(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】睡眠状態測定装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/16 20060101AFI20230208BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20230208BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20230208BHJP
A61B 7/04 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
A61B5/16 130
A61B5/02 310B
A61B5/11 200
A61B7/04 H
A61B7/04 Y
(21)【出願番号】P 2018099328
(22)【出願日】2018-05-24
【審査請求日】2021-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000101204
【氏名又は名称】株式会社oneA
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 文男
(72)【発明者】
【氏名】大越 健史
(72)【発明者】
【氏名】濱田 裕史
(72)【発明者】
【氏名】葛原 弘安
(72)【発明者】
【氏名】松永 直子
【審査官】▲瀬▼戸井 綾菜
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-202939(JP,A)
【文献】特開2018-033604(JP,A)
【文献】特表2016-515904(JP,A)
【文献】特開2017-121529(JP,A)
【文献】特開2017-029320(JP,A)
【文献】米国特許第09336795(US,B1)
【文献】特開2017-042232(JP,A)
【文献】国際公開第2017/013995(WO,A1)
【文献】特開2012-187299(JP,A)
【文献】特開2005-074012(JP,A)
【文献】国際公開第2017/178694(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/398
A61B 7/00-7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者頸部の周方向に沿って装着可能に構成されたネックバンドと、
前記ネックバンドの一方の開放端部に連結構造を介して連結され、装着状態において使用者の頸部に沿って延びるように構成されたセンサユニットとを備え、
前記センサユニットは、使用者の咽喉音を取得する呼吸音取得部と、使用者の頸部に向けて発光する発光部と該頸部内からの反射光を受光する受光部とを有する光学センサと、使用者の体動を測定するための加速度センサとを有し、
前記呼吸音取得部からの取得データ情報、前記光学センサからの取得データ情報、前記加速度センサからの取得データ情報のうちの少なくとも1つの情報を所定期間にわたって蓄積する記憶部をさらに備え、
装着状態において使用者の頸部を周方向の外側から挟み込むように構成されており、
前記センサユニットの裏面は、周方向中間部に位置する第1裏面と、周方向先端部に位置して前記第1裏面より前記使用者頸部側に傾いて形成される第2裏面とを備えており、
前記光学センサは、前記第1裏面に設けられて、前記呼吸音取得部は、前記第2裏面に設けられている
睡眠状態測定装置。
【請求項2】
前記呼吸音取得部は、
前記センサユニット内に設けられた音センサと、
前記センサユニットの先端において当該センサユニットの
裏面から使用者側に向かって突設され、かつ、前記使用者頸部の呼吸音を取得するための音孔が形成された当接部と、
前記音孔から前記音センサに音を導く導音路とを備える
請求項1に記載の睡眠状態測定装置。
【請求項3】
前記ネックバンドと前記センサユニットとが着脱できるように構成されている
請求項1または2に記載の睡眠状態測定装置。
【請求項4】
前記呼吸音取得部で取得された音データと前記光学センサで取得された光データに基づいて、使用者の睡眠時の呼吸状態、睡眠モード及び眠りの深さの少なくともいずれか1つを判定する判定部を有し、
前記加速度センサで所定以上の体動が検出された場合に、その期間中の前記音データの測定結果をマスクする
請求項1に記載の睡眠状態測定装置。
【請求項5】
前記記憶部には、前記判定部で判定された使用者の睡眠時の呼吸状態の情報と、前記加速度センサで取得された使用者の体動または体位の情報とが紐づけて記憶され、
前記記憶部に蓄積された情報に基づいて、所定期間における使用者の睡眠時の呼吸状態、睡眠モード及び眠りの深さの少なくともいずれか1つを評価する制御部を備える
請求項4に記載の睡眠状態測定装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記呼吸状態の判定を、前記加速度センサの測定値の変動幅が所定の範囲内にある状態が所定時間以上継続した場合に実行する
請求項4に記載の睡眠状態測定装置。
【請求項7】
外部機器との通信するための通信モジュールを備える
請求項1から6のいずれか1項に記載の睡眠状態測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に在宅等で被験者の睡眠状態を測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、使用者の睡眠状態を測定する装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、酸素飽和度指センサ、胸部ベルトの抵抗変化、喉部に接着されたマイクロフォン及び鼻の下に装着されたフローセンサの測定結果に基づいて、単位時間当たりの無呼吸回数等などを演算する生体情報測定装置が示されている。
【0004】
また、特許文献2には、呼吸ペース分析部と、無呼吸区間抽出部とを有する無呼吸検出装置が開示されている。呼吸ペース分析部は、周囲から発せられた周囲音と使用者の姿勢情報とを基にして、使用者の呼吸ペースを判定する。無呼吸区間抽出部は、呼吸ペースと周囲音中の無音区間とを基にして、使用者が呼吸していると推定される区間に無音区間が含まれるか否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-312669号公報
【文献】国際公開第2010/044162号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術は、鼻の下、指、胸のそれぞれにセンサを装着する場合に、各種センサをケーブルで接続する必要があるので、被験者にとって煩わしく感じる場合があり、睡眠の妨げとなる場合がある。
【0007】
また、特許文献2では、周囲音の収録データに基づいて有音か無音かを判断して、無音である場合に無呼吸診断を行うようにしているが、周囲の雑音といびきとの切り分けが難しい場合がある。また、雑音の多い環境では使用することができないといおう問題がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、睡眠時における使用者の状態把握の精度を向上させた睡眠状態測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る睡眠状態測定装置は、使用者頸部の周方向に沿って装着可能に構成されたネックバンドと、前記ネックバンドの一方の開放端部に連結構造を介して連結され、装着状態において使用者の頸部に沿って延びるように構成されたセンサユニットとを備え、前記センサユニットは、使用者の咽喉音を取得する呼吸音取得部と、使用者の頸部に向けて発光する発光部と該頸部内からの反射光を受光する受光部とを有する光学センサと、使用者の体動を測定するための加速度センサとを有し、前記呼吸音取得部からの取得データ情報、前記光学センサからの取得データ情報、前記加速度センサからの取得データ情報のうちの少なくとも1つの情報を所定期間にわたって蓄積する記憶部をさらに備え、装着状態において使用者の頸部を周方向の外側から挟み込むように構成されており、前記センサユニットの裏面は、周方向中間部に位置する第1裏面と、周方向先端部に位置して前記第1裏面より前記使用者頸部側に傾いて形成される第2裏面とを備えており、前記光学センサは、前記第1裏面に設けられて、前記呼吸音取得部は、前記第2裏面に設けられている。
【0010】
本態様によると、ネックバンドに連結構造を介して連結されたセンサユニットに設けられた呼吸音取得部から取得される呼吸音データと、加速度センサによる振動の振幅の二つの測定結果の組み合わせから使用者の状態(例えば、呼吸状態や睡眠状態)を判断することができるので、従来技術と比較して、睡眠時における使用者の状態把握の精度を向上させることができる。さらに、従来技術と比較して、睡眠時の遷移時間の区分けの精度を向上させることができる。
【0011】
さらに、睡眠時の体動や体位を加速度センサで測定することができるので、特定の呼吸状態(例えば、低呼吸・無呼吸)が判断されたときの体位を記録に残すことが可能となる。すなわち、どのような寝相の時に、特定の呼吸状態(例えば、低呼吸・無呼吸)が発生しているのかの検証が可能となる。さらに、加速度センサと呼吸音取得部を共通のセンサユニット内に設けているので、体位・体動と、呼吸状態との相関性が高い。
【0012】
前記睡眠状態測定装置において、前記ネックバンドと前記センサユニットとが着脱できるように構成されていてもよい。
【0013】
このように、センサユニットを着脱可能にすることにより、共通のセンサユニットをサイズの異なるネックバンドに適用することができるようになる。これにより、例えば、互いに頸部のサイズが異なる複数の使用者で共通のセンサユニットを使用することができるようになる。また、例えば、使用者の体型の変化に応じて、ネックバンドを交換することができるようになる。
【0014】
前記睡眠状態測定装置において、前記呼吸音取得部で取得された音データと前記光学センサ部で取得された光データに基づいて使用者の睡眠時の呼吸状態、睡眠モード及び眠りの深さの少なくともいずれか1つを判定する判定部を有し、前記加速度センサで所定以上の体動が検出された場合に、その期間中の前記音データの測定結果をマスクするようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、ネックバンドに連結されたセンサユニットに呼吸音取得部、光学センサ及び加速度センサを設けることにより、睡眠時における使用者の状態把握の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2A】睡眠状態測定装置を斜め下側から見た斜視図
【
図2C】睡眠状態測定装置からセンサユニットを取り外した状態を示す斜視図
【
図10】睡眠状態測定装置の概略構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0018】
<睡眠状態測定装置の構造>
図1は、睡眠状態測定装置Aの被験者への装着状態を示した外観図である。睡眠状態測定装置Aは、ネックバンド型であり、睡眠時に使用者頸部に装着されることにより、使用者の睡眠状態が測定できるように構成されている。
【0019】
図1に示すように、使用者頸部の周方向に沿って装着可能に構成されたネックバンド11と、ネックバンド11に取り付けられたセンサユニット2とを備える。
【0020】
ネックバンド11は、後述するセンサ部20の各センサ21,22,23,24が頸部からの測定信号を受信できる場所に配置されるように構成される。すなわち、ネックバンド11は、使用者頸部の周方向に沿って装着可能に構成される。なお、その具体的な構成は特に限定されるものではない。
【0021】
例えば、
図2Aに示すように、ネックバンド11は、弾性を有する材料を用いて略C字状に形成される。ネックバンド11は、使用者により、開口部分を両側に広げられた後、頸部の後ろ側から頸部に向かって装着され、使用者の頸部を周方向の外側から挟み込むようになっている(
図1参照)。なお、ネックバンド11の形状は、センサユニット2のセンサ部分が使用者の皮膚に密着できる構造であればよいので、略C字形状に限定されるものではない。
【0022】
センサユニット2は、ネックバンド11の一方の開放端部に設けられている。センサユニット2は、正面に表示部42、上下方向の側面(例えば、下面)に押ボタン式の操作部45が設けられた筐体50を備える。これにより、使用者が装着した状態でも操作しやすくなる。なお、操作部45が筐体50の他の側面に設けられていてもかまわない。
【0023】
また、
図2Aに示すように、ネックバンド11の他方の開放端部には、睡眠状態測定装置Aが、その装着後に使用者頸部の周方向にずれにくいように滑り止め14が設けられている。なお、本実施形態では、使用者の装着状態を基準として、上下方向、左右方向を定義する。また、使用者の正面(胸)側を前、背中側を後と定義する。
【0024】
なお、
図2B及び
図2Cに示すように、センサユニット2は、ネックバンド11に対して人体側(内側)に向かう方向への回動と、ネックバンド11への着脱(取り付け及び取り外し)が可能に構成されていてもよい。具体的に、センサユニット2は、筐体50の長手方向(以下「筐体長手方向」という)におけるネックバンド11側の端部(以下、基端部という)から外側に向かって一体的に突設された支持部51を備える。支持部51は、筐体50の基端部から外側に向かって突設された板状の支持本体部51a(
図6参照)と、支持本体部51aの先端に一体形成され、支持本体部51aの板厚よりも直径が若干大きく形成された断面視で鉤状の係合突部51b(
図6参照)とを備える。
【0025】
ネックバンド11の筐体50側の端部には、ネックバンド11に対して回動可能に支持された被嵌合部12が設けられる。
【0026】
被嵌合部12は、ネックバンド11の幅方向に向かって延びる支軸13(
図6参照)によって軸支される。さらに、被嵌合部12は、断面視で有底の略U字形状に形成されていて、支持部51を嵌め込むことができるようになっている。具体的に、被嵌合部12は、支持部51の係合突部51bの直径よりも若干小さい開口幅の嵌入口を有する。そして、被嵌合部12は、その嵌入口の開口幅で対向配置された対をなす板状の側壁を有する抜け止め部12aと、抜け止め部12aの底部側の端部と連続形成され、係合突部51bの直径よりも若干大きく形成された断面視で略円形状の収容空間を有する収容部12bとを備える。
【0027】
そして、筐体50の支持部51を被嵌合部12に嵌め込むときには、抜け止め部12aの側壁が撓んで、抜け止め部12aの幅が広がることによって係合突部51bの挿入動作が許容され、係合突部51bを収容部12bに嵌め込むことができる。一方で、係合突部51bが収容部12bに嵌め込まれた後には、抜け止め部12aは、その側壁が撓まない限り係合突部51bが嵌め込み方向と逆の方向に抜け出るのを防止する。
【0028】
さらに、ネックバンド11内に、被嵌合部12を回動状態から通常使用状態に向かって付勢するばね15(
図6参照)を設けてもよい。
【0029】
なお、本実施形態では、
図1に示すように、睡眠状態測定装置Aが人体に装着できるような状態にあることを通常使用状態と呼ぶものとし、
図2Bに示すようにセンサユニット2がネックバンド11に対して回動された状態を回動状態と呼ぶものとする。
【0030】
なお、センサユニット2の回動構成、着脱構成は、
図2A~
図2Cに示した構成に限定されるものではなく、同様の機能を有する他の構成で実現されていてもよい。
【0031】
さらに、センサユニット2には、筐体50の基端側の側端面に、後側に向かって開口する通信コネクタ65が設けられている。通信コネクタ65は、例えば、USB(Universal Serial Bus)ケーブル等の通信ケーブルが接続できるように構成されていて、外部機器(例えば、パソコン)との通信に利用したり、外部からバッテリ61への充電に利用したりすることができる。なお、通信コネクタ65の具体的構成は、従来技術を適用できるので、ここではその詳細説明を省略する。
【0032】
このような位置に通信コネクタ65を設けることにより、通信コネクタ65が、センサユニット2の回動状態において外部に露出される一方で、通常使用状態では外部に露出されないようにすることができる。これにより、睡眠状態測定装置Aの意匠性が向上するとともに、通信コネクタ65へのゴミ等の侵入を防ぐことができる。
【0033】
図4及び
図6に示すように、筐体50には、筐体長手方向に沿って延びるように配置された、すなわち、睡眠状態測定装置Aの装着状態において使用者の頸部に沿って延びるように配置された基板60が収容されている。
【0034】
基板60の表面には、中央に加速度センサ23が設けられ、先端側に音センサとしての呼吸センサ24が設けられる。また、基板60の裏面中央には、光学センサ21,22が設けられる。すなわち、呼吸センサ24、光学センサ21,22及び加速度センサ23が互いに近接配置される。なお、本実施形態では、基板60の方向に関し、筐体長手方向に沿う方向を長手方向、長手方向に直交する方向を幅方向と呼ぶものとする。また、基板60の使用者頸部側の面を裏面、その反対側の面を表面と定義する。また、基板60の長手方向における、ネックバンド11側の端を基端といい、開放端側の端を先端と呼ぶものとする。
【0035】
呼吸センサ24は、使用者の咽喉音を取得するものである。具体的な構成は特に限定されないが、例えば、MEMSマイクロフォンのような従来から知られているマイクロフォンを適用することができる。なお、本実施形態では、呼吸センサ24を基板60上に設けているので、
図7に示すように、筐体50先端部の頸部側の表面に咽喉音を取得するための音孔57を設けるとともに、音孔57から呼吸センサ24まで音を導くために周囲を壁部58で囲まれた導音路59を設けている。壁部58は、筐体50の外壁と一体形成されかつ音孔57から筐体50の内側に向かって導音路59が広がるように形成された壁部58aと、その壁部58aと基板60との間に振動を吸収するために挟み込まれたゴム製の緩衝材58bとによって構成される。このように導音路59を設けることで、筐体50内の反響ノイズを防止することができる。ここで、呼吸センサ24への咽喉音の取得は、基板60の先端側、すなわち、センサユニット2の先端側であり、睡眠状態測定装置Aの開放端側に設けられるのが好ましい。これにより、使用者の気道により近い位置で咽喉音を取得することができる。したがって、音孔57は、筐体50の先端側に設けるのが好ましく、導音路59の引き回しを容易にする観点から、呼吸センサ24も基板の先端側に設けるのが好ましい。
【0036】
光学センサ21,22は、使用者の頸部に向けて発光する発光部(図示省略)と頸部内からの反射光を受光する受光部(図示省略)とを有する。
【0037】
図8は、光学センサ21,22周辺の構成例を示している。
図8に示すように、光学センサ21,22の光照射方向(人体側)に樹脂製の透明板53を配置している。さらに、光学センサ21,22の周囲は、外からの光を斜行するために、遮光性の高い樹脂製の部材52で囲まれている。さらに、筐体50の位置と、基板60の固定位置との位置合わせ精度を高めるために、基板と筐体の間に
図9に示すような位置決めのための位置決めボス55を設けている。
【0038】
なお、本実施形態では、光学センサ21,22として、赤外式の光学センサ21と、赤色光源を用いた光学センサ22とを用いた例を示している。そして、光学センサ21,22の互いを区別して説明する場合に、赤外式のセンサを赤外センサ21といい、赤色光源を用いたセンサを赤色光センサ22と呼ぶことがある。ただし、本実施形態では、機能及び動作等の説明の便宜上、光学センサ21,22を分けて説明しているが、2つ光学センサ21,22の機能を単一のモジュールで実現してもよい。
【0039】
加速度センサ23は、使用者の体動及び/または体位を測定するためセンサである。なお、
図4及び
図6では、加速度センサは、基板表面の中央に配置されるものとしたが、これに限定されない。具体的に、加速度センサ23は、他センサと近接配置されていればよく、基板の表裏面のどこかに配置されていればよい。また、加速度センサ23の構成は、従来から知られているものを使用することができ、加速度センサ23に基づく体動及び/または体位の測定方法も従来技術を用いることができるので、ここでは、その詳細説明を省略する。
【0040】
さらに、基板60には、長手方向の基端部に前述の通信コネクタ(充電コネクタ)65が設けられ、長手方向の先端部表面に、外部の機器(例えば、携帯電話等の端末装置80)との無線通信が可能に構成された通信モジュール62が設けられる。また、基板60の表面中央の基端寄りの場所に、筐体50の内壁面と基板60とで挟み込むようにバッテリ61が設けられる。
【0041】
なお、具体的な図示は省略しているが、通信モジュール62の先端側にはアンテナが内蔵されており、平面視において、バッテリ61とアンテナとが重ならないようにしている(
図4参照)。これにより、バッテリ61が通信モジュール62のアンテナの通信品質に影響を与えることを防ぐことができる。通信モジュール62は、例えば、Bluetooth(登録商標)による通信が可能に構成されたBLE(Bluetooth Low Energy)に対応したモジュールであり、外部機器との双方向通信ができるようになっている。ただし、通信モジュール62の通信方式は、BLEに限定されるものではなく、他の方式であってもよい。また、通信対象となる外部機器の種別は特に限定されない。例えば、
図1に示すように、端末装置80であってもよいし、枕や照明機器等に内蔵された他の測定装置、制御装置と相互に通信して連携動作するように構成されてもよい。また、ネットワークを介して接続されたサーバ装置(図示省略)等が通信対象であってもよい。
【0042】
基板60表面には、さらに、センサユニット2全体の動作を制御する制御部3と、制御部3で判定されたデータを記憶する記憶部44が設けられる。
【0043】
制御部3は、例えば、マイクロコンピュータで実現することが可能であり、各種演算及び制御を実行する。制御部3は、各センサ21,22,23,24の測定データに基づいて、血中酸素濃度、脈拍、体動及び/または呼吸音を演算するとともに、それらの演算結果に基づいて、呼吸状態、睡眠モード及び/または眠りの深さを判定する機能を有する。
【0044】
<睡眠状態測定装置のブロック構成及び動作>
図10は、睡眠状態測定装置Aの構成を示すブロック図であり、
図11は、制御部3の構成を示すブロック図である。なお、睡眠状態測定装置Aの構造的な特徴については、前述の「睡眠状態測定装置の構造」で説明しており、ここでは、電気的な構成(ブロック構成)の特徴を中心に説明するものとする。
【0045】
図10に示すように、センサ部20の各センサ21,22,23,24の取得データは、制御部3に送られる。具体的に、光学センサ21は、受光部(図示省略)で受光された測定データ(周期情報を含む)を、赤外処理データDR1として制御部3に出力する。同様に、光学センサ22は、受光部(図示省略)で受光された測定データ(周期情報を含む)を、赤色処理データDR2として制御部3に出力する。加速度センサ23は、加速度の測定データを、加速度データDGとして出力する。呼吸センサ24は、咽喉音の測定データを、呼吸音データDAとして制御部に出力する。
【0046】
図11に示すように、制御部3は、演算部31と、判定部33と、信号生成部39とを備える。
【0047】
演算部31は、各センサ21,22,23,24の測定データに基づいて、血中酸素濃度、脈拍、体動及び/または呼吸音を演算する。演算方法には、種々の方法があり、その具体的な方法は任意に選択し、その演算に用いるパラメータ等は任意に設定することができる。以下の説明では、発明の理解を容易にするために、演算方法の一例について説明するが、本発明の演算方法を限定する意図を有するものではない。後述する判定部33による判定方法についても同様である。
【0048】
演算部31は、赤外処理データDR1及び赤色処理データDR2に基づいて血中酸素濃度を演算する。例えば、赤外処理データDR1及び赤色処理データDR2にFFT処理を実行して周波数成分を抽出し、赤外処理データDR1の周波数成分と、赤色処理データDR2の周波数成分との対比演算の結果に基づいて血中酸素濃度を求める。なお、血中酸素濃度の演算間隔は任意に設定できる。すなわち、演算部31は、血中酸素濃度を常時演算するようにしてもよいし、所定の時間毎に演算するようにしてもよい。また、血中酸素濃度を所定の時間毎に演算する場合に、光学センサ21,22を所定の時間毎に動作させるようにしてもよい。すなわち、光学センサ21,22の運転間隔を、任意に設定・変更してもよい。演算間隔(センサの運転間隔)を狭めることで測定精度を向上させることができ、演算間隔(センサの運転間隔)を広げることで、消費電力を削減することができる。以下で説明する他のセンサにおいても同様である。
【0049】
演算部31は、赤色処理データDR2に基づいて脈拍数を演算する。具体的には、赤色処理データDR2に基づいて動脈流の周期を演算し、その周期に基づいて脈拍数を演算する。
【0050】
演算部31は、加速度データDGに基づいて体動及び体位を演算する。具体的には、加速度データDGにより睡眠状態測定装置Aの傾き度合いや動きスピードや大きさの情報を取得することができるので、その情報に基づいて、体動及び体位(以下、単に体動と記載する場合がある)を演算する。
【0051】
演算部31は、呼吸音データDAに基づいて呼吸状態を把握する基となるデータを求める。例えば、演算部31は、呼吸音データDAに基づいて呼吸音の周波数成分(以下、単に呼吸音と記載する)を抽出する。
【0052】
判定部33は、演算部31で演算された血中酸素濃度、脈拍数、体動、呼吸音の演算結果に基づいて、使用者の呼吸状態、睡眠状態を判定する。
【0053】
第1判定部35は、呼吸音に基づいて、低呼吸状態もしくは無呼吸状態であるか否かを判定する。
【0054】
低呼吸状態の判定は、例えば、使用者の咽喉音の振幅値が、所定の基準値(例えば、通常時の振幅)と比較して所定の割合以下の状態が所定期間継続した場合に低呼吸状態と判定する。無呼吸状態についても同様の原理で判定可能である。
【0055】
所定の基準値として用いるデータは、特に限定されない。例えば、使用者毎に測定するようにしてもよいし、製造者等によって任意に設定されたデータを活用するようにしてもよい。
【0056】
「所定の割合以下の状態が所定期間継続」したことを検知する方法は、特に限定されない。例えば、咽喉音の振幅値のピーク間隔を測定する方法、咽喉音の移動平均を求めて活用する方法、所定の基準値を超えたか否かを二値化して判定する方法がある。
【0057】
第1判定部35は、呼吸音に加えて、血中酸素濃度を用いて低呼吸状態もしくは無呼吸状態であるか否かを判定するようにしてもよい。例えば、上記呼吸音に基づいた判断に加えて、血中酸素濃度が、所定の基準値から所定値以上低下しているか否かという基準を追加してもよい。これにより、低呼吸状態もしくは無呼吸状態の判定精度を高めることができる。
【0058】
また、低呼吸状態もしくは無呼吸状態の判定に、体動情報を加味してもよい。具体的には、体動が起こっている場合には、呼吸センサ24の測定結果にノイズが乗りやすい傾向がある。そこで、所定以上の体動がある場合に、その期間中の測定結果をマスクするようなことをしてもよい。これにより、より判定精度を高めることができるようになる。
【0059】
そして、第1判定部35もしくは後述する信号生成部39では、低呼吸状態もしくは無呼吸状態が発生した場合に、その呼吸状態と体動又は体位とを紐づける。これにより、どのような体位で低呼吸状態や無呼吸状態が発生したかを視覚化することができ、使用者が寝る向きを工夫する等の対策を取りやすくなる。このとき、使用者の頸部で取得した咽喉音に基づいて呼吸状態を判定し、かつ、近接して設けられた加速度センサ23で体動を見ているので、体の向き(首の向き)と呼吸状態との相関度を高めることができるという特徴がある。
【0060】
本開示の技術では、呼吸センサ24、光学センサ21,22、加速度センサ23を近接配置している、すなわち、使用者頸部の近接位置からの測定データに基づいて演算及び判定を行っているので、外部ノイズの影響を受けにくい。したがって、より精度の高い測定結果、判定結果を得ることができる。さらに、タイムラグが極小化された状態でデータの紐付けをすることができる。また、本開示の技術では、使用者の頸部に装着した睡眠状態測定装置Aのみを用いているので、特許文献1のように、体の複数の場所にセンサを付ける必要がなく、使用者の負担が少ないという特徴がある。
【0061】
第2判定部36は、脈拍数、体動及び呼吸音に基づいて、眠りの深さを判定する。例えば、第2判定部36は、呼吸音が通常呼吸状態であり、脈拍数が安定しており、体動量が所定の基準値以下の場合に、睡眠が深い状態であると判定する。ここで、通常呼吸状態とは、呼吸音が低呼吸状態、無呼吸状態及び後述するいびき状態に該当しない状態であることを指すものとする。また、脈拍数が安定しているとは、例えば、所定期間の変動量が所定値以下であることにより判断することができる。
【0062】
本開示の技術では、前述のとおり、呼吸センサ24、光学センサ21,22、加速度センサ23を近接配置しているので、それぞれのセンサを体の別の部位に装着したり、一部のセンサ(例えば、マイク)を体から離して設置したりした場合と比較して、外部ノイズの影響を受けにくい。したがって、より精度の高い睡眠状態の判定が可能になる。
【0063】
第3判定部37は、脈拍数及び体動に基づいて、通常呼吸モードか否か、睡眠モードに入っているか否かを判定する。例えば、第3判定部37は、脈拍数が一定期間において安定している場合に、その期間中において、加速度センサの測定結果(体動)の振れ幅が所定値以下であり、かつ、呼吸音が安定している場合に、睡眠モードに入ったと判定する。呼吸音が安定しているか否かは、例えば、呼吸音のピーク位置と、そのピーク位置間の間隔に基づいて、所定の条件を満たすかどうかで判断することができる。
【0064】
第4判定部38は、呼吸音に基づいて、いびきをしている状態(いびき状態という)か否かを判定する。いびきをしているか否かは、呼吸音が所定の基準を超えているか否かで判定する。いびきは、他の呼吸状態と比較して、その音量が数倍以上と高いため、容易に判定することができる。
【0065】
信号生成部39は、第1判定部35~第4判定部38の判定結果を受けて、信号を生成する機能を有する。具体的には、各データの紐付けを行ったり、加工した信号を生成する。また、後段の信号出力部41(通信コネクタ65に相当)やデータ送信部43(通信モジュール62に相当)を介して出力可能なデータに変換したり、表示部42に表示させるデータを生成する。信号生成部39で生成された信号は、信号出力部41やデータ送信部43を介して外部機器(例えば、端末装置80)に送信されたり、表示部42に表示される。また、制御部3は、信号生成部39で生成されたデータを記憶部44に格納するようにしてもよい。
【0066】
図12は、端末装置80の表示画面81における表示例を示している。本開示の技術では、複数の判定結果を紐づけて表示させることができるという特徴がある。例えば、
図12に示すように、呼吸状態(
図12ではいびきの大きさ)を表示させるとともに、その呼吸状態の時に、体の向きがどちらを向いていたかを表示させることができる。これにより、使用者の利便性を高めることができる。例えば、前述のとおり、使用者が寝る向きを工夫する等の対策を取りやすくなる。
【0067】
なお、睡眠状態測定装置Aの制御部3は、演算部31の演算結果(血中酸素濃度、脈拍数、体動及び体位、呼吸音等)や、判定部33の判定結果(呼吸状態、眠りの深さ、睡眠モード、いびきの有無等)を記憶部44に蓄積するようにしてもよい。これにより、睡眠状態測定装置Aの制御部3または端末装置等の外部機器により、これらの蓄積データに基づく定量的な評価をすることが可能になる。そうすることで、具体的な症状が出る前、例えば、無呼吸の症状がでる前に睡眠の改善のための対策等を使用者に示すことが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、主に在宅等で被験者の睡眠状態を測定する装置として有用である。
【符号の説明】
【0069】
A 睡眠状態測定装置
2 センサユニット
3 制御部
11 ネックバンド
20 センサ部
21,22 光学センサ
23 加速度センサ
24 呼吸センサ(音センサ)
33 判定部