(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】硬化性シリコーン組成物及び光半導体装置
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20230208BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20230208BHJP
H01L 33/56 20100101ALI20230208BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
H01L33/56
(21)【出願番号】P 2022016324
(22)【出願日】2022-02-04
(62)【分割の表示】P 2019549214の分割
【原出願日】2018-10-05
【審査請求日】2022-02-04
(31)【優先権主張番号】P 2017203349
(32)【優先日】2017-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000110077
【氏名又は名称】デュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】飯村 智浩
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 一裕
(72)【発明者】
【氏名】パーク, ユンジン
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2015-0047361(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00-83/16
H01L 33/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)平均組成式:
R
11
aSiO
(4-a)/2
(式中、R
11は非置換又はハロゲン置換の一価炭化水素基、アルコキシ基、もしくは水酸基を表し、ただし、一分子中、少なくとも2個のR
11はアルケニル基であり、全R
11の
5モル%~50.0モル%が
フェニル基であり、aは0.6~2.2の数である。)
で表されるオルガノポリシロキサン、
(B)
(B-1)一般式:
R
31
3
SiO(R
31
2
SiO)
n
SiR
31
3
(式中、R
31
は独立して、脂肪族不飽和結合を有さない非置換もしくはハロゲン置換の一価炭化水素基、又は水素原子を表し、ただし、一分子中、少なくとも2個のR
31
は水素原子であり、水素原子以外の全R
31
の少なくとも5モル%がアリール基であり、nは1~1,000の整数である。)
で表される直鎖状のオルガノポリシロキサン及び
(B-2)平均単位式:
(R
31
SiO
3/2
)
p
(R
31
2
SiO
2/2
)
q
(R
31
3
SiO
1/2
)
r
(SiO
4/2
)
s
(ZO
1/2
)
t
{式中、R
31
は前記と同じであり、ただし、一分子中、少なくとも2個のR
31
は水素原子であり、水素原子以外の全R
31
の少なくとも5モル%がアリール基であり、Zは水素原子又はアルキル基であり、p~tは、それぞれ、p~sの合計を1としたとき、pは正の数、qは0又は正の数、rは0又は正の数、sは0~0.3の数、tは0~0.4の数、かつ、q/pは0~10の数、r/pは0~5の数である。}
で表される分岐鎖状のオルガノポリシロキサン、
からなるオルガノポリシロキサン{(A)成分中のアルケニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1~5モルとなる量}、
(C)平均単位式:
(R
21SiO
3/2)
b(R
22SiO
3/2)
c(R
23
2SiO
2/2)
d(R
23
3SiO
1/2)
e(XO
1/2)
f
{式中、R
21はアリール基、R
22はアルケニル基、R
23は独立して、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はエポキシ含有有機基を表し、ただし、一分子中のR
21、R
22及びR
23の合計に対して、少なくとも5モル%がアルケニル基であり
、15モル%
~25モル%が
フェニル基であり、少なくとも10モル%がエポキシ含有有機基であり、Xは水素原子又はアルキル基であり、b~fは、それぞれ、b~eの合計を1としたとき、bは正の数、cは正の数、dは0又は正の数、eは0又は正の数、fは0~0.02の数、かつ、c/bは0.1~5の数、b+cは0.2~0.8の数である。}
で表されるオルガノポリシロキサン{(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0.1~20質量部}、及び
(D)本組成物の硬化を促進する量のヒドロシリル化反応用触媒
を少なくとも含んでなる硬化性シリコーン組成物。
【請求項2】
(A)成分が、一般式:
R
12
3SiO(R
12
2SiO)
mSiR
12
3
(式中、R
12は独立して、非置換又はハロゲン置換の一価炭化水素基を表し、ただし、一分子中、少なくとも2個のR
12はアルケニル基であり、全R
12の
5モル%~50.0モル%が
フェニル基であり、mは5~1,000の整数である。)
で表される直鎖状のオルガノポリシロキサン及び/又は平均単位式:
(R
12SiO
3/2)
g(R
12
2SiO
2/2)
h(R
12
3SiO
1/2)
i(SiO
4/2)
j(YO
1/2)
k
{式中、R
12は前記と同じであり、ただし、一分子中、少なくとも2個のR
12はアルケニル基であり、全R
12の
5モル%~50.0モル%が
フェニル基であり、Yは水素原子又はアルキル基であり、g~kは、それぞれ、g~jの合計を1としたとき、gは正の数、hは0又は正の数、iは0又は正の数、jは0~0.3の数、kは0~0.4の数、かつ、h/gは0~10の数、i/gは0~5の数である。}
で表される分岐鎖状のオルガノポリシロキサンである、請求項1に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項3】
(C)成分が、25℃において100~20,000mPa・sの粘度を有する、請求項1に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項4】
さらに、(
E)ヒドロシリル化反応抑制剤を、(A)成分~(C)成分の合計100質量部に対して0.0001~5質量部含有する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物の硬化物により被覆されている光半導体素子を含んでなる光半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性シリコーン組成物、及び該組成物を用いて作製された光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性シリコーン組成物は、硬化して、透明性、電気絶縁性、耐熱性、及び耐候性に優れる硬化物を形成することから、電気・電子部品の封止剤、接着剤、あるいは被覆剤として使用されている。このような硬化性シリコーン組成物としては、例えば、アルケニル基及びフェニル基を有するオルガノポリシロキサン、一分子中にケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン、エポキシ含有有機基及びアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、及びヒドロシリル化反応用触媒からなる硬化性シリコーン組成物(特許文献1参照)、一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも30モル%がアリール基であるオルガノポリシロキサン、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有し、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも15モル%がアリール基であるオルガノポリシロキサン、一分子中、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも5モル%がアルケニル基であり、少なくとも15モル%がアリール基であり、少なくとも10モル%がエポキシ含有有機基であるオルガノポリシロキサン、及びヒドロシリル化反応用触媒からなる硬化性シリコーン組成物(特許文献2参照)が挙げられる。
【0003】
このような硬化性シリコーン組成物を、発光ダイオード(LED)等の光半導体装置における発光素子の封止剤として使用する場合、発光素子から放出される光の波長を変換するため、この硬化性シリコーン組成物に蛍光体が配合される。しかし、これらの硬化性シリコーン組成物を用いて作製された光半導体装置では、光取り出し効率が十分でなかったり、経時での光取出し効率の変化を生じるという課題があることがわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-008996号公報
【文献】特開2010-001335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、発光素子からの光取り出し効率が良好で、その経時での変化率が小さい光半導体装置を形成できる硬化性シリコーン組成物、及び発光素子からの光取り出し効率が良好で、その経時での変化率が小さい光半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、
(A)平均組成式:
R11
aSiO(4-a)/2
(式中、R11は非置換又はハロゲン置換の一価炭化水素基、アルコキシ基、もしくは水酸基を表し、ただし、一分子中、少なくとも2個のR11はアルケニル基であり、全R11の少なくとも5モル%はアリール基であり、aは0.6~2.2の数である。)
で表されるオルガノポリシロキサン、
(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有し、水素原子以外のケイ素原子結合基の少なくとも5モル%がアリール基であるオルガノポリシロキサン{(A)成分中のアルケニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1~5モルとなる量}、
(C)平均単位式:
(R21SiO3/2)b(R22SiO3/2)c(R23
2SiO2/2)d(R23
3SiO1/2)e(XO1/2)f
{式中、R21はアリール基、R22はアルケニル基、R23は独立して、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はエポキシ含有有機基を表し、ただし、一分子中のR21、R22及びR23の合計に対して、少なくとも5モル%がアルケニル基であり、少なくとも15モル%がアリール基であり、少なくとも10モル%がエポキシ含有有機基であり、Xは水素原子又はアルキル基であり、b~fは、それぞれ、b~eの合計を1としたとき、bは正の数、cは正の数、dは0又は正の数、eは0又は正の数、fは0~0.02の数、かつ、c/bは0.1~5の数、b+cは0.2~0.8の数である。}
で表されるオルガノポリシロキサン{(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0.1~20質量部}、及び
(D)本組成物の硬化を促進する量のヒドロシリル化反応用触媒
から少なくともなることを特徴とする。
【0007】
本組成物において、(A)成分は、一般式:
R12
3SiO(R12
2SiO)mSiR12
3
(式中、R12は独立して、非置換又はハロゲン置換の一価炭化水素基を表し、ただし、一分子中、少なくとも2個のR12はアルケニル基であり、全R12の少なくとも5モル%がアリール基であり、mは5~1,000の整数である。)
で表される直鎖状のオルガノポリシロキサン及び/又は平均単位式:
(R12SiO3/2)g(R12
2SiO2/2)h(R12
3SiO1/2)i(SiO4/2)j(YO1/2)k
{式中、R12は前記と同じであり、ただし、一分子中、少なくとも2個のR12はアルケニル基であり、全R12の少なくとも5モル%がアリール基であり、Yは水素原子又はアルキル基であり、g~kは、それぞれ、g~jの合計を1としたとき、gは正の数、hは0又は正の数、iは0又は正の数、jは0~0.3の数、kは0~0.4の数、かつ、h/gは0~10の数、i/gは0~5の数である。}
で表される分岐鎖状のオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0008】
また、本組成物において、(B)成分は、一般式:
R31
3SiO(R31
2SiO)nSiR31
3
(式中、R31は独立して、脂肪族不飽和結合を有さない非置換もしくはハロゲン置換の一価炭化水素基、又は水素原子を表し、ただし、一分子中、少なくとも2個のR31は水素原子であり、水素原子を除く全R31の少なくとも5モル%がアリール基であり、nは1~1,000の整数である。)
で表される直鎖状のオルガノポリシロキサン及び/又は平均単位式:
(R31SiO3/2)p(R31
2SiO2/2)q(R31
3SiO1/2)r(SiO4/2)s(ZO1/2)t
{式中、R31は前記と同じであり、ただし、一分子中、少なくとも2個のR31は水素原子であり、水素原子を除く全R31の少なくとも5モル%がアリール基であり、Zは水素原子又はアルキル基であり、p~tは、それぞれ、p~sの合計を1としたとき、pは正の数、qは0又は正の数、rは0又は正の数、sは0~0.3の数、tは0~0.4の数、かつ、q/pは0~10の数、r/pは0~5の数である。}
で表される分岐鎖状のオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0009】
本組成物は、さらに、(D)ヒドロシリル化反応抑制剤を、(A)成分~(C)成分の合計100質量部に対して0.0001~5質量部含有してもよい。
【0010】
本発明の光半導体装置は、光半導体素子が、上記の硬化性シリコーン組成物の硬化物により被覆されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、発光素子からの光取り出し効率が良好で、その変化率が小さい光半導体装置を形成できるという特徴がある。また、本発明の光半導体装置は、光取り出し効率が良好で、その経時での変化率が小さいという特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の光半導体装置の一例であるLEDの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
はじめに、本発明の硬化性シリコーン組成物を詳細に説明する。
(A)成分は、平均組成式:
R11
aSiO(4-a)/2
で表されるオルガノポリシロキサンである。
【0014】
式中、R11は非置換又はハロゲン置換の一価炭化水素基、アルコキシ基、もしくは水酸基であり、R11の一価炭化水素基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基が例示される。ただし、一分子中、少なくとも2個のR11はアルケニル基である。このアルケニル基としては、ビニル基が好ましい。また、得られる硬化物の光の屈折、反射、散乱等による減衰が小さいことから、一分子中、全R11の少なくとも5モル%、好ましくは、少なくとも10モル%、少なくとも15モル%、あるいは少なくとも20モル%がアリール基である。このアリール基としては、フェニル基が好ましい。また、本発明の目的を損なわない範囲で、R11の一部がアルコキシ基又は水酸基であってもよい。R11のアルコキシ基として、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が例示される。
【0015】
また、式中、aは0.6~2.2の範囲内の数、好ましくは、0.8~2.2の範囲内の数、あるいは1.0~2.2の範囲内の数である。これは、aが上記範囲の下限以上であると、本組成物の取扱作業性が向上するからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、本組成物を硬化して得られる硬化物の機械的特性が向上するからである。
【0016】
(A)成分の分子構造は限定されず、例えば、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、環状、及び直鎖状と分岐鎖状の二種の構造が挙げられる。(A)成分は、このような分子構造を有する1種のオルガノポリシロキサン、あるいは2種以上のオルガノポリシロキサンの混合物であってもよい。
【0017】
このような(A)成分としては、一般式:
R12
3SiO(R12
2SiO)mSiR12
3
で表される直鎖状のオルガノポリシロキサン及び/又は平均単位式:
(R12SiO3/2)g(R12
2SiO2/2)h(R12
3SiO1/2)i(SiO4/2)j(YO1/2)k
で表される分岐鎖状のオルガノポリシロキサンが好ましい。
【0018】
式中、R12は独立に、非置換又はハロゲン置換の一価炭化水素基であり、前記R11と同様の基が例示される。ただし、一分子中、少なくとも2個のR12はアルケニル基である。このアルケニル基としては、ビニル基が好ましい。また、得られる硬化物の光の屈折、反射、散乱等による減衰が小さいことから、一分子中、全R12の少なくとも5モル%、好ましくは、少なくとも10モル%、少なくとも15モル%、あるいは少なくとも20モル%がアリール基である。このアリール基としては、フェニル基が好ましい。
【0019】
また、式中、Yはアルコキシ基又は水酸基である。Yのアルコキシ基として、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が例示される。
【0020】
また、式中、mは5~1,000の範囲内の整数、好ましくは、5~500の範囲内の整数、10~500の範囲内の整数、5~300の範囲内の整数、あるいは10~300の範囲の整数である。これは、mが上記範囲の下限以上であると、本組成物を硬化して得られる硬化物の可とう性が向上するからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、本組成物の取扱作業性が向上するからである。
【0021】
また、式中、g~kは、それぞれ、g~jの合計を1としたとき、gは正の数、hは0又は正の数、iは0又は正の数、jは0~0.3の数、kは0~0.4の数、かつ、h/gは0~10の範囲内の数、i/gは0~5の範囲内の数であり、好ましくは、gは0.1~0.9の範囲内の数、hは0~0.6の範囲内の数、iは0~0.8の範囲内の数である。これは、gが上記範囲の下限以上であると、本組成物の硬化物の機械的強度が向上するからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、硬化物の可とう性が向上するからである。また、h及びiが上記範囲内であると、硬化物の機械的強度が向上するからである。
【0022】
(B)成分は、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンである。(B)成分中の水素原子以外のケイ素原子に結合する基としては、脂肪族不飽和結合を有さない非置換又はハロゲン置換の一価炭化水素基が例示され、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示される。ただし、得られる硬化物において、光の屈折、反射、散乱等による減衰が小さいことから、一分子中、水素原子以外のケイ素原子結合基の少なくとも5モル%、好ましくは、少なくとも10モル%、少なくとも15モル%、あるいは少なくとも20モル%がアリール基である。また、本発明の目的を損なわない範囲で、分子中のケイ素原子には、アルコキシ基又は水酸基を結合してもよい。このアルコキシ基として、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が例示される。
【0023】
(B)成分の分子構造は限定されず、例えば、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、環状、及び直鎖状と分岐鎖状の二種の構造が挙げられる。(B)成分は、このような分子構造を有する1種のオルガノポリシロキサン、あるいは2種以上のオルガノポリシロキサンの混合物であってもよい。
【0024】
このような(B)成分としては、一般式:
R31
3SiO(R31
2SiO)nSiR31
3
で表される直鎖状のオルガノポリシロキサン及び/又は平均単位式:
(R31SiO3/2)p(R31
2SiO2/2)q(R31
3SiO1/2)r(SiO4/2)s(ZO1/2)t
で表される分岐鎖状のオルガノポリシロキサンが好ましい。
【0025】
式中、R31は独立して、脂肪族不飽和結合を有さない非置換もしくはハロゲン置換の一価炭化水素基、又は水素原子である。R31の一価炭化水素基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示される。ただし、一分子中、少なくとも2個のR31は水素原子である。また、得られる硬化物の光の屈折、反射、散乱等による減衰が小さいことから、一分子中、水素原子を除く全R31の少なくとも5モル%、好ましくは、少なくとも10モル%、少なくとも15モル%、あるいは少なくとも20モル%がアリール基である。このアリール基としては、フェニル基が好ましい。
【0026】
また、式中、Zはアルキル基又は水素原子である。Zのアルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基が例示される。
【0027】
また、式中、nは1~1,000の範囲内の整数、好ましくは、1~500の範囲内の整数、1~300の範囲内の整数、1~100の範囲内の整数、あるいは1~50の範囲内の整数である。これは、nが上記範囲の下限以上であると、本組成物の組成が安定するからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、本組成物の取扱作業性が向上するからである。
【0028】
また、式中、p~tは、それぞれ、p~sの合計を1としたとき、pは正の数、qは0又は正の数、rは0又は正の数、sは0~0.3の数、tは0~0.4の数、かつ、q/pは0~10の範囲内の数、r/pは0~5の範囲内の数であり、好ましくは、pは0.1~0.6の範囲内の数、rは0.3~0.9の範囲内の数である。これは、p~tが上記範囲内であると、得られる硬化物の機械的強度が向上するからである。
【0029】
(B)成分の含有量は、(A)成分中のアルケニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1~5モルの範囲内となる量、好ましくは、0.5~5モルの範囲内となる量、0.5~3モルの範囲内となる量、あるいは0.5~2モルの範囲内となる量である。これは、(B)成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られる組成物が十分に硬化しなくなる傾向があるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる硬化物の耐熱性が低下する傾向があるからである。
【0030】
(C)成分は、平均単位式:
(R21SiO3/2)b(R22SiO3/2)c(R23
2SiO2/2)d(R23
3SiO1/2)e(XO1/2)f
で表されるオルガノポリシロキサンである。
【0031】
式中、R21はアリール基であり、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基が例示され、好ましくは、フェニル基である。
【0032】
また、式中、R22はアルケニル基であり、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基が例示され、好ましくは、ビニル基である。
【0033】
また、式中、R23は独立して、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はエポキシ含有有機基である。R23のアルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基が例示され、好ましくは、メチル基である。R23のアルケニル基として、具体的には、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基が例示され、好ましくは、ビニル基である。R23のアリール基として、具体的には、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基が例示され、好ましくは、フェニル基である。R23のエポキシ含有有機基として、具体的には、3-グリシドキシプロピル基、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル基、3,4-エポキシブチル基、5,6-エポキシヘキシル基が例示され、好ましくは、3-グリシドキシプロピル基である。
【0034】
なお、一分子中のR21、R22及びR23の合計に対して、少なくとも5モル%、好ましくは、少なくとも8モル%がアルケニル基である。これは、アルケニル基の含有量が上記下限以上であると、得られる硬化物の機械的強度を向上できるからである。
【0035】
また、一分子中のR21、R22及びR23の合計に対して、少なくとも15モル%、好ましくは、少なくとも25モル%がアリール基である。これは、アリール基の含有量が上記下限以上であると、他の成分に対する相溶性が向上すると共に、得られる硬化物の屈折率が大きくなるからである。
【0036】
さらに、一分子中のR21、R22及びR23の合計に対して、少なくとも10モル%、好ましくは、少なくとも20モル%がエポキシ含有有機基である。これは、エポキシ含有有機基の含有量が上記下限以上であると、ケース樹脂等の基材に対する接着性が向上するからである。
【0037】
また、式中、Xはアルコキシ基又は水酸基である。Xのアルコキシ基として、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が例示される。
【0038】
また、式中、b~fは、それぞれ、b~eの合計を1としたとき、bは正の数、cは正の数、dは0又は正の数、eは0又は正の数、fは0~0.02の数、かつ、c/bは0.1~5の数、c+bは0.2~0.8の数である。これは、b~fが上記範囲内であると、本組成物が適度な硬化性を示し、本組成物を光半導体装置における発光素子の封止剤として使用した場合、発光素子からの光取り出し効率が良好で、その変化率が小さくすることができるからである。
【0039】
(C)成分の25℃における粘度は限定されないが、好ましくは、100~50,000mPa・sの範囲内、あるいは1,000~20,000mPa・sの範囲内である。これは、(C)成分の25℃における粘度が、上記範囲内であると、ケース樹脂等の基材に対する本組成物の接着性が向上するからである。
【0040】
(C)成分の含有量は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0.1~20質量部の範囲内であり、好ましくは、0.1~10質量部の範囲内、あるいは0.2~10質量部の範囲内である。これは、(C)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、得られる光半導体装置の光取り出し効率が良好で、その変化率を小さくすることができるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、得られる硬化物の変色を抑制できるからである。
【0041】
(D)成分は、本組成物の硬化を促進するためのヒドロシリル化反応用触媒である。このような(D)成分としては、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒が例示され、本組成物の硬化を著しく促進できることから白金系触媒が好ましい。この白金系触媒としては、白金微粉末、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金-アルケニルシロキサン錯体、白金-オレフィン錯体、白金-カルボニル錯体が例示され、特に、白金-アルケニルシロキサン錯体であることが好ましい。
【0042】
このアルケニルシロキサンとしては、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのメチル基の一部をエチル基、フェニル基等で置換したアルケニルシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのビニル基をアリル基、ヘキセニル基等で置換したアルケニルシロキサンが例示される。特に、この白金-アルケニルシロキサン錯体の安定性が良好であることから、1,3-ジビニル-1,1,3,3-トテラメチルジシロキサンが好ましい。
【0043】
また、この白金-アルケニルシロキサン錯体の安定性を向上させることができることから、この錯体に1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ジアリル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ジビニル-1,3-ジメチル-1,3-ジフェニルジシロキサン、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラフェニルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン等のアルケニルシロキサンやジメチルシロキサンオリゴマー等のオルガノシロキサンオリゴマーを添加することが好ましく、特に、アルケニルシロキサンを添加することが好ましい。
【0044】
(D)成分の含有量は本組成物の硬化を促進する量であり、具体的には、本組成物に対して、本成分中の金属原子が質量単位で0.01~500ppmの範囲内となる量、0.01~100ppmの範囲内となる量、あるいは、0.01~50ppmの範囲内となる量であることが好ましい。これは、(D)成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、本組成物が十分に硬化しなくなる傾向があるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる硬化物に着色等の問題を生じるおそれがあるからである。
【0045】
本組成物には、その取扱作業性を向上させるため(E)ヒドロシリル化反応抑制剤を含有してもよい。このような(E)成分としては、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2-フェニル-3-ブチン-2-オール等のアルキンアルコール;3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン等のエンイン化合物;1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、ベンゾトリアゾールが例示される。
【0046】
(E)成分の含有量は限定されないが、上記(A)成分~(C)成分の合計100質量部に対して0.0001~5質量部の範囲内、好ましくは、0.0001~2質量部の範囲内である。これは、(E)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、本組成物のポットライフが向上し、作業性が向上するからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、本組成物の硬化性が向上するからである。
【0047】
本組成物は、透明な硬化物を形成するので、これをレンズ材料等に使用可能であるが、さらに、本組成の硬化物で封止もしくは被覆してなる発光素子から放出される光の波長を変換して、所望の波長の光を得るため、本組成物に蛍光体を配合してもよい。このような蛍光体としては、発光ダイオード(LED)に広く利用されている、酸化物系蛍光体、酸窒化物系蛍光体、窒化物系蛍光体、硫化物系蛍光体、酸硫化物系蛍光体等からなる黄色、赤色、緑色、青色発光蛍光体が例示される。酸化物系蛍光体としては、セリウムイオンを包含するイットリウム、アルミニウム、ガーネット系のYAG系緑色~黄色発光蛍光体、セリウムイオンを包含するテルビウム、アルミニウム、ガーネット系のTAG系黄色発光蛍光体、および、セリウムやユーロピウムイオンを包含するシリケート系緑色~黄色発光蛍光体が例示される。酸窒化物系蛍光体としては、ユーロピウムイオンを包含するケイ素、アルミニウム、酸素、窒素系のサイアロン系赤色~緑色発光蛍光体が例示される。窒化物系蛍光体としては、ユーロピウムイオンを包含するカルシウム、ストロンチウム、アルミニウム、ケイ素、窒素系のカズン系赤色発光蛍光体が例示される。硫化物系蛍光体としては、銅イオンやアルミニウムイオンを包含するZnS系緑色発色蛍光体が例示される。酸硫化物系蛍光体としては、ユーロピウムイオンを包含するY2O2S系赤色発光蛍光体が例示される。これらの蛍光体は、1種もしくは2種以上の混合物を用いてもよい。
【0048】
本組成物において、蛍光体の含有量は限定されないが、発光素子から放出される光の波長を十分に変換するためには、(A)成分~(D)成分の合計100質量部に対して、0~250質量部の範囲内、1~100質量部の範囲内、1~50質量部の範囲内、あるいは1~30質量部の範囲内であることが好ましい。
【0049】
さらに、本組成物には、本発明の目的を損なわない限り、その他任意の成分として、シリカ、ガラス、アルミナ、酸化亜鉛等の無機質充填剤;ポリメタクリレート樹脂等の有機樹脂微粉末;耐熱剤、染料、顔料、難燃性付与剤、溶剤等を含有してもよい。
【0050】
本組成物の25℃における粘度は限定されないが、100~1,000,000mPa・sの範囲内、あるいは500~50,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。これは、粘度が上記範囲の下限未満であると、得られる硬化物の機械的強度が低下する傾向があるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる組成物の取扱作業性が低下する傾向があるからである。
【0051】
本組成物は室温もしくは加熱により硬化が進行するが、迅速に硬化させるためには加熱することが好ましい。この加熱温度としては、50~200℃の範囲内であることが好ましい。
【0052】
次に、本発明の光半導体装置について詳細に説明する。
本発明の光半導体装置は、上記の硬化性シリコーン組成物の硬化物により光半導体素子を封止してなることを特徴とする。このような本発明の光半導体装置としては、発光ダイオード(LED)、フォトカプラー、CCDが例示される。また、光半導体素子としては、発光ダイオード(LED)チップ、固体撮像素子が例示される。
【0053】
本発明の光半導体装置の一例である単体の表面実装型LEDの断面図を
図1に示した。
図1で示されるLEDは、発光素子(LEDチップ)1がリードフレーム2上にダイボンドされ、この発光素子(LEDチップ)1とリードフレーム3とがボンディングワイヤ4によりワイヤボンディングされている。この発光素子(LEDチップ)1の周囲には枠材5が設けられており、この枠材5の内側の発光素子(LEDチップ)1が、本発明の硬化性シリコーン組成物の硬化物6により封止されている。
【0054】
図1で示される表面実装型LEDを製造する方法としては、発光素子(LEDチップ)1をリードフレーム2にダイボンドし、この発光素子(LEDチップ)1とリードフレーム3とを金製のボンディングワイヤ4によりワイヤボンドし、次いで、発光素子(LEDチップ)1の周囲に設けられた枠材5の内側に本発明の硬化性シリコーン組成物を充填した後、50~200℃で加熱することにより硬化させる方法が例示される。
【実施例】
【0055】
本発明の硬化性シリコーン組成物及び光半導体装置を、実施例及び比較例により詳細に説明する。なお、粘度は25℃における値である。実施例及び比較例の硬化性シリコーン組成物を調製するため、次の成分を用いた。式中、Me、Ph、Vi、及びEpは、それぞれメチル基、フェニル基、ビニル基、及び3-グリシドキシプロピル基を示す。
【0056】
(A)成分として、下記の成分を用いた。
(a1):平均式:
ViMe2SiO(MePhSiO)23SiMe2Vi
で表され、平均組成式:
Me1.08Ph0.92Vi0.08SiO0.96
で表される分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン(フェニル基の含有量=44.2モル%)
(a2):平均式:
ViMe2SiO(Me2SiO)200(Ph2SiO)50SiMe2Vi
で表され、平均組成式:
Me1.60Ph0.40Vi0.01SiO1.00
で表される分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルジフェニルポリシロキサン(フェニル基の含有量=19.8モル%)
(a3):平均式:
ViPh2SiO(Me2SiO)11.3SiPh2Vi
で表され、平均組成式:
Me1.70Ph0.30Vi0.15SiO0.93
で表される分子鎖両末端ジフェニルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(フェニル基の含有量=14.0モル%)
(a4):一分子中に少なくとも2個のビニル基を有し、平均単位式:
(Me2ViSiO1/2)0.25(PhSiO3/2)0.75
で表され、平均組成式:
Me0.50Ph0.75Vi0.25SiO1.25
で表されるオルガノポリシロキサン(フェニル基の含有量=50.0モル%)
(a5):一分子中に少なくとも2個のビニル基を有し、平均単位式:
(Me2ViSiO1/2)0.11(Me3SiO1/2)0.14(MeSiO3/2)0.53(PhSiO3/2)0.22
で表され、平均組成式:
Me1.17Ph0.22Vi0.11SiO1.25
で表されるオルガノポリシロキサン(フェニル基の含有量=14.7モル%)
(a6):一分子中に少なくとも2個のビニル基を有し、平均単位式:
(Me2ViSiO1/2)0.20(PhSiO3/2)0.80
で表され、平均組成式:
Me0.40Ph0.80Vi0.20SiO1.30
で表されるオルガノポリシロキサン(フェニル基の含有量=57.1モル%)
【0057】
(B)成分として、下記の成分を用いた。
(b1):式:
HMe2SiO(Ph2SiO)SiMe2H
で表されるオルガノトリシロキサン(フェニル基の含有量=33.3モル%)
(b2):一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有し、平均単位式:
(HMe2SiO1/2)0.60(PhSiO3/2)0.40
で表されるオルガノポリシロキサン(フェニル基の含有量=25.0モル%)
【0058】
(C)成分として、下記の成分を用いた。
(c1):粘度が4,800mPa・sであり、平均単位式:
(ViSiO3/2)0.21(PhSiO3/2)0.31(EpMeSiO2/2)0.48
で表されるオルガノポリシロキサン(ビニル基の含有量=14.2モル%、フェニル基の含有量=21.0モル%、3-グリシドキシプロピル基の含有量=32.4モル%)
(c2):粘度が6,000mPa・sであり、平均単位式:
(ViSiO3/2)0.24(PhSiO3/2)0.27(EpMeSiO2/2)0.49
で表されるオルガノポリシロキサン(ビニル基の含有量=16.1モル%、フェニル基の含有量=18.1モル%、3-グリシドキシプロピル基の含有量=32.9モル%)
(c3):粘度が7,000mPa・sであり、平均単位式:
(ViSiO3/2)0.15(PhSiO3/2)0.31(EpMeSiO2/2)0.54
で表されるオルガノポリシロキサン(ビニル基の含有量=9.7モル%、フェニル基の含有量=20.1モル%、3-グリシドキシプロピル基の含有量=35.1モル%)
(c4):粘度が19,000mPa・sであり、平均単位式:
(PhSiO3/2)0.53(EpMeSiO2/2)0.29(Me2ViSiO1/2)0.18
で表されるオルガノポリシロキサン(ビニル基の含有量=10.9モル%、フェニル基の含有量=32.1モル%、3-グリシドキシプロピル基の含有量=17.6モル%)
【0059】
(D)成分として、下記の成分を用いた。
(d):白金金属の含有量が約4質量%である、白金の1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体の1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン溶液
【0060】
(E)成分として、下記の成分を用いた。
(e1):1-エチニルシクロヘキサン-1-オール
(e2):平均式:
(MeViSiO)4
で表される環状メチルビニルポリシロキサン
【0061】
実施例及び比較例中、硬化性シリコーン組成物の特性を次のようにして測定した。
【0062】
[硬化性シリコーン組成物の屈折率]
硬化性シリコーン組成物の屈折率を、アッベ式屈折率計を用いて25℃で測定した。なお、光源として、可視光(589nm)を用いた。
【0063】
[硬化性シリコーン組成物の初期粘度及び粘度5万mPa・sに達するまでの時間]
硬化性シリコーン組成物の調製直後の25℃における粘度(mPa・s)を回転粘度計(トキメック株式会社製のE型粘度計VISCONIC EMD)を使用して測定した。また、25℃において、その粘度が5万mPa・sに達するまでの時間を測定した。
【0064】
また、実施例及び比較例中、硬化性シリコーン組成物を使用して作製した表面実装型の発光ダイオード(LED)の特性を次のようにして測定した。
【0065】
[光半導体装置の光取り出し効率及びその変化率]
実施例1-5及び比較例1、2の硬化性シリコーン組成物 各5gに、緑蛍光体(INTEMATIX製の製品名:GAL530) 1.035g、赤色蛍光体(INTEMATIX製の製品名:ER6535) 0.082g加えて均一に混合して、7種の硬化性シリコーン組成物を調製した。これらの硬化性シリコーン組成物を、
図1に示すような光半導体装置に注入し、150℃で2時間硬化させて光半導体装置を作製した。これらの光半導体装置の光取り出し効率を、積分球を用いた全放射束測定装置を使用して放射束測定を行った。
【0066】
また、これらの光半導体装置を85℃、85%RHで500時間エージングした後、それぞれの光半導体装置の光取り出し効率を、上記と同様にして測定した。その光取り出し効率から、初期の光取り出し効率に対する変化率(保持率%)を求めた。
【0067】
[実施例1-6、比較例1、2]
表1に示した組成で硬化性シリコーン組成物を調製した。なお、表1中の「SiH/Vi」は、(A)成分中のビニル基の合計1モルに対する、(B)成分中のケイ素原子結合水素原子の合計モル数の値を表す。また、この硬化性シリコーン組成物の特性およびこの組成物を用いて作製した光半導体装置の特性を表1に示した。
【0068】
【0069】
表1から、本発明の硬化性シリコーン組成物は、初期の光取り出し効率に優れているとともに、光取り出し効率の経時変化が小さいことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、発光素子からの光取り出し効率が良好で、その変化率が小さい光半導体装置を形成できるので、発光ダイオード(LED)等の光半導体装置における発光素子の封止剤もしくは被覆剤として好適である。また、本発明の硬化性シリコーン組成物は、良好な透明性を保持することから、透明性が要求される光学部材としても好適である。
【符号の説明】
【0071】
1 発光素子
2 リードフレーム
3 リードフレーム
4 ボンディングワイヤ
5 枠材
6 硬化性シリコーン組成物の硬化物