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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】流体封止装置及び圧力検出器校正装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 27/02 20060101AFI20230208BHJP
【FI】
G01L27/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019101224
(22)【出願日】2019-05-30
(65)【公開番号】P2019211477
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2018104671
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【弁理士】
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100137648
【弁理士】
【氏名又は名称】吉武 賢一
(72)【発明者】
【氏名】滝本 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 正明
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-038741(JP,A)
【文献】特開2002-039903(JP,A)
【文献】特開2018-025499(JP,A)
【文献】特開平11-345027(JP,A)
【文献】国際公開第2011/067877(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0230915(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00-23/32
G01L 27/00-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体導入口及び流体排出口並びに内部に流体流路を形成した圧力封止構造体と、
前記圧力封止構造体を所定温度に調整する温調器と、
前記圧力封止構造体内の温度を検出する温度検出器と、
前記圧力封止構造体内の圧力を検出する圧力検出器と、
前記流体導入口の上流に設けた導入側開閉弁と、
前記流体排出口の下流に設けた排出側開閉弁と、
前記排出側開閉弁の上流側又は下流側に配設した絞りと、
前記流体導入口を介して前記流体流路に流体を供給する流体供給装置と、
前記流体供給装置、前記導入側開閉弁及び前記排出側開閉弁を制御し、前記圧力封止構造体内に流体を封止する流体封止制御器と、を備え、
前記流体封止制御器は、設定圧力よりも高い一次圧力まで圧力封止構造体内圧力を昇圧させて流体を封止した後、前記排出側開閉弁を開放し、前記圧力検出器から検出される値が前記設定圧力を前記温度検出器で検出した温度に対応した誤差修正値により修正した修正設定圧力となったとき前記排出側開閉弁を閉止するように制御する流体封止装置。
【請求項2】
前記流体封止制御器は、導入する流体の種類及び圧力封止構造体内温度に応じた誤差修正値テーブルを記憶する記憶装置を備えた請求項1に記載の流体封止装置。
【請求項3】
流体導入口及び流体排出口並びに内部に流体流路を形成した圧力封止構造体と、
前記圧力封止構造体を所定温度に保持する恒温槽と、
前記圧力封止構造体内の温度を検出する温度検出器と、
前記圧力封止構造体内の圧力を検出する圧力検出器と、
前記流体導入口の上流に設けた導入側開閉弁と、
前記流体排出口の下流に設けた排出側開閉弁と、
前記排出側開閉弁の上流側又は下流側に配設した絞りと、
前記導入側開閉弁と流体導入口との間に配設した、前記圧力検出器より高精度な精密圧力検出器と、
前記流体導入口を介して前記流体流路に流体を供給する流体供給装置と、
前記流体供給装置、前記導入側開閉弁及び前記排出側開閉弁を制御し、前記圧力封止構造体内に流体を封止するとともに、前記圧力検出器の検出圧力を校正する流体封止制御器とを備え、
前記流体封止制御器は、設定圧力よりも高い一次圧力まで圧力封止構造体内圧力を昇圧して流体を封止した後、前記排出側開閉弁を開放し、前記精密圧力検出器から検出される値が前記設定圧力を前記温度検出器で検出した温度に対応した誤差修正値により修正した修正設定圧力となったとき前記排出側開閉弁を閉止し、前記圧力検出器の検出値を設定圧力に校正するように制御する圧力検出器校正装置。
【請求項4】
前記流体封止制御器は、前記温度検出器からの検出値に基づいて、複数の温度で前記圧力検出器の圧力を校正するようにした請求項3に記載の圧力検出器校正装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体流路が形成された圧力封止構造体に流体を所望の封止圧力で封止する流体圧力封止装置、及び、流体流路内に設けられた圧力検出器を校正するための圧力検出器校正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体流路が形成された圧力封止構造体に流体を所望の封止圧力で封止する方法として、次の様な方法があった。先ず、流体流路内を加熱装置、冷却装置又は保温装置により所定温度に保ちつつ、前記流体流路の下流側を閉鎖しておいて、前記流体流路内に設けた圧力検出器により前記流体流路内の流体を圧力測定しつつ、前記流体流路の上流側から流体を供給し、前記流体流路内の流体が所望の封止圧力より高い所定の一次圧力になったときに前記流体流路の上流側を閉鎖する。次に、圧力測定しつつ前記流体流路内の流体を絞りを介して徐々に前記流体流路内から排気することにより、前記流体流路内を徐々に減圧する。そして前記流体流路内が所望の封止圧力に達した時に、前記絞りからの排気を止め、前記流体流路内を所望圧力にする。前記加熱装置、前記冷却装置又は前記保温装置により前記流体流路内を所定温度に保持するのは、前記圧力検出器が温度依存性を有するからである。
【0003】
また、従来において、前記流体流路内に設けられた前記圧力検出器を校正するために、前記圧力検出器より高精度の精密圧力検出器を用意し、上記従来方法における圧力測定を前記圧力検出器に代えて前記精密圧力検出器により行って、前記流体流路内を所望の封止圧力に調節し、前記圧力検出器の検出値と前記精密圧力検出器の検出値とを比較して前記圧力検出器を校正していた。例えば、原料ガスを半導体製造装置に供給するガス供給ラインに組み込まれ、前記ガス供給ラインを流れる前記原料ガスの濃度を測定するように構成された濃度測定装置(特許文献1等)では、測定濃度が圧力依存性を有するため、ケーシング内のガス流路に圧力検出器が設けられており、この圧力検出器の校正がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-025499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の方法では、前記絞りからの排気を閉鎖した時点では前記流体流路内の封止圧力はほぼ設定圧力になっているが、しばらくすると前記流体流路内の前記封止圧力が若干高めに変動し、前記封止圧力と設定圧力と間の誤差が拡大し、所望の封止圧力で正確に封止することができない事象が生じていた。これは、前記濃度測定装置の前記圧力検出器を構成する際も同様である。
【0006】
そこで、本発明は、流体流路内の封止圧力と設定圧力との間の誤差をよりいっそう小さくすることができる、流体封止装置及び圧力検出器校正装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意研究の結果、上記従来方法において前記絞りからの排気を止めた後に前記流体流路内の圧力上昇が生じる主な原因として、前記絞りを介して前記流体流路内の流体を徐々に排気して減圧する際に、前記流体流路内の流体の温度が断熱膨張により低下し、前記絞りからの排気を止めた後に前記流体流路内の流体が所定温度に戻る際に圧力が上昇することにあることを見出した。
【0008】
そこで、上記目的を達成するため、本発明に第1の態様は、流体封止装置であって、流体導入口及び流体排出口並びに内部に流体流路を形成した圧力封止構造体と、前記圧力封止構造体を所定温度に調整する温調器と、前記圧力封止構造体内の温度を検出する温度検出器と、前記圧力封止構造体内の圧力を検出する圧力検出器と、前記流体導入口の上流に設けた導入側開閉弁と、前記流体排出口の下流に設けた排出側開閉弁と、前記排出側開閉弁の上流側又は下流側に配設した絞りと、前記流体導入口を介して前記流体流路に流体を供給する流体供給装置と、前記流体供給装置、前記導入側開閉弁及び前記排出側開閉弁を制御し、前記圧力封止構造体内に流体を封止する流体封止制御器と、を備え、前記流体封止制御器は、設定圧力よりも高い一次圧力まで圧力封止構造体内圧力を昇圧させて流体を封止した後、前記排出側開閉弁を開放し、前記圧力検出器から検出される値が前記設定圧力を前記温度検出器で検出した温度に対応した誤差修正値により修正した修正設定圧力となったとき排出側開閉弁を閉止するように制御する。
【0009】
本発明の第2の態様は、好適には、上記第1の態様の流体封止装置において、前記流体封止制御器が、導入する流体の種類及び圧力封止構造体内温度に応じた誤差修正値テーブルを記憶する記憶装置を備える。
【0010】
また、本発明の第3の態様は、圧力検出器校正装置であって、流体導入口及び流体排出口並びに内部に流体流路を形成した圧力封止構造体と、前記圧力封止構造体を所定温度に保持する恒温槽と、前記圧力封止構造体内の温度を検出する温度検出器と、前記圧力封止構造体内の圧力を検出する圧力検出器と、前記流体導入口の上流に設けた導入側開閉弁と、前記流体排出口の下流に設けた排出側開閉弁と、前記排出側開閉弁の上流側又は下流側に配設した絞りと、前記導入側開閉弁と流体導入口との間に配設した、前記圧力検出器より高精度な精密圧力検出器と、前記流体導入口を介して前記流体流路に流体を供給する流体供給装置と、前記流体供給装置、前記導入側開閉弁及び前記排出側開閉弁を制御し、前記圧力封止構造体内に流体を封止するとともに、前記圧力検出器の検出圧力を校正する流体封止制御器とを備え、前記流体封止制御器は、設定圧力よりも高い一次圧力まで圧力封止構造体内圧力を昇圧して流体を封止した後、前記排出側開閉弁を開放し、前記精密圧力検出器から検出される値が前記設定圧力を前記温度検出器で検出した温度に対応した誤差修正値により修正した修正設定圧力となったとき排出側開閉弁を閉止し、前記圧力検出器の検出値を設定圧力に校正するように制御する。
【0011】
また、本発明の第4の態様は、好適には、上記第3の態様の圧力検出器校正装置において、前記流体封止制御器が、前記温度検出器からの検出値に基づいて、複数の温度で前記圧力検出器の圧力を校正する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、減圧による温度低下からの温度復帰による温度上昇に伴う圧力上昇分を誤差修正値としてあらかじめ設定し、誤差修正値分だけ設定圧力より加減して流体を封止することにより、封止圧力と目標圧力との誤差を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る圧力検出器校正装置の一実施形態を示すブロック図である。
図2】本発明に係る圧力検出器校正装置を用いた試験データを示す表である。
図3】本発明に係る圧力検出器校正装置による封止圧力の修正方法を説明するためのグラフである。
図4】本発明に係る圧力検出器校正装置による制御フローを示すフローチャートである。
図5】本発明に係る流体封止装置の一実施形態を示すブロック図である。
図6】本発明に係る圧力検出器校正装置の別の実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
先ず、本発明に係る圧力検出器校正装置の一実施形態について、図1図4を参照しつつ説明する。
【0015】
図1に示すように、圧力検出器校正装置10は、流体導入口21及び流体排出口22並びに内部に流体流路20を形成した圧力封止構造体2と、圧力封止構造体2を所定温度に保持する恒温槽30と、圧力封止構造体内の温度を検出する温度検出器Tと、圧力封止構造体2内の圧力を検出する圧力検出器Pと、流体導入口21の上流に設けられた導入側開閉弁23と、流体排出口22の下流に設けられた排出側開閉弁24と、排出側開閉弁24の上流側又は下流側に配設された絞り4(本実施形態においては、排出側開閉弁24の下流側に配設している。)と、導入側開閉弁23と流体導入口21との間に配設されて圧力検出器Pより高精度な精密圧力検出器CMと、流体導入口21を介して圧力封止構造体2内の流体流路20に流体を供給する流体供給装置5と、流体供給装置5、導入側開閉弁23及び排出側開閉弁24を制御し、圧力封止構造体2内に流体を封止するとともに、圧力検出器Pの検出圧力を校正する流体封止制御器6と、を備えている。排気側に配設する開閉弁25は絞り4を介さずに圧力封止構造体2内の流体を排出するときに使用するもので、本実施形態においては閉鎖状態である。図1の符号8は、圧力レギュレータ又は圧力コントローラを示す。
【0016】
絞り4は、絞り量を制御可能なタイプ、例えば比例制御式可変絞り弁でもよいし、制御不要なタイプ、例えば、オリフィスプレートでもよい。なお、図示例では、制御可能な絞り4を例示している。
【0017】
流体封止制御器6は、設定圧力よりも高い一次圧力まで圧力封止構造体2内の圧力を昇圧して流体を封止した後、排出側開閉弁24を開放し、精密圧力検出器CMから検出される値が温度検出器Tで検出した温度に対応した誤差修正値により前記設定圧力を修正した修正設定圧力となったとき排出側開閉弁24を閉止し、圧力検出器Pの検出値を設定圧力に校正するように制御する。
【0018】
次に誤差修正値及び修正設定圧力を得る手順について、図1に加えて、図2の表の試験データを参照して詳細に説明する。校正作業の前提として、図1を参照して、恒温槽30を設定温度に設定し、圧力封止構造体2を設定温度に保持される。この試験では前記設定温度を100℃~150℃の間で5℃、10℃の間隔で複数の温度に設定した。設定する温度範囲はこれに限られるものではなく、圧力封止を必要とする機器に応じて広範囲に設定することができる。例えば、濃度測定器においては25℃~150℃、流量計測装置においては15℃~40℃の範囲で設定することが好ましい。圧力検出器Pは、温度依存性があるため、温度を所定温度に保って、かつ、複数の温度において校正する必要があるためである。なお、この試験において、圧力検出器Pを半導体ピエゾ抵抗拡散圧力センサとし、精密圧力検出器CMは、高精度なキャパシタンスマノメータ(隔膜式静電容量対応の圧力計)とした。精密圧力検出器CMは、恒温槽30の外側に配置されている。
【0019】
このように恒温槽30をセットしておいて、先ずトライ一回目(図2参照)で、排出側開閉弁24を閉じ、導入側開閉弁23を開いて流体供給装置5から流体流路20内に流体を供給し、精密圧力検出器CMの検出圧力が設定圧力より高い一次圧力になった時に導入側開閉弁23を閉じて設定圧力より高い一次圧力で流体流路20を封止する。この試験では200Torrとした。前記一時圧力は、特に限定するものではなく、設定圧力よりも10%程度高い圧力とする。この試験では設定圧力200Torrに対し、一次圧力は220Torrとした。前記一次圧力は適宜設定できるが、例えば、前記設定圧力の105~150%の範囲で設定することができる。勿論、前記設定圧力はこれに限られるものではなく、100Torr、25Torrの他、封止する対象機器に応じて広範囲に設定することが可能である。
【0020】
次いで、排出側開閉弁24を開いて、絞り4から少しずつ流体流路20内の流体を排出させて流体流路20内を減圧し、精密圧力検出器CMの検出圧力が前記設定圧力である200Torrになった時に排出側開閉弁24を閉じる。精密圧力検出器CMは、所定時間間隔毎、この試験では10ミリ秒毎に圧力を検出する。
【0021】
排出側開閉弁24を閉じて、流体流路20内が安定するまでの所定時間が経過してからの精密圧力検出器CMの検出圧力を図2の表のトライ1回目の封止圧力とした。前記流体流路20内が安定するまでの所定時間(安定時間)は、特に限定するものではなく、圧力の降下(断熱膨張)に伴って低下した圧力封止構造体2の温度、より具体的には流体流路20の温度が、恒温槽30で保たれる温度に復帰するまでの時間とすることができる。図2の表から、トライ1回目の封止圧力は、設定圧力(この試験では200Torr)との誤差が0.115%~0.173%あることが分かる。
【0022】
トライ1回目においてこのような誤差が生じる主な要因は、絞り4を介して流体流路20内の流体を徐々に排気して減圧する際に、流体流路20内の流体の温度が低下し、絞り4からの排気を止めた後に流体流路20内の流体が恒温槽30で設定された設定温度に戻る際に圧力が上昇するためであると考えられる。図2の表のトライ1回目は、従来の封止方法と同じである。
【0023】
次に、トライ2回目で、全ての開閉弁21,24を開いて流体流路20内の流体を一旦排出してリセットする。それから、再び、排出側開閉弁24を閉じ、流体供給装置5から流体流路20内に流体を供給する。そして、精密圧力検出器CMの検出圧力が設定圧力より高い一次圧力になった時に導入側開閉弁23を閉じる。それにより、設定圧力より高い一次圧力で流体流路20を封止する。続いて、排出側開閉弁24を開いて、絞り4を介して流体流路20内の流体を少しずつ排出させる。それにより、流体流路20内を減圧する。そして、精密圧力検出器CMの検出圧力が後述する修正設定圧力になった時に排出側開閉弁24を閉じる。さらに、流体流路20内の温度が安定するまでの所定時間が経過してからの精密圧力検出器CMの検出圧力を封止圧力として検出する。その封止圧力が図2の表のトライ2回目の封止圧力として示されている。前記所定時間(安定時間)は、上述したトライ1回目の時と同様に流体流路20の温度が恒温槽30で保たれる温度に復帰するまでの時間である。図2の表から、トライ2回目の封止圧力は、設定圧力200Torrに対する誤差(封止圧力-設定圧力)が-0.040%~0.035%あることが分かる。
【0024】
図2の表を参照して、一次圧力からの減圧時において、トライ1回目では精密圧力検出器CMの検出圧力が設定圧力である200Torrになった時に排出側開閉弁24を閉じた。一方、トライ2回目では、設定圧力とトライ1回目の封止圧力との誤差圧力(=封止圧力-設定圧力)を誤差修正値(第1誤差修正値)とした。そして、設定圧力から前記誤差修正値を減算した修正設定圧力(表に示されたトライ2回目の修正設定圧力)を精密圧力検出器CMが検出した時に排出側開閉弁24を閉じている。
【0025】
例えば、図2の表中のサンプル1のトライ1回目では、封止圧力が200.32Torrである。前記封止圧力から設定圧力200torrを差し引いた誤差圧力が+0.32Torrである。前記設定圧力に対してプラス側の誤差圧力がある。この圧力上昇は、上述した減圧時の温度低下からの温度上昇に依るものと考えられる。そこで、トライ2回目のサンプル1では、誤差圧力0.32Torrを誤差修正値(第1誤差修正値)とした。そして、設定圧力200Torrから誤差修正値0.32Torrを減算した圧力199.68Torrを修正設定圧力(第1修正設定圧力)とした。それにより、封止圧力が199.98Torrとなり、設定圧力との誤差は-0.010%となっている。
【0026】
さらに、トライ3回目では、トライ2回目での誤差が比較的大きいサンプル5、7、10、具体的には、基準誤差範囲(この試験例では±0.025%)から外れたサンプルについて、トライ2回目の封止圧力(第1封止圧力)から設定圧力を差し引いた誤差圧力を誤差修正値(第2誤差修正値)とした。そして、第1修正設定圧力から誤差修正値(第2誤差修正値)を減算することにより、トライ3回目の修正設定圧力(第2修正設定圧力)としている。トライ3回目の封止圧力は、設定圧力200Torrに対する誤差(封止圧力-設定圧力)が-0.015%~-0.005%であることが分かる。
【0027】
例えば、トライ3回目のサンプル5では、第1修正設定圧力による第1封止圧力199.94Torrから設定圧力200Torrを差し引いた誤差圧力(第2誤差圧力)が-0.06Torrである。そして、第1修正設定圧力(199.67Torr)から第2誤差圧力(-0.06Torr)である誤差修正値(第2誤差修正値)を減算した199.73Torrを第2修正設定圧力とする。それにより、トライ3回目の封止圧力(第2封止圧力)が199.98Torrとなり、設定圧力200Torrと第2封止圧力との間の誤差が-0.010%となっている。すなわち、トライ3目のサンプル5では、設定圧力200Toorに対して、第1誤差修正値を減算し、更に、第2誤差修正値を減算して、第2修正設定圧力としている。
【0028】
上記のように修正設定圧力を設定することにより、設定圧力と封止圧力との間の誤差が従来(トライ1回目と同じ。)より小さくなっている。設定圧力と封止圧力と間の誤差が基準誤差範囲から外れる場合は、上記と同様のプロセスによりトライ回数を増やして、第3誤差修正値、第3修正設定圧力、更には、第4誤差修正値、第4修正設定圧力・・・・を算出して、誤差が基準誤差範囲内となるようにすることができる。
【0029】
誤差修正値は、上述したように、複数回の計測により決定し、フィードバックして最適な封止圧力を得るようにする他、恒温槽30の設定温度、流体流路20の容積(表面積)、設定圧力より高い一次圧力の値、一次圧力からの圧力降下速度(時間)等によって、断熱膨張による温度低下を計算により求めることができる。この計算された温度と設定温度の差分ΔT℃から所定時間経過後の圧力も計算により求めることができ、この値に基づいて誤差修正値を設定することもできる。
【0030】
図3は、誤差修正値を算出するプロセスを説明するためのグラフである。図3のグラフで、設定圧力は200Torrである。図3において、絞り4から流体を排出して減圧している際に排出側開閉弁24を閉鎖するタイミングは、上段のグラフでは200Torrで閉鎖したときの封止圧力が200.32Torrである。一方、下段のグラフでは、修正設定圧力199.98Torrで閉鎖したときの封止圧力が199.98Torrである。グラフのカーブは、時間とともに絞り4から流体を排出して減圧している状態を示している。
【0031】
流体封止制御器6は、流体供給装置5、導入側開閉弁23と排出側開閉弁24の開閉タイミングを制御することにより、第1誤差修正値、第2誤差修正値等の誤差修正値を順次算出することができる。流体封止制御器6は、第1誤差修正値だけ算出する場合もある。そして、流体封止制御器6は、算出された誤差修正値を記憶装置60に記憶しておき、封止圧力が基準誤差範囲内になるまで誤差修正値を算出することができる。このように、誤差修正値を加味して封止することで、目標値に対して、±0.025%の範囲に封止圧力を収めることができる。
【0032】
即ち、絞り4から流体を排出して減圧している際に排出側開閉弁24を閉鎖するタイミングを次のように算出する。初回(1回目)は、設定圧力で閉鎖してその時の封止圧力から第1誤差修正値を算出し、第1誤差修正値を記憶しておく。2回目は、第1誤差修正値から算出した第1修正設定圧力で閉鎖する。その時の第1封止圧力が基準誤差範囲から外れていれば、3回目で、第1修正設定圧力と第1封止圧力とから第2誤差修正値を算出する。このようして封止圧力が基準誤差範囲内になるまで繰り返す。このように誤差修正値を算出するプロセスを実行するプログラムを流体封止制御器6の記憶装置60に記憶しておくことができる。
【0033】
プロセスを実行するプログラムとしては、例えば、上述した恒温槽30の設定温度、流体流路20の容積(表面積)、設定圧力より高い一次圧力の値、一次圧力からの圧力降下速度(時間)を入力又は検出し、誤差修正値を対応する設定温度・設定圧力に応じて決定することもできる。
【0034】
図4は、流体封止制御器6により誤差修正値、修正設定圧力を算出する処理手順の一例を示すフローチャートである。図4のフローチャートにおいて、Tは温度検出器Tの検出温度、Tsは設定温度、Pdは精密圧力検出器CMの検出圧力、Psは設定圧力、Ps+αは一次圧力、Pdtは安定時間t秒経過後の精密圧力検出器CMの検出圧力、ΔP1は誤差修正値(第1誤差修正値)、Pms1は修正設定圧力(第1修正設定圧力)、Aは基準誤差範囲、ΔP2は誤差修正値(第2誤差修正値)、Pms2は修正設定圧力(第2修正設定圧力)を其々示している。図4のフローチャートは、図2の表に示したトライ1回~3回目のフローであり、トライ3回目の封止圧力が基準誤差範囲外である場合にトライ4回以降のフローを追加することもできる。
【0035】
このようにして設定圧力と封止圧力との誤差をできるだけ小さくしておいて、圧力検出器Pの検出値を設定圧力に校正することにより、圧力検出器Pの校正精度が向上する。圧力検出器Pの校正は、流体封止制御器6において行われ、圧力検出器Pの出力値を設定圧力に一致するように補正される。
【0036】
圧力検出器Pは温度依存性があるため、恒温槽30の設定温度を複数の温度に設定し、其々の設定温度において圧力検出器Pを校正することにより、圧力検出器Pの検出精度の向上が図られる。従って、流体封止制御器6は、温度検出器Tからの検出値に基づいて、複数の温度で圧力検出器Pの圧力を校正し、校正時の誤差修正値が記憶装置60に記憶される。記憶装置60は、流体封止制御器6に備えられている。
【0037】
また、流体は、流体の種類によって温度特性が変わるため、流体の種類毎に、圧力検出器Pが校正され、校正時の誤差修正値が、記憶装置60に記憶される。
【0038】
本実施形態では、設定圧力よりも高い所定圧力にした後、絞り4から少しずつ流体流路20内の流体を排出させて流体流路20内を減圧する例を示したが、図6に示すように、導入側開閉弁23、23´を並列に配備し、一方の導入側開閉弁23の上流側又は下流側(図例では下流側)に絞り4を配設し、排出側開閉弁24側に絞りを配設しない構成とすることができる。この場合、所定圧力を設定圧力より低く設定して、所定圧力になったとき排出側開閉弁24と他方の導入側開閉弁23´を閉止し、絞り4を介して所定圧力から少しずつ流体を流体流路20内に導入する。そしてこの場合も、誤差修正値により修正した修正設定圧力になったときに一方の導入側開閉弁23を閉止することで所望の封止圧力に設定することができる。
【0039】
次に、本発明に係る流体封止装置の一実施形態について、以下に図5を参照して説明する。図1に示した圧力検出器校正装置と同一又は類似の構成要素については同符号を付して、重複説明を省略する。
【0040】
図5を参照して、流体封止装置1は、流体導入口21及び流体排出口22並びに内部に流体流路20を形成した圧力封止構造体2と、圧力封止構造体2を所定温度に加熱する温調器3と、圧力封止構造体2内の温度を検出する温度検出器Tと、圧力封止構造体2内の圧力を検出する圧力検出器Pと、流体導入口21の上流に設けた導入側開閉弁23と、流体排出口22の下流に設けた排出側開閉弁24と、排出側開閉弁24の下流に配設した絞り4と、流体導入口21を介して流体流路20に流体を供給する流体供給装置5と、流体供給装置5、導入側開閉弁23及び排出側開閉弁24を制御し、圧力封止構造体2内に流体を封止する流体封止制御器6と、を備える。
【0041】
図5から分かるように、流体封止装置1は、図1に示した圧力検出器校正装置10の精密圧力検出器CMを備えていない点、及び、図1に示した圧力検出器校正装置10の恒温槽30に代えて温調器3を備えている点が、図1に示した圧力検出器校正装置10と相違している。
【0042】
流体封止装置1の流体封止制御器6は、温調器3を制御し、温調器3により圧力封止構造体2を所定の設定温度に設定する。流体封止制御器6は、温度検出器Tにより圧力封止構造体2の温度を検出しており、圧力封止構造体2が所定の設定温度に加熱されていれば、排出側開閉弁24を閉鎖する。次に、流体封止制御器6は、導入側開閉弁23を開放し、流体供給装置5から圧力封止構造体2内に流体を供給する。
【0043】
流体封止装置1の流体封止制御器6は、圧力検出器Pの出力をモニタリングしており、圧力封止構造体2内への流体の供給により圧力封止構造体2内の圧力が昇圧して設定圧力よりも高い一次圧力になったときに、導入側開閉弁23を閉止して流体を封止する。
【0044】
次いで、流体封止制御器6は、排出側開閉弁24を開放し、絞り4から圧力封止構造体2内の流体を徐々に排出させることで、圧力封止構造体2内の圧力が減圧し始める。
【0045】
流体封止制御器6は、圧力封止構造体2内の圧力減少を圧力検出器Pにより所定時間間隔毎、例えば10ミリ秒毎に検出し、圧力検出器Pから検出される値が設定圧力に温度検出器Tで検出した温度に対応した誤差修正値を加減した修正設定圧力となったときに排出側開閉弁24を閉止する。
【0046】
誤差修正値は、上記圧力検出器校正装置で得られた誤差修正値を用いることができ、予め、記憶装置60に、流体種類毎に、圧力及び温度に対応した誤差修正値テーブルを記憶しておくことができる。誤差修正値の加減の仕方については、上記圧力検出器校正装置の場合と同様である。
【0047】
或いは、流体封止制御器6は、上記圧力検出器校正装置において説明したのと同様に、誤差修正値を得るためのプロセスプログラムを実行し、記憶装置60に、圧力及び温度に対応した誤差修正値を算出して記憶することもできる。
【0048】
絞り4からの流体の排出によって下がった流体温度が、温調器3の加熱作用により設定温度に戻ったときに、上記した圧力検出器校正装置の実施例から分かるように、圧力封止構造体2内の圧力は設定圧力と封止圧力の誤差が小さくなり、設定圧力により近い封止圧力で流体を封止することができる。
【0049】
本発明は、上記実施形態に限定解釈されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 流体封止装置
2 圧力封止構造体
3 温調器
4 絞り
5 流体供給装置
6 流体封止制御器
10 圧力検出器校正装置
20 流体流路
21 流体導入口
22 流体排出口
23、23´ 導入側開閉弁
24 排出側開閉弁
60 記憶装置
CM 精密圧力検出器
P 圧力検出器
T 温度検出器
図1
図2
図3
図4
図5
図6