IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ GE富士電機メーター株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-電流センサ及び電力量計 図1
  • 特許-電流センサ及び電力量計 図2
  • 特許-電流センサ及び電力量計 図3
  • 特許-電流センサ及び電力量計 図4
  • 特許-電流センサ及び電力量計 図5
  • 特許-電流センサ及び電力量計 図6
  • 特許-電流センサ及び電力量計 図7
  • 特許-電流センサ及び電力量計 図8
  • 特許-電流センサ及び電力量計 図9
  • 特許-電流センサ及び電力量計 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】電流センサ及び電力量計
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/18 20060101AFI20230208BHJP
   G01R 21/06 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
G01R15/18 B
G01R21/06 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018193168
(22)【出願日】2018-10-12
(65)【公開番号】P2020060504
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】311002034
【氏名又は名称】富士電機メーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗原 晋
(72)【発明者】
【氏名】山内 芳准
(72)【発明者】
【氏名】原山 滋章
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-048755(JP,A)
【文献】特開2017-181424(JP,A)
【文献】特開平04-118561(JP,A)
【文献】特開2012-189572(JP,A)
【文献】特開2012-141151(JP,A)
【文献】実開昭54-133126(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/00-15/20
G01R 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流を流す電流バーを囲むように形成された集磁コアと、前記集磁コアのギャップに介在して磁気検出を行う磁気検出コイルと、前記磁気検出コイルが配置され、前記磁気検出コイルからの信号を処理して前記電流バーに流れる電流信号を検出する信号処理部を有した基板とを有した電流センサであって、
前記磁気検出コイルは、前記基板に積層され同一方向に巻回された第1コイル及び第2コイルであり、前記第1コイル及び前記第2コイルをビア接続するとともに2分するセンタータップを有し、
前記信号処理部は、差動増幅を行う演算部を有し、前記磁気検出コイルの一対の出力端の一方の出力端が前記演算部のプラス入力端子に接続され、他方の出力端が前記演算部のマイナス入力端子に接続され、前記演算部の基準電位入力端子が前記センタータップに接続されるとともにグランド接続され、前記プラス入力端子と前記基準電位入力端子との間、及び、前記マイナス入力端子と前記基準電位入力端子との間に同一容量のコンデンサがそれぞれ接続され、前記センタータップと、前記磁気検出コイルの一対の出力端との間に、同一の抵抗値を有した抵抗素子が接続され、前記センタータップを基準電位として前記磁気検出コイルの前記第1コイルの出力と前記第2コイルの出力とを差動演算することを特徴とする電流センサ。
【請求項2】
請求項に記載した電流センサが検出した電流信号と電圧センサが検出した電圧信号とをもとに前記電流バーを流れる電力量を算出することを特徴とする電力量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易な構成で微小電流も精度良く計測することができる電流センサ及び電力量計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられている電流センサとしては、変流器(カレントトランス:CT)や、集磁コアのギャップ部にホール素子などの磁電変換素子を配置した構成や、集磁コアのギャップ部に、巻線コイルや誘電体基板上にコイルパターンを形成した素子をもつ構成などがある。特に、集磁コアのギャップ部に、基板上にホール素子などの磁電変換素子やコイルパターンを形成した素子を配置する方法は、測定対象である一次電流が流れる回路とは電気的に分離されているため、一次電流側の回路に影響を与えることなく、精度よく電流を計測可能な点で優れている。さらにコイルパターンを形成した素子を配置する方法は、直線性および温度特性に優れ、部品点数が少なく製造が容易となる特徴を有する(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された電流センサは、環状の集磁コアの中央開口部に電流バーを通し、集磁コアのギャップ部にコイルパターンが施された基板を配置するものである。電流バーに電流が流れると、電流路の周辺には、電流バーに流れる電流の大きさに比例する磁束が発生する。発生した磁束は、集磁コアによって集磁される。電流が周期的電流である場合、その周期に応じて発生する磁束も周期的に変化する。これにより、コイルパターンをもつ検出コイルには、電流の大きさ及び周波数に応じた誘導電圧が発生し、この誘導電圧を電流バーに流れる電流の検出信号として用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-48755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、集磁コアのギャップ部に磁電変換素子を配置する電流センサは、外乱ノイズに大きく影響されるという問題がある。特に微小電流測定時に外乱ノイズにより出力が大きく変動してしまい、微小電流が正確に測定できないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡易な構成で微小電流も精度良く計測することができる電流センサ及び電力量計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる電流センサは、電流を流す電流バーを囲むように形成された集磁コアと、前記集磁コアのギャップに介在して磁気検出を行う磁気検出コイルと、前記磁気検出コイルが配置され、前記磁気検出コイルからの信号を処理して前記電流バーに流れる電流信号を検出する信号処理部を有した基板とを有した電流センサであって、前記磁気検出コイルは、センタータップを有し、前記信号処理部は、前記センタータップを基準電位として前記磁気検出コイルが出力する信号を差動演算することを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる電流センサは、上記の発明において、前記センタータップと、前記磁気検出コイルの一対の出力端との間を、同一の抵抗値を有した抵抗素子を接続することを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる電力量計は、上記の発明のいずれか一つに記載した電流センサが検出した電流信号と電圧センサが検出した電圧信号とをもとに前記電流バーを流れる電力量を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡易な構成で微小電流も精度良く計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施の形態である電流センサの概要構成を示す斜視図である。
図2図2は、磁気検出コイルの構成を示す図である。
図3図3は、信号処理部の構成を示す回路図である。
図4図4は、従来の信号処理部の構成を示す回路図である。
図5図5は、図3に示した信号処理部によるノイズ除去処理を説明する説明図である。
図6図6は、図4に示した信号処理部によるノイズ除去処理を説明する説明図である。
図7図7は、図3に示した本実施の形態の信号処理部による測定誤差と図4に示した従来の信号処理部による測定誤差とを比較した図である。
図8図8は、信号処理部の変形例を示す回路図である。
図9図9は、実施の形態で示した電流センサを用いた電力量計の一例を示すブロック図である。
図10図10は、三相電流及び三相電圧間のベクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照してこの発明を実施するための形態について説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態である電流センサ10の概要構成を示す斜視図である。図1に示すように、電流センサ10は、電流を流す電流バー2を囲むように形成された集磁コア1、集磁コア1のギャップに介在して磁気検出を行う磁気検出コイル4及び磁気検出コイル4からの信号を処理して電流バー2に流れる電流信号を検出する信号処理部5を有した基板3を有する。
【0014】
図2に示すように、磁気検出コイル4は、第1層3aから第4層3dまでの4層で形成され、各層に同一方向に巻回されたコイル4a~4dを有する。第1層3aのコイル4aと第2層3bのコイル4bとは、第1コイル14を形成し、第3層3cのコイル4cと第4層3dのコイル4dとは、第2コイル15を形成する。第1コイル14と第2コイル15とは、センタータップTCによって二分されている。センタータップTCは、磁気検出コイルの中間から信号を取り出す出力端子である。
【0015】
磁気検出コイル4における各コイル4a~4dの接続は、一対の出力端TA,TB間で接続される。第1層3a~第4層3dの間は、ビアB1~B7を介して接続される。ビアB1~B7内は導電部材が注入されて導通可能になっている。
【0016】
出力端TBはビアB1である。第1層3aでは、コイル4aがビアB1とビアB2との間に右巻きに形成されている。コイル4aは、ビアB2を介して第2層3bのコイル4bに接続される。コイル4bは、ビアB2とビアB3との間に右巻きに形成されている。コイル4bは、ビアB3を介して第3層3cのコイル4cに接続される。コイル4cは、ビアB3とビアB4との間に右巻きに形成されている。コイル4cは、ビアB4を介して第4層のコイル4dに接続される。コイル4dは、ビアB4とビアB5との間に右巻きに形成される。コイル4dは、ビアB5を介して第1層3aの出力端TA(ビアB6)に接続される。ここで、磁気検出コイル4の中点である第2層3bのコイル4aの一端は、ビアB7を介してセンタータップTCが設けられている。
【0017】
図3は、信号処理部5の回路構成を示す図である。磁気検出コイル4は、センタータップTCを介して第1コイル14及び第2コイル15に二分され、それぞれ出力端TB,TAに接続される。センタータップTCは、グランドV0に接続され、演算部6の入力「0」に接続される。出力端TAは、演算部6の「+入力」に接続され、出力端TBは、演算部6の「-入力」に接続される。演算部6は、「+入力」と「-入力」との差動演算を行って、出力端子PDから出力する。
【0018】
出力端TAとセンタータップTCとの間には、点PA,PC間においてコンデンサC2が接続され、出力端TBとセンタータップTCとの間には、点PB,PC間においてコンデンサC1が接続される。コンデンサC1,C2は同じ容量である。また、出力端TAとセンタータップTCとの間には、抵抗R2が接続され、出力端TBとセンタータップTCとの間には、抵抗R1が接続される。抵抗R1,R2は、同じ抵抗値を有する。
【0019】
従来は、図4に示すように、センタータップTCを設けず、演算部6の「入力0」をグランド接続し、このグランド接続した点PC´と、演算部6の「+入力」の点PA´との間にコンデンサC2を接続し、点PC´と演算部6の「-入力」の点PB´との間にコンデンサC1を接続していた。このコンデンサC1,C2は同じ容量であるが、コンデンサC1,C2には温度特性や個体バラツキがあり、図6に示すように、点PA´,PC´間のバイアス電圧ΔV1と、点PB,PC´間のバイアス電圧ΔV2とに差が生じてしまい、図6(c)に示すように、オフセットを持った信号が出力されることで、交流検出特性に誤差が生じる。
【0020】
これに対し、本実施の形態では、図3に示すように、演算部6の「0」入力を接地するとともに、センタータップTCに接続している。しかも、抵抗値が高精度に等しい抵抗R1,R2を、センタータップTCから演算部6の「+入力」側、及びセンタータップTCから演算部6の「-入力」側に対してそれぞれ接続している。この結果、コンデンサC1,C2の温度特性や個体バラツキがあるときでも、点PA,PC間及び点PB,PC間の電圧はほぼ等しくなり、図5(a)及び図5(b)に示すように、バイアス電圧の差が小さくなり、図5(c)に示すように、点PA,PC間及び点PB,PC間のノイズを差動演算によって除去することができる。したがって、磁気検出コイル4によって微小電流を検出する場合であっても、簡易な構成で計測精度を向上させることができる。
【0021】
図7は、図3に示した本実施の形態の信号処理部5による測定誤差と図4に示した従来の信号処理部5による測定誤差とを比較した図である。図7に示すように、本実施の形態の信号処理部5による測定誤差は、従来の測定誤差を1とした場合に、0.032であり、従来のものに比して、極めて測定誤差の少ない電流検出を行うことができる。
【0022】
<変形例>
図8は、信号処理部5の変形例を示す回路図である。図8に示した信号処理部5は、図3に示した信号処理部5の抵抗R1,R2を削除した構成としている。この場合でも、磁気検出コイル4は、中点であるセンタータップTCを介して、電圧が等しい第1コイル14と第2コイル15とに二分されるため、コンデンサC1,C2の温度特性や個体バラツキがあるときでも、点PA,PC間及び点PB,PC間の電圧はほぼ等しくなり、図5(a)及び図5(b)に示すように、バイアス電圧の差が小さくなり、図5(c)に示すように、点PA,PC間及び点PB,PC間のノイズを差動演算によって除去することができる。
【0023】
<電力量計>
図9は、実施の形態及び変形例で示した電流センサを用いた電力量計200の一例を示すブロック図である。この電力量計200は、電源SPと負荷LDとの間の三相電力量を計測するものであり、2電力計法により求めている。なお、図10は、三相電流IR,IS,IT及び三相電圧VR,VS,VT間のベクトル図を示している。
【0024】
図9に示すように、電力量計200は、実施の形態及び変形例で示した電流センサ10に対応する電流センサ10a,10b、電圧センサ201a,201b、電力量算出部202、出力部203を有する。電流センサ10aは、R相の電流信号を検出する。電流センサ10bは、T相の電流信号を検出する。また、電圧センサ201aは、R相とS相との間の電圧信号を検出する。電圧センサ201bは、T相とS相との間の電圧信号を検出する。
【0025】
電力量算出部202は、電流センサ10aの電流信号と電圧センサ201aの電圧信号とを乗算して瞬時電力信号を生成し、これをローパスフィルタで平滑した有効電力を求めるとともに、電流センサ10bの電流信号と電圧センサ201bの電圧信号とを乗算して瞬時電力信号を生成し、これをローパスフィルタで平滑した有効電力を求め、各有効電力を加算した有効電力を電力量として算出する。出力部203は、この算出された電力量を表示出力あるいは外部出力する。
【0026】
なお、2電力計法で求める三相電力Pは、
P=VRS・IR+VTS・IT
=(VR-VS)・IR+(VT-VS)・IT
=VR・IR+VS・(-IR-IT)+VT・IT
=VR・IR+VS・IS+VT・IT
となり、各相の電力を合計した電力を求めたことと同じになる。
【0027】
また、上記の実施の形態及び変形例で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置及び構成要素の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 集磁コア
2 電流バー
3 基板
3a 第1層
3b 第2層
3c 第3層
3d 第4層
4 磁気検出コイル
4a~4d コイル
5 信号処理部
6 演算部
10,10a,10b 電流センサ
14 第1コイル
15 第2コイル
200 電力量計
201a,201b 電圧センサ
202 電力量算出部
203 出力部
B1~B7 ビア
C1,C2 コンデンサ
IR,IS,IT 三相電流
LD 負荷
P 三相電力
PA,PB,PC 点
PD 出力端子
R1,R2 抵抗
SP 電源
TA,TB 出力端
TC センタータップ
V0 グランド
VR,VS,VT 三相電圧
ΔV1,ΔV2 バイアス電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10