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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】メタン発酵装置およびメタン発酵方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/60 20220101AFI20230208BHJP
   C02F 11/04 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
B09B3/60 ZAB
C02F11/04 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018139002
(22)【出願日】2018-07-25
(65)【公開番号】P2020014993
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】595011238
【氏名又は名称】クボタ環境エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100117972
【弁理士】
【氏名又は名称】河崎 眞一
(74)【代理人】
【識別番号】100190713
【弁理士】
【氏名又は名称】津村 祐子
(74)【代理人】
【識別番号】100197549
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昌三
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】野村 和利
【審査官】田名部 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-086157(JP,A)
【文献】特開平06-246298(JP,A)
【文献】実開昭61-064331(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00- 5/00
B09C 1/00- 1/10
C02F 11/00ー 11/20
C02F 3/28ー 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオガスを発生させる発酵液を収容するとともに、発酵適物の加水分解、酸発酵およびメタン発酵を進行させる発酵槽と、
前記発酵槽の下方より前記発酵液を循環液として引き抜いてから前記発酵槽に戻す循環ルートと、
前記発酵槽内の前記発酵液の液面よりも上方から前記循環液を放出して、前記発酵液の上層に水平方向の旋回流を発生させる上部吹出口と、
前記発酵槽内の前記発酵液の液面よりも下方から前記循環液を放出して、前記発酵液の前記上層よりも下方の中間層に水平方向の旋回流を発生させる液中吹出口と、を具備し、
前記上部吹出口が、第1吹出口Aと第2吹出口Bとを有し、
前記第1吹出口Aから放出される前記循環液により発生する水平方向の旋回流と、前記第2吹出口Bから放出される前記循環液により発生する水平方向の旋回流とが、上方から見たときに逆方向であり、かつ、前記第1吹出口Aからの前記循環液の放出と、前記第吹出口Bからの前記循環液の放出と、を切り替え可能に構成され、
前記液中吹出口が、第1吹出口Cと第2吹出口Dとを有し、
前記第1吹出口Cから放出される前記循環液により発生する水平方向の旋回流と、前記第2吹出口Dから放出される前記循環液により発生する水平方向の旋回流とが、上方から見たときに逆方向であり、かつ、前記第1吹出口Cからの前記循環液の放出と、前記第吹出口Dからの前記循環液の放出と、を切り替え可能に構成されている、メタン発酵装置。
【請求項2】
前記上部吹出口からの前記循環液の放出と、前記液中吹出口からの前記循環液の放出と、を切り替え可能に構成されている、請求項1に記載のメタン発酵装置。
【請求項3】
(i)発酵液を収容する発酵槽内で発酵適物の加水分解、酸発酵およびメタン発酵を進行させてバイオガスを発生させる工程と、
(ii)前記発酵槽の下方より前記発酵液を循環液として引き抜く工程と、
(iii)前記発酵液の液面よりも上方に位置する上部吹出口から前記循環液を放出して前記発酵液の上層に水平方向の旋回流を発生させる工程と、
(iv)前記発酵液の液面よりも下方に位置する液中吹出口から前記循環液を放出して前記発酵液の前記上層よりも下方の中間層に水平方向の旋回流を発生させる工程と、
(v)前記発酵液の上層に水平方向の旋回流を発生させる工程において発生させる旋回流の向きを変更する工程と、
(vi)前記発酵液の前記上層よりも下方の中間層に水平方向の旋回流を発生させる工程において発生させる旋回流の向きを変更する工程と、
を具備する、メタン発酵方法。
【請求項4】
前記上部吹出口から前記循環液を放出する工程(iii)と、前記液中吹出口から前記循環液を放出する工程(iv)と、を切り替える工程を有する、請求項に記載のメタン発酵方法。
【請求項5】
有機物を含む固形廃棄物を前記発酵槽内に導入し、前記固形廃棄物を前記発酵適物として利用する、請求項またはに記載のメタン発酵方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば紙ごみのような有機物を含む固形廃棄物をメタン発酵槽に導入するメタン発酵装置およびメタン発酵方法に関する。
【背景技術】
【0002】
湿式のメタン発酵システムでは、例えば分別された生ごみが可溶化槽に貯留される。可溶化槽では、生ごみの加水分解と酸発酵(すなわち可溶化)が進行し、有機酸を含むスラリーが得られる。その後、スラリーはメタン発酵槽に送られ、メタン発酵槽内で嫌気性微生物により分解される。このとき生成するバイオガスは、一般に約60vol%のメタンと約40vol%の二酸化炭素とを含み、エネルギー源として有用である。
【0003】
廃棄物を減容化するとともにバイオガスの生成量を増加させる観点から、生ごみだけでなく、紙ごみのような有機物を含む固形廃棄物をスラリー原料に用いることが望ましい。例えば、特許文献1は、有機性固形廃棄物を槽内で発酵液に浸漬させつつ可溶化し、バイオガスにまで分解することを提案している。
【0004】
一方、特許文献2は、原汚泥を嫌気性消化する消化槽に循環管とポンプを設けた汚泥処理システムにおいて、消化槽内の汚泥を効率的に撹拌する観点から、循環管を、消化槽内の上部で開口している上側循環配管、消化槽内の下部で開口している下側循環配管、および先端に吐出口を有し、汚泥に水平流を発生させる吐出配管から構成し、ポンプを消化槽外に配設することを提案している。特許文献2は、消化槽内の汚泥の混合を促進し、汚泥の温度を均一化し、汚泥中から消化ガスを放散させ、汚泥面のスカムを破砕し、汚泥中の土砂、し渣などが堆積することを防止することを意図している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-86157号公報
【文献】特開2007-229600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
固形廃棄物から分別される発酵適物を用いるメタン発酵システムでは、バイオガスの生成量を顕著に増加させることができる。
【0007】
しかし、有機物を含む固形廃棄物から分別される発酵適物は、比重の異なる多様な物質を含み、発酵液の液面に浮上物、発酵液中に浮遊物、発酵槽底部に沈降物として滞留する。そこで、浮上物および浮遊物を攪拌して、発酵適物の発酵を促進することが望まれる。しかし、発酵槽の内容物を全体的に攪拌することは、技術的にもエネルギー消費量の観点からも困難である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面は、バイオガスを発生させる発酵液を収容するとともに、発酵適物の加水分解、酸発酵およびメタン発酵を進行させる発酵槽と、前記発酵槽の下方より前記発酵液を循環液として引き抜いてから前記発酵槽に戻す循環ルートと、前記発酵槽内の前記発酵液の液面よりも上方から前記循環液を放出して、前記発酵液の上層に水平方向の旋回流を発生させる上部吹出口と、前記発酵槽内の前記発酵液の液面よりも下方から前記循環液を放出して、前記発酵液の前記上層よりも下方の中間層に水平方向の旋回流を発生させる液中吹出口と、を具備する、メタン発酵装置に関する。
【0009】
本発明の別の側面は、(i)発酵液を収容する発酵槽内で発酵適物の加水分解、酸発酵およびメタン発酵を進行させてバイオガスを発生させる工程と、(ii)前記発酵槽の下方より前記発酵液を循環液として引き抜く工程と、(iii)前記発酵液の液面よりも上方に位置する上部吹出口から前記循環液を放出して前記発酵液の上層に水平方向の旋回流を発生させる工程と、(iv)前記発酵液の液面よりも下方に位置する液中吹出口から前記循環液を放出して前記発酵液の前記上層よりも下方の中間層に水平方向の旋回流を発生させる工程と、を具備する、メタン発酵方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るメタン発酵装置およびメタン発酵方法によれば、固形廃棄物を原料に用いてバイオガスを発生させる場合に、発酵槽の内容物の攪拌効率を向上させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るメタン発酵システムの一例の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係るメタン発酵装置の一例の構成を示す模式図である。
図3A】上方から見た同メタン発酵装置の上部吹出口の配置例を示す模式図である。
図3B】上方から見た同メタン発酵装置の液中吹出口の配置例を示す模式図である。
図4】発酵液中を浮遊する発酵不適物を除去する分離装置の一例の模式図である。
図5】原料廃棄物を分別する前処理装置の一例の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係るメタン発酵装置には、固形廃棄物が原料として発酵槽内に導入される。発酵槽内では、固形廃棄物中の発酵適物の加水分解、酸発酵およびメタン発酵が進行し、バイオガスが生成される。すなわち、メタン発酵装置は、バイオガスを発生させる発酵液を収容するとともに、発酵適物の加水分解、酸発酵およびメタン発酵を進行させる発酵槽を具備する。
【0013】
本実施形態に係るメタン発酵装置は、発酵適物の酸発酵を促すための可溶化槽を具備しないメタン発酵システムの構築を可能にし得る。湿式のメタン発酵システムでは、分別された生ごみを貯留し、生ごみの加水分解と酸発酵を進行させる可溶化槽が通常設置される。一方、本実施形態に係るメタン発酵装置では、固形廃棄物が原料として発酵槽内に導入される。固形廃棄物は、事前に発酵不適物の一部が除去された原料廃棄物として供給される。原料廃棄物は、発酵槽から部分的に取り出された発酵液と混合される。こうして得られる原料廃棄物を含む流動物がメタン発酵槽に導入される。
【0014】
固形廃棄物は、発酵適物を含み、多少の発酵不適物を含み得る。固形廃棄物は、例えば、家庭から出される一般ごみであってもよい。一般ごみに含まれる発酵不適物は予め十分に分別される。
以下、メタン発酵の原料として用いる固形廃棄物を、原料廃棄物と称する。
【0015】
発酵液とは、発酵適物の加水分解と酸発酵を経た後、メタン発酵を促進する菌体による消化分解を経て得られた液状物である。
【0016】
発酵適物とは、加水分解および酸発酵(すなわち可溶化)を経てメタン発酵により分解され得る有機物をいう。発酵適物としては、例えば、生ごみ、紙ごみ、生分解性プラスチックなどが挙げられるが、特に限定されない。
【0017】
発酵不適物とは、可溶化に適さない材料であり、例えば、金属、プラスチック、鉱物、貝殻類などが挙げられる。発酵不適物は、予め十分に分別される場合でも、原料廃棄物に混在し得る。このような発酵不適物は、適宜、装置系内から分別により除去される。
【0018】
本発明に係るメタン発酵装置は、バイオガスを発生させる発酵液を収容するとともに、発酵適物の加水分解、酸発酵およびメタン発酵を進行させる発酵槽と、発酵槽の下方より発酵液を循環液として引き抜いてから発酵槽に戻す循環ルートと、発酵槽内の発酵液の液面よりも上方から循環液を放出して、発酵液の上層に水平方向の旋回流を発生させる上部吹出口と、発酵槽内の発酵液の液面よりも下方から循環液を放出して、発酵液の上層よりも下方の中間層に水平方向の旋回流を発生させる液中吹出口とを具備する。
【0019】
また、本発明に係るメタン発酵方法は、(i)発酵液を収容する発酵槽内で発酵適物の加水分解、酸発酵およびメタン発酵を進行させてバイオガスを発生させる工程と、(ii)発酵槽の下方より発酵液を循環液として引き抜く工程と、(iii)発酵液の液面よりも上方に位置する上部吹出口から循環液を放出して発酵液の上層に水平方向の旋回流を発生させる工程と、(iv)発酵液の液面よりも下方に位置する液中吹出口から循環液を放出して発酵液の上層よりも下方の中間層に水平方向の旋回流を発生させる工程とを具備する。
【0020】
発酵液の上層とは、発酵槽の底面から発酵液の液面までの距離をHとするとき、液面から例えば1/5H~1/3Hの深さまでの領域と定義される。中間層は、上層より深く、かつ発酵槽の下方より発酵液を循環液として引き抜く循環ルートの最上流(すなわち発酵槽からの循環液の出口)より上方と定義される。
【0021】
固形廃棄物は、発酵適物と発酵不適物とを含み、発酵適物および発酵不適物の両方がそれぞれ発酵液の液面に浮上しやすい原料、液中を浮遊物しやすい原料および発酵槽の底部に沈降しやすい原料を含んでいる。発酵液の液面に浮上しやすい原料は、液面にスカム(SCUM)として滞留する。スカムには、軽比重の発酵不適物の他に、発酵適物も含まれている。滞留するスカムを放置すると、発酵適物の発酵量が少なくなるだけでなく、スカムが固化して液面を覆ってしまい、バイオガスの放出を妨げる。また、液中浮遊物の多くは発酵適物であるが、高比重の発酵不適物と絡まり合って浮遊している。発酵液の攪拌が不十分になると、高比重の発酵不適物(貝殻、砂利等)とともに発酵適物が発酵槽の底部に沈降し、発酵適物の発酵量が少なくなる。しかし、これらの材料を均一に攪拌するためには、大きなエネルギーが必要であり、発酵槽内に多くの配管と機器類を設置する必要もあり、コストとメンテナンスの面で困難が伴う。
【0022】
これに対し、上部吹出口から放出される循環液を液面に叩きつけることにより、液面に滞留するスカムが破砕されるとともに、発酵液の上層に旋回流が発生する。破砕されたスカムは、叩きつけ効果によって液中の旋回流に巻き込まれて発酵液で湿潤化し、発酵適物の可溶化と発酵が促進される。
【0023】
液中吹出口から放出される循環液は、発酵液の中間層に強い旋回流を発生させる。これにより中間層に存在する液中浮遊物が効率的に攪拌され、発酵適物と発酵不適物との絡まり合いが解消され、高比重の発酵不適物の分離と選択的な沈降が促進される。
【0024】
なお、発酵槽の下方から引き抜いた循環液を発酵液の上層に放出すれば、発酵液が全体的に攪拌されるため、一般的には攪拌効率が高められると考えられている。しかし、実際には、高い攪拌効率を得ることは困難であり、発酵適物と発酵不適物との分離が不十分になりやすい。その場合、高比重の発酵不適物とともに発酵適物が沈降しやすくなり、引き抜かれ、廃棄処理される沈降汚泥に発酵適物が多く含まれ、メタンガス発生量が少なくなる。
【0025】
適宜のタイミングで、上部吹出口111からの循環液の放出と、液中吹出口112からの循環液の放出とを適宜切り替えて、どちらか一方から循環液を放出させてもよい。このような切り替えが可能となるようにメタン発酵装置を構成することで、循環液を循環させるための駆動ポンプが1台であっても両方の吹出口から循環液を放出できるようになり、メタン発酵装置の稼働コストを低減できる。また、上部吹出口111から循環液を放出して発酵適物を含む浮遊物を液中に沈めた後、液中吹出口112から循環液を放出することで、発酵不適物の浮上と沈降を促進することができる。また、適宜のタイミングで、上部吹出口111および液中吹出口112の両方から循環液を放出させてもよい。これにより、発酵槽内の発酵適物の発酵が促進されるとともに、発酵不適物の分別と回収が更に容易になる。
【0026】
上部吹出口は、1つだけ設けてもよく、複数設けてもよい。中でも上部吹出口が第1吹出口Aと第2吹出口Bとを有し、第1吹出口Aから放出される循環液により発生する旋回流と、第2吹出口Bから放出される循環液により発生する旋回流とが、上方から見たときに逆方向である態様が好ましい。第1吹出口Aおよび第2吹出口Bは、それぞれ1つだけ設けてもよく、複数設けてもよい。第1吹出口Aおよび第2吹出口Bをそれぞれ複数設ける場合、液面から各吹出口までの高さを異ならせてもよい。これにより、様々な旋回流を生じさせ得るようになる。
【0027】
同様に、液中吹出口は、1つだけ設けてもよく、複数設けてもよい。中でも液中吹出口が第1吹出口Cと第2吹出口Dとを有し、第1吹出口Cから放出される循環液により発生する旋回流と、第2吹出口Dから放出される循環液により発生する旋回流とが、上方から見たときに逆方向である態様が好ましい。第1吹出口Cおよび第2吹出口Dは、それぞれ1つだけ設けてもよく、複数設けてもよい。第1吹出口Cおよび第2吹出口Dをそれぞれ複数設ける場合、液面から各吹出口までの高さを異ならせてもよい。これにより、様々な旋回流を生じさせ得るようになる。
【0028】
発酵槽の内壁を上方から見たとき、循環液は、上部吹出口および液中吹出口から内壁の接線方向と所定角度を成す方向に放出される。また、上部吹出口および液中吹出口を、発酵槽内の発酵液の液面と平行な方向から見たとき、循環液は、上部吹出口および液中吹出口から液面と所定角度を成す方向に放出される。
【0029】
ここで、内壁の接線方向とは、発酵槽の内壁を上方から見たとき、上部吹出口または液中吹出口と発酵槽の中心とを結ぶ径方向の線分と発酵槽の内壁との交点における、当該内壁の接線方向を意味する。発酵槽の内壁を上方から見たときの形状は、円形もしくは略円形であることが好ましいが、特に限定されない。発酵槽の内壁を上方から見たときの形状は、楕円形、多角形(五角形、六角形、七角形、八角形等)などでもよい。多角形の頂点における接線方向は、当該頂点を形成する2本の線分のいずれの接線方向でもよい。略円形とは、概ね円形と見なせる形状であり、例えば円形度が0.9以上の形状である。通常、このような筒状の発酵槽を縦型発酵槽とも称する。
【0030】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら更に説明する。ただし、以下の実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0031】
図1に、本発明に係るメタン発酵装置100を含むメタン発酵システム10の一例の構成を示す。メタン発酵システム10は、発酵液Lを収容する発酵槽110を具備するメタン発酵装置100と、発酵槽110から引き抜かれた発酵液Lと原料廃棄物Cとを混合して流動物Sを得る混合部120と、発酵槽110から取り出された発酵液Lを混合部120に送る第1引き抜きルートR11と、流動物Sを混合部120から発酵槽110に送る投入ルートR2とを具備する。
【0032】
メタン発酵装置100は、発酵液Lを発酵槽110の下方より引き抜いてから上方に戻す循環ルートR3を有する。発酵槽110の下方には、発酵液Lを抜き取る第一吐出口114が設けられている。発酵液Lは、循環ルートR3に設けられた第1ポンプ(ヒドロスタル)P1の駆動力によって第一吐出口114から引き抜かれて上方に送られる。発酵液Lを循環させることで、発酵槽110内の発酵適物の発酵が促進されるとともに、発酵不適物の分別と回収が容易になる。
【0033】
循環ルートR3の下流端部は二股に分岐しており、2つの分岐路は、それぞれ循環ルートR3を通過した発酵液Lを発酵槽110に放出する上部吹出口111および液中吹出口112を有する。上部吹出口111の上流側および液中吹出口112の上流側には、それぞれバルブV1およびV2が設けられている。
【0034】
発酵槽110は、縦型の円筒状容器であり、内部が嫌気性雰囲気に維持されるように密閉性を有する。発酵槽110は、発酵不適物を沈降させるデッドスペースを有してもよい。デッドスペースに沈降する高比重物は、第一底部出口113から適宜に外部に排出して除去される。第一底部出口113は、例えば掻き寄せ排出機構を有することが好ましい。
【0035】
図1では、第1引き抜きルートR11および第2引き抜きルートR12の上流側と循環ルートR3の上流側とが共通の配管により構成されている。発酵液Lは、循環ルートR3に設けられた第1ポンプP1の駆動力により発酵槽110の下方から引き抜かれる。第1引き抜きルートR11および第2引き抜きルートR12は、第一分岐点T1で循環ルートR3から分岐している。第一分岐点T1の下流に設けられたバルブV3と第1引き抜きルートR11に設けられたバルブ10とを開き、第2引き抜きルートR12に設けられたバルブ11を閉じることにより、発酵液Lが第1引き抜きルートR11を通って混合部120に送られる。バルブV3およびV10を開いたままで、発酵液Lの発酵槽110内での循環と発酵液Lの混合部120への供給とを並行して行ってもよい。このような並行動作は一定期間にわたり連続的に行い得る。
【0036】
混合部は、原料廃棄物Cと発酵液Lとを混合して、原料廃棄物Cに流動性を持たせ、発酵槽110内での原料廃棄物Cの分散性を向上させるとともに流動物Sから空気を脱気するという意義を有する。混合部における流動物の滞留時間は、0.5日より短くてもよく、例えば3時間以下もしくは2時間以下であり、0.5時間以下であってもよい。原料廃棄物Cは、混合部120で発酵液Lと混合攪拌され、液状もしくはスラリー状に分散させた後、気密性が保たれた発酵槽110に導入もしくは移送される。混合部から発酵槽に送られる流動物は、酸発酵は多少進み得るが、少なくとも大きくは進んでいない。流動物中の発酵適物の加水分解および酸発酵は、メタン発酵が行われる発酵槽内で進行する。
【0037】
混合部120内の流動物Sは、第2ポンプP2(破砕ポンプ)の駆動力により引き抜かれる。流動物Sは、投入ルートR2を通過し、バルブV4を介して発酵槽110に戻される。投入ルートR2をバルブV4の上流側で分岐させ、分岐路を循環ルートR3と第二分岐部T2で合流させてもよい。第二分岐部T2の上流側のバルブV6を開くことで、流動物Sは循環ルートR3に合流し、上部吹出口111および/または液中吹出口112から発酵槽110に放出される。このとき、発酵液Lの発酵槽110内での循環と、流動物Sの発酵槽110への供給とが並行して行われてもよい。このような並行動作は一定期間にわたり連続的に行い得る。第二分岐部T2は第一分岐部T1よりも循環ルートR3の下流側に設ければよい。これにより、混合部120で得られた流動物Sの第2引き抜きルートR12への逆流を防止できる。よって、後述するような分離装置300を設ける場合でも、流動物S中の発酵適物が除かれることが防止される。
【0038】
バッチ方式でメタン発酵を行う場合、流動物Sを発酵槽110に導入した後、発酵が完了するまではバルブV3を閉じてもよい。
【0039】
メタン発酵システム100は、水蒸気を発酵槽110に導入する蒸気入口を有してもよい。水蒸気は、発酵槽110の内部を、例えば50~60℃の適正温度範囲内に維持するための熱源として発酵槽110に導入される。水蒸気は、発酵液Lのアンモニア濃度もしくは有機酸濃度を制御する希釈水としても機能する。紙ごみのような固形廃棄物を用いる場合、発酵液のアンモニア濃度が上昇しにくい。よって、外部から希釈水を追加する必要はなく、発酵槽内の発酵液量は、比較的長期にわたり適正範囲内に維持される。なお、発酵槽110の内部を適正温度範囲内に維持する方法として、蒸気による加温以外の方法を用いてもよい。
【0040】
発酵槽110に送られた発酵適物は、発酵槽110内の制限されたスペースで、順次、加水分解される。発酵槽110とは別に、発酵適物の加水分解および酸発酵を進行させるための可溶化槽を設置する必要はない。上記メタン発酵装置100では、発酵適物の可溶化に必要なスペースが大幅に削減される。これに伴い、必要機器点数およびエネルギー消費量も削減される。以上により、メタン発酵システム10の構築と運営に必要なコストが削減される。
【0041】
発酵槽110内に導入される発酵適物量は、発酵槽110内の有機酸量に影響を与える。発酵槽110内の発酵適物量は、混合部120から発酵槽110に送る流動物Sの量を制御することで調整可能である。発酵槽110内の発酵液Lの有機酸濃度は、混合部120から発酵槽110に送る流動物Sの量を適正に制御することで適正範囲内に維持される。
【0042】
混合部120には、空気を内包する有機物を含む固形廃棄物が導入されるため、混合部120の内部を良好な嫌気性雰囲気に維持することは困難である。ただし、混合部120の容積を発酵槽110の容積よりも大幅に小さくすれば、混合部120に送られて空気と接触する発酵液量は制限される。混合部120の容積を発酵槽110の容積の20%以下とすれば、発酵槽110から過剰の発酵液Lが抜き取られることもなく、発酵液量の増減変化が小さくなる。混合部120の容積は、例えば、発酵槽110の容積の20%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。
【0043】
混合部120で流動物Sを得る場合、発酵液100質量部に対して混合される原料廃棄物Cの量は、10~50質量部が好ましく、10~30質量部がより好ましい。原料廃棄物Cの性状、物性、含水率によっては流動性を増す目的で外部から水を追加する必要はない。十分な流動性を有する流動物Sを得ることで、配管の詰まりなどの様々な不具合の発生率が低減される。配管の詰まりを更に抑制するには、流速を大きくする対策を講じる他、横方向の配管勾配、-45°~+45°の勾配とすることが好ましい。加えて、配管内堆積物を保留させる任意配管(トラップ配管部)を併設することが好ましい。
【0044】
発酵槽110は、基本的にその内部が大気との接触を遮断する構造である。発酵液Lへの日光照射も抑制する必要がある。一方、発酵槽110の内部状況、すなわち発酵槽110内における浮上性ごみ(スカム(SCUM))発生状況、発酵液L中の夾雑物濃度、発酵液LのpH値などを把握する必要もある。混合部120は、このような状況把握のための発酵液Lのモニタリング部としての機能も果たす。この場合、後述するような分離装置300を設ける場合でも、発酵液Lは第一分岐部T1から分離装置300をバイパスして混合部120に送られる。
【0045】
図2図3に、発酵槽110が備える上部吹出口111および液中吹出口112の配置例を示す。図2は発酵槽110の内部を正面から、図3Aは上部吹出口111を上方から、図3Bは液中吹出口112を上方から見た図である。
【0046】
発酵槽110内の発酵液Lの液面から1/5H~1/3Hの深さまでの領域は上層LUPである。中間層LMは、上層LUPより深い領域であり、循環ルートR3のスタート地点(発酵槽110からの循環液の出口:第一吐出口)より上方である。より深い領域は下層LUDであり、高比重の発酵不適物(SED)を沈降させるデッドスペースを有する。沈降した発酵不適物SEDは、スクレイパ(掻き寄せ排出機構)117により発酵槽110の底部でかき集められ、第一底部出口113から適宜に外部に排出して除去される。第一底部出口113は、例えば二重ダンパ構造とすることが好ましい。
【0047】
発酵槽110は、原料廃棄物Cを含む流動物Sを発酵槽110内に導入する原料入口116と、水蒸気HOを発酵槽110内に導入する蒸気入口115とを有する。水蒸気HOは、発酵槽110の内部を、例えば50~60℃の温度範囲内に維持するための熱源として発酵槽110に導入される。水蒸気HOは、発酵液Lの希釈水としても機能する。
【0048】
図2図3Aが示すように、上部吹出口111は、循環液を水平方向と-α1°からα1°の角度を成す方向に、また、内壁の接線方向と-θ1°からθ1°の角度を成す方向に放出する。ここで、α1およびθ1は、それぞれ90°未満であればよいが、60°以下が好ましく、30°以下がより好ましく、10°以下が最も好ましい。α1およびθ1が小さいほど、発酵槽110内の発酵液Lに強い旋回流を発生させやすくなる。
【0049】
発酵液Lの液面から上部吹出口111の下端までの距離D1は、例えば0~3mであればよく、10cm~100cmが好ましい。これにより、効果的にスカムを破砕でき、かつ強力な旋回流を生じやすくなる。上部吹出口111を上方から見たとき、発酵槽110の中心から上部吹出口111までの距離r1は、強い旋回流を発生させやすくする観点から、発酵槽110の中心から発酵槽110の内壁までの距離rの例えば80%以上とすればよい。
【0050】
上部吹出口111から放出される循環液は、広範囲のスカムに叩きつけられ、スカムを破砕するため、スカムの湿潤化と、スカムによるガス滞留の抑制に非常に効果的である。これにより、発酵適物の発酵が促進されるとともに、発酵槽10で発生するバイオガスの回収が容易になる。
【0051】
図3Aに示すように、2つの上部吹出口111を、第1吹出口111Aおよび第2吹出口111Bとして設けてもよく、3つ以上の上部吹出口を設けてもよい。上部吹出口111を2つ以上設ける場合、発酵槽110の内壁に沿って概ね等間隔で2つ以上の上部吹出口を設置することが好ましい。この場合、循環ルートR3の上部吹出口への導入部分を分岐させ、任意の1つの上部吹出口から選択的に、または複数の上部吹出口から同時に循環液を放出させてもよい。第1吹出口111Aおよび第2吹出口111Bを設ける場合、第1吹出口111Aからの循環液の放出方向と、第2吹出口111Bからの循環液の放出方向とを、逆方向にしてもよい。これにより、発酵槽110内の発酵液Lに任意の方向の旋回流を生じさせることが可能となり、攪拌効率を向上させることができる。なお、上部吹出口を発酵槽の高さ方向に沿って複数設け、任意の高さから液面に向かって循環液を放出できるようにしてもよい。
【0052】
図2図3Bが示すように、液中吹出口112は、発酵液Lの中間層に対して、循環液を水平方向と-α2°からα2°の角度を成す方向に、また、内壁の接線方向と-θ2°からθ2°の角度を成す方向に放出する。ここで、α2°およびθ2°は、それぞれ90°未満であればよいが、60°以下が好ましく、30°以下がより好ましく、10°以下が最も好ましい。α2°およびθ2°が小さいほど、発酵槽110内の発酵液Lに強い旋回流を発生させやすくなる。
【0053】
発酵液Lの液面から液中吹出口112の上端までの距離D2は、例えば3/10H~8/10Hであればよく、4/10H~6/10Hが好ましい。これにより、効果的に液中浮遊物を攪拌でき、高比重の発酵不適物を発酵槽の底部からより回収しやすくなる。発酵槽の底部に沈降した発酵不適物は、発酵槽の底部の所定箇所から排出される。液中吹出口112を上方から見たとき、発酵槽110の中心から液中吹出口112までの距離r2は、強い旋回流を発生させやすくする観点から、発酵槽110の中心から発酵槽110の内壁までの距離rの例えば80%以上とすればよい。
【0054】
図3Bに示すように、2つの液中吹出口112を、第1吹出口112Cおよび第2吹出口112Dとして設けてもよく、3つ以上の液中吹出口を設けてもよい。液中吹出口112を2つ以上設ける場合、発酵槽110の内壁に沿って概ね等間隔で2つ以上の液中吹出口を設置することが好ましい。この場合、循環ルートR3の液中吹出口への導入部分を分岐させ、任意の1つの液中吹出口から選択的に、または複数の液中吹出口から同時に循環液を放出させてもよい。第1吹出口112Cおよび第2吹出口112Dを設ける場合、第1吹出口112Cからの循環液の放出方向と、第2吹出口112Dからの循環液の放出方向とを、逆方向にしてもよい。これにより、発酵槽110内の発酵液Lに任意の方向の旋回流を生じさせることが可能となり、攪拌効率を向上させることができる。なお、液中吹出口を発酵槽の高さ方向に沿って複数設け、中間層の任意の深さに循環液を放出できるようにしてもよい。
【0055】
液中吹出口112から放出される循環液は、発酵液Lの中間層に選択的に強い旋回流を生じさせることができる。これにより、高比重物と軽比重物との絡まり合いが解消され、軽比重物の浮上、軽比重の発酵適物の発酵が促進され、高比重物の沈殿が促進される。所定の旋回流によって発酵槽110の底部に滞留した発酵不適物SEDは、その反対方向の旋回流を発生させると、底部で集積され、回収がより容易になる。
【0056】
発酵槽110内には、沈殿する高比重物、液面に浮遊する軽比重物の他に、発酵液L中を浮遊する発酵不適物(以下、液中浮遊物と称する。)が存在する。発酵槽110において液中浮遊物を分離することは困難である一方、有機固形物を含む原料廃棄物を用いると、発酵液における液中浮遊物量は増加する傾向にある。液中浮遊物は、配管の閉塞などの不具合の原因になる。
【0057】
浮遊性不適物は、発酵槽110から部分的または間欠的に取り出された発酵液Lを分離装置300により濾過して除去すればよい。図1のメタン発酵システムでは、第2引き抜きルートR12が分離装置300を通過するように構成されており、分離装置300で液中浮遊物が分離された後の発酵液(分離液FL)が混合部120に送られる。なお、浮遊性不適物を除去することが目的の場合、分離装置に送られる発酵液には原則として凝集剤等は添加しない。
以下、第2引き抜きルートR12のうち、分離装置300から混合部120までのルートを濾液ルートR4と称する。
【0058】
図4に、分離装置300の一例である回転円板式濃縮機の構成を示す。図4(a)には、分離装置300が具備する濾過部310と隙間自浄部320との関係を鳥瞰図として模式的に示す。隙間自浄部320は、複数の回転軸323と、回転軸323にそれぞれ固定され、その軸方向に沿って間隔を空けて配置された複数のディスク状回転体321とを具備する。図4(b)には、濾過部310と隙間自浄部320との関係を回転軸323に沿った断面図として模式的に示す。
【0059】
濾過部310は、発酵不適物の搬送方向に沿って延出配置された複数の帯状部315により形成され、隣接する帯状部315間にはスリット状隙間312Gが形成されている。複数の帯状部315の上端面がスリット状隙間312Gとともに濾過面311Sを形成している。図4(b)に、濾過面311Sのレベルを破線で示す。複数の回転軸323は、複数の帯状部315の下方に、それぞれ帯状部315の長手方向と交わるように軸支されている。複数のディスク状回転体321は、それぞれがスリット状隙間312G内で323回転軸の回転に伴って上下動する。
【0060】
ディスク状回転体321は、その偏心位置で回転軸323に固定されている。軸心方向で互いに隣接するディスク状回転体321は、回転軸323の回転に伴う上下動位相が一つのディスク321毎に180度異なっている。隣接する回転軸323間では、隣接するディスク状回転体321の上下動位相は同じである。回転軸323が、すべて同一方向に同速度で同期して回転するため、回転軸323が半回転する毎に、模式図内の左右に示した状態が交互に実現される。
【0061】
浮遊性不適物と分解途中の発酵適物とを分別することは一般的には困難であるが、分離装置300によれば、溶解せずに比較的大きいサイズを維持している不適物を選択的に除去することが可能である。発酵液Lは、分離装置300の濾過部310の上方から濾過面311Sの入口側端部に向けて流し込まれる。入口側端部は、隙間自浄部320の回転方向の後方端部である。比較的大きいサイズを有する浮遊性不適物は、濾過部310と隙間自浄部320との隙間を通過せず、濾過面311Sにトラップされる。トラップされた不適物は、隙間自浄部320の回転によって濾過面311Sを回転方向の前方に移動し、所定の出口に向けて搬送される。分離された不適物は残渣汚泥RCとして回収される。
【0062】
分離装置300では、隙間自浄部320が常時上下動しているため、濾過部310と隙間自浄部320との隙間が閉塞しにくい。一方、例えばメッシュタイプのスクリーンを用いると、メッシュが容易に目詰まりを起こす。
【0063】
分解途中のサイズの小さい発酵適物を含む発酵液Lは、隙間自浄部320と濾過部310との隙間を通過し、貯留槽170または混合物120に分離液FLとして回収される。
【0064】
分離液FLは、濾液ルートR4へ送らずに貯留槽170に回収してもよい。このとき分離装置300と混合部120との間の濾液ルートR4に設けられたバルブV5は閉じられ、貯留槽170と分離装置300との間に設けられたバルブV7が開かれる。貯留槽170に回収された分離液FLは、第3ポンプP3の駆動力により回収ルートR5とバルブV8を通過させて原料入口116などから発酵槽110に戻すか、発酵槽110の状態を適正に維持するために廃棄してもよい。分離液FLには、アンモニアなどの発酵阻害物質が蓄積されるため、逐次、部分的にメタン発酵システム外に排出することが望ましい。
【0065】
分離液FLを廃棄する際には、貯留槽170内の分離液FLに凝集剤を混合し、凝集剤を含む発酵液Lを、脱水ルートR6とバルブV9を通過させて脱水装置180に送り、残渣汚泥と脱水濾液に分離してから廃棄すればよい。
【0066】
分離装置300は、液中浮遊物の除去だけでなく、発酵槽110内の発酵適物の分解状態を確認する際にも利用できる。発酵の立ち上げ時、定常運転時などには、発酵槽110の内部を目視で確認することは困難であるが、分離装置300によれば発酵液中の適物の消化分解状態を濾過面311Sに残る浮遊性不適物を目視して明確に把握することができるため、原料廃棄物Cの供給量の制御が容易になる。
【0067】
図5に、原料廃棄物Cを分別するための前処理装置の一例の構成を示す。前処理装置200は、外部から導入される廃棄物C1を移送する第1搬送装置210と、第1搬送装置210から供給される廃棄物C1を破砕する破砕機220と、破砕機220で破砕された破砕廃棄物C2を移送する第2搬送装置230と、分別機240とを具備する。
【0068】
第1搬送装置210は、例えば、ベルトコンベアであり、連続的に装置系内に導入される廃棄物C1の一定期間内の供給量を均等化して破砕機220に供給する。破砕機220は、例えば、二軸破砕機であり、加水分解に適さない大型の有機物を含む固形廃棄物を細かく破砕し、分別機240での処理に適した大きさになるように破砕前処理をする。第2搬送装置230は、例えば、ベルトコンベアであり、破砕された固形廃棄物を含む破砕廃棄物C2の一定期間内の供給量を均等化して分別機240に供給する。
【0069】
分別機240は、どのような構成でもよいが、例えば複数の孔を有するメッシュ、パンチングメタルなどの多孔シートで構成された円筒型のドラムとドラム内に設けられた回転破砕刃とを有する。破砕廃棄物C2は、ドラム内に導入される。破砕廃棄物C2のうち、多孔シートの孔径よりも小さい固形物は、ドラム内を流通する風力と遠心力によりドラム外に放出される。放出された固形物は、適正な含有量の発酵適物を含む原料廃棄物Cとして回収される。布、プラスチックシートなどの軽比重物および金属などの高比重物は発酵不適物NCとして、ドラム内から回収される。
【0070】
上述した実施形態は本発明の一態様であり、その記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的構成や制御態様は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0071】
10:メタン発酵システム
100:メタン発酵装置
110:発酵槽
111:上部吹出口
111A:第1吹出口A
111B:第2吹出口B
112:液中吹出口
112C:第1吹出口C
112D:第2吹出口D
113:第一底部出口
114:第一吐出口
115:蒸気入口
116:原料入口
117:スクレイパ(掻き寄せ排出機構)
120:混合部
121:混合容器
122:攪拌羽
123:第二底部出口
124:第二吐出口
170:貯留槽
180:脱水装置
200:前処理装置
210:第1搬送装置
220:破砕機
230:第2搬送装置
240:分別機
300:分離装置
310:濾過部
311S:濾過面
312G:スリット状隙間
315:帯状部
320:隙間自浄部
321:ディスク状回転体
C1:廃棄物
C2:破砕廃棄物
C:原料廃棄物
NC:発酵不適物
L:発酵液
FL:発酵液(濾液)
S:流動物
RC:残渣汚泥
P1~P3:第1~第3ポンプ
R11:第1引き抜きルート
R12:第2引き抜きルート
R2:投入ルート
R3:循環ルート
R4:濾液ルート
R5:回収ルート
V1~V9:バルブ
T1:第一分岐部
T2:第二分岐部

図1
図2
図3A
図3B
図4
図5