IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イントリンシック ライフサイエンシズ リミテッド ライアビリティ カンパニーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】ヒトエリスロフェロン抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20230208BHJP
   C07K 16/26 20060101ALI20230208BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20230208BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20230208BHJP
【FI】
G01N33/53 D
C07K16/26
G01N33/543 545A
C12P21/08 ZNA
【請求項の数】 39
(21)【出願番号】P 2019550145
(86)(22)【出願日】2018-03-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-09
(86)【国際出願番号】 US2018022238
(87)【国際公開番号】W WO2018169999
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-03-12
(31)【優先権主張番号】62/471,195
(32)【優先日】2017-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/470,853
(32)【優先日】2017-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515254633
【氏名又は名称】イントリンシック ライフサイエンシズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ウエスターマン、マーク
(72)【発明者】
【氏名】ハン、フイリン
(72)【発明者】
【氏名】オストランド、ボーン
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-536337(JP,A)
【文献】特開平04-110660(JP,A)
【文献】Huiling Han et al.,A Novel Dual Monoclonal Sandwich ELISA for Human Erythroferrone,blood,2016年,vol. 128, no. 22
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中のエリスロフェロン(ERFE)タンパク質の存在を検出するための及び/又はその量を測定するためのアッセイであって、
第1の抗体-ERFE複合体を形成するために前記サンプルを第1の抗体と接触させることと、
その後、前記第1の抗体と第2の抗体とが同一ではないとして、前記第1の抗体-ERFE複合体に結合した前記第2の抗体の存在を検出し及び/又はその量を測定し、これにより、前記サンプル中のERFEタンパク質の存在及び/又は量を決定することと、
を含
前記第1の抗体及び前記第2の抗体は、
(a)配列番号19-21のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域(CDR)及び配列番号24-26のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRを有する抗体、
(b)配列番号29-31のアミノ酸配列を有する重鎖CDR及び配列番号34-36のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRを有する抗体、
(c)配列番号39-41のアミノ酸配列を有する重鎖CDR及び配列番号44-46のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRを有する抗体、
(d)配列番号49-51のアミノ酸配列を有する重鎖CDR及び配列番号54-56のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRを有する抗体、並びに、
(e)配列番号59-61のアミノ酸配列を有する重鎖CDR及び配列番号64-66のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRを有する抗体、
から選択される、
アッセイ。
【請求項2】
前記第1の抗体又は前記第2の抗体は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、
(a)前記VHは配列番号18のアミノ酸配列を含み、及び、前記VLは配列番号23のアミノ酸配列を含む、
(b)前記VHは配列番号28のアミノ酸配列を含み、及び、前記VLは配列番号33のアミノ酸配列を含む、
(c)前記VHは配列番号38のアミノ酸配列を含み、及び、前記VLは配列番号43のアミノ酸配列を含む、
(d)前記VHは配列番号48のアミノ酸配列を含み、及び、前記VLは配列番号53のアミノ酸配列を含む、又は、
(e)前記VHは配列番号58のアミノ酸配列を含み、及び、前記VLは配列番号63のアミノ酸配列を含む、
請求項1に記載のアッセイ。
【請求項3】
前記第1の抗体又は前記第2の抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、
(a)前記重鎖は配列番号17のアミノ酸配列を含み、及び、前記軽鎖は配列番号22のアミノ酸配列を含む、
(b)前記重鎖は配列番号27のアミノ酸配列を含み、及び、前記軽鎖は配列番号32のアミノ酸配列を含む、
(c)前記重鎖は配列番号37のアミノ酸配列を含み、及び、前記軽鎖は配列番号42のアミノ酸配列を含む、
(d)前記重鎖は配列番号47のアミノ酸配列を含み、及び、前記軽鎖は配列番号52のアミノ酸配列を含む、又は、
(e)前記重鎖は配列番号57のアミノ酸配列を含み、及び、前記軽鎖は配列番号62のアミノ酸配列を含む、
請求項1に記載のアッセイ。
【請求項4】
前記アッセイはELISAアッセイを含む、請求項1に記載のアッセイ。
【請求項5】
前記サンプルは血清サンプルである、請求項1に記載のアッセイ。
【請求項6】
前記第1の抗体及び前記第2の抗体は、配列番号1及び/又は3-16の少なくとも1つの配列を含む、当該配列から実質的になる、又は当該配列からなるERFEポリペプチドを、特異的に認識する、請求項1に記載のアッセイ。
【請求項7】
前記第1の抗体は、配列番号29-31のアミノ酸配列を有する重鎖CDR及び配列番号34-36のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRを有する抗体を含む、請求項1に記載のアッセイ。
【請求項8】
前記第1の抗体は固体支持体上にコートされている、請求項1からのいずれか1項に記載のアッセイ。
【請求項9】
前記固体支持体はELISAプレートである、請求項に記載のアッセイ。
【請求項10】
前記検出工程は、第1の抗体-ERFEポリペプチド複合体を標識化された第2の抗体と接触させることを含む、請求項1に記載のアッセイ。
【請求項11】
前記第2の抗体は、配列番号19-21のアミノ酸配列を有する重鎖CDR及び配列番号24-26のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRを有する抗体を含む、請求項10に記載のアッセイ。
【請求項12】
前記標識はビオチンである、請求項10に記載のアッセイ。
【請求項13】
前記標識はセイヨウワサビペルオキシダーゼである、請求項10に記載のアッセイ。
【請求項14】
重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含むエリスロフェロン(ERFE)結合抗体又はそのERFE結合断片であって
(a前記VHは配列番号18のアミノ酸配列を含み、及び、前記VLは配列番号23のアミノ酸配列を含む
前記VHは配列番号28のアミノ酸配列を含み、及び、前記VLは配列番号33のアミノ酸配列を含む
前記VHは配列番号38のアミノ酸配列を含み、及び、前記VLは配列番号43のアミノ酸配列を含む
前記VHは配列番号48のアミノ酸配列を含み、及び、前記VLは配列番号53のアミノ酸配列を含む、又は、
前記VHは配列番号58のアミノ酸配列を含み、及び、前記VLは配列番号63のアミノ酸配列を含む、
エリスロフェロン(ERFE)結合抗体又はそのERFE結合断片。
【請求項15】
ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片であって、
前記抗体が
)配列番号19-21のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域(CDR)及び配列番号24-26のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR、
)配列番号29-31のアミノ酸配列を有する重鎖CDR及び配列番号34-36のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR、
)配列番号39-41のアミノ酸配列を有する重鎖CDR及び配列番号44-46のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR、
)配列番号49-51のアミノ酸配列を有する重鎖CDR及び配列番号54-56のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR、又は、
)配列番号59-61のアミノ酸配列を有する重鎖CDR及び配列番号64-66のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR、
を含む、
ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
【請求項16】
前記抗体は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、
(a)前記VHは配列番号18のアミノ酸配列を含み、及び、前記VLは配列番号23のアミノ酸配列を含む、
(b)前記VHは配列番号28のアミノ酸配列を含み、及び、前記VLは配列番号33のアミノ酸配列を含む、
(c)前記VHは配列番号38のアミノ酸配列を含み、及び、前記VLは配列番号43のアミノ酸配列を含む、
(d)前記VHは配列番号48のアミノ酸配列を含み、及び、前記VLは配列番号53のアミノ酸配列を含む、又は、
(e)前記VHは配列番号58のアミノ酸配列を含み、及び、前記VLは配列番号63のアミノ酸配列を含む、
請求項15に記載のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
【請求項17】
前記抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、
(a)前記重鎖は配列番号17のアミノ酸配列を含み、及び、前記軽鎖は配列番号22のアミノ酸配列を含む、
(b)前記重鎖は配列番号27のアミノ酸配列を含み、及び、前記軽鎖は配列番号32のアミノ酸配列を含む、
(c)前記重鎖は配列番号37のアミノ酸配列を含み、及び、前記軽鎖は配列番号42のアミノ酸配列を含む、
(d)前記重鎖は配列番号47のアミノ酸配列を含み、及び、前記軽鎖は配列番号52のアミノ酸配列を含む、又は、
(e)前記重鎖は配列番号57のアミノ酸配列を含み、及び、前記軽鎖は配列番号62のアミノ酸配列を含む、
請求項14から16のいずれか1項に記載のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
【請求項18】
前記抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、又は抗体断片である、請求項14から17のいずれか1項に記載のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
【請求項19】
サンプル中のエリスロフェロン(ERFE)タンパク質の存在を検出するための及び/又はその量を測定するためのアッセイであって、
第1の抗体-ERFE複合体を形成するために、前記サンプルを、請求項14から18のいずれか1項に記載の抗体を含む第1の抗体と接触させることと、
その後、第2の抗体は請求項14から18のいずれか1項に記載の抗体を含み、前記第1の抗体と前記第2の抗体とが同一ではないとして、前記第1の抗体-ERFE複合体に結合した前記第2の抗体の存在を検出し及び/又はその量を測定することと、
これにより、前記サンプル中のERFEタンパク質の存在及び/又は量を決定することと、
を含む、
アッセイ。
【請求項20】
前記アッセイはELISAアッセイを含む、請求項19に記載のアッセイ。
【請求項21】
前記サンプルは血清サンプルである、請求項19に記載のアッセイ。
【請求項22】
前記第1の抗体は、配列番号1及び/又は3-16の少なくとも1つの配列を含む、当該配列から実質的になる、又は当該配列からなるERFEポリペプチドを、特異的に認識する、請求項19に記載のアッセイ。
【請求項23】
前記第1の抗体は固体支持体上にコートされている、請求項19から22のいずれか1項に記載のアッセイ。
【請求項24】
前記固体支持体はELISAプレートである、請求項23に記載のアッセイ。
【請求項25】
前記検出工程は、第1の抗体-ERFEポリペプチド複合体を標識化された第2の抗体と接触させることを含む、請求項19に記載のアッセイ。
【請求項26】
前記標識はビオチンである、請求項25に記載のアッセイ。
【請求項27】
前記標識はセイヨウワサビペルオキシダーゼである、請求項25に記載のアッセイ。
【請求項28】
ERFE又はマイオネクチンに関連する疾患のある対象での赤血球生成を評価する方法であって、前記対象由来のサンプルを請求項1から13又は19から27のいずれか1項に記載のアッセイに掛けることを含む、方法。
【請求項29】
前記疾患はサラセミアである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記疾患は心血管疾患である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
ERFE又はマイオネクチンに関連する疾患のある対象での赤血球生成を評価する方法であって、請求項14から18のいずれか1項に記載の抗体で前記対象由来のサンプル中のERFEを検出することを含む、方法。
【請求項32】
捕捉抗体及び検出抗体を含み、
(i)前記捕捉抗体は配列番号58の重鎖可変領域(VH)及び配列番号63の軽鎖可変領域(VL)を含み、前記検出抗体は、(a)配列番号18のVH及び配列番号23のVL(b)配列番号28のVH及び配列番号33のVL、又は(c)配列番号38のVH及び配列番号43のVLを含む
(ii)前記捕捉抗体は配列番号18のVH及び配列番号23のVLを含み、前記検出抗体は、(a)配列番号28のVH及び配列番号33のVL(b)配列番号38のVH及び配列番号43のVL(c)配列番号58のVH及び配列番号63のVL、又は(d)配列番号48のVH及び配列番号53のVLを含む
(iii)前記捕捉抗体は配列番号28のVH及び配列番号33のVLを含み、前記検出抗体は、(a)配列番号18のVH及び配列番号23のVL(b)配列番号38のVH及び配列番号43のVL(c)配列番号58のVH及び配列番号63のVL、又は(d)配列番号48のVH及び配列番号53のVLを含む
(iv)前記捕捉抗体は配列番号38のVH及び配列番号43のVLを含み、前記検出抗体は、(a)配列番号18のVH及び配列番号23のVL(b)配列番号28のVH及び配列番号33のVL(c)配列番号58のVH及び配列番号63のVL、又は(d)配列番号48のVH及び配列番号53のVLを含む
(v)前記捕捉抗体は配列番号48のVH及び配列番号53のVLを含み、前記検出抗体は、(a)配列番号18のVH及び配列番号23のVL(b)配列番号28のVH及び配列番号33のVL(c)配列番号58のVH及び配列番号63のVL、又は(d)配列番号38のVH及び配列番号43のVLを含む、又は、
(vii)前記捕捉抗体及び前記検出抗体は個別に請求項14から18のいずれか1項に記載の抗体であり、前記捕捉抗体及び前記検出抗体は同一ではない、
サンドイッチ免疫アッセイ用のキット。
【請求項33】
前記捕捉抗体は固体支持体に結び付けられている、請求項32に記載のキット。
【請求項34】
前記検出抗体は標識に結び付けられている、請求項32又は33に記載のキット。
【請求項35】
前記標識はビオチンである、請求項34に記載のキット。
【請求項36】
前記標識はセイヨウワサビペルオキシダーゼである、請求項34に記載のキット。
【請求項37】
ストレプトアビジン-セイヨウワサビペルオキシダーゼをさらに含む、請求項35に記載のキット。
【請求項38】
基質をさらに含む、請求項32から37のいずれか1項に記載のキット。
【請求項39】
前記アッセイを実行するための説明書をさらに含む、請求項32から38のいずれか1項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2017年3月13日出願の米国仮特許出願第62/470,853号及び2017年3月14日出願の米国仮特許出願第62/471,195号の利益を主張し、両方の特許出願の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本発明は、鉄代謝を調節するポリペプチドへの抗体と当該抗体の使用法とに関する。
【背景技術】
【0003】
赤血球産生は間違いなく体内での鉄の主な消費元である。赤血球産生の必要に応じて鉄を調節するホルモンの存在が50年以上前から提唱されていた。
【0004】
エリスロフェロン(ERFE)は、エリスロポエチン(EPO)に応答して骨髄で赤芽細胞により産生されるホルモンである。近年の動物実験により、ERFEが、ベースラインの赤血球産生の調節に関与するよりも、むしろ、ヘプシジン発現のストレス赤血球生成特異的調節因子として働くことが示されてきている。高ヘプシジン発現は、食事性鉄の吸収の阻害とマクロファージ及び肝細胞での鉄の隔離とをもたらす。ERFEは、肝臓でのヘプシジンの発現を抑制することで、増加した食事性鉄の吸収と、大出血後の血液質量の回復に必要な貯蔵鉄の回収とに寄与する。さらに、ERFEがβサラセミアなどの遺伝性鉄付加性貧血でのヘプシジン調節に関与していることが明らかとなった。ERFEは血液疾患のある患者での赤血球生成を評価するための臨床的指標としての潜在性を有する。
【0005】
これまで、開発中の及び/又は検証中のヒトERFEアッセイの報告はなかった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、ヒトエリスロフェロン(ERFE)に特異的な抗体と、サンプル内のERFEポリペプチドの存在を検出し及び/又は当該ポリペプチドの量を測定するためのアッセイとを開示する。
【0007】
いくつかの実施形態では、
重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含むエリスロフェロン(ERFE)結合抗体又はそのERFE結合断片であって、
VHは、
(i)配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
(ii)配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
(iii)配列番号38のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
(iv)配列番号48のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、又は、
(v)配列番号58のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
を含み、
VLは、
(vi)配列番号23のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
(vii)配列番号33のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
(viii)配列番号43のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
(ix)配列番号53のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、又は、
(x)配列番号63のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
を含む
エリスロフェロン(ERFE)結合抗体又はそのERFE結合断片が提供される。
【0008】
いくつかの実施形態では、
抗体が
(i)配列番号19-21のアミノ酸配列を有する重鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全て、
(ii)配列番号24-26のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全て、
(iii)配列番号29-31のアミノ酸配列を有する重鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全て、
(iv)配列番号34-36のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全て、
(v)配列番号39-41のアミノ酸配列を有する重鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全て、
(vi)配列番号44-46のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全て、
(vii)配列番号49-51のアミノ酸配列を有する重鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全て、
(viii)配列番号54-56のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全て、
(ix)配列番号59-61のアミノ酸配列を有する重鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全て、
(x)配列番号64-66のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全て、
を含む、
ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片が提供される。
【0009】
いくつかの実施形態では、ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片は、配列番号18のVHと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列と、配列番号23のVLと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、VHは配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、VLは配列番号23のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0010】
いくつかの実施形態では、ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片は、配列番号19-21のアミノ酸配列を有する重鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全てと、配列番号24-26のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全てとを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片は、配列番号28のVHと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号33のVLと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHは配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、VLは配列番号33のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0012】
いくつかの実施形態では、ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片は、配列番号29-31のアミノ酸配列を有する重鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全てと、配列番号34-36のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全てとを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片は、配列番号38のVHと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列と、配列番号43のVLと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、VHは配列番号38のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、VLは配列番号43のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0014】
いくつかの実施形態では、ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片は、配列番号39-41のアミノ酸配列を有する重鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全てと、配列番号44-46のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全てとを含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片は、配列番号48のVHと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列と、配列番号53のVLと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、VHは配列番号48のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、VLは配列番号53のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片は、配列番号49-51のアミノ酸配列を有する重鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全てと、配列番号54-56のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全てとを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片は、配列番号58のVHと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列と、配列番号63のVLと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、VHは配列番号58のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、VLは配列番号63のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0018】
いくつかの実施形態では、ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片は、配列番号59-61のアミノ酸配列を有する重鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全てと、配列番号64-66のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全てとを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片は、VH及びVLを含み、VHは、配列番号18、28、38、48、又は58のアミノ酸配列を含み、かつ、VLは、配列番号23、33、43、53、又は63のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片は、配列番号18、28、38、48、又は58のVH及び配列番号23、33、43、53、又は63のVLを含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片は、配列番号19、29、39、49、又は59のアミノ酸配列を有するCDRH1を含む。いくつかの実施形態では、ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片は、配列番号20、30、40、50、又は60のアミノ酸配列を有するCDRH2を含む。いくつかの実施形態では、ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片は、配列番号21、31、42、52、又は62のアミノ酸配列を有するCDRH3を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片は、配列番号24、34、44、54、又は64のアミノ酸配列を有するCDRL1を含む。いくつかの実施形態では、ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片は、配列番号25、35、45、55、又は65のアミノ酸配列を有するCDRL2を含む。いくつかの実施形態では、ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片は、配列番号26、36、46、56、又は66のアミノ酸配列を有するCDRL3を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片は、キメラ抗体、ヒト化抗体、又は抗体断片である。
【0023】
また、サンプル中のエリスロフェロン(ERFE)タンパク質の存在を検出するための及び/又はその量を測定するためのアッセイであって、第1の抗体-ERFE複合体を形成するために前記サンプルを第1の抗体と接触させることと、その後、前記第1の抗体と第2の抗体とが同一ではないとして、前記第1の抗体-ERFE複合体に結合した前記第2の抗体の存在を検出し及び/又はその量を測定し、これにより、前記サンプル中のERFEタンパク質の存在及び/又は量を決定することと、を含む、アッセイも、本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、第1の抗体は捕捉抗体であり、第2の抗体は検出抗体である。いくつかの実施形態では、アッセイはELISAアッセイを含む。いくつかの実施形態では、サンプルは血清サンプルである。いくつかの実施形態では、第1の抗体は、配列番号1及び/又は3-16の少なくとも1つの配列を含む、当該配列から実質的になる、又は当該配列からなるERFEポリペプチドを、特異的に認識する。
【0024】
本明細書に開示のアッセイのいくつかの実施形態では、第1の抗体は、モノクローナル抗体である9B12、17A5、17E5、2D2、4C1、6H9、7H4、9C7、14B2、及び14D9、又は、これらのERFE結合断片から選択される。いくつかの実施形態では、第1の抗体は本明細書に開示の抗体から洗濯される。いくつかの実施形態では、第1の抗体は4C1又はそのERFE結合断片である。
【0025】
本明細書に開示のアッセイのいくつかの実施形態では、第1の抗体は固体支持体上にコートされている。いくつかの実施形態では、固体支持体はELISAプレートである。
【0026】
本明細書に開示のアッセイのいくつかの実施形態では、検出工程は、第1の抗体-ERFEポリペプチド複合体を標識化された第2の抗体と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、第2の抗体は、9B12、17A5、17E5、2D2、4C1、6H9、7H4、9C7、14B2、及び14D9から選択された標識検出モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、第2の抗体は請求項1から39のいずれか1項に記載の抗体から選択された標識検出抗体である。いくつかの実施形態では、いくつかの実施形態では、第2の抗体は2D2である。いくつかの実施形態では、標識はビオチンである。いくつかの実施形態では、標識はセイヨウワサビペルオキシダーゼである。
【0027】
また、ERFE又はマイオネクチンに関連する疾患のある対象での赤血球生成を評価する方法であって、対象由来のサンプルを本明細書に開示のアッセイに掛けることを含む、方法も、本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、疾患はサラセミアである。いくつかの実施形態では、疾患は心血管疾患である。
【0028】
また、疾患のある対象での赤血球生成を評価する方法であって、本明細書に開示の抗体で対象由来のサンプル中のエリスロフェロンを検出することを含む、方法も、本明細書に開示される。
【0029】
また、捕捉抗体及び検出抗体を含み、
(i)捕捉抗体は17A5であり、検出抗体は、2D2、4C1、又は7H4である、
(ii)捕捉抗体は2D2であり、検出抗体は、4C1、7H4、17A5、又は9B12である、
(iii)捕捉抗体は4C1であり、検出抗体は、2D2、7H4、17A5、又は9B12である、
(iv)捕捉抗体は7H4であり、検出抗体は、2D2、4C1、17A5、又は9B12である、
(v)捕捉抗体は9B12であり、検出抗体は、2D2、4C1、17A5、又は7H4である、
サンドイッチ免疫アッセイ用のキットも、本明細書に開示される。
【0030】
キットのいくつかの実施形態では、捕捉抗体及び検出抗体は異なる抗体である。いくつかの実施形態では、捕捉抗体は固体支持体に結び付けられている。いくつかの実施形態では、検出抗体は標識に結び付けられている。いくつかの実施形態では、標識はビオチンである。いくつかの実施形態では、標識はセイヨウワサビペルオキシダーゼである。いくつかの実施形態では、キットはストレプトアビジン-セイヨウワサビペルオキシダーゼをさらに含む。いくつかの実施形態では、キットは基質をさらに含む。いくつかの実施形態では、キットはアッセイを実行するための説明書をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】マウス(配列番号2)及びヒト(配列番号1)のエリスロフェロン(ERFE)タンパク質のアラインメントを示す。強調配列が配列番号16である。
図2A図2A及びBは、還元ヒト組み換えERFE(レーン1)及び非還元ヒト組み換えERFE(レーン2)のSDS-PAGE(図2A)及びウェスタンン・ブロット(図2B)を示す。還元ERFEの単一の顕著なバンドは特にウェスタンン・ブロットで明瞭な複数のバンドに匹敵するが、このことは多量体組成物を示唆している。レーンPは陽性対照抗原を示す(ウェスタンン・ブロット)。
図2B図2A及びBは、還元ヒト組み換えERFE(レーン1)及び非還元ヒト組み換えERFE(レーン2)のSDS-PAGE(図2A)及びウェスタンン・ブロット(図2B)を示す。還元ERFEの単一の顕著なバンドは特にウェスタンン・ブロットで明瞭な複数のバンドに匹敵するが、このことは多量体組成物を示唆している。レーンPは陽性対照抗原を示す(ウェスタンン・ブロット)。
図3A図3A-Fは、捕捉抗体としての6種のモノクローナル抗体(100ng/ウェルでコート)(図3Aでは17E5、図3Bでは17A5、図3Cでは2D2、図3Dでは4C1、図3Eでは6H9、図3Fでは7H4)と、異なる濃度の組み換えヒトERFE(第1、第2、第3、及び第4の縦棒で、150、75.00、37.50、18.75ng/ウェル)とを用いたペアワイズ・スクリーニングを示す。6種のモノクローナル抗体により補足された異なる濃度のERFEの存在を識別するために8種のビオチン化検出抗体で試験を行った。
図3B図3A-Fは、捕捉抗体としての6種のモノクローナル抗体(100ng/ウェルでコート)(図3Aでは17E5、図3Bでは17A5、図3Cでは2D2、図3Dでは4C1、図3Eでは6H9、図3Fでは7H4)と、異なる濃度の組み換えヒトERFE(第1、第2、第3、及び第4の縦棒で、150、75.00、37.50、18.75ng/ウェル)とを用いたペアワイズ・スクリーニングを示す。6種のモノクローナル抗体により補足された異なる濃度のERFEの存在を識別するために8種のビオチン化検出抗体で試験を行った。
図3C図3A-Fは、捕捉抗体としての6種のモノクローナル抗体(100ng/ウェルでコート)(図3Aでは17E5、図3Bでは17A5、図3Cでは2D2、図3Dでは4C1、図3Eでは6H9、図3Fでは7H4)と、異なる濃度の組み換えヒトERFE(第1、第2、第3、及び第4の縦棒で、150、75.00、37.50、18.75ng/ウェル)とを用いたペアワイズ・スクリーニングを示す。6種のモノクローナル抗体により補足された異なる濃度のERFEの存在を識別するために8種のビオチン化検出抗体で試験を行った。
図3D図3A-Fは、捕捉抗体としての6種のモノクローナル抗体(100ng/ウェルでコート)(図3Aでは17E5、図3Bでは17A5、図3Cでは2D2、図3Dでは4C1、図3Eでは6H9、図3Fでは7H4)と、異なる濃度の組み換えヒトERFE(第1、第2、第3、及び第4の縦棒で、150、75.00、37.50、18.75ng/ウェル)とを用いたペアワイズ・スクリーニングを示す。6種のモノクローナル抗体により補足された異なる濃度のERFEの存在を識別するために8種のビオチン化検出抗体で試験を行った。
図3E図3A-Fは、捕捉抗体としての6種のモノクローナル抗体(100ng/ウェルでコート)(図3Aでは17E5、図3Bでは17A5、図3Cでは2D2、図3Dでは4C1、図3Eでは6H9、図3Fでは7H4)と、異なる濃度の組み換えヒトERFE(第1、第2、第3、及び第4の縦棒で、150、75.00、37.50、18.75ng/ウェル)とを用いたペアワイズ・スクリーニングを示す。6種のモノクローナル抗体により補足された異なる濃度のERFEの存在を識別するために8種のビオチン化検出抗体で試験を行った。
図3F図3A-Fは、捕捉抗体としての6種のモノクローナル抗体(100ng/ウェルでコート)(図3Aでは17E5、図3Bでは17A5、図3Cでは2D2、図3Dでは4C1、図3Eでは6H9、図3Fでは7H4)と、異なる濃度の組み換えヒトERFE(第1、第2、第3、及び第4の縦棒で、150、75.00、37.50、18.75ng/ウェル)とを用いたペアワイズ・スクリーニングを示す。6種のモノクローナル抗体により補足された異なる濃度のERFEの存在を識別するために8種のビオチン化検出抗体で試験を行った。
図4A図4A-Cは、3種の異なるコーティング抗体(7H4(図4A)、17A5(図4B)、及び4C1(図4C))と4種の異なるビオチン化検出抗体(2D2、17A5、9B12、及び4C1)を用いて行った抗hERFEサンドイッチELISAアッセイを示す。用いた捕捉抗体によらず、すべての検出抗体で良好な相関係数であったが、いくつかの検出抗体は試験したERFE濃度の範囲で他よりも大きな勾配を示した。
図4B図4A-Cは、3種の異なるコーティング抗体(7H4(図4A)、17A5(図4B)、及び4C1(図4C))と4種の異なるビオチン化検出抗体(2D2、17A5、9B12、及び4C1)を用いて行った抗hERFEサンドイッチELISAアッセイを示す。用いた捕捉抗体によらず、すべての検出抗体で良好な相関係数であったが、いくつかの検出抗体は試験したERFE濃度の範囲で他よりも大きな勾配を示した。
図4C図4A-Cは、3種の異なるコーティング抗体(7H4(図4A)、17A5(図4B)、及び4C1(図4C))と4種の異なるビオチン化検出抗体(2D2、17A5、9B12、及び4C1)を用いて行った抗hERFEサンドイッチELISAアッセイを示す。用いた捕捉抗体によらず、すべての検出抗体で良好な相関係数であったが、いくつかの検出抗体は試験したERFE濃度の範囲で他よりも大きな勾配を示した。
図5A図5A及びBは、プロトタイプのモノクローナルサンドイッチELISA(捕捉抗体としてmAb 4C1、検出抗体としてmAb 2D2)を用いて作成した8点標準曲線を線形プロット(図5A)及び対数プロット(図5B)でグラフに示す。標準曲線の低濃度部分の点同士を良好に区別でき(図5B)、これにより血清中で測定したERFE濃度の最適分解能が得られることに注意されたい。
図5B図5A及びBは、プロトタイプのモノクローナルサンドイッチELISA(捕捉抗体としてmAb 4C1、検出抗体としてmAb 2D2)を用いて作成した8点標準曲線を線形プロット(図5A)及び対数プロット(図5B)でグラフに示す。標準曲線の低濃度部分の点同士を良好に区別でき(図5B)、これにより血清中で測定したERFE濃度の最適分解能が得られることに注意されたい。
図6】ヒト血清ERFE発現における血漿アフェレーシス及び血小板アフェレーシスの効果を示す(nは患者3名で、実線、点線、又は破線で示す)。血清ERFEは、2日目に上昇し、14日間にわたってベースラインレベルを超えて維持されるが、すべての患者がアフェレーシス後120日までにベースラインERFEレベルまで回復した。
図7】X連鎖性鉄芽球性貧血のある患者(n=11、XLSA発端者)での血清ERFE濃度を当該患者の家族対照群(n=15)と比較して示す。XLSA患者及び対照群でのメジアンERFE濃度は、それぞれ、10.8及び0.1ng/mlであった。図中、****はp<0.0001を示す。
図8】鉄欠乏患者及びサラセミア患者でのERFEを示す。対照ドナー(n=47)、鉄欠乏ドナー(ID、n=22)、α-サラセミア患者(n=15)、β-サラセミア患者(n=20)、及びβ0-サラセミア患者(n=27)で、血清ERFEを測定した。対照群でのメジアンERFEは0.4ng/mlであり、一方、ID患者、α-サラセミア患者、β-サラセミア患者、及びβ0サラセミア患者でのメジアンERFEは、それぞれ、0.7、0.6、1.4、及び34.8ng/mlであった。図中、****はp<0.0001を示し、**はp<0.005を示す。
図9】HRP標識2D2検出抗体又はビオチン化2D2検出抗体のいずれかを用いてヒト血清サンプル(n=38)で測定した内因性ERFE同士の関係を示す。これは、HRPによる検出抗体の直接標識がビオチン化検出抗体を用いた場合に匹敵する血清ERFE濃度をもたらすことを示している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
エリスロフェロン(ERFE)に特異的な抗体、並びに、ERFEを検出するための、ERFEに関連する疾患を診断するための、及びERFEに関連する疾患の進行を監視するための、当該抗体の使用法が、本明細書に開示される。
【0033】
エリスロフェロンは、最初に同定された、赤血球細胞産生並びに対象での鉄の吸収及び分配を仲介する『ホルモン』である。エリスロフェロンは対象の骨髄で作られ、その産生は、例えば出血後や貧血からの回復中に、赤血球細胞産生が刺激されたときに、大幅に増加する。エリスロフェロンは、骨髄での赤血球産生の需要を満たすように鉄の供給を調節する。特に、エリスロフェロンは、肝臓で、主要な鉄調節タンパク質であるヘプシジンの産生を抑制する働きをすることが明らかとなっている。このため、エリスロフェロンの過剰産生はβ-サラセミアなどの疾患において鉄過負荷を引き起こすかもしれず、そのため、エリスロフェロンを無効にすることをβ-サラセミアの治療に用いることができると考えられる。
【0034】
エリスロフェロンは、ヘプシジン発現を抑制する因子の探索過程で発見された。ヘプシジンは、肝臓で合成される25アミノ酸のペプチドホルモンであり、鉄恒常性の中心的調節因子である。ヘプシジンは、唯一の鉄輸送因子であるフェロポーチンに結合することにより働き、そのユビキチン化、細胞内移行、及びリソソームでの分解をもたらす。フェロポーチンが細胞膜から消えると、食事性吸収が阻害され、回収された鉄がマクロファージ内に隔離され、赤血球生成に利用可能な鉄が減少する。対照的に、低ヘプシジンは、鉄を血漿に運び出す細胞でフェロポーチンが活性を維持することを可能とし、より多くの鉄をヘモグロビン合成に利用可能とする。鉄、炎症、又はERストレスは、ヘプシジン産生を刺激し、一方、低酸素状態、鉄欠乏、及び増加した赤血球生成活性は、ヘプシジン産生を抑制する。
【0035】
ヘプシジンは、大出血又はエリスロポエチン(EPO)投与後に抑制される。ヘプシジンは、出血、溶血、又は鉄欠乏により引き起こされた貧血の際に、又は、無効赤血球産生をともなう遺伝性貧血の際に、減少する。ヘプシジンに対する赤血球生成の抑制的作用は、赤血球前駆体が大きく膨張するもののほとんどが赤血球へと成熟することなく赤芽細胞段階でアポトーシスをむかえるという無効赤血球生成をともなう疾患で特に顕著である。
【0036】
エリスロフェロンは、骨格筋で主に発現・分泌され脂肪酸代謝過程及び輸送に関与するタンパク質であるマイオネクチン(CTRP15)と同一である。マイオネクチンは、脂肪細胞及び肝細胞への脂質の取り込みを促進する。マイオネクチンは、グルコース又は脂肪酸のフラックスにより生じる細胞エネルギー状態の変化に応答して骨格筋により分泌される代謝調節因子であり、肥満個体では調節不全であるかもしれない。例えば、マイオネクチンの発現レベル及び循環レベルは肥満個体では減っているかもしれない。
【0037】
エリスロフェロン・ホモログのアミノ酸配列は、脊椎動物の進化を通じてよく保存されており、マウスタンパク質とヒトタンパク質とは約71%が同一であり(図1)、C末端側の半分はゼブラフィッシュのホモログと約44%が同一である。ドメイン解析は、ERFEが既知サイトカインとは中程度の類似性のみを有するTNFαスーパーファミリーのメンバーであることを示した。TNFαとRANKリガンド(RANKL)が最も近縁であった。C末端セグメントのCLUSTALアラインメントは、TNFファミリーのヒトのメンバーとERFEのヒトバリアントとはシグナル配列が異なっていることを示した。
【0038】
HHPredictBを用いた全長タンパク質の構造モデリングは、本タンパク質のN末端部分がコラーゲン様セグメントを有するオープンリージョンが後に続くシグナル配列からなり、C末端部分がTNFα/RANKLと相同であることを示した。TNFαは、EFREと同様に、初代肝細胞培養物でヘプシジンmRNAを抑制することから、TNFαとの類似性は注目に値する。TNFαとの類似性からERFEが多量体を形成する傾向があることが予測された。
【0039】
ERFEの検出と解析とを促進するため、ヒト型の全長エリスロフェロン及びERFEポリペプチド内の抗原に対する一連の抗体を生成した。さらに、ERFE及び/又はERFEタンパク質の内部及びN末端エピトープに対する抗体を本開示に係る様々なアッセイ及び治療法に用いることができる。本明細書で、『タンパク質』という用語は全長配列を指し、『ポリペプチド』はタンパク質配列の断片を指す。
【0040】
いくつかの実施形態では、ERFEタンパク質は、ヒトERFEの全長配列(MAPARRPAGARLLLVYAGLLAAAAAGLGSPEPGAPSRSRARREPPPGNELPRGPGESRAGPAARPPEPTAERAHSVDPRDAWMLFVRQSDKGVNGKKRSRGKAKKLKFGLPGPPGPPGPQGPPGPIIPPEALLKEFQLLLKGAVRQRERAEPEPCTCGPAGPVAASLAPVSATAGEDDDDVVGDVLALLAAPLAPGPRAPRVEAAFLCRLRRDALVERRALHELGVYYLPDAEGAFRRGPGLNLTSGQYRAPVAGFYALAATLHVALGEPPRRGPPRPRDHLRLLICIQSRCQRNASLEAIMGLESSSELFTISVNGVLYLQMGQWTSVFLDNASGCSLTVRSGSHFSAVLLGV、配列番号1)と、約70から約100%の、約80%の、約85%の、約90%の、約95%の、約96%の、約97%の、約98%の、約99%の、又は約100%の配列同一性を有する配列を含み、当該配列から実質的になり、又は当該配列からなる。
【0041】
いくつかの実施形態では、ERFEポリペプチドは、GLPGPPGPPGPQGPPGP(配列番号3)、AHSVDPRDAWMLFV(配列番号4)、AHSVDPRDAWMLFVXQSDKGXN(配列番号5)、LLKEFQLLLKGAVRQRE(配列番号6)、GPRAPRVEAAF(配列番号7)、VXRRALHELGXYYLPX(配列番号8)、GLNLTSGQY(配列番号9)、APVAGFYALAATLHVAL(配列番号10)、XMGLEXSSELFTISVNGVLYLQ(配列番号11)、SSELFTISVNGVLYLQ(配列番号12)、TSVFLDNASG(配列番号13)、SLTVRSGSHFSA(配列番号14)、SLTVRSGSHFSAXLLGX(配列番号15)、又はEFQLLLKGAVRQRERAEPEPCTCGPAGPVAASLAPVSATAGEDDDDVVGDVLALLAAPLAPGPRAPRVEAAFLCRLRRDALVERRALHELGVYYLPDAEGAFRRGPGLNLTSGQYRAPVAGFYALAATLHVALGEPPRRGPPRPRDHLRLLICIQSRCQRNASLEAIMGLESSSELFTISVNGVLYLQMGQWTSVFLDNASGCSLTVRSGSHFSAVLLGV(配列番号16)(ただし、Xは任意のアミノ酸)を含むERFE断片と、約70から約100%の、約80%の、約85%の、約90%の、約95%の、約96%の、約97%の、約98%の、約99%の、又は約100%の配列同一性を有する配列を含み、当該配列から実質的になり、又は当該配列からなる。
【0042】
本明細書に開示のいくつかの実施形態では、抗ERFE抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はこれらのERFE結合断片である。本明細書に開示の通り、抗ERFE抗体は全長ヒトERFEタンパク質(配列番号1)及び/又は配列番号3-16のうち1つのポリペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、抗ERFE抗体はヒトERFEよりもマウスERFE(配列番号2)に選択的に結合することはない。
【0043】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示の抗ERFE抗体は、配列番号1及び3-16の1つ以上に開示のエピトープを認識する。いくつかの実施形態では、エピトープは、タンパク質の三次元三次構造から生じる立体構造エピトープである。いくつかの実施形態では、エピトープは不連続アミノ酸から構成される。いくつかの実施形態では、エピトープは抗原のグリコシル化部位を含む。
【0044】
本明細書では、『抗体』という用語は、最も広い意味で用いられ、さまざまな抗体構造を包含するものであり、これらに限定されるわけではないが、こうした抗体として、所望の抗原結合活性を示す限りにおいて、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片などが挙げられる。抗体は、広義には、重鎖(H)及び軽鎖(L)から構成された任意の免疫グロブリン(Ig)分子、又は、Ig分子の必須エピトープ結合特徴を保持する、任意のその機能性断片、変異体、バリアント、若しくは、誘導体を指す。こうした変異体、バリアント、又は誘導体の抗体形式は本分野において既知であり、その非限定的な実施形態を以下で議論する。抗体は、ある分子と特異的に反応する能力を有する場合、当該分子と『結合する能力がある』といえる。本明細書では、『断片』という用語は、抗体を指す場合、ERFE結合抗体断片などの抗原結合断片を意味すると理解されたい。
【0045】
本明細書では、『モノクローナル抗体』という用語は、単一親細胞のクローンである同一免疫細胞から得られ、特定の単一のエンコード配列(発現系又は発現細胞内で生じ得るようなバリエーションは無視する)から発現された抗体を指す。典型的には、モノクローナル抗体は同じエピトープに結合するという点で多価性である。『モノクローナル』という修飾語は、1つのクローン供給源から得られるという抗体の性質を意味し、抗体をいずれかの特定の方法で生産する必要があると解釈されるべきではない。モノクローナル抗体は任意の哺乳類種に由来するものでよく、これらに限定されるわけではないが、こうした哺乳類種としては、ヒト、マウス、ラット、ニワトリ、ウサギ、ラクダ科動物等が挙げられる。
【0046】
ある抗体の『抗原結合部分』又は『抗原結合断片』(より簡略には『抗体部分』又は『抗体断片』)は、インタクト抗体が結合する抗原に結合する当該インタクト抗体の一部を含む、インタクト抗体以外の分子(例えば、抗原に特異的に結合する能力を保持している抗体の1つ以上の断片)を指す。抗体断片の例として、これらに限定されるわけではないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)、二重特異性抗体、線状抗体、単鎖抗体分子(例えば、scFv)、重鎖のみ抗体(HCAb)、及び抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられる。インタクト抗体のパパイン消化により、『Fab』断片と呼ばれる、単一の抗原結合部位をそれぞれが有する2つの同一の抗原結合断片と、残部の『Fc』断片(この名称は容易に結晶化するその能力を反映するものである)とが作られる。ペプシン処理により、2箇所の抗原結合部位を有し依然として抗原と交差する能力があるF(ab’)断片が得られる。なお、これらの用語は、タンパク質分解消化により作られる前述の断片に加えて、同一又は類似の性質の遺伝的にコードされた断片にも適用され得る。ある抗体の抗原結合機能が全長抗体の断片により行われ得ることが示されている。こうした抗体の実施形態として、2種類又は複数種類の異なる抗原に特異的に結合する二重特異性又は多重特異性の様式を挙げることもできる。抗体の『抗原結合部分』とう用語に包含される結合断片の例として、(i)VL、VH、CL、及びCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片、(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋により結合されている2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab’)断片、(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単一腕部のVL及びVHドメインからなるFV断片、(v)単一の可変ドメインを含むdAb断片(国際出願公開第90/05144号、その内容を参照により本明細書で援用する)、及び、(vi)単離相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVL及びVHは、別々の遺伝子によりコードされているものの、VL及びVH領域が組み合わさって一価分子を形成している単一タンパク質鎖(別名、単鎖Fv(scFV))としてVL及びVHを作成することを可能とする合成リンカーにより、組み換え法を用いて、結合することができる。また、こうした単鎖抗体も抗体の『抗原結合部分』という用語に包含されることが意図される。また、二重特異性抗体などの単鎖抗体の他の形態も包含される。
【0047】
『キメラ』抗体という用語は、重鎖及び/又は軽鎖のある部分があるソース又は種に由来し、その残部を含む重鎖及び/又は軽鎖の少なくとも1つの別の部分が異なるソース又は種に由来する抗体を指す。ある実施形態では、CDRはマウス配列に由来し、フレームワーク領域はヒト配列に由来する。
【0048】
抗体の『クラス』は、その重鎖が占める定常ドメイン又は定常領域のタイプを指す。ヒトの抗体には5種類の主要なクラス、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのいくつかは、例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgA、及びIgAなどの、サブクラス(アイソタイプ)にさらに分けられる。これら異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
【0049】
『二重特異性抗体』という用語は、同じポリペプチド鎖(VH-VL)中で軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含み、2箇所の抗原結合部位を有する抗体断片を指す。同じ鎖上でのこれら2つのドメイン間の対合を許容するには短すぎるリンカーを用いることにより、これらのドメインを別の鎖の相補的なドメインと対合させて、2箇所の抗原結合部位を形成させる。二重特異性抗体は、二価及び/又は二重特異的である。二重特異性抗体は、例えば、欧州特許出願404097号、国際出願公開第1993/01161号、Hudson等、Nat.Med.、9:129-134(2003)、Hollinger等、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、90:6444-6448(1993)で、より詳細に記載されている。また、Hudson等、Nat.Med.、9:129-134(2003)には、三重特異性抗体及び四重特異性抗体も記載されている。
【0050】
『エピトープ』又は『抗原決定基』という用語は、免疫グロブリン又はT細胞受容体と特異的に結合する能力を有する任意のタンパク質又はポリペプチド決定基を含む。エピトープ決定基は、ある実施形態では、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル、又はスルホニルなどの分子の、化学活性表面基を含んでおり、また、ある実施形態では、特異的三次元構造特性及び/又は特異的電荷特性を有していてもよい。エピトープは、抗体が結合する抗原の領域である。ある実施形態では、抗体は、その標的抗原をタンパク質及び/又は巨大分子の複合混合物内で優先的に認識したときに、抗原に特異的に結合するといえる。
【0051】
『Fab』断片は、重鎖及び軽鎖可変ドメインを含み、また、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1定常ドメイン(CH1)も含む。Fab’断片は、重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端に抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインをはじめとする数個の残基が付加されている点で、Fab断片と異なる。Fab’-SHは、本明細書では、定常ドメインの(1つ又は複数の)システイン残基が遊離チオール基を持つFab’を表す表記である。F(ab’)抗体断片は、ヒンジシステインを両者の間に有するFab’断片の組として本来は作られる。また、他の抗体断片の化学的結合も知られている。
【0052】
本明細書では、『Fc領域』という用語は、定常領域の少なくとも一部を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を明示するために用いられる。当該用語は天然配列Fc領域及び変異Fc領域を含む。
【0053】
『フレームワーク』又は『FR』は、相補性決定領域(CDR)残基を除く可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般的に、4つのFRドメイン、FR1、FR2、FR3、及びFR4からなる。従って、CDR配列及びFR配列は、一般的に、VH配列又はVL配列内で、FR1-CD1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4という順番で出現する。
【0054】
本明細書では、『全長抗体』、『インタクト抗体』、及び『全抗体』という用語は、天然抗体構造と実質的に同様の構造を有する抗体又は本明細書で記載のFc領域を含む重鎖を有する抗体を指すものとして互換的に用いられる。
【0055】
『Fv』は、完全な抗原結合部位を含む最小抗体断片を指す。一実施形態では、二重鎖Fv種は、緊密に非共有結合的に会合した1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインのダイマーからなる。単鎖Fv(scFv)種では、1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインは、軽鎖及び重鎖が二重鎖Fv種の構造と類似の『ダイマー』構造で会合できるような可撓性のペプチドリンカーにより共有結合的に結合され得る。この配置によれば、各可変ドメインの3つのCDRがVH-VLダイマーの表面で抗原結合部位をなすように相互作用する。6つのCDRは集合的に抗原結合特異性を抗体に付与する。しかし、結合部位全体よりも親和性は低いものの、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFvの片方)であっても抗原を認識し結合する能力を有する。
【0056】
『ヒト抗体』は、ヒトゲノムによりコードされた又はヒトゲノムに由来するアミノ酸配列を有する抗体である。本開示のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によりコードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダム変異誘発又は部位特異的変異誘発により、又は、インビボでの体細胞変異により、導入された変異)を、例えばCDR内に、含んでもよい。しかし、本明細書で用いる『ヒト抗体』という用語は、マウスなどの別の哺乳類種の生殖系列由来のCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体を含むことを意図するものではない。
【0057】
『ヒト化』抗体は、非ヒト種(例えば、マウス)由来の重鎖及び軽鎖可変領域配列を含み、このVH及び/又はVL配列の少なくとも一部が、より『ヒトに似た状態』にあるように、すなわち、ヒト生殖系列可変配列に類似するように改変されている抗体を指す。ヒト化抗体の一種として、対応するヒトCDR配列を置換するために非ヒトCDR配列がフレームワークヒトVH及びVL配列に導入されているCDR移植抗体が挙げられる。そのため、ヒト化抗体は、非ヒトCDR由来のアミノ酸残基及びヒトFR由来のアミノ酸残基を含んでもよい。ある実施形態では、ヒト化抗体は、CDRの全て又は実質的に全てが非ヒト抗体(すなわち、ドナー抗体)の該当部分に対応し且つFRの全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列の該当部分に対応する可変ドメインを、少なくとも1つ、典型的には2つ、含むだろう。ヒト化抗体は、随意に、ヒト抗体由来の抗体定常領域の少なくとも一部を含んでもよい。抗体の、例えば、非ヒト抗体の、『ヒト化形態』とは、ヒト化された抗体を指す。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体は重鎖の少なくとも可変ドメインと軽鎖との両方を含む。また、抗体は、重鎖の、CH1領域、ヒンジ領域、CH2領域、CH3領域、及びCH4領域を含んでもよい。いくつか実施形態では、ヒト化抗体はヒト化軽鎖のみを含む。いくつか実施形態では、ヒト化抗体はヒト化重鎖のみを含む。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、ヒト化重鎖及び/又は軽鎖のヒト化可変ドメインのみを含む。ヒト化抗体は、IgY、IgM、IgG、IgD、IgA、及びIgEをはじめとする任意のクラスの免疫グロブリン、並びに、限定されるわけではないものの、IgA、IgA、IgG、IgG、IgG、及びIgGをはじめとする任意のアイソトープから選択できる。ヒト化抗体は、2つ以上のクラス又はアイソタイプ由来の配列を含んでもよく、本技術分野でよく知られた手法を用いて所望のエフェクター機能を最適化するために、特定の定常ドメインが選択されてもよい。ヒト化抗体のフレームワーク領域及びCDR領域は必ずしも親配列と正確に一致せずともよく、例えば、ドナー抗体CDR又はコンセンサスフレームワークが、少なくとも1つのアミノ酸残基の、置換、挿入、及び/又は欠失により、当該部位での当該CDR又はフレームワークの残基がドナー抗体又はコンセンサスフレームワークのいずれかと一致しないように、変異誘発されてもよい。また、特定の実施形態では、こうした変異は広域には及ばないだろう。通常、ヒト化抗体残基の、少なくとも50、55、60、65、70、75、又は80%、具体的には、少なくとも85%の、より具体的には、少なくとも90%の、特に、少なくとも95%が、親FR配列及び親CDR配列の該当部分と一致するだろう。
【0058】
『CDR移植抗体』という用語は、ヒトの重鎖及び軽鎖可変領域を有し且つヒトCDRの1つ以上がマウスCDR配列に置換されている抗体などの、1つの種に由来する重鎖及び軽鎖可変領域配列を含み且つVH及び/又はVLのCDR領域の1つ以上の配列が別種のCDR配列と置換されている抗体を指す。
【0059】
『可変領域』又は『可変ドメイン』という用語は、抗原への抗体の結合に関与する抗体重鎖又は軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖及び軽鎖(それぞれ、VH及びVLと略す)の可変ドメインは、一般的に、同様の構造を有しており、各ドメインは4つの保存フレームワーク領域(FR)と、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる3つの超可変領域とを含む(例えば、Kindt等、Kuby Immunology、6版、W.H.Freeman and Co.、91頁(2007)を参照)。抗原結合特異性を付与するには、単一のVH又はVLドメインで十分であるかもしれない。さらに、特定の抗原に結合する抗体を、相補性VL又はVHドメインのライブラリーをそれぞれスクリーニングするための、当該抗原に結合する抗体由来のVH又はVLドメインを用いて、単離してもよい。
【0060】
ある実施形態では、抗ERFE抗体は、9B12(ATCCアクセッション番号PTA-123882)、17A5(ATCCアクセッション番号PTA-123883)、2D2(ATCCアクセッション番号PTA-123879)、4C1(ATCCアクセッション番号PTA-123880)、及び7H4(ATCCアクセッション番号PTA-123881)の1つ、又は、これらの抗体の1つに由来する1つ以上のCDRを含む抗体若しくは抗体断片である。
【0061】
本明細書に開示の抗ERFE抗体は2D2又はその断片を含む。いくつかの実施形態では、抗ERFE抗体又はその断片はVH及びVLを含み、VHは配列番号18のアミノ酸配列を含み、且つ、VLは配列番号23のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗ERFE抗体又はその断片は配列番号18又は配列番号23の一方を含む。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、VLは、配列番号23のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、抗ERFE抗体又はその断片は、配列番号19-21のアミノ酸配列を有する重鎖CDRのうち1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、抗ERFE抗体又はその断片は、配列番号24-26のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRのうち1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、本抗体は、本明細書に開示の、キメラ抗体、ヒト化抗体、又は抗体断片である。
【0062】
本明細書に開示の抗ERFE抗体は4C1又はその断片を含む。いくつかの実施形態では、抗ERFE抗体又はその断片はVH及びVLを含み、VHは配列番号28のアミノ酸配列を含み、且つ、VLは配列番号33のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗ERFE抗体又はその断片は配列番号28又は配列番号33の一方を含む。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、VLは、配列番号33のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、抗ERFE抗体又はその断片は、配列番号29-31のアミノ酸配列を有する重鎖CDRのうち1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、抗ERFE抗体又はその断片は、配列番号34-36のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRのうち1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、本抗体は、本明細書に開示の、キメラ抗体、ヒト化抗体、又は抗体断片である。
【0063】
本明細書に開示の抗ERFE抗体は7H4又はその断片を含む。いくつかの実施形態では、抗ERFE抗体又はその断片はVH及びVLを含み、VHは配列番号38のアミノ酸配列を含み、且つ、VLは配列番号43のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗ERFE抗体又はその断片は配列番号38又は配列番号43の一方を含む。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号38のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、VLは、配列番号43のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、抗ERFE抗体又はその断片は、配列番号39-41のアミノ酸配列を有する重鎖CDRのうち1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、抗ERFE抗体又はその断片は、配列番号44-46のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRのうち1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、本抗体は、本明細書に開示の、キメラ抗体、ヒト化抗体、又は抗体断片である。
【0064】
本明細書に開示の抗ERFE抗体は9B12又はその断片を含む。いくつかの実施形態では、抗ERFE抗体又はその断片はVH及びVLを含み、VHは配列番号48のアミノ酸配列を含み、且つ、VLは配列番号53のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗ERFE抗体又はその断片は配列番号48又は配列番号53の一方を含む。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号48のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、VLは、配列番号53のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、抗ERFE抗体又はその断片は、配列番号49-51のアミノ酸配列を有する重鎖CDRのうち1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、抗ERFE抗体又はその断片は、配列番号54-56のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRのうち1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、本抗体は、本明細書に開示の、キメラ抗体、ヒト化抗体、又は抗体断片である。
【0065】
本明細書に開示の抗ERFE抗体は17A5又はその断片を含む。いくつかの実施形態では、抗ERFE抗体又はその断片はVH及びVLを含み、VHは配列番号58のアミノ酸配列を含み、且つ、VLは配列番号63のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗ERFE抗体又はその断片は配列番号58又は配列番号63の一方を含む。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号58のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、VLは、配列番号63のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、抗ERFE抗体又はその断片は、配列番号59-61のアミノ酸配列を有する重鎖CDRのうち1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、抗ERFE抗体又はその断片は、配列番号64-66のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRのうち1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、本抗体は、本明細書に開示の、キメラ抗体、ヒト化抗体、又は抗体断片である。
【0066】
いくつかの実施形態では、抗ERFE抗体又はその断片は、配列番号19、29、39、49、又は59の1つを含むCDRH1を有する。いくつかの実施形態では、抗ERFE抗体又はその断片は、配列番号20、30、40、50、又は60の1つを含むCDRH2を有する。いくつかの実施形態では、抗ERFE抗体又はその断片は、配列番号21、31、42、52、又は62の1つを含むCDRH3を有する。
【0067】
いくつかの実施形態では、抗ERFE抗体又はその断片は、配列番号24、34、44、54、又は64の1つを含むCDRL1を有する。いくつかの実施形態では、抗ERFE抗体又はその断片は、配列番号25、35、45、55、又は65の1つを含むCDRL2を有する。いくつかの実施形態では、抗ERFE抗体又はその断片は、配列番号26、36、46、56、又は66の1つを含むCDRL3を有する。
【0068】
いくつかの実施形態では、改善された性質を有する抗ERFE抗体又はその断片が提供される。例えば、ERFEについて改善された親和性を有する抗ERFE抗体又はその断片は、本明細書に開示の抗体又はその断片の親和性成熟により調製される。
【0069】
CDRはエピトープ認識に重要だが、これらは本明細書に開示の抗体又はその断片に必須というわけではない。従って、例えば本明細書に開示の抗体の親和性成熟などにより得られる改善された性質を有する抗体又は断片が提供される。
【0070】
CDRの特定のセットを挟む可変領域配列及び定常領域配列内の変異、欠失、及び/又は挿入により、多様な抗体又は抗体断片並びに抗体模倣体が容易に作られ得る。このため、例えば、CDRのあるセットについて異なる重鎖の置換により異なる種類の抗体が可能であり、これにより、例えば、IgG1-4、IgM、IgA1-2、IgD、IgEといった抗体タイプ及びアイソタイプが作られ得る。同様に、全長合成フレームワーク内にCDRのあるセットを埋め込むことにより本開示の範囲内に収まる人工抗体も作られ得る。
【0071】
リサーフェシング及びCDR移植などのいくつかの手法を用いてヒト化抗体又は他の哺乳類により拒絶されないよう適合された抗体が作られ得る。リサーフェシング手法では、分子モデリング、統計解析、及び変異誘発を組み合わせて、標的宿主の既知の抗体の表面と似るように可変領域の非CDR表面を調節する。抗体のリサーフェシングのための戦略及び方法並びに異種宿主内での抗体の免疫原性を減らすための他の方法が、米国特許第5639641号に開示されている。この文献の内容の全体を参照により本願明細書で援用する。CDR移植手法では、マウス重鎖及び軽鎖CDRが全長ヒトフレームワーク配列内に移植される。
【0072】
また、本開示は本明細書に開示の抗体の機能的等価物も包含する。機能的等価物は、抗体の結合特性に匹敵する結合特性を有し、例えば、キメラ化抗体、ヒト化抗体、及び単鎖抗体、並びにこれらの断片を含む。こうした機能的等価物の製造方法が、国際公開第93/21319号、欧州特許出願第239400号、国際公開第89/09622号、欧州特許出願第338745号、及び欧州特許出願第332424号に開示されている。これらの文献の内容の全体を参照により本願明細書で援用する。機能的等価物として、本発明の抗体の可変又は超可変領域のアミノ酸配列と実質的に同じアミノ酸配列を有するポリペプチドが挙げられる。本明細書で、アミノ酸配列について適用される『実質的に同じ』は、Pearson及びLipman、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、85、2444-2448(1988)に従ってFASTA検索法により求めたときに、別のアミノ酸配列に対して、少なくとも約90%の、より好ましくは、少なくとも約95%の、配列同一性を有する配列として定義される。機能的等価物として、ERFEへの結合親和性を維持している、キメラ抗体、単鎖抗体断片、及び他の抗体断片が挙げられる。
【0073】
また、適切なヌクレオチド変化の抗体DNAへの導入により又はペプチド合成により調製された抗ERFE抗体のアミノ酸配列バリアントも本開示の範囲内である。こうしたバリアントとして、例えば、本明細書の実施例の抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/又は、当該残基への挿入、及び/又は、当該残基の置換が挙げられる。最終的なコンストラクトが所望の性質を有するという条件で、当該最終的なコンストラクトを得るために欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせがなされる。また、アミノ酸変化は、グリコシル化部位の数又は位置を変化させるなど、ヒト化抗体又はバリアント抗体の翻訳後プロセスを変更し得る。
【0074】
変異誘発に好適な位置である抗体の特定の残基又は領域の同定のための有用な方法として、『アラニンスキャニング変異誘発』と呼ばれるものがある。標的残基のある残基又は基(例えば、Arg、Asp、His、Lys、及びGluなどの荷電残基)を同定し、これを中性の又は負に帯電したアミノ酸(最も好適にはアラニン又はポリアラニン)で置換し、当該アミノ酸と抗原との相互作用に影響を与える。次に、これらのアミノ酸位置のうち置換に対する機能的感受性を示すものを、さらなるバリアント又は別のバリアントを置換部位に導入する又は置換部位について導入することにより洗練する。そのため、アミノ酸配列変異を導入するための部位は所定の部位であっても、変異の性質自体は必ずしも所定の性質ではない。例えば、ある部位での変異の性能を分析するためには、標的コドン又は標的領域でアラニンスキャニング又はランダム変異誘発を行い、発現抗体バリアントを所望の活性についてスクリーニングを行う。
【0075】
アミノ酸配列挿入として、1つ又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入のみならず、1残基から百以上の残基を含むポリペプチドにわたる長さのアミノ末端及び/又はカルボキシル末端の融合が挙げられる。末端挿入の例として、N末端メチオニル残基を有する抗ERFE抗体又はエピトープタグに融合された当該抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入バリアントとして、抗体の血清半減期を増加させる酵素又はポリペプチドの抗体のN末端又はC末端への融合が挙げられる。
【0076】
バリアントの別種として、アミノ酸置換バリアントが挙げられる。これらのバリアントは、抗体分子内の少なくとも1つのアミノ酸残基が取り除かれ、その場所に別の残基が挿入されている。置換変異誘発への関心が最も高い部位として、超可変領域が挙げられるが、FR変化も考えられる。保存的置換を表1で『好適な置換』の見出しの下に示す。前述の置換が生物学的活性の変化をもたらす場合、表1で『例示的置換』と呼称するような又はアミノ酸の種類を参照して以下でさらに記載するような、より実質的な変化が導入され得、そして、産物がスクリーニングされ得る。
【0077】
【表1】
【0078】
(a)置換区域のポリペプチド骨格の構造を、例えば、シート又はヘリカル立体構造として維持する効果、(b)標的部位での分子の電荷又は疎水性を維持する効果、又は(c)側鎖のかさ高さを維持する効果が著しく異なる置換を選択することにより、抗体の生物学的性質の実質的な修飾が実現される。天然残基は共通する側鎖性質に基づき以下のように分類される。
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile
(2)中性、親水性:Cys、Ser、Thr
(3)酸性:Asp、Glu
(4)塩基性:Asn、Gin、His、Lys、Arg
(5)鎖配向に影響する残基:Gly、Pro
(6)芳香性:Trp、Tyr、Phe
【0079】
非保存置換はこれらの種類のうち1つのメンバーを別の種類に交換することを伴うものである。
【0080】
また、抗ERFE抗体の適切な立体構造の維持に関与していない何れのシステイン残基も置換されてよく、通常は、セリンと置換され、分子の酸化安定性を改善し、異常交差を防止する。反対に、抗体の安定性を改善するために(特に、抗体がFv断片などの抗体断片である場合)システイン結合が抗体に追加されてもよい。
【0081】
置換バリアントの別種として、親抗体(例えば、ヒト化抗体又はヒト抗体)の超可変領域残基の1つ以上の置換が挙げられる。一般的に、結果として生じたバリアントのうちさらなる開発のために選択されるものは、それらを作る元となった親抗体に対して改善された生物学的性質を有するはずである。こうした置換バリアントを作る簡便なやり方として、ファージディスプレイを用いた親和性成熟が挙げられる。簡潔に説明すれば、いくつかの超可変領域部位(例えば、6-7部位)を変異させて、各部位で可能な全てのアミノ酸置換物を作る。こうして作られた抗体バリアントを繊維状ファージ粒子から各粒子内にパッケージされたM13のgene IIII 産物との融合物として一価の様式でディスプレイさせる。次に、ファージにディスプレイさせたバリアントを本明細書で開示したそれらの生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングする。修飾のための候補超可変領域部位を同定するために、抗原結合に顕著に寄与する同定済み超可変領域残基への、アラニンスキャニング変異誘発を行ってもよい。この代わりに又はこれに加えて、抗体とヒトERFEとの間の接触点を同定するために抗原抗体複合体の結晶構造を解析することも有益かもしれない。こうした接触残基及び隣接残基は本明細書で詳述の手法に従い置換するための候補である。いったんこうしたバリアントが作られると、バリアントのパネルを本明細書に開示のようなスクリーニングに掛け、1種以上の関連アッセイでの優れた性質を有する抗体をさらなる開発のために選択してもよい。
【0082】
抗体のアミノ酸バリアントの別種は抗体の本来のグリコシル化パターンを改変させる。改変させるとは、抗体でみられる炭水化物部分の1つ以上を削除すること、及び/又は、抗体に存在しないグリコシル化部位の1つ以上を付加することを意味する。
【0083】
抗体のグリコシル化は、典型的には、N-結合型又はO-結合型である。N-結合型は、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の連結を指す。アスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニン(ただし、Xはプロリンを除く任意のアミノ酸)というトリペプチド配列が、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素的連結のための認識配列である。そのため、あるポリペプチド中でのこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在は、潜在的なグリコシル化部位をなす。O-結合型グリコシル化は、5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリシンも用いられ得るものの、ヒドロキシアミノ酸、より一般的には、セリン又はスレオニンへの、N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、又はキシロースといった糖類の1つの連結を指す。
【0084】
抗体へのグリコシル化部位の付加は、アミノ酸配列が上述のトリペプチド配列の1つ以上を含むようにアミノ酸配列を改変することにより、適宜に実現できる(N-結合型グリコシル化部位の場合)。また、改変は、本来の抗体の配列への1つ以上のセリン又はスレオニン残基の付加又は当該残基での置換により行ってもよい(O-結合型グリコシル化部位の場合)。
【0085】
抗ERFE抗体のアミノ酸配列バリアントをコードする核酸分子は、本技術分野で既知のさまざまな方法により調製される。こうした方法として、これらに限定されるわけではないものの、天然ソース(天然アミノ酸配列バリアントの場合)からの又はオリゴヌクレオチド介在(又は部位指向性)変異誘発による調製物からの単離、PCR変異誘発、及び先に調製した抗ERFE抗体のバリアント又は当該抗体の非バリアント型のカセット変異誘発が挙げられる。
【0086】
抗ERFE抗体の他の修飾も考えられる。例えば、疾患の治療の際の抗体の効率を増強するなどのために、エフェクター機能に関して抗体を修飾することも望ましいかもしれない。例えば、システイン残基をFc領域に導入することにより、当該領域での鎖間ジスルフィド結合形成を可能としてもよい。
【0087】
本明細書に開示の抗体は、組み換え手段により生産されてもよい。そのため、抗体をコードする核酸、抗体をコードする核酸を含む発現ベクター、及び抗体をコードする核酸を含む細胞が、本明細書に開示される。組み換え生産法は、本技術水準で広く知られており、原核細胞及び真核細胞でのタンパク質発現と、その後の抗体単離と、通常では、薬学的に許容可能な純度までの精製とを含む。宿主細胞での上述の抗体の発現については、抗体配列をコードする核酸が標準法により発現ベクターに挿入される。発現は、CHO細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、HEK293細胞、COS細胞、PER C6細胞、イースト、又は大腸菌細胞などの適切な原核又は真核の宿主細胞内で行われ、抗体は当該細胞(上清又は溶解後細胞)から回収される。
【0088】
従って、本明細書に開示のある実施形態は、抗ERFE抗体を調整する方法であって、a)当該抗体をコードする核酸分子を含む少なくとも1つの発現ベクターで宿主細胞を形質転換する工程、b)抗体分子の合成を可能とする条件下で宿主細胞を培養する工程、及びc)培養物から当該抗体分子を回収する工程を含む、方法を含む。
【0089】
抗体は、例えば、プロテインA-セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、アフィニティークロマトグラフィーなどの、従来の免疫グロブリン精製手法により、培養培地から好適には分離される。
【0090】
本明細書では、『細胞』、『細胞株』、及び『細胞培養物』という用語は、互換的に用いられ、これらの表記のすべてが子孫(progeny)を含む。そのため、『形質転換体』及び『形質転換細胞』という語は、初代対象細胞及び継代数によらずそれに由来する培養物を含む。また、意図的な又は非意図的な変異により、すべての子孫がDNAコンテントについて正確に同じというわけでなくともよいことを理解されたい。最初に形質転換した細胞でスクリーニングされたのと同じ機能又は生物化学的活性を有するバリアント子孫が含まれる。異なる表記同士が意図的に用いられる箇所については文脈から明らかだろう。
【0091】
本明細書では、『形質転換』という用語は、宿主細胞内にベクター/核酸を導入する工程のことを指す。厄介な細胞壁障壁のない細胞が宿主細胞として用いられる場合、トランスフェクションは、例えば、リン酸カルシウム沈殿法により、実行できる。しかし、DNAを細胞に導入するための他の方法(核注入又は原形質融合など)を用いてもよい。原核細胞又は実質的な細胞壁構築物を含む細胞が用いられる場合、例えば、トランスフェクションの方法のひとつとして、塩化カルシウムを用いたカルシウム処理が挙げられる。
【0092】
本明細書では、『発現』とは、核酸がmRNAに転写される工程、及び/又は、転写されたmRNA(転写産物ともいう)が、次に、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質に翻訳される工程を指す。転写産物及びコードされたポリペプチドは集合的に遺伝子産物と呼ばれる。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、真核細胞での発現はmRNAのスプライシングを含み得る。
【0093】
『ベクター』は、挿入核酸分子を宿主細胞内に導入する及び/又は当該宿主細胞間で移送する核酸分子、特に、自己複製性核酸分子である。この用語は、細胞へのDNA又はRNAの挿入(例えば、染色体への組み込み)に主に機能するベクター、DNA又はRNAの複製に主に機能するベクター複製、及び、DNA又はRNAの転写及び/又は翻訳に機能する発現ベクターを含む。また、前述の機能の2つ以上をもたらすベクターも含まれる。
【0094】
『発現ベクター』は、適切な宿主細胞に導入された際にあるポリペプチドに転写及び翻訳され得るポリヌクレオチドである。『発現系』は、通常、所望の発現産物を生産するために機能し得る発現ベクターを含んでなる適切な宿主細胞を指す。
【0095】
本明細書では、『宿主細胞』という用語は、本明細書に開示の抗体を生成するように改変できる任意の種類の細胞系を意味する。一実施形態では、HEK293細胞及びCHO細胞が宿主細胞として用いられる。
【0096】
原核生物に適した制御配列は、例えば、プロモーターと、随意にオペレーター配列と、リボソーム結合部位とを含む。真核細胞は、プロモーター、エンハンサー、及びポリアデニル化シグナルを用いることが知られている。
【0097】
核酸が他の核酸配列と機能的関連をもって配置される場合に、当該核酸は『動作可能に結合』されている。例えば、前駆配列又は分泌リーダー用のDNAがあるポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合、当該DNAは当該ポリペプチド用のDNAに動作可能に結合されているといえ、プロモーター又はエンハンサーがコード配列の転写に影響する場合、当該プロモーター又はエンハンサーは当該配列に動作可能に結合されているといえ、また、リボソーム結合部位が翻訳を促進するように配置されている場合、当該リボソーム結合部位はコード配列に動作可能に結合されているといえる。一般的に、『動作可能に結合』とは、結合されるDNA配列同士が、連続していること、特に、分泌リーダーの場合、連続しており且つ読み枠内にあることを意味する。ただし、複数のエンハンサーは必ずしも連続している必要はない。同様に、いくつかの場合、動作可能に結合される核酸配列の間にイントロンが存在してもよい。結合は、都合の良い制限酵素認識部位でのライゲーションにより実行される。こうした部位が存在しない場合は、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーが従来のやり方で用いられる。
【0098】
また、抗ERFE抗体をコードする単離核酸、当該核酸を含むベクター及び宿主細胞、並びに、当該抗体の産生のための組み換え手法も、本明細書に開示される。
【0099】
抗体の組み換え産生のため、当該抗体をコードする核酸を単離してさらなるクローニング(DNAの増幅)又は発現のための複製可能ベクターに挿入してもよい。いくつかの実施形態では、抗体は、例えば、米国特許第5,204,244号に開示のような、相同組み換えにより産生されてもよい。特に、抗体産生について当該文献のすべての内容を参照により本明細書で援用する。抗体をコードするDNAは、従来手法を用いて(例えば、当該抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)、容易に単離・配列同定される。さまざまなベクターが利用可能である。ベクター成分として、これらに限定されるわけではないが、シグナル配列、複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終了配列、の1つ以上、例えば、米国特許第5,534,615号に記載のもの、が挙げられる。タンパク質発現について当該文献のすべての内容を参照により本明細書で援用する。
【0100】
本明細書に開示のベクター内のDNAをクローニング又は発現させるために適した宿主細胞として、上述の、原核生物、イースト、又は、より高度な真核細胞が挙げられる。当該目的に適した原核生物として、グラム陰性菌又はグラム陽性菌などの真正細菌、例えば、腸内細菌科(大腸菌属(例えば、大腸菌)、エンテロバクター属、エルウィニア属、クレブシエラ属、プロテウス属、サルモネラ属(例えば、ネズミチフス菌)、セラチア属(例えば、セラチア菌)、及び、赤痢菌属など)、並びに、バシラス綱(枯草菌及びバシラス・リケニフォルミスなど)、シュードモナス属(緑膿菌など)、及び、ストレプトマイセス属が挙げられる。大腸菌クローン宿主の一例として、E.coli294(ATCC31,446)が挙げられるが、E.coli B、E.coli X1776(ATCC31,537)、及びE.coli W3110(ATCC27,325)等の他の菌株も適している。ただし、これらは例示を目的とするものであり、これらに限定することを意図するわけではない。
【0101】
原核生物に加えて、糸状菌又はイーストなどの真核微生物も、抗ERFE抗体コードベクターの適切なクローニング又は発現ベクターである。低級真核宿主微生物のなかで、サッカロマイセス・セレビシエ又は一般的なパン酵母が、最も一般的に用いられている。しかし、数々の他の属、種、及び株が、一般的に利用可能であり、本明細書でも役に立つ。例えば、シゾサッカロミセス・ポンベ、クルイウェロマイセス属宿主(例えば、K.lactis、K.fragilis(ATCC12,424)、K.bulgaricus(ATCC16,045)、K.wickeramii(ATCC24,178)、K.waltii(ATCC56,500)、K.drosophilarum(ATCC36,906)、K.thermotolerans、及びK.marxianusなど)、ヤロウィア属(EP402,226)、ピキア・パストリス(EP183,070)、カンジダ属、トリコデルマ・リーシア(Trichoderma reesia)(EP244,234)、ニューロスポラ・クラッサ、シュワンニオマイセス属(Schwanniomyces)(S.occidentalisなど)、並びに、糸状菌(例えば、アカパンカビ属、ペニシリウム属、トリポクラジウム属など)、アスペルギルス属宿主(A.nidulans及びA.nigerなど)が挙げられる。
【0102】
グリコシル化抗ERFE抗体の発現に適した宿主細胞として、多細胞生物由来のものがあり、植物細胞及び昆虫細胞などの非脊椎動物細胞が挙げられる。数多くのバキュロウイルス株及び変異株、並びに、宿主(ツマジロクサヨトウ(芋虫)、ネッタイシマカ(蚊)、ヒトスジシマカ(蚊)、キイロショウジョウバエ(フルーツフライ)、及びカイコなど)由来の対応する許容可能な昆虫宿主細胞が同定されている。トランスフェクション用のさまざまなウイルス株が公知であり、例えば、オートグラファ・カリフォルニカNPVのL-1変異株、及び、カイコNPVのBm-5株が挙げられ、こうしたウイルスは、本発明に係る本明細書に開示のウイルスとして、特に、ツマジロクサヨトウ細胞のトランスフェクションのために、用いることができる。綿、トウモロコシ、ジャガイモ、ダイズ、ペチュニア、トマト、及びタバコの植物細胞培養物も宿主として利用できる。
【0103】
しかし、脊椎動物細胞が最も注目されてきており、培養中での脊椎動物細胞の増殖(組織培養)はルーチンの手法となっている。有用な哺乳類宿主細胞株の例として、SV40で形質転換されているモンキー腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651)、ヒト胚性腎臓細胞株(293、又は、懸濁培養での増殖のためにサブクローン化された293細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10)、チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO)、マウスセルトリ細胞(TM4)、モンキー腎臓細胞(CV1、ATCC CCL 70)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587)、ヒト子宮頸がん細胞(HELA、ATCC CCL 2)、イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34)、バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442)、ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75)、ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB 8065)、マウス乳腺腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51)、TRI細胞、MRC5細胞、FS4細胞、及びヒト肝臓がん株(Hep G2)が挙げられる。
【0104】
宿主細胞は、抗ERFE抗体産生用の上述の発現ベクターで形質転換され、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、又は所望の配列をコードする遺伝子の増幅のために適宜に修正された従来の栄養培地で培養される。
【0105】
抗ERFE抗体の産生に用いられる宿主細胞は様々な培地で培養され得る。当該宿主細胞の培養には、ハムF10、最小必須培地(Minimal Essential Medium、MEM)、RPMI-1640、及びダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)などの市販の培地が適している。さらに、当該宿主細胞用の培養培地として、米国特許第4,767,704号明細書、米国特許第4,657,866号明細書、米国特許第4,927,762号明細書、米国特許第4,560,655号明細書、米国特許第5,122,469号明細書、国際出願公開第90/03430号明細書、国際出願公開第87/00195号明細書、又は米国再発行特許第30,985号明細書を用いてもよい。これらの培地のいずれも、必要に応じて、ホルモン及び/又は他の成長因子(インスリン、トランスフェリン、又は上皮成長因子など)、塩類(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、及びフォスフェートなど)、緩衝剤(HEPESなど)、ヌクレオチド(アデノシン及びチミジンなど)、抗生物質(GENTAMYCIN(商標)など)、微量元素(通常マイクロモーラー範囲の終濃度で存在する無機化合物として定義される)、及び、グルコース又は等価なエネルギー源を補ってもよい。また、他の任意の必要な補充物を当業者に既知の適切な濃度で含有させてもよい。温度、pHなどの培養条件は、発現のために選択された宿主細胞でこれまでに用いられていた条件なので、当業者には明らかだろう。
【0106】
組み換え手法を用いる場合、抗体は、細胞内で、ペリプラズム内で、又は、直接培地に分泌される形で、産生され得る。抗体が細胞内で産生される場合、最初の工程として、粒子状残渣である宿主細胞又は溶解断片のいずれかが、例えば、遠心分離又は限外濾過により、除去される。
【0107】
細胞から調製された抗体組成物は、例えば、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及びアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製でき、アフィニティークロマトグラフィーが好適な精製手法である。アフィニティーリガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種類及びアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγ1、γ2、又はγ4重鎖に基づく抗体を精製するために用いることができる。マウスアイソタイプのすべて及びヒトγ3については、プロテインGが推奨される。アフィニティーリガンドが付着させられるマトリックスは、殆どの場合、アガロースであるが、他のマトリックスも利用可能である。細孔制御ガラス又はポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどの機械的に安定なマトリックスは、アガロースで達成できるよりも、速い流速及び短い処理時間を可能とする。抗体がCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂が精製に役立つ。また、回収対象の抗体に応じて、イオン交換カラム上での分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上でのクロマトグラフィー、ヘパリン-SEPHAROSE(商標)上でのクロマトグラフィー、アニオン又はカチオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラムなど)上でのクロマトグラフィー、クロマト分画、SDS-PAGE、及び、硫酸アンモニウム沈殿などの、他のタンパク質精製手法も、利用可能である。
【0108】
いずれの予備的精製工程の後も、興味のある抗体と混入物質とを含む混合物を、約2.5-4.5の間のpHで溶出緩衝液を用いた、好ましくは、低塩濃度(例えば、約0-0.25M塩)で行われる、低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーに掛けてもよい。
【0109】
いくつかの実施形態では、サンプル中のERFEタンパク質又はポリペプチドの存在を検出するための、及び/又は、その量を測定するためのアッセイであって、本開示のERFEタンパク質又はポリペプチドに対する抗体にサンプルを接触させ、その後、結合抗体の存在を検出し、及び/又は、その量を測定することを含むアッセイが、本明細書に開示される。
【0110】
本明細書では、『サンプル』という用語は、ERFEアッセイが望まれるERFEを含有する可能性のある任意のものを指す。サンプルは、体液又は生物組織などの生物学的サンプルであってもよい。体液の例としては、血液、血清、血漿、唾液、痰、眼の水晶体液、汗、尿、乳、腹水、粘液、滑液、腹腔液、経皮滲出液、咽頭浸出液、気管支肺胞洗浄、気管吸引、脳脊髄液、精液、頸管粘液、膣又は子宮分泌物、羊水などが挙げられる。生体組織は、細胞の凝集物、通常は、ヒト又は動物の構造的材料の1つを形成する特定の種類の細胞とそれらの細胞間質とを含む凝集物であり、結合組織、上皮組織、筋肉組織、及び神経組織などが挙げられる。サンプルは、ソースから直接に得て用いてもよいし、その特性を修飾するための前処理の後に得て用いてもよい。
【0111】
いくつかの実施形態では、アッセイは免疫アッセイである。例示的且つ非限定的な免疫アッセイとして、酵素結合免疫吸着法(ELISA)が挙げられる。別の実施形態では、免疫アッセイは免疫組織化学的アッセイである。免疫アッセイは、検体、タンパク質などの基質を、当該基質への抗体の特異性を用いて、測定する。
【0112】
一実施形態では、ELISAはサンドイッチELISAである。こうしたアッセイでは、基質に特異的な捕捉抗体はマイクロタイタープレートなどの固体支持体に結び付けられている。基質を含有する液体(若しくは基質を含有すると疑われる液体、又は、基質を含まないことを決定する必要があるサンプル)は、捕捉抗体に結合するに任される。その後、捕捉抗体に結合した基質の検出を可能とするために、当該基質にやはり特異的な検出抗体が添加される。
【0113】
いくつかの実施形態では、アッセイは免疫組織化学的アッセイである。免疫組織化学は、生物組織において抗体が抗原に特異的に結合するという原理を利用した組織切片で抗原(タンパク質)を選択的に画像化する処理を含む。抗体抗原相互作用の可視化は種々の方法で実現できる。最も一般的なやり方では、抗体が結合する基質の検出を可能とする検出抗体が用いられる。
【0114】
いくつかの実施形態では、検出抗体は標識抗体である。標識として、放射性標識、酵素標識、比色標識(colorimetric label)、蛍光標識、化学発光標識、又は、当業者に既知の他の標識を挙げることができる。いくつかの実施形態では、標識はビオチンである。標識がビオチンである場合、アビジン又はストレプトアビジンを含む二次検出剤が、酵素、放射性同位体、比色剤、又は他の剤にコンジュゲートされる必要がある。一実施形態では、二次検出剤はストレプトアビジン-セイヨウワサビペルオキシダーゼである。
【0115】
いくつかの実施形態では、標識は、ペルオキシダーゼ(例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼ)、ガラクトシダーゼ(例えば、β-D-ガラクトシダーゼ)、又はホスファターゼ(例えば、アルカリホスファターゼ)などの、酵素標識である。酵素標識の場合、分光光度法で測定される、色、蛍光、又は発光を生じさせるために、当該酵素により切断される基質が必要とされる。ペルオキシダーゼ用の比色基質の例として、これらに限定されるわけではないが、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)、3,3’,4,4’ ジアミノベンジジン(DAB)、4-クロロ-1-ナフトール(4CN)、2,2’-アジノ-ジ[3-エチルベンズチアゾリン]スルホネート(ABTS)、及びo-フェニレンジアミン(OPD)が挙げられる。いくつかの実施形態では、アッセイがELISAである場合、基質は、650nmの波長で測定される青色を生じさせるTMBである。反応を、酸又は他の停止試薬の添加で止めることができる。硫酸停止試薬を用いることでTMBを黄色にでき、そして、この色は450nmで読み取ることができる。ホスファターゼ用の比色基質の例として、これらに限定されるわけではないが、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-ホスフェート/ニトロブルーテトラゾリウム(BCIP/NBT)及びp-ニトロフェニルホスフェート(p-NPP)が挙げられる。ガラクトシダーゼ用の比色基質の例として、これらに限定されるわけではないが、5-ドデカノイルアミノフルオレセイン ジ-β-D-ガラクトピラノシド(C12FDG)、9H-(1,3-ジクロロ-9,9-ジメチルアクリジン-2-オン-7-イル)、及びβ-D-ガラクトピラノシド(DDAOガラクトシド)が挙げられる。蛍光基質の例として、これらに限定されるわけではないが、4-メチルウンベリフェリルホスフェート(4-MUP、ホスファターゼ用)及び4-メチルウンベリフェリルガラクトシド(MUG、ガラクトシダーゼ用)、フルオレセイン ジ-β-D-ガラクトピラノシド(FDG、ガラクトシダーゼ用)、ヒドロキシフェニル酢酸(HPA、ペルオキシダーゼ用)、及び3-p-ヒドロキシフェニルプロピオン酸(HPPA、ペルオキシダーゼ用)が挙げられる。発光基質の例として、これらに限定されるわけではないが、ペルオキシダーゼ用には、ルミノール、ポリフェノール(例えば、ピロガロール、ププロガリン(pupurogallin)、没食子酸、及びウンベリフェロン)、及びアクリジンエステルが、ホスファターゼ用には、3-(2’-スピロアダマンタン)-4-メチル-4-(3’-ホスホリルオキシフェニル-1, 2-ジオキセタン(AMPPD)二ナトリウム塩が、ガラクトシダーゼ用には、(3-(2’-スピロアダマンタン)-4-メトキシ-4-(3’-β-D-ガラクトピラノシルオキシフェニル-1,2-ジオキセタン(AMPGD)が挙げられる。
【0116】
いくつかの実施形態では、標識はセイヨウワサビペルオキシダーゼであり、基質はTMBである。
【0117】
いくつかの実施形態では、標識は、比色標識、蛍光標識、又は発光標識である。比色標識の例として、これに限定されるわけではないが、ナノ粒子状金が挙げられる。蛍光標識の例として、これらに限定されるわけではないが、エチジウムブロマイド、フルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、緑色蛍光タンパク質、テキサスレッド、カスケードブルー、オレゴングリーン、マリーナブルー、ATTO標識、CF(商標)染料、Alexa Fluor、及びシアニン染料が挙げられる。発光標識の例として、これらに限定されるわけではないが、ルシフェリン及びホタルルシフェラーゼが挙げられる。
【0118】
捕捉抗体及び検出抗体として用いるのに適した抗体は、モノクローナルでもポリクローナルでもよく、多くの種に由来し得る。抗体の種の例として、ヒト、ウサギ、マウス、ラット、ラクダ科動物、リャマ、ニワトリなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、捕捉抗体及び検出抗体は、ともに、マウスモノクローナル抗体である。別の実施形態では、捕捉抗体及び検出抗体は、ウサギのモノクローナル又はポリクローナル抗体である。また、捕捉抗体及び検出抗体が異なる種のものである又は一方がポリクローナル抗体であり他方がモノクローナル抗体であるアッセイも、本開示の範囲内である。
【0119】
ポリペプチド配列についての『アミノ酸配列同一性百分率(%)』は、配列同一性の一部としていかなる保存的置換も考慮せずに、基準ポリペプチド配列と候補配列とをアラインし、ギャップを、必要であれば、最大の配列同一性百分率をもたらすように、導入した後での、基準ポリペプチド配列内のアミノ酸残基と同一である候補配列内のアミノ酸残基の百分率として定義される。アミノ酸配列同一性百分率を求めるためのアラインメントは、本技術分野内にあるさまざまな方法で実現でき、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを用いて実現できる。当業者であれば、比較する配列の全長にわたり最大アラインメントをもたらすのに必要とされる任意のアルゴリズムをはじめとする、配列をアラインするための適切なパラメータを求めることができる。
【0120】
また、ヘプシジン関連障害、鉄恒常性疾患、ERFEに関連する障害、及び/又は、マイオネクチンに関連する障害を診断又は監視するために抗体を用いる方法も開示する。
【0121】
本明細書では、『ヘプシジンに関連する障害』という言葉は、鉄恒常性(ホメオスタシス)を破綻させる異常レベルのヘプシジン(例えば、貯蔵鉄分又は貧血の程度に関連するヘプシジン過剰又はヘプシジン欠乏)により引き起こされる又はそれと関連する症状を指す。鉄恒常性の破綻は次いで貧血などの二次疾患を招き得る。急性又は慢性の炎症症状はヘプシジン発現の上方調節を招き得、これは減少された循環鉄レベルを招き得、これは貧血を引き起こしたり発症済みの貧血の悪化を引き起こしたりし得る。ヘプシジンに関連する疾患の例として、がんに伴う貧血、慢性疾患に伴う貧血、炎症に伴う貧血、化学療法誘発貧血、慢性腎臓病(ステージI、II、III、IV、又はV)、末期腎臓病、慢性腎不全鬱血性心不全、がん、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、クローン病、ピロリ菌感染症又は他の細菌の感染症、C型肝炎、HIV、及び他のウィルス性疾患、動脈硬化、アテローム性動脈硬化、肝硬変、膵炎、敗血症、血管炎、鉄欠乏、低色素性小球性貧血、鎌状赤血球病、及びヘプシジン過剰を伴う症状が挙げられる。
【0122】
本明細書では、『鉄恒常性疾患(又は障害』という言葉は、対象の鉄レベルが調節を必要とする症状を指す。これは、ヘプシジン関連障害や、ヘプシジンレベルの上昇を伴わないものの、ヘプシジンにより引き起こされたのではない鉄恒常性の破綻などのヘプシジン活性の阻害から恩恵を受けるだろう症状や、鉄の異常な吸収、回収、代謝、又は分泌が、鉄の正常な血液レベル又は組織分布の破綻を引き起こす疾患や、鉄異常調節が、炎症、がん、又は化学療法などの他の疾患又は症状の結果である疾患や、鉄の異常な血液レベル又は組織分布から生じる疾患又は障害や、鉄レベル又は分布を調節することで治療できる疾患又は障害を含む。こうした、鉄恒常性疾患又は障害、ヘプシジン関連障害、及びヘプシジン過剰をもたらし得る炎症症状の非限定的な例として、アフリカ鉄過負荷、鉄難治性鉄欠乏性貧血(IRIDA)、アルファサラセミア、アルツハイマー病、貧血、がんに伴う貧血、慢性疾患に伴う貧血、炎症に伴う貧血、動脈硬化又はアテローム性動脈硬化症(冠動脈疾患、脳血管疾患、又は末梢閉塞性動脈疾患等)、運動失調、鉄に関連した運動失調、無トランスフェリン血症、がん、セルロプラスミン欠乏症、化学療法誘発貧血、末期腎疾患又は慢性腎不全を含む慢性腎疾患(ステージI、II、III、IV、又はV)、急性腎障害(AKI)、心肺バイパス関連AKI、薬物又は毒素に関連するAKI、肝硬変、古典的なヘモクロマトーシス、コラーゲン誘発性関節炎(CIA)、ヘプシジン過剰(ヘプシジン上昇)を伴う症状、先天性赤血球生成貧血、うっ血性心不全、クローン病、セリアック病、炎症性腸疾患(IBD)、糖尿病、鉄の体内分布の障害、鉄恒常性障害、鉄代謝障害、フェロポーチン病、フェロポーチン変異ヘモクロマトーシス、葉酸欠乏症、フリードリヒ運動失調、索状骨髄症、グラシル症候群、ピロリ菌感染症又は他の細菌感染症、遺伝性ヘモクロマトーシス、後天性ヘモクロマトーシス、トランスフェリン受容体2の変異に起因するヘモクロマトーシス、ヘモグロビン症、肝炎、肝炎(ブロック)、C型肝炎、肝細胞癌、HIV又は他のウイルス性疾患、ハンチントン病、高フェリチン血症、低色素性小球性貧血、低鉄血症、インスリン抵抗性、鉄欠乏性貧血、鉄欠乏、鉄過剰、ヘプシジン過剰を伴う鉄欠乏症状、若年性ヘモクロマトーシス(HFE2)、多発性硬化症、トランスフェリン受容体2、HFE、ヘモジュベリン、フェロポーチン、又は他の鉄代謝遺伝子の変異、新生児ヘモクロマトーシス、鉄に関連する神経変性疾患、骨減少症、骨粗鬆症膵炎、パントテン酸キナーゼ関連神経変性、パーキンソン病、ペラグラ、異食症、ポルフィリン症、晩発性皮膚ポルフィリン症、偽脳炎、肺ヘモジデローシス、赤血球障害、関節リウマチ、敗血症、鉄芽球性貧血、全身性エリテマトーデス、サラセミア、サラセミアインターメディア、輸血鉄過負荷、腫瘍、血管炎、ビタミンB6欠乏症、ビタミンB12欠乏症、及び/又は、ウィルソン病が挙げられる。
【0123】
鉄調節の破綻にかかる非炎症性症状として、これらに限定されるわけではないが、ビタミンB6欠乏症、ビタミンB12欠乏症、葉酸欠乏症、ペラグラ、索状脊髄症、偽脳炎、パーキンソン病、アルツハイマー病、冠状動脈性心臓病、骨減少症、骨粗鬆症、異常血色素症、及び赤血球代謝障害、並びに、末梢動脈閉塞性疾患が挙げられる。
【0124】
本明細書では、『ERFEに関連する疾患(又は障害)』という言葉は、異常レベルのERFE(例えば、ERFE過剰又はERFE欠乏)により引き起こされる又はそれと関連する症状を指す。ERFEに関連する疾患の例として、これらに限定されるわけではないものの、サラセミア、鎌状赤血球病、鉄ヘモスタシス疾患又は障害、及びヘプシジン関連障害が挙げられる。
【0125】
サラセミアは、異常ヘモグロビン産生を特徴とする遺伝性血液障害である。症状は、種類に依存し、無症状から重篤症状まで異なり得る。αサラセミアとβサラセミアの2つの主要な種類が存在する。α及びβサラセミアの重篤度は、αグロビンについての4種類の遺伝子又はβグロビンについての2種類の遺伝子のうちいくつが欠けているかに依存する。変異アレルは、部分的な機能が保存されている場合(そのタンパク質が、減弱された機能を有するか、正常に機能するものの減少した量で産生されるかする場合)、β+と呼ばれ、機能的タンパク質が産生されない場合、β0と呼ばれる。
【0126】
本明細書では、『マイオネクチンに関連する疾患(又は障害)』という言葉は、異常レベルのマイオネクチン(例えば、マイオネクチン過剰又はマイオネクチン欠乏)により引き起こされる又はそれと関連する症状を指す。マイオネクチンに関連する疾患の例として、これらに限定されるわけではないものの、鉄ヘモスタシス疾患又は障害、ヘプシジン関連障害、心血管疾患又は障害、糖尿病、肥満、及びインスリン抵抗性が挙げられる。
【0127】
本明細書では、『対象』又は『患者』又は『個体』という用語は、哺乳類を指し、限定されるわけではないが、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、及びウマなど)、霊長類(例えば、ヒト、モンキーなどの非ヒト科霊長類)、ウサギ、及び、齧歯類(例えば、マウス及びラット)が挙げられる。ある実施形態では、対象はヒトである。
【0128】
(実施形態)
・実施形態1
重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含むエリスロフェロン(ERFE)結合抗体又はそのERFE結合断片であって、
前記VHは、
(i)配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
(ii)配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
(iii)配列番号38のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
(iv)配列番号48のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、又は、
(v)配列番号58のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
を含み、
前記VLは、
(vi)配列番号23のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
(vii)配列番号33のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
(viii)配列番号43のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
(ix)配列番号53のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、又は、
(x)配列番号63のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
を含む、
エリスロフェロン(ERFE)結合抗体又はそのERFE結合断片。
・実施形態2
ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片であって、
前記抗体が
(i)配列番号19-21のアミノ酸配列を有する重鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全て、
(ii)配列番号24-26のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全て、
(iii)配列番号29-31のアミノ酸配列を有する重鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全て、
(iv)配列番号34-36のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全て、
(v)配列番号39-41のアミノ酸配列を有する重鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全て、
(vi)配列番号44-46のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全て、
(vii)配列番号49-51のアミノ酸配列を有する重鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全て、
(viii)配列番号54-56のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全て、
(ix)配列番号59-61のアミノ酸配列を有する重鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全て、
(x)配列番号64-66のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全て、
を含む、
ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
・実施形態3
配列番号18のVHと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列と、配列番号23のVLと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列とを含む、実施形態1のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
・実施形態4
前記VHは配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、実施形態1又は3のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
・実施形態5
前記VLは配列番号23のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、実施形態1又は3のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
・実施形態6
前記抗体は、配列番号19-21のアミノ酸配列を有する重鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全てと、配列番号24-26のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全てとを含む、実施形態2のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
・実施形態7
配列番号28のVHと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号33のVLと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態1のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
・実施形態8
前記VHは配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、実施形態1又は7のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
・実施形態9
前記VLは配列番号33のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、実施形態1又は7のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
・実施形態10
前記抗体は、配列番号29-31のアミノ酸配列を有する重鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全てと、配列番号34-36のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全てとを含む、実施形態2のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
・実施形態11
配列番号38のVHと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列と、配列番号43のVLと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列とを含む、実施形態1のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
・実施形態12
前記VHは配列番号38のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、実施形態1又は11のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
・実施形態13
前記VLは配列番号43のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、実施形態1又は11のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
・実施形態14
前記抗体は、配列番号39-41のアミノ酸配列を有する重鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全てと、配列番号44-46のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全てとを含む、実施形態2のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
・実施形態15
配列番号48のVHと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列と、配列番号53のVLと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列とを含む、実施形態1のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
・実施形態16
前記VHは配列番号48のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、実施形態1又は15のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
・実施形態17
前記VLは配列番号53のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、実施形態1又は15のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
・実施形態18
前記抗体は、配列番号49-51のアミノ酸配列を有する重鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全てと、配列番号54-56のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全てとを含む、実施形態2のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
・実施形態19
配列番号58のVHと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、又は、配列番号63のVLと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態1のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
・実施形態20
前記VHは配列番号58のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、実施形態1又は19のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
・実施形態21
前記VLは配列番号63のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、実施形態1又は19のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
・実施形態22
前記抗体は、配列番号59-61のアミノ酸配列を有する重鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全てと、配列番号64-66のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全てとを含む、実施形態2のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
・実施形態23
VH及びVLを含み、前記VHは、配列番号18、28、38、48、又は58のアミノ酸配列を含み、かつ、前記VLは、配列番号23、33、43、53、又は63のアミノ酸配列を含む、ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
・実施形態24
配列番号18、28、38、48、又は58のVH及び配列番号23、33、43、53、又は63のVLを含む、ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
・実施形態25
配列番号19、29、39、49、又は59のアミノ酸配列を有するCDRH1を含む、ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
・実施形態26
配列番号20、30、40、50、又は60のアミノ酸配列を有するCDRH2を含む、ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
・実施形態27
配列番号21、31、42、52、又は62のアミノ酸配列を有するCDRH3を含む、ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
・実施形態28
配列番号24、34、44、54、又は64のアミノ酸配列を有するCDRL1を含む、ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
・実施形態29
配列番号25、35、45、55、又は65のアミノ酸配列を有するCDRL2を含む、ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
・実施形態30
配列番号26、36、46、56、又は66のアミノ酸配列を有するCDRL3を含む、ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
・実施形態31
前記抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、又は抗体断片である、実施形態1から30のいずれか1つのERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
・実施形態32
サンプル中のエリスロフェロン(ERFE)タンパク質の存在を検出するための及び/又はその量を測定するためのアッセイであって、第1の抗体-ERFE複合体を形成するために、前記サンプルを、第1の抗体と接触させることと、その後、前記第1の抗体と第2の抗体とが同一ではないとして、前記第1の抗体-ERFE複合体に結合した前記第2の抗体の存在を検出し及び/又はその量を測定し、これにより、前記サンプル中のERFEタンパク質の存在及び/又は量を決定することと、を含む、アッセイ。
・実施形態33
前記アッセイはELISAアッセイを含む、実施形態32のアッセイ。
・実施形態34
前記サンプルは血清サンプルである、実施形態32のアッセイ。
・実施形態35
前記第1の抗体及び前記第2の抗体は、配列番号1及び/又は3-16の少なくとも1つの配列を含む、当該配列から実質的になる、又は当該配列からなるERFEポリペプチドを、特異的に認識する、実施形態32のアッセイ。
・実施形態36
前記第1の抗体は、モノクローナル抗体である9B12、17A5、17E5、2D2、4C1、6H9、7H4、9C7、14B2、及び14D9、又は、これらのERFE結合断片から選択される、実施形態32のアッセイ。
・実施形態37
前記第1の抗体は実施形態1から31のいずれか1つの抗体から選択される、実施形態32のアッセイ。
・実施形態38
前記第1の抗体は4C1又はそのERFE結合断片である、実施形態32のアッセイ。
・実施形態39
前記第1の抗体は固体支持体上にコートされている、実施形態32から38のいずれか1つのアッセイ。
・実施形態40
前記固体支持体はELISAプレートである、実施形態39のアッセイ。
・実施形態41
前記検出工程は、第1の抗体-ERFEポリペプチド複合体を標識化された第2の抗体と接触させることを含む、実施形態32のアッセイ。
・実施形態42
前記第2の抗体は、9B12、17A5、17E5、2D2、4C1、6H9、7H4、9C7、14B2、及び14D9から選択される標識化された検出モノクローナル抗体である、実施形態41のアッセイ。
・実施形態43
前記第2の抗体は請求項1から39のいずれか1項に記載の抗体から選択される標識化された検出抗体である、実施形態41のアッセイ。
・実施形態44
前記第2の抗体は2D2である、実施形態41のアッセイ。
・実施形態45
前記標識はビオチンである、実施形態41のアッセイ。
・実施形態46
前記標識はセイヨウワサビペルオキシダーゼである、実施形態41のアッセイ。
・実施形態47
ERFE又はマイオネクチンに関連する疾患のある対象での赤血球生成を評価する方法であって、前記対象由来のサンプルを実施形態32から46のいずれか1つのアッセイに掛けることを含む、方法。
・実施形態48
前記疾患はサラセミアである、実施形態47の方法。
・実施形態49
前記疾患は心血管疾患である、実施形態47の方法。
・実施形態50
疾患のある対象での赤血球生成を評価する方法であって、実施形態1から31のいずれか1つの抗体で前記対象由来のサンプル中のエリスロフェロンを検出することを含む、方法。
・実施形態51
捕捉抗体及び検出抗体を含み、
i)前記捕捉抗体は17A5であり、前記検出抗体は、2D2、4C1、又は7H4である、
ii)前記捕捉抗体は2D2であり、前記検出抗体は、4C1、7H4、17A5、又は9B12である、
iii)前記捕捉抗体は4C1であり、前記検出抗体は、2D2、7H4、17A5、又は9B12である、
iv)前記捕捉抗体は7H4であり、前記検出抗体は、2D2、4C1、17A5、又は9B12である、
v)前記捕捉抗体は9B12であり、前記検出抗体は、2D2、4C1、17A5、又は7H4である、又は、
vii)前記捕捉抗体及び前記検出抗体は個別に請求項14から44のいずれか1項に記載の抗体であり、前記捕捉抗体及び前記検出抗体は同一ではない、
サンドイッチ免疫アッセイ用のキット。
・実施形態52
前記捕捉抗体及び前記検出抗体は異なる抗体である、実施形態51のキット。
・実施形態53
前記捕捉抗体は固体支持体に結び付けられている、実施形態51又は52のキット。
・実施形態54
前記検出抗体は標識に結び付けられている、実施形態51から53のいずれか1つのキット。
・実施形態55
前記標識はビオチンである、実施形態54のキット。
・実施形態56
前記標識はセイヨウワサビペルオキシダーゼである、実施形態54のキット。
・実施形態57
ストレプトアビジン-セイヨウワサビペルオキシダーゼをさらに含む、実施形態55のキット。
・実施形態58
基質をさらに含む、実施形態51から57のいずれか1つのキット。
・実施形態59
前記アッセイを実行するための説明書をさらに含む、実施形態51から58のいずれか1つのキット。
【0129】
(実施例)
(実施例1:無効赤血球生成の臨床評価のための血清エリスロフェロンに関するモノクローナルサンドイッチELISA法)
β-サラセミア並びに他の一般的な遺伝性及び後天性の鉄負荷性貧血の顕著な特徴は、鉄過負荷の存在下で衰弱性貧血をまねく無効赤血球生成(Ineffective Erythropoesis:IE、血液産生不良)である。最近に発見されたエリスロフェロン(ERFE)は、赤血球細胞(Red Blood Cell:RBC)の発生中に産生されるホルモンであり、血漿鉄レベルを調節するマスターホルモンであるヘプシジンの負調節因子であること及びβ-サラセミア患者で大きく上昇することが示されている。
【0130】
[ERFE抗原産生及び精製]
培養したHEK細胞をFLAGタグ含有クローン化ERFEで一過的にトランスフェクトした。トランスフェクト済みHEK細胞をERFE発現を可能とする条件下で増殖させ、培地上清を集め、抗FLAGカラムでの精製に備え溜めた。抗原は抗ERFE mAbで認識されたが、収率は低かった。ERFEの生産効率を向上させるための高効率HEK細胞株及びGenScriptの独占的なクローニング・ベクター(ピスカタウェイ、ニュージャージー州)では約5mg/Lの精製ERFEが得られた。
【0131】
[ERFE mAbのプラズモン共鳴評価]
次に、ERFE抗原に結合する抗体の特異性、親和性、及び速度論を求める。このアプローチにより、ERFEとの高親和性mAbを選択すること及びERFEサンドイッチELISAのための捕捉用及び検出用mAbの最適な組み合わせを選択することが可能となる。すべてのモノクローナル抗体候補の最初のスクリーニングは、ERFEをコートした96ウェルプレートでのELISAを用いて行われる。プラスチック上への固定化の際にエピトープへの近づきやすさ又はERFE抗原の立体構造が変わることがあるので、ERFE抗原はELISAプレート上に異なる濃度で固定化される。いずれかのプレートで高力価を有するハイブリドーマ上清を本アッセイに基づいて選択する。表面プラズモン共鳴解析のために、高純度抗体をBiacoreセンサーチップ上にコートする。指向性をもった抗体の捕捉を保証するために、Fc特異的チップ(プロテインA/GセンサーチップCM5)を用いる。発現させ精製したERFE抗原をある濃度範囲(nMからmM)で注入し、結合相互作用をある緩衝条件範囲で調べた。装置及び緩衝剤によるアーチファクトを補正するために、対照として、BSA又は非特異的抗原を同じ条件下で基準表面上に固定化した。解離速度定数(koff)及び結合速度定数(kon)並びに他の結合パラメータを製造元が提供するBIAevaluationバージョン3.2ソフトウェアを用いて求めた。
【0132】
また、本実験をチップにERFE抗原をコートしmAb溶液を注入するという逆の構成でも行う。ERFE抗原は-NH基又は-COOH基を介してチップ上に固定化され、対照として関連タンパク質が用いられる。最後に、抗体の組がERFEと相互作用する能力を同定したもののうち有望な候補を用いて試験する。一方の抗体をFcチップ上にアンカリングし、ERFEを添加し、他方の抗体を当該チップ上方に浮遊させた。最も高い親和性相互作用が得られた抗体の組を選択する。対照は、ERFEを他の関連タンパク質又は非関連タンパク質と置換した実験を含む。
【0133】
[モノクローナル抗体産生]
9種類のERFE特異的マウスモノクローナルハイブリドーマを限界希釈により同定した。これらは適切な量のERFE特異的IgG抗体(約1μg IgG/ml TC培地)を分泌する確認済みの能力を有する。各抗体の複数のアリコートを増加させ液体窒素で保存した。
【0134】
抗ERFE抗体のサブセットをサンドイッチELISAによる適切なmAbの組のスクリーニングに続いて同定した。選択したハイブリドーマを、mAb産生効率について組織培養フラスコ及び10-100mlの中空糸バイオリアクター内で評価し、これらの産生条件がアッセイ性能に影響するかを求めた。
【0135】
インビトロ増殖研究のために、mAbである2D2及び4C1を湿潤温度調節CO組織培養インキュベーター内に収容した2つのFiberCellシステム中空糸バイオリアクター(Frederick、メリーランド州)を用いて無血清培地で増殖させた。30日後に多くのミリグラム量の抗体を得るために、流速を25-50ml/分に調節した。毎日採取したバイオリアクター培地内のmAbを溜め、5mlプロテインGカラムでアフィニティー精製し、HiPrep26/10脱塩カラム(GE Healthcare、ウプサラ、スウェーデン)を用いてPBSに対して脱塩した。96ウェルのEIAプレートを精製捕捉抗体でオーバーナイトにわたりコートした。これらの捕捉用mAbのそれぞれをELISAによる同時結合活性についてビオチンで標識化した各検出用mAbを用い少量で試験した。
【0136】
また、ハイブリドーマ培地組成及び産生方法条件が抗ERFE mAbの抗原抗体相互作用に影響するかを確かめるために、拡縮した規模のバイオリアクター産生を評価した。異なる方法又は規模で産生されたmAbの技術的利点を比較した。抗体産生条件はアッセイ性能への僅かな影響を有するかもしれない。
【0137】
[ERFE mAbコート済みマイクロタイタープレートの生産のための方法及び材料の開発]
96ウェルマイクロタイタープレートへのmAbの受動的吸収について最適の抗体濃度及び条件を求めるために、最良の性能の抗体のすべてをアフィニティー精製し、チェッカーボード最適化にかけた。温度及び湿度を調節したインキュベーターを用いてマイクロタイタープレートをオーバーナイトにわたり乾燥させ、個別のプレートを1グラムの分子篩乾燥剤を含むメイラーポーチ内に加熱密封し4℃で保存した。
【0138】
独占的試薬を用いたERFEについての研究的サンドイッチELISAが開発されてきている。高pHカーボネートコーティングバッファーを用いてmAbの受動的吸収によりプレートをコート及びブロックした。抗体結合についてウェル間のばらつきが最小(CV5%未満)で信号対雑音比が最大であったERFE捕捉用mAbの最適の濃度及び希釈を求めるために、異なる製造元から得たいくつかの追加の96ウェルマイクロタイタープレート形式を試験した。
【0139】
[ERFEの臨床アッセイの自動化及び検証]
既存のERFE mAbに基づくサンドイッチELISAはベースラインERFE ELISAであり、このELISAにより臨床アッセイを検証する。完全統合型Beckman FXプラットフォーム上でのアッセイを開発するために、臨床検査室改善法(Clinical Laboratory Improvement Amendments:CLIA)及び米国臨床病理医協会(College of American Pathologists:CAP)ガイドラインを用いる。Beckmanプラットフォームには、DTX-880検出器、BioTekプレートウォッシャー、及びCytomat2C15インキュベーター、並びに、プレート/チップホテルを取り付ける。現在のところ、サンドイッチELISAは、それぞれ0.1及び0.15ng/mlという優れた検出下限(Lower Limit of Detection:LLOD)及び定量下限(Lower Limit of Quantitation:LLOQ)を有している。自動化は、研究的ERFEサンドイッチELISAのダイナミックレンジを増加させ、低pg/ml又は低ng/ml範囲でのERFEの一貫性のある測定を可能とするだろう。信号対雑音比のみならずアッセイ間/アッセイ内の変動係数(CV)も改善される。ERFE試験の感度の変化は自動化Beckman FX ERFE試験におけるより低いLLOD/LLOQから自ずと明白であった。
【0140】
アッセイの開発は、終濃度が0-50ng/ml、0-40ng/ml、0-30ng/ml、0-20ng/ml、又は0-10ng/mlの範囲であるERFE抗原から作成した標準曲線から始めた。mAbに基づく診断装置の所望の特徴の1つは検出下限を改善することであったため、検出線形範囲内に収まる程度にサンプルが希釈されることを保証するように実験は行われた。アッセイの選択性は、無効赤血球生成の疾患がある患者のパネルから得た既知濃度の血清内ERFEの添加により調べた。
【0141】
健康ヒトボランティア群(ヘモグロビン、フェリチン、血清トランスフェリン受容体、及びC反応性タンパク質が正常実験室レベルであり、男女分布は均等)からの292名の初回血液ドナーの血清サンプルのパネルを用い、自動化FX ERFE試験の基準範囲を定めた。アッセイ内の精度を、血清サンプルを同日に反復して(n=6)測定し変動係数(CV)を求めることにより試験した。アッセイ間の再現性を、少なくとも2名の技師が異なる3日にアッセイを行いCVのミーン及びメジアンを計算することにより求めた。アッセイ検証研究で必要とされる厳密な品質管理基準の厳守を保証するために、バッチ内及びバッチ間のアッセイのばらつきを、同じバッチ又は異なるバッチの試薬から製造したプレートで実験を繰り返すことにより調べた。
【0142】
(実施例2:組み換えヒトエリスロフェロン抗原の作成)
ヒトERFEの発見に続き、プロトタイプのサンドイッチELISAに必要なモノクローナル抗体の開発を進めた。HEK293F細胞を、ヒトERFE又はFLAGタグ付加ERFEのいずれかでトランスフェクトし、5%CO雰囲気、37℃で、72時間にわたり培養し、上清を採取し、プロテインGアガロースビーズに固定化された抗ヒトERFEポリクローナル抗体(ヒトERFEの場合)又は抗FLAG M2 アフィニティークロマトグラフィー(FLAGタグ付加ERFEの場合)により抗原を精製した。抗原の活性及び純度をELISA、SDS-PAGE電気泳動、及びウェスタンン・ブロットで確かめ、タンパク質濃度をビシンコニン酸タンパク質アッセイ(BCA、Thermo Scientific、ロックフォール、イリノイ州)を用いて求め、アリコートを-80℃で凍結させた。予備的研究では、収率が悪く、組織培養上清1リットル当たり0.2-0.3mgの範囲の組み換えERFE抗原しか得られないことが示された。この抗原は抗ERFE mAbで認識されたものの、収率は低かった。ERFE作成のために、高効率HEK細胞株とヒトERFE又はFLAGタグ付加ERFEを含むGenScriptの独占的なクローニング・ベクター(ピスカタウェイ、ニュージャージー州)とを用いた。GenScriptの発現試薬及び方法では、約5mg/Lの精製ERFEが得られた。この発現の取り組みにより、約70%の純度で1mgの総タンパク質量が得られた。
【0143】
(実施例3:モノクローナル抗体及びハイブリドーマの作成)
メスのBALB/cマウス(n=5匹、6-8週齢)を、複数の皮下部位での組み換えヒトエリスロフェロン(ERFE)の繰り返し注射により免疫化した。血清力価を4週間隔で監視し、免疫化に強い応答を示したマウスをそれぞれ選択し、リンパ節及び脾臓のプールを用いて融合を行った。合計で4回の融合を行い、各融合につき12枚の96ウェルプレートに播種し、プレートを、5%CO雰囲気、37℃で、4日間にわたりインキュベートして、スクリーニングに利用可能なおよそ4600個の生きたハイブリドーマコロニーを得た。
【0144】
96ウェルマイクロプレートに組み換え抗体をコートし、ハイブリドーマ組織培養上清100μlを各ウェルに加えることにより、ヒトERFE特異的抗体を分泌するハイブリドーマを同定し、セイヨウワサビペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスIgG H+L鎖抗体の添加によりERFE特異的抗体の存在を検出した。TMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)の添加後、反応を15分間にわたり進め0.5N HSOで止めてから、吸光度(450nm)を測定した。合計で10種類のヒトERFE特異的IgGハイブリドーマを同定した(ヒット率0.022%、9B12、17A5、17E5、2D2、4C1、6H9、7H4、9C7、14B2、及び14D9)。アイソタイプ分析から、これらのERFE特異的ハイブリドーマの9種類(9B12、17A5、17E5、4C1、6H9、7H4、9C7、14B2、及び14D9)がIgGであり、1種類(2D2)がIgG2aであることが明らかとなった。すべてのハイブリドーマを限界希釈によりサブクローン化し、それらのアイソタイプを再確認し、それぞれの複数のアリコートを液体窒素中で凍結させた。
【0145】
同定したハイブリドーマは、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションの特許用寄託に以下のアクセッション番号で寄託された。
9B12:PTA-123882
17A5:PTA-123883
2D2 :PTA-123879
4C1 :PTA-123880
7H4 :PTA-123881
【0146】
そして、ハイブリドーマ9B12、17A5、2D2、4C1、及び7H4由来の抗体を、配列同定した。TRIzol(登録商標)試薬を製造元の指示通りに用いてハイブリドーマ細胞から全RNAを単離した。その後、PrimeScript(商標) 1st Strand cDNA合成キットとアイソタイプ特異的アンチセンスプライマー又はユニバーサルプライマーとを用いて全RNAを逆転写してcDNAを作成した。V、V、C、及びCの抗体断片を、GenScriptを用いてRACE法(rapid amplification of cDNA ends)により増幅した。増幅抗体断片を標準クローニング・ベクターに個別にクローン化した。コロニーPCRを行い、正しいサイズのインサートを含むクローンをスクリーニングした。各断片について、正しいサイズのインサートを含むコロニーを5つ以上配列同定した。異なるクローンの配列をアラインして、保存配列を表2に示した。
【0147】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【0148】
研究では、まず、ヒトERFEに特異的なモノクローナル抗体サンドイッチELISAの開発のための最良の性能の抗体の組を同定した。捕捉したERFEへのビオチン化mAbの結合特性に基づき、9種類のクローンを液体窒素から蘇生し、6ウェル組織培養プレートに播種し、10%ウシ胎児血清含有DMEMを用いコンフルエントになるまで増殖させ、複数回の増殖を経つつ徐々に無血清培地に慣らした。慣らしの後、各マウスハイブリドーマを、まず、T75組織培養フラスコで、次に、T150組織培養フラスコで、増殖し、およそ1リットルの培養上清を生産した。この上清から1mlのHiTrap(商標)プロテインGカラム(GE Healthcare、ウプサラ、スウェーデン)を用いてモノクローナル抗体(mAb)を精製し、アリコートを-20℃で保存した。各mAbをEZ-Link Sulfo-NHS-LC-Biotinylation chemistry(Thermo Scientific、ロックフォード、イリノイ州)を用いてビオチンで標識化した。ELISAプレートを100ng/ウェルの未標識の捕捉用mAbでオーバーナイトにわたりコートし、組み換えヒトFLAG-ERFE(150、75、37.5、18.75ng/ウェル)を60分インキュベートし、未結合の抗原を除去するために洗い、そして、ビオチン化mAb(150ng/ウェル)を各ウェルに加え、さらに1時間インキュベートした。抗体結合をストレプトアビジンHRPの添加後にTMBを添加することにより検出し、反応を15分にわたり進め、シグナルを止め、そして、吸光度を450nmで測定した。捕捉抗体として9種類の異なる抗体を試験し、検出抗体として8種類のビオチン化抗体を試験した。72通りの異なる組み合わせを試験した。予備分析から、複数の抗体の組が一対比較のために選ばれた9種類のmAb由来の組み換えヒトERFEを捕捉・検出できることが明らかとなった。
【0149】
さらなる抗ERFEサンドイッチアッセイ実験を3種類の異なるコーティング抗体7H4、17A5、及び4C1と4種類の異なるビオチン化検出抗体2D2、17A5、9B12、及び4C1とを用いて行った(図4A-C)。図4に示すように、試験した捕捉抗体によらず、各検出抗体で作成した回帰方程式は区別できる傾きを示したが、これは各検出抗体がコーティング抗体により捕捉されたERFEに対して異なる結合親和性を有することを示す。この特性は、結合親和性が高いほどアッセイの感度が高くなるため、サンドイッチELISA開発にとって重要である。さらに、各回帰方程式についての相関係数が優れていると考えられるものの(0.9944から0.9999の範囲のR2値)、抗原検出が試験したERFE濃度にわたって最適であることから、傾きは大きいほど望ましい。まとめると、本アプローチにより、さらなるアッセイ開発のために検討すべき候補の抗体の組が実験的に同定された。
【0150】
(実施例4:モノクローナルサンドイッチELISA)
結合活性について捕捉抗体と検出抗体とのすべての可能な組み合わせを照会した後、さらなるアッセイの最適化のために捕捉抗体及び検出抗体としてそれぞれmAb4C1及び2D2を選んだ。96ウェルELISAプレート上で乾燥させたmAb4C1を用いた予備的『チェッカーボード』研究では、捕捉抗体と、8点標準曲線のためのERFE抗原と、血清中のERFEの結合及び検出を定量化するためのストレプトアビジンHRPとの、最適濃度を同定した。標準曲線は、8点のERFE濃度(10.0、5.0、2.5、1.25、0.63、0.31、0.16、0.00ng/ml)で構築され、2.0-2.2の範囲の最大吸光度及び0.05吸光度単位未満のバックグラウンドシグナルであった(図5)。このプロトタイプのサンドイッチELISAは検出下限(LLOD)及び定量下限(LLOQ)がそれぞれ0.15及び0.17ng/mlであった。
【0151】
さらに、捕捉抗体として7H4を検出抗体としてビオチン化2D2を用いたサンドイッチアッセイで2種類のflag-hERFEを使い本アッセイを評価したところ、同様の結果が得られ、本アッセイの有効性がさらに証明された。
【0152】
このプロトタイプのアッセイを用いて、正常な(フェリチン、血漿鉄、及びトランスフェリン飽和度の評価により決定される)鉄状態である110名の健康な初回血液ドナー由来の血清を試験することにより、ヒトERFEの基準範囲を求めるための研究を行った。健康な個人で期待されるとおり、血清ERFEは、低く(ミーン0.83ng/ml)、また、0.15から3.94ng/mlの範囲であった(信頼区間5%及び95%、表3)。
【0153】
【表3】
【0154】
4C1捕捉抗体と、ビオチン又はセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識化した2D2検出抗体とを用いて、さらなるアッセイを行った。2D2ビオチンウェルは、ストレプトアビジンHRPを用いてさらにインキュベートし、その後、すべてのウェルを、TMBと反応させた。図9に示すように、ビオチンで標識化した検出抗体とHRPで標識化した検出抗体とは血清サンプル中のERFEを検出する能力について実質的に等価であった。
【0155】
(実施例5:無効赤血球生成の理解のためのERFEの臨床評価)
ヒト血清ERFE濃度への献血の効果を求めた。3名のドナーがベースラインで血小板及び血漿アファレーシスを経験し、血清を、ベースラインで採取し、アファレーシス後120日目で採取し、さらに、アファレーシス後2-14日目後から少なくとも5回採取した。各患者はアファレーシス治療中に約30mlの赤血球を失うと推定された。期待されたとおり、血清ERFEは、各患者でアファレーシス後の最初の2日間にベースラインから上昇し、アファレーシス後14日間にわたり上昇を続けるが、アファレーシス後の120日目までに血清ERFEはベースラインレベルに戻った(図6)。
【0156】
次に、血清ERFE濃度が無効赤血球生成に関連する血液疾患で上昇するという仮説を検証した。血清サンプルを、X連鎖性鉄芽球性貧血患者(XLSA発端者)及びその家族15名(家族対象)から採取した。9名のXLSA発端患者はALAS2遺伝子に点変異を有し、2名はα-グロビン重複を有していた。血清ERFEをXLSA発端者及び対照群で測定したところ、ERFEが家族対照群と比べXLSA発端者群で有意に上昇していることがわかった(図7)。興味深いことに、家族群(対照)での血清ERFEは初回健康血液ドナーと同様の濃度であった。
【0157】
α-又はβ-グロブリン遺伝子での変異のため無効赤血球生成を呈し異常血色素症及び重篤な鉄過負荷がもたらされることが知られているサラセミア患者での血清ERFE濃度の定量のためにさらなる研究を行った。血清を、α-サラセミア患者並びにβ-サラセミア患者及びβ0サラセミア患者の両方から採取し、鉄欠乏(ID)患者及び対照患者から採取した血清由来のERFEレベルと比較した。β-サラセミア患者及びβ0サラセミア患者の両方がα-サラセミア群、ID群、及び対照群の患者よりも有意に高いERFE濃度を有することがわかった(図8)。さらにめざましい発見として、β0サラセミアの患者がβ-サラセミア患者よりも有意に高い血清ERFE濃度を有していた。この発見は、血清ERFE測定が、β-又はα-サラセミア形質のいずれかを示す患者とより重篤なβ0-サラセミア形質を有する患者とを弁別する助けとなるかもしれないことを示唆している。
【0158】
特記のない限り、本明細書及び特許請求の範囲に記載の、成分の量、分子量などの性質、反応条件などを表す全ての数値は、いかなる場合も、『約』という用語で修飾されているものとして解釈されるべきである。本明細書では、『約』及び『およそ』という用語は、10から15%の範囲内にあること、好ましくは、5から10%の範囲内にあることを意味する。従って、反対のことが記載されていない限り、本明細書及び特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、本発明で得ようとする所望の性質に応じて変動し得る近似値である。均等論の適用を請求項の範囲に限定することを意図するわけではないが、最低限、各数値パラメータは記載の有効数字の数を鑑み通常の丸め手法を適用して少なくとも解釈されるべきである。本発明の広い範囲を規定する数値範囲及びパラメータは近似値であるものの、特定の実施例に記載の数値は可能な限り正確に記載されている。ただし、いかなる数値も対応する試験測定値でみられる標準偏差から不可避的に生じるいくらかの誤差を本質的に含む。
【0159】
本発明を記載する文脈で(特に、特許請求の範囲の文脈で)用いられる単数への言及は、本明細書に特記がなく且つ文脈上で明確に矛盾しない限り、単数及び複数の両方を包含すると解釈されるべきである。本明細書の数値範囲の記載は、当該範囲内に収まる独立した数値のそれぞれを個別に参照する簡潔明瞭な方法としての役割を果たすにすぎない。本明細書に特記のない限り、個別の数値のそれぞれが本明細書で個別に記載したかのように本明細書に取り込まれる。本明細書に開示のすべての方法は、本明細書に特記がなく且つ文脈上で明確に矛盾しない限り、任意の適切な順番で行うことができる。あらゆる例示の使用又は本明細書に開示の例示表記(例えば、『~などの』)は、本発明の理解をより容易にするためのものにすぎず、請求項に記載された以上の限定を本発明の範囲にもたらすものではない。本明細書の記載は、請求項に記載されていないものの本発明を実施するために必須の要素を示すものと解釈されるべきではない。
【0160】
本明細書に開示の発明の代替的要素又は実施形態のグループは限定事項と解釈されるべきではない。各グループのメンバーは、個別に、又は、当該グループの他のメンバー若しくは本明細書に開示の他のグループの他のメンバーとの任意の組み合わせで、参照され、また、請求項に記載され得る。あるグループの1つ以上のメンバーが、便宜上及び/又は特許上の理由で、あるグループに追加されたり、あるいは、あるグループから削除されたりすることも考えられる。こうした追加又は削除が起きた場合、本明細書は、変更後のグループを含んでいたものとみなされるので、特許請求の範囲で用いられるマーカッシュグループのすべてが記載要件を満たす。
【0161】
発明者等が知る限り本発明を実施するために最良の形態をはじめとする本発明のいくつかの形態が本明細書に記載されている。当然ながら、前述の記載に触れた当業者にとってこうした記載済みの実施形態の変形例は明白だろう。本発明者等は、当業者がこうした変形例を適切に採用することを期待し、本発明が本明細書に具体的に記載された以外のやり方で実施されることを意図している。従って、本発明は、適用法が許す限り、本願に添付の請求項で記載される主題の修整例及び等価例のすべてを包含する。さらに、上記の要素のすべての可能な変形例での当該要素の任意の組み合わせが、本明細書に特記がなく且つ文脈上で明確に矛盾しない限り、本発明に包含される。
【0162】
本明細書に開示の特定の実施形態は、請求項において、「からなる」又は「から実質的になる」という表現を用いて、さらに限定されることもある。請求項において用いられる場合、出願当初からであったか補正により追加されたかを問わず、「からなる」という移行句は、請求項で特定されていない要素、工程、及び成分のすべてを除外する。「から実質的になる」という移行句は、請求項の範囲を当該請求項で特定された材料又は工程及びその基礎的且つ新規な特徴に大きく影響しないものに限定する。このように請求項に記載された本発明の実施形態は、本明細書に内在的に又は明示的に記載され且つ実施可能である。
【0163】
さらに、本明細書では、数々の特許文献又は刊行物を引用している。上で引用した参考文献及び刊行物のそれぞれについて、その全体を参照により本明細書で援用する。
【0164】
最後に、本明細書に開示の本発明の実施形態は本発明の原理を例示するものと理解されたい。採用可能な他の修整例も本発明の権利範囲に含まれる。そのため、例えば、これに限定されるわけではないが、本発明の代替的な構成を本明細書に開示の教示に従って採用することもできる。従って、本発明は例示及び記載されたものに厳密に限定されるわけではない。
【0165】
[付記]
[付記1]
サンプル中のエリスロフェロン(ERFE)タンパク質の存在を検出するための及び/又はその量を測定するためのアッセイであって、
第1の抗体-ERFE複合体を形成するために前記サンプルを第1の抗体と接触させることと、
その後、前記第1の抗体と第2の抗体とが同一ではないとして、前記第1の抗体-ERFE複合体に結合した前記第2の抗体の存在を検出し及び/又はその量を測定し、これにより、前記サンプル中のERFEタンパク質の存在及び/又は量を決定することと、
を含む、
アッセイ。
【0166】
[付記2]
前記アッセイはELISAアッセイを含む、付記1に記載のアッセイ。
【0167】
[付記3]
前記サンプルは血清サンプルである、付記1に記載のアッセイ。
【0168】
[付記4]
前記第1の抗体及び前記第2の抗体は、配列番号1及び/又は3-16の少なくとも1つの配列を含む、当該配列から実質的になる、又は当該配列からなるERFEポリペプチドを、特異的に認識する、付記1に記載のアッセイ。
【0169】
[付記5]
前記第1の抗体は、モノクローナル抗体である9B12、17A5、17E5、2D2、4C1、6H9、7H4、9C7、14B2、及び14D9、又は、これらのERFE結合断片から選択される、付記1に記載のアッセイ。
【0170】
[付記6]
前記第1の抗体は4C1又はそのERFE結合断片である、付記1に記載のアッセイ。
【0171】
[付記7]
前記第1の抗体は固体支持体上にコートされている、付記1から6のいずれか1つに記載のアッセイ。
【0172】
[付記8]
前記固体支持体はELISAプレートである、付記7に記載のアッセイ。
【0173】
[付記9]
前記検出工程は、第1の抗体-ERFEポリペプチド複合体を標識化された第2の抗体と接触させることを含む、付記1に記載のアッセイ。
【0174】
[付記10]
前記第2の抗体は、9B12、17A5、17E5、2D2、4C1、6H9、7H4、9C7、14B2、及び14D9から選択された標識検出抗体である、付記9に記載のアッセイ。
【0175】
[付記11]
前記第2の抗体は2D2である、付記10に記載のアッセイ。
【0176】
[付記12]
前記標識はビオチンである、付記9に記載のアッセイ。
【0177】
[付記13]
前記標識はセイヨウワサビペルオキシダーゼである、付記9に記載のアッセイ。
【0178】
[付記14]
重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含むエリスロフェロン(ERFE)結合抗体又はそのERFE結合断片であって、
前記VHは、
(i)配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
(ii)配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
(iii)配列番号38のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
(iv)配列番号48のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、又は、
(v)配列番号58のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
を含み、
前記VLは、
(vi)配列番号23のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
(vii)配列番号33のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
(viii)配列番号43のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
(ix)配列番号53のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、又は、
(x)配列番号63のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
を含む、
エリスロフェロン(ERFE)結合抗体又はそのERFE結合断片。
【0179】
[付記15]
ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片であって、
前記抗体が
(i)配列番号19-21のアミノ酸配列を有する重鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全て、
(ii)配列番号24-26のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全て、
(iii)配列番号29-31のアミノ酸配列を有する重鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全て、
(iv)配列番号34-36のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全て、
(v)配列番号39-41のアミノ酸配列を有する重鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全て、
(vi)配列番号44-46のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全て、
(vii)配列番号49-51のアミノ酸配列を有する重鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全て、
(viii)配列番号54-56のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全て、
(ix)配列番号59-61のアミノ酸配列を有する重鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全て、
(x)配列番号64-66のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全て、
を含む、
ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
【0180】
[付記16]
配列番号18のVHと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列と、配列番号23のVLと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列とを含む、付記14に記載のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
【0181】
[付記17]
前記VHは配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、付記14又は16に記載のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
【0182】
[付記18]
前記VLは配列番号23のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、付記14又は16に記載のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
【0183】
[付記19]
前記抗体は、配列番号19-21のアミノ酸配列を有する重鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全てと、配列番号24-26のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全てとを含む、付記15に記載のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
【0184】
[付記20]
配列番号28のVHと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列と、配列番号33のVLと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列とを含む、付記14に記載のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
【0185】
[付記21]
前記VHは配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、付記14又は20に記載のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
【0186】
[付記22]
前記VLは配列番号33のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、付記14又は20に記載のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
【0187】
[付記23]
前記抗体は、配列番号29-31のアミノ酸配列を有する重鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全てと、配列番号34-36のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全てとを含む、付記15に記載のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
【0188】
[付記24]
配列番号38のVHと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列と、配列番号43のVLと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列とを含む、付記14に記載のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
【0189】
[付記25]
前記VHは配列番号38のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、付記14又は24に記載のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
【0190】
[付記26]
前記VLは配列番号43のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、付記14又は24に記載のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
【0191】
[付記27]
前記抗体は、配列番号39-41のアミノ酸配列を有する重鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全てと、配列番号44-46のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全てとを含む、付記15に記載のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
【0192】
[付記28]
配列番号48のVHと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列と、配列番号53のVLと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列とを含む、付記14に記載のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
【0193】
[付記29]
前記VHは配列番号48のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、付記14又は28に記載のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
【0194】
[付記30]
前記VLは配列番号53のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、付記14又は28に記載のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
【0195】
[付記31]
前記抗体は、配列番号49-51のアミノ酸配列を有する重鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全てと、配列番号54-56のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全てとを含む、付記15に記載のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
【0196】
[付記32]
配列番号58のVHと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列と、配列番号63のVLと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列とを含む、付記14に記載のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
【0197】
[付記33]
前記VHは配列番号58のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、付記14又は32に記載のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
【0198】
[付記34]
前記VLは配列番号63のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、付記14又は32に記載のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
【0199】
[付記35]
前記抗体は、配列番号59-61のアミノ酸配列を有する重鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全てと、配列番号64-66のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRの1つ、2つ、又は3つ全てとを含む、付記15に記載のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
【0200】
[付記36]
VH及びVLを含み、前記VHは、配列番号18、28、38、48、又は58のアミノ酸配列を含み、かつ、前記VLは、配列番号23、33、43、53、又は63のアミノ酸配列を含む、ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
【0201】
[付記37]
配列番号18、28、38、48、又は58のVH及び配列番号23、33、43、53、又は63のVLを含む、ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
【0202】
[付記38]
配列番号19、29、39、49、又は59のアミノ酸配列を有するCDRH1を含む、ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
【0203】
[付記39]
配列番号20、30、40、50、又は60のアミノ酸配列を有するCDRH2を含む、ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
【0204】
[付記40]
配列番号21、31、42、52、又は62のアミノ酸配列を有するCDRH3を含む、ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
【0205】
[付記41]
配列番号24、34、44、54、又は64のアミノ酸配列を有するCDRL1を含む、ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
【0206】
[付記42]
配列番号25、35、45、55、又は65のアミノ酸配列を有するCDRL2を含む、ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
【0207】
[付記43]
配列番号26、36、46、56、又は66のアミノ酸配列を有するCDRL3を含む、ERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
【0208】
[付記44]
前記抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、又は抗体断片である、付記14から43のいずれか1つに記載のERFE結合抗体又はそのERFE結合断片。
【0209】
[付記45]
サンプル中のエリスロフェロン(ERFE)タンパク質の存在を検出するための及び/又はその量を測定するためのアッセイであって、
第1の抗体-ERFE複合体を形成するために、前記サンプルを、付記14から44のいずれか1つに記載の抗体を含む第1の抗体と接触させることと、
その後、第2の抗体は付記14から44のいずれか1つに記載の抗体を含み、前記第1の抗体と前記第2の抗体とが同一ではないとして、前記第1の抗体-ERFE複合体に結合した前記第2の抗体の存在を検出し及び/又はその量を測定することと、
これにより、前記サンプル中のERFEタンパク質の存在及び/又は量を決定することと、
を含む、
アッセイ。
【0210】
[付記46]
前記アッセイはELISAアッセイを含む、付記45に記載のアッセイ。
【0211】
[付記47]
前記サンプルは血清サンプルである、付記45に記載のアッセイ。
【0212】
[付記48]
前記第1の抗体は、配列番号1及び/又は3-16の少なくとも1つの配列を含む、当該配列から実質的になる、又は当該配列からなるERFEポリペプチドを、特異的に認識する、付記45に記載のアッセイ。
【0213】
[付記49]
前記第1の抗体は固体支持体上にコートされている、付記45から48のいずれか1つに記載のアッセイ。
【0214】
[付記50]
前記固体支持体はELISAプレートである、付記49に記載のアッセイ。
【0215】
[付記51]
前記検出工程は、第1の抗体-ERFEポリペプチド複合体を標識化された第2の抗体と接触させることを含む、付記45に記載のアッセイ。
【0216】
[付記52]
前記標識はビオチンである、付記51に記載のアッセイ。
【0217】
[付記53]
前記標識はセイヨウワサビペルオキシダーゼである、付記51に記載のアッセイ。
【0218】
[付記54]
ERFE又はマイオネクチンに関連する疾患のある対象での赤血球生成を評価する方法であって、前記対象由来のサンプルを付記1から13又は45から53のいずれか1つに記載のアッセイに掛けることを含む、方法。
【0219】
[付記55]
前記疾患はサラセミアである、付記54に記載の方法。
【0220】
[付記56]
前記疾患は心血管疾患である、付記54に記載の方法。
【0221】
[付記57]
ERFE又はマイオネクチンに関連する疾患のある対象での赤血球生成を評価する方法であって、付記14から44のいずれか1つに記載の抗体で前記対象由来のサンプル中のERFEを検出することを含む、方法。
【0222】
[付記58]
捕捉抗体及び検出抗体を含み、
(i)前記捕捉抗体は17A5であり、前記検出抗体は、2D2、4C1、又は7H4である、
(ii)前記捕捉抗体は2D2であり、前記検出抗体は、4C1、7H4、17A5、又は9B12である、
(iii)前記捕捉抗体は4C1であり、前記検出抗体は、2D2、7H4、17A5、又は9B12である、
(iv)前記捕捉抗体は7H4であり、前記検出抗体は、2D2、4C1、17A5、又は9B12である、
(v)前記捕捉抗体は9B12であり、前記検出抗体は、2D2、4C1、17A5、又は7H4である、又は、
(vii)前記捕捉抗体及び前記検出抗体は個別に付記14から44のいずれか1つに記載の抗体であり、前記捕捉抗体及び前記検出抗体は同一ではない、
サンドイッチ免疫アッセイ用のキット。
【0223】
[付記59]
前記捕捉抗体及び前記検出抗体は異なる抗体である、付記58に記載のキット。
【0224】
[付記60]
前記捕捉抗体は固体支持体に結び付けられている、付記58又は59に記載のキット。
【0225】
[付記61]
前記検出抗体は標識に結び付けられている、付記58から60のいずれか1つに記載のキット。
【0226】
[付記62]
前記標識はビオチンである、付記61に記載のキット。
【0227】
[付記63]
前記標識はセイヨウワサビペルオキシダーゼである、付記61に記載のキット。
【0228】
[付記64]
ストレプトアビジン-セイヨウワサビペルオキシダーゼをさらに含む、付記62に記載のキット。
【0229】
[付記65]
基質をさらに含む、付記58から64のいずれか1つに記載のキット。
【0230】
[付記66]
前記アッセイを実行するための説明書をさらに含む、付記58から65のいずれか1つに記載のキット。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
【配列表】
0007222550000001.app