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特許7222642車両の乗員監視装置、および乗員保護システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】車両の乗員監視装置、および乗員保護システム
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/015 20060101AFI20230208BHJP
   B60R 21/0134 20060101ALI20230208BHJP
   B60R 21/0136 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
B60R21/015 312
B60R21/0134 311
B60R21/0136 310
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018180061
(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2020050080
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100182051
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 直宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179280
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 育郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180747
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 剛彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 亮太
(72)【発明者】
【氏名】時崎 淳平
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-148881(JP,A)
【文献】特開2007-168570(JP,A)
【文献】特開2010-241370(JP,A)
【文献】特開2012-224286(JP,A)
【文献】特開2015-058917(JP,A)
【文献】特開2010-100142(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0327069(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/015
B60R 21/0134
B60R 21/0136
B60R 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられたシートに着座している乗員を監視する車両の乗員監視装置であって、
前記シートに着座している乗員へ向けて投光する投光デバイスと、
前記シートに着座している乗員を撮像する撮像デバイスと、
前記投光デバイスおよび前記撮像デバイスを制御して、前記シートに着座している乗員を撮像する処理部と、
を有し、
前記処理部は、
前記車両の衝突が予測される場合、前記投光デバイスによる連続した光を、前記撮像デバイスにより撮像される乗員の頭部に絞って照射する、
車両の乗員監視装置。
【請求項2】
前記投光デバイスは、連続した投光と点滅による投光とで切り替え可能であり、
前記処理部は、
前記車両の衝突が予測されていない通常の場合、前記投光デバイスによる点滅による光を、少なくとも前記撮像デバイスにより撮像される乗員へ向けて照射し、
前記車両の衝突が予測される場合、前記投光デバイスによる連続した光を、少なくとも前記撮像デバイスにより撮像される乗員へ向けて照射する、
請求項1記載の、車両の乗員監視装置。
【請求項3】
前記処理部は、
前記車両の衝突が予測される場合、前記投光デバイスによる通常時の点滅における最大輝度よりも光らせる、
請求項1または2記載の、車両の乗員監視装置。
【請求項4】
前記投光デバイスは、前記シートに着座している乗員の頭部へ向けて、非可視光を投光する、
請求項1から3のいずれか一項記載の、車両の乗員監視装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項記載の車両の乗員監視装置と、
前記乗員監視装置により撮像された乗員の撮像画像に基づいて乗員保護制御を実行する乗員保護装置と、
を有する、車両の乗員保護システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の乗員監視装置、および乗員保護システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2は、車両に乗車している乗員を監視する乗員監視装置、を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-043009号公報
【文献】特開2015-140146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、衝突の際に乗員の頭部を撮像して、衝突の際の乗員の頭部の位置や挙動を予測し、これに応じて乗員保護制御を実行することが考えられる。
しかしながら、車両の乗員監視装置は、一般的に、シートに着座している乗員の上体全体を撮像している。
このため、撮像画像において、乗員の頭部がはっきりと撮像されるとは限らない。たとえば夜間走行中であって車内が暗い場合、撮像画像において乗員の頭部がはっきりと撮像され難い。
撮像画像において乗員の頭部がはっきりと撮像されていない場合、画像中での乗員の頭部の位置を適切に特定することができなくなり、その乗員の頭部の位置の変化としての挙動などを正確に判断できなくなる。
その結果、衝突の際の乗員の頭部の位置や動きを良好に予測して、乗員監視装置を用いたことにより期待し得る良好な乗員保護制御を実行できない可能性がある。
【0005】
このように、車両では、乗員監視装置による撮像画像に基づいて、シートに着座している乗員の頭部の位置や挙動を良好に特定できるようにすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両の乗員監視装置は、車両に設けられたシートに着座している乗員を監視する車両の乗員監視装置であって、前記シートに着座している乗員へ向けて投光する投光デバイスと、前記シートに着座している乗員を撮像する撮像デバイスと、前記投光デバイスおよび前記撮像デバイスを制御して、前記シートに着座している乗員を撮像する処理部と、を有し、前記処理部は、前記車両の衝突が予測される場合、前記投光デバイスによる連続した光を、前記撮像デバイスにより撮像される乗員の頭部に絞って照射する。
【0007】
好適には、前記投光デバイスは、連続した投光と点滅による投光とで切り替え可能であり、前記処理部は、前記車両の衝突が予測されていない通常の場合、前記投光デバイスによる点滅による光を、少なくとも前記撮像デバイスにより撮像される乗員へ向けて照射し、前記車両の衝突が予測される場合、前記投光デバイスによる連続した光を、少なくとも前記撮像デバイスにより撮像される乗員へ向けて照射する、とよい。
【0008】
好適には、前記処理部は、前記車両の衝突が予測される場合、前記投光デバイスによる通常時の点滅における最大輝度よりも光らせる、とよい。
【0010】
好適には、前記投光デバイスは、前記シートに着座している乗員の頭部へ向けて、非可視光を投光する、とよい。
【0011】
本発明に係る車両の乗員保護システムは、上述したいずれかの車両の乗員監視装置と、前記乗員監視装置により撮像された乗員の撮像画像に基づいて乗員保護制御を実行する乗員保護装置と、を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、車両の衝突が予測される場合、投光デバイスによる連続した光を、少なくとも撮像デバイスにより撮像される乗員へ向けて照射する。たとえば、車両の衝突が予測される場合、衝突が予測されていない通常時の点滅による光を連続した光に切り替えて、連続した光による強い光を、撮像デバイスにより撮像される乗員の頭部などへ向けて照射する。これにより、シートに着座している乗員の少なくとも頭部は、通常の光を照射している場合よりも明るくはっきりとなる。
よって、本発明では、撮像デバイスによる撮像画像には、乗員の頭部がはっきりと撮像されるようになる。
その結果、本発明では、撮像画像においてシートに着座した乗員の頭部が容易に特定でき、乗員の頭部の位置や挙動を良好に推定し得る。乗員保護装置は、車両の衝突が予測される場合には、乗員の頭部がはっきりと映る撮像画像に基づいて、たとえば衝突の際の乗員の頭部の位置や動きを良好に予測し、適切な乗員保護制御を実行可能になる。本発明では、撮像環境の良否によらずに乗員の頭部が撮像画像にはっきりと映るようになることにより、乗員監視装置を用いたことにより期待し得る良好な乗員保護制御を実行することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施形態に係る自動車における乗員保護の説明図である。
図2図2は、図1の自動車での乗員についての左右方向への挙動の説明図である。
図3図3は、図1の自動車での乗員についての斜め前方向への挙動の説明図である。
図4図4は、図1の自動車に設けられる、乗員保護システムとしての車両制御システムの説明図である。
図5図5は、図1の自動車に設けられる乗員監視装置の説明図である。
図6図6は、図1の自動車に設けられる乗員保護装置の説明図である。
図7図7は、図5の監視制御部による通常時の処理を示すフローチャートである。
図8図8は、投光デバイスの投光と、車内撮像デバイスの撮像との関係を示す説明図である。
図9図9は、図3の運転支援装置の支援制御部の処理を示すフローチャートである。
図10図10は、図5の監視制御部による衝突予測時の処理を示すフローチャートである。
図11図11は、図6の保護制御部による処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る自動車1における乗員保護の説明図である。図1には、車外を撮像する車内撮像デバイス53が図示されている。
自動車1は、人が乗車して移動する車両の一例である。車両には、この他にもたとえば、大型車、二輪車、パーソナルモビリティ、自転車、鉄道車両、飛行機、ボート、などがある。
図1の自動車1は、車体2、車体2の前後に設けられる車輪3、車体2の乗員室4に設けられるシート5、シート5の前に設けられるダッシュボード6、ダッシュボード6から後へ突出して設けられるハンドル7、などを有する。
このような自動車1では、車体2の乗員室4に乗車した乗員は、シート5に着座する。また、乗員は、ハンドル7などを操作する。自動車1は、図示外のエンジンやモータの駆動力により、乗員の操作にしたがって走行する。
また、自動車1は、たとえば目的地が設定されることにより、目的地までの経路を案内したり、目的地まで経路をたどって自動走行したりする。
【0016】
図2は、図1の自動車1での乗員についての左右方向への挙動の説明図である。
図2は、図1の自動車1を前から見た図であり、左右に並ぶ一対のシート5に、二人の乗員が乗車している。シート5に着座する乗員の上体は、自動車1のたとえば右左折の際にシート5の上で左右へ傾くことがある。
図3は、図1の自動車1での乗員についての斜め前方向への挙動の説明図である。
図3は、図1の自動車1を上から見た図であり、左右に並ぶ一対のシート5に、二人の乗員が乗車している。シート5に着座する乗員の上体は、自動車1のたとえば制動時などにおいて斜め前へ傾くことがある。
また、図1に示すように、シート5に着座する乗員の上体は、自動車1のたとえば制動時などにおいて前へ傾くことがある。
過大な加速度が作用しない場合には、これらの乗員の上体の挙動は、問題とならない。
しかしながら、たとえば衝突の際には、衝突時の過大な衝撃により、乗員の上体は、シート5から外へはみ出すように大きく傾くことになる。
【0017】
このため、自動車1では、シート5に着座する乗員の上体を支持するために、図1に示すように、エアバック部材70や、シートベルト部材71といった乗員保護装置60が用いられる。
シートベルト部材71は、シート5に着座する乗員の前にかけ渡されるベルトを有する。シートベルト部材71は、衝突の際にベルトアクチュエータ63を動作させて、ベルトにテンションを加える。これにより、衝突の際に、シート5に着座する乗員の上体は、ベルトにより支えられ、それ以上にシート5からはみ出すように移動し難くなる。
エアバック部材70は、衝突の際にインフレータで発生させたガスによりエアバック64を展開する。図1では、エアバック64は、ハンドル7の後側、すなわちシート5に着座する乗員の上体の前正面で展開している。これにより、シート5から前へ倒れようとする乗員の上体は、エアバック64に当たる。エアバック64は、乗員の荷重により変形し、乗員の上体に作用している運動エネルギを吸収する。
これらの乗員保護装置60により、自動車1は、衝突の際にも乗員を保護することが可能になる。
【0018】
ところで、自動車1の衝突形態には、車体2の前正面に他の車両などが衝突する正面衝突だけでなく、車体2の前角に他の車両などが衝突するオフセット衝突、車体2の側面に他の車両などが衝突する側面衝突、などがある。
乗員保護装置60には、これら複数種類の衝突において乗員を保護するように機能することが望ましい。
そこで、自動車1では、自動車1に設けられる乗員監視装置50を用いて、乗員保護装置60による乗員保護機能を向上させることが考えられる。
乗員監視装置50は、図2に示すようにシート5に着座する乗員を、ダッシュボード6などに設けられた光学デバイスにより撮像し、乗員の居眠りやわき見を検出して警告する装置である。
このような乗員監視装置50を用いて、シート5に着座する乗員を撮像して、衝突の際の乗員の頭部の位置や挙動を予測し、これに応じて乗員保護装置60においてエアバック部材70やシートベルト部材71の動作を制御することが考えられる。
しかしながら、乗員監視装置50は、乗員の居眠りやわき見を検出するために、一般的に、シート5に着座している乗員の上体の全体を撮像している。
このため、撮像画像において、乗員の頭部がはっきりと撮像されるとは限らない。たとえば夜間走行中であって車内が暗い場合には、撮像画像において乗員の頭部の位置などをはっきりと撮像し難い。
そして、撮像画像において乗員の頭部がはっきりと撮像されない場合、撮像した画像中での乗員の頭部の位置を適切に特定することが難しく、そのような不確実な頭部の位置の変化により乗員の頭部の挙動などを正確に判断することは難しい。
その結果、衝突の際の乗員の頭部の位置や動きを良好に予測して、乗員監視装置50を用いたことにより期待し得る良好な乗員保護制御を実行できない可能性がある。
【0019】
このように、自動車1では、乗員保護性能についてのさらなる改善が求められている。
【0020】
図4は、図1の自動車1に設けられる、乗員保護システムとしての車両制御システム10の説明図である。
図4の車両制御システム10は、車速センサ11、加速度センサ12、表示デバイス13、操作デバイス14、スピーカデバイス15、車外撮像デバイス16、無線通信デバイス17、システムタイマ18、メモリデバイス19、ECU(Electronic Control Unit)20、およびこれらが接続される車内ネットワーク21、を有する。
【0021】
車内ネットワーク21は、たとえばCAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)に準拠した有線の通信ネットワークがある。車内ネットワーク21に接続される機器は、車体2の各部に分散して配置され、車内ネットワーク21を通じてデータを送受する。なお、車内ネットワーク21に接続される機器は、車内ネットワーク21を通じてデータを送受するためのCPU(Central Processing Unit)を個別に備えて、各々が装置として構成されてよい。
【0022】
車速センサ11は、自動車1の車体2の移動などによる速度を検出して車内ネットワーク21へ出力する。
加速度センサ12は、自動車1の車体2に作用する加速度を検出して車内ネットワーク21へ出力する。なお、車体2に対する複数の方向からの衝撃入力を検出しようとする場合、加速度センサ12は自動車1に複数で設けられ、車体2の外周面の近くに分散して設けるとよい。
表示デバイス13は、車内ネットワーク21から表示データを取得し、表示データに基づく画像を表示する。
操作デバイス14は、乗員に操作されるために乗員室4などに設けられる。操作デバイス14は、たとえば、ハンドル7、シフトレバー、ブレーキペダル、を有する。
スピーカデバイス15は、車内ネットワーク21から音データを取得し、音データに基づく音を出力する。
車外撮像デバイス16は、自動車1の乗員室4などに設けられ、自動車1の周囲を撮像して画像データを車内ネットワーク21へ出力する。車外撮像デバイス16は、たとえば図1に示すように乗員室4の天井の近くにおいて前向きに設けられる。この場合、車外撮像デバイス16は、自動車1の前方を撮像する。
無線通信デバイス17は、車内ネットワーク21に接続されていない、たとえば自動車1の外に存在する他の車両、基地局、ビーコン装置などとの間で無線通信し、データを送受する。
システムタイマ18は、時間や時刻を計測する。システムタイマ18は、計測した時間や時刻を、車内ネットワーク21を通じて、車内ネットワーク21に接続される機器へ出力する。これにより、車内ネットワーク21に接続される複数の機器は、システムタイマ18のたとえば計測時刻により同期的に動作することができる。
【0023】
メモリデバイス19は、ECU20が車両の制御に使用するプログラムおよびデータを記録する。メモリデバイス19は、たとえば半導体メモリ、ハードディスクデバイス、でよい。
ECU20は、たとえばワンチップマイクロコンピュータ装置などの、CPUを備えるコンピュータ装置である。ワンチップマイクロコンピュータ装置は、CPUとともに、システムタイマ18、メモリデバイス19、を内蔵してよい。ECU20は、メモリデバイス19に記録されているプログラムを読み込んで実行する。これにより、ECU20には、自動車1の全体の動作を制御する制御部、が実現される。なお、ECU20は、自動車1に複数で設けられてよい。この場合、複数のECU20は、互いに強調して動作することにより制御部として機能する。
【0024】
図4には、ECU20に実現される制御部の機能として、乗員の監視制御部31、走行の支援制御部32、乗員などの保護制御部33、通信制御部34、空調制御部35、が図示されている。
通信制御部34は、無線通信デバイス17によるデータ通信を管理し、無線通信デバイス17とともに自動車1の無線通信装置を構成する。通信制御部34は、無線通信デバイス17を用いて、たとえば図示外の交通システムのサーバ装置、および交通システムに対応する他の車両との間で、自動車1の走行などを制御するためのデータを送受する。
空調制御部35は、自動車1の乗員室4などの空調を制御する。
【0025】
走行の支援制御部32は、図3の車外撮像デバイス16および支援メモリ41とともに、自動車1の走行支援装置40を構成する。支援メモリ41は、たとえばメモリデバイス19の一部に設けられてよい。支援制御部32は、支援メモリ41の設定に基づいて、車外撮像デバイス16による車外の撮像画像から、自動車1の周囲に存在する他の車両、歩行者、自転車、外壁などの構造物を抽出し、抽出した各物体との距離および方向についての情報を生成する。支援制御部32は、抽出した物体および物体の進路と交差したり近接したりしないように自車の進路を生成し、その進路に沿って自車が走行するように自動車1の移動を制御する。その間に乗員によりたとえばハンドル7などの操作デバイス14が操作された場合、その操作デバイス14の操作による進路を補完した進路により走行するように自動車1の移動を支援する。
また、支援制御部32は、後述する図9の処理により、他の車両などとの衝突がさけられない可能性を判断し、その可能性が高い場合には、衝突を予測する。
【0026】
図5は、図1の自動車1に設けられる乗員監視装置50の説明図である。
図5の乗員監視装置50は、図4の乗員の監視制御部31とともに、監視メモリ51、光学ユニット52、を有する。乗員監視装置50は、自動車1に設けられたシート5に着座している乗員を監視する。
【0027】
光学ユニット52は、図5および図2に示すように、乗員室4のダッシュボード6の中央部分に後向きに設けられる。光学ユニット52は、車内撮像デバイス53、一対の投光デバイス54、を有する。
車内撮像デバイス53は、乗員室4のダッシュボード6の中央部分において、後向きに設けられる。車内撮像デバイス53は、図2の一点鎖線枠に示すように、乗員室4において車幅方向に並べて乗員ごとに設けられる左右一対のシート5に着座する二人の乗員の上体を全体的に撮像する。
各投光デバイス54は、乗員室4のダッシュボード6の中央部分において、後向きに設けられる。各投光デバイス54は、図2の二点鎖線枠に示すように、各シート5に着座して車内撮像デバイス53により撮像される乗員の上体の全体に対して、たとえば赤外線などによる非可視光を投光する。投光デバイス54は、乗員の頭部の顔を撮像するために、シート5についての着座位置より前に設けられる。
監視メモリ51は、たとえばメモリデバイス19の一部に設けられてよい。監視メモリ51は、乗員を監視するための設定データ58などを記録する。
【0028】
監視制御部31は、後述する図7に示すように、監視メモリ51の設定データ58に基づいて、投光デバイス54および車内撮像デバイス53を制御し、車内撮像デバイス53による車内の撮像画像から、シート5に着座している乗員の上体の位置および動きを判断し、その上体の位置および動きにより乗員の居眠り、わき見などを判断する。乗員が居眠り、わき見などをしている場合、監視制御部31は、表示デバイス13およびスピーカデバイス15を用いて、警告を出力する。監視制御部31は、撮像画像から、乗員の顔の向きや眼球の動きを判断し、それらに応じて居眠り、わき見などの警告を出力してもよい。
また、監視制御部31は、衝突が予測されている場合には、後述する図10の処理により衝突時の乗員を保護するための乗員監視制御を実行する。
【0029】
図6は、図1の自動車1に設けられる乗員保護装置60の説明図である。
図6の乗員保護装置60は、図4の乗員などの保護制御部33とともに、保護メモリ61、複数のシートベルト62、複数のベルトアクチュエータ63、複数のエアバック64、複数のベース部材65、複数のエアバックアクチュエータ(ABアクチュエータ)66、複数のインフレータ67,68、を有する。
一組のシートベルト62、およびベルトアクチュエータ63は、一つのシートベルト部材71を構成する。
一組のエアバック64、ベース部材65、エアバックアクチュエータ66、第一インフレータ67、および第二インフレータ68は、一つのエアバック部材70を構成する。
すなわち、図6には、左右一対のシート5に対応するように、二組のシートベルト部材71と、二組のエアバック部材70と、が図示されている。
【0030】
シートベルト62は、シート5に着座した乗員の腰部および上体の前に掛け渡されるベルトである。
ベルトアクチュエータ63は、シートベルト62に対して、可変可能なテンションを加える。テンションが加えられたシートベルト62は、乗員の腰部および上体をシート5に押し付けるように機能し得る。
エアバック64は、高圧ガスにより瞬時に展開する袋体である。
第一インフレータ67、および第二インフレータ68は、エアバック64に注入する高圧ガスを発生する。第一インフレータ67および第二インフレータ68をともに動作させる場合、エアバック64は、高い圧力で展開し得る。第一インフレータ67または第二インフレータ68を動作させる場合、エアバック64は、低い圧力で展開し得る。第一インフレータ67の動作開始タイミングと第二インフレータ68の動作開始タイミングとをずらすことにより、それらがそろっている場合とは異なる圧力変化でエアバック64を展開できる。
ベース部材65には、エアバック64が取り付けられ、エアバック64を折りたたんで収納する。なお、第一インフレータ67および第二インフレータ68も、ベース部材65に設けられてよい。
エアバックアクチュエータ66は、ベース部材65を駆動し、ベース部材65の位置または向きを調整する。ベース部材65がたとえば車幅方向、前後方向、上下方向へ移動可能に車体2に取り付けられている場合、エアバックアクチュエータ66は、ベース部材65をスライド駆動してその位置を調整する。
ベース部材65が取り付け位置において回転可能に設けられている場合、エアバックアクチュエータ66は、ベース部材65を回転駆動してその向きを調整する。
保護メモリ61は、たとえばメモリデバイス19の一部に設けられてよい。保護メモリ61は、乗員を保護するための設定データ69などを記録する。
【0031】
乗員などの保護制御部33は、加速度センサ12、図1に示すようにエアバック部材70およびシートベルト部材71とともに、自動車1の乗員保護装置60を構成する。保護制御部33は、メモリデバイス19の設定に基づいて、加速度センサ12が衝突の衝撃に対応する閾値を超える加速度を検出したと判断すると、乗員などの保護制御を実行する。保護制御部33は、乗員を保護するために、エアバック部材70のエアバック64を展開し、シートベルト部材71のシートベルト62にテンションを加える。
また、保護制御部33は、自動車1の衝突が予測される場合、乗員監視装置50により撮像された乗員の撮像画像に基づいて乗員保護制御を実行する。
【0032】
図7は、図5の監視制御部31による通常時の処理を示すフローチャートである。
監視制御部31は、乗員が自動車1に乗ることにより図4の車両制御システム10の電源が投入された場合に、図7の処理を繰り返し実行する。
【0033】
図7の通常の監視制御のステップST1において、監視制御部31は、乗員が乗車したか否かを判断する。監視制御部31は、乗員が乗車したと判断するまで、ステップST1の乗車判断を繰り返す。
乗員が乗車してシート5に着座すると、車内撮像デバイス53は、周期的に繰り返す撮像により、シート5に着座した乗員を撮像し始める。
ステップST2において、監視制御部31は、たとえば監視メモリ51に記憶されている乗員の設定データ58を用いて、車内撮像デバイス53により撮像される画像に映る乗員の顔を識別する。
ステップST3において、監視制御部31は、たとえば監視メモリ51に記憶されている乗員の設定データ58を用いて、識別した乗員に対応する設定処理を実行する。監視制御部31は、認識した乗員の識別番号または設定データを、車内ネットワーク21へ出力する。これにより、たとえば、操作デバイス14が認識された乗員がハンドル7などを過去の設定位置に調整したり、支援制御部32が認識された乗員の過去の運転履歴に対応する運転支援用の設定をしたり、保護制御部33が認識された乗員に対応する保護制御用の設定をしたり、空調装置が認識された乗員が過去にした設定により空調動作を開始したりする。
【0034】
以上の乗車時の設定処理の後、支援制御部32は、乗員の監視を開始する。
ステップST4において、監視制御部31は、投光デバイス54を通常の投光制御により点灯させる。通常の投光では、監視制御部31は、投光デバイス54を、長期にわたって連続的に点灯可能な定常出力の明るさで、間欠的に点灯させる。投光デバイス54は、間欠的な点灯により、乗員の上体の全体に対して赤外線を広角に投光し始める。
ステップST5において、監視制御部31は、車内撮像デバイス53により、シート5に着座した乗員を撮像する。
ステップST6において、監視制御部31は、警告が必要であるか否かを判断する。監視制御部31は、撮像画像での乗員の上体の位置および動きなどを特定し、特定した上体の位置および動きなどにより乗員の居眠り、わき見などを判断する。そして、乗員が居眠り、わき見などをしていない場合、監視制御部31は、警告が不要であると判断し、処理をステップST8へ進める。乗員が居眠り、わき見などをしている場合、監視制御部31は、警告が必要であると判断し、処理をステップST7へ進める。
ステップST7において、監視制御部31は、乗員に対して注意喚起のための警告処理を実行する。監視制御部31は、たとえば表示デバイス13に警告を表示するとともに、スピーカデバイス15から警告音を出力する。
ステップST8において、監視制御部31は、乗員が降車したか否かを判断する。監視制御部31は、車内撮像デバイス53により撮像される画像に乗員が映らなくなると、乗員が降車したと判断する。乗員が降車していない場合、監視制御部31は、処理をステップST5へ戻す。監視制御部31は、降車していない乗員についての上述した監視を、次の車内撮像デバイス53の撮像画像に基づいて繰り返し実行する。乗員が降車した場合、監視制御部31は、図7の処理を終了する。
【0035】
図8は、投光デバイス54の投光と、車内撮像デバイス53の撮像との関係を示す説明図である。
図8に示すように、車内撮像デバイス53は、撮像周期ごとに画像を撮像する。詳しくは、車内撮像デバイス53は、撮像周期の一部である撮像期間において、間欠的に画像を撮像する。
図8(A)では、間欠的に点灯する投光デバイス54は、車内撮像デバイス53の撮像周期ごとに、撮像期間内で点灯する。この場合、車内撮像デバイス53は、投光デバイス54が乗員へ光を照射している期間の全体において、乗員を撮像する。車内撮像デバイス53は、乗員を明るく撮像できる。
これに対して、図8(B)では、間欠的に点灯する投光デバイス54は、車内撮像デバイス53の撮像周期ごとに点灯しているものの、撮像期間外で点灯する。この場合、車内撮像デバイス53は、投光デバイス54が乗員へ光を照射している光を受光して撮像することができない。車内撮像デバイス53は、投光デバイス54により間欠的に投光しているにもかかわらず、乗員を暗く撮像することになる。
したがって、投光デバイス54を間欠点灯させる場合、図8(A)に示すように投光デバイス54の点灯周期は、車内撮像デバイス53の撮像周期に同期させるとよい。また、投光デバイス54は、車内撮像デバイス53の撮像期間内で間欠的に点灯するとよい。投光デバイス54の間欠的な点灯期間は、車内撮像デバイス53の撮像と同期するように制限される。
監視制御部31は、上述したステップST4において、投光デバイス54を、これらの条件満たすように、間欠的に点灯させる。
【0036】
図9は、図3の運転支援装置の支援制御部32の処理を示すフローチャートである。
支援制御部32は、自動車1が走行または停車している期間において、図9の処理を繰り返し実行する。
【0037】
図9の運転支援制御のステップST11において、支援制御部32は、自車および周辺情報を取得する。支援制御部32は、たとえば、車外撮像デバイス16の撮像画像、通信制御部34が交通システムから取得する他の車両の移動データ、車速センサ11の速度、加速度センサ12の加速度、支援制御部32による進路、経路情報などを取得する。
ステップST12において、支援制御部32は、自車の走行について取得した情報に基づいて、自車の進路を生成する。支援制御部32は、たとえば、自車の経路情報に基づいて直近の進路を生成する。
ステップST13において、支援制御部32は、他の車両などの他の移動体と自車との衝突可能性を判断する。支援制御部32は、たとえば、撮像画像または移動データから他の移動体の進路を生成し、自車の直近の進路との交差または近接を判断する。そして、自車の直近の進路と他の移動体の進路とが交差または近接する場合、支援制御部32は、衝突可能性ありと判断し、処理をステップST14へ進める。自車の直近の進路と他の移動体の進路とが交差または近接しない場合、支援制御部32は、衝突可能性なシート5判断し、処理をステップST15へ進める。
ステップST14において、支援制御部32は、ステップST12において生成した進路を、他の移動体の進路と交差したり近接したりし難くなるように更新する。支援制御部32は、たとえば進路の途中で加減速したり、停車したりするように、生成した進路を更新する。
【0038】
ステップST15において、支援制御部32は、生成または更新された進路により、自車の走行を制御する。支援制御部32は、生成された進路より、更新された進路を優先する。自動運転により走行している場合、支援制御部32は、生成または更新された進路にしたがって走行するように、自車を走行させる。乗員がハンドル7などの操作デバイス14を操作する場合、支援制御部32は、操作量を生成または更新された進路により調整し、自車を走行させる。
ステップST16において、支援制御部32は、制御した走行での衝突についての回避可能性を判断する。支援制御部32は、車外撮像デバイス16の最新の撮像画像などの自車センサによる情報を取得し、他の移動体との衝突の回避可能性を判断する。自車は、通常は、ステップST14により回避するように更新された進路にしたがって自車が移動しているため、他の移動体との衝突は回避可能である。ただし、たとえば他の移動体が予想を超える動きをした場合には、更新された進路にしたがって自車が移動していたとしても、衝突してしまう可能性がある。支援制御部32は、たとえば撮像画像に映る他の移動体についての相対的な移動により、回避可能性を判断する。このようにステップST16における回避可能性の判断は、ステップST14における衝突可能性の予測判断よりも厳しい判断であり、衝突が実際に発生するか否かの可能性について判断するものである。回避可能性がない場合、支援制御部32は、処理をステップST17へ進める。回避可能性がある場合、支援制御部32は、処理をステップST18へ進める。
ステップST17において、支援制御部32は、車内ネットワーク21へ衝突予測を出力する。その後、支援制御部32は、図9の運転支援制御を終了する。
ステップST18において、支援制御部32は、車内ネットワーク21へ衝突予測解除を出力する。その後、支援制御部32は、図9の運転支援制御を終了する。
以上の処理により、支援制御部32は、衝突が実際に発生すると判断した場合に、ステップST17において衝突予測を出力する。衝突が実際に発生すると判断しない場合には、支援制御部32は、ステップST18において衝突予測解除を出力する。
【0039】
図10は、図5の監視制御部31による衝突予測時の処理を示すフローチャートである。
監視制御部31は、ステップST17による衝突予測を受信した場合、図10の処理を実行する。監視制御部31は、ステップST17による衝突予測を新たに受信するたびに、図10の処理を繰り返し実行する。
【0040】
図10の衝突予測時の処理のステップST21において、監視制御部31は、ステップST17で出力される衝突予測を取得する。
衝突予測を取得すると、監視制御部31は、衝突時の乗員を保護するための乗員監視制御を開始する。
【0041】
ステップST22において、監視制御部31は、投光デバイス54による投光を切り替える。
具体的には、監視制御部31は、図8(C)に示すように連続的な高出力の明るさの光へ切り替えて、投光デバイス54による強い光を、車内撮像デバイス53により撮像される乗員へ向けて照射する。投光デバイス54を通常出力での間欠点灯から、最大出力での連続点灯へ切り替える。最大出力の点灯とは、投光デバイス54の最大能力での点灯をいい、発熱などの影響によって長期にわたって連続的に点灯することができなかったが、たとえば数分程度の短期的であれば連続的に点灯することができる程度に、高出力での点灯でよい。投光デバイスは、通常時の点滅における最大輝度よりも明るく連続的に光ることになる。
また、監視制御部31は、乗員の頭部へ照射する光量を増やすために、さらなる投光の切替制御を実行してよい。
たとえば、監視制御部31は、投光デバイス54を、それによる投光エリアが狭くなるように、シート5に着座した乗員の上体の全体に対して広角に投光する状態から、乗員の頭部の周囲へ挟角に投光する状態に切り替えてよい。
これらの乗員の頭部へ照射する光量を増やすための切替制御により、投光デバイス54は、自動車1の衝突が予測される場合には、車内撮像デバイス53により撮像される乗員の頭部へ向けて、通常時よりも投光エリアを絞った強い光を照射することができる。
また、投光デバイス54が連続的に点灯するため、投光デバイス54の光量は、車内撮像デバイス53の撮像と同期するようにするために制限されなくなる。
【0042】
ステップST23において、監視制御部31は、連続した強い光が照射されている乗員の頭部を撮像する。監視制御部31は、車内撮像デバイス53の撮像画像から、乗員の頭部を含む範囲の部分画像を切り出す。
【0043】
ステップST24において、監視制御部31は、切り出した乗員の頭部の画像から、頭部の位置および動きを特定し、特定した頭部の挙動に基づく頭部の挙動情報を、車内ネットワーク21へ出力する。たとえば、監視制御部31は、切り出した部分画像における頭部の撮像位置により、乗員室4における頭部の位置を特定する。監視制御部31は、複数の部分画像の頭部の撮像位置の変化により、乗員室4における頭部の動きを特定する。監視制御部31は、特定した頭部の位置から特定した頭部の動き方向へ、特定した頭部の動き量に応じた速度で線形的に移動するとして、乗員室4における頭部の挙動を予測する。監視制御部31は、予測した乗員室4における頭部の挙動のデータを、挙動情報として、車内ネットワーク21へ出力する。
【0044】
ステップST24において、監視制御部31は、衝突予測が解除されたか否かを判断する。
監視制御部31は、ステップST18で出力される衝突予測解除を取得していない場合、衝突予測が解除されていないと判断し、処理をステップST23へ戻す。監視制御部31は、衝突予測が解除されるまで、ステップST23からステップST25の処理を繰り返し、最新の頭部の部分画像に基づく挙動情報を、繰り返し出力する。
監視制御部31は、ステップST18で出力される衝突予測解除を取得した場合、衝突予測が解除されたと判断し、図10の衝突予測時の処理を終了する。
【0045】
図11は、図6の保護制御部33による処理を示すフローチャートである。
乗員の保護制御部33は、ステップST17による衝突予測を受信した場合、図11の処理を実行する。保護制御部33は、ステップST17による衝突予測を新たに受信するたびに、図11の処理を繰り返し実行する。
【0046】
図11の乗員保護処理のステップST31において、保護制御部33は、ステップST17で出力される衝突予測を取得したか否かを判断する。
衝突予測を取得していない場合、保護制御部33は、図11の乗員保護処理を終了する。
衝突予測を取得している場合、保護制御部33は、処理をステップST32に進める。
【0047】
ステップST32において、保護制御部33は、ステップST24において出力される最新の挙動情報を取得する。
【0048】
ステップST33において、保護制御部33は、取得した最新の挙動情報に基づいて、保護メモリ61の設定データ69を変更する。
保護制御部33は、たとえば、挙動情報に含まれる乗員の頭部の挙動予測に基づいて、ベルトアクチュエータ63の作動開始タイミング、第一インフレータ67の動作の有無の設定、第一インフレータ67の作動開始タイミング、第二インフレータ68の有無の設定、第二インフレータ68の作動開始タイミング、などについての設定データ69を更新する。
また、保護制御部33は、挙動情報に含まれる乗員の頭部の位置および挙動予測に基づいて、衝突の衝撃により乗員の頭部が倒れる方向においてエアバックが展開するように、エアバックアクチュエータ66によりベース部材65を駆動する。
【0049】
ステップST34において、保護制御部33は、衝突が予測されていることに基づく、衝突検出前の事前制御を実行する。
事前制御において、保護制御部33は、たとえば、ベルトアクチュエータ63を作動させてシートベルト62を引き込み、シートベルト62を乗員に密着させる。
【0050】
ステップST35において、保護制御部33は、衝突を検出したか否かを判断する。保護制御部33は、たとえば、加速度センサ12により衝突の衝撃に対応する過大な加速度が検出されたか否かに基づいて、衝突を検出したか否かを判断する。
衝突を検出していない場合、保護制御部33は、ステップST36において、ステップST18による衝突予測が解除されたか否かを判断する。衝突予測が解除されている場合、保護制御部33は、図11の乗員保護処理を終了する。衝突予測が解除されていない場合、保護制御部33は、処理をステップST32に戻す。保護制御部33は、衝突の検出または衝突予測の解除のいずれかを判断するまで、ステップST32からステップST36までの処理を繰り返す。保護制御部33は、たとえば衝突の直前まで、乗員の頭部の挙動に応じて設定を変更し、事前制御を実行する。
衝突を検出している場合、保護制御部33は、ステップST37において、衝突時制御を実行する。
衝突時制御において、保護制御部33は、たとえばベルトアクチュエータ63によりシートベルト62にテンションを加える。保護制御部33は、設定に応じて第一インフレータ67および第二インフレータ68を作動させる。これにより、エアバック64が展開する。衝突の際に乗員の運動エネルギは、シートベルト62およびエアバックにより吸収され得る。
【0051】
以上のように、本実施形態では、自動車1の衝突が予測される場合、乗員保護制御のために、自動車1の乗員監視装置50の投光デバイス54は、連続した光を、少なくとも車内撮像デバイス53により撮像される乗員へ向けて照射する。
たとえば、投光デバイス54は、自動車1の衝突が予測される場合、自動車1の衝突が予測されていない通常の場合での間欠的な通常の明るさの光を連続的な高出力の明るさの光へ切り替えて、投光デバイス54による強い光を、車内撮像デバイス53により撮像される乗員へ向けて照射する。
さらに、投光デバイス54は、たとえば、投光デバイス54による光を絞って、車内撮像デバイス53により撮像される乗員の頭部へ向けて照射する。
これにより、シートに着座している乗員の少なくとも頭部には、通常よりも明るい光が連続的に照射される。
よって、本実施形態において、車内撮像デバイス53による撮像画像には、乗員の頭部が通常時よりもはっきりと撮像されるようになる。
その結果、本実施形態では、撮像画像においてシート5に着座した乗員の頭部が容易に特定でき、乗員の頭部の位置や挙動を良好に推定し得る。乗員保護装置60は、自動車1の衝突が予測される場合には、乗員の頭部がはっきりと映る撮像画像に基づいて、たとえば衝突の際の乗員の頭部の位置や動きを良好に予測し、適切な乗員保護制御を実行可能になる。乗員監視装置60は、乗員監視装置50を用いることにより期待し得る良好な乗員保護制御を実行することが可能になる。たとえば、本実施形態では、撮像画像を処理する際に撮像画像に含まれる頭部の特定処理に手間取ることなく、撮像環境の良否によらずに、撮像画像において照射強度が上がっている頭部を確実にかつ短い処理時間で特定できるようになる。本実施形態では、顔検出のロバスト性を向上できる。
【0052】
また、本実施形態では、撮像環境の良否によらずに、撮像画像に基づく顔の特定を安定的に早期に完了でき、その後の乗員保護制御などを早期に開始することができる。たとえば、撮像から乗員保護制御の実行を開始するまでのリードタイムは、撮像環境の良否によらずに、略最小な時間に安定的に維持され得る。
これに対して、仮にたとえば通常での撮像画像により頭部を特定しようとする場合、画像中の顔が暗くなって周囲に溶け込んで、頭部の特定のための画像処理の負荷が大きくなって処理に時間がかかったり、場合によっては顔を特定できなかったりする可能性がある。
【0053】
本実施形態では、投光デバイス54は、シート5に着座している乗員の頭部へ向けて、赤外線による非可視光を投光する。よって、本実施形態では、頭部に対して集められた強い光を照射しても、乗員による視認を妨げ難くできる。
【0054】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0055】
たとえば上記実施形態では、乗員監視装置50は、車内ネットワーク21に接続されている。この他にもたとえば、乗員監視装置50は、無線通信デバイス17と通信可能であることにより、乗員保護装置60などとの間でデータを送受してよい。乗員監視装置50と無線通信デバイス17とは、たとえばIEEE802.1Xの規格に準拠した比較的短距離の通信方式によりデータを送受してよい。この場合、乗員監視装置50は、自動車1に対して取り外し可能に設けられてよい。自動車1に対して取り外し可能な乗員監視装置50は、マウンタにより乗員室4に位置決めして固定設置してよい。
【符号の説明】
【0056】
1…自動車(車両)、4…乗員室、5…シート、6…ダッシュボード、7…ハンドル、10…車両制御システム(乗員保護システム)、12…加速度センサ、16…車外撮像デバイス、20…ECU、31…監視制御部、32…支援制御部、33…保護制御部、40…走行支援装置、50…乗員監視装置、52…光学ユニット、53…車内撮像デバイス、54…投光デバイス、58…設定データ、60…乗員保護装置、69…設定データ、70…エアバック部材、71…シートベルト部材

図1
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図5
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