(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】隔離されたIII-N半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20230208BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20230208BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20230208BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20230208BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20230208BHJP
H01L 21/76 20060101ALI20230208BHJP
H01L 21/761 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L29/78 301B
H01L29/78 301S
H01L29/80 E
H01L21/76 M
H01L21/76 J
(21)【出願番号】P 2021043162
(22)【出願日】2021-03-17
(62)【分割の表示】P 2018527095の分割
【原出願日】2016-11-25
【審査請求日】2021-03-19
(32)【優先日】2015-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】ナヴィーン ティピルネニ
(72)【発明者】
【氏名】サミール ペンハルカル
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-504013(JP,A)
【文献】国際公開第2013/190997(WO,A1)
【文献】特表2015-529019(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0153300(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0155273(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104395993(CN,A)
【文献】米国特許第08933461(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/778
H01L 29/812
H01L 29/78
H01L 21/338
H01L 21/336
H01L 21/76
H01L 21/761
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイスであって、
基板と、
前記基板の上の窒化ガリウム層と、
前記窒化ガリウム層上のIII-N半導体材料を含む障壁層と、
前記障壁層上の窒化ガリウムを含むキャップ層と、
前記キャップ層上の窒化シリコン層と、
前記窒化ガリウム層と前記基板との間のドープされた層であって、前記基板に直接に接する、前記ドープされた層と、
前記窒化シリコン層と前記キャップ層とを通じて前記障壁層内に延びるソースコンタクトと、
前記ソースコンタクトから前記ドープされた層に延びる
第1の導電性ビアと、
前記窒化シリコン層と前記キャップ層とを通じて前記障壁層内に延びて前記障壁層を貫通しないドレインコンタクトと、
前記ソースコンタクトと前記ドレインコンタクトとの間の前記窒化シリコン層上のゲートコンタクトと、
前記半導体デバイスが隔離電圧を有し、
前記窒化ガリウム層の第1の端と前記障壁層の第1の端と前記ドープされた層の第1の端とに沿った第1の誘電体充填トレンチと、
前記窒化ガリウム層の第2の端と前記障壁層の第2の端と前記ドープされた層の第2の端とに沿った第2の誘電体充填トレンチと、
を含む、半導体デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体デバイスであって、
前記ドレインコンタクトと前記ドープされた層との間の
第2の導電性ビアを更に含む、半導体デバイス。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体デバイスであって、
前記第1の誘電体充填トレンチと前記第2の誘電体充填トレンチとの間に第1のトランジスタが形成される、半導体デバイス。
【請求項4】
請求項
3に記載の半導体デバイスであって、
第2のトランジスタが第1のトランジスタに近接して形成され、前記第2のトランジスタが前記第1の誘電体充填トレンチにより前記第1のトランジスタから隔離される、半導体デバイス。
【請求項5】
請求項
4に記載の半導体デバイスであって、
第3の誘電体充填トレンチを更に含み、
前記第2のトランジスタが、前記第1の誘電体充填トレンチと前記第3の誘電体充填トレンチとの間に位置し、前記第1の誘電体充填トレンチと前記第3の誘電体充填トレンチとの間の前記ドープされた層の一部を含む、半導体デバイス。
【請求項6】
請求項
5に記載の半導体デバイスであって、
前記第2のトランジスタが、第2のソースコンタクトと、前記第2のソースコンタクトと前記ドープされた層の一部との間の導電性部材とを含む、半導体デバイス。
【請求項7】
請求項1に記載の半導体デバイスであって、
前記ドープされた層に近接する窒化アルミニウム層を更に含む、半導体デバイス。
【請求項8】
請求項
7に記載の半導体デバイスであって、
前記窒化アルミニウム層に近接するバッファ層であって、前記窒化アルミニウム層に近接する第1の層と前記窒化アルミニウム層から離れて前記第1の層に近接する第2の層とを含み、前記第1及び第2の層がアルミニウムとガリウムとを含み、前記第1の層が前記第2の層よりもより多いアルミニウムを含んでより少ないガリウムを含む、前記バッファ層を更に含む、半導体デバイス。
【請求項9】
請求項
8に記載の半導体デバイスであって、
前記バッファ層に近接する第2の窒化ガリウム層を更に含む、半導体デバイス。
【請求項10】
半導体デバイスを形成する方法であって、
第1の導電型を有する基板の上に窒化ガリウム層を形成することと、
前記窒化ガリウム層上にIII-N半導体材料を含む障壁層を形成することと、
前記窒化ガリウム層と前記基板との間に第2の導電型のドープされた層を形成することであって、前記ドープされた層が前記基板に直接に接する、前記ドープされた層を形成することと、
前記障壁層から前記ドープされた層に延びる第1の導電性ビアを形成することと、
前記障壁層内に延び
て前記第1の導電性ビアに接するソースコンタクトを形成することと、
前記障壁層内に前記障壁層を貫通せずに延びるドレインコンタクトを形成することと、
前記ソースコンタクトと前記ドレインコンタクトとの間にゲートコンタクトを形成することと、
前記窒化ガリウム層の第1の端と前記障壁層の第1の端と前記ドープされた層の第1の端とに沿って第1の誘電体充填トレンチを形成することと、
前記窒化ガリウム層の第2の端と前記障壁層の第2の端と前記ドープされた層の第2の端とに沿って第2の誘電体充填トレンチを形成することと、
を含み、
前記第1の誘電体充填トレンチと前記第2の誘電体充填トレンチとが前記基板内に延びる、方法。
【請求項11】
請求項
10に記載の方法であって、
前記ドレインコンタクトと前記ドープされた層との間に
第2の導電性ビアを形成することを更に含む、方法。
【請求項12】
請求項
10に記載の方法であって、
第1のトランジスタが前記第1の誘電体充填トレンチと前記第2の誘電体充填トレンチとの間に形成される、方法。
【請求項13】
請求項
12に記載の方法であって、
第2のトランジスタが前記第1のトランジスタに近接して形成され、前記第2のトランジスタが前記第1の誘電体充填トレンチによって前記第1のトランジスタから隔離される、方法。
【請求項14】
請求項
13に記載の方法であって、
第3の誘電体充填トレンチを形成することを更に含み、
前記第2のトランジスタが、前記第1の誘電体充填トレンチと前記第3の誘電体充填トレンチとの間に位置し、前記第1の誘電体充填トレンチと第3の誘電体充填トレンチとの間に延びる前記ドープされた層の一部を含む、方法。
【請求項15】
請求項
14に記載の方法であって、
第2のソースコンタクトを形成することと、
前記第2のソースコンタクトと前記ドープされた層の一部との間に導電性部材を形成することと、
を更に含み、
前記第2のトランジスタが前記第2のソースコンタクトと前記導電性部材とを含む、方法。
【請求項16】
請求項
10に記載の方法であって、
前記ドープされた層に近接して窒化アルミニウム層を形成することを更に含む、方法。
【請求項17】
請求項
16に記載の方法であって、
前記窒化アルミニウム層に近接してバッファ層を形成することであって、前記バッファ層が、前記窒化アルミニウム層に近接する第1の層と、前記
窒化アルミニウム層から離れて前記第1の層に近接する第2の層とを含み、前記第1の層と前記第2の層とがアルミニウムとガリウムとを含み、前記第1の層が、前記第2の層よりもより多いアルミニウムを含み、前記第2の層よりもより少ないガリウムを含む、方法。
【請求項18】
請求項
17に記載の方法であって、
前記バッファ層に近接して第2の窒化ガリウム層を形成することを更に含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、概して半導体デバイスに関し、更に特定して言えば、隔離されたIII-N半導体デバイスに関連する。
【背景技術】
【0002】
集積回路デバイスは、典型的に、種々の半導体材料に関連して形成される。幾つかの応用例では、これらの材料は、既知のIII-N半導体などの化合物材料を含み、これらは、周期表のIII族からの要素の組み合わせを含むことが知られている。このような要素は、アルミニウム、ガリウム、インジウム、及び場合によってはボロンを含み、III族-N半導体として、それらは、各要素が全体的な半導体材料に寄与するように、窒素と組み合わされる。III-N半導体材料の例は、ガリウム窒化物、アルミニウムガリウム窒化物、インジウム窒化物、及びインジウムアルミニウムガリウム窒化物である。また、III-N半導体デバイスは、共通のシリコン基板又はウェハを共有することによってその他のシリコンベースのデバイスと共に含まれ得、化合物半導体と下にあるシリコン基板と間の差に起因して、III-N半導体デバイスに対して調整が成される。
【0003】
上記アプローチは、ガリウム窒化物(GaN)デバイスとの関連などにおいて、種々の利点を有する。例えば、このようなデバイスは、発光ダイオード(LED)、ソーラーセル、放射耐性デバイス、及び、トランジスタを通常含む、高温又は高電圧デバイスを含み得る。しかし、これらのデバイスは、構造又は機能性に基づいて異なるデバイスと組み合わされる場合に起こり得る不安定性を含む、何らかの欠点を伴い得る。
【0004】
図1(従来技術)は、GaNトランジスタを用いて実装され得る従来のハーフブリッジ10の概略、及びこのような実装が欠点を伴い得ることを図示する。具体的には、ハーフブリッジ10は、2つのGaNトランジスタT
1及びT
2を含む。よく知られているように、トランジスタT
1のドレインD(T
1)が第1のレール電圧(V
lineとして示される)に接続され、トランジスタT
2のソースS(T
2)が第2のレール電圧(接地として示される)に接続される。従って、トランジスタT
1はハイサイドと称され、トランジスタT
2はローサイドと称される。トランジスタT
1のソースS(T
1)及びトランジスタT
2のドレインD(T
2)は接続され、ハーフブリッジ10のための出力V
outを提供する。トランジスタのゲートは、一般的な入力ブロック12と共に図で示されるように種々の信号に接続され得る。これらの特定の信号は、本説明にとってさほど重要ではないが、これらの特定の信号により、トランジスタT
1及びT
2が、一方がオンで他方がオフであるように、及びその逆であるように、相補的に動作し得る。最後に、種々のトランジスタ構成において典型的であるように、トランジスタT
1及びT
2の各々は、それぞれのトランジスタの基板に接続されるソースを有し、このような接続はバックゲートと称されることもある。
【0005】
オペレーションにおいて、トランジスタT1及びT2は、一度に一つ、及び典型的に50パーセントデューティサイクルで、オンになるため、ハイサイドトランジスタT1がオンであるときVoutがVlineに向かい、ローサイドトランジスタT2がオンであるとき接地に向かう。負荷及び入力電圧に基づいて、このような回路は、例えば、コンバータ、スイッチングなどにおけるパワーエレクトロニクスなどを含む、種々の用途を有し得る。ハーフブリッジ10は、種々の用途を有し、周知であるが、GaN技術を用いるブリッジを理想的に実装する際に問題が起こり得る。具体的には、ソース・バックゲート接続は、漏れ、不安定性、又は、異なる電圧が同じ基板に接続されることに起因するその他の性能低減の問題を起こし得る。例えば、Vlineが400ボルトである高電圧応用例を考える。ハイサイドトランジスタT1がオンであるとき、VlineからトランジスタT1両端の電圧降下を減じたものがVoutに接続される。例えば、その電圧降下が1ボルトである場合、トランジスタT1がオンであるとき、Vout=399ボルトである。従って、トランジスタT1のソース・バックゲート接続は、バックゲートを399ボルトに接続し、同時にトランジスタT2のソース・バックゲート接続は、バックゲートを接地に接続し、それにより、これら2つのトランジスタ間にかなりのリーク経路がつくられる。代替として、各トランジスタのドレインをバックゲートに接続することによって、バックゲート接続が代わりに実装され得る。この代替例は、ハイサイドトランジスタT1及びローサイドトランジスタT2がオフであるときリークの問題を漸進的に低減するが、バックゲート上の高電圧が、所与の設計に対して一層高い表面電界となり得、寿命の低下につながり得、それにより、トランジスタ信頼性が低下する。このアプローチに関する付加的な課題には、絶縁ダイ取り付けの必要性など、パッケージング技術のニーズに付加される複雑性が含まれ得る。
【発明の概要】
【0006】
記載される例において、半導体デバイスが、基板と、基板に対して固定位置に形成される低欠陥層と、低欠陥層上に形成されるIII-N半導体材料を含み、低欠陥層において電子ガスを形成する障壁層とを含む。また、半導体デバイスは、ソースコンタクト、ドレインコンタクト、及び電位を受け取るためのゲートコンタクトを含み、この電位は、電子ガスと、ソースコンタクト及びドレインコンタクト間の電子ガスに応答して、電子ガスによって形成される導電性経路とを調節するためである。最後に、デバイスは、障壁層と基板との間の片側PN接合を含む。
【0007】
別の態様において、第1の誘電体障壁及び第2の誘電体障壁の各々が、低欠陥層及び障壁層のそれぞれの端部に沿って整列され、更に、低欠陥層から基板に向かう方向に、及び片側PN接合の下の或る範囲まで延在する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】(従来技術)従来のハーフブリッジの概略を図示する。
【0009】
【
図2】基板及びn
+ドープされた層を含む、例示の実施例に従ったトランジスタ対の形成の断面図を図示する。
【0010】
【
図3】ミスマッチ隔離層及びバッファ層を付加した、
図2のトランジスタ対の形成の断面図を図示する。
【0011】
【
図4】電気的隔離層を付加した、
図3のトランジスタ対の形成の断面図を図示する。
【0012】
【
図5】低欠陥層、障壁層、キャップ層、及びゲート誘電体層を付加した、
図4のトランジスタ対の形成の断面図を図示する。
【0013】
【
図6】トレンチ及びビアを付加した、
図5のトランジスタ対の形成の断面図を図示する。
【0014】
【
図7】誘電体障壁、ソースコンタクト、ドレインコンタクト、ゲートコンタクト、及びソースから片側PN接合のn
+層までの電気的接続の形成後の、
図6のトランジスタ対の形成の断面図を図示する。
【0015】
【
図8】ハーフブリッジとして電気的に接続される場合の
図7のトランジスタ対の断面図を図示する。
【0016】
【
図9】誘電体障壁が複数の誘電体部材を用いて形成されるトランジスタ対のための、代替の例示の実施例の断面図を図示する。
【0017】
【
図10】エッチングされた領域を備える基板を含む、代替の例示の実施例に従ったトランジスタ対の形成の断面図を図示する。
【0018】
【
図11】エッチングされた領域表面に沿って形成されるn
+領域を付加した、
図10のトランジスタ対の形成の断面図を図示する。
【0019】
【
図12】n
+領域内部のエリア内に形成される種々のGaNトランジスタ層を付加した、
図11のトランジスタ対の形成の断面図を図示する。
【0020】
【
図13】ソース、ドレイン、及びゲートコンタクトを付加した、
図12のトランジスタ対の形成の断面図を図示する。
【0021】
【
図14】表面電界を拡散するための電気的に浮遊する領域を付加した、
図13のトランジスタ対の形成の断面図を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図2~
図9は、例示の実施例に従ったトランジスタ対20の形成の断面図を図示し、トランジスタ対20は、2つのGaN電界効果トランジスタ(FET)を含む。幾つかの材料、プロセス細部、及び寸法は、それらが別の状況において既知であり、例示の実施例の範囲を示すために必要とされないため、省かれている。
【0023】
図2を参照すると、シリコンウェハ、又はGaN FETの製造に適切なその他の基板などの、半導体基板22に関連して、トランジスタ対20が形成される。例示の実施例において、基板22は、軽くドープされたp
-型半導体材料を意味するp半導体材料である。例えば、そのようなドーピング濃度は、1e
13/cm
3~3e
20/cm
3の範囲であり得る。基板22に相補的な、半導体材料の領域又は層24が、基板22の上側表面に沿って形成される(例えば、成長又は注入される)。図示する例において、基板22がp
-型材料であるので、層24はn
-型材料である。また、層24は、基板22に対して重くドープされることが好ましく、そのため、
図2は、層24がドーピングレベルにおいてn
+であることを図示する。例えば、そのようなドーピング濃度は、1e
18/cm
3~1e
21/cm
3の範囲であり得る。従って、前述を仮定すると、より少なくドープされた基板22及びより多くドープされた層24の組み合わせは、本明細書においてこれ以降に記載するような、片側PN接合を提供する。また、この又は類似の片側PN接合は、高度にドープされたp
+基板(1e
18/cm
3~3e
21/cm
3)上に低ドープされたn
-型シリコン(1e
13/cm
3~1e
18/cm
3)層を成長させること、又は高度にドープされたp
+基板(1e
18/cm
3~3e
21/cm
3)上に低ドープされた(1e
13/cm
3~1e
18/cm
3)p
-型シリコン層を成長させること、及びその後、成長された低ドープされたシリコン層の頂部上にn
+領域(1e
18/cm
3~3e
21/cm
3)を形成することによって形成され得る。
【0024】
図3を参照すると、付加的な製造工程及び項目が表わされている。具体的には、ミスマッチ隔離層26が層24上に形成され、そのため、ミスマッチ隔離層26は、格子構造などにおいて、層24の半導体材料と層24の上のIII-N層を含む層となるものとの間で、隔離を確立しミスマッチに対処するような名称とされる。例えば、ミスマッチ隔離層26は、10~1500ナノメートルのアルミニウム窒化物であり得る。ミスマッチ隔離層26上にバッファ層28が形成される。例えば、バッファ層28は、1~7ミクロンの厚みであり得、幾つかの層のスタックを含み得、幾つかの層のスタックは、より少ないガリウムを有するアルミニウムリッチ化合物のスタックの底部層で始まり、より大量のガリウム及びより少量のアルミニウムを有するスタックの頂部に向かって一つ又は複数の層まで推移する。そのため、要素の特定のストイキオメトリーに対する制限なしに、これらの材料は、AlxGa
1-xNとして示され得、ここで、xは、バッファ層28の上側表面に向かって低減する。
【0025】
図4を参照すると、付加的な製造工程及び対応する項目が表わされている。具体的には、バッファ層28上に電気的隔離層30が形成される。例えば、電気的隔離層30は、50~4000ナノメートルの半絶縁性ガリウム窒化物であり得る。電気的隔離層30の半絶縁性の態様は、電気的隔離層30の下の層と電気的隔離層30の上の層との間の所望のレベルの電気的隔離を提供し得る。代替として、トランジスタ対20における電流密度に対する電荷トラップの望ましくない影響を低減するために、電気的隔離層30はn型又はp型ドーパントでドープされ得る。
【0026】
図5を参照すると、付加的な製造工程及び対応する項目が表わされている。電気的隔離層30上に低欠陥層32が形成される。例えば、低欠陥層32は、25~2000ナノメートルのガリウム窒化物であり得る。低欠陥層32は、電子移動度に対する悪影響を有し得る結晶欠陥を最小化するように形成され得る。低欠陥層32の形成のこの方法は、炭素、鉄、又は、1e
17/cm
3未満のドーピング密度を有するなどのその他のドーパント種でドープされた低欠陥層32となり得る。
【0027】
引き続き
図5を参照し、低欠陥層32上に障壁層34が形成される。例えば、障壁層34は、2~30ナノメートルの、Al
xGa
1-xN、又はインジウムを含むことによるIn
xAl
yGa
1-x-yNであり得る。例えば、障壁層34におけるIII族要素の組成は、15~35パーセントのアルミニウム窒化物及び85~65パーセントのガリウム窒化物であり得る。低欠陥層32上に障壁層34を形成することで、障壁層34のすぐ下の低欠陥層32において、例えば、1(10)
12~2(10)
13/cm
2の電子密度、つまり、シート電荷キャリア密度、の二次元電子ガスが生成される。電気的隔離層30及び/又は低欠陥層32の形成の間、電気的隔離層30及び低欠陥層32のシート電荷キャリア密度が、二次元電子ガスの下のトラップされた電荷及び鏡像電荷(image charges)のためのスクリーンを提供するように、n型ドーパントが付加される。例えば、付加されるn型ドーパントは、主にシリコン及び/又はゲルマニウムドーパントを含み得る。付加されるn型ドーパントは、電気的隔離層30及び/又は低欠陥層32のエピタキシャル成長の間付加され得る。代替として、付加されるn型ドーパントは、電気的隔離層30及び/又は低欠陥層32が形成された後、イオン注入により付加され得る。例えば、付加されるn型ドーパントの平均ドーピング密度は1e
16/cm
3~1e
17/cm
3であり得る。付加されたn型ドーパントの分布は、実質的に均一であり得、又は、ドーピング密度が、ドープされた領域の頂部よりもドープされた領域の底部において高くなるように徐々に変わり得る。
【0028】
図5の締めくくりとして、障壁層34上に任意選択のキャップ層36が形成され得る。例えば、キャップ層36は、1~5ナノメートルのガリウム窒化物であり得る。最後に、所望の閾値電圧を提供するため、障壁層34及び存在する場合はキャップ層36の上に、ゲート誘電体層38が形成され得る。例えば、ゲート誘電体層38はシリコン窒化物を含み得る。
【0029】
図6を参照すると、付加的な構造を形成することを予期して付加的な製造工程が表されている。具体的には、
図6において、上述の層の全てを介して、及び基板22内に部分的に、アパーチャをエッチングすることによって、隔離トレンチ40が形成される。トレンチ40の寸法は、下記の考察を考慮して選択され得る。トレンチ40は、近隣のGaNFETトランジスタ間の隔離を提供するように動作する。また、
図6において、2つの最上層、即ちキャップ層36及びゲート誘電体38を介して、及び更に、所望に低いコンタクト抵抗を達成するような量の障壁層34を残して障壁層34の厚みの大半を介してアパーチャをエッチングすることによって、ソースエッチ42が形成される。ソースエッチ42を形成する同じエッチ工程の一部として、又は別個のエッチとして、エッチ42から層24の少なくとも上側表面まで下方にビア44が形成され、これは、更にp基板22と共に形成されるような片側PN接合のn+部分を想起させる。例示のため、このようなビア44が断面で円錐状に示されているが、許容可能な代替物が、垂直の側壁を備えてそれらを形成し得る。最後に、ソースエッチ42を形成する同じエッチ工程の一部として、又は別個のエッチとして、2つの最上層、即ちキャップ層36及びゲート誘電体38を介して、及び更に障壁層34の厚みの大半を介してアパーチャをエッチングすることによって、ドレインエッチ46が、好ましくはソースエッチ42と同じ深さまで、形成される。
【0030】
図7を参照すると、付加的な構造を形成することを予期して付加的な製造工程が表されている。
図7において、
図6のトレンチ40は、二酸化シリコン、シリコン窒化物、又はポリアミドなどを誘電性材料として用いて、誘電体障壁48を形成するために誘電性材料で充填される。また、
図6のビア44は、金属又はドープされた半導体などのそれぞれの導体50で充填されて、層24への電気的コンタクトを提供する。また、
図6のソースエッチ42は、ソースコンタクト52を形成するため、導体、好ましくは金属で充填される。各ソースコンタクト52の底部は、低欠陥層32における2次元電子ガスへのトンネリング接続を形成するように、障壁層34内に延在するが、障壁層34を完全には通過しない。同様に、
図6のドレインエッチ46は、低欠陥層32において二次元電子ガスへのトンネリング接続を形成するように、障壁層34内に延在するが障壁層34を完全には通過しないドレインコンタクト54を形成するため、同様に導体、好ましくは金属で充填される。最終的に、ソースコンタクト52とドレインコンタクト54の各それぞれのセット間にゲート導体56が形成され、各このようなゲート導体56はゲート誘電体層38に接する。例えば、ゲート導体56の各々は、デプリーションモードFETを提供するためにIII-N半導体材料を含み得、他の種類のゲートもこの例の範囲内にある。
【0031】
図7の付加された要素があるとして、トランジスタ対20は、概してT
1及びT
2として示される2つのGaN FETを含む。また、各このようなFETに対し、ゲート導体56は、それぞれのソースコンタクト52から、例えば500~5000ナノメートル、横方向に分離され得、一方、各ゲート56とそれぞれのドレインコンタクト54との間の横方向間隔の距離は、FETの最大動作電圧に依存する距離である。例えば、200ボルトの最大動作電圧に対して設計されるGaN FETにおいて、そのドレインコンタクト54は、そのゲート導体56から1~8ミクロン横方向に分離され得る。600ボルトの最大動作電圧に対して設計されるGaN FETにおいて、そのドレインコンタクト54は、そのゲート導体56から8~30ミクロン横方向に分離され得る。
【0032】
図7はまた、誘電体障壁48の例示の実施例の隔離効果を図示する。トランジスタT
1に対する例で見ると、ページの中央にある誘電体障壁48は、トランジスタT
1の左端部に沿った第1の誘電体障壁を表し、その端部は、障壁層34、低欠陥層32、電気的隔離層30、バッファ層28、ミスマッチ隔離層26、n
+ドープされた層24を含む複数の異なる層にわたって、及び、基板22に向かう方向で基板22と層24との間に形成される片側PN接合より下の深さまで、垂直に生じる。同様に、ページの右の誘電体障壁48は、これら同じ層の第2の端部に沿った第2の誘電体障壁を表す。従って、これらの障壁は、層の連続性を遮断すること、また、片側PN接合の下に延在することにより、トランジスタT
1と、トランジスタT
2のような他の同等に隔離されたデバイスとを隔離するように働く。このような隔離の利点は、これ以降で更に説明する。
【0033】
図8は、
図7のトランジスタ対20の例示を繰り返すが、トランジスタT
1及びT
2を用いてハーフブリッジ60が形成されるような概略的な接続が付加的に示されている。概して、ハーフブリッジ60からのソース/ドレイン及びゲート接続は、
図1のハーフブリッジ10のものに類似し、
図8を
図1と区別するため、
図8における参照識別子にアポストロフィーが付加されている。とはいうものの、概して、ハーフブリッジ構成は理解しやすい。しかし、これらの接続以外にも、
図7及び
図8の例示の実施例の構造には更なる種々の態様がある。具体的には、
図8において、各ソースコンタクト52は層24に電気的に接続され、これは、基板22との組み合わせで、片側PN接合を提供するn
+ドープされた層を想起させる。種々の半導体ウェハにはよくあることだが、基板22は接地に接続される。また、各誘電体障壁48は、トランジスタと任意の横方向に近接する構造との間の隔離を提供し、
図8の中央に示される誘電体障壁48は、トランジスタT’
1を形成する層を、トランジスタT’
2を形成する層から分離する。このような分離される層には層24が含まれる。絶縁性分離の結果、また、各それぞれのソースコンタクト52から下方に延在する導体50により提供される接続に起因して、各それぞれのトランジスタにおける片側PN接合に対する、異なるPNバイアスが達成される。より具体的には、トランジスタT’
1では、層24のそれぞれのセグメントは、(そのソースS(T’
1)から)V
outのバイアスを受け取り、一方、トランジスタT’
1のための誘電体障壁48間の半導体基板22の部分が接地される。これに対し、トランジスタT’
2では、層24のそれぞれのセグメントは、(そのソースS(T’
2)から)接地のバイアスを受け取り、一方、トランジスタT’
2のための誘電体障壁48間の半導体基板22の部分も接地される。従って、ハーフブリッジ60におけるハイサイドとして作用するときなど、トランジスタT’
1がオンであるとき、層24のそのセグメントと基板22との間の片側PN接合は非常に強く逆バイアスされ、それにより、生じる及び上述したリークの懸念からトランジスタを隔離する。一方、トランジスタT’
2では、それは、例示の実施例の構造により隔離され、隔離された片側PN接合の両側に接続される接地を有し、それにより、適切なオペレーションが促進される。
【0034】
各それぞれのトランジスタに対するそれぞれの隔離された片側PN接合を含む、例示の実施例の構造によって達成される隔離の利点は、各誘電体障壁48に対する寸法及び変動も示唆し得る。従って、このような寸法は、予期される又は特定の電圧レベルを想定して、片側PN接合における接合破壊を防止するように選ばれる。例えば、
図8のアプローチにおいて、各このような障壁48は、V
isolation/20Vミクロン幅の1倍から3倍であり得、ここで、V
isolationは必要とされる隔離の量である。また、各このような障壁48は、好ましくは、層24より下にV
isolation/20Vミクロンの1倍から3倍の範囲の距離まで延在する。実際、これらの考慮及び寸法は、その他の方式で近接するGaNトランジスタ間の垂直隔離を達成するために例示の実施例内で他の構造が実装され得ることを実証する。この点で、
図9も
図7のトランジスタ対20の断面図を図示するが、
図7の各誘電体障壁48は複数の誘電体障壁48’で置換されており、
図9の例における各複数は4つの垂直の誘電体障壁48’で構成される。ここでも、誘電性材料は、ポリアミド、二酸化シリコン、又はシリコン窒化物であり得るが、各誘電体障壁48’が、1μmからV
isolation/20Vミクロン幅の1倍から3倍の深さなど、
図7における誘電体障壁48に対して与えられる深さに比して、より小さい幅(1μm~10μmなど)及びより少ない深さを基板22内に有し得る点で、寸法が異なる。
【0035】
図10~
図14は、同じく2つのGaN FETを含み得る、付加的な代替の例示の実施例のトランジスタ対20の形成の断面図を図示する。
【0036】
図10を参照すると、シリコンウェハ、又はGaN FETの製造に適切なその他の基板などの半導体基板122に関連して、トランジスタ対20が形成される。例示の実施例において、基板122は、p半導体材料(軽くドープされたp型半導体材料)である。また、部分的に基板122内に2つのトレンチ124を形成するように、適切なマスキング及びエッチング(例えば、<111>ウェハのドライエッチ又は<100>ウェハのウェットエッチ)が実施される。トレンチ124の寸法は、下記を考慮して選択され得るが、トレンチ124は、本明細書において後述するように、各トレンチに形成されるGaN FETトランジスタ間に、能動エリア及び何等かの隔離を提供するように動作する。また、トレンチ124の側壁は、エッチ条件に応じて、垂直であり得、又は傾斜し得る。
【0037】
図11は、付加的な製造工程及び項目を図示する。具体的には、基板122に相補的な、半導体材料の領域又は層126が、各トレンチ124の上側表面に沿って(即ち、基板122の平面に平行に)、また、各トレンチ124の各側壁に沿って形成される(例えば、成長されるか又は注入される)。例えば、基板122におけるこれらの露出されたトレンチ表面に沿って層126を注入するように基板122の位置を交互にするためにクワッド(quad)注入が用いられ得、それにより、層126は、トレンチの底部に沿って、及び基板122の上側表面に向かう上方へ、の両方に延在する。図示する例において、基板122はp型材料であるため、層126はn型材料である。また、層126は好ましくは、基板122に比して重くドープされ、そのため、
図11は、層126がドーピングレベルにおいてn
+である(例えば、1e
18/cm
3~1e
21/cm
3)ことを図示する。また、従って、本明細書における教示から更に理解されるように、より少なくドープされた基板122とより多くドープされた層126との組み合わせは、片側PN接合を提供する。他の例示の実施例と同様に、この又は類似の片側PN接合は、高度にドープされたp
+基板(1e
18/cm
3~3e
21/cm
3)上に低ドープされたn型シリコン(1e
13/cm
3~1e
18/cm
3)層を成長させること、又は、高度にドープされたp
+基板(1e
18/cm
3~3e
21/cm
3)上に低ドープされた(1e
13/cm
3~1e
18/cm
3)p型シリコン層を成長させること、及びその後、成長された低ドープされたシリコン膜の頂部上にn
+領域(1e
18/cm
3~3e
21/cm
3)を形成することによって形成され得る。
【0038】
図12を参照すると、付加的な製造工程及び項目が表わされている。具体的には、
図12において、トレンチ124からの残っているオープン領域(
図10参照)は、既に形成された層126に沿って、各トレンチにおけるそれぞれのGaN FETの最終的形成に向けて付加的な層で充填され、このような層が詳述された
図5の実施例の参照番号が、
図12において再現されている。そのため、
図12において、このような層は、ミスマッチ隔離層26、バッファ層28、電気的隔離層30、低欠陥層32、障壁層34、任意選択のキャップ層36、及びゲート誘電体層38を含む。
【0039】
図13を参照すると、付加的な製造工程が表わされている。具体的には、トレンチ(図示せず)が、
図12に図示された上側表面から形成され、ソースコンタクト128を形成するために、導体、好ましくは金属で充填される。各ソースコンタクト128の底部は、低欠陥層32における二次元電子ガスへのトンネリング接続を形成するように、障壁層34内に延在するが、障壁層34を完全には通過しない。しかし、各ソースコンタクト128はまた、層126に接し、又は、任意選択で中間導体(図示せず)を介して、層126と、及び好ましくはその層の基板122の表面に向かって上方に延在する部分に、電気的に通信する。しかし、電気的観点から、この接続は、
図13の実施例はまた、ソース電位をGaNトランジスタの底部において片側PN接合に接続する点で、
図7の実施例において示されるようなソースコンタクト52及び導体50の組み合わせのようになる。また
図13に関連して、ソースコンタクト128を形成する同じ(又は類似の)プロセスにおいて、ドレインエッチ(図示せず)が同様に、導体、好ましくは金属で充填されて、ドレインコンタクト130を形成し、ドレインコンタクト130は、低欠陥層32において二次元電子ガスへのトンネリング接続を形成するように、障壁層34内に延在するが、障壁層34を完全には通過しない。最終的に、ソースコンタクト128とドレインコンタクト130の各それぞれのセットの間にゲート導体132が形成され、各このようなゲート導体132はゲート誘電体層38に接する。
【0040】
図14は、
図13において図示されたものに付加される最終的な例示の実施例の構造を図示する。具体的には、
図13において、付加的な電気的に浮遊するn
+領域134が、適切なマスキング(図示せず)を用いて基板122の上側表面を介して形成され、図示する例において3つのこのような領域が、概してT’
1及びT’
2として示される2つのGaN FETを含むトランジスタ対20として概して示されるものの間、及びそれらの外側端部の外、に形成される。電気的に浮遊するn
+領域134は、各領域が、各トランジスタの両端に印加される電位間に幾らかの電圧(例えば、0~600ボルト)を獲得し得るように、表面において、デプリーションが生じ、拡張し始めるように電界を拡げるように動作する。このようにして、表面電界が、デバイス信頼性に対して所望なレベルを下回るように低減される。
【0041】
上記から、種々の実施例が、GaN FETなどのIII-N半導体トランジスタに対して改善を提供する。種々の寸法を提供してきたが、このような手段は、応用例及びその他の考慮に従って調節され得る。一例として、例示の一実施例のハーフブリッジを説明してきたが、個々のFET、他の構成におけるFET、及び同じ基板に関連して形成されるFET以外のデバイスと組み合わされるFETを備えるが、例示の実施例の教示を用いてこのようなFETをこのようなデバイスから隔離する、例示の実施例の構造が用いられ得る。実際、本明細書に記載される種々のトランジスタ構成要素は、参照により本願に組み込まれる、2014年6月24日に登録された米国特許番号第8,759,879号においても見ることができる。この参照された米国特許は、同じく本明細書の教示とも容易に組み合わされ得る、その他のトランジスタ構成を含む。更に別の例として、例示の一実施例の片側PN接合を、接合の一部として基板に関連して説明してきたが、別の例示の実施例においてその接合は、基板から離れたGaN層を用いて達成され得る。例えば、p型/SiGaN又はAlGaN層が、p
+シリコン又は適切な基板の頂部上に成長され、その後、エピタキシー又は注入によりそのp型又はSiGaNの表面上にn
+層が形成される。これに従い、全てのその他の層が、上述のものに類似し得、この代替例において、ビアは、n
+III窒化物層に接するように形成され得る。
【文献】米国特許番号第8,759,879号
【0042】
本発明の特許請求の範囲内で、説明した例示の実施例に変形が成され得、他の実施例が可能である。