2,3糖鎖から速やかに解離した。
以上の結果から、HYB4抗体は、No.14抗体及びNo.19抗体と比較して、α2,3糖鎖への結合性は低いものであることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、α2,3糖鎖に結合性の高いモノクローナル抗体又はその抗体断片、及びα2,3糖鎖の測定方法が提供される。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
【配列表】
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