IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフトの特許一覧

<>
  • 特許-基材収縮の補償 図1
  • 特許-基材収縮の補償 図2
  • 特許-基材収縮の補償 図3
  • 特許-基材収縮の補償 図4
  • 特許-基材収縮の補償 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】基材収縮の補償
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20230208BHJP
   H04N 1/393 20060101ALI20230208BHJP
   G06T 3/00 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
B41J2/01 203
H04N1/393
G06T3/00 760
B41J2/01 125
B41J2/01 209
B41J2/01 451
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018213034
(22)【出願日】2018-11-13
(65)【公開番号】P2019089331
(43)【公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-09-21
(31)【優先権主張番号】10 2017 220 322.6
(32)【優先日】2017-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390009232
【氏名又は名称】ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
【住所又は居所原語表記】Kurfuersten-Anlage 52-60, D-69115 Heidelberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ティース シュヴェーガー
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-174060(JP,A)
【文献】特開2010-149315(JP,A)
【文献】特開2001-282042(JP,A)
【文献】特開2015-009555(JP,A)
【文献】特開2012-008624(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0206530(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
H04N 1/393
G06T 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計算機(6)による、印刷機(7)における印刷プロセスの間の基材収縮の補償方法であって、前記方法は、
・前記基材収縮に関する考慮される情報を備えた、デジタルで存在する作成されるべき印刷像(13,14)の複数の画像部分(9)を、前記計算機(6)による前記印刷像(13,14)の分割によって作成するステップと、
・前記計算機(6)によって、作成された複数の各前記画像部分(9)を複数のデータブロック(10)に分割するステップと、
・前記計算機(6)によって、デジタル印刷像(15)におけるすべてのデータブロック(10)の実際位置を格納するステップと、
・デジタル印刷像(16)において1ピクセルの幅の間隙(11)が前記データブロック(10)間に生じるように、各前記データブロック(10)をそれぞれ1ピクセル分だけ相互に離すことで、前記計算機(6)によって、前記デジタル印刷像(15)におけるすべてのデータブロック(10)の目標位置を計算するステップと、
・前記計算機(6)によって、計算された前記目標位置に従って前記デジタル印刷像(16)内の前記データブロック(10)をコピーするステップと、
・前記計算機(6)によって、発生している前記1ピクセルの幅の間隙(11)の位置を計算するステップと、
・補償されたデジタル印刷像(17)が生じるように、前記計算機(6)によって、隣接するピクセルのデジタル画像データによって、前記1ピクセルの幅の間隙(11)を充填するステップと、
・前記補償されたデジタル印刷像(17)を前記印刷機(7)において印刷するステップと、
を含んでおり、
前記デジタル印刷像(13,14)の大きさが既に、前記印刷プロセスにおいて予期されるべき前記基材収縮に整合されるように、前記デジタルで存在する作成されるべき印刷像(13,14)において、前記計算機(6)によって、前記基材収縮の考慮が行われる、方法。
【請求項2】
前記計算機(6)は、前記デジタル印刷像(14)を、条片状の画像カットから成る複数の画像部分(9)に分割し、前記画像部分は、印刷方向において、または印刷方向に対して横向きに配向されており、
前記画像部分(9)の数は、前記デジタル印刷像(14)の初めの、前記基材収縮によって生じる最大のピクセル間隙(11)のピクセルの数から、前記デジタル印刷像(14)の終わりの、前記基材収縮によって生じる最小のピクセル間隙(11)のピクセルの数を減算したものから生じる、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記計算機(6)は、前記デジタル印刷像(14)の前記画像部分(9)を複数の四角形のデータブロック(10)に分割し、
前記データブロック(10)の数は、分割されるべき各前記画像部分(9)における、前記基材収縮によって失われるピクセルの数から生じる、
請求項記載の方法。
【請求項4】
作成された前記データブロック(10)の高さおよび幅、その実際位置のX座標およびY座標、作成された前記データブロック(10)の計算された前記目標位置ならびに発生している前記1ピクセルの幅の間隙(11)の位置が、前記計算機(6)によって、デジタルルックアップテーブルに格納される、
請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記計算機(6)による、隣接するピクセルのデジタル画像データによる、作成された前記データブロック(10)間の前記1ピクセルの幅の間隙(11)の充填は、隣接する2つの各ピクセルのうちの少なくとも1つのピクセルの前記デジタル画像データを補間することで行われ、
補間するために、前記隣接するピクセルのそれぞれ低い方の値、それぞれ高い方の値、平均値または中央値が使用される、
請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記基材収縮の考慮が、前記デジタルで存在する作成されるべき印刷像(13,14)において、前記計算機によって、それぞれ前記デジタル印刷像(13,14)のX方向およびY方向において行われ、
前記方法による前記基材収縮の補償が、2回の過程において、前後してそれぞれX方向およびY方向における前記基材収縮に対して実行される、
請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記デジタルで存在する作成されるべき印刷像(13,14)が、前記計算機によって少なくとも4つの四分区間に分割され、前記方法による前記基材収縮の補償が、前後してそれぞれ個々の四分区間に対して実行される、
請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記デジタルで存在する作成されるべき印刷像(13,14)は、ハーフトーンデータから生じ、印刷前の、前記方法による前記基材収縮の補償の後に、前記計算機(6)によって網目スクリーン化される、
請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記方法による前記基材収縮の補償は、インクジェット印刷プロセスに整合されており、前記補償されたデジタル印刷像(17)の印刷は、インクジェット印刷機(7)において実行される、
請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷プロセスの間の基材収縮の補償方法に関する。
【0002】
本発明はデジタル印刷の技術分野に属する。
【背景技術】
【0003】
印刷プロセスでは、そこで使用されている印刷基材の種々の変形が生じる。例えば、印刷インクの塗布による印刷基材内への液体浸入によって、印刷基材の幅が広がり、ひいては印刷像が歪んでしまうことが知られている。印刷像のこのような歪みは、少なくとも部分的に、インクが乾燥した後に元の状態に戻るが、複数の色分解版を重ねる際には、相応に考慮されなければならない。なぜならそうでない場合には、個々の色分解版を重ねて印刷する際に、見当の問題が生じてしまうからである。
【0004】
しかしインクジェット印刷では、さらに別の問題が発生する。インクジェット印刷時には多くの場合にインクは極めて水っぽいので、印刷が施された印刷基材をさらに処理することを可能にするためには、持ち込まれたこのような水分は、インクの乾燥によって、印刷基材からできるだけ迅速に再び取り除かれなければならない。このようなインクの乾燥は、印刷基材に熱を加える、インクジェット印刷機の固有の乾燥コンポーネントにおいて行われる。これは極めて迅速に行われなければならないので、相応に高いエネルギー量もしくは熱量によって処理される。しかしこれによって、インクから水分が取り除かれるだけでなく、印刷基材全体からも水分が取り除かれてしまう。印刷基材におけるこのような水分除去によって、通常は台形状または凸状の外観を呈する、印刷基材の非線形の収縮が生じてしまう。このような形態の収縮は、紙の搬送によって乾燥過程中に生じるので、回避することはできない。基材の搬送が必要なことによって、付加的な力が印刷基材内に加えられ、これも同様に、収縮によって生じる歪みに寄与する。
【0005】
乾燥を含めた印刷プロセスの後に、印刷基材上の作成された印刷像が再び正しい幾何学形状的な寸法を有するために、加えられるべき画像データを相応に事前に歪める、すなわち拡大させなければならない。これは通常、使用されている印刷基材に関連して、印刷基材の幅および高さの0.5%~1%に相当する。0.5%とすると、これは、幅においては、1,050mmの典型的な枚葉紙幅の場合に、約5mmであり、高さにおいては、750mmの枚葉紙長の場合に、4mmである。ピクセルに関しては、これは、印刷される画像解像度が1,200dpiの場合には、方向毎に、約200~250ピクセルである。このような必要な事前の歪めを実行するために、従来技術から2つの主要なアプローチが知られている。
【0006】
1.画像データを計算機プロセスによってスケーリングする。しかしこれによっては、線形のスケーリングしか実行可能ではない。
2.上述した紙の伸びに対しては、オフセット印刷から、手動もしくは自動的な紙伸張補償が知られている。これらの方法は、既に網目スクリーン化されている画像データ上で行われる。これは、既に網目スクリーン化されているデータが操作されるか、または操作後に、網目スクリーンの再計算が必要であることを意味している。既に網目スクリーン化されているデータを操作することによって、網目スクリーン自体が破壊されてしまい、不揃いな印刷像が生じてしまう。
【0007】
自動的な紙伸張補償はここで、例えば、独国特許出願公開第102014013370号明細書(DE102014013370A1)から知られている。この文献は、印刷機における、局部的な見当ずれをモデルに基づいて補償する方法を開示しており、ここでは、モデルの作成が、印刷基材への湿気の浸入によって生じる、上述した紙の伸張に対する幾何学形状的な偏差を計算するために使用され、これによって、紙の伸張によって生じる、印刷像における幾何学形状的な偏差が、作成されたモデルに基づいて計算され、個々の色分解版が相応に修正され、これによって、紙の伸張に対抗することができる。しかしこのような方法は、これが既に網目スクリーン化されたデータ上に加えられ、これが、担当する計算機によって必要とされる計算時間に関して相応に高い消費をもたらし、さらに既に網目スクリーン化されている画像に対して悪影響を与えてしまうという、上で挙げた欠点を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって本発明の課題は、迅速にかつ効率的に、印刷プロセスの印刷の質を保証する、印刷プロセスの間の基材収縮の補償方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題は、基材収縮に関する考慮される情報を備えた、デジタルで存在する作成されるべき印刷像の複数の画像部分を、計算機による分割によって作成するステップと、計算機によって、作成された複数の各画像部分を複数のデータブロックに分割するステップと、計算機によって、デジタル印刷像におけるすべてのデータブロックの実際位置を格納するステップと、デジタル印刷像において1ピクセルの幅の間隙がデータブロック間に生じるように、各データブロックをそれぞれ1ピクセル分だけ相互に離すことで、計算機によって、デジタル印刷像におけるすべてのデータブロックの目標位置を計算するステップと、計算機によって、計算された目標位置に従って、デジタル印刷像内のデータブロックをコピーするステップと、計算機によって、発生している1ピクセルの幅の間隙の位置を計算するステップと、計算機によって、隣接するピクセルのデジタル画像データによって、1ピクセルの幅の間隙を充填するステップと、補償されたデジタル印刷像を印刷機において印刷するステップとを含んでいる、計算機による、印刷機における印刷プロセスの間の基材収縮の補償方法によって解決される。
【0010】
この方法は、印刷基材の収縮によって結果として生じる印刷像の予期される収縮を、印刷されるべき印刷像を事前に歪めることによって補償することに基づく。まだ印刷されていないデジタル画像をこのように事前に歪めることは、最終的な作用において、画像データが操作されなければならない、ということを意味する。これは、相応する収縮が発生する印刷基材の領域において、相応する必要な拡張を実現するために、画像データを付け加えることによって行われる。このためには、使用されている印刷基材および使用されているインクにおいて予期されるべき収縮に関する情報が既知であることが必要である。したがって、このような情報によって、デジタルで存在する作成されるべき印刷像が相応に操作される。これは、デジタルで存在する画像が既に、印刷プロセスにおいて予期される収縮情報を含んでいることを意味している。次に、元来の本発明による方法が始まる。ここでは、デジタルで存在している画像が相応に、複数の水平な画像部分に分割される。ここから生じた各画像部分において、収縮されていない元来の印刷サイズに対する平均的な隔たりが特定される。次に、画像部分毎の存在する間隙の幅に基づいて、各画像部分の個々のデータブロックへの分割が、担当する計算機によって、前段階において行われる。次に、存在しているデジタル印刷像における個々のデータブロックの位置が格納される。次に、計算機によって、個々のデータブロックが次のように相互に離される。すなわち、個々のデータブロックの間で、それぞれ、1つのピクセルが空いたままであるように、相互に離される。画像部分とブロックの数はそれぞれ、収縮によって生じた最大の間隙に関連して計算されるので、これによって、印刷像の収縮の完全な補償のために個々のデータブロックが相互に離される。したがって、個々のデータブロックのこのように計算された目標位置によって、新たなデジタル印刷像が作成され、ここでは、発生している、1ピクセルの幅の間隙を含めたこのようなシフトによって、収縮が完全に補償されている。ここで、印刷像において、個々のデータブロックの間に間隙が存在しているので、このような間隙は、各隣接しているピクセルのデジタル画像データによって充填される。この間隙はそれぞれ、1ピクセルの幅しかないので、これは、結果として生じる印刷像において、実際には人間の眼に見えず、したがって、後の印刷像において、目に見えるアーチファクトを生成しない。このように補償された、デジタル印刷像は次に、印刷機において、相応に印刷される。乾燥プロセスの間に発生するこの基材収縮によって、事前に歪められた、はじめはデジタルであり、その後作成された印刷像から、予期された幾何学形状的な寸法に正確に相当する、完成した印刷像が得られる。
【0011】
この方法の有利な発展形態は、属する従属請求項ならびに属する図面による説明から明らかになる。
【0012】
本発明による方法の有利な発展形態では、基材収縮の考慮は、デジタルで存在する作成されるべき印刷像において、計算機によって、次のように行われる。すなわち、デジタル印刷像の大きさが既に、印刷プロセスにおいて予期されるべき基材収縮に整合されるように行われる。本発明による方法が、予期されているように機能するために、デジタルで存在する作成されるべき印刷像は、既に、予期されるべき基材収縮に合わせられていなければならない。すなわち、使用される各基材に対する、基材収縮に関する情報は、本発明による方法の開始時に既に存在していなければならず、これによって、デジタルで存在する作成されるべき印刷像を、本発明による方法の準備時に既に整合させることができる。このような情報は、使用されている印刷条件、例えばインクおよび基材に対する収縮情報を含んでいるデータバンクから取り出すことができる。所望の印刷プロセスに対する必要な情報がまだ存在していない場合には、これは、テスト印刷によって求められなければならい。このような場合にはこれらの情報を、比肩可能な印刷条件を有する後の印刷プロセスのために、データバンクに付け加えることができる。
【0013】
本発明による方法の別の有利な発展形態では、計算機は、デジタル印刷像を、条片状の画像カットから成る複数の画像部分に分割する。これらの画像部分は、印刷方向において、または印刷方向に対して横向きに配向されている。ここで画像部分の数は、デジタル印刷像の初めの、基材収縮によって生じる最大のピクセル間隙のピクセルの数から、デジタル印刷像の終わりの、基材収縮によって生じる最小のピクセル間隙のピクセルの数を減算したものから生じる。デジタルで存在する印刷像が分割される画像部分の数は、既に、基材収縮に関する情報について整合されたデジタル印刷像が有する、基材収縮によって生じる最大のピクセル間隙のピクセルの数に直接的に関連している。基材収縮によって生起される最大のピクセル間隙が大きいほど、より多くの画像部分が必要になる。なぜなら、個々の画像部分の間に、1ピクセルを超える収縮差が存在してはいけないからである。これらの画像部分は、ここで、長方形とも称され得る、条片状の画像カットに相当する。
【0014】
本発明による方法の別の有利な発展形態では、計算機は、デジタル印刷像の画像部分を、四角形のデータブロックに分割する。ここでこれらのデータブロックの数は、分割されるべき各画像部分における、基材収縮によって失われるピクセルの数から生じる。個々の条片状の画像部分はここで、個々の四角形のデータブロックに分割される。四角形の様式はここで重要でない。理論的には、個々のデータブロックが相互に離され、これによって、1ピクセルの幅のデータ間隙が作成されることが保証されている限りは、別の幾何学形状的な形状も使用可能である。複数のピクセルを含むより大きな間隙は、結果として生じる画質の理由から避けられるべきである。データブロックの数はここで、直接的に、各条片状の画像カットにおける、基材収縮によって失われるピクセルの数に関連している。個々の条片状画像部分において、基材収縮によって失われるピクセル数が増えるほど、条片状の画像部分はより多くのデータブロックに分割されなければならず、これによって、1ピクセルの幅のピクセル間隙分相互に離すことによって、基材収縮によって生じるピクセルの間隙を補償することができる。
【0015】
本発明による方法の別の有利な発展形態では、作成されたデータブロックの高さおよび幅、その実際位置のX座標およびY座標、作成されたデータブロックの計算された目標位置ならびに発生している1ピクセルの幅の間隙の位置が、計算機によって、デジタルルックアップテーブルに格納される。作成されたデータブロックの正確な位置、すなわち高さおよび幅ならびにデジタル印刷像におけるデータブロックのX座標およびY座標はここで、計算機によって、デジタルルックアップテーブルに格納され、これによって、個々のデータブロックのさらなる処理のために、できるだけ効率的に使用可能になる。同様のことが、シフト後の個々のデータブロックの目標位置ならびにシフトによって作成された、1ピクセルの幅の間隙に対しても当てはまる。
【0016】
本発明による方法の別の有利な発展形態では、計算機による、隣接するピクセルのデジタル画像データによる、作成されたデータブロック間の1ピクセルの幅の間隙の充填は、隣接する2つの各ピクセルのうちの少なくとも1つのピクセルのデジタル画像データを補間することで行われる。ここで、補間するために、隣接するピクセルのそれぞれ低い方の値、それぞれ高い方の値、平均値または中央値が使用される。シフトによって生じる、作成されたデータブロックの間の、1ピクセルの幅の間隙は、画像アーチファクトを阻止するために、再び充填されなければならない。これを、人間の眼にできるだけ気づかれないように行うために、このようなデータを補間によって再び充填することが考えられる。補間のために、ここでは、各隣接するピクセルの画像データは、個々のピクセル間隙のピクセルの位置で使用される。このピクセル間隙はそれぞれ1ピクセルの幅しかないので、それぞれ直接的に左側に隣接するピクセルおよび右側に隣接するピクセルの画像データを使用することが考えられる。ここでは補間のために、2つの隣接するデータピクセルのそれぞれ低い方の値、またはそれぞれ高い方の値、平均値または中央値が使用可能である。1つよりも多くの直接的に隣接するピクセルを左側または右側に引き寄せ、これによって、既に説明したように補間を実行することが可能である。
【0017】
本発明による方法の別の有利な発展形態では、基材収縮の考慮が、デジタルで存在する作成されるべき印刷像において、計算機によって、それぞれ、デジタル印刷像のX方向およびY方向において行われ、この方法による基材収縮の補償が、2回の過程において、前後してそれぞれ、X方向およびY方向における基材収縮に対して実行される。基材収縮のできるだけ完全な補償を実現することを可能にするために、これまでに記載した本発明による方法を2つの方向において実行することが考えられる。第1の試行においては、画像部分をそれぞれ、存在しているデジタル画像のX方向において作成し、ここから、個々のデータブロックを作成し、第2の試行においては、同じ方法を、画像部分およびデジタルデータブロックの作成のために、それぞれY方向において実施する。X方向およびY方向はここで、デジタル印刷像に適用されている座標系の2つの軸に相応する。ここで、第2の試行を、第1の試行の結果である、既に補償されているデジタル印刷像によって実行することが可能である。択一的に、両方の試行を並行に相互に無関係に実行することもできる。このような場合にはそれぞれ両方の試行は、収縮情報を伴う同じデジタル印刷像によって実行され、この場合には、結果として生じる2つの画像が、共通の、印刷されるべき1つの全体像に変換される。どのようなアプローチが使用されるのかは、実施されるべき印刷プロセスの各条件およびパラメータに関連する。
【0018】
本発明による方法の別の有利な発展形態では、デジタルで存在する作成されるべき印刷像が、計算機によって、少なくとも4つの四分区間(クォードラント)に分割され、この方法による基材収縮の補償が前後してそれぞれ、個々の四分区間に対して実行される。本発明による方法をさらに正確に、かつ効率的にするために、デジタルに存在している印刷像を4つの四分区間に分割することができる。この場合には個々の四分区間のそれぞれにおいて、本発明による方法が前後して実行され、このようにして作成された補償された四分区間が、再び、補償されたデジタル印刷像にまとめられ、印刷プロセスを実行するために印刷機に提供される。個々の四分区間の大きさおよび正確な位置は、ここでも同様に、補償されるべき印刷プロセスの印刷条件ならびに使用される印刷基材および作成されるべき印刷像に関連する。
【0019】
本発明による方法の別の有利な発展形態では、デジタルで存在する作成されるべき印刷像はハーフトーンデータから生じ、印刷前の、この方法による基材収縮の補償の後に、計算機によって網目スクリーン化される。本発明に相応に補償されたデジタル印刷像は、ここで、ワークフローの範囲において、前段階において、ラスタイメージプロセッサに提供される。ここでこれは網目スクリーン化され、次に、元来の印刷のために、印刷機に提供される。網目スクリーン化の前に本発明による方法を実施することの利点は、再度の網目スクリーン化が不要であるということ、もしくは網目スクリーン化された印刷像が、あとから、補償方法によって悪影響されない、ということである。
【0020】
本発明による方法の別の有利な発展形態では、この方法による基材収縮の補償は、インクジェット印刷プロセスに整合されており、補償されたデジタル印刷像の印刷は、インクジェット印刷機において実行される。乾燥による、上述した基材収縮はとりわけ、インクジェット印刷プロセスの問題であり、このために、本発明による方法は、発生している基材収縮の補償のために、特にインクジェット印刷機に対して適用される。別の印刷プロセス、例えばオフセット印刷への、本発明による方法の適用は理論的に可能であるが、ここでは、インクが含有している水分量が格段に少ないために、格段に僅かな基材収縮しか生じないので、元来、これは不必要である。しかし、何らかの理由から、オフセット印刷機においても、このような基材収縮が発生する場合には、この方法は当然ながら、オフセット印刷機にも適用可能である。
【0021】
本発明自体ならびに構造的かつ/または機能的に有利な本発明の発展形態を以降で、属する図面に基づいて、少なくとも1つの有利な実施例に基づいて、より詳細に説明する。図面では相応する要素に、それぞれ同じ参照番号が付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明による方法が適用されるインクジェット枚葉印刷機
図2】基材収縮情報を伴うデジタルで存在する印刷像および画像部分およびブロックへの分割
図3】基材収縮補償のためのシフトされたデータブロックを伴うデジタル印刷像
図4】完全に補償されたデジタル印刷像
図5】本発明による方法の概略的な流れ
【発明を実施するための形態】
【0023】
有利な実施形態の適用領域は、インクジェット印刷機7である。このような印刷機7の基本的な構造の例が、図1に示されている。このような印刷機7は、印刷ヘッド5による印刷が行われる印刷ユニット4内へ印刷基材2を供給するためのフィーダ1を含んでおり、さらに印刷基材は乾燥機8において乾燥され、デリバリ3に到る。ここでこれは、枚葉インクジェット印刷機7であり、これは、制御計算機6によってコントロールされる。
【0024】
図5に示されている本発明による方法の有利な実施形態では、どのように、デジタル印刷像13が、収縮された状態14から、補償された目標状態17に移行されるのかが説明されている。全体的な経過は、計算機によって制御される。これは枚葉インクジェット印刷機7の制御計算機6によって実行される、または有利な実施形態では、印刷前段階の計算機によって実行される。図2は、初期状態に対する例を示している。ここでは黒で、外縁で、目標状態が示されており、これは、大きさ200×200ピクセルを有するデジタル印刷像13を示している。外縁の内部には、乾燥後の実際に印刷された実際状態が示されている。このような実際状態は、本発明による、デジタルの、対抗した歪めを実行することを可能にするために、デジタル印刷像13のデジタルの事前歪めによって作成され、ここで、事前に歪められたデジタルの印刷像14が生じる。これは図2の例では、左側下方で3ピクセル分だけ小さく、これは197ピクセルの実際状態を生じさせ、左側上方で10ピクセル分だけ小さく、これは相応に190ピクセルの実際状態を生じさせる。事前に歪められたデジタル印刷像14は、「10-3+1=8」個の画像部分9に分割され、これによって、印刷像の本発明による補償に応じて、それぞれ、各画像部分9で、画像間隙11毎に1ピクセルだけの隔たりを得る。これは、大きい偏差-小さい偏差+1の一般的な式に相当する。
【0025】
次のステップでは、どの位多くのデータブロック10が、画像部分9毎に必要とされるのかが計算される。この例では3つのピクセルが失われた、最も下方の画像部分9では、4つのデータブロック10が必要である。したがって、データブロック10の数を計算するための一般的な式は、画像部分9において失われたピクセル+1である。ブロック10自身は、例では、200ピクセル÷8=25ピクセルの高さを有している。データブロック10の幅は、上述の式に即して、次のように選択される。すなわち、該当する画像部分9の実際状態において存在している197個のピクセルが均等に4つのブロックに分配されるように選択される。これはここでは、すなわち「3個の49ピクセル」および「1個の50ピクセル」に相当する。これはすべての8つの画像部分9に対して繰り返され、この結果、以下のデータに示されるような、分割されたデジタル印刷像15が生じる。
【0026】
画像部分1 それぞれ25ピクセルの高さおよび49ピクセルの幅を有する3個のブロックと、25ピクセルの高さおよび50ピクセルの幅を有する1個のブロックと、の4個のブロック(全体で197ピクセル)
画像部分2 それぞれ25ピクセルの高さおよび39ピクセルの幅を有する4個のブロックと、25ピクセルの高さおよび40ピクセルの幅を有する1個のブロックと、の5個のブロック(全体で196ピクセル)
画像部分3 それぞれ25ピクセルの高さおよび32ピクセルの幅を有する3個のブロックと、それぞれ25ピクセルの高さおよび33ピクセルの幅を有する3個のブロックと、の6個のブロック(全体で195ピクセル)
画像部分4 それぞれ25ピクセルの高さおよび27ピクセルの幅を有する2個のブロックと、それぞれ25ピクセルの高さおよび28ピクセルの幅を有する5個のブロックと、の7個のブロック(全体で194ピクセル)
画像部分5 それぞれ25ピクセルの高さおよび24ピクセルの幅を有する7個のブロックと、25ピクセルの高さおよび25ピクセルの幅を有する1個のブロックと、の8個のブロック(全体で193ピクセル)
画像部分6 それぞれ25ピクセルの高さおよび21ピクセルの幅を有する6個のブロックと、それぞれ25ピクセルの高さおよび22ピクセルの幅を有する3個のブロックと、の9個のブロック(全体で192ピクセル)
画像部分7 それぞれ25ピクセルの高さおよび19ピクセルの幅を有する9個のブロックと、25ピクセルの高さおよび20ピクセルの幅を有する1個のブロックと、の10個のブロック(全体で191ピクセル)
画像部分8 それぞれ25ピクセルの高さおよび17ピクセルの幅を有する8個のブロックと、それぞれ25ピクセルの高さおよび18ピクセルの幅を有する3個のブロックと、の11個のブロック(全体で190ピクセル)
【0027】
分割されたデジタル印刷像15のこのような状態は、既に図2に示されている。印刷像外縁は、目標サイズ200×200ピクセルを黒で示しており、計算されたデータブロック10を自身の実際位置で示している。これまでに計算されたデータ、すなわち、データブロック10の高さおよび幅ならびに自身の実際位置のX位置およびY位置は、LUT(「ルックアップテーブル」)に格納される。
【0028】
次のステップでは、データブロック10の目標位置が計算される。このためにデータブロック10はそれぞれ、ブロック10同士の間に常に1ピクセル分の隔たりが存在しているように、X方向においてシフトされる。ここでは、シフトは、失われたピクセルが間隙11として見える方向で行われる。この結果は、図3において、シフトされた、デジタル印刷像16の形態で示されている。XおよびY方向における、データブロック10の目標位置は同様に、LUTに格納される。データブロック10のこの目標位置に並行して、ここでさらに、ギャップ領域、すなわちデータブロック10の間の、作成された1ピクセルの幅の間隙の位置および大きさが求められ、同様にLUTに格納される。目標印刷像の黒い外縁およびデータブロック10の実際位置に対して付加的に、この図では、ギャップ領域を、画像間隙11の形態で良好に見て取ることができる。
【0029】
次にLUTの情報によって、最終ステップにおいて、存在しているデジタル印刷像13の元来の整合が、計算機6において実行される。このために、memmove、C/C++データ移行命令、またはmemcpy、C/C++データコピー命令によって、データブロック10が、実際位置から目標位置へシフトもしくはコピーされる。さらに、失われたピクセルを作成するために、補間のために、1ピクセルの幅の間隙の補間されるべきピクセルの各隣接するピクセルが考察され、これら2つのピクセルのそれぞれ低い方の色値が充填に採用される。図4は、この例に対して、補間された、デジタル印刷像17の状態を示しており、ここでは、補間された画像間隙12としての、補間によって充填されたギャップ領域が、良好に見て取れる。
【0030】
ここで、図2から図4における例は、印刷が行われる、基材収縮情報を含めた最終的なデジタル画像の計算時の中間ステップを表している、ということに留意されたい。したがってこれは、実際に印刷され、乾燥された印刷像の所望の最終状態に相当する。枚葉インクジェット印刷機7に提供される、補償された、すなわち事前に歪められたデジタル印刷像17は、この所望の印刷された最終状態に相当せず、台形状または凸状に、対抗して歪められた印刷像に相当する。
【0031】
図示された実施例は、X方向に対する作用を示している。別の有利な実施形態では、両方の方向、すなわちX方向とY方向が考察される。これはこの場合には、2回の過程において前後して行われる。一方の方向が非線形に歪められており、他方の方向が線形に歪められている特別な場合には、再計算は1回の過程において実行される。さらにこの例は、枚葉紙の1つの四分区間もしくは1つのコーナーしか考察していない。別の有利な実施形態では、これに対して、枚葉紙2の4つの四分区間もしくは4つのコーナーが並行して考察され、さらに並行して計算される。再計算は、この場合には、枚葉紙2の中心から始まって、4つのコーナーへ並行して行われる。
【0032】
既知の方法とは異なり、利点は、この方法の速度と、ハーフトーンデータへの適用にある。速い速度は、近年の枚葉インクジェット印刷機7にとって必要である。最終的にここでは、1時間あたり2500枚の枚葉紙2のスループットが得られる。すなわち印刷が完全に可変の場合に、1時間あたり2500の異なるデータセットが計算されるはずである。ハーフトーンデータの利点は、データが、データを歪めた後に初めて網目スクリーン化されるということであり、これによって、網目スクリーンのコストのかかる再計算が回避される。さらに、既に作成されている網目スクリーンへの悪影響はない。
【符号の説明】
【0033】
1 フィーダ
2 印刷基材/枚葉紙
3 デリバリ
4 インクジェット印刷ユニット
5 インクジェット印刷ヘッド
6 計算機
7 インクジェット印刷機
8 乾燥機
9 画像部分
10 画像/データブロック
11 画像/ピクセル間隙
12 補間された画像間隙
13 デジタル印刷像
14 事前に歪められたデジタル印刷像
15 分割されたデジタル印刷像
16 シフトされたデジタル印刷像
17 補間されたデジタル印刷像
図1
図2
図3
図4
図5