IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ゲオルク フィッシャー ヴァガ ナームローゼ フェノーツハップの特許一覧

<>
  • 特許-連結装置 図1
  • 特許-連結装置 図2
  • 特許-連結装置 図3
  • 特許-連結装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】連結装置
(51)【国際特許分類】
   F16L 21/08 20060101AFI20230208BHJP
   B21D 53/36 20060101ALI20230208BHJP
   B21D 28/24 20060101ALI20230208BHJP
   B23P 9/04 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
F16L21/08 G
B21D53/36 Z
B21D28/24 C
B23P9/04
【請求項の数】 3
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018214712
(22)【出願日】2018-11-15
(65)【公開番号】P2019090532
(43)【公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】2019920
(32)【優先日】2017-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】515157471
【氏名又は名称】ゲオルク フィッシャー ヴァガ ナームローゼ フェノーツハップ
【氏名又は名称原語表記】Georg Fischer Waga N.V.
【住所又は居所原語表記】Lange Veenteweg 19, NL-8161 PA Epe, Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヘル ヒュルセボス
(72)【発明者】
【氏名】アリエン コルネリス ファン デル モレン
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-525961(JP,A)
【文献】特開2000-130660(JP,A)
【文献】特開2011-163473(JP,A)
【文献】実開平01-140093(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第00974780(EP,A1)
【文献】特開昭52-061826(JP,A)
【文献】特表2016-503862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 21/08
B21D 53/36
B21D 28/24
B23P 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管(2)の連結装置(1)であって、
スリーブ(13)であって、前記管(2)と、前記スリーブ(13)と前記管(2)との間にシールを提供するための少なくとも1つのシーリング部材(5)と、を保持するスリーブ(13)と、
前記スリーブ(13)および前記管(2)に圧力を加える押圧部材(6)と、
前記管(2)の外周の少なくとも一部に沿って延びるグリップ要素(4)であって、前記グリップ要素(4)から打ち抜かれたスリット状開口部(8)に隣接して前記グリップ要素(4)の平面から押し出された窪み部(9)が設けられている、グリップ要素(4)と、
を備える、連結装置(1)において、
前記装置は、複数のグリップ要素(4)を備え、各前記グリップ要素(4)は、少なくとも1つの押圧部材(6)によって支持されており、該押圧部材(6)には、前記グリップ要素(4)の平面から押し出された前記窪み部(9)の背面と係合する突出部(15)が設けられていることを特徴とする、連結装置(1)。
【請求項2】
各前記窪み部(9)の頂部の前面(9’)は、前記グリップ要素(4)の平面を基準にして約90°の角度を成していることを特徴とする、請求項記載の連結装置。
【請求項3】
前記押圧部材(6)の前記突出部(15)は、前スリット状開口部(8)を閉塞することを特徴とする、請求項1または2記載の連結装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管のための連結装置であって、管と、スリーブと管との間にシールを提供するための少なくとも1つのシーリング部材とを保持するスリーブと、スリーブおよび管に圧力を加えるための押圧部材と、を備える、管のための連結装置に関する。
【0002】
このような連結装置の比較的最近の例は、本出願人に譲渡された国際特許出願である国際公開第2015/177259号に開示されている。他の例は、国際公開第2007/055576号、国際公開第2010114366号および国際公開第2014/090667号であり、すべてが本出願人の名義になっている。
【0003】
本出願人は、この分野における主導的な企業であり、このことは欧州特許第0974780号明細書の1998年の発明で具体化された本発明に関する最も近い従来技術によって例証されている。欧州特許第0974780号明細書は、前段部による管のための連結装置を開示しており、グリップ要素には、グリップ要素から打ち抜かれたスリット状開口部に隣接してグリップ要素の平面から押し出された窪み部が設けられている。また本発明は、そのような連結装置に使用されるグリップ要素を製造する方法、および前述のグリップ要素に関する。
【0004】
欧州特許第0974780号明細書の前世紀の技術を用いれば、鋳鉄、鋼およびステンレス鋼の管のような硬質の管が例示される多種多様な管を用いて引張歪み抵抗の改善が可能であることが判明した。同時に、従来技術の連結装置は、PVC、ポリエチレン、アスベストセメントの管などの、より軟質の管にも適切に使用されていた。
【0005】
しかしながら、長期にわたる実地において、欧州特許第0974780号明細書の装置を適用した結果はかなり満足のいくものであったが、保護エポキシ層または亜鉛層が施された鋳鉄管などの、被覆層が施された硬質管に連結装置が使用されたときに問題が生じるおそれがあったことが認められた。このような管を用いれば、引張歪み抵抗は所望されるよりも低くなるであろう。
【0006】
従来技術の連結装置における別の引張歪み抵抗の問題は、連結装置がより軟質の管に適用されたときに生じるおそれがあった。欧州特許第0974780号明細書による装置の窪み部は、連結装置のグリップ要素が管の表面でチーズスライサとして作用するように、そのようなより軟質のタイプの管にくい込むおそれがあり、そのような過程により、連結装置は、管のグリップを徐々に失うことになる。本出願人は、欧州特許第1138999号明細書に開示されているように、この問題の解決策を以前に試みたが、まだ改善の余地がある。
【0007】
本発明は、1つ以上の上述の問題の解決するまたは少なくとも軽減する手段を提供することを目的としており、この目的のために、付属の特許請求の範囲の1つ以上の特徴に従って、連結装置、グリップ要素を製造する方法、およびそのようなグリップ要素が提案されている。
【0008】
本発明の第1の態様では、前段部による連結装置において、連結装置は、管の外周の少なくとも一部に沿って延びるグリップ要素であって、グリップ要素から打ち抜かれたスリット状開口部に隣接してグリップ要素の平面から押し出された窪み部が設けられている、グリップ要素を備える。また連結装置は、スリット状開口部の縁部にピーニング作業が施されているという新規な特徴を有する。これは、グリップ要素の平面から押し出された窪み部の構造を含むグリップ要素に使用される金属の結晶構造を変更するという利点をもたらす。したがって、窪み部はより硬くなり、その効果が高められる。択一的に、窪み部の硬度を犠牲にせずとも、より安価な基材(この基材からグリップ要素が製造される)を適用することによってコストを削減することが可能である。別の利点は、より安価な基材を用いれば、本発明の連結装置は、保守または交換をすることなくより長期にわたって耐久性を有することができることにある。
【0009】
スリット状開口部の縁部にピーニング作業を施す適切でかつ好適な方法は、グリップ要素の平面から窪み部が押し出される前にこの作業を実行することである。これは、適切なピーニング工具を用いて行うことができる。
【0010】
窪み部の効果の改善に役立つ特徴によれば、各窪み部の頂部の前面がグリップ要素の平面を基準にして約90°の角度を成している。
【0011】
また本発明は、本発明に係る連結装置に使用されるグリップ要素を製造する方法において具体化されており、この方法において、スリット状開口部をプレートに打ち抜き、成形プロセスにおいて、窪み部を開口部に隣接してプレートの平面から押し出す。
【0012】
本発明によれば、プレートの平面から窪み部を押し出す前に、まずスリット状開口部の縁部にピーニング作業を施す。
【0013】
これに対応して、また本発明は、グリップ要素から打ち抜かれたスリット状開口部に隣接してグリップ要素の平面から押し出された窪み部を備えたグリップ要素であって、スリット状開口部にピーニング処理が施されることにより具体化されている。好適な実施形態では、スリット状開口部の縁部のピーニングは、窪み部がグリップ要素の平面から押し出される前に実行される。
【0014】
前述の特徴または特徴の組み合わせに依存せずに適用することができる本発明の別の態様では、各グリップ要素は、少なくとも1つの押圧部材によって支持されており、押圧部材には、そのような押圧部材上に取り付けられた対応するグリップ要素の平面から押し出された窪み部の背面に係合する突出部が設けられている。
【0015】
グリップ要素の平面から押し出された窪み部の背面に係合する突出部は、連結装置がより軟質の管に使用される場合に、前述のチーズスライサの作用に対抗する有効な手段である。この対抗作用は、押圧部材の突出部が窪み部の隣に存在するグリップ要素に設けられた開口部を閉塞する実施形態において特に促進される。窪み部の背面に係合する突出部の構造により、管によって連結装置に及ぼされる歪みに起因してグリップ要素に作用する力が効果的に押圧部材に伝達されて、連結装置の構造によって吸収される。
【0016】
本発明を、付属の特許請求の範囲に限定しない本発明に係る連結装置、グリップ要素およびグリップ要素を製造する方法の例示的な実施形態の図面を参照して、以下にさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る連結装置の側断面図を示している。
図2】AおよびBは、グリップ要素に設けられた窪み部を作製するための、従来技術による2つのプロセスステップをそれぞれ概略的に示している。Cは、従来技術に従って作製された窪み部付近のグリップ要素の一部の側断面図を示している。
図3】A、BおよびCは、グリップ要素に設けられた窪み部を作製するための、本発明によるそれぞれの3つのプロセスステップを概略的に示している。Dは、本発明に従って作製された窪み部付近のグリップ要素の一部の側断面図を示している。
図4】Aは、本発明の連結装置の押圧部材と共にグリップ要素の側断面図を示している。Bは、本発明の連結装置の押圧部材と共にグリップ要素の分解図を示している。
【0018】
図面において、同じ参照符号が付されている場合、常にこれらの符号は同一の部品を指している。
【0019】
図1は、本発明の連結装置1を側断面図で示している。連結装置1は、管2と、スリーブ13と管2との間にシールを提供するための少なくとも1つのシーリング部材5とを保持するスリーブ13を備える。シーリング部材5は、クリップ14を用いてスリーブ13に取り付けてよい。さらに、連結装置1は、スリーブ13および管2に圧力を加えるための押圧部材6を備えている。作動手段3,3’が、押圧部材6に圧力が加えられるよう調整するために設けられており、管2の外周の少なくとも一部に沿って延びるグリップ要素4が、押圧部材6によって支持されている。このようにして、グリップ要素4は、管2を押圧するように配置されている。以下にさらに説明するように、グリップ要素4は、窪み部がグリップ要素の平面から押し出された状態で形成されている。
【0020】
図2のAおよびBにおいて、図1に示したように連結装置に使用されるグリップ要素を製造するための従来技術の方法を説明する。この方法では、打抜き工具10が使用されて、プレート7にスリット状開口部8が設けられる。これは図2のAにおいて上から下に、等角図、側面図および断面図で示されている。同様に図2のBは、後続のステップにおいてプレス工具11が使用されて、開口部8に隣接してプレート7の平面から窪み部9が押し出されることを示している。
【0021】
図2のCは、プレート7の平面から押し出された結果として得られた窪み部9の1つを大きな尺度で示している。この従来技術のプロセスでは、窪み部9の頂部の前面9’が、プレート7の平面を基準にして50°~70°の角度を成していて、グリップ要素を最終的に形成する。
【0022】
これに対応して、図3のA~Cは、図1に示されたような連結装置に使用されるグリップ要素4を製造するための本発明の方法を示している。
【0023】
本発明の方法では、図3のAにおいて上から下に、等角図、側面図および断面図で示されたように、最初に、打抜き工具10が使用されて、プレート7にスリット状開口部8が設けられる。同様に、図3のBは、後続のステップにおいて、スリット状開口部8の縁部8’にピーニング工具12を用いた作業が施されることを示している。図3のCは、その後さらなるプロセスにおいてスリット状開口部8の縁部8’のピーニングが完了すると、プレス工具11が使用されて、開口部8に隣接してプレート7の平面から窪み部9が押し出され、最終的なグリップ要素4が形成されることを示している。
【0024】
図3のDは、プレート7の平面から押し出された結果として得られた窪み部9の1つの詳細図を提供している。窪み部9の頂部の前面9’は、グリップ要素4のプレート7の平面を基準にして約90°の角度を成している。
【0025】
以下、図4のAおよびBを用いて、本発明の別の態様を説明する。図4のBは、図3のA~Dに関して説明されるように、プレート7から製造されたグリップ要素4と、単一の押圧部材6とを等角図で別々に示している。このような押圧部材6が複数協働して、図1において言及された連結装置1における管2の外周の周りにリングを形成する。図4のAでは、単一の押圧部材6が断面図で示されており、単一のグリップ要素4が、この押圧部材6に取り付けられている。しかし、この押圧部材6が複数のグリップ要素を支持すること、または複数の押圧部材が単一のグリップ要素を支持することも可能である。
【0026】
図1に示されたように完成した連結装置では、各々の単一の押圧部材6が単一のグリップ要素4を支持することが好ましい。ゆえに、複数の押圧部材6が協働して、総じて図1に示された管2を取り囲むすべてのグリップ要素4を支持する。したがって、取付け状態では、グリップ要素4は、連結装置1に接続された管2の外周全体に沿って延びている。
【0027】
図示された押圧部材6に、グリップ要素4に面する側で複数の突出部15が設けられていることが、図4のAおよびBの両方に明確に示されている。好ましくは、図4のAに示されたように、グリップ要素4が押圧部材6に取り付けられたときに、押圧部材6の突出部15が、窪み部9の隣に存在する、グリップ要素4に設けられた開口部8を閉塞する形で、これらの突出部15は、グリップ要素4の平面から押し出された窪み部9の背面に係合するように設計されている。またこの構造は、管2によって連結装置1に及ぼされる歪みに起因してグリップ要素4に作用する力が効果的に押圧部材6に伝達されて、連結装置の構造によって吸収されるようになっている。
【0028】
本発明は、本発明の例示的な実施形態を参照して上述の記載において論じられてきたが、本発明は、この特定の実施形態に制限されるものではない。この実施形態は、本発明から逸脱することなく多くの形態で変更することができる。したがって、この論じられた例示的な実施形態は、付属の特許請求の範囲を厳密にこの実施形態に従って解釈するために使用されるものではない。その逆に、特許請求の範囲をこの例示的な実施形態に限定する意図はなく、実施形態は、単に付属の特許請求の範囲の文言を説明することを意図している。したがって、本発明の権利保護の範囲は、付属の特許請求の範囲に従ってのみ解釈され、特許請求の範囲の文言における起こりうる曖昧さは、この例示的な実施形態を用いて解消しなければならない。
図1
図2
図3
図4