(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】シーソー運動用具
(51)【国際特許分類】
A63B 22/16 20060101AFI20230208BHJP
【FI】
A63B22/16
(21)【出願番号】P 2022094159
(22)【出願日】2022-06-10
【審査請求日】2022-06-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520286832
【氏名又は名称】株式会社三圭
(74)【代理人】
【識別番号】230115336
【氏名又は名称】山下 あや理
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 舞香
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 三千代
【審査官】槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】特許第6821082(JP,B1)
【文献】米国特許第5897474(US,A)
【文献】米国特許第5647830(US,A)
【文献】米国特許第7775952(US,B1)
【文献】米国特許第4817950(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0252645(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0242515(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第1284152(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第101095644(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0074439(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 22/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視の長方形な台板と、その下面へ台板の長手中心線上に沿って、長辺と同じ一定長さだけ左右方向へ延在するように取り付け固定された丸棒と、その丸棒を前後方向から挟む関係状態として同じく台板の下面へ取り付け固定された一対の平行な角棒とから成り、
その台板が使用者によって押し下げられた時、上記丸棒を回動支点として前後方向へシーソー運動し、その丸棒の円孤面部と両角棒の角隅部並びに台板における長辺の角隅部との各々離隔した3個所ずつが、接地することとなるように設定したことを特徴とするシーソー運動用具。
【請求項2】
台板の上面における前後両端部となる長辺の近傍位置へ、互いに同一又は相違する前後一対の指掛け凸条を丸棒と平行に配列設置したことを特徴とする請求項1記載のシーソー運動用具。
【請求項3】
台板の上面に配列設置された両指掛け凸条の前後相互間へ、使用者の手足滑り止め用となる保護マットを敷設したことを特徴とする請求項2記載のシーソー運動用具。
【請求項4】
シーソー運動する台板の回動支点となる丸棒とその補強材となる両角棒をその台板の下面へ、何れも台板の上方からねじ込む複数の皿ビス又は/及び接着剤によって取り付け固定したことを特徴とする請求項1記載のシーソー運動用具。
【請求項5】
台板と丸棒並びに両角棒をすべて木質材とし、その台板の大きさを300mm×360mm、同じく台板の厚みを15mm~25mm、丸棒の直径を40mm~50mm、両角棒の大きさを何れも25mm×45mm、シーソー運動時に接地面と交叉する台板の傾斜角度を10度~25度に各々設定したことを特徴とする請求項1記載のシーソー運動用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は下肢の筋肉トレーニングやバランス感覚の養成、その他の健康増進に役立つ、特に高齢者や病弱者などにとっても手軽に持ち運んで、日常的に便利良く使える安全なシーソー運動用具に関する。
【背景技術】
【0002】
木製の台板上へ左右の両足を横並び状態に載せて、その台板を揺動させることにより、自宅において主に足腰の筋肉トレーニングやバランス感覚の向上を図るための安価な健康器具が、特許文献1に開示されている。
【0003】
この健康器具は、台板の揺動支点を軸受けする支持ベースや枠フレームなどを具備しておらず、言わば必要最少限度の構成を有するに過ぎない点で、本発明に最も近似する公知技術であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載された健康器具の構成では、その段落[0018]に「平板部(1)の下面(1b)の中央部に、金属製で半球状の突起(2a)を有する支点部(2)が設けられている。」とあり、また引続く段落[0019]に「平板部(1)は前後左右360°のいずれかに傾いて、その一部が地面又は床面に接する。」とあるように、その支点部(2)の突起(2a)が半球状(円錐形)をなし、地面又は床面(接地面)と点接触するようになっているため、使用者が平板部(1)に上方から押し下げ力(踏み込み力)を付与する位置や角度、強さなどの如何では、その平板部(1)が必ず全方位(360度)に振れ廻り、常に一定しない方向へ傾斜することとなる。
【0006】
その結果、その平板部(1)へ安定良く立ち乗りしていることができず、使用者に著しい不安感を与え、特に高齢者や病弱者にとっては転倒・落下する危険がある。また、体重移動を行わず、重心を変えるだけの使用法であるため、早期に飽きられてしまうほか、トレーニングのために与え得る負荷に乏しい問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はこのような課題の改良を目的としており、その目的を達成するために、請求項1では平面視の長方形な台板と、その下面へ台板の長手中心線上に沿って長辺と同じ一定長さだけ左右方向へ延在するように取り付け固定された丸棒と、その丸棒を前後方向から挟む関係状態として同じく台板の下面へ取り付け固定された一対の平行な角棒とから成り、
【0008】
その台板が使用者によって押し下げられた時、上記丸棒を回動支点として前後方向へシーソー運動し、その丸棒の円孤面部と両角棒の角隅部並びに台板における長辺の角隅部との各々離隔した3個所ずつが、接地することとなるように設定したことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2では台板の上面における前後両端部となる長辺の近傍位置へ、互いに同一又は相違する前後一対の指掛け凸条を丸棒と平行に配列設置したことを特徴とする。
【0010】
請求項3では台板の上面に配列設置された両指掛け凸条の前後相互間へ、使用者の手足滑り止め用となる保護マットを敷設したことを特徴とする。
【0011】
請求項4ではシーソー運動する台板の回動支点となる丸棒とその補強材となる両角棒をその台板の下面へ、何れも台板の上方からねじ込む複数の皿ビス又は/及び接着剤によって取り付け固定したことを特徴とする。
【0012】
請求項5では台板と丸棒並びに両角棒をすべて木質材とし、その台板の大きさを300mm×360mm、同じく台板の厚みを15mm~25mm、丸棒の直径を40mm~50mm、両角棒の大きさを何れも25mm×45mm、シーソー運動時に接地面と交叉する台板の傾斜角度を10度~25度に各々設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の構成によれば、使用者が起立した姿勢や腰掛けた着席姿勢のもとで、その両足をシーソー運動する台板上へ載せ、その台板の長辺である前端部側を指先部で踏み込む動作と、同じく台板の後端部側を踵部で踏み込む動作とを繰り返し、前後方向へ交互にシーソー運動することにより、アキレス腱や下腿三頭筋、大臀筋、その他の下半身における後部筋肉を伸ばして、足関節や膝関節などの可動域を広げることができ、バランス感覚の養成などにも役立つ。
【0014】
また、使用者が上記台板上へ腰部周辺を載せ、その上半身を台板の前後何れか一方へ向けると共に、下半身を同じく台板の残る他方へ向けた腹這い姿勢や仰向け姿勢として、その台板をやはり前後方向へシーソー運動することにより、背筋や腹筋を伸ばして、股関節や肩関節などの可動域を広げたり、骨盤の鍛練や姿勢の矯正などを行うことができる。
【0015】
しかも、上記シーソー運動中台板の回動支点をなす丸棒の円弧面部と、その丸棒を前後方向から挟み付けている両角棒の角隅部と、上記台板における長辺の角隅部との各々離隔した合計3個所ずつが接地面と線接触する状態に接地するため、冒頭に述べた従来技術のような全方位(360度)に向かって振れ廻るおそれがなく、常時安定・確固な設置状態を維持することができ、若い男女の健常者は勿論のこと、高齢者や病弱者、身体障害者でも滑り落ちる危険なく、安心して使用し得る効果がある。
【0016】
その場合、請求項2の構成を採用するならば、前後一対の指掛け凸条における何れか一方へ、手や足の指を掛け止め(絡み付け)使用することによって、その指の把持力を鍛練したり、手の平や足の裏を載せて、そのツボを刺激(指圧マッサージ)したりすることができるほか、残る他方の指掛け凸条を足の滑り落ち防止用ストッパーとして役立てることも可能である。
【0017】
また、請求項3の構成を採用するならば、台板上に載せる使用者の手足や身体を、その保護マットによって傷付きのおそれなく安全に保護できるほか、手足の滑り止め効果も得られる。
【0018】
請求項4の構成を採用するならば、台板の下面に回動支点となる丸棒のみならず、その補強材となる前後一対の角棒も取り付け固定されており、その台板の中央部が最も重くなるため、台板が使用者による押し下げ(踏み込み)を受けた時、その丸棒は転がるようにゆっくりと円弧運動する。その意味でも台板が全方位(360度)に向かって振れ廻るおそれがないばかりでなく、速くシーソー運動するおそれもないので、高齢者が両足で立ち乗りするような場合でも不安感を与えず、台板から滑り落ち転倒する危険はない。
【0019】
更に、請求項5の構成を採用するならば、長方形な台板とその長手中心線上に沿って取り付け固定された丸棒並びにその丸棒を前後方向から挾む関係状態として、やはり台板に取り付け固定された一対の角棒とから成る単純な構成のシーソー運動用具であり、しかもその構成部材はすべて木質材であるため、室内での家具と同様に取り扱うことができ、希望の場所へ持ち運び設置して、日常的に繰り返し使用することにより、ストレッチやトレーニング、リハビリ、その他の健康増進を行いやすい効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の好適な実施形態に係るシーソー運動用具の正面図である。
【
図8】台板へ指掛け凸条を取り付ける構成の部分変形実施形態を示す側断面図である。
【
図9】台板に載せる足の位置関係を示す平面図である。
【
図11】シーソー運動用具の第1使用例を示す側面図である。
【
図13】シーソー運動用具の第2使用例を台板に載せる足の位置関係で示す側面図である。
【
図14】シーソー運動用具の第3使用例を台板に載せる手の位置関係で示す平面図である。
【
図15】シーソー運動用具の第4使用例を示す側面図である。
【
図16】シーソー運動用具の第5使用例を示す側面図である。
【
図17】シーソー運動用具の第6使用例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態を詳述する。
図1~6はその木質材から製作されたシーソー運動用具(A)を示しており、(10)はシーソー運動する一定な板厚(t)(例えば15mm~25mm、好ましくは18mm)の台板であって、軽量でも強度があるバルサ材や各種の家具材、その他の木質材から、例えば前後一対の長辺(y)が360mm~400mm(好ましくは360mm)、左右一対の短辺(x)が300mm~350mm(好ましくは300mm)の大きさ(面積)を備えた平面視の長方形に造形されている。
【0022】
そして、このような台板(10)の下面にはシーソー運動の回動支点となる上記木質材の丸棒(11)が、その台板(10)の長手中心線(O-O)上に沿って長辺(y)と同じ一定長さだけ左右方向へ延在(横断)する状態に取り付け固定されている。
【0023】
つまり、その丸棒(11)は上記台板(10)の板厚(t)よりも大きな寸法(例えば40mm~50mm、好ましくは40mm)の直径(d)を備えており、これの円弧面へ上方から台板(10)の長手中心線(O-O)上に位置する中央部が、言わば線接触する搭載状態として、その上方からねじ込む複数(図例では5本)の皿ビス(12)により組み付け一体化されているのである。
【0024】
しかも、上記丸棒(11)がその補強用となる一対の角棒(13)によって、前後方向から確固に安定良く挟み付けられている。その両角棒(13)は何れも例えば30mm×50mm、好ましくは25mm×45mmの大きさを備えた木質材から成り、これらもやはり台板(10)の上方から各々ねじ込む複数(図例では同じく5本)ずつの皿ビス(14)によって、その台板(10)と組み付け一体化されている。
【0025】
図示の実施形態では上記丸棒(11)と両角棒(13)を、その何れも複数ずつの皿ビス(12)(14)によって、台板(10)の下面へ取り付け固定しているが、その皿ビス(12)(14)に代えて又は加えて接着剤(図示省略)により取り付け固定しても良い。
【0026】
何れにしても、上記台板(10)の長手中心線(O-O)上に沿って左右方向へ延在(横断)する丸棒(11)と、これを挟み付けた前後一対の角棒(13)によって支持された台板(10)は、接地面(G)から一定の設置高さ(H)(例えば58mm~75mm、好ましくは60mm)にあり、上記丸棒(11)を回動(円弧運動)支点として、その長辺(y)をなす前端部と後端部との交互に等しく昇降する如く、
図7のように前後方向へシーソー運動することとなる。
【0027】
そのシーソー運動時に接地面(G)と交叉する台板(10)の傾斜角度(θ)は例えば10度~25度、好ましくは15度に設定されており、上記台板(10)の設置高さ(H)とも相俟って、特に両足の横並び状態で立ち乗り使用した場合、その使用者に不安感を与えたり、まして台板(10)から滑り落ち転倒したりしないように考えられている。
【0028】
その台板(10)の上記設置高さ(H)が75mmよりも高く、その傾斜角度(θ)が25度よりも過大な急角度であると、特に両足での立ち乗り使用時、高齢の使用者が台板(10)から滑り落ち転倒するおそれがあり、他方台板(10)の設置高さ(H)が58mmよりも低く、その傾斜角度(θ)が10度よりも過小な緩角度であると、上記の危険がない反面、その台板(10)のシーソー運動によって使用者の身体に加えられるストレッチやトレーニングなどの作用力(負荷)に弱さや不足を生じ、強い充分な効果を得られないのである。
【0029】
また、台板(10)が上記一定角度(θ)に傾斜した場合、
図7に併せて示す如く、丸棒(11)の円弧面部(P1)とその台板(10)における長辺(y)の角隅部(コーナー稜線)(P2)のほか、両角棒(13)の角隅部(コーナー稜線)(P3)も含む各々隣り合う同士の所定間隔(S1)(S2)と所定段差を保って並列する合計3個所ずつが、ほぼ同時に接地するように設定されている。
【0030】
しかも、その上記3個所(P1)(P2)(P3)は台板(10)の長辺(y)と同じ一定長さだけ、丸棒(11)と平行に延在して、接地面(G)と言わば線接触する状態になるため、使用者が台板(10)の如何なる部位を、如何なる方角から、如何なる強さで押し下げた(踏み込んだ)としても、その台板(10)の接地面(G)を滑る如き振れ廻りに対して、効果的な突っ張り抵抗力を発揮することができ、台板(10)を全方位(360度)に振れ廻るおそれがない安定・確固な設置状態に保てるばかりでなく、上記3個所(P1)(P2)(P3)での重畳的な接地によって、上方から加わる荷重の高い耐荷力を発揮することも可能となる。
【0031】
他方、上記台板(10)の上面における長辺(y)の近傍位置(前後両端部付近)には、前後一対の指掛け凸条(15a)(15b)が上記丸棒(11)と平行に列設されているほか、その同じ上面における両指掛け凸条(15a)(15b)の前後相互間には、使用者の手足滑り止め用となる保護マット(16)が敷設されてもいる。
【0032】
その両指掛け凸条(15a)(15b)は何れもゴムの中実体から成る一定の幅(w)(例えば15mm~30mm)と高さ(h)(例えば15mm~20mm)を備えた断面半円形や山型として、上記丸棒(11)と同じく台板(10)の左右方向へ延在しており、その一定の間隔距離(D)(例えば190mm~250mm)を保って平行する前後一対の何れか一方又は双方へ、使用者が手や足の指を掛け止め(絡み付け)使用して、その指の把持力を鍛練したり、また手の平や足の裏を載せて、そのツボを刺激(所謂指圧マッサージ)したりすることができるようになっている。
【0033】
図示実施形態の場合、ゴムの中実体を上記台板(10)の上面へ接着剤によって取り付け固定しているが、その中実体に代わる中空体を採用することにより、高い弾力性を発揮させても良く、上記ゴムよりも硬質な合成樹脂や木質材などから断面の上記半円形や山型のほかに、四角形やその他の多角形に造形してもさしつかえない。
【0034】
また、図示の実施形態では断面形状と材質並びに上記幅(w)と高さ(h)を含む大きさが互いに同じ前後一対の平行な指掛け凸条(15a)(15b)を、上記台板(10)における長手中心線(O-O)からの間隔距離に長短(遠近)差がある非対称の前後両端部付近(長辺の近傍位置)へ配列設置しているが(前側指掛け凸条(15a)の方が後側指掛け凸条(15b)の方よりも長手中心線(O-O)から短い/近い位置にあるが)、その上記長手中心線(O-O)からの対称な位置へ列設しても良く、図示省略するが、前後一対の指掛け凸条(15a)(15b)における断面形状、材質又は/及び上記大きさを、互いに相違変化させても良い。
【0035】
更に言えば、各指掛け凸条(15a)(15b)の別な取付手段を例示した
図8の部分変形実施形態から明白なように、上記台板(10)に上向き開口するチャンネル溝型や蟻溝型などの条溝(スライドガイド溝)(17)を切り欠き加工する一方、断面形状、材質又は/及び上記大きさなどの異なる各種指掛け凸条(15a)(15b)が冠として被着一体化された脚レール(18)を、その対応合致する条溝(17)内へ左右横方向から抜き差し自在に差し込むことにより、上記台板(10)の上面へ取り付け使用しても良い。
【0036】
その場合、台板(10)に対する上記条溝(17)の切り欠き加工を行わず、その台板(10)から上記脚レール(18)を上向き一体的に突設して、その脚レール(18)の抜け止め機能を有する径大な頭部(19)へ、断面形状、材質又は/及び上記大きさなどの異なる別個な各種指掛け凸条(15a)(15b)を、やはり左右横方向から抜き差し交換自在に差し込み固定しても良い。
【0037】
尚、上記条溝(17)へ差し込み使用される共通の脚レール(18)や、台板(10)から上向き一体的に突出する脚レール(18)の係止頭部(19)へ差し込み使用される別個な指掛け凸条(15a)(15b)としては、合成樹脂やゴムの押出成形材を初め、切削加工された木質材などを採用することができる。
【0038】
何れにしても、使用者が自分の足を台板(10)へ載せる時、
図9に示すように、その足長さの中間部を台板(10)の長手中心線(O-O)上に配置させて、その親指を含む複数の望む指を、台板(10)の前後両端部付近(長辺の近傍位置)に存在する何れか一方(望ましくは前側)の指掛け凸条(15a)へ掛け止める(絡み付ける)のであり、その際足の踵部は残る他方の指掛け凸条(15b)へ載せても、或いは載せなくてもさしつかえない。
【0039】
上記台板(10)の上面に列設された平行な指掛け凸条(15a)(15b)同士の相互間隔距離(D)と比べて、使用者の足長さが短いことにより、その足の踵部が載らない場合、その上記他方の指掛け凸条(15b)は台板(10)の上面から、使用者の足が滑り落ちることを防ぐストッパーとして役立つ。
【0040】
更に、上記保護マット(16)は一定厚み(例えば1.5mm~2.0mm)のゴムや軟質合成樹脂、熱可塑性エラストマー、その他の柔軟材から成り、使用者の手足などを安全に保護するため、上記台板(10)の上面へ接着剤によって取り付け固定されている。
【0041】
しかも、保護マット(16)は使用者の手足滑り止め用として、その上面に一定高さ(例えば1.0mm~1.5mm)の断面山型や半円形をなす複数(図例では8本)の細かい滑り止め凸条(20)が、上記指掛け凸条(15a)(15b)との平行状態として台板(10)の左右方向に沿い列設されている。
【0042】
但し、図示省略するが、台板(10)の保護マット(16)上に載った使用者の手足を、滑り止め状態に保つことができるほか、その手の平や足の裏のツボを刺激(指圧マッサージ)することもできるならば、上記滑り止め凸条(20)に代わる多数の点在分布する滑り止め凸子を、その保護マット(16)の上面から一体的に突設したり、また保護マット(16)自身をその上面の凹凸(梨地)粗面として一体成形したりしても良い。
【0043】
台板(10)の上面には上記保護マット(16)が敷設されているため、その台板(10)を上記丸棒(11)と前後一対の角棒(13)に各々組み付け一体化している多数の皿ビス(12)(14)が、上方からすべて完全に被覆されることとなり、その結果上記皿ビス(12)(14)の露出する頭部が使用者の手足に負傷を与えるおそれはなく、台板(10)の上面を容易に清掃して、衛生的に保てる効果も得られる。
【0044】
図示の好適な実施形態に係るシーソー運動用具(A)は上記構成を備えているため、
図11~17のような身体の望む部位のストレッチを初め、トレーニングやリハビリ、その他の健康増進を目的として、誰でも日常的に便利良く使用することができる。
【0045】
即ち、その多様な使用例を示した
図11~17のうち、
図11、12の第1使用例では使用者がフロアー(F)に立てた図外のポールや机の天板(T)などを、両手で握り持った安全な起立姿勢又は椅子に腰掛けた姿勢のもとで、その両足を横並び状態に揃えて台板(10)上に載せ、その台板(10)を両足の踵部で後下がり傾斜状態に踏み込む動作と、その両足の指先部で前下がり傾斜状態に踏み込む動作とを反復することにより、使用者のアキレス腱や下腿三頭筋(ヒラメ筋、腓腹筋)などを伸ばすことができ、特に使用者が起立姿勢のもとで上記動作を行う場合には、バランス感覚のトレーニングにも役立つ一方、着席姿勢のもとで上記動作を行う場合には、骨盤の鍛練や骨盤底筋の強化などにも役立つ。
【0046】
また、図示省略するが、使用者が両足を前後方向に広げて台板(10)上に載せ、体重の前後移動に併せて、その台板(10)を左足の踵部で後下がり傾斜状態に踏み込む動作と、右足の指先部で前下がり傾斜状態に踏み込む動作とを繰り返すことにより、
図11、12と同様な下腿三頭筋の伸展や前脛・後脛骨筋の刺激・強化、足関節の柔軟性などを得られる。
【0047】
図13の第2使用例では、使用者がフロアー(F)に立てた図外のポールや手摺り(握り棒)などを片手で握り持ったり、両手を壁面に付いたりした安全な起立姿勢又は椅子に腰掛けた姿勢のもとで、その両足を台板(10)の前端部と後端部に載せ、その台板(10)の前端部を右足で押し下げる(踏み込む)動作と、同じく台板(10)の後端部を左足で押し下げる(踏み込む)動作とを交互に繰り返すことにより、歩行練習のリハビリを行うことができ、またその際に体重の左右移動も行うことにより、骨盤や股関節、姿勢の矯正、内側・外側広筋の刺激などの効果を得られ、特に使用者が起立姿勢のもとで上記動作を行う場合には、やはりバランス感覚の訓練にもなる。
【0048】
図11、12の第1使用例において、そのシーソー運動する台板(10)上に載せた両足の望む指、特に親指を
図9、10の拡大図から明白なように、前後何れか一方(好ましくは前側)の指掛け凸条(15a)へ掛け止める(絡み付ける)ことにより、また
図13の第2使用例においては同図に示唆する如く、両足の特に親指も含む複数の指を、前後一対の指掛け凸条(15a)(15b)へ各々挟み付ける(絡み付ける)ことにより、何れもその指の把持力(足指力)や足底筋などを強化・鍛錬することができる。
【0049】
しかも、上記シーソー運動する台板(10)の上面には複数の滑り止め凸条(20)や点在分布する多数の滑り止め凸子を備えた保護マット(16)が敷設されており、その台板(10)上に載せた使用者の両足や片足の裏(底面)は、必ずその滑り止め凸条(20)や滑り止め凸子に係止することとなるため、これらによってツボが刺激(指圧マッサージ)され、下肢の血液循環が促進される効果も得られるのである。
【0050】
また、
図14の第3使用例ではシーソー運動用具(A)を図外のソファーやベッドなどに据え置いて、使用者が両手を台板(10)の前端部と後端部へ載せ、その右手で台板(10)の前端部を押し下げ傾斜させる動作と、左手で同じく台板(10)の後端部を押し下げ傾斜させる動作とを交互に反復することにより、手関節の柔軟性を向上する訓練に役立つ。
【0051】
その際、台板(10)上に列設された前後一対の指掛け凸条(15a)(15b)へ、両手の指を掛け止め(絡み付け)たり、その手の平を保護マット(16)の滑り止め凸条(20)や滑り止め凸子へ押し付けたりすることによって、その手のツボを刺激(指圧マッサージ)することもでき、血液循環の促進効果を得られる。
【0052】
更に、
図15~17の第4~6使用例に示す如く、使用者が下半身(主に足腰)のみならず、身体の腰部周辺を台板(10)上に載せて、上半身(腕や肩、背中)のストレッチやトレーニング、リハビリなどを日常的に行うことについても、上記シーソー運動用具(A)を供することができる。
【0053】
つまり、
図15の第4使用例ではベッド(B)やソファーにシーソー運動用具(A)を据え置き、その台板(10)上へ使用者が腹這いになった腹面を載せて、腕立て伏せ(腕の屈伸)を繰り返し乍ら、その腹面で台板(10)の前端部と後端部を交互に押し下げ傾斜させることにより、両腕の筋肉強化や肩甲骨周辺の柔軟性などに役立てることができ、その際に併せて背中を反り曲げる動作や、両足をソファーやベッド(B)から浮上させる動作も加えるならば、背中の筋肉強化や姿勢の矯正なども行えるのである。
【0054】
逆に、
図16の第5使用例ではやはりベッド(B)やソファーにシーソー運動用具(A)を据え置いて、その台板(10)上へ使用者が仰向けに寝た背中を載せ、両腕と上半身を一緒に反り曲げることを反復し乍ら、その背中で台板(10)の前端部と後端部を交互に押し下げ傾斜させることにより、肩関節の柔軟性や背骨の矯正などを行うことができる。
【0055】
その場合、台板(10)上へ使用者の背中に代えて、尻(臀部)を載せ、同様なシーソー運動を繰り返すことにより、骨盤の矯正、骨盤底筋や大臀筋の強化などを行ったり、また使用者のふくらはぎを載せて、上記台板(10)のシーソー運動を反復し、そのふくらはぎを刺激(マッサージ)することにより、下肢の血流促進を図ったりすることも可能である。
【0056】
更に、
図17の第6使用例ではソファー(M)や椅子、ベッドにシーソー運動用具(A)を据え置いて、その台板(10)上へ使用者が両足をフロアー(F)から浮上させた腰掛け状態に座り、上半身を前後方向へ揺動させると共に、尻(臀部)を昇降させて、上記台板(10)を前後方向へシーソー運動させることにより、骨盤や股関節の矯正、骨盤底筋や大臀筋の強化、仙棘筋の伸展などを行うことができる。
【0057】
尚、図示実施形態のシーソー運動用具(A)は既述のとおり、その台板(10)における接地面(G)からの一定な設置高さ(H)が例えば58mm~75mm、好ましくは60mmとして全体的に扁平な製品であるため、図示省略するが、これを例えば椅子に腰掛けた使用者の背中と、その椅子の背凭れとの相互間へ、挾む如く介在させて、使用者の背中で反復的に押し動かすことにより、姿勢の矯正やその台板(10)の指掛け凸条(15a)(15b)による刺激(指圧マッサージ)を与えることも可能である。
【0058】
要するに、図示の好適な実施形態に係るシーソー運動用具(A)では、上記丸棒(11)を回動支点として前後方向へシーソー運動する台板(10)が、使用者により押し下げられて(踏み込まれて)接地面(G)と交叉する状態に傾斜した時、その丸棒(11)の円弧面部(P1)と両角棒(13)の角隅部(コーナー稜線)(P3)と台板(10)における長辺(y)の角隅部(コーナー稜線)(P2)との各々所定間隔(S1)(S2)と所定段差を保って並列する合計3個所ずつが、その接地面(G)と言わば線接触する如く接地するようになっているため、使用中に台板(10)が全方位へ不慮に振れ廻るおそれはなく、安定・確固な設置状態に保たれる結果、高齢者や病弱者、身体障害者にとっても安心して使用することができる。
【0059】
また、上記台板(10)はその板厚(t)よりも大きな直径寸法(d)の丸棒(11)と、これを挟み付ける前後一対の補強用角棒(13)によって、その中央部での最も重い状態に支持されており、しかも接地面(G)からの設置高さ(H)が好ましくは60mmとして比較的低く、その接地面(G)と交叉する上記台板(10)の傾斜角度(θ)が好ましくは15度として、緩やかな角度に設定されてもいるため、高齢者や病弱者でも台板(10)への立ち乗り上不安感なく、安全に便利良くシーソー運動することができるのである。
【0060】
図示の実施形態とその部分変形実施形態では、木質材から成るシーソー運動用具(A)の製品として、比較的軽量であり、和洋を問わず室内に馴染み、フロアー(F)やその敷物などに傷付きを与えることもないため、高齢の使用者でも家具と同様に取り扱って、希望の場所に持ち運び設置できる利点がある。但し、上記台板(10)と丸棒(11)並びに両角棒(13)を何れも木質材に代わる繊維強化樹脂(FRP)やその他の高強度な硬質合成樹脂から作成してもさしつかえない。その場合には、着色カラーを施すこともできる。
【符号の説明】
【0061】
(10)・・・台板
(11)・・・丸棒
(12)(14)・・・皿ビス
(13)・・・角棒
(15a)(15b)・・・指掛け凸条
(16)・・・保護マット
(20)・・・滑り止め凸条
(G)・・・接地面
(H)・・・設置高さ
(O-O)・・・長手中心線
(P1)・・・円弧面部
(P2)(P3)・・・角隅部
(S1)(S2)・・・間隔
(d)・・・直径
(t)・・・板厚
(x)・・・短辺
(y)・・・長辺
(θ)・・・(台板の)傾斜角度
【要約】
【課題】
高齢者や病弱者でも足腰の筋肉トレーニングや関節の矯正、その他の健康増進のために使いやすく安全なシーソー運動用具を提供する。
【解決手段】
長方形の台板(10)と、その下面へ台板の長手中心線(O-O)上に沿って左右方向へ延在するように固着された丸棒(11)と、その丸棒を前後方向から挟むように台板の下面へ固着された一対の角棒(13)とから成り、上記台板が使用者によって押し下げられた時、丸棒を回動支点として前後方向へシーソー運動し、その丸棒の円弧面部(P1)と両角棒の角隅部(P3)と台板における長辺の角隅部(P2)との各々離隔した3個所ずつが、接地することとなるように設定した。
【選択図】
図7