(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】複合品を製造するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/164 20170101AFI20230208BHJP
B01J 31/22 20060101ALI20230208BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20230208BHJP
C01B 32/05 20170101ALI20230208BHJP
C01B 32/159 20170101ALI20230208BHJP
【FI】
C01B32/164
B01J31/22 M
B82Y40/00
C01B32/05
C01B32/159
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017048275
(22)【出願日】2017-03-14
【審査請求日】2020-02-13
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-06
(32)【優先日】2016-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517090303
【氏名又は名称】ナノシンセシス・プラス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】アヴェティク・ハルテュンヤン
(72)【発明者】
【氏名】エレナ・モーラ・ピゴス
【合議体】
【審判長】池渕 立
【審判官】井上 猛
【審判官】羽鳥 友哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/30821(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/184
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合品を製造する方法であって、前記方法が、
流動床反応器内に或る量の炭素系粒子を流動化させるステップと、
前記流動床反応器のカーボンナノチューブ成長領域を1000℃よりも高い温度に加熱するステップと、
前記流動床反応器内に触媒又は触媒前駆体を提供するステップと、
前記流動床反応器の前記カーボンナノチューブ成長領域に炭素源を提供するステップと、
前記カーボンナノチューブ成長領域においてカーボンナノチューブを成長させるステップと、
前記流動床反応器にキャリアガスの流れを提供し、前記カーボンナノチューブと前記炭素系粒子とを備える複合品を前記流動床反応器を通して運ぶステップとを備え、
前記炭素系粒子がグラファイト粒子である方法。
【請求項2】
前記複合品を前記流動床反応器を通して運ぶステップが、前記複合品を前記流動床反応器の頂部付近に画定された流出口に向けて運ぶことを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記流動床反応器の流出口から放出された前記複合品を収集容器内に受け取るステップを更に備える請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記炭素系粒子を前記流動床反応器内に連続的と
断続的との少なくとも一方で補充するステップを更に備える請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記触媒又は触媒前駆体を提供するステップが、前記流動床反応器の底部から前記カーボンナノチューブ成長領域に前記触媒又は前駆体を注入することを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記キャリアガスを提供することが、前記キャリアガスの流れを前記カーボンナノチューブ成長領域内に放出して、前記触媒を前記カーボンナノチューブ成長領域を通して前流動床反応器の流出口に向けて運ぶことを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記流動床反応器が前記カーボンナノチューブ成長領域の下方に位置決めされたガス分散部を備え、前記流動床反応器内に炭素系粒子を流動化させるステップが、前記流動床反応器内に前記炭素系粒子を流動化させるのに十分な流量で前記ガス分散部を通して流動化ガスを供給することを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
複合品を製造するためのシステムであって、前記システムが、
或る量の炭素系粒子が含まれる流動床反応器であって、流出口を含む流動床反応器と、
触媒又は触媒前駆体の流れを前記流動床反応器内に提供するように前記流動床反応器と流体連結している触媒又は触媒前駆体源と、
炭素系粒子と前記流動床反応器内で成長したカーボンナノチューブとを備える複合品を運ぶように前記流動床反応器と流体連結しているキャリアガス源と、
前記流動床反応器の中に流動化ガスを供給するガス分散部と、
前記触媒又は触媒前駆体源と流体連結して結合され、前記ガス分散部とは別体である第一注入部とを備え、
前記第一注入部が、前記流動床反応器内のカーボンナノチューブ成長領域の下方であって且つ前記ガス分散部の上方に位置決めされるシステム。
【請求項9】
前記第一注入部が、前記触媒又は触媒前駆体の流れを前記流動床反応器内のカーボンナノチューブ成長領域内へ放出するように延在している請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記キャリアガス源と流体連結して結合された第二注入部であって、該第二注入部から放出されたキャリアガスの流れが、カーボンナノチューブ成長領域で成長したカーボンナノチューブを前記流出口に向けて運ぶように延在している第二注入部を更に備える請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記流動床反応器の流入口に動作可能に連結して結合された炭素系粒子源であって、前記炭素系粒子を前記流動床反応器内に選択的に補充するように構成された炭素系粒子源を更に備える請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記流動床反応器の流出口に流体連結して結合された収集容器であって、前記流出口から放出された複合品を受け取るように構成された収集容器を更に備える請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
複合品を作製する方法であって、
流動床反応器内に炭素系粒子の流動床を提供するステップと、
前記流動床のカーボンナノチューブ成長領域を1000℃よりも高い温度に加熱するステップと、
前記流動床内に触媒又は触媒前駆体を提供するステップと、
前記流動床内にカーボンナノチューブを成長させるための炭素源を提供するステップと、
前記流動
床の前記カーボンナノチューブ成長領域においてカーボンナノチューブを成長させるステップと、
炭素系粒子とカーボンナノチューブとを備える複合品を収集するステップとを備える方法。
【請求項14】
前記流動床反応器が頂部及び底部を含み、ガス分散部が前記流動床反応器の底部付近の前記カーボンナノチューブ成長領域の下方に位置決めされ、前記流動床反応器内で前記炭素系粒子を流動化させるのに十分な流量で前記ガス分散部を通して流動化ガスを供給することによって、前記炭素系粒子が前記流動床反応器内で流動化される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記触媒又は触媒前駆体がフェロセンを備える、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記触媒前駆体がフェロセン及びアルコールを備え、前記アルコールが前記カーボンナノチューブを成長させるための炭素源である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記触媒又は触媒前駆体を提供するステップが、流入口を介して前記流動床反応器に前記触媒又は触媒前駆体を注入することを備え、前記流入口が前記カーボンナノチューブ成長領域の下方であって且つガス分散部の上方に位置決めされる、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記カーボンナノチューブ成長領域を通して前記流動床反応器の流出口に向けて前記カーボンナノチューブを運ぶために前記カーボンナノチューブ成長領域内にキャリアガスを提供するステップを更に備える請求項13に記載の方法。
【請求項19】
キャリアガスが前記カーボンナノチューブを成長させるための炭素源を含む、請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
前記流動床反応器の流出口から放出された前記複合品を収集容器内に受け取るステップを更に備える請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブである、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記炭素系粒子がグラファイト粒子であり、前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブである、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2016年3月15日出願の米国仮出願第62/308496号の優先権を主張し、その内容全体は参照として本願に組み込まれる。
【0002】
本開示の分野は、一般的にカーボンナノチューブに係り、特にカーボンナノチューブを含む複合品を製造するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
カーボンナノチューブは、チューブ状のグラファイトシートの組成を本質的に有する小さなチューブ状構造である。カーボンナノチューブは、100ナノメートル未満の直径と、長さが直径よりもはるかに大きいという大きなアスペクト比とを特徴とする。例えば、カーボンナノチューブの長さは直径の1000倍以上となり得る。単層カーボンナノチューブ(SWNT,single-walled carbon nanotube)については、その非常に優れた熱的特性、機械的特性、及び電気的特性を与える特異な電子構造のため、ナノテクノロジーにおける多様な応用への関心が益々高まっている。例えば、SWNTは、所望の物理的特性及び化学的特性を得るために、電子機器、エネルギーデバイス、医薬、及び複合材において使用可能である。その使用には、多量のSWNTを生成するための方法が必要とされる。
【0004】
SWNTを生成するための方法として、物理的方法(例えば、電気アーク、レーザーアブレーション)と、化学的方法(例えば、熱分解、化学気相堆積)が挙げられるが、これらに限られるものではない。SWNTを形成し、母材内に分散させる場合があり、これは、母材の熱的特性、機械的特性、及び電気的特性を変更する。しかしながら、カーボンナノチューブの添加によって母材の電気的特性又は機械的特性を増強させるには、非常に均一な分散、凝集がないこと、及び、ナノチューブ/母材比の細かな制御が必要とされる。ナノチューブの合成に続いて、ナノチューブを多様な溶媒中に分散させ(例えば、表面機能化を介して)、次いでナノチューブを母材と混合すること(例えば、ボールミリング、超音波処理等によって)が試みられている。しかしながら、このような試みは、母材中のナノチューブの十分な分散を提供することに成功していない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、複合品を製造する方法が提供される。本方法は、流動床反応器内に或る量の炭素系粒子を流動化させるステップと、流動床反応器内に触媒又は触媒前駆体を提供するステップと、流動床反応器のカーボンナノチューブ成長領域に炭素源を提供するステップと、カーボンナノチューブ成長領域においてカーボンナノチューブを成長させるステップと、流動床反応器にキャリアガスの流れを提供して、流動床反応器を通してカーボンナノチューブと炭素系粒子とを備える複合品を運ぶステップと、を含む。
【0006】
一態様では、複合品を製造するためのシステムが提供される。本システムは、或る量の炭素系粒子が含まれる流動床反応器と、流出口と、流動床反応器内に触媒又は触媒前駆体の流れを提供するために流動床反応器と流体連結している触媒又は触媒前駆体源と、炭素系粒子と流動床反応器内で成長したカーボンナノチューブとを備える複合品を運ぶために流動床反応器と流体連結しているキャリアガス源と、を含む。
【0007】
一態様では、複合品を製造する方法が提供される。本方法は、流動床反応器内に炭素系粒子の流動床を提供するステップと、流動床反応器内に触媒又は触媒前駆体を提供するステップと、流動床反応器内にカーボンナノチューブを成長させるための炭素源を提供するステップと、流動床反応器のカーボンナノチューブ成長領域においてカーボンナノチューブを成長させるステップと、炭素系粒子とカーボンナノチューブとを備える複合品を収集するステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一態様における複合品を製造するのに使用可能な例示的なシステムの概略図である。
【
図2】本開示の一態様における複合品を製造するのに使用可能な例示的な一連のプロセスステップを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本願に記載されている実施形態は、複合品、並びに、その複合品を作製するためのシステム及び方法に関する。一般的に、本システム及び方法は、反応器内でのカーボンナノチューブの成長過程における炭素系母材中へのカーボンナノチューブのin‐situ(その場,インサイチュ)分散を提供する。反応器は、流動床反応器であり得て、反応器の底から、多孔質フリット等のガス分散部から流れる流動化ガスを用いて炭素系母材のエアロゾル化又は流動化を可能にすることができる。一つ以上の注入部が反応器の中央に提供され得て、カーボンナノチューブを成長させるための触媒及び炭素前駆体を供給する。そして、カーボンナノチューブが、雲状の流動化炭素母材内で成長し得て、in‐situ混合を提供し、結果として、カーボンナノチューブと炭素系母材とを含む結果物の複合品の均一性を改善する。
【0010】
図1は、カーボンナノチューブと炭素系母材とを備える複合品102を製造するのに使用可能な例示的なシステム100の概略図である。例示的な実施形態では、システム100は、或る量の炭素系母材が含まれる流動床反応器104を含む。母材は、流動床中に懸濁させることができるあらゆる固体炭素系粒子であり得る。例示的な炭素系粒子として、グラファイト粒子、グラファイトフレーク、これらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、炭素系粒子は、略1ナノメートルと略100マイクロメートルとの間の範囲内に定められた粒径を有し得る。
【0011】
例示的な例では、流動床反応器104は、反応室108と、反応室108に結合された多孔質フリット110及び多孔質フリット110に結合されたガスプレナム112を備え得るガス分散部とを含む。多孔質フリット110は、ガスプレナム112が反応室108に流体連結して結合されるように画定された複数の流れ開口114を含む。ガスプレナム112は、第一ガス源118から流動化ガスの流れを受ける。流動化ガスの流れは、プレナム112及び多孔質フリット110を通って、反応室108内の炭素系粒子を流動化させる。流動化ガスは、炭素系粒子を流動化させて、炭素系粒子の流動床109を形成することができるあらゆるガスであり得る。例示的な流動化ガスとして、アルゴン、ヘリウム、窒素、水素、二酸化炭素、アンモニアが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0012】
図1に示されるように、流動床反応器104は、反応室108を所望の反応温度に加熱するための一つ以上の熱源119を含み得る。例えば、触媒又は触媒前駆体に応じて、また所望のナノチューブのタイプに応じて、熱源119は反応室108を略450℃から略1100℃の範囲内の温度に加熱し得る。典型的には、多層ナノチューブ(MWNT,multi‐walled nanotube)が略450℃の低温で成長可能な一方、単層ナノチューブ(SWNT)はより高温(>750℃)を要する。
【0013】
また、流動床反応器104は、炭素系粒子、触媒又は触媒前駆体、キャリアガス、及び、カーボンナノチューブ用の炭素前駆体を導入するための一つ以上の流入口も含み得る。
図1に示されるように、炭素系粒子源106から反応室108内に炭素系粒子を導入するための流入口120が設けられる。流入口120を介して反応室108内に炭素系粒子を導入するためにあらゆる方法やデバイスが使用可能であることは理解されたい。非限定的な例では、スクリューフィーダー(供給部)、ベルトフィーダー、振動フィーダー、又は回転(バルクソリッド)フィーダーを用いて、反応室108内に炭素系粒子が供給され得る。追加的に又は代替的に、炭素系粒子は、空気圧で反応室108内に搬送され得る。非限定的な例として、圧力容器コンベヤー(搬送部)、加圧スクリューコンベヤー、エアリフト、ブロースルーフィーダー、ジェットフィーダーが挙げられる。搬送ガスは、流動ガスと同じでもあり得て、異なるものでもあり得る。例示的なガスとして、アルゴン、窒素、ヘリウム、水素、二酸化炭素、アンモニアが挙げられるが、これらに限定されるものではない。炭素系粒子を反応室108内に連続的に供給してシステムが反応室108の連続動作で動作するようになってもよく、反応室108のバッチ動作用に単一チャージで炭素系粒子を導入してもよく、又は、反応室108の半バッチ処理用に炭素系粒子を断続的に加えてもよいことは理解されたい。
【0014】
一種以上の炭素含有ガス、一種以上の炭化水素溶媒、これらの混合物等の炭素前駆体を用いて、カーボンナノチューブを合成することができる。炭素含有前駆体の例として、一酸化炭素、飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素(メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、エチレン、アセチレン、プロピレン等)、含酸素炭化水素(アセトン、メタノール等)、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、ナフタレン等)、上記のものの混合物(例えば、一酸化炭素とメタン)が挙げられる。一般的に、アセチレンの使用が多層カーボンナノチューブの形成を促進し、一方、COとメタンが単層カーボンナノチューブを形成するための好ましい供給ガスである。特に、炭化水素溶媒として、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール等)を挙げることができるが、これに限定されるものではない。任意で、炭素前駆体を希釈ガス(水素、ヘリウム、アルゴン、ネオン、クリプトン、キセノン、これらの混合物等)と混合し得る。
図1に示されるように、炭素前駆体はキャリアガス(キャリアガス源126)に含まれ得て、流入口128を介して反応室108に導入され得る。
【0015】
触媒又は触媒前駆体は、カーボンナノチューブの生成に使用可能なあらゆる触媒又は触媒前駆体を含み得る。触媒又は触媒前駆体は、アセチルアセトネート、メタロセン、酢酸塩、硝酸塩、窒化物、硫酸塩、硫化物、酸化物、ハロゲン化物、塩化物等のうち一種以上であり得る。触媒として使用される例示的な金属として、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、これらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。触媒前駆体の非限定的な例として、鉄(III)アセチルアセトネート、フェロセン、酢酸鉄、硝酸鉄、硫酸鉄、塩化鉄が挙げられる。触媒又は触媒前駆体源は、固体粉末、液体中に分散させた若しくは溶媒中に溶解させた固体となり得ることは理解されたい。
図1に示されるように、触媒又は触媒前駆体源130は、流入口132を介して反応室108に連結して設けられ得て、触媒又は触媒前駆体を反応室108のカーボンナノチューブ成長領域150に導入する。ポンプ、固体フィーダー、シリンジ、又は当業者に既知の他のデバイスや方法を用いて、触媒又は触媒前駆体をカーボンナノチューブ成長領域150内に導入し得る。炭素前駆体を、触媒又は触媒前駆体と混合して、流入口132を介して触媒又は触媒前駆体と共に導入し得ることを理解されたい。
流入口132は、流動床反応器104内のカーボンナノチューブ成長領域150の下方であって且つ多孔質フリット110およびガスプレナム112の上方に位置決めされる。
【0016】
非限定的な例では、炭素系粒子を、反応室108に炭素系粒子を導入する前に炭素系粒子上に堆積させた触媒又は触媒前駆体と共に提供することができる。
【0017】
動作時には、カーボンナノチューブの成長速度と、複合品中における炭素系粒子に対するカーボンナノチューブの質量パーセンテージとが、反応室108への炭素系粒子、触媒又は触媒前駆体、及び炭素前駆体の供給速度によって制御される。これらの供給速度は、所望の応用の要求を満たすため、複合品中の炭素系粒子に対するカーボンナノチューブの所望の比を生じさせるように調整可能である。
【0018】
図2に示される例示的な例において、複合品を作製するための方法は、炭素系粒子の流動床を提供するステップ(ステップ200)と、流動床内に触媒又は触媒前駆体を提供するステップ(ステップ300)と、流動床内に炭素源を導入するステップ(ステップ400)と、流動床においてカーボンナノチューブを成長させるステップ(ステップ500)と、炭素系粒子とカーボンナノチューブとを備える複合品を収集するステップ(ステップ600)とを備える。非限定的な例では、触媒又は触媒前駆体の少なくとも一部を炭素系粒子の表面上に堆積させて、炭素系粒子の表面上にカーボンナノチューブを成長させる。
【0019】
[実施例:複合品の製造]
カーボンナノチューブと炭素系固体とを備える複合品を製造する方法を実証するため、以下の実験を行った。
【0020】
直径2インチの石英管を、流動床反応器104用の反応室108として設け、チューブ状炉を熱源119として用いた。石英管を、多孔質フリット114で閉じられた下端と垂直に整列させた。二本の管を、キャリアガス流入口128及び触媒/触媒前駆体流入口132用に多孔質フリット114の中心に設けた。二つの流入口128及び132は、熱源119によって加熱される反応室108の部分の下方に位置決めされた。グラファイト粒子を炭素系粒子として用い、略10ミリメートルの高さまで多孔質フリット114上に注いだ。次いで、流動化ガス(アルゴン)を石英管の下端の多孔質フリット114を通して略350sccm(standard cubic centimeters per minute)の流量で提供して、グラファイト粒子を流動化させた。反応室108を略1020℃の温度に加熱した。キャリアガスは、アルゴン(略850sccm)及び水素(略300sccm)の混合物を含み、流入口128を介して反応室108に提供された。触媒前駆体は、エタノール中のフェロセン(0.4質量%)及びチオフェン(0.2質量%)の溶液であった。エタノールは、フェロセン用の溶媒と、ナノチューブを成長させるための炭素源の両方として機能した。触媒前駆体溶液を流入口132を介して6ml/時の流量でカーボンナノチューブ成長領域150に注入し、そこで、フェロセンが略1ナノメートルの直径を有する鉄触媒粒子に分解し、エタノールが鉄触媒粒子上に単層ナノチューブを成長させるための炭素源に変換した。キャリアガスが、ナノチューブ成長領域150から反応器流出口175を通して収集容器170に複合品102を運んだ。複合品はSWCNT及びグラファイト粒子を含み、略0.7質量%のSWCNTを備えていた。
【0021】
上記説明では、最良の形態を含む多様な実施形態を開示し、また、当業者があらゆるデバイスやシステムを作製及び使用すること、また、含まれるあらゆる方法を行うことを含む多様な実施形態の実施を可能にするために例を用いている。本開示の特許可能な範囲は特許請求の範囲によって定められ、当業者に思い浮かぶ他の例も含み得るものである。そのような他の例は、請求項の文言とは異なる構造要素を有さない場合、又は請求項の文言とは非本質的な相違点を有する等価な構造要素を有する場合に、特許請求の範囲内に存するものである。
【符号の説明】
【0022】
100 システム
102 複合品
104 流動床反応器
106 炭素系粒子源
108 反応室
109 流動床
110 多孔質フリット
112 ガスプレナム
114 開口
118 第一ガス源
119 熱源
120 流入口
126 キャリアガス源
128 キャリアガス流入口
130 触媒又は触媒前駆体源
132 触媒又は触媒前駆体流入口
150 カーボンナノチューブ成長領域
170 収集容器
175 反応器流出口