IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本光電工業株式会社の特許一覧

特許7222610生体情報処理装置、生体情報処理方法、プログラム及び記憶媒体
<>
  • 特許-生体情報処理装置、生体情報処理方法、プログラム及び記憶媒体 図1
  • 特許-生体情報処理装置、生体情報処理方法、プログラム及び記憶媒体 図2
  • 特許-生体情報処理装置、生体情報処理方法、プログラム及び記憶媒体 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】生体情報処理装置、生体情報処理方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/02 20060101AFI20230208BHJP
   A61B 5/33 20210101ALI20230208BHJP
   A61B 5/352 20210101ALI20230208BHJP
【FI】
A61B5/02 B
A61B5/02 310V
A61B5/33 100
A61B5/352
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018090625
(22)【出願日】2018-05-09
(65)【公開番号】P2019195434
(43)【公開日】2019-11-14
【審査請求日】2021-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】須郷 義広
(72)【発明者】
【氏名】原田 喜晴
(72)【発明者】
【氏名】酒井 智之
(72)【発明者】
【氏名】坂井 真美
【審査官】▲瀬▼戸井 綾菜
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-082682(JP,A)
【文献】特開2014-100244(JP,A)
【文献】特開2010-178908(JP,A)
【文献】特開2011-200576(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0096403(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0018631(US,A1)
【文献】特開2017-104326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02-5/0538
A61B 5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)被検者の心電図データを取得するステップと、
b)前記被検者の脈波データを取得するステップと、
c)前記心電図データに基づいて、複数のRR間隔を測定するステップと、
d)前記心電図データと前記脈波データに基づいて、複数の脈波伝播時間を測定するステップと、
e)所定期間内における複数のRR間隔及び複数の脈波伝播時間に基づいて、前記複数のRR間隔と前記複数の脈波伝播時間との間の相関係数又は回帰直線の傾きを演算するステップと、
f)前記演算された相関係数又は回帰直線の傾きを出力するステップと、
g)前記演算された相関係数又は回帰直線の傾きが所定の閾値を超えたかどうかを判定するステップと、
h)前記演算された相関係数又は回帰直線の傾きが前記所定の閾値を超えたとの判定に応じて、前記被検者に対する輸液の投与を自動的に停止するステップと、
を含む、コンピュータによって実行される生体情報処理方法。
【請求項2】
a)被検者の心電図データを取得するステップと、
b)前記被検者の脈波データを取得するステップと、
c)前記心電図データに基づいて、複数のRR間隔を測定するステップと、
d)前記心電図データと前記脈波データに基づいて、複数の脈波伝播時間を測定するステップと、
e)所定期間内における複数のRR間隔及び複数の脈波伝播時間に基づいて、i番目(iは自然数)のRR間隔と(i+1)番目の脈波伝播時間との間の相関関係に関連付けられたパラメータを演算するステップと、
f)前記演算されたパラメータを出力するステップと、
を含む、コンピュータによって実行される生体情報処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の生体情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項4】
請求項に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ読取可能な記憶媒体。
【請求項5】
プロセッサと、
コンピュータ可読命令を記憶するメモリと、を備えた生体情報処理装置であって、
前記コンピュータ可読命令が前記プロセッサにより実行されると、前記生体情報処理装置は、
被検者の心電図データを取得し、
前記被検者の脈波データを取得し、
前記心電図データに基づいて、複数のRR間隔を測定し、
前記心電図データと前記脈波データに基づいて、複数の脈波伝播時間を測定し、
所定期間内における複数のRR間隔及び複数の脈波伝播時間に基づいて、前記複数のRR間隔と前記複数の脈波伝播時間との間の相関係数又は回帰直線の傾きを演算し、
前記演算された相関係数又は回帰直線の傾きを出力し、
前記演算された相関係数又は回帰直線の傾きが所定の閾値を超えたかどうかを判定し、
前記演算された相関係数又は回帰直線の傾きが前記所定の閾値を超えたとの判定に応じて、前記被検者に対する輸液の投与を自動的に停止する、
生体情報処理装置。
【請求項6】
プロセッサと、
コンピュータ可読命令を記憶するメモリと、を備えた生体情報処理装置であって、
前記コンピュータ可読命令が前記プロセッサにより実行されると、前記生体情報処理装置は、
被検者の心電図データを取得し、
前記被検者の脈波データを取得し、
前記心電図データに基づいて、複数のRR間隔を測定し、
前記心電図データと前記脈波データに基づいて、複数の脈波伝播時間を測定し、
所定期間内における複数のRR間隔及び複数の脈波伝播時間に基づいて、i番目(iは自然数)のRR間隔と(i+1)番目の脈波伝播時間との間の相関関係に関連付けられたパラメータを演算し、
前記演算されたパラメータを出力する、
生体情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生体情報処理装置及び生体情報処理方法に関する。さらに、本開示は、当該生体情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム及び当該プログラムが記憶されたコンピュータ読取可能な記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、光電式容積脈波(PPG)信号の振幅変調AM及び/又は周波数変調FMを決定するステップと、PPG信号のベースライン変調BMを決定するステップと、ベースライン変調BMに対する当該振幅変調AMの比率又はベースライン変調BMに対する周波数変調FMの比率を決定するステップと、当該決定された比率に基づいて患者の輸液反応性を決定するステップとを含む患者の輸液応答性を検出する方法を開示している。特に、特許文献1では、当該決定された比率が所定の閾値を超えた場合には、患者に対する更なる輸液が実施される一方で、当該決定された比率が所定の閾値未満である場合には、患者に対する更なる輸液が中止されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2014/0058229号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の開示では、患者に対して更なる輸液を投与するべきかどうかの判断(以下、輸液投与判断という。)が中枢にある心臓からの拍動が末梢に到達した状態を示すPPG信号(即ち、脈波データ)から演算された指標値に基づいて行われている。一方で、輸液投与判断の信頼性をさらに向上させるために、PPG信号に加えてさらに中枢部にある心臓の状態を直接反映する生体情報データから演算される指標値に基づいて輸液投与判断が行われることが望ましい。しかしながら、取得される生体情報データの種類が増える程、生体情報センサの種類の数が増えてしまうため、輸液投与判断に要するコストが増大してしまう。この点において、手術が行われる際には、脈波データを取得する脈波センサと心電図データを取得する心電図センサの2つの非侵襲性のセンサが通常使用されるため、脈波データと中枢部にある心臓の状態を直接反映する心電図データの2つの異なる生体情報データを利用することで医療従事者による輸液投与判断を支援することが考えられる。
【0005】
本開示は、脈波データと心電図データの2つの異なる生体情報データを通じて医療従事者による輸液投与判断を支援することが可能な生体情報処理装置及び生体情報処理方法を提供する。また、本開示は、当該生体情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム及び当該プログラムが記憶されたコンピュータ読取可能な記憶媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る生体情報処理方法は、コンピュータによって実行され、
a)被検者の心電図データを取得するステップと、
b)前記被検者の脈波データを取得するステップと、
c)前記心電図データに基づいて、複数のRR間隔を測定するステップと、
d)前記心電図データと前記脈波データに基づいて、複数の脈波伝播時間を測定するステップと、
e)所定期間内における複数のRR間隔及び複数の脈波伝播時間に基づいて、前記複数のRR間隔と前記複数の脈波伝播時間との間の相関関係に関連付けられたパラメータを演算するステップと、
f)前記演算されたパラメータを出力するステップと、
を含む。
【0007】
また、前記生体情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム及び当該プログラムが記憶されたコンピュータ読取可能な記憶媒体が提供される。
【0008】
本開示の一態様に係る生体情報処理装置は、
プロセッサと、
コンピュータ可読命令を記憶するメモリと、を備える。
前記コンピュータ可読命令が前記プロセッサにより実行されると、前記生体情報処理装置は、
被検者の心電図データを取得し、
前記被検者の脈波データを取得し、
前記心電図データに基づいて、複数のRR間隔を測定し、
前記心電図データと前記脈波データに基づいて、複数の脈波伝播時間を測定し、
所定期間内における複数のRR間隔及び複数の脈波伝播時間に基づいて、前記複数のRR間隔と前記複数の脈波伝播時間との間の相関関係に関連付けられたパラメータを演算し、
前記演算されたパラメータを出力する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、脈波データと心電図データの2つの異なる生体情報データを通じて医療従事者による輸液投与判断を支援することが可能な生体情報処理装置及び生体情報処理方法を提供することができる。また、当該生体情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム及び当該プログラムが記憶されたコンピュータ読取可能な記憶媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る生体情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る生体情報処理方法の一例を説明するためのフローチャートである。
図3】複数のRR間隔と複数の脈波伝播時間との間の関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施形態について図面を参照しながら説明する。最初に、図1を参照して本発明の実施形態(以下、単に本実施形態という。)に係る生体情報処理装置1のハードウェア構成について以下に説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る生体情報処理装置1のハードウェア構成の一例を示す図である。図1に示すように、生体情報処理装置1(以下、単に処理装置1という。)は、制御部2と、記憶装置3と、ネットワークインターフェース4と、表示部5と、入力操作部6と、センサインターフェース7とを備える。これらはバス8を介して互いに通信可能に接続されている。
【0013】
処理装置1は、被検者Pのバイタルサインのトレンドグラフを表示するための専用装置(生体情報モニタ等)であってもよいし、例えば、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、スマートフォン、タブレット、医療従事者Uの身体(例えば、腕や頭等)に装着されるウェアラブルデバイス(例えば、スマートウォッチやARグラス等)であってもよい。
【0014】
制御部2は、メモリとプロセッサを備えている。メモリは、コンピュータ可読命令(プログラム)を記憶するように構成されている。例えば、メモリは、各種プログラム等が格納されたROM(Read Only Memory)やプロセッサにより実行される各種プログラム等が格納される複数ワークエリアを有するRAM(Random Access Memory)等から構成されてもよい。また、メモリは、フラッシュメモリ等によって構成されてもよい。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)及び/又はGPU(Graphics Processing Unit)である。CPUは、複数のCPUコアによって構成されてもよい。GPUは、複数のGPUコアによって構成されてもよい。プロセッサは、記憶装置3又はROMに組み込まれた各種プログラムから指定されたプログラムをRAM上に展開し、RAMとの協働で各種処理を実行するように構成されてもよい。
【0015】
プロセッサが後述する生体情報処理プログラムをRAM上に展開し、RAMとの協働で当該プログラムを実行することで、制御部2は、処理装置1の各種動作を制御してもよい。生体情報処理プログラムの詳細については後述する。
【0016】
記憶装置3は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等の記憶装置(ストレージ)であって、プログラムや各種データを格納するように構成されている。記憶装置3には、生体情報処理プログラムが組み込まれてもよい。また、記憶装置3には、被検者Pの心電図データ、脈波データ等の生体情報データが保存されてもよい。例えば、心電図センサ20によって取得された心電図データは、センサインターフェース7を介して記憶装置3に保存されてもよい。
【0017】
ネットワークインターフェース4は、処理装置1を通信ネットワークに接続するように構成されている。具体的には、ネットワークインターフェース4は、通信ネットワークを介してサーバ等の外部装置と通信するための各種有線接続端子を含んでもよい。また、ネットワークインターフェース4は、アクセスポイントと無線通信するための各種処理回路及びアンテナ等を含んでもよい。アクセスポイントと処理装置1との間の無線通信規格は、例えば、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、LPWA又は第5世代移動通信システム(5G)である。通信ネットワークは、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)又はインターネット等である。例えば、生体情報処理プログラムや生体情報データは、通信ネットワーク上に配置されたサーバからネットワークインターフェース4を介して取得されてもよい。
【0018】
表示部5は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示装置であってもよいし、操作者の頭に装着される透過型又は非透過型のヘッドマウントディスプレイ等の表示装置であってもよい。さらに、表示部5は、画像をスクリーン上に投影するプロジェクター装置であってもよい。
【0019】
入力操作部6は、処理装置1を操作する医療従事者Uの入力操作を受付けると共に、当該入力操作に応じた指示信号を生成するように構成されている。入力操作部6は、例えば、表示部5上に重ねて配置されたタッチパネル、筐体に取り付けられた操作ボタン、マウス及び/又はキーボード等である。入力操作部6によって生成された指示信号がバス8を介して制御部2に送信された後、制御部2は、指示信号に応じて所定の動作を実行する。
【0020】
センサインターフェース7は、心電図センサ20、脈波センサ22等のバイタルセンサを処理装置1に通信可能に接続するためのインターフェースである。センサインターフェース7は、これらのバイタルセンサから出力される生体情報データが入力される入力端子を含んでもよい。入力端子は、バイタルセンサのコネクタと物理的に接続されてもよい。また、センサインターフェース7は、これらのバイタルセンサと無線通信するための各種処理回路及びアンテナ等を含んでもよい。
【0021】
心電図センサ20は、被検者Pの心電図波形を示す心電図データを取得するように構成されている。脈波センサ22は、被検者Pの脈波を示す脈波データを取得するように構成されている。
【0022】
次に、図2を参照して本実施形態に係る生体情報処理方法について以下に説明する。図2は、本実施形態に係る生体情報処理方法の一例を説明するためのフローチャートである。図2に示すように、最初に、制御部2は、心電図センサ20から被検者Pの心電図データを取得すると共に、脈波センサ22から被検者Pの脈波データを取得する。次に、制御部2は、取得された心電図データから、隣接R波間の時間間隔を示す複数のRR間隔を特定する(ステップS1)。
【0023】
次に、ステップS2において、制御部2は、心電図データと脈波データに基づいて、複数の脈波伝播時間(以下、PWTTという。)を測定する。ここで、PWTTとは、心電図の所定のR波のピーク点から当該所定のR波の次に出現する所定の脈波波形の立ち上がり点までの時間間隔である。この点において、制御部2は、心電図データから所定のR波のピーク点の時刻を特定すると共に、脈波データから当該所定のR波の次に出現する所定の脈波波形の立ち上がり点の時刻を特定する。次に、制御部2は、所定の脈波波形の立ち上がり点の時刻と所定のR波のピーク点の時刻との間の時間間隔を演算することでPWTTを測定する。
【0024】
次に、制御部2は、所定期間T内における複数のRR間隔及び複数のPWTTに基づいて、複数のRR間隔と複数のPWTTとの間の相関係数rを演算する(ステップS3)。ここで、相関係数rは、複数のRR間隔と複数のPWTTとの間の相関関係に関連付けられたパラメータの一例である。所定期間Tは、例えば、現在時刻tcより前の時刻t1とt2(<t1)との間の期間である。
【0025】
具体的には、制御部2は、所定期間T内における複数のRR間隔RR(iは自然数)と各々が複数のRRのうちの一つに関連付けられた複数のPWTTi+1とから構成されるデータ(以下、RR/PWTTデータという。)に基づいて、相関係数rを演算する。例えば、所定期間T内における心電図データ及び脈波データに、n個のR波及びn個の脈波波形が存在する場合に、i番目(i=1,2・・・n-1)のRR間隔RRは、i番目のR波のピーク点と(i+1)番目のR波のピーク点との間の時間間隔を示す。一方、i番目のPWTTであるPWTTは、i番目のR波のピーク点とi番目の脈波波形の立ち上がり点との間の時間間隔を示す。複数のRRとPWTTi+1とから構成されるRR/PWTTデータでは、RRはPWTTi+1に関連付けられる。このように、RRはPWTTに関連付けられると共に、RRn-1はPWTTに関連付けられる。以下表に、RR/PWTTデータの一例を示す。また、複数のRR間隔と複数のPWTTとの間の関係の一例が図3に示される。
【表1】
【0026】
また、制御部2は、以下の式(1)に基づいて相関係数rを演算してもよい。
ここで、SRRは、RRの標準偏差を示す。SPWTTは、PWTTi+1の標準偏差を示す。SRR/PWTTは、RRとPWTTi+1との共分散を示す。
【0027】
次に、ステップS4において、制御部2は、演算された相関係数rを外部に出力する。例えば、制御部2は、相関係数rを表示部5に表示することで操作者Uに向けて相関係数rを視覚的に提示してもよい。この場合、制御部2は、相関係数rの現在値と共に図3に示すような複数のRR間隔と複数のPWTTとの間の関係を示すグラフを表示部5に表示させてもよい。また、制御部2は、図示しないプリンターを通じて操作者Uに向けて相関係数rを提示してもよい。また、制御部2は、図示しないスピーカを通じて操作者Uに向けて可聴的に相関係数rを提示してもよい。
【0028】
次に、ステップS5において、制御部2は、相関係数rが所定の閾値rthを超えたかどうかを判定する。ここで、所定の閾値rthは、例えば-0.2である。また、所定の閾値rthは、医療機関側において適宜設定可能であってもよい。ステップS5の判定結果がYESの場合、本処理はステップS6に進む。一方、ステップS5の判定結果がNOの場合、本処理は終了する。
【0029】
ステップS5の判定結果がYESの場合、制御部2は、相関係数rが所定の閾値rthを超えたことを操作者Uに向けて通知する(ステップS6)。例えば、制御部2は、相関係数rが表示された表示部5の表示画面の視覚的態様を変更してもよい。より具体的には、制御部2は、表示画面に表示された相関係数rを点滅させてもよいし、相関係数rの表示色を変更してもよい。また、相関係数rが所定の閾値rthを超えたことを示す警告マークが表示画面上に表示されてもよい。また、制御部2は、スピーカを通じて相関係数rが所定の閾値rthを超えたことを示す警告音や警告案内を可聴的に操作者Uに向けて提示してもよい。
【0030】
このように、本実施形態に係る生体情報処理方法の一連の処理が実行される。尚、図2に示す処理は、所定期間毎(例えば、1秒毎)に繰り返し実行されてもよい。
【0031】
一般的に、RR間隔が減少すると一回拍出量が減少する一方、RR間隔が増加すると一回拍出量が増加する。このように、RR間隔と一回拍出量との間には正の相関関係がある。さらに、一回拍出量が減少するとPWTTが増加する一方、一回拍出量が増加するとPWTTは減少する。このように、一回拍出量とPWTTとの間には負の相関関係がある。従って、RR間隔と一回拍出量との間には正の相関関係がある一方で、一回拍出量とPWTTとの間には負の相関関係があるため、RR間隔とPWTTとの間には負の相関関係がある。
【0032】
ところで、RR間隔とPWTTとの間の負の相関関係は、被検者Pの心臓に流入する血液量に依存する。つまり、心臓に流入する血液量が少ない場合には、RR間隔とPWTTとの間の負の相関関係が顕著に出現する一方で、心臓に流入する血液量が多い場合には、RR間隔とPWTTとの間の負の相関関係が出現しない。
【0033】
つまり、RR間隔とPWTTとの間において負の相関関係が強く出現する場合(つまり、相関係数rが所定の閾値rthよりも小さい場合)には、被検者Pの心臓に流入する血液量が少ないと考えられるため、被検者Pに対して更なる輸液を投与するべきであると判断することが可能となる。一方、RR間隔とPWTTとの間において負の相関関係が出現しない場合(つまり、相関係数rが所定の閾値rth以上である場合)には、心臓に流入する血液量が多いと考えられるため、被検者Pに対して更なる輸液を投与するべきでないと判断することが可能となる。
【0034】
このように、本願発明の発明者は、RR間隔とPWTTとの間の相関関係に着目することで医療従事者による輸液投与判断を支援することが可能である点を新たに発見した。また、本実施形態によれば、複数のRR間隔と複数のPWTTとの間の相関係数rが演算された上で、前記演算された相関係数rが操作者Uに向けて提示される。このため、操作者U(医療従事者)は、相関係数rを確認することで、被検者Pに対して更なる輸液を投与するべきかどうかを判断することができる。このように、脈波データと心電図データの2つの異なる生体情報データを通じて操作者Uによる輸液投与判断を支援することが可能な生体情報処理方法及び処理装置1を提供することができる。
【0035】
さらに、本実施形態によれば、相関係数rが所定の閾値rthを超えたことが操作者Uに向けて通知されるので、操作者Uは、当該通知により相関係数rが所定の閾値rthを超えたことを迅速且つ確実に把握することができるため、被検者Pに対して更なる輸液の投与を行うべきでないと迅速に判断することが可能となる。
【0036】
尚、本実施形態では、複数のRR間隔と複数のPWTTとの間の相関関係に関連付けられたパラメータの一例として相関係数rが演算されているが、相関係数rの代わりに複数のRR間隔と複数のPWTTとの間の相関関係を示す回帰直線の傾きaが演算されてもよい。特に、複数のRR間隔が正規分布していない場合には、制御部2は、複数のRR間隔と複数のPWTTとの間の相関関係に関連付けられたパラメータとして回帰直線の傾きaを用いてもよい。例えば、制御部2は、以下の式(2)に基づいて回帰直線の傾きaを演算してもよい。
【0037】
傾きaが使用される場合に、ステップS5において、制御部2は、傾きaが所定の閾値athを超えたかどうかを判定する。ここで、所定の閾値athは、例えば-0.025となる。また、所定の閾値athは、医療機関側において適宜設定可能であってもよい。さらに、複数のRR間隔と複数のPWTTとの間の相関関係に関連付けられたパラメータとしてCCC(Concordance Correlation Coefficient)が用いられてもよい。特に、RR間隔とPWTTの変化が小さく、RR間隔とPWTTの生理的な変動やアーチファクトの影響を排除する場合にCCCが使用されてもよい。
【0038】
また、本実施形態では、相関係数rが所定の閾値rthを超えたことが操作者Uに向けて通知されているが、本実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、制御部2は、相関係数rが所定の閾値rthを超えたときに、相関係数rが所定の閾値rthを超えたことを操作者Uに向けて通知すると共に(又は当該通知の代わりに)、被検者Pへの輸液の投与が自動的に停止されるように輸液投与制御回路(図示せず)を制御してもよい。ここで、輸液投与制御回路は、被検者Pに投与される輸液の量を制御するように構成されている。輸液投与制御回路は、被検者Pに投与される輸液量を調整するように構成された輸液量調整機構に電気的に接続されている。例えば、相関係数rが所定の閾値rthを超えたときに、制御部2は、輸液の投与を停止することを指示するための停止指示信号を生成した上で、当該停止指示信号を輸液投与制御回路に送信する。輸液投与制御回路は、停止指示信号の受信に応じて被検者Pに輸液が投与されないように輸液量調整機構の駆動を制御する。
【0039】
また、本実施形態に係る処理装置1をソフトウェアによって実現するためには、生体情報処理プログラムが記憶装置3又はROMに予め組み込まれていてもよい。または、生体情報処理プログラムは、磁気ディスク(例えば、HDD、フロッピーディスク)、光ディスク(例えば、CD-ROM,DVD-ROM、Blu-ray(登録商標)ディスク)、光磁気ディスク(例えば、MO)、フラッシュメモリ(例えば、SDカード、USBメモリ、SSD)等のコンピュータ読取可能な記憶媒体に格納されていてもよい。この場合、記憶媒体に格納された生体情報処理プログラムが記憶装置3に組み込まれてもよい。さらに、記憶装置3に組み込まれた当該プログラムがRAM上にロードされた上で、プロセッサがRAM上にロードされた当該プログラムを実行してもよい。このように、本実施形態に係る生体情報処理方法が処理装置1によって実行される。
【0040】
また、生体情報処理プログラムは、通信ネットワーク上のコンピュータからネットワークインターフェース4を介してダウンロードされてもよい。この場合も同様に、ダウンロードされた当該プログラムが記憶装置3に組み込まれてもよい。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではない。本実施形態は一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0042】
1:生体情報処理装置(処理装置)
2:制御部
3:記憶装置
4:ネットワークインターフェース
5:表示部
6:入力操作部
7:センサインターフェース
8:バス
20:心電図センサ
22:脈波センサ
図1
図2
図3