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特許7222502発電システムの制御端末及びその制御用プログラム、及び発電システムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】発電システムの制御端末及びその制御用プログラム、及び発電システムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/46 20060101AFI20230208BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20230208BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J3/38 110
H02J13/00 301A
H02J13/00 311R
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022548991
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2022015653
【審査請求日】2022-08-12
(31)【優先権主張番号】P 2021059512
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】300023899
【氏名又は名称】株式会社ラプラス・システム
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(72)【発明者】
【氏名】堀井 雅行
(72)【発明者】
【氏名】西村 梢
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-005336(JP,A)
【文献】特開2017-093127(JP,A)
【文献】特開2021-027775(JP,A)
【文献】特開2019-161777(JP,A)
【文献】特開2021-191162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/46
H02J 3/38
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発電装置(1)と、前記複数の発電装置(1)のそれぞれに対して発電出力の制御を行う複数の発電制御装置(2)とを備えた発電システム(100)の出力電力を制御する制御端末(6)に用いられ、
負荷(5)の消費電力を取得するステップ(Sa1、Sb1)と、
前記発電システム(100)の総発電可能電力を取得するステップ(Sa2、Sb2)と、
前記消費電力及び前記複数の発電装置(1)の総発電量に基づいて前記発電システムの総発電可能電力を求めることにより、前記総発電可能電力を1つ前のサイクルの時刻(t=t0)の前記総発電可能電力よりも小さくするか前記総発電可能電力を1つ前のサイクルの時刻(t=t0)の前記総発電可能電力よりも大きくするかを判定するステップ(Sa3、Sb3-1)と、
前記判定結果に基づいて、
前記複数の発電制御装置(2)のそれぞれに対して現在時刻(t=t1)での出力指令値を個別に計算するステップ(Sa3-1-3、Sa3-2-3、Sb3-1-3、Sb3-2-3)
を実行させることを特徴とする制御端末用のプログラム。
【請求項2】
前記判定するステップ(Sa3)は、総発電可能電力が低下するか否かを判定するステップであると共に、その判定結果が「総発電可能電力が低下すると判定された場合」は、
出力指令値低下量を算出するステップ(Sa3-1-1)と、
実発電電力が最大である発電制御装置を選択するステップ(Sa3-1-2)と、
選択された発電制御装置に対して出力指令値を始点として、前記出力指令値低下量を適用するステップ(Sa3-1-3)と、
低下量の目標に到達したか否かを判定する判定ステップ(Sa3-1-4)と
を少なくとも含む請求項1記載のプログラム。
【請求項4】
前記判定するステップSa3は、総発電可能電力が低下するか否かを判定するステップであると共に、その判定結果が「総発電可能電力が低下すると判定されなかった場合」は、
出力指令値増加量を算出するステップ(Sa3-2-1)と、
実発電電力が最小である発電制御装置を選択するステップ(Sa3-2-2)と、
選択された発電制御装置に対して出力指令値を始点として、前記出力指令値増加量を適用するステップ(Sa3-2-3)と、
増加量の目標に到達したか否かを判定する判定ステップ(Sa3-2-4)と
を少なくとも含む請求項1記載のプログラム。
【請求項6】
前記判定ステップ(Sb3-1)は、現在時刻(t=t1)の総発電量が現在時刻(t=t1)における総発電可能電力よりも大きいか否かを判定するステップであると共に、その判定結果が「前記総発電量が前記総発電可能電力よりも大きい場合」は、
出力指令値低下量を算出するステップ(Sb3-1-1)と、
実発電電力が最大である発電制御装置を選択するステップ(Sb3-1-2)と、
選択された発電制御装置に対して実発電電力を始点として、前記出力指令値低下量を適用するステップ(Sb3-1-3)と、
低下量の目標に到達したか否かを判定するステップ(Sb3-1-4)と
を少なくとも含む請求項1記載のプログラム。
【請求項8】
前記判定ステップ(Sb3-1)は、現在時刻(t=t1)の総発電量が現在時刻(t=t1)における総発電可能電力よりも大きいか否かを判定するステップであると共に、その判定結果が「前記総発電量が前記総発電可能電力よりも大きくない場合」は、
さらに、全ての発電制御装置(2)が出力指令値以下で稼働しているか否かを判定するステップ(Sb3-2)と、前記判定の結果、全ての発電制御装置(2)が出力指令値以下で稼働している場合は、現在時刻(t=t1)における発電量が1つ前のサイクルの時刻(t=t0)と比較して増加していないか否かを判定する判定ステップ(Sb3-3)を少なくとも含むと共に、
全ての発電制御装置(2)が出力指令値以下で稼働し、かつ、現在時刻(t=t1)における発電量が1つ前のサイクルの時刻(t=t0)と比較して増加していないと判定されるときは、1つ前のサイクルの時刻(t=t0)の出力を維持し、ステップSb1に戻ることを特徴とする請求項6又は7記載のプログラム
【請求項9】
前記判定ステップ(Sb3-1)は、現在時刻(t=t1)の総発電量が現在時刻(t=t1)における総発電可能電力よりも大きいか否かを判定するステップであると共に、その判定結果が「前記総発電量が前記総発電可能電力よりも大きくない場合」は、
さらに、全ての発電制御装置(2)が出力指令値以下で稼働しているか否かを判定するステップ(Sb3-2)と、前記判定の結果、全ての発電制御装置(2)が出力指令値以下で稼働している場合は、現在時刻(t=t1)において発電量が1つ前のサイクルの時刻(t=t0)と比較して増加していないか否かを判定する判定ステップ(Sb3-3)を少なくとも含むと共に、
全ての発電制御装置(2)が出力指令値以下で稼働していない場合、又は
ステップ(Sb3-3)において現在時刻(t=t1)において発電量が増加している判定されるときは、
出力指令値増加量を算出するステップ(Sb3-2-1)と、
出力指令値が最小である発電制御装置を選択するステップ(Sb3-2-2)と、
選択された発電制御装置に対して実発電電力を始点として、前記出力指令値増加量を適用するステップ(Sb3-2-3)と、
増加量の目標に到達したか否かを判定する判定ステップ(Sa3-2-4)と
を少なくとも含む請求項1記載のプログラム。
【請求項11】
前記負荷(5)の消費電力を取得するステップ(Sa1、Sb1)が、系統電力と前記発電出力との和として算出される場合において、下記の(ルール1)~(ルール3)を適用することを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか1項記載のプログラム。
[ルール1]
消費電力の計算に用いられる「発電電力」は、計測値を取得する毎に更新する。
[ルール2]
(2-1)
出力指令値の送信前後における系統電力の変動分は、発電制御装置を制御した影響によるものみなすことができる。そのため前回の出力指令値を決定後、系統電力の変動量が、出力指令値を変更した範囲内に収まる時、出力指令値の再計算は行わない。
しかし、系統電力の変動量が、出力指令値を変更した範囲に収まらないときは、現在の出力指令値と計測結果から、その時点で出力指令値の変動量を超える消費電力の変動量から出力指令値を計算する。これは、実際に消費電力が変動したと考えられるためである
(2-2)
出力指令値を低下させている最中に、さらに消費電力が低下した場合に限り、変動量に関わらず出力指令値の再計算を行う。
[ルール3]
1つの発電制御装置の出力指令値と実発電電力との間で乖離がある場合、乖離している発電制御装置に対しては、出力指令値を現在発電している電力まで下げる指示を行う。
【請求項13】
請求項12記載の制御端末を、出力指令値に基づく出力制御機能付きの発電制御装置に接続することを特徴とする発電システムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電システムの制御端末及びその制御用プログラム、及び発電システムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電制御装置(パワーコンディショナ)の出力電力を負荷の消費電力に基づき計算することで、商用電力線への逆潮流を回避しながら発電効率を向上させる発電制御システムが知られている(例えば、特許文献1等)。発電システムには、大容量の発電制御装置1つに複数の発電装置を接続する「集中型」と、小容量の発電制御装置を複数設置する「分散型」とが知られる。このうち、分散型の発電システムでは、複数の発電制御装置を設置し、各発電制御装置で出力制御される発電量を1つの制御装置で制御する構成が採用されている(例えば、特許文献2の図5等参照)。このような分散型の発電システムの場合、発電制御の対象となる発電制御装置が複数存在するため、全ての発電制御装置に対して一律に同じ発電電力の出力指令値を与える制御が一般的である(特許文献2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-161777号公報
【文献】特開2017-093127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
分散型の発電システムの場合、全ての発電制御装置に一律に同じ出力指令値を与えても、必ずしも同一の制御ができるとは限らない。発電制御装置の仕様(容量や性能、メーカー等)が異なっていれば応答速度も異なるほか、たとえ同一仕様の発電制御装置が用いられる場合であっても、後付けで発電装置及び発電制御装置を追加設置した場合、累積稼働年数の相違等によって発電制御装置自体に個体差が現れることもある。さらには、発電制御装置の先につながる発電設備自体にも個体差があり、またその設置場所やその場所の気象条件の違いによっても、発電設備の発電特性が異なってくる。そのため、それぞれの発電制御装置に対して一律に同一の出力指令値を与える集中型と同じ制御方式が、分散型の発電システムの場合には必ずしも適切でない。
【0005】
本発明は、複数の発電装置及び発電制御装置からなる分散型の発電システムにおいて、時間的に変動する消費電力に迅速に対応して、各発電制御装置に対して適切な発電出力指令値を計算することにより、逆潮流を回避しつつ効率的に電力を供給することができる発電システムの制御端末、その制御用プログラム及び発電システムの製造方法を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る発電システムの制御用プログラムは、
複数の発電装置(1)と、前記複数の発電装置(1)のそれぞれに対して発電出力の制御を行う複数の発電制御装置(2)とを備えた発電システム(100)の出力電力を制御する制御端末(6)に用いられ、
負荷(5)の消費電力を取得するステップ(Sa1、Sb1)と、
前記発電システム(100)の総発電可能電力を取得するステップ(Sa2、Sb2)と、
前記消費電力及び前記総発電量に基づいて前記発電システムの総発電可能電力を求めることにより、制御を強めるか制御を弱めるかを判定するステップ(Sa3、Sb3-1)と、
前記判定結果に基づいて、
前記複数の発電制御装置(2)のそれぞれに対して現在時刻(t=t1)での出力指令値を個別に計算するステップ(Sa3-1-3、Sa3-2-3、Sb3-1-3、Sb3-2-3)
を実行させることを特徴とする。
【0007】
上記構成において、
前記判定するステップ(Sa3)は、総発電可能電力が低下するか否かを判定するステップであると共に、その判定結果が「総発電可能電力が低下すると判定された場合」は、
出力指令値低下量を算出するステップ(Sa3-1-1)と、
実発電電力が最大である発電制御装置を選択するステップ(Sa3-1-2)と、
選択された発電制御装置に対して出力指令値を始点として、前記出力指令値低下量を適用するステップ(Sa3-1-3)と、
低下量の目標に到達したか否かを判定する判定ステップ(Sa3-1-4)と
を少なくとも含むように構成してもよい。
【0008】
上記構成において、
前記判定ステップ(Sa3-1-4)において、目標に未達の場合、前回選択されなかった発電制御装置に対して実発電電力が最大である発電制御装置を選択する選択ステップ(Sa3-1-5)を実行すると共に、選択された発電制御装置に対して前記出力指令値低下量の未達分を適用するため再度前記ステップ(Sa3-1-3)を実行するように構成してもよい。
【0009】
上記構成において、
前記判定するステップSa3は、総発電可能電力が低下するか否かを判定するステップであると共に、その判定結果が「総発電可能電力が低下すると判定されなかった場合」は、
出力指令値増加量を算出するステップ(Sa3-2-1)と、
実発電電力が最小である発電制御装置を選択するステップ(Sa3-2-2)と、
選択された発電制御装置に対して出力指令値を始点として、前記出力指令値増加量を適用するステップ(Sa3-2-3)と、
増加量の目標に到達したか否かを判定する判定ステップ(Sa3-2-4)と
を少なくとも含むように構成してもよい。
【0010】
上記構成において、
前記判定ステップ(Sa3-2-4)において、目標に未達の場合、前回選択されなかった発電制御装置に対して実発電電力が最小である発電制御装置を選択するステップ(Sa3-2-5)を実行すると共に、選択された発電制御装置に対して前記出力指令値増加量の未達分を適用するため再度前記ステップ(Sa3-2-3)を実行するように構成してもよい。
【0011】
上記構成において、
前記判定ステップ(Sb3-1)は、現在時刻(t=t1)の総発電量が現在時刻(t=t1)における総発電可能電力よりも大きいか否かを判定するステップであると共に、その判定結果が「前記総発電量が前記総発電可能電力よりも大きい場合」は、
出力指令値低下量を算出するステップ(Sb3-1-1)と、
実発電電力が最大である発電制御装置を選択するステップ(Sb3-1-2)と、
選択された発電制御装置に対して実発電電力を始点として、前記出力指令値低下量を適用するステップ(Sb3-1-3)と、
低下量の目標に到達したか否かを判定するステップ(Sb3-1-4)と
を少なくとも含むように構成してもよい。
【0012】
上記構成において、
前記判定ステップ(Sb3-1-4)において、目標に未達の場合、前回選択されなかった発電制御装置に対して実発電電力が最大である発電制御装置を選択する選択ステップ(Sb3-1-5)を実行すると共に、選択された発電制御装置に対して前記出力指令値低下量の未達分を適用するため再度前記ステップ(Sa3-1-3)を実行するように構成してもよい。
【0013】
上記構成において、
前記判定ステップ(Sb3-1)は、現在時刻(t=t1)の総発電量が現在時刻(t=t1)における総発電可能電力よりも大きいか否かを判定するステップであると共に、その判定結果が「前記総発電量が前記総発電可能電力よりも大きくない場合」は、
さらに、全ての発電制御装置(2)が出力指令値以下で稼働しているか否かを判定するステップ(Sb3-2)と、前記判定の結果、全ての発電制御装置(2)が出力指令値以下で稼働している場合は、現在時刻(t=t1)において1つ前のサイクルの時刻(t=t0)と比較して発電量が増加していないか否かを判定する判定ステップ(Sb3-3)を少なくとも含むと共に、
全ての発電制御装置(2)が出力指令値以下で稼働し、かつ、現在時刻(t=t1)において1つ前のサイクルの時刻(t=t0)と比較して発電量が増加していないと判定されるときは、1つ前のサイクルの時刻(t=t0)の出力を維持し、ステップSb1に戻るように構成してもよい。
【0014】
上記構成において、
前記判定ステップ(Sb3-1)は、現在時刻(t=t1)の総発電量が現在時刻(t=t1)における総発電可能電力よりも大きいか否かを判定するステップであると共に、その判定結果が「前記総発電量が前記総発電可能電力よりも大きくない場合」は、
さらに、全ての発電制御装置(2)が出力指令値以下で稼働しているか否かを判定するステップ(Sb3-2)と、前記判定の結果、全ての発電制御装置(2)が出力指令値以下で稼働している場合は、現在時刻(t=t1)において1つ前のサイクルの時刻(t=t0)と比較して発電量が増加していないか否かを判定する判定ステップ(Sb3-3)を少なくとも含むと共に、
全ての発電制御装置(2)が出力指令値以下で稼働していない場合、又は
ステップ(Sb3-3)において現在時刻(t=t1)において発電量が増加している判定されるときは、
出力指令値増加量を算出するステップ(Sb3-2-1)と、
出力指令値が最小である発電制御装置を選択するステップ(Sb3-2-2)と、
選択された発電制御装置に対して実発電電力を始点として、前記出力指令値増加量を適用するステップ(Sb3-2-3)と、
増加量の目標に到達したか否かを判定する判定ステップ(Sa3-2-4)と
を少なくとも含むように構成してもよい。
【0015】
上記構成において、
前記判定ステップ(Sb3-2-4)において、目標に未達の場合、前回選択されなかった発電制御装置に対して出力指令値が最小である発電制御装置を選択するステップ(Sb3-2-5)を実行すると共に、選択された発電制御装置に対して前記出力指令値増加量の未達分を適用するため再度前記ステップ(Sb3-2-3)を実行することを特徴とするように構成してもよい。
【0016】
本発明に係る制御端末は、上記いずれかのプログラムを実行させるように構成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る発電システムの製造方法は、上記制御端末を、出力指令値に基づく出力制御機能付きの発電制御装置に接続することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数の発電制御装置に対して個別に出力指令値を設定することにより、時間的に変動する消費電力に迅速に対応して、それぞれの発電制御装置に対して適切な発電出力指令値を計算することができる。その結果、逆潮流を回避しつつも、きめ細やかな制御が可能となり、発電システム全体の発電量を一層高くすることができる。また、それぞれ発電制御装置の稼働状況を個別に制御するため、耐用年数を平均化したり、特に発電効率の高い発電装置を重点的に使用したり、消費電力の変動が激しい時間帯に応答特性の高い発電制御装置を積極的に利用したり、異なる特性、仕様の発電制御装置を組み合わせて使用したりすることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、発電システム100の主要構成を示す概略構成図である。
図2図2は、制御端末6の主要な機能ブロックを示す構成図である。
図3図3は、第1の実施形態による制御端末6を用いた発電システム100の発電制御方法を示す第2の実施形態の主要なフロー図である。
図4図4は、制御を強める場合((a)ケースC1-1)において、各発電制御装置に対する出力指令値と実発電電力の関係を示す概念図である。
図5図5は、制御を強める場合((b)ケースC1-2)において、各発電制御装置に対する出力指令値と実発電電力の関係を示す概念図である。
図6図6は、制御を弱める場合((c)ケースC1-3)において、各発電制御装置に対する出力指令値と実発電電力の関係を示す概念図である。
図7図7は、第1の実施形態による制御端末6を用いた発電システム100の発電制御方法を示す第3の実施形態の主要なフロー図である。
図8図8は、制御を強める場合((d)ケースC2-1)において、各発電制御装置に対する出力指令値と実発電電力の関係を示す概念図である。
図9図9は、制御を強める場合((e)ケースC2-2)において、各発電制御装置に対する出力指令値と実発電電力の関係を示す概念図である。
図10図10は、制御を弱める場合((f)ケースC2-3)において、各発電制御装置に対する出力指令値と実発電電力の関係を示す概念図である。
図11図11は、制御を弱める場合((f)ケースC2-3)において、各発電制御装置に対する出力指令値と実発電電力の関係を示す概念図である。
図12図12は、第3の実施形態において、制御を強める場合と制御を弱める場合における発電制御装置選択時と出力指令値計算値に使用される項目のパターンを示す表である。
図13図13(A)~(C)は、ルール1~ルール3を適用した場合の系統電力、発電電力、出力指令値と、系統電力及び発電電力の和として算出される消費電力の算出値の変化を示す表である。
図14図14は、ルール1~ルール3を適用することなく、制御を弱める場合において、各発電制御装置に対する出力指令値と実発電電力の関係を示す概念図である。
図15図15は、ルール1~ルール3を適用して、制御を弱める場合において、各発電制御装置に対する出力指令値と実発電電力の関係を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は、いずれも本発明の要旨の認定において限定的な解釈を与えるものではない。また、同一又は同種の部材については同じ参照符号を付して、説明を省略することがある。
また、以下の説明の電力値は、理解のための例示であり、限定的な解釈を与えるものではない。
【0021】
(用語の定義)
本発明における用語を以下のように定義する。
発電システム:複数の発電制御装置を含む系統連携が可能な分散型の発電システム
発電制御装置:出力指令値に基づく出力制御機能付きのパワーコンディショナ
実発電電力 :各発電制御装置の出力電力
総発電量 :各発電制御装置の出力電力(実発電電力)を足し合わせた発電システム全体の発電量
総発電可能電力:逆潮流を回避するためにシステム全体で許容される発電量の合計値であって、消費電力の計測値から算出される値を指す
制御端末 :現在時刻(t=t1)における負荷の消費電力から現在時刻(t=t1)における総発電可能電力を求め、各発電制御装置に送出するための制御指令値を計算し、適切なタイミングで送出する装置
出力指令値 :各発電制御装置に対して発電が許容される上限値(定格出力に対する割合として表される場合と、出力値そのものである場合とを含む。)
「制御を強める」:総発電可能電力を1つ前のサイクルの時刻(t=t0)の総発電可能電力よりも小さくするために発電制御装置に対して出力指令値を再計算すること
「制御を弱める」:総発電可能電力を1つ前のサイクルの時刻(t=t0)の総発電可能電力よりも大きくするために発電制御装置に対して出力指令値を再計算すること
「制御を維持する」:総発電可能電力を1つ前のサイクルの時刻(t=t0)の総発電量と変わらないようにするために出力指令値を再計算しないこと
【0022】
(第1の実施形態)-システム構成-
以下、発電装置1含む発電システム100を例に説明する。
図1は、発電システム100の主要構成を示す概略構成図である。発電装置1は、系統連系が可能な発電システムに使用される発電装置であれば、その種類は問わない。例えば太陽電池など、気象条件などの外部環境によって発電量が変化しやすい発電装置が好適である。
【0023】
発電システム100は、複数の発電装置1(1a、1b、・・・、1n)と、各発電装置1の発電量を制御する複数の発電制御装置2(2a、2b、・・・、2n)とを備える。なお、「a、b、・・・、n」などの添え字で表した各要素は省略する場合がある。例えば、それぞれの発電装置1という表記は、文脈上適切であればそれぞれの発電装置1a、1b、・・・、1nという意味を表す。
【0024】
発電装置1が太陽電池である場合、1つの発電装置1(例えば1a)が複数の太陽電池パネルのユニット、或いはアレイで構成される。1つの発電装置とこの発電装置を制御する1つの発電制御装置2とで1つの発電単位を構成する。
【0025】
それぞれの発電装置1の発電能力や発電制御装置2の制御能力(容量)は、いずれも同一でなくてもよい。例えば設置条件、製造者、使用条件、累積使用年数等が異なっていてもよい。さらに、発電装置1の発電量も同一ではなく、日照条件の違い等により、発電制御装置2の出力はそれぞれ異なることが通常である。このように、発電装置1自体の発電能力の固体差、日照量、温度等の周囲環境条件、設置場所、時間に依存して、各発電制御装置2からの出力電力は、それぞれの発電制御装置2ごとに異なる時間的推移を示す。
【0026】
発電制御装置2は、発電装置1からの出力が直流電力の場合、直流電力を交流電力に変換すると共に、各発電制御装置に接続された発電装置1の発電電力を個別に制御し、与えられた出力指令値以下の範囲で最大化する。例えば、発電装置1が太陽電池である場合、発電制御装置は、MPPT法などの既知のアルゴリズムを用いて出力指令値の範囲内で最大の電力が得られるように出力制御する。
【0027】
受変電部3は、複数の電力線Lb(Lb2a、Lb2b、・・・、Lb2n)と、電力会社等からの商用電力系統4につながる電力線L4とが、いずれも電力線L5を介して負荷5(5a、5b、・・・、5m(mは負荷の数))と電気的に接続されている。
【0028】
制御端末6は、信号線s9を介して電力計9から負荷5の消費電力を取得する。商用電力系統4側に電力計を設けている場合は、発電制御装置の総発電電力と商用電力系統4からの電力から消費電力を算出してもよい。
計測端末6は、通常動作では、信号線s2を介して各発電制御装置の出力電力を順次取得し、必要な制御を行う動作を繰り返していてもよいが、これに代えて或いはこれに加えて、1つ又は(全部ではない)複数の特定の発電制御装置のみを選択(ピックアップ)し、選択された発電制御装置に対して個別に制御を加えることが本発明の基本的な考え方となっている。
【0029】
制御端末6は、各発電制御装置に送出するための出力指令値を計算し、出力指令値を適切なタイミングで送出することができる。
【0030】
負荷5の消費電力は、電力線L5に設けられた電力計9により直接計測することも可能である。しかし、商用電力系統4からの供給電力と各発電制御装置2からの出力電力を合計した総発電量とから計算により求めてもよい(但し、この場合の問題については第4の実施形態において説明する。)。なお、本明細書において負荷5は複数である場合を含むが単に「消費電力」という場合、個々の負荷5(5a、5b、・・・、5m)の消費電力の総和を意味する。
【0031】
図1では、消費電力の総和は、変動する消費電力を正確に計測するために、電力計9を用いて直接計測する構成とした。
【0032】
図2は、制御端末6の主要な機能ブロックを示す構成図である。なお、図示は省略するが制御端末6にはMPUやクロック、メモリ、通信インターフェースなど、図2に示す機能ブロックを実現するために必要なハードウェア構成が含まれる。
【0033】
図2に示すように、制御端末6は、信号線s9にそれぞれつながる各電力計9と通信を行うための計測用入出力部61、各種の演算処理を行う処理部62(CPU)、取得した電力値等を記憶する記憶部63及び制御に必要な信号の入出力を行う制御用入出力部64を備える。
【0034】
制御端末6と発電制御装置2、及び制御端末6と電力計9との間の通信は、それぞれ信号線s2及びs9により行うことができる。
【0035】
発電装置1で発電された電力は、発電制御装置2により商用電力系統4との系統連系が可能な交流電力として出力される。制御端末6は、信号線s2を介して各発電制御装置の出力電力を取得する。また、制御端末6は、各時刻における各発電制御装置2からの出力電力(実発電電力)を合計した「総発電量」を算出することができる。
【0036】
なお、逆潮流を回避するために、電力線L4に逆電力継電器(RPR)10をさらに設置してもよい。発電制御装置等に予期せぬ故障等の異常が発生した場合等に対応が可能となる。
【0037】
逆電力継電器10が解列することなく逆潮流を回避するためには、負荷5に供給される電力が負荷5の消費電力を超えないように、出力指令値によって定められる各発電制御装置の発電電力の上限値の総和である「総発電可能電力」を算出し、「総発電量」が「総発電可能電力」以下となるように制御しなければならない。
【0038】
負荷5の消費電力は、時間の関数であるため、例えば、総発電量と消費電力との差が小さくなると逆潮流が発生しやすくなる。そこで、制御端末6は、各発電制御装置2に対して出力指令値を送り、各発電制御装置が発電可能な上限値を小さくして、発電の制御を強める。他方、総発電量と消費電力との差が大きくなると、逆潮流が発生しにくくなる。そこで、制御端末6は、各発電制御装置2に対して出力指令値を送り、各発電制御装置が発電可能な上限値を大きくして、発電の制御を緩める。
【0039】
本実施形態の特徴の1つは、以下に説明するように、複数の発電装置1及び複数の発電制御装置2で構成される分散型の発電システムにおいて、各発電制御装置に対する出力指令値を、一律に設定するのではなく、一定のアルゴリズムに従って特定の発電制御装置を選択し、選択された発電制御装置に対して最適な出力指令値を個別に計算し、設定する点にある。従って、理論的には、異なる種類の発電装置(例えば、風力発電装置と太陽光発電装置その他の発電装置)を混在させることも可能である。
【0040】
ここで総発電可能電力の計算は、公知の方法により決定することができる。例えば、1つ前のサイクルの時刻(t=t0)の消費電力から一定のマージン(余裕度)分を差し引いた値が出力電力となるような出力指令値としてもよいし、消費電力の関数として計算される値を出力指令値としてもよい。現在時刻(t=t1)における総発電量と、いずれかの時点における負荷の消費電力に基づいて、現在時刻(t=t1)における総発電可能電力を求めることができる限り、計算方法は限定されない。
【0041】
制御端末6は、処理部62において計算された現在時刻(t=t1)の総発電可能電力に基づき、現在時刻(t=t1)における各発電制御装置2(2a、2b、・・・、2n)に対する「出力指令値」を求め、出力指令値を送出する。この出力指令値は、各発電制御装置2が出力することが許容される電力の上限値を発電制御装置ごとに与えられるものであり、次のサイクル又はそれ以降のいずれかのタイミングで各発電制御装置2に反映されるが必ずしも実際の発電量を意味しない。反映されるタイミングは発電制御装置の構成や仕様等による。
【0042】
太陽光発電装置を例にとれば、曇天時など、気象条件によっては実際の発電量が、出力指令値によって指定される出力電力の上限値に満たない場合がある。具体的には、例えば、定格出力の80%を出力するように出力指令値を設定しても、実際の発電量が50%に満たないことはしばしば生じうる。系統連系システムではこのような場合、不足電力は系統側から補う。
【0043】
そのため、制御端末6は、各発電制御装置2の実際の発電量に基づき、総発電量が少しでも大きくなるように制御することが好ましい。
【0044】
図2において、制御端末6は、制御フローを実行するプログラムを記憶部63に記憶しており、処理部62は、記憶部63に記憶されたプログラムを実行し、各発電制御装置2に送出するための出力指令値を計算する。
【0045】
なお、出力指令値は、定格電力に対する比として定義してもよいが、発電上限値そのものであってもよい。指令値を定格電力に対する比として定義する場合、指令値に定格電力を乗じた値が発電上限値として計算される。この場合、出力指令値は0以上1以下の無名数(百分率で表すと0%~100%)となる。しかし、以下の例では説明を簡単にするため、「出力指令値」という場合には、例えば30kWといった発電上限値そのものを意味するものとする。
【0046】
(第2の実施形態)-第1の制御方法-
図3図6を用いて発電制御方法について説明する。図3は、第1の実施形態による制御端末6を用いた発電システム100の発電制御方法を示す第2の実施形態の主要なフロー図である。
図4図5は、いずれも、制御を強める場合((a)ケースC1-1、(b)ケースC1-2)において、各発電制御装置に対する出力指令値と実発電電力の関係を示す概念図である。
図6は、制御を弱める場合((c)ケースC1-3)において、各発電制御装置に対する出力指令値と実発電電力の関係を示す概念図である。
図4図6において、点線はいずれも各発電制御装置に設定される出力指令値を、ハッチングされた領域の上端部はいずれも各発電制御装置の実発電電力を示す。
【0047】
なお、発電制御装置への指令値の送信は、間歇的に行われる。時刻t=t0は1つ前のサイクルの時刻、時刻t=t1は出力指令値を再計算する現在時刻を意味するものとする。t1=t0+Δt(Δtは発電制御システムにおける「サンプリング間隔」)と表される。なお、制御によっては、サンプリング間隔は必ずしも一定でなくてよい。
【0048】
簡単のため、ケースC1-1(図4)及びケースC1-2(図5)では、2つの発電制御装置2(2a,2b)に対する制御について説明し、ケースC1-3(図6)では3つの発電制御装置2(2a,2b,2c)に対する制御について説明する。発電制御装置の数が増えた場合も同様の制御が可能である。
【0049】
なお、発電システム100の初期状態(または発電システム100の立ち上げ時)は図示していないが、発電制御装置2の出力指令値の初期値は、例えば、総発電可能電力を発電制御装置の数で等分配するように設定してもよく、もちろんそれ以外の設定を行ってもよい。この点は後述する第3の実施形態についても同様である。
【0050】
[(a)ケースC1-1](制御を強める場合1)
図4に示すケースC1-1は、発電制御装置に対する出力制御を「強める」場合の例である。例えば、消費電力が急激に低下した際など、発電電力が消費電力を上回って逆潮流が発生する条件を満たす場合に速やかに実行される。
【0051】
1つ前のサイクルの時刻(t=t0)において、発電制御装置2aの出力指令値が80kW、実発電電力30kWであり、発電制御装置2bの出力指令値が60kW、実発電電力30kWであったとする。すなわち、総発電可能電力は140kW(80kW+60kW)、総発電量は実発電電力の合計値である60kW(30kW+30kW)であったとする。
【0052】
次に、1つ前のサイクルの時刻(t=t0)からΔt秒後の現在時刻(t=t1)において、総発電可能電力が70kWに低下した場合の制御について検討する。
【0053】
<C1-1の動作(図4)>
・時刻t=t0(1サイクル前)
(発電制御装置2a)
出力指令値 80kW、実発電電力 30kW
(発電制御装置2b)
出力指令値 60kW、実発電電力 30kW

・時刻t=t1(現在)
(発電制御装置2a)
出力指令値 10kW、実発電電力 30kW→10kW(※見込み)
(発電制御装置2b)
出力指令値 60kW、実発電電力 30kW
【0054】
制御端末6は、1つ前のサイクルの時刻(t=t0)において設定されている総発電可能電力と、現在時刻(t=t1)における総発電可能電力とを比較し、「低下する」か、「低下しない」か、を判断する。
「低下する」と判断された場合は、複数の発電制御装置の中から現在時刻(t=t1)において「実発電電力が最大」である発電制御装置を選択する。但し、ケースC1-1のように、実発電電力が最大である発電制御装置が複数存在する場合、予め定めた規則(例えば発電制御装置の設置番号順等)により、少なくとも1つの発電制御装置(例えば2a)を選択する。いま、制御端末6は発電制御装置2aを選択したとする。
但し、複数の制御装置をグループ化するなどして、一度にまとめて選択してもよい。或いは、1つの発電制御装置を選択することを繰り返すことにより、実際に発電制御装置に指令値を送る際には複数台の発電制御装置に対して一度に指令値を送出することが好ましい。
【0055】
制御端末6は、変更前(すなわちt=t0の時点)における発電制御装置2aの出力指令値(80kW)を始点として、発電制御装置2aの出力指令値低下量だけその出力指令値を低下(変更)させる。
【0056】
ここで、出力指令値低下量とは、1つ前のサイクルの時刻(t=t0)における総発電可能電力から現在時刻(t=t1)における総発電可能電力を引いた値と定義する。
【0057】
ケースC1-1の例では、t=t0における総発電可能電力が140kWであり、t=t1における総発電可能電力は70kWであるから、出力指令値低下量は70kWと計算される。制御端末6は、選択された発電制御装置2aの1つ前のサイクルの時刻(t=t0)における出力指令値である80kWを始点としてそこから70kW減算し、現在時刻(t=t1)における出力指令値は、10kW(=80kW-70kW)とする。
【0058】
その結果、発電制御装置2aの実発電電力は10kWに制限されることになり、次のサイクルの時刻(t=t2)において各発電制御装置の出力指令値の合計値は140kW(80kW+60kW)から70kW(10kW+60kW)に低下し、総発電量は60kW(30kW+30kW)から40kW(10kW+30kW)に低下することが見込まれる。
なお、出力指令値が変更された結果が反映されて実発電電力=10kWが実現されるのは、現在時刻(t=t1)よりも後のタイミングである。すなわち、通常動作では次のサイクルの時刻(t=t2)で期待される計測値であって、計算時点では、結果として総発電量が低下したかどうかの確認は含まない。
【0059】
なお、前のサイクルでの判定結果が次のサイクルで選択される発電制御装置に影響することはない。
【0060】
以上の結果、総発電可能電力が70kWに設定された状態で、総発電量が60kWから40kWに低下する制御が行われた。
【0061】
次に、ケースC1-1の制御の例を、図3のフローチャートに従って説明する。

(ステップSa1)
制御端末6は、時刻t=t0における負荷5の消費電力を取得する。
(ステップSa2)
次に、制御端末6は、取得した負荷の消費電力と現在時刻(t=t1)の総発電量とに基づき、現在時刻(t=t1)における総発電可能電力を求める。
(ステップSa3)
現在時刻(t=t1)における総発電可能電力が、1つ前のサイクルの時刻(t=t0)(t=t0)から低下したか否かを判定する。例えば、時刻t=t1の総発電可能電力から時刻t=t0の総発電可能電力を引き算して0より小さくなれば低下と判定する。

(ステップSa3-1-1)-制御を強める場合-
ステップSa3において、総発電可能電力を低下させると判定された場合、制御を強める必要があると判断する。この場合、制御端末6は、出力指令値低下量を設定する。ケースC1-1の例では、70kWの低下であるため、出力指令値低下量として70kWが設定される。
(ステップSa3-1-2)
次に、「実発電電力」が最大である発電制御装置を選択する。ケースC1-1の例では、発電制御装置2a、2bの実発電電力がいずれも等しいため、予め定めたルールに従い、1つを選択する。ここで、発電制御装置2aが選択されたとする。
(ステップSa3-1-3)
選択された発電制御装置2aの時刻t=t0における「出力指令値」(80kW)を始点として出力指令値低下量(70kW)だけ低下させる。その結果、制御端末6は、選択された発電制御装置2aの時刻t=t1の出力指令値を10kWに低下(変更)させる。
(ステップSa3-1-4)
出力指令値低下量70kWを全て低下させることができたか否かを判定する。ケースC1-1では、ステップSa3-1-3において出力指令値低下量である70kWを全て低下させることができたので、目標到達の判定結果がYesとなり、ステップSa1に戻ることになる。
【0062】
[(b)ケースC1-2]制御を強める場合2
図5に示すケースC1-2は、ケースC1-1と同様に、発電制御装置に対する出力制御を「強める」場合であるが、ケースC-1とは異なり、総発電可能の低下幅が大きいため、1つの発電制御装置だけでは処理が終わらないケースである。
【0063】
1つ前のサイクルの時刻(t=t0)である時刻t=t0において、発電制御装置2aの出力指令値が80kW、実発電電力30kWであり、発電制御装置2bの出力指令値が60kW、実発電電力30kWであったとする。すなわち、総発電可能電力は140kW(80kW+60kW)、総発電量は実発電電力の合計値である60kW(30kW+30kW)であったとする。
【0064】
次に、1つ前のサイクルの時刻(t=t0)からΔt秒後の現在時刻(t=t1)において、総発電可能電力が50kWに低下した場合の制御について検討する。
【0065】
<C1-2の動作(図5)>
・時刻t=t0
(発電制御装置2a)
出力指令値 80kW、実発電電力 30kW
(発電制御装置2b)
出力指令値 60kW、実発電電力 30kW

・時刻t=t1
(発電制御装置2a)
出力指令値 0kW、実発電電力 30kW→0kW(※見込み)
(発電制御装置2b)
出力指令値 50kW、実発電電力 30kW
【0066】
制御端末6は、1つ前のサイクルの時刻(t=t0)において設定されている総発電可能電力と、現在時刻(t=t1)における総発電可能電力とを比較し、「低下する」か、「低下しない」か、を判断する。
「低下する」と判断された場合は、複数の発電制御装置の中から現在時刻(t=t1)において「実発電電力が最大」である発電制御装置を選択する。但し、ケースC1-2のように、実発電電力が最大である発電制御装置が複数存在する場合、予め定めた規則(例えば発電制御装置の設置番号順等)により、少なくとも1つの発電制御装置(例えば2a)を選択する。いま、制御端末6は発電制御装置2aを選択したとする。
但し、複数の制御装置をまとめて選択してもよい。或いは、1つの発電制御装置を選択することを繰り返すことにより、実際に発電制御装置に指令値を送る際には複数台の発電制御装置に対して一度に指令値を送出することが好ましい。
【0067】
制御端末6は、変更前(すなわちt=t0の時点)における発電制御装置2aの出力指令値(80kW)を始点として、発電制御装置2aの出力指令値低下量だけその出力指令値を低下(変更)させる。
【0068】
ここで、出力指令値低下量とは、1つ前のサイクルの時刻(t=t0)における総発電可能電力から現在時刻(t=t1)における総発電可能電力を引いた値と定義する。
【0069】
ケースC1-2の例では、t=t0における総発電可能電力が140kWであり、t=t1における総発電可能電力は50kWであるから、出力指令値低下量は90kWと計算される。制御端末6は、選択された発電制御装置2aの1つ前のサイクルの時刻(t=t0)における出力指令値である80kWを始点としてそこから90kW減算しようとすると、マイナスになる。そこで、制御端末6は、発電制御装置2aの出力指令値を80kWから90kW減算する代わりに80kWだけ減算して0kW(=80kW-80kW)に低下(変更)させると共に、未達分(余り)である10kWを新たな出力指令値低下量として記憶する。
【0070】
そして、この未達(10kW)分を次に実発電電力が小さい発電制御装置2bに適用し、1つ前のサイクルの(t=t0)の出力指令値(60kW)から未達分(10kW)を低下させる。
【0071】
その結果、発電制御装置2aの実発電電力は0kWに制限されることになり、次のサイクルの時刻(t=t2)において各発電制御装置の出力指令値の合計値は140kW(80kW+60kW)から50kW(10kW+50kW)に低下し、総発電量は、60kW(30kW+30kW)から30kW(0kW+30kW)に低下することが期待される。
【0072】
ケースC1-2の場合、選択された一つ目の発電制御装置だけでは目標の低下幅に達しないため、未達分については次に実発電電力が小さい発電制御装置又は先ほど選択されなかった他の発電制御装置の出力指令値が変更される。
【0073】
以上の結果、総発電可能電力が50kWに設定された状態で、総発電量が60kWから30kWに低下することが期待される。
なお、出力指令値が変更された結果が反映されて実発電電力=0kWが実現されるのは、現在時刻(t=t1)よりも後のタイミングである。すなわち、通常動作では次のサイクルの時刻(t=t2)で期待される計測値であって、計算時点では、結果として総発電量が低下したかどうかの確認は含まない。
【0074】
次に、ケースC1-2の制御の例を、図3のフローチャートに従って説明する。但し、(ステップSa1)~(ステップSa3)は、ケースC1-1と同じであるため、省略する。

(ステップSa3-1-1)-制御を強める場合-
ケースC1-2の例では、出力指令値低下量として90kW(140kW-50kW)が設定される。
(ステップSa3-1-2)
次に、実発電電力が最大である発電制御装置を選択する。ケースC1-2の例では、発電制御装置2a、2bの実発電電力がいずれも等しいため、予め定めたルールに従い、1つを選択する。ここで、発電制御装置2aが選択されたとする。
(ステップSa3-1-3)
最初に選択された発電制御装置2aの時刻t=t0における「出力指令値」(80kW)を始点として出力指令値低下量(80kW)だけ低下させると共に、未達分(余り)として10kWを記憶する。その結果、制御端末6は、選択された発電制御装置2aの時刻t=t1の出力指令値を0kWに低下(変更)させる。
(ステップSa3-1-4)
出力指令値低下量(90kW)を全て低下させることができたか否かを判定する。ケースC1-2では、ステップSa3-1-3において出力指令値低下量(90kW)を全て低下させることができず、目標未達分(10kW)が残っているので、目標到達の判定結果がNoとなり、ステップSa3-1-5を実行する。
(ステップSa3-1-5)
ステップSa3-1-5では、目標未達分を適用するための発電制御装置を選択する。この場合、原則としては2番目に実発電電力が大きい発電制御装置を選択する。但し、ケースC1-2の例では、実発電電力が最大である発電制御装置(2a、2b)が複数存在するため、ステップSa3-1-2において、予め定めたルールに従い、発電制御機能2aが選択されていたので、ここでは、先ほど選択されなかった発電制御装置2bが選択される。その後、ステップSa3-1-3を実行する。
【0075】
[(c)ケースC1-3]制御を弱める場合
図6に示すケースC1-3は、発電制御装置に対する出力制御を「弱める」場合の例である。例えば、消費電力が急激に「増加」した際など、発電電力が消費電力を下回ってきた場合に実行される。
【0076】
1つ前のサイクルの時刻(t=t0)において、発電制御装置2aの出力指令値が30kW、実発電電力30kWであり、発電制御装置2bの出力指令値が60kW、実発電電力30kWであり、発電制御装置2cの出力指令値が30kW、実発電電力30kWであったとする。すなわち、総発電可能電力は120kW(30kW+60kW+30kW)、総発電量は実発電電力の合計値である90kW(30kW+30kW+30kW)であったとする。
【0077】
次に、1つ前のサイクルの時刻(t=t0)の時刻からΔt秒後の時刻t=t1において、総発電可能電力が150kWに増加した場合の制御について検討する。
【0078】
<C1-3の動作(図6)>
・時刻t=t0
(発電制御装置2a:定格出力100kW)
出力指令値 30kW、実発電電力 30kW
(発電制御装置2b:定格出力100kW)
出力指令値 60kW、実発電電力 30kW
(発電制御装置2c:定格出力100kW)
出力指令値 30kW、実発電電力 30kW

・時刻t=t1
(発電制御装置2a:定格出力100kW)
出力指令値 60kW、実発電電力 30kW→40kW(※見込み)
(発電制御装置2b:定格出力100kW)
出力指令値 60kW、実発電電力 30kW
(発電制御装置2c:定格出力100kW)
出力指令値 30kW、実発電電力 30kW
【0079】
制御端末6は、1つ前のサイクルの時刻(t=t0)の時刻(t=t0)において設定されている総発電可能電力と、現在時刻(t=t1)における総発電可能電力とを比較し、「低下する」か、「低下しない」か、を判断する。
「低下しない」と判断された場合は、複数の発電制御装置の中から現在時刻(t=t1)において「実発電電力が最小」である発電制御装置を選択する。但し、ケースC1-3のように、実発電電力が最小である発電制御装置が複数存在する場合、予め定めた規則(例えば発電制御装置の設置番号順等)により、少なくとも1つの発電制御装置(例えば2a)を選択する。いま、制御端末6は発電制御装置2aを選択したとする。
但し、複数の制御装置をまとめて選択してもよい。或いは、1つの発電制御装置を選択することを繰り返すことにより、実際に発電制御装置に指令値を送る際には複数台の発電制御装置に対して一度に指令値を送出することが好ましい。
【0080】
制御端末6は、変更前(すなわちt=t0の時点)における発電制御装置2aの出力指令値(30kW)を始点として、発電制御装置2aの出力指令値の増加分(出力指令値増加量だけその出力指令値を増加(変更)させる。
【0081】
ここで、出力指令値増加量とは、現在時刻(t=t1)における総発電可能電力から1つ前のサイクルの時刻(t=t0)における総発電可能電力を引いた値と定義する。
【0082】
ケースC1-3の例では、t=t1における総発電可能電力が150kWであり、t=t0における総発電可能電力は120kWであるから、出力指令値増加量は30kWと計算される。制御端末6は、選択された発電制御装置2aの1つ前のサイクルの時刻(t=t0)における出力指令値である30kWを始点としてそこから30kW増加し、現在時刻(t=t1)における出力指令値は、60kW(=30kW+30kW)とする。
【0083】
ここで、出力指令値とは「発電可能な最大電力」、すなわち発電制御装置の出力上限値を意味する。そのため、気象条件が十分に良好な場合は最大電力を出力することができるが、逆に、気象条件が十分に良好とは言えない場合は出力指令値によって規定される最大電力を上限としてそれ以下の電力を出力する。
【0084】
いま、気象条件、例えば太陽電池を例にとると、日照量が曇天であったりや太陽電池パネルが日陰にかかる等の理由により、発電制御装置2aは、現在時刻t=t1において、新たに設定された出力指令値により定義された60kWよりも小さい40kWを出力したとする。このとき、総発電量は、発電制御装置2a、2b及び2cの発電量の総和として求められることから、100kW(40kW+30kW+30kW)と計算される。
【0085】
また、各発電制御装置の出力指令値の合計値は120kW(30kW+60kW+30kW)から例えば150kW(60kW+60kW+30kW)に増加することが期待される。(「例えば」としたのは気象条件に影響するからである。)
なお、出力指令値が変更された結果が反映されるのは、現在時刻(t=t1)よりも後のタイミングである。すなわち、通常動作では次のサイクルの時刻(t=t2)以降に期待される計測値であって、計算時点では、結果として総発電量が増加したかどうかの確認は含まない。しかし、発電電力の上限である出力指令値が増加したことにより、気象条件などがそろうことでより大きな電力を発電することが可能となる。
【0086】
ケースC1-3の場合、最初に選択した発電制御装置2aの出力指令値(30kW)に出力指令値増加量(30kW)を加えても定格出力である100kW以下であったため、発電制御装置2bの出力指令値は変更され、未達分は存在しない。そこで、制御端末6は、出力指令値の変更を終了する。もし未達分があれば、未達分については次に実発電電力が小さい発電制御装置又は先ほど選択されなかった他の発電制御装置の出力指令値が変更される。
【0087】
以上の結果、総発電可能電力が150kWに設定された状態で、総発電量が90kWから100kWに増加する制御が行われた。
【0088】
次に、ケースC1-3の制御を、図3のフローチャートに従って説明する。但し、(ステップSa1)~(ステップSa3)は、ケースC1-1と同じであるため、省略する。
【0089】
(ステップSa3-2-1)-制御を弱める場合-
ケースC1-3の例では、出力指令値増加量として30kW(150kW-120kW)が設定される。
(ステップSa3-2-2)
次に、「実発電電力」が最小である発電制御装置を選択する。ケースC1-3の例では、発電制御装置2a、2b、2cの実発電電力がいずれも等しいため、予め定めたルールに従い、1つを選択する。ここで、発電制御装置2aが選択されたとする。
(ステップSa3-2-3)
最初に選択された発電制御装置2aの時刻t=t0における出力指令値(30kW)を始点として出力指令値増加量(30kW)だけ増加させる。その結果、出力指令値増加量として30kWが設定される。
(ステップSa3-2-4)
出力指令値増加量(30kW)を全て低下させることができたか否かを判定する。ケースC1-3では、ステップSa3-2-3において出力指令値増加量(30kW)を全て増加させることができ、目標未達分は残っていないので、目標到達の判定結果がYesとなり、ステップSa1に戻ることになる。
なお、定格出力を越える未達分が残り、目標到達の判定結果がNoの場合は、ステップSa3-2-5を実行し、未達分に対して同様の処理を行う。
【0090】
また、発電制御装置の数が更に多い場合は、目標未達分を適用するための発電制御装置を順次選択する。なお、ステップSa3-2-1は、ステップSa3において「総発電可能電力が低下しなかった場合」に進むステップであるため、発電量が低下した場合に限らず、総発電可能電力が時刻t=t0とt=t1とで変わらない場合にもステップSa3-2-1が実行される。その場合、出力指令値増加量は0となり、ステップSa1に戻ることになる。
【0091】
(第3の実施形態)-第2の制御方法-
上述した第2の実施形態では、「実発電電力」ではなく「総発電可能量の変化」に着目して制御対象となる発電制御装置を選択し、サイクル間での総発電可能量の差分を出力指令値の変更量として選択された発電制御装置に適用していた。この場合、各発電制御装置の実際の発電量を考慮しない結果、逆潮流の抑制には効果的である反面、全体的に発電がやや抑制的となる。
【0092】
第3の実施形態は、第2の実施形態よりもさらに改善された制御方法を示すものであり、「実発電電力」に基づいて制御対象の優先度を判定することにより、上述した第2の実施形態と比較して、発電効率の低下を一層抑える方法を提示するものである。発電システム100の構成は第1の実施形態と同様である。
【0093】
図7図11を用いて発電制御方法について説明する。図7は、第1の実施形態による制御端末6を用いた発電システム100の発電制御方法を示す第3の実施形態の主要なフロー図である。
図8は、制御を強める場合((d)ケースC2-1)において、各発電制御装置に対する出力指令値と実発電電力の関係を示す概念図である。
図9は、制御を強める場合(総発電可能電力を低下させる場合)において、各発電制御装置に対する出力指令値と実発電電力の関係を示す概念図である。
図10図11は、いずれも、制御を弱める場合(総発電可能電力を増加させる場合)において、各発電制御装置に対する出力指令値と実発電電力の関係を示す概念図である。
【0094】
図7図11において、点線はいずれも各発電制御装置に設定される出力指令値を、ハッチングされた領域の上端部はいずれも実発電電力を示す。
図9は、制御を強める場合((e)ケースC2-2)において、各発電制御装置に対する出力指令値と実発電電力の関係を示す概念図である。
図10図11は、いずれも、制御を弱める場合((f)ケースC2-3)において、各発電制御装置に対する出力指令値と実発電電力の関係を示す概念図である。
図8図11において、点線はいずれも各発電制御装置に設定される出力指令値を、ハッチングされた領域の上端部はいずれも実発電電力を示す。
【0095】
簡単のため、ケースC2-1(図8)及びケースC2-2(図9)では、2つの発電制御装置2(2a,2b)に対する制御について説明し、ケースC2-3(図10図11)では3つの発電制御装置2(2a,2b,2c)に対する制御について説明するが、発電制御装置の数が増えた場合も同様の制御が可能である。
【0096】
なお、発電システム100の初期状態(または発電システム100の立ち上げ時)は図示していないが、発電制御装置2の出力指令値の初期値は、例えば、総発電可能電力を発電制御装置の数で等分配するように設定してもよく、もちろんそれ以外の設定を行ってもよい。この点は上述した第2の実施形態と同様である。
【0097】
[(d)ケースC2-1](制御を維持する場合)
図8に示すケースC2-1は、逆潮流が発生しない条件下で不要な発電量の低下を抑えるために1つ前のサイクルの時刻(t=t0)の制御を現在時刻(t=t1)においても維持するアルゴリズムを示すものである。ケースC2-1は、第2の実施形態における「ケースC1-1」と対比しながら説明する。
【0098】
1つ前のサイクルの時刻(t=t0)において、発電制御装置2aの出力指令値が80kW、実発電電力30kWであり、発電制御装置2bの出力指令値が60kW、実発電電力30kWであったとする。すなわち、総発電可能電力は140kW(80kW+60kW)、総発電量は実発電電力の合計値である60kW(30kW+30kW)であったとする。
【0099】
次に、1つ前のサイクルの時刻(t=t0)からΔt秒後の現在時刻(t=t1)において、総発電可能電力が70kWに低下する場合の制御について検討する。
【0100】
すなわち、1つ前のサイクルの時刻(t=t0)の条件と、t=t1における総発電量可能電力の計算結果はいずれもケースC1-1と同様の場合を想定する。
【0101】
<C2-1の動作(図8)>
・時刻t=t0
(発電制御装置2a)
出力指令値 80kW、実発電電力 30kW
(発電制御装置2b)
出力指令値 60kW、実発電電力 30kW

・時刻t=t1
(発電制御装置2a)
出力指令値 80kW(※変更しない)、実発電電力 30kW(※維持)
(発電制御装置2b)
出力指令値 60kW、実発電電力 30kW(※維持)
【0102】
第3の実施形態では、総発電量が以下の3つの条件を満たす場合には、1つ前のサイクルの時刻(t=t0)の出力指令値を維持する。
I.現在時刻(t=t1)における総発電量が現在時刻(t=t1)における総発電可能電力よりも大きくない値であること(Sb3-1)
II.現在時刻(t=t1)において、全ての発電制御装置がそれぞれに設定された出力指令値以下で稼働していること(Sb3-2)
III.現在時刻(t=t1)における総発電量が1つ前のサイクルの時刻(t=t0)における総発電量よりも増加していないこと(Sb3-3)
【0103】
以上3つの条件を満たす場合には、いずれの発電制御装置に対して出力指令値を1つ前のサイクルの時刻(t=t0)より高くしても、発電量の増加は期待できないからである。
【0104】
1つ前のサイクルの時刻(t=t0)において、制御端末6は、総発電量が60kW、総発電可能電力が140kWであった場合に、現在時刻(t=t1)において総発電可能電力が70kWに変化したとする。
【0105】
この場合、第2の実施形態に示す制御(C1-1)であれば、総発電可能電力の低下を直ちに反映させるため、総発電量が制御前(t=t0)よりも小さくなってしまう結果となっていた。しかし、現在時刻(t=t1)における総発電可能電力(70kW)と現在時刻(t=t1)における総発電量(60kW)とを比較すると、現在時刻(t=t1)の総発電量は、現在時刻(t=t1)における総発電可能電力をすでに下回っている(条件I.)。さらに、発電制御装置2a及び2bは、いずれも出力指令値よりも小さい実発電電力で稼働している(条件II.)。そして、現在時刻t=t1(=t0+Δt)における総発電量が1つ前のサイクルの時刻(t=t0)における総発電量よりも増加していない(条件III.)。
従って、ケースC2-1では、このまま運転を維持することが可能であると判断でき、制御を維持することにより、発電量の低下を抑えることができる。
【0106】
次に、ケースC2-1の制御を、図7のフローチャートに従って説明する。
(ステップSb1)
制御端末6は、時刻t=t0における負荷5の消費電力を取得する。
(ステップSb2)
次に、制御端末6は、取得した負荷の消費電力と現在時刻(t=t1)における総発電量とに基づき、現在時刻(t=t1)における発電システム100全体の総発電可能電力を求める。
(ステップSb3-1)
次に、現在時刻t=t1における総発電量が現在時刻(t=t1)における総発電可能電力よりも大きいか否かを判定する。現在時刻(t=t1)における総発電量が現在時刻(t=t1)における総発電可能電力よりも大きい場合(Yes)には制御を強める必要があると判断してステップSb3-1-1を実行し、逆に総発電量が大きくない場合(No)には制御を弱める必要があると判断してステップSb3-2-1を実行する。
そして、結果がYesである(現在時刻(t=t1)における総発電量が時刻t=t1における総発電可能電力よりも大きい)場合、「制御を強める」必要があると判断されるため、(ステップSb3-1-1)を実行する。
【0107】
(ステップSb3-2)
ケースC2-1の場合、Sb3-1の判定結果はNoであるため、Sb3-2を実行する。
ステップSb3-2では、全ての発電制御装置がそれぞれに設定された出力指令値以下で稼働しているか否かを判定する。Sb3-2の判定結果がYesであれば、現在時刻(t=t1)の総発電電力が、1つ前のサイクルの時刻(t=t0)と比較して増加が見られるか否かを確認する(Sb3-3)。ここで、次のサイクルの時刻(t=t2)において総発電量が増加していなければ、これ以上出力指令値を増加させても実発電電力が増加する発電制御装置は存在しないと判断してステップSb1に戻る(ケースC2-1)。
この場合、制御指令値は変更せず、総発電量はそのまま維持される。なお、ステップSb3-3において、判定結果がNoすなわち「発電量が増加している」場合の動作の詳細については(f)ケースC3-3で詳細に説明する。
【0108】
[(e)ケースC2-2]制御を強める場合
図9に示すケースC2-2は、発電制御装置に対する出力制御を「強める」場合の例である。例えば、消費電力が急激に「低下」した際など、発電電力が消費電力を上回って逆潮流が発生する条件を満たす場合に速やかに実行される。
【0109】
ケースC1-2と同様に、発電制御装置に対する出力制御を「強める」場合に適用されるが、ケースC1-2とは異なり、実発電電力をベースに計算し、総発電量の低下を可能な限り抑えている点が異なる。
【0110】
1つ前のサイクルの時刻t=t0において、発電制御装置2aの出力指令値が80kW、実発電電力30kWであり、発電制御装置2bの出力指令値が60kW、実発電電力30kWであったとする。すなわち、発電システム100の総発電可能電力は140kW(80kW+60kW)、総発電量は出力指令値の合計値である60kW(30kW+30kW)であったとする。
【0111】
次に、1つ前のサイクルの時刻(t=t0)からΔt秒後の時刻(t=t1)において、総発電可能電力が50kWに低下する場合の制御について検討する。
【0112】
<C2-2の動作(図9)>
・時刻t=t0(1サイクル前)
(発電制御装置2a)
出力指令値 80kW、実発電電力 30kW
(発電制御装置2b)
出力指令値 60kW、実発電電力 30kW

・時刻t=t1(現在)
(発電制御装置2a)
出力指令値 20kW、実発電電力 30kW→20kW(※見込み)
(発電制御装置2b)
出力指令値 60kW、実発電電力 30kW
【0113】
制御端末6は、1つ前のサイクルの現在時刻(t=t1)における総発電量と、現在時刻(t=t1)における総発電可能電力と比較し、総発電量が総発電可能電力よりも大きいか否かを判定する。
【0114】
「総発電量が総発電可能電力よりも大きい」と判断された場合は、制御を強める必要があるため、複数の発電制御装置の中から現在時刻(t=t1)において「実発電電力が最大」である発電制御装置を選択する。但し、ケースC2-2のように、実発電電力が最大である発電制御装置が複数存在する場合、予め定めた規則(例えば発電制御装置の設置番号順等)により、少なくとも1つの発電制御装置(例えば2a)を選択する。いま、制御端末6は発電制御装置2aを選択したとする。
但し、複数の制御装置をまとめて選択してもよい。或いは、1つの発電制御装置を選択することを繰り返すことにより、実際に発電制御装置に指令値を送る際には複数台の発電制御装置に対して一度に指令値を送出することが好ましい。
【0115】
制御端末6は、選択された発電制御装置2aの「変更前(すなわちt=t0の時点)における実発電電力(30kW)」を始点として、発電制御装置2aの出力指令値低下量だけその出力指令値を低下(変更)させる。
【0116】
ここで、出力指令値低下量は、ケースC2-2の例では、現在時刻(t=t1)における総発電量(60kW)-現在時刻(t=t1)における総発電可能電力(50kW)(=10kW)と計算される。
【0117】
この場合、選択された発電制御装置2aにおける出力指令値=現在時刻(t=t1)における発電制御装置2aの実発電量(30kW)-出力指令値低下量(10kW)(=20kW)と計算される。
【0118】
その結果、発電制御装置2aの出力指令値及び実発電電力は、いずれも20kWに制限されることになり、次のサイクルの時刻(t=t2)において総発電電力は総発電可能電力と同じ値(50kW=20kW+30kW)まで低下することが期待される。
なお、出力指令値が変更された結果が反映されて実発電電力=20kWが実現されるのは、現在時刻(t=t1)よりも後のタイミングである。すなわち、通常動作では次のサイクルの時刻(t=t2)で期待される計測値であって、計算時点では、結果として総発電量が低下したかどうかの確認は含まない。
【0119】
以上の結果、総発電可能電力が50kWに設定された状態で、総発電量が140kWから50kWに低下する制御が行われた。
【0120】
次に、ケースC2-2の制御を、図7のフローチャートに従って説明する。但し、(ステップSb1)~(ステップSb3)は、ケースC2-1と同じであるため、省略する。

(ステップSb3-1-1)-総発電可能電力を低下させる場合-
ケースC2-1の場合、Sb3-1の判定結果はYesであるため、Sb3-1-1を実行する。
制御端末6は、出力指令値低下量を設定する。ケースC2-2の例では、出力指令値低下量は、10kW(60kW-50kW)が設定される。
(ステップSb3-1-2)
次に、「実発電電力」が最大である発電制御装置を選択する。ケースC2-2の例では、発電制御装置2aが選択される。
(ステップSb3-1-3)
選択された発電制御装置2aの現在時刻(t=t1)の実発電電力(30kW)から、出力指令値低下量(10kW)だけ低下させる。この計算により、制御端末6は、選択された発電制御装置2aの時刻t=t1の出力指令値を20kWに低下(変更)させる。
(ステップSb3-1-4)
低下量目標値であった10kWを全て低下させることができたか否かを判定する。ケースC1-2では、ステップSa3-1-3において出力指令値低下量である10kWを全て低下させることができ、目標未達分は0kWであるためで、目標到達の判定結果がYesとなり、ステップSb3-1に戻ることになる。
【0121】
なお、目標未達分が存在する場合、選択されなかった他の発電制御装置の中で実発電電力が最大の発電制御装置を選択し(Sb3-1-5)、未達分を適用するステップ(Sb3-1-3)を繰り返す。
【0122】
[(f)ケースC2-3]制御を弱める場合
図10図11に示すケースC2-3は、いずれも、発電制御装置に対する出力制御を「弱める」場合の例である。例えば、消費電力が急激に「増加」した際など、発電電力が消費電力を下回ってきた場合に実行される。
【0123】
ケースC1-3と同様に、発電制御装置に対する出力制御を「弱める」場合に適用されるが、ケースC1-3とは異なり、実発電電力をベースに計算し、総発電量を可能な限り増加させている点が異なる。
【0124】
1つ前のサイクルの時刻(t=t0)の時刻t=t0において、発電制御装置2aの出力指令値が30kW、実発電電力30kWであり、発電制御装置2bの出力指令値が60kW、実発電電力40kWであり、発電制御装置2cの出力指令値が30kW、実発電電力30kWであったとする。すなわち、発電システム100の総発電可能電力は120kW(30kW+60kW+30kW)、総発電量は実発電電力の合計値である100kW(30kW+40kW+30kW)であったとする。
【0125】
次に、1つ前のサイクルの時刻(t=t0)の時刻(t=t0)からΔt秒後の現在時刻(t=t1)において、総発電可能電力が150kWに増加する場合の制御について検討する。
【0126】
<C2-3の動作(図10図11)>
・時刻t=t0
(発電制御装置2a)
出力指令値 30kW、実発電電力 30kW
(発電制御装置2b)
出力指令値 60kW、実発電電力 40kW
(発電制御装置2c)
出力指令値 30kW、実発電電力 30kW

・時刻t=t1
(発電制御装置2a)
出力指令値 80kW、実発電電力 30kW→40kW(※見込み)
(発電制御装置2b)
出力指令値 60kW、実発電電力 40kW
(発電制御装置2c)
出力指令値 30kW、実発電電力 30kW

・時刻t=t2
(発電制御装置2a)
出力指令値 80kW、実発電電力 40kW
(発電制御装置2b)
出力指令値 60kW、実発電電力 40kW
(発電制御装置2c)
出力指令値 70kW、実発電電力 30kW→40kW(※見込み)
【0127】
制御端末6は、現在時刻(t=t1)における総発電量と、現在時刻(t=t1)における総発電可能電力と比較し、総発電量が総発電可能電力よりも大きいか否かを判定する。
【0128】
「総発電量が総発電可能電力よりも大きい」と判断されなかった場合は、制御を強める必要がないため、複数の発電制御装置の中から現在時刻(t=t1)において「出力指令値が最小」(※「実発電電力」ではない点に留意)である発電制御装置を選択する。但し、ケースC2-3のように、実発電電力が最小である発電制御装置が複数存在する場合、予め定めた規則(例えば発電制御装置の設置番号順等)により、少なくとも1つの発電制御装置(例えば2a)を選択する。いま、制御端末6は発電制御装置2aを選択したとする。
但し、複数の制御装置をまとめて選択してもよい。或いは、1つの発電制御装置を選択することを繰り返すことにより、実際に発電制御装置に指令値を送る際には複数台の発電制御装置に対して一度に指令値を送出することが好ましい。
【0129】
制御端末6は、選択された発電制御装置2aの「変更前(すなわちt=t0の時点)における実発電電力(30kW)」を始点として、発電制御装置2aの出力指令値増加量だけその出力指令値を増加(変更)させる。
【0130】
ここで、出力指令値増加量は、出力指令値増加量=現在時刻(t=t1)における総発電可能電力(150kW)-現在時刻(t=t1)における総発電量(100kW)(=50kW)と計算される。
【0131】
この場合、選択された発電制御装置2aにおける出力指令値=現在時刻(t=t1)における発電制御装置2aの実発電量(30kW)+出力指令値増加量(50kW)(=80kW)と計算される。
【0132】
その結果、現在時刻(t=t1)における発電制御装置2aの出力指令値は、80kWに設定される。
【0133】
但し、発電制御装置2aに新たに設定される出力指令値は上限値にすぎず、実際の発電量は新たな出力指令値(80kW)に満たない場合もある。例えば、発電制御装置2aの次のサイクルの時刻(t=t2)における実際の発電量は40kWであったとする。そうすると、次のサイクルの時刻(t=t2)においてステップSb3-2-2を実行し判定した結果として選択される発電制御装置2cに対して、次のサイクルの時刻(t=t2)における総発電可能電力(総発電可能電力が変更されていなければ現在時刻(t=t1)と同じ150kW)から、全ての発電制御装置の現在時刻(t=t1)の実発電電力(例えば40kW+40kW+30kW=110kW)を減算した値(40kW)を、時刻(t=t2)における実発電電力から増加させる(30kW+40kW=70kW)。
発電制御装置2cの出力指令値が時刻t=t2において70kWに増加した(制御が緩められた)ことにより、発電制御装置2cは例えば40kWを出力できるようになる。
【0134】
以上の結果、総発電可能電力が150kWに設定された状態で、t=t0における総発電量が100kWであったところ、t=t1において110W、t=t2において120kWまで増加する制御が行われることになる。但し、実際に発電量が増加するか否かは気象条件により、また反映されるタイミングは次のサイクル以降となる。
このように全ての発電制御装置の出力指令値が現在時刻(t=t1)における実発電電力よりも大きく設定されているため、発電装置の発電量が更に増加していくことも許容され、逆潮流が発生しない範囲で最大の発電量を出力できるようになる。
【0135】
次に、ケースC2-3の制御を、図7のフローチャートに従って説明する。但し、(ステップSb1)~(ステップSb2)は、ケースC2-1と同じであるため、省略する。 ステップSb3-1として、現在時刻(t=t1)における総発電量が時刻t=t1における総発電可能電力よりも大きいか否かを判定する。
【0136】
(ステップSb3-1)
ケースC2-3の場合、現在時刻(t=t1)における総発電量(100kW)が現在時刻(t=t1)における総発電可能電力(150kW)よりも小さい。すなわちSb3-1の判定結果はNoであるため、ステップSb3-2を実行する。
(ステップSb3-2)
ステップSb3-2では、現在時刻(t=t1)において、全ての発電制御装置がそれぞれに設定された出力指令値以下で稼働しているか否かを判定する。いま、発電制御装置2a、2cは、出力指令値と実発電電力が共に30kWであるから、実発電電力をさらに増加させる可能性がある。よって、ステップSb3-2の判定結果はNoとなり、「制御を弱める」ステップ(Sb3-2-1)を実行する。
(ステップSb3-2-1)
制御端末6は、出力指令値増加量を設定する。ケースC2-3の例では、出力指令値増加量は、現在時刻(t=t1)における総発電量100kWに対して現在時刻(t=t1)における総発電可能電力が150kWであるから、出力指令値増加量として50kW(150kW-100kW)が設定される。
(ステップSb3-2-2)
次に、「出力指令値」が最小である発電制御装置を選択する。但し、ケースC2-3のように、出力指令値が最小である発電制御装置が複数存在する場合、予め定めた規則(例えば発電制御装置の設置番号順等)により、少なくとも1つの発電制御装置(例えば2a)を選択する。いま、制御端末6は発電制御装置2aを選択したとする。
(ステップSb3-2-3)
選択された発電制御装置2aの現在時刻(t=t1)における実発電電力(30kW)から、出力指令値増加量(50kW)だけ増加させる。この計算により、制御端末6は、選択された発電制御装置2aの時刻t=t1の出力指令値を80kWに増加(変更)させる。
(ステップSb3-2-4)
増加量目標値であった50kWを全て増加させることができたか否かを判定する。ケースC2-3では、ステップSb3-2-3において出力指令値増加量である50kWを全て増加させることができ、目標未達分は0kWであるためで、目標到達の判定結果がYesとなり、ステップSb1に戻ることになる。
【0137】
ここで、ステップSb3-2-3の結果、ケースC2-3のように、次のサイクル時刻(t=t2)における発電制御装置2aの実発電電力が例えば40kWに増加したとする(図10)。
この場合、次のサイクル時刻(t=t2)における総発電可能電力150kWと総発電量110kWの差が40kWとなるので、ステップSb1→ステップSb2→ステップSb3-1(No)→ステップSb3-2(No)を実行し、ステップSb3-2-1では、出力指令値増加量として40kW(150kW-110kW)が設定される。これを、ステップSb3-2-2で選択した発電制御装置2cに適用することで、次のサイクルの時刻(t=t2)において、発電制御装置2cの出力指令値が70kWに設定される。ケースC2-3の例では、さらにその次のサイクル(t=t3)で発電制御装置2cの発電量が40kWに増加し、総発電量が120kWに増加した。
【0138】
図12は、第3の実施形態において、制御を強める場合と制御を弱める場合における発電制御装置選択時と出力指令値計算値に使用される項目のパターンを示す表である。第2の実施形態と第3の実施形態とでは、制御を強める場合と制御を弱める場合とにおいて、発電制御装置選択時において発電制御装置の選択が異なるが、出力指令値計算時には、制御を強める場合も制御を弱める場合もいずれも実発電電力に基づき次のサイクルにおける出力指令値が計算される。
以上のように、複数の発電制御装置を制御する必要がある分散型の発電システムにおいて、各発電制御装置に対してきめ細やかな発電制御を行うことで、システム全体の発電効率を高めたり、耐用年数を延ばしたり、することができる。なお、本明細書における各実施形態において説明したアルゴリズムはいずれも例示にすぎず、結果的に同等の発電制御がなされる場合は、本件特許発明の技術的範囲に含まれるものと解する。
【0139】
(第4の実施形態)
-基本的な考え方-
第1の実施形態において、電力計9から負荷5の消費電力を直接取得することに代えて、商用電力系統4側に電力計を設け発電制御装置の総発電電力と商用電力系統4からの供給電力(系統電力)から消費電力を算出してもよいと説明した。この場合には、系統電力についてはリアルタイムに取得できるが、反面、総発電電力については発電制御装置2(PCS)は出力指令値に対する有限の応答時間のため取得するまでにタイムラグが生じる。このタイムラグのために、算出された消費電力と、実際の消費電力とが一致しないという問題が発生する。タイムラグの最大値は、総発電電力を計測する周期であるサンプリング間隔に相当する時間(例えば6秒間)となる。
【0140】
この様な状況で、発電電力の効率を向上させるために出力指令値を増大させ、かつ、発電電力が実際の消費電力を上回った場合、逆電力継電器(RPR)10が作動して発電が停止し、太陽光発電所が想定通りに発電できなくなる。
【0141】
一般に、発電制御には、「逆潮流を回避する」ことを目的として発電量を低下させる制御(第1の制御)と、電力会社から購入すべき発電量を減らすために発電装置の発電量を増大させる制御(第2の制御)の2種類が存在する。第1の制御は逆潮流発生を回避するために必須の制御であり、この制御が失われた場合、非常装置が作動して発電がストップしてしまう。他方、第2の制御は「より好ましい」制御であり、仮にタイムラグによって発電量の増大が遅れても、発電装置の性能を活かす機会を失うに止まり、発電がストップするといった深刻な事態には至らない。したがって、2つの制御において重視すべきは第1の制御ということになるが、逆潮流を回避しつつも、発電装置の発電量(総発電量)を増加させる制御が求められる。
そこで、本実施形態では、以下の3つのルールを適用する。
【0142】
[ルール1]
消費電力の計算に用いられる「発電電力」は、計測値を取得する毎に更新する。
[ルール2]
(2-1)
出力指令値の送信前後における系統電力の変動分は、発電制御装置を制御した影響によるものみなすことができる。そのため前回の出力指令値を決定後、系統電力の変動量が、出力指令値を変更した範囲内に収まる時、出力指令値の再計算は行わない。
しかし、系統電力の変動量が、出力指令値を変更した範囲に収まらないときは、現在の出力指令値と計測結果から、その時点で出力指令値の変動量を超える消費電力の変動量から出力指令値を計算する。これは、実際に消費電力が変動したと考えられるためである
(2-2)
出力指令値を低下させている最中に、さらに消費電力が低下した場合に限り、変動量に関わらず出力指令値の再計算を行う。
[ルール3]
1つの発電制御装置の出力指令値と実発電電力との間で乖離がある場合、乖離している発電制御装置に対しては、出力指令値を現在発電している電力まで下げる指示を行う。
【0143】
ルール1により、発電電力の変動をできるだけ速く取得し、消費電力(系統電力+発電電力)の計算結果を、実際の消費電力の値に近付けることが可能となる。また、ルール2により、消費電力の計算精度を高めることが可能となる。ルール3は、例えば日射量の不足や発電設備の故障などが想定される。このような場合、他の発電制御装置の出力を上げる事で最大効率の発電電力を得ようとする。しかし、その後日射量が増えた場合、乖離している発電制御装置の出力が増加するため、発電可能電力を超える発電を行ってしまい、結果として逆電力継電器(RPR)10や閾値制御が働くことになる。これを防ぐために、乖離している発電制御装置に対しては、出力指令値を現在発電している電力まで下げる指示を行う。すなわち、乖離した状態を放置しないことで 発電制御装置を制御する回数は増えるが、逆電力継電器(RPR)10や閾値制御が作動することを回避することができるようになる。
【0144】
制御端末6は、系統電力の実測値及び発電制御装置2から取得した各発電装置の出力電力の総発電電力に基づいて、消費電力を算出するように構成されている。
【0145】
図13(A)~(C)は、ルール1~ルール3を適用した場合の系統電力、発電電力、出力指令値と、系統電力及び発電電力の和として算出される消費電力の算出値の変化を示す表である。但し、図13の各表においては、比較のため消費電力の実測値を表示しているが、ここに記載される消費電力の実測値は発電制御に用いることができない前提とする。
【0146】
(パターン1)
図13(A)は、ルール1を適用した制御を説明するための、本実施形態における出力指令値を決定するフローを時系列に説明するフローチャートである。また、表中の下向き矢印は、前ステップの数値を維持することを意味する。
【0147】
ステップ1:
制御端末6は、系統電力の実測値及び発電制御装置2からの出力電力の実測値を取得する。また、系統電力の実測値及び発電制御装置2からの出力電力の実測値から消費電力を算出する。
制御端末6は、算出された消費電力から出力指令値への出力指令値増加量又は出力指令値減少量を算出し、発電制御装置2に出力する。
この時点での系統電力の実測値は10kWであり、発電制御装置2からの出力電力の実測値は40kWであり、制御端末6は、これらの実測値の和により消費電力を50kW(=10kW+40kW)と算出する。この時点での発電制御装置2の出力指令値は、例えば40kW(実発電電力は40kW以下)である。
【0148】
ステップ2:
制御端末6は、商用電力系統4側に設けられた電力計により、系統電力の実測値として20kWを取得したとする。この時点で、制御端末6は系統電力が10kW増加したことを認識する。
【0149】
ステップ3:
制御端末6は、実際の消費電力を知ることができないため、発電電力(40kW)と系統電力(20kW)の合計値として、消費電力を60kW(=40kW+20kW)と算出する。
【0150】
ステップ4:
制御端末6は、算出された消費電力(60kW)に基づいて、次のサイクルにおける発電制御装置2の出力指令値を計算する。この場合、消費電力が増加するので「制御を弱める」必要があると判断し、総発電可能電力を上げるために、上述した実施形態を適用する。具体的には、選択された発電制御装置2に対して出力指令値を始点として、前記出力指令値増加量を算出する。ここでは、出力指令値増加量を例えば+10kWとして、1サイクル前の出力指令値(40kW)に出力指令値増加量(+10kW)を加えた新たな出力指令値50kWを次のサイクルにおける出力指令値として発電制御装置2に送信する。
【0151】
ステップ5:
ステップ4→ステップ5で系統電力が20→10に変動したが、ルール2-1により、これは制御した影響とみなし、出力指令値の再計算は行わない。発電電力は消費電力の計算のために必要なため仮の発電電力として50kWとする。
【0152】
ステップ6:
発電制御装置2から仮ではない発電電力を取得できた時点で、消費電力60kWをもとに次サイクルの出力指令値の再計算を行う。すなわち、本ステップで、制御端末6は、発電制御装置2から発電電力を取得し、発電電力が50kWであることが確認できたため、出力指令値の再計算を行い、消費電力は、系統電力(10kW)との和として60kWと算出される。
【0153】
以上のように、前回の出力指令値を決定した後、系統電力の変動量が、出力指令値を変更した範囲内に収まっているか否かを判断し、収まっていると判断される場合には、次のサイクルでの出力指令値の再計算は行わない(ルール2-1)。
但し、消費電力の急落に対応できるよう、出力指令値を低下させている最中に、さらに消費電力が低下した場合には、制御を強める必要が生じるため、変動量にかかわらず出力指令値の再計算を行う。
【0154】
なお、図13(A)のステップ1、2、3等においては、十分な日照量が得られているとの前提で、発電制御装置2からの出力電力と出力指令値とが一致する例を示したが、両者は必ずしも一致せず、発電制御装置2からの出力電力は出力指令値以下となる。
【0155】
(パターン2)
図13(B)に示す例について、制御フロー順に、各ステップについて説明する。
ステップ1~ステップ5は、実施例1と同様であるため、省略する。

ステップ6:
ここで、制御端末6は、商用電力系統側に設けられた電力計を通じて、系統電力の実測値が20kWから15kWに変化した(5kW低下した)ことを検知したとする。これだけの情報だけでは、消費電力が5kW分低下したのか、発電電力が5kW分増加したのかを知ることはできない。しかしながら、出力指令値の変化分が、40kWから50kWへと10kW増加しているので、仮に発電電力が5kW増加したとしても、出力指令値の増加分である10kWには満たないため、発電電力が出力指令値として指示した50kWに到達していないと判断できる。そこで、出力指令値を再計算せず、前サイクルの出力指令値を次のサイクルでも維持する。一方、発電電力が仮に5kW増加したとすると、指令値である50kWに対して-5kW分の乖離がある。そこで、仮の発電電力を45kWに設定する。
ステップ7:
制御端末6は、商用電力系統側に設けられた電力計を通じて、系統電力の実測値が15kWから10kWに変化した(さらに5kW低下した)ことを検知したとする。系統電力は、ステップ2の時点からの合計で、10kW下がったことになる。発電電力は、計測できるまで確定はせず、「仮の状態」を維持する。現在の発電電力の値は、まだ制御した影響によるものとみなせるため、ルール2-1に従って出力指令値の再計算は行わなず、前ステップ(ステップ6)と同じ処理を行う。
ステップ8:
パターン1のステップ8と同様であり、発電電力を計測し、50kWであるから、消費電力は60kWと算出される。
【0156】
(パターン3)
図13(C)に示す例について、制御フロー順に、各ステップについて説明する。
ステップ1~ステップ5は、実施例1と同様であるため、省略する。

ステップ6:
制御端末6は、系統電力の実測値が20kWから5kWに変化(すなわち15kW低下)したことを認識する。これだけの情報だけでは、消費電力が15kW分低下したのか、発電電力が15kW分増加したのかを知ることはできない。しかしながら、系統電力の低下分(15kW)は、ステップ5において設定したステップ4の発電電力からステップ5の暫定発電電力50kWへの増加分(すなわち10kW)よりも大きいため、発電電力が15kW増加することはあり得ない(最大でも10kWしか増加できない)。そこで、制御端末6は、発電電力が10kW増加(暫定発電電力である50kWに到達)したと共に、消費電力が5kW減少した、と判断する。それと共に、消費電力の低下傾向がさらに継続した場合、現在の状態からさらに消費電力が低下して逆潮流が発生するおそれがあるため、今回のサイクルに含まれる次のステップでは、出力指令値を再計算する(ルール2-2)。
【0157】
ステップ7:
出力指令値を再計算し、出力指令値を45kWに設定する。ステップ6において、消費電力が5kW減少していると判断できるため、暫定発電電力は50kWのまま据え置いた状態で、出力指令値を45kWに低下して送信する。
【0158】
ステップ8:
ステップ7において送信された出力指令値を受けて、発電電力を「暫定発電電力」として45kWに変更する。ここで「暫定発電電力」とするのは、実測値ではなく、消費電力の計算のためにのみ用いられる仮の発電電力だからである。
【0159】
ステップ9:
制御端末6は、系統電力の実測値が5kWから10kWに変化(すなわち5kW増加)したことを認識する。これは、ステップ7からステップ8における発電電力(暫定発電電力)の変化量(50kW→45kW)である低下分の5kW以内の変動量であるが、現時点ではまだ発電電力は、計測できていないため確定せず、「仮の状態」を維持する。すなわち、ルール2-1に従って出力指令値の再計算は行わなず、前ステップ(ステップ8)と同じ処理を行う。
【0160】
ステップ10:
パターン1、2のステップ8と同様に、制御端末6は、発電制御装置2を通じて発電電力を取得し、ステップ9で確定した45kWから変化していないことを確認し、消費電力は、系統電力の10kWと合計した55kWと算出する。
【0161】
(まとめ)
以上のように、発電制御装置2からの出力電力の実測値は、所定の間隔、すなわちサンプリング間隔毎に制御端末6に送信される。そのため、サンプリング間隔の間は、制御端末6は、以上のようなフローに従って、系統電力の実測値を利用して、出力指令値を算出し、発電制御装置2に出力し、発電電力を管理する。
【0162】
-適用事例-
以下、本実施形態のアルゴリズムの適用事例を説明する実施例について説明する。はじめに、図14を用いて比較例(ルール1~ルール3を適用しない場合)について説明し、その後、図15を用いて実施例(ルール1~ルール3を適用した場合)について説明する。
【0163】
(比較例)
定格容量がいずれも100kWである2台の発電制御装置2(2a,2b)に対して、現在(t=t0 :1サイクル前)の時点で、発電制御装置2aに対して100%、発電制御装置2bに対して0%の出力指令値を送信する。その結果、発電制御装置2aは50kW、発電制御装置2bは0kWの発電電力であった場合、次のサイクル(t=t1)における制御は、発電制御装置2aについては改めて出力指令値を送信することなく発電制御装置2aで乖離している50kW(=100kW-50kW)相当分として、発電制御装置2bに対して発電制御装置2aで乖離していた50kW減少分である出力指令値50%を発電制御装置2bに送信する。
【0164】
(実施例)
定格容量がいずれも100kWである2台の発電制御装置2(2a,2b)に対して、現在(t=t0 :1サイクル前)の時点で、発電制御装置2aに対して100%、発電制御装置2bに対して0%の出力指令値を送信する。その結果、発電制御装置2aは50kW、発電制御装置2bは0kWの発電電力であった場合、次のサイクル(t=t1)における制御は発電制御装置2aについては改めて出力指令値として50%を再送信後、発電制御装置2bに対して発電制御装置2aで乖離していた50kW分として、発電制御装置2aに出力指令値50%を送信する。
このように、出力指令値と実発電電力とが乖離した状態のまま次のサイクルに移行せず、都度出力指令値を適切に設定することで、上記の通り、発電制御装置を制御する回数は増えるが、逆電力継電器(RPR)10や閾値制御が作動することを回避することができる。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明にかかる発電システムは、複数の発電装置とその出力を制御する発電制御装置との組み合わせを備えた発電施設において、負荷側の変化する消費電力に対応しながら逆潮流を回避しつつ、外部環境の影響を受けやすい発電装置の利用効率を向上させることができ、産業上の利用可能性は極めて高い。
【符号の説明】
【0166】
1(1a、1b、・・・、1n) 発電装置
2(2a、2b、・・・、2n) 発電制御装置
4 商用電力系統
5、5a、5b、・・・、5m 負荷
6 発電システム制御装置(制御装置)
61 計測用入出力部
62 処理部(演算処理部)
63 記憶部
64 制御用入出力部
9 電力計
10 逆電力継電器(RPR)
100 発電システム
s(s2、s9) 信号線
L2、Lb2a、Lb2b、Lb2n 電力線
L4 電力線
L5 電力線
【要約】
【課題】
複数の発電制御装置を備えた発電システムにおいて、変動する消費電力に対応しながら、発電装置の発電電力を効率的に負荷へ供給する。
【解決手段】
複数の発電装置1と、複数の発電装置1のそれぞれに対して発電出力の制御を行う複数の発電制御装置2とを備えた発電システム100の出力電力を制御する制御端末6に用いられる。負荷5の消費電力を取得するステップSa1、Sb1と、前記発電システムの総発電量を取得するステップSa2、Sb2と、前記消費電力及び前記総発電量に基づいて前記発電システムの総発電可能電力を求めることにより、制御を強めるか制御を弱めるかを判定するステップSa3、Sb3-1と、前記判定結果に基づいて、前記複数の発電制御装置2のそれぞれに対して現在時刻(t=t1)での出力指令値を個別に計算するステップSa3-1-3、Sa3-1-2、Sb3-1-3、Sb3-2-3を実行させる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15