(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】被覆砂およびその製造方法と、鋳型の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22C 1/22 20060101AFI20230208BHJP
C08G 8/28 20060101ALI20230208BHJP
C08L 61/08 20060101ALI20230208BHJP
C08L 101/02 20060101ALI20230208BHJP
C08K 9/04 20060101ALI20230208BHJP
B22C 9/02 20060101ALN20230208BHJP
【FI】
B22C1/22 L
C08G8/28 Z
C08L61/08
C08L101/02
C08K9/04
B22C9/02 101Z
B22C9/02 103C
(21)【出願番号】P 2018219593
(22)【出願日】2018-11-22
【審査請求日】2021-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000165000
【氏名又は名称】群栄化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【氏名又は名称】柳井 則子
(72)【発明者】
【氏名】竹下 幸佑
【審査官】松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-093443(JP,A)
【文献】特開2017-064750(JP,A)
【文献】特開2005-095932(JP,A)
【文献】特開2017-109206(JP,A)
【文献】特開2003-164943(JP,A)
【文献】特開2015-205337(JP,A)
【文献】特開2006-255782(JP,A)
【文献】特開2016-083664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 1/00
B33Y 10/00
B33Y 70/00
B28B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルフリルアルコールおよびフラン樹脂の少なくとも一方である酸硬化性粘結剤によって結合される被覆砂であって、
耐火性粒状材料にノボラック型フェノール樹脂と酸触媒とが被覆され
、
前記酸触媒が、前記酸硬化性粘結剤を硬化させる触媒であり、
前記酸触媒の含有量が、前記耐火性粒状材料100質量部に対して0.1~1質量部である、被覆砂。
【請求項2】
前記ノボラック型フェノール樹脂の質量平均分子量が200~6500である、請求項1に記載の被覆砂。
【請求項3】
前記ノボラック型フェノール樹脂の含有量が、前記耐火性粒状材料100質量部に対して0.4質量部以上である、請求項1または2に記載の被覆砂。
【請求項4】
前記酸触媒が、硫酸、リン酸、スルホン酸およびカルボン酸からなる群より選ばれる1種以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の被覆砂。
【請求項5】
3次元積層造形用である、請求項1~4のいずれか一項に記載の被覆砂。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の被覆砂の製造方法であって、
前記ノボラック型フェノール樹脂の融点以上、前記ノボラック型フェノール樹脂の熱分解温度未満に加熱した耐火性粒状材料に、前記ノボラック型フェノール樹脂を添加して樹脂添加砂を得る工程と、
前記樹脂添加砂に前記酸触媒の溶液を添加する工程と、
を含む、被覆砂の製造方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の被覆砂の製造方法であって、
前記ノボラック型フェノール樹脂の融点以上、前記酸触媒の熱分解温度未満に加熱した耐火性粒状材料に、酸触媒添加樹脂を添加する工程を含み、
前記酸触媒添加樹脂は、前記ノボラック型フェノール樹脂の溶融物に前記酸触媒を添加した後に冷却した固化物である、被覆砂の製造方法。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載の被覆砂の製造方法であって、
耐火性粒状材料に、前記ノボラック型フェノール樹脂と前記酸触媒との混合溶液を添加する工程を含み、
前記工程における耐火性粒状材料の温度は、前記酸触媒の熱分解温度未満である、被覆砂の製造方法。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載の被覆砂に、
フルフリルアルコールおよびフラン樹脂の少なくとも一方である酸硬化性粘結剤を接触させて硬化させる、鋳型の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆砂およびその製造方法と、鋳型の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳造用鋳型(以下、単に「鋳型」ともいう。)には普通鋳型と特殊鋳型とがあり、普通鋳型には生型と乾燥型がある。一方、特殊鋳型には自硬性鋳型、熱硬化鋳型、ガス硬化鋳型がある。
自硬性鋳型とは、珪砂等の耐火性粒状材料に、フラン樹脂等を主成分とした粘結剤(酸硬化性粘結剤)と、硫酸やキシレンスルホン酸等の酸触媒(硬化剤)とを添加、混練した後、得られた混練砂を木型、樹脂型、金型等(以下、これらを総称して「鋳型造型用型」ともいう。)に充填し、粘結剤を硬化させる方法で製造されているものである。
熱硬化鋳型とは、熱硬化性の樹脂を粘結剤として用いて製造されるものであり、その製造方法として、乾態砂を用いるシェルモールド法や、湿態砂を用いるホットボックス法が知られている。
ガス硬化鋳型とは、耐火性粒状材料に水ガラスやアルカリフェノール樹脂等の粘結剤を加えて混練し、得られた混練砂を鋳型造型用型に充填し、ガス化させた硬化剤を通気して粘結剤を硬化させる方法で製造されるものである。
【0003】
例えば特許文献1には、ホットボックス法により鋳型を製造する方法として、耐火性粒状材料に尿素変性フラン樹脂とノボラック型フェノール樹脂溶液とを添加した混練砂を、220℃に加熱した金型に充填して鋳型を製造する方法が開示されている。特許文献1に記載の方法によれば、ノボラック型フェノール樹脂の添加量が尿素変性フラン樹脂に対して0.1~25質量%である場合は、混練砂を実用に支障なく使用でき、しかも注湯後の鋳物製品の鋳肌の状態を向上させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鋳型は鉄、銅、アルミニウム等の金属を高温で溶かした液体が注湯され高温に曝されるため、鋳型の耐熱性が低いと焼き付き等の鋳造欠陥が発生することがある。そのため、鋳型には注湯時等で高温に曝されても充分な強度(熱間強度)を発現できる耐熱性が求められる。
一般的に、フェノール樹脂の硬化物とフラン樹脂の硬化物とを比較すると、フェノール樹脂の硬化物の方が耐熱性に優れるとされている。
しかしながら、フェノール樹脂はフラン樹脂に比べて粘度が高く、フラン樹脂への溶解性が低い。そのため、特許文献1に記載の方法では、尿素変性フラン樹脂に対するノボラック型フェノール樹脂の添加量には限界があり、得られる鋳型は必ずしも充分な耐熱性を有しているとはいえない。
また、粘結剤として尿素変性フラン樹脂とノボラック型フェノール樹脂の2種類の樹脂を用いるということは、鋳型の製造現場において粘結剤を貯留しておくタンクの数が増えるばかりか、複数のタンクを設置するスペースも必要となり、工業化の観点からは不利である。
【0006】
ところで、複雑な形状の鋳型を製造するには、必然的に鋳型造型用型の数を増やす必要があるが、工程の煩雑化の原因となる。また、鋳型造型用型の数を増やすことができても、鋳型を鋳型造型用型から外すことができなければ、鋳型を製造することはできない。
こうした問題を解決するために、近年、鋳型造型用型を用いなくても直接鋳型を製造することが可能な、3次元積層造形による鋳型の製造方法が提案されている。
3次元積層造形とは、CAD(computer aided design)システム上で入力された3次元形状を、直接立体モデル(3次元モデル)として鋳型などを製造する方法である。
【0007】
3次元積層造形による鋳型の製造方法としては、耐火性粒状材料と液状の酸触媒とを含む混練砂を積層(リコーティング)し、その上にCADデータに基づいて酸硬化性粘結剤を印刷する操作を繰り返し、酸硬化性粘結剤が硬化した後に非印刷部分の混練砂を取り除く方法が知られている。
フラン樹脂は粘度が低く、インクジェットしやすい。そのため、3次元積層造形による鋳型の製造方法に用いる酸硬化性粘結剤としては、フラン樹脂が一般的である。
しかし、酸硬化性粘結剤としてフラン樹脂を用いて製造された鋳型は耐熱性が低い。
【0008】
上述したように、フェノール樹脂は耐熱性に優れるものの、フラン樹脂に比べて粘度が高い。そのため、フェノール樹脂を用いて3次元積層造形により鋳型を製造する場合は、フェノール樹脂をイソプロピルアルコール等の有機溶媒で希釈して用いる必要がある。
しかし、有機溶媒を使用するとインクジェットヘッドが劣化しやすい。また、通常は、造形後に加熱処理して有機溶媒を除去したり、フェノール樹脂の硬化を促進したりするため、鋳型が収縮して寸法が変化しやすい。
【0009】
本発明は上記事情を鑑みてなされたもので、耐熱性に優れる鋳型を製造でき、3次元積層造形用にも適した被覆砂およびその製造方法と、鋳型の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下の態様を有する。
[1] 耐火性粒状材料にノボラック型フェノール樹脂と酸触媒とが被覆された、被覆砂。
[2] 前記ノボラック型フェノール樹脂の質量平均分子量が200~6500である、[1]の被覆砂。
[3] 前記ノボラック型フェノール樹脂の含有量が、前記耐火性粒状材料100質量部に対して0.4質量部以上である、[1]または[2]の被覆砂。
[4] 前記酸触媒が、硫酸、リン酸、スルホン酸およびカルボン酸からなる群より選ばれる1種以上である、[1]~[3]のいずれかの被覆砂。
[5] 3次元積層造形用である、[1]~[4]のいずれかの被覆砂。
[6] [1]~[5]のいずれかの被覆砂の製造方法であって、
前記ノボラック型フェノール樹脂の融点以上、前記ノボラック型フェノール樹脂の熱分解温度未満に加熱した耐火性粒状材料に、前記ノボラック型フェノール樹脂を添加して樹脂添加砂を得る工程と、
前記樹脂添加砂に前記酸触媒の溶液を添加する工程と、
を含む、被覆砂の製造方法。
[7] [1]~[5]のいずれかの被覆砂の製造方法であって、
前記ノボラック型フェノール樹脂の融点以上、前記酸触媒の熱分解温度未満に加熱した耐火性粒状材料に、酸触媒添加樹脂を添加する工程を含み、
前記酸触媒添加樹脂は、前記ノボラック型フェノール樹脂の溶融物に前記酸触媒を添加した後に冷却した固化物である、被覆砂の製造方法。
[8] [1]~[5]のいずれかの被覆砂の製造方法であって、
耐火性粒状材料に、前記ノボラック型フェノール樹脂と前記酸触媒との混合溶液を添加する工程を含み、
前記工程における耐火性粒状材料の温度は、前記酸触媒の熱分解温度未満である、被覆砂の製造方法。
[9] [1]~[5]のいずれかの被覆砂の製造方法であって、
酸触媒の存在下、原料モノマーを反応させた後、中和処理せずに未中和のノボラック型フェノール樹脂を得る工程と、
前記未中和のノボラック型フェノール樹脂の融点以上、前記未中和のノボラック型フェノール樹脂の製造に用いた酸触媒の熱分解温度未満に加熱した耐火性粒状材料に、前記未中和のノボラック型フェノール樹脂を添加する工程と、
を含む、被覆砂の製造方法。
[10] [1]~[5]のいずれかの被覆砂に、酸硬化性粘結剤を接触させて硬化させる、鋳型の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐熱性に優れる鋳型を製造でき、3次元積層造形用にも適した被覆砂およびその製造方法と、鋳型の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の明細書において、「鋳型」とは、本発明の被覆砂を用いて造型してなるものである。また、「固形分」とは、100℃での不揮発分を示す。
【0013】
[被覆砂]
本発明の被覆砂は、耐火性粒状材料にノボラック型フェノール樹脂と酸触媒とが被覆されたものである。
被覆砂または耐火性粒状材料の表面には、ブロッキング防止剤およびシランカップリング剤の1つ以上が付着していてもよい。
【0014】
<耐火性粒状材料>
耐火性粒状材料としては、珪砂、クロマイト砂、ジルコン砂、オリビン砂、非晶質シリカ、アルミナ砂、ムライト砂等の天然砂;人工砂などの従来公知のものを使用できる。また、使用済みの耐火性粒状材料を回収したもの(回収砂)や再生処理したもの(再生砂)なども使用できる。これら耐火性粒状材料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
製造コストの観点では天然砂が好ましく、その中でも珪砂がより好ましい。熱により膨張しにくい観点では人工砂が好ましい。製造コストと耐熱性とのバランスを考慮し、天然砂と人工砂とを混合して用いてもよい。
【0015】
耐火性粒状材料の平均粒子径は50~600μmが好ましく、60~550μmがより好ましく、75~500μmがさらに好ましい。耐火性粒状材料の平均粒子径が上記下限値以上であれば、強度の高い鋳型が得られる。耐火性粒状材料の平均粒子径が上記上限値以下であれば、該鋳型を用いて鋳造される鋳物の表面性にも優れる。特に、耐火性粒状材料の平均粒子径が300μm以下であれば、型を用いなくても直接鋳型を製造することが可能な、3次元積層造形鋳型の製造に好適であり、面相度に優れた3次元積層造形鋳型が得られる。
耐火性粒状材料の平均粒子径は、動的光散乱法により測定した耐火性粒状材料の体積累計50%のメディアン径である。
【0016】
<ノボラック型フェノール樹脂>
ノボラック型フェノール樹脂は、耐火性粒状材料の粘結剤の役割を果たす。
ノボラック型フェノール樹脂は、酸触媒(以下、「樹脂製造用酸触媒」ともいう。)の存在下で原料モノマーを反応させて得られたもの、具体的にはフェノール類およびビスフェノール類の少なくとも一方と、アルデヒド類とを反応させて得られたものであり、通常、固体である。
【0017】
フェノール類としては、例えばフェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,3-キシレノール、3,5-キシレノール、m-エチルフェノール、m-プロピルフェノール、m-ブチルフェノール、p-ブチルフェノール、o-ブチルフェノール、レゾルシノール、ハイドロキノン、カテコール、3-メトキシフェノール、4-メトキシフェノール、3-メチルカテコール、4-メチルカテコール、メチルハイドロキノン、2-メチルレゾルシノール、2,3-ジメチルハイドロキノン、2,5-ジメチルレゾルシノール、2-エトキシフェノール、4-エトキシフェノール、4-エチルレゾルシノール、3-エトキシ-4-メトキシフェノール、2-プロペニルフェノール、2-イソプロピルフェノール、3-イソプロピルフェノール、4-イソプロピルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール、2-イソプロポキシフェノール、4-ピロポキシフェノール、2-アリルフェノール、3,4,5-トリメトキシフェノール、4-イソプロピル-3-メチルフェノール、ピロガロール、フロログリシノール、1,2,4-ベンゼントリオール、5-イソプロピル-3-メチルフェノール、4-ブトキシフェノール、4-t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、4-t-ペンチルフェノール、2-t-ブチル-5-メチルフェノール、2-フェニルフェノール、3-フェニルフェノール、4-フェニルフェノール、3-フェノキシフェノール、4-フェノキシフェノール、4-へキシルオキシフェノール、4-ヘキサノイルレゾルシノール、3,5-ジイソプロピルカテコール、4-ヘキシルレゾルシノール、4-ヘプチルオキシフェノール、3,5-ジ-t-ブチルフェノール、3,5-ジ-t-ブチルカテコール、2,5-ジ-t-ブチルハイドロキノン、ジ-sec-ブチルフェノール、4-クミルフェノール、ノニルフェノール、2-シクロペンチルフェノール、4-シクロペンチルフェノールなどが挙げられる。これらフェノール類は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ビスフェノール類としては、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールC、ビスフェノールS、ビスフェノールE、ビスフェノールZなどが挙げられる。これらビスフェノール類は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
アルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、トリオキサン、フルフラール、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、メチルヘミホルマール、エチルへミホルマール、プロピルへミホルマール、サリチルアルデヒド、ブチルヘミホルマール、フェニルへミホルマール、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、α-フェニルプロピルアルデヒド、β-フェニルプロピルアルデヒド、o-ヒドロキシベンズアルデヒド、m-ヒドロキシベンズアルデヒド、p-ヒドロキシベンズアルデヒド、o-クロロベンズアルデヒド、o-ニトロベンズアルデヒド、m-ニトロベンズアルデヒド、p-ニトロベンズアルデヒド、o―メチルベンズアルデヒド、m-メチルベンズアルデヒド、p-メチルベンズアルデヒド、p-エチルベンズアルデヒド、p-n-ブチルベンズアルデヒドなどが挙げられる。これらアルデヒド類は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
樹脂製造用酸触媒としては、例えば塩酸、硫酸、リン酸、スルホン酸、カルボン酸、または塩化亜鉛もしくは酢酸亜鉛などの金属との塩などが挙げられる。
スルホン酸としては、例えばパラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸などが挙げられる。
カルボン酸としては、例えば乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、シュウ酸、酢酸、安息香酸などが挙げられる。
これら樹脂製造用酸触媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
ノボラック型フェノール樹脂の質量平均分子量は、200~6500が好ましく、200~6000がより好ましく、250~4000がさらに好ましく、300~3000が特に好ましく、300~2000が最も好ましい。ノボラック型フェノール樹脂の質量平均分子量が上記範囲内であれば、鋳型の耐熱性がより向上する。
ノボラック型フェノール樹脂の質量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定できる。
【0021】
フェノール類およびビスフェノール類の少なくとも一方と、アルデヒド類との反応は、公知の方法により行うことができる。例えば、反応容器にフェノール類およびビスフェノール類の少なくとも一方と、アルデヒド類と、樹脂製造用酸触媒と、水等を仕込み、任意の反応温度を任意の反応時間保持する方法が挙げられる。反応終了後、反応液を中和し、さらに反応液を減圧濃縮して水を除去して、ノボラック型フェノール樹脂を得る。
なお、本発明において、中和処理せずに得られたノボラック型フェノール樹脂を「未中和のノボラック型フェノール樹脂」という。未中和のノボラック型フェノール樹脂には、樹脂製造用酸触媒が含まれる。詳しくは後述するが、被覆砂の製造工程においては未中和のノボラック型フェノール樹脂を用いてもよい。
【0022】
反応液の中和の前または後に、必要に応じて、シランカップリング剤を添加してもよい。この場合、ノボラック型フェノール樹脂または未中和のノボラック型フェノール樹脂と、シランカップリング剤とを含む混合物が得られる。
シランカップリング剤としては、例えばN-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0023】
ノボラック型フェノール樹脂の含有量は、耐火性粒状材料100質量部に対して、0.4質量部以上が好ましい。ノボラック型フェノール樹脂の含有量が上記下限値以上であれば、鋳型の耐熱性がより向上する。ノボラック型フェノール樹脂の含有量が多いほど鋳型の耐熱性は高まる傾向にあるが、ノボラック型フェノール樹脂の含有量が増えるに連れて注湯時におけるノボラック型フェノール樹脂の熱分解によるガスの発生量も増える傾向にある。鋳型の耐熱性の向上と、注湯時におけるガス発生の軽減とのバランスを考慮すると、ノボラック型フェノール樹脂の含有量は、耐火性粒状材料100質量部に対して、0.4~4.6質量部がより好ましく、0.5~4質量部がさらに好ましく、0.6~3質量部が特に好ましく、0.7~2質量部が最も好ましい。
【0024】
<酸触媒>
酸触媒は、鋳型を製造するに際して粘結剤の役割を果たすノボラック型フェノール樹脂や、後述する酸硬化性粘結剤を硬化させる触媒である。
酸触媒としては、例えば硫酸、リン酸、スルホン酸およびカルボン酸などが挙げられる。
スルホン酸としては、例えばパラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸などが挙げられる。
カルボン酸としては、例えば乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、シュウ酸、酢酸、安息香酸などが挙げられる。
これら酸触媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
硬化剤としての性能に優れる点で、酸触媒としてはキシレンスルホン酸が好ましい。
なお、酸触媒は、被覆砂の製造時にノボラック型フェノール樹脂または未中和のノボラック型フェノール樹脂とは別に加えられるものでもよいし、未中和のノボラック型フェノール樹脂に含まれる樹脂製造用酸触媒でもよい。
【0025】
酸触媒の含有量は、耐火性粒状材料100質量部に対して、0.05~1質量部が好ましく、0.1~0.7質量部がより好ましく、0.15~0.5質量部がさらに好ましい。酸触媒の含有量が上記下限値以上であれば、ノボラック型フェノール樹脂や、後述する酸硬化性粘結剤を充分に硬化することができる。酸触媒の含有量が上記上限値以下であれば、注湯時のガスの発生を軽減できる。
【0026】
<ブロッキング防止剤>
被覆砂または耐火性粒状材料の表面には、ブロッキング防止剤が付着していてもよい。被覆砂または耐火性粒状材料の表面にブロッキング剤が付着していれば被覆砂の流動性が高まるので、3次元積層造形用の被覆砂として特に好適である。
ブロッキング防止剤としては、例えばゼオライト、水和反応が可能な金属塩などが挙げられる。
【0027】
(ゼオライト)
ゼオライトは、結晶性アルミノケイ酸塩の総称である。
ゼオライトのSiO2/Al2O3モル比は5~1500が好ましく、5.5~500がより好ましく、5.5~240がさらに好ましい。前記モル比が大きくなるほど疎水性が高まる。前記モル比が上記下限値以上であれば、充分な疎水性を発現して耐火性粒状材料に水が付着するのを抑制でき、ブロッキングしにくい被覆砂が得られる。
ゼオライトのSiO2/Al2O3モル比は、蛍光X線分析(XRF)を用いて測定することができる。
【0028】
ゼオライトの骨格構造としては、例えばA型、X型、LSX型、ベータ型、ZSM-5型、フェリエライト型、モルデナイト型、L型、Y型などが挙げられる。これらゼオライトは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ゼオライトは、負電荷を補償するために骨格中に陽イオンが存在する。陽イオンとしては、水素イオン;アンモニウムイオン;リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン:カルシウムイオン等のアルカリ土類金属イオンなどが挙げられる。
【0029】
ゼオライトの平均粒子径は0.1~100μmが好ましく、1~20μmがより好ましく、2~10μmがさらに好ましく、2~3μmが特に好ましい。ゼオライトの平均粒子径が上記下限値以上であれば、耐火性粒状材料と混合しやすくなる。ゼオライトの平均粒子径が上記上限値以下であれば、耐火性粒状材料の表面への分散が良好となる。
ゼオライトの平均粒子径は、動的光散乱法により測定した耐火性粒状材料の一次粒子の体積累計50%のメディアン径である。
【0030】
ゼオライトの含有量は、耐火性粒状材料100質量部に対して、0.1~1質量部が好ましく、0.15~0.5質量部がより好ましく、0.2~0.3質量部がさらに好ましい。ゼオライトの含有量が上記下限値以上であれば、被覆砂のブロッキングを充分に抑制できる。耐ブロッキング性の効果はゼオライトの含有量が増えるほど高まる傾向にあるが、ゼオライトの含有量が増えるに連れて鋳型の強度が低下する傾向にある。ゼオライトの含有量が上記上限値以下であれば、鋳型の強度を良好に維持しつつ、被覆砂のブロッキングを充分に抑制できる。
【0031】
(水和反応が可能な金属塩)
水和反応が可能な金属塩としては、例えば硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム等の硫酸塩などが挙げられる。これらの中でも、ノボラック型フェノール樹脂や、後述する酸硬化性粘結剤の硬化促進の効果も得られやすい観点から、硫酸マグネシウムが好ましい。これら水和反応が可能な金属塩は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
硫酸マグネシウムは無水物であってもよいし、水和物であってもよいが、ブロッキング防止効果により優れる観点から、無水物、すなわち無水硫酸マグネシウムが好ましい。
【0032】
水和反応が可能な金属塩の含有量は無水物換算で、耐火性粒状材料100質量部に対して、0.05~1質量部が好ましい。水和反応が可能な金属塩の含有量が上記下限値以上であれば、被覆砂のブロッキングを充分に抑制できる。耐ブロッキング性の効果は水和反応が可能な金属塩の含有量が増えるほど高まる傾向にあるが、水和反応が可能な金属塩の含有量が増えるに連れて硬化反応速度が速くなりすぎる傾向にある。そのため、特に3次元積層造形により鋳型を製造する場合は、層剥離が生じることがある。水和反応が可能な金属塩の含有量が上記上限値以下であれば、適度な硬化反応速度を維持しつつ、被覆砂のブロッキングを充分に抑制できる。
【0033】
<シランカップリング剤>
被覆砂または耐火性粒状材料の表面には、シランカップリング剤が付着していてもよい。被覆砂または耐火性粒状材料の表面にシランカップリング剤が付着していれば鋳型の強度が高まる。
シランカップリング剤としては、ノボラック型フェノール樹脂の説明において先に例示したシランカップリング剤が挙げられる。
シランカップリング剤は、ノボラック型フェノール樹脂の製造時に用いられたものでもよいし、被覆砂の製造時に後から加えられるものでもよい。
【0034】
シランカップリング剤の含有量は、耐火性粒状材料100質量部に対して、0.1~3質量部が好ましく、0.5~2質量部がより好ましい。シランカップリング剤の含有量が上記下限値以上であれば、鋳型の強度を向上させる効果が充分得られる。鋳型の強度向上効果は、シランカップリング剤の含有量が増えるほど得られやすくなる傾向にあるが、増えすぎても効果は頭打ちになるだけである。よって、シランカップリング剤の含有量は3質量部以下が好ましい。
【0035】
<製造方法>
被覆砂の製造方法としては、以下の態様が挙げられる。
【0036】
(第1の実施形態)
本実施形態の被覆砂の製造方法は、下記工程(I)および工程(II)を含む。
工程(I):ノボラック型フェノール樹脂の融点以上、ノボラック型フェノール樹脂の熱分解温度未満に加熱した耐火性粒状材料に、ノボラック型フェノール樹脂を添加して樹脂添加砂を得る工程。
工程(II):樹脂添加砂に酸触媒の溶液を添加する工程。
【0037】
工程(I)では、加熱した耐火性粒状材料にノボラック型フェノール樹脂を添加して、樹脂添加砂を得る。
工程(I)における耐火性粒状材料の温度は、ノボラック型フェノール樹脂の融点以上、ノボラック型フェノール樹脂の熱分解温度未満であり、具体的には110~350℃が好ましく、130~250℃がより好ましく、180~250℃がさらに好ましい。耐火性粒状材料の温度が高くなるほど、ノボラック型フェノール樹脂を添加したときに、ノボラック型フェノール樹脂が短時間で溶融する。
【0038】
加熱した耐火性粒状材料にノボラック型フェノール樹脂を添加することで、ノボラック型フェノール樹脂が溶融し、耐火性粒状材料の表面を被覆する。
ノボラック型フェノール樹脂の添加量は、耐火性粒状材料100質量部に対して、0.4質量部以上が好ましく、0.4~4.6質量部がより好ましく、0.5~4質量部がさらに好ましく、0.6~3質量部が特に好ましく、0.7~2質量部が最も好ましい。
なお、ノボラック型フェノール樹脂の代わりに、ノボラック型フェノール樹脂とシランカップリング剤とを含む混合物を用いてもよい。
【0039】
工程(II)では、樹脂添加砂に酸触媒の溶液を添加する。
酸触媒の溶液に用いる溶媒としては水、アルコール、これらの混合物などが挙げられる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2プロパノールなどが挙げられる。酸触媒が室温(25℃)で液体の場合、前記溶媒で希釈して用いることが好ましい。
酸触媒の溶液の添加量は、耐火性粒状材料100質量部に対する酸触媒の割合が0.05~1質量部となる量が好ましく、より好ましくは0.1~0.7質量部であり、さらに好ましくは0.15~0.5質量部である。
【0040】
工程(II)を行う際の樹脂添加砂の温度は、200℃未満が好ましく、150℃以下がより好ましい。樹脂添加砂の温度が上記下限値未満であれば、酸触媒の溶液を添加したときに、酸触媒が熱分解するのを抑制できる。
特に、乾態の被覆砂を得る場合、樹脂添加砂の温度は、酸触媒の溶液に用いる溶媒の沸点以上が好ましく、具体的には100~150℃がより好ましい。ただし、酸触媒の溶液に用いる溶媒がアルコールの場合は水に比べて低沸点であり、アルコールの沸点以下でも蒸発しやすい。そのため、樹脂添加砂の温度は上記範囲内には限らず、酸触媒の溶液に用いる溶媒がアルコールのときは、樹脂添加砂の温度が60℃超、100℃未満でも乾態の被覆砂が得られる場合がある。一方、湿態の被覆砂を得る場合、樹脂添加砂の温度は、酸触媒の溶液に用いる溶媒の沸点未満が好ましく、具体的には60℃以下がより好ましく、10~50℃がさらに好ましく、20~30℃が特に好ましい。
【0041】
樹脂添加砂の温度を上記範囲内とするには、酸触媒の溶液を添加する前に樹脂添加砂を冷却することが好ましい。
樹脂添加砂の冷却方法としては、例えば室温にて樹脂添加砂を放置する方法、樹脂添加砂に冷風を吹き付ける方法、樹脂添加砂に水を添加する方法などが挙げられる。短時間で所望の温度に樹脂添加砂を冷却できる観点から、樹脂添加砂に水を添加する方法が好ましい。
樹脂添加砂に水を添加して樹脂添加砂を冷却する場合、水の添加量は特に制限されず、温度によって適宜調節が可能であるが、一例として、耐火性粒状材料100質量部に対して、1~10質量部が好ましく、2~5質量部がより好ましい。
【0042】
樹脂添加砂を酸触媒の溶液に用いる溶媒の沸点以上、200℃未満まで冷却した場合、冷却後の樹脂添加砂に酸触媒の溶液を添加すると、溶媒が蒸発して酸触媒が樹脂添加砂に残り、樹脂添加砂の表面を被覆する。
こうして、耐火性粒状材料がノボラック型フェノール樹脂と酸触媒とで被覆された、乾態の被覆砂が得られる。工程(I)において、加熱した耐火性粒状材料にノボラック型フェノール樹脂とシランカップリング剤とを含む混合物を添加する場合は、耐火性粒状材料がノボラック型フェノール樹脂と酸触媒とシランカップリング剤とで被覆された、乾態の被覆砂が得られる。乾態の被覆砂は流動性に優れることから、3次元積層造形用の被覆砂として特に好適である。
なお、必要に応じて、樹脂添加砂に酸触媒の溶液を添加した後に、ブロッキング防止剤およびシランカップリング剤の1つ以上をさらに添加してもよい。また、得られた被覆砂を分級(ふるい分け)処理してもよい。
【0043】
樹脂添加砂を酸触媒の溶液に用いる溶媒の沸点未満まで冷却した場合、冷却後の樹脂添加砂に酸触媒の溶液を添加すると、酸触媒が樹脂添加砂の表面を被覆するが、溶媒も蒸発せずに樹脂添加砂に残る。
こうして、耐火性粒状材料がノボラック型フェノール樹脂と酸触媒とで被覆された、湿態の被覆砂が得られる。工程(I)において、ノボラック型フェノール樹脂とシランカップリング剤とを含む混合物を、加熱した耐火性粒状材料に添加する場合は、耐火性粒状材料がノボラック型フェノール樹脂と酸触媒とシランカップリング剤とで被覆された、湿態の被覆砂が得られる。湿態の被覆砂は粉塵が発生しにくい。
なお、必要に応じて、樹脂添加砂に酸触媒の溶液を添加した後に、ブロッキング防止剤およびシランカップリング剤の1つ以上をさらに添加してもよい。また、酸触媒の溶液を添加する前に、冷却後の樹脂添加砂を分級処理してもよい。
【0044】
(第2の実施形態)
本実施形態の被覆砂の製造方法は、下記工程(III)を含む。
工程(III):ノボラック型フェノール樹脂の融点以上、酸触媒の熱分解温度未満に加熱した耐火性粒状材料に、酸触媒添加樹脂を添加する工程。
【0045】
工程(III)では、加熱した耐火性粒状材料に酸触媒添加樹脂を添加する。
工程(III)における耐火性粒状材料の温度は、ノボラック型フェノール樹脂の融点以上、酸触媒の熱分解温度未満であり、具体的には110℃以上200℃未満が好ましく、130℃以上200℃未満がより好ましく、150~195℃がさらに好ましい。
【0046】
酸触媒添加樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂の溶融物に酸触媒を添加した後に冷却した固化物である。
酸触媒添加樹脂は、以下のようにして得られる。
まず、ノボラック型フェノール樹脂を加熱して溶融させる。加熱温度は、ノボラック型フェノール樹脂の融点以上、酸触媒の熱分解温度未満であり、具体的には110℃以上200℃未満が好ましく、110~150℃がより好ましく、115~150℃がさらに好ましい。
次いで、溶融したノボラック型フェノール樹脂に酸触媒を添加し、撹拌して混合物を得る。得られた混合物を冷却し、必要に応じて所望の粒径になるまで粉砕し、固化物を得る。粉砕方法としては特に限定されず、例えばハンマーミル、ボールミル、ジェットミル、アトマイザーなどを用いて行うことができる。
なお、ノボラック型フェノール樹脂の代わりに、ノボラック型フェノール樹脂とシランカップリング剤とを含む混合物を用いてもよい。この場合、シランカップリング剤を含む酸触媒添加樹脂が得られる。
【0047】
ノボラック型フェノール樹脂と酸触媒との質量比は、耐火性粒状材料100質量部に対するノボラック型フェノール樹脂の割合が0.4質量部以上、酸触媒の割合が0.05~1質量部となる量が好ましい。ノボラック型フェノール樹脂の割合は、耐火性粒状材料100質量部に対して、0.4~4.6質量部がより好ましく、0.5~4質量部がさらに好ましく、0.6~3質量部が特に好ましく、0.7~2質量部が最も好ましい。酸触媒の割合は、耐火性粒状材料100質量部に対して、0.1~0.7質量部がより好ましく、0.15~0.5質量部がさらに好ましい。
【0048】
加熱した耐火性粒状材料に酸触媒添加樹脂を添加すると、ノボラック型フェノール樹脂が溶融し、耐火性粒状材料の表面を被覆するとともに、酸触媒が耐火性粒状材料の表面を被覆する。
こうして、耐火性粒状材料がノボラック型フェノール樹脂と酸触媒とで被覆された、乾態の被覆砂が得られる。工程(III)において、シランカップリング剤を含む酸触媒添加樹脂を、加熱した耐火性粒状材料に添加する場合は、耐火性粒状材料がノボラック型フェノール樹脂と酸触媒とシランカップリング剤とで被覆された、乾態の被覆砂が得られる。乾態の被覆砂は流動性に優れることから、3次元積層造形用の被覆砂として特に好適である。
なお、必要に応じて、耐火性粒状材料に酸触媒添加樹脂を添加した後に、冷却目的で水を添加してもよい。水の添加量は、耐火性粒状材料100質量部に対して、1~10質量部が好ましく、2~5質量部がより好ましい。この程度の水の添加量であれば、加熱された耐火性粒状材料によって水が蒸発するので、乾態の被覆砂が得られる。さらに、必要に応じて、耐火性粒状材料に酸触媒添加樹脂を添加した後に、ブロッキング防止剤およびシランカップリング剤の1つ以上をさらに添加してもよい。また、得られた被覆砂を分級(ふるい分け)処理してもよい。
【0049】
(第3の実施形態)
本実施形態の被覆砂の製造方法は、下記工程(IV)を含む。
工程(IV):耐火性粒状材料に、ノボラック型フェノール樹脂と酸触媒との混合溶液を添加する工程。
【0050】
工程(IV)では、耐火性粒状材料にノボラック型フェノール樹脂と酸触媒との混合溶液を添加する。
工程(IV)における耐火性粒状材料の温度は、酸触媒の熱分解温度未満である。混合溶液に含まれる溶媒が短時間で蒸発しやすい観点から、耐火性粒状材料の温度は10℃以上200℃未満が好ましく、20~180℃がより好ましく、25~150℃がさらに好ましい。
【0051】
混合溶液は、溶媒にノボラック型フェノール樹脂が溶解した樹脂溶液と酸触媒とを混合する方法、溶媒に酸触媒が溶解した酸触媒の溶液とノボラック型フェノール樹脂とを混合する方法、溶媒とノボラック型フェノール樹脂と酸触媒とを混合する方法などにより得られる。混合溶液に用いる溶媒としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2プロパノール等のアルコールなどが挙げられる。
なお、ノボラック型フェノール樹脂の代わりに、ノボラック型フェノール樹脂とシランカップリング剤とを含む混合物を用いてもよい。この場合、シランカップリング剤を含む混合溶液が得られる。
【0052】
ノボラック型フェノール樹脂と酸触媒との質量比は、耐火性粒状材料100質量部に対するノボラック型フェノール樹脂の割合が0.4質量部以上、酸触媒の割合が0.05~1質量部となる量が好ましい。ノボラック型フェノール樹脂の割合は、耐火性粒状材料100質量部に対して、0.4~4.6質量部がより好ましく、0.5~4質量部がさらに好ましく、0.6~3質量部が特に好ましく、0.7~2質量部が最も好ましい。酸触媒の割合は、耐火性粒状材料100質量部に対して、0.1~0.7質量部がより好ましく、0.15~0.5質量部がさらに好ましい。
【0053】
加熱した耐火性粒状材料に混合溶液を添加すると、溶媒が蒸発してノボラック型フェノール樹脂および酸触媒が耐火性粒状材料に残り、耐火性粒状材料の表面を被覆する。
こうして、耐火性粒状材料がノボラック型フェノール樹脂と酸触媒とで被覆された、乾態の被覆砂が得られる。工程(IV)において、シランカップリング剤を含む混合溶液を加熱した耐火性粒状材料に添加する場合は、耐火性粒状材料がノボラック型フェノール樹脂と酸触媒とシランカップリング剤とで被覆された、乾態の被覆砂が得られる。乾態の被覆砂は流動性に優れることから、3次元積層造形用の被覆砂として特に好適である。
なお、必要に応じて、耐火性粒状材料に混合溶液を添加した後に、冷却目的で水を添加してもよい。水の添加量は、耐火性粒状材料100質量部に対して、1~5質量部が好ましく、2~3質量部がより好ましい。この程度の水の添加量であれば、加熱された耐火性粒状材料によって水が蒸発するので、乾態の被覆砂が得られる。さらに、必要に応じて、耐火性粒状材料に混合溶液を添加した後に、ブロッキング防止剤およびシランカップリング剤の1つ以上をさらに添加してもよい。また、得られた被覆砂を分級(ふるい分け)処理してもよい。
【0054】
(第4の実施形態)
本実施形態の被覆砂の製造方法は、下記工程(V)および工程(VI)を含む。
工程(V):樹脂製造用酸触媒の存在下、原料モノマーを反応させた後、中和処理せずに未中和のノボラック型フェノール樹脂を得る工程。
工程(VI):未中和のノボラック型フェノール樹脂の融点以上、未中和のノボラック型フェノール樹脂の製造に用いた樹脂製造用酸触媒の熱分解温度未満に加熱した耐火性粒状材料に、未中和のノボラック型フェノール樹脂を添加する工程。
【0055】
工程(V)では、樹脂製造用酸触媒の存在下、原料モノマーを反応させた後、中和処理せずに未中和のノボラック型フェノール樹脂を得る。具体的には、反応容器にフェノール類およびビスフェノール類の少なくとも一方と、アルデヒド類と、樹脂製造用酸触媒と、水等を仕込み、任意の反応温度を任意の反応時間保持し、中和処理せずに未中和のノボラック型フェノール樹脂を得る。このようにして得られる未中和のノボラック型フェノール樹脂には、樹脂製造用酸触媒が含まれている。
なお、未中和のノボラック型フェノール樹脂に、必要に応じて、シランカップリング剤を添加してもよい。この場合、未中和のノボラック型フェノール樹脂と、シランカップリング剤とを含む混合物が得られる。
【0056】
原料モノマーである、フェノール類、ビスフェノール類およびアルデヒド類としては、ノボラック型フェノール樹脂の説明において先に例示したフェノール類、ビスフェノール類およびアルデヒド類が挙げられる。
樹脂製造用酸触媒としては、ノボラック型フェノール樹脂の説明において先に例示した樹脂製造用酸触媒が挙げられる。
シランカップリング剤としては、ノボラック型フェノール樹脂の説明において先に例示した樹脂製造用酸触媒が挙げられる。
【0057】
工程(VI)では、加熱した耐火性粒状材料に未中和のノボラック型フェノール樹脂を添加する。
工程(VI)における耐火性粒状材料の温度は、未中和のノボラック型フェノール樹脂の融点以上、工程(VI)で用いた樹脂製造用酸触媒の熱分解温度未満であり、具体的には110℃以上200℃未満が好ましく、110~150℃がより好ましく、115~150℃がさらに好ましい。
【0058】
上述したように、未中和のノボラック型フェノール樹脂は、樹脂製造用酸触媒を含んでいる。そのため、加熱した耐火性粒状材料に未中和のノボラック型フェノール樹脂を添加すると、未中和のノボラック型フェノール樹脂が溶融し、耐火性粒状材料の表面を被覆するとともに、樹脂製造用酸触媒が耐火性粒状材料の表面を被覆する。
未中和のノボラック型フェノール樹脂の添加量は、耐火性粒状材料100質量部に対するノボラック型フェノール樹脂の割合が0.4質量部以上、樹脂製造用酸触媒の割合が0.05~1質量部となる量が好ましい。ノボラック型フェノール樹脂の割合は、耐火性粒状材料100質量部に対して、0.4~4.6質量部がより好ましく、0.5~4質量部がさらに好ましく、0.6~3質量部が特に好ましく、0.7~2質量部が最も好ましい。樹脂製造用酸触媒の割合は、耐火性粒状材料100質量部に対して、0.1~0.7質量部がより好ましく、0.15~0.5質量部がさらに好ましい。
なお、未中和のノボラック型フェノール樹脂に含まれる樹脂製造用酸触媒の量が少なく、未中和のノボラック型フェノール樹脂の添加量だけでは、耐火性粒状材料100質量部に対する樹脂製造用酸触媒の割合が上述した量に比べて足りない場合は、未中和のノボラック型フェノール樹脂の添加と同時または添加の後で、酸触媒を別途添加してもよい。この別途添加する酸触媒は、樹脂製造用酸触媒と同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。
【0059】
こうして、耐火性粒状材料がノボラック型フェノール樹脂と樹脂製造用酸触媒とで被覆された、乾態の被覆砂が得られる。工程(VI)において、加熱した耐火性粒状材料に未中和のノボラック型フェノール樹脂とシランカップリング剤とを含む混合物を添加する場合は、耐火性粒状材料がノボラック型フェノール樹脂と樹脂製造用酸触媒とシランカップリング剤とで被覆された、乾態の被覆砂が得られる。乾態の被覆砂は流動性に優れることから、3次元積層造形用の被覆砂として特に好適である。
なお、必要に応じて、耐火性粒状材料に未中和のノボラック型フェノール樹脂を添加した後に、冷却目的で水を添加してもよい。水の添加量は、耐火性粒状材料100質量部に対して、1~10質量部が好ましく、2~5質量部がより好ましい。この程度の水の添加量であれば、加熱された耐火性粒状材料によって水が蒸発するので、乾態の被覆砂が得られる。さらに、必要に応じて、耐火性粒状材料に未中和のノボラック型フェノール樹脂を添加した後に、ブロッキング防止剤およびシランカップリング剤の1つ以上をさらに添加してもよい。また、得られた被覆砂を分級(ふるい分け)処理してもよい。
【0060】
<作用効果>
上述したように、耐火性粒状材料に、尿素変性フラン樹脂等の酸硬化性粘結剤とノボラック型フェノール樹脂溶液とを添加する場合、酸硬化性粘結剤に対するノボラック型フェノール樹脂の添加量には限界がある。
しかし、本発明の被覆砂であれば、耐火性粒状材料にノボラック型フェノール樹脂と酸触媒とが被覆されているので、鋳型の製造段階において、酸硬化性粘結剤に対するノボラック型フェノール樹脂の割合を容易に増やすことができる。よって、本発明の被覆砂を用いれば、酸硬化性粘結剤と併用することで耐熱性に優れる鋳型を製造できる。
しかも、本発明の被覆砂を用いれば、鋳型の製造現場において粘結剤を貯留するタンクは1種類でよく、すなわち、酸硬化性粘結剤を貯留するタンクを設置すれば、ノボラック型フェノール樹脂を貯留しておくタンクを設置する必要がない。
【0061】
さらに、上述したように、3次元積層造形により鋳型を製造するに際して、フェノール樹脂をインクジェットする場合、フェノール樹脂の希釈に用いる有機溶媒によりインクジェットヘッドが劣化しやすい。また、造形後に加熱処理するため鋳型が収縮して寸法が変化することがある。
しかし、本発明の被覆砂を用いれば、3次元積層造形により鋳型を製造するに際して酸硬化性粘結剤をインクジェットすればよく、フェノール樹脂をインクジェットする必要がない。よって、インクジェットヘッドが劣化しにくく、また、造形後に加熱処理する必要がないため鋳型の寸法安定性に優れる。しかも、得られる鋳型は耐熱性に優れる。
このように、本発明の被覆砂は3次元積層造形用にも適している。
【0062】
[鋳型の製造方法]
鋳型の製造方法は、自硬性鋳型造型法を採用することができる。具体的には、本発明の被覆砂に、酸硬化性粘結剤を接触させて硬化させることで鋳型を製造する。
鋳型の製造方法としては、以下の態様が挙げられる。
【0063】
<第5の実施形態>
本実施形態の鋳型の製造方法は、本発明の被覆砂と、酸硬化性粘結剤との混合物を鋳型造型用型に充填し、粘結剤(酸硬化性粘結剤およびノボラック型フェノール樹脂)を硬化させて鋳型を製造する方法である。
【0064】
(酸硬化性粘結剤)
酸硬化性粘結剤は、耐火性粒状材料の粘結剤の役割を果たす。
酸硬化性粘結剤としては、フルフリルアルコール、フラン樹脂、レゾール型フェノール樹脂などが挙げられる。これら酸硬化性粘結剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、フルフリルアルコール、フラン樹脂が好ましい。
【0065】
フラン樹脂は、フルフリルアルコール、尿素、ホルムアルデヒド等を主原料としている樹脂で、酸触媒により脱水反応しながら重縮合し、硬化するものである。
フラン樹脂としては、フルフリルアルコールまたはフルフリルアルコールと尿素のいずれかとアルデヒド類との縮合物または共縮合物の1種または2種以上、並びにフルフリルアルコールとの混合物を主成分とし、必要に応じてフェノール類およびビスフェノール類の少なくとも一方とを含むものを用いることが好ましい。
【0066】
フェノール類としては、例えばフェノール、クレゾール、レゾルシン、ノニルフェノール、カシューナッツ殻液(CNSL)などが挙げられる。これらフェノール類は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ビスフェノール類としては、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールC、ビスフェノールS、ビスフェノールE、ビスフェノールZなどが挙げられる。これらビスフェノール類は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
アルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール、グリオキザール、グルタルジアルデヒド、フタル酸ジアルデヒドなどが挙げられる。これらアルデヒド類は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ただし、縮合物の種類によっては、アルデヒド類としてグリオキザールやフルフラールを単独で使用した際には、酸硬化が進行しない場合もある。そのような場合には、アルデヒド類として少なくともホルムアルデヒドを使用すればよい。
【0068】
フルフリルアルコールとアルデヒド類の縮合物または共縮合物を製造する場合には、フルフリルアルコール1モルに対して、アルデヒド類を0.1~1モル使用することが好ましい。アルデヒド類の使用量が上記下限値以上であれば、重合度の低い縮合物となるため、可使時間の設定がより容易となる。一方、アルデヒド類の使用量が上記上限値以下であれば、重合度の高い縮合物となるため、最終鋳型強度発現がより良好となる。
【0069】
尿素とアルデヒド類の縮合物または共縮合物を製造する場合には、尿素1モルに対して、アルデヒド類を1~3モル使用することが好ましく、より好ましくは1.3~2.5モルであり、さらに好ましくは1.5~2モルである。
【0070】
尿素等を由来とする窒素原子含有量は、フラン樹脂の総質量に対して、0.1~6質量%の範囲となるようにすることが好ましく、0.1~4.5質量%であることがより好ましい。
窒素原子含有量は鋳型の初期強度および最終強度に影響を与えるものであり、窒素原子含有量が低い場合には鋳型の初期強度が高くなる傾向にあり、窒素原子含有量が高い場合には鋳型の最終強度が高くなる傾向にある。
従って、必要に応じて窒素原子含有量を適宜調節することが好ましく、窒素原子含有量が上記範囲内であれば、初期強度と最終強度が共に好ましい鋳型を得ることが可能である。
【0071】
フラン樹脂の特に好ましい態様として以下の2つが挙げられる。なお、以下における(共)縮合物とは、縮合物および共縮合物の少なくとも一方を意味する。
i)尿素、フルフリルアルコールおよびアルデヒド類を縮合させて得られる(共)縮合物(a)と、フルフリルアルコールと、必要に応じてフェノール類およびビスフェノール類の少なくとも一方との混合物。
ii)尿素とアルデヒド類の縮合物と、フルフリルアルコールと、必要に応じてフェノール類およびビスフェノール類の少なくとも一方との混合物。
【0072】
フラン樹脂がこのようなi)~ii)の態様であると、可使時間の設定がより容易で、かつ鋳型強度をより向上させることができる。
i)の態様においては、フラン樹脂に占める(共)縮合物(a)の比率は5~90質量%であると好ましく、10~80質量%であるとより好ましい。フルフリルアルコールの比率は10~95質量%であると好ましく、20~90質量%であるとより好ましい。
ii)の態様においては、フラン樹脂に占める尿素とアルデヒド類の縮合物の比率は3~30質量%であると好ましく、5~20質量%であるとより好ましい。フルフリルアルコールの比率は70~97質量%であると好ましく、80~95質量%であるとより好ましい。
i)~ii)の態様においては、フラン樹脂に占めるフェノール類およびビスフェノール類の少なくとも一方の比率は、40質量%以下であると好ましく、1~30質量%であるとより好ましい。
【0073】
なお、フラン樹脂として、上述した以外にも、例えば2,5-ビス(ヒドロキシメチル)フラン、フェノール類およびビスフェノール類からなる群より選ばれる1種以上と、フルフリルアルコールとの混合物;尿素とアルデヒド類との縮合物と、フルフリルアルコールと、2,5-ビス(ヒドロキシメチル)フランとの混合物などを用いることもできる。
【0074】
フラン樹脂は、一般的な製法で得ることができる。その一例を以下に示す。
まず、フラン樹脂の原料(フルフリルアルコール、アルデヒド類、尿素等)の一部に水酸化ナトリウム水溶液などを混合してアルカリ性とし、昇温してアルデヒド類との付加物を生成する。次に、塩酸等を用いて反応液を酸性にし、フルフリルアルコールと尿素とアルデヒド類の縮合等の反応を進行させた後、再び反応液をアルカリ性にし、残りのフラン樹脂の原料と、必要に応じてシランカップリング剤とを混合して、フラン樹脂と、水と、任意でシランカップリング剤とを含む混合物を得る。得られた混合物をそのまま酸硬化性粘結剤として用いてもよい。
なお、ここで添加する塩酸は量が少ないため、硬化反応まで進行しない。また、未反応のフルフリルアルコールはフラン樹脂全体を低粘度にさせるための希釈剤の役割を果たし、硬化反応においては硬化物を構成する成分として樹脂化して硬化物となる。
【0075】
酸硬化性粘結剤には、鋳型の強度を高める目的で、シランカップリング剤が含まれていてもよい。
シランカップリング剤としては、ノボラック型フェノール樹脂の説明において先に例示したシランカップリング剤が挙げられる。
酸硬化性粘結剤がシランカップリング剤を含む場合、シランカップリング剤の含有量は、酸硬化性粘結剤の固形分の総質量に対して、0.01~3質量%が好ましく、0.1~2質量%がより好ましい。シランカップリング剤の含有量が上記下限値以上であれば、鋳型の強度を向上させる効果が充分得られる。鋳型の強度向上効果は、シランカップリング剤の含有量が増えるほど得られやすくなる傾向にあるが、増えすぎても効果は頭打ちになるだけである。よって、シランカップリング剤の含有量は3質量%以下が好ましい。
【0076】
酸硬化性粘結剤には、水が含まれていてもよい。
酸硬化性粘結剤が水を含む場合、水の含有量は、酸硬化性粘結剤の総質量に対して1~35質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましい。
【0077】
酸硬化性粘結剤の配合割合は固形分換算で、被覆砂中の耐火性粒状材料100質量部に対して、0.4質量部以上が好ましい。酸硬化性粘結剤の含有量が上記下限値以上であれば、鋳型の耐熱性がより向上する。酸硬化性粘結剤の含有量が多いほど鋳型の常温時の強度は高まる傾向にあるが、酸硬化性粘結剤の含有量が増えるに連れて注湯時における酸硬化性粘結剤の熱分解によるガスの発生量も増える傾向にある。鋳型の強度の向上と、注湯時におけるガス発生の軽減とのバランスを考慮すると、酸硬化性粘結剤の含有量は固形分換算で、耐火性粒状材料100質量部に対して、0.4~4.6質量部がより好ましく、0.5~4質量部がさらに好ましく、0.6~3質量部が特に好ましく、0.7~2質量部が最も好ましい。
【0078】
また、被覆砂中のノボラック型フェノール樹脂と、酸硬化性粘結剤との質量比(ノボラック型フェノール樹脂:酸硬化性粘結剤)は固形分換算で、1:0.1~1:5が好ましく、1:0.2~1:4がより好ましく、1:0.25~1:3がさらに好ましく、1:0.5~1:2が特に好ましい。ノボラック型フェノール樹脂に対する酸硬化性粘結剤の割合が少なくなるほど、鋳型の耐熱性がより向上する傾向にあるが、少なすぎると自硬性鋳型造型法にて鋳型を製造しにくくなる。すなわち、室温での硬化が充分に進行しにくく、抜型が困難となる場合がある。
【0079】
また、被覆砂中のノボラック型フェノール樹脂と、酸硬化性粘結剤との含有量の合計は固形分換算で、被覆砂中の耐火性粒状材料100質量部に対して、0.8~5質量部が好ましく、1~3質量部がより好ましい。ノボラック型フェノール樹脂と酸硬化性粘結剤との含有量の合計が、上記下限値以上であれば鋳型の耐熱性がより向上し、上記上限値以下であれば注湯時におけるガスの発生量を軽減できる。
【0080】
<第6の実施形態>
本実施形態の鋳型の製造方法は、本発明の被覆砂を層状に敷き詰める工程(以下、「工程(a)」ともいう。)と、層状に敷き詰められた被覆砂を目的の3次元積層造形物に対応して結合するように、前記層状に敷き詰められた被覆砂に酸硬化性粘結剤を選択的に射出して硬化させる工程(以下、「工程(b)」ともいう。)とを含み、工程(a)と工程(b)とを、目的の3次元積層造形物が造形されるまで繰り返すことで鋳型を製造する方法である。
酸硬化性粘結剤としては、第5の実施形態の説明において先に例示した酸硬化性粘結剤が挙げられる。
【0081】
工程(a)および工程(b)は、例えば印刷造形法を用いた3次元積層装置を用い、以下のようにして行われる。
3次元積層装置としては、ブレード機構と、印刷ノズルヘッド機構と、造形テーブル機構とを備えるものが好ましい。さらに、各機構の動作を造形対象物の3次元データを用いて制御する制御部を備えていることが好ましい。
ブレード機構は、リコータを含み、金属ケースの底面または酸硬化性粘結剤で結合済みの造形部の上層に、被覆砂を所定の厚みで積層するものである。
印刷ノズルヘッド機構は、積層された被覆砂に対して酸硬化性粘結剤による印刷を行い、被覆砂を結合することによって1層毎の造形を行うものである。
造形テーブル機構は、1層の造形が終了すると1層分の距離だけ下降して、所定の厚みでの積層造形を実現するものである。
【0082】
まず、印刷造形法を用いた3次元積層装置を用い、リコータを有するブレード機構により本発明の被覆砂を3次元積層装置に設置された金属ケースの底面に積層する(工程(a))。ついで、積層した被覆砂の上に、目的の3次元積層造形物(3次元積層造形鋳型)の形状を3DCAD設計して得られたデータに基づいて印刷ノズルヘッド機構により印刷ノズルヘッドを走査させて、酸硬化性粘結剤を印刷(射出)する(工程(b))。金属ケースの底面は造形テーブルとなっており、上下に可動することができる。酸硬化性粘結剤を印刷した後、金属ケースの底面(造形テーブル)を1層分降下させ、先と同様にして被覆砂を積層し(工程(a))、その上に酸硬化性粘結剤を印刷する(工程(b))。これら積層と印刷の操作を、目的の3次元積層造形物が造形されるまで繰り返す。1層の厚さは、100~500μmが好ましく、200~300μmがより好ましい。
【0083】
酸硬化性粘結剤を印刷する際の塗布量は固形分換算で、その印刷領域における1層分の被覆砂中の耐火性粒状材料100質量部に対して、0.4質量部以上が好ましく、0.4~4.6質量部がより好ましく、0.5~4質量部がさらに好ましく、0.6~3質量部が特に好ましく、0.7~2質量部が最も好ましい。
【0084】
また、酸硬化性粘結剤を印刷する際の塗布量は固形分換算で、その印刷領域における1層分の被覆砂中のノボラック型フェノール樹脂と、酸硬化性粘結剤との質量比(ノボラック型フェノール樹脂:酸硬化性粘結剤)が固形分換算で1:0.1~1:5となる量が好ましく、より好ましくは1:0.2~1:4であり、さらに好ましくは1:0.25~1:3であり、特に好ましくは1:0.5~1:2である。
【0085】
また、酸硬化性粘結剤を印刷する際の塗布量は固形分換算で、その印刷領域における1層分の被覆砂中のノボラック型フェノール樹脂と、酸硬化性粘結剤との含有量の合計が固形分換算で、1層分の被覆砂中の耐火性粒状材料100質量部に対して、0.8~5質量部となる量が好ましく、より好ましくは1~3質量部である。
【0086】
<作用効果>
以上説明した本発明の鋳型の製造方法によれば、本発明の被覆砂を用いるので耐熱性に優れる鋳型を製造できる。よって、本発明により得られる鋳型は、注湯時に高温に曝されても耐えることができ、焼き付き等の鋳造欠陥の発生を抑制できる。
しかも、本発明の鋳型の製造方法によれば、鋳型の製造現場において粘結剤を貯留するタンクは1種類でよく、すなわち、酸硬化性粘結剤を貯留するタンクを設置すれば、ノボラック型フェノール樹脂を貯留しておくタンクを設置する必要がない。
さらに、本発明の鋳型の製造方法によれば、3次元積層造形により鋳型を製造するに際して酸硬化性粘結剤をインクジェットすればよく、フェノール樹脂をインクジェットする必要がない。よって、インクジェットヘッドが劣化しにくく、また、造形後に加熱処理する必要がないため鋳型の寸法安定性に優れる。
【実施例】
【0087】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。各例で用いた耐火性粒状材料、ノボラック型フェノール樹脂、酸触媒および酸硬化性粘結剤を以下に示す。また、各種測定方法および評価方法は以下の通りである。
【0088】
<耐火性粒状材料>
耐火性粒状材料として、焼結法により得られた結晶質の人工砂(Al2O3-SiO2を95質量%含むもの、伊藤忠セラテック株式会社製の商品名「CB-X#1450」)を用いた。
【0089】
<ノボラック型フェノール樹脂>
ノボラック型フェノール樹脂として、以下に示すものを用いた。
・ノボラック型フェノール樹脂(i):群栄化学工業株式会社製の商品名「BPF-SG」、質量平均分子量310。
・ノボラック型フェノール樹脂(ii):群栄化学工業株式会社製の商品名「PSM-4261」、質量平均分子量1050。
・ノボラック型フェノール樹脂(iii):群栄化学工業株式会社製の商品名「PSM-4324」、質量平均分子量1950。
・ノボラック型フェノール樹脂(iv):群栄化学工業株式会社製の商品名「PS-1317」、質量平均分子量6059。
なお、ノボラック型フェノール樹脂の質量平均分子量は、GPC測定装置(東ソー株式会社社製、HPLC8320GPC)およびカラム(東ソー株式会社社製、TSKgel G3000HXL+G2000HKL+G2000HKL)を使用し、標準物質にポリスチレンを用いて測定した。
【0090】
<酸触媒の溶液>
酸触媒としてキシレンスルホン酸60質量部と、水40質量部とを混合し、濃度60質量%の酸触媒の溶液を調製した。
【0091】
<酸硬化性粘結剤>
酸硬化性粘結剤として、以下に示すものを用いた。
・酸硬化性粘結剤(v):フルフリルアルコール99.8質量部と、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン0.2質量部との混合物。
・酸硬化性粘結剤(vi):酸硬化性粘結剤(v)70質量部と、水30質量部との混合物。
【0092】
<測定・評価>
(曲げ強さの測定)
各実施例および比較例で得られたテストピースの曲げ強さをJACT試験法SM-1に記載の測定方法を用いて測定した。
【0093】
[実施例1]
<被覆砂の製造>
耐火性粒状材料2000gを230℃に加熱した。次いで、加熱した耐火性粒状材料を混合撹拌機(株式会社ダルトン製の商品名「5DML-r型」)に投入し、ノボラック型フェノール樹脂(i)20gを添加して2分間撹拌した。
次いで、冷却促進の目的で冷却水60g(耐火性粒状材料100質量部に対して3質量部に相当)を添加し、撹拌した。
混合撹拌機内の混合物の温度が105℃になった時点で、酸触媒の溶液6gを添加し、4分間撹拌した。
混合撹拌機より内容物を取り出し、目開き212μmの篩を通過させ、篩を通過したものを被覆砂として回収した。
得られた被覆砂において、耐火性粒状材料100質量部に対する、ノボラック型フェノール樹脂(i)の含有量は1.0質量部であり、酸触媒の含有量は0.18質量部である。
【0094】
<テストピースの製造>
先に得られた被覆砂1500gを混合撹拌機(株式会社ダルトン製の商品名「5DML-r型」)に投入し、酸硬化性粘結剤(vi)22.5gを添加して1分間撹拌し、混練砂を得た。
得られた混練砂において、耐火性粒状材料100質量部に対する、酸硬化性粘結剤(vi)の含有量は固形分換算で1.0質量部である。すなわち、耐火性粒状材料100質量部に対する、粘結剤の総量(ノボラック型フェノール樹脂(i)と酸硬化性粘結剤(vi)の固形分換算での合計量)は2.0質量部である。また、ノボラック型フェノール樹脂(i)と酸硬化性粘結剤(vi)との質量比は固形分換算で、1:1である。
【0095】
得られた混練砂を、直ちに温度25℃、湿度50%の条件下、縦10mm、横10mm、高さ60mmの直方体の型が21個形成されたテストピース作製用木型に充填して硬化させ、硬化開始から180分経過後に21個のテストピース(鋳型)を取り出した(抜型時間180分)。
取り出した21個のテストピースを温度25℃、湿度50%の条件下、硬化開始から24時間放置した。
放置後の21個のテストピースのうち、3個のテストピースの曲げ強さを測定し、その平均値を求めた。結果を表1に示す。
残りのテストピースを3個ずつに分け、100℃、150℃、200℃、250℃、400℃、または600℃に設定した電気炉内で熱処理した。各電気炉から取り出した直後のテストピースの曲げ強さを測定し、その平均値を求めた。結果を表1に示す。なお、熱処理時間は、100℃、150℃、200℃、250℃、400℃の場合で20分とし、60℃の場合で5分とした。また、400℃または600℃でテストピースを熱処理する場合は、テストピースをアルミホイルで包んで処理した。
【0096】
[実施例2~4]
ノボラック型フェノール樹脂の種類を表1に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして被覆砂を製造し、得られた被覆砂を用いてテストピースを製造し、曲げ強さを測定した。結果を表1に示す。
【0097】
[比較例1]
耐火性粒状材料1500gを混合撹拌機(株式会社ダルトン製の商品名「5DML-r型」)に投入し、酸触媒の溶液4.5gを添加して1分間撹拌した。
次いで、酸硬化性粘結剤(v)30gを添加して1分間撹拌し、混練砂を得た。
得られた混練砂において、耐火性粒状材料100質量部に対する、酸触媒の含有量は0.18質量部であり、酸硬化性粘結剤(v)の含有量は2.0質量部である。
得られた混練砂を用いた以外は、実施例1と同様にして被覆砂を製造し、得られた被覆砂を用いてテストピースを製造し、曲げ強さを測定した。結果を表1に示す。
【0098】
【0099】
表1中のノボラック型フェノール樹脂、酸触媒および酸硬化性粘結剤の量は、それぞれ耐火性粒状材料100質量部に対する固形分量(質量部)である。
【0100】
表1の結果より、各実施例で得られたテストピースは、高温で乾燥しても曲げ強さが高かった。
対して、比較例1で得られたテストピースは、乾燥温度が高くなるに連れて曲げ強度が低下した。
よって、本発明の被覆砂は、注湯時に高温に曝されても耐えられる程度の耐熱性を有する鋳型を製造できることが示された。
【0101】
[実施例5]
加熱した耐火性粒状材料にノボラック型フェノール樹脂(iii)を8g添加した以外は、実施例1と同様にして被覆砂を製造した。得られた被覆砂において、耐火性粒状材料100質量部に対する、ノボラック型フェノール樹脂(iii)の含有量は0.4質量部であり、酸触媒の含有量は0.18質量部である。
得られた被覆砂を用い、酸硬化性粘結剤(vi)34.35gを添加した以外は、実施例1と同様にして混練砂を製造した。得られた混練砂において、耐火性粒状材料100質量部に対する、酸硬化性粘結剤(vi)の含有量は固形分換算で1.6質量部である。すなわち、耐火性粒状材料100質量部に対する、粘結剤の総量(ノボラック型フェノール樹脂(iii)と酸硬化性粘結剤(vi)の固形分換算での合計量)は2.0質量部である。また、ノボラック型フェノール樹脂(i)と酸硬化性粘結剤(vi)との質量比は固形分換算で、1:4である。
得られた混練砂を用いた以外は、実施例1と同様にして被覆砂を製造し、得られた被覆砂を用いてテストピースを製造し、曲げ強さを測定した。結果を表2に示す。
また、実施例3および比較例1の結果も併せて表2に示す。
【0102】
[実施例6]
加熱した耐火性粒状材料にノボラック型フェノール樹脂(iii)16gを添加した以外は、実施例1と同様にして被覆砂を製造した。得られた被覆砂において、耐火性粒状材料100質量部に対する、ノボラック型フェノール樹脂(iii)の含有量は0.8質量部であり、酸触媒の含有量は0.18質量部である。
得られた被覆砂を用い、酸硬化性粘結剤(vi)25.65gを添加した以外は、実施例1と同様にして混練砂を製造した。得られた混練砂において、耐火性粒状材料100質量部に対する、酸硬化性粘結剤(vi)の含有量は固形分換算で1.2質量部である。すなわち、耐火性粒状材料100質量部に対する、粘結剤の総量(ノボラック型フェノール樹脂(iii)と酸硬化性粘結剤(vi)の固形分換算での合計量)は2.0質量部である。また、ノボラック型フェノール樹脂(i)と酸硬化性粘結剤(vi)との質量比は固形分換算で、1:1.5である。
得られた混練砂を用いた以外は、実施例1と同様にして被覆砂を製造し、得られた被覆砂を用いてテストピースを製造し、曲げ強さを測定した。結果を表2に示す。
【0103】
[実施例7]
加熱した耐火性粒状材料にノボラック型フェノール樹脂(iii)24gを添加した以外は、実施例1と同様にして被覆砂を製造した。得られた被覆砂において、耐火性粒状材料100質量部に対する、ノボラック型フェノール樹脂(iii)の含有量は1.2質量部であり、酸触媒の含有量は0.18質量部である。
得られた被覆砂を用い、酸硬化性粘結剤(vi)17.1gを添加した以外は、実施例1と同様にして混練砂を製造した。得られた混練砂において、耐火性粒状材料100質量部に対する、酸硬化性粘結剤(vi)の含有量は固形分換算で0.8質量部である。すなわち、耐火性粒状材料100質量部に対する、粘結剤の総量(ノボラック型フェノール樹脂(iii)と酸硬化性粘結剤(vi)の固形分換算での合計量)は2.0質量部である。また、ノボラック型フェノール樹脂(i)と酸硬化性粘結剤(vi)との質量比は固形分換算で、1:0.67である。
得られた混練砂を用いた以外は、実施例1と同様にして被覆砂を製造し、得られた被覆砂を用いてテストピースを製造し、曲げ強さを測定した。結果を表2に示す。
【0104】
[実施例8]
加熱した耐火性粒状材料にノボラック型フェノール樹脂(iii)32gを添加した以外は、実施例1と同様にして被覆砂を製造した。得られた被覆砂において、耐火性粒状材料100質量部に対する、ノボラック型フェノール樹脂(iii)の含有量は1.6質量部であり、酸触媒の含有量は0.18質量部である。
得られた被覆砂を用い、酸硬化性粘結剤(vi)8.55gを添加した以外は、実施例1と同様にして混練砂を製造した。得られた混練砂において、耐火性粒状材料100質量部に対する、酸硬化性粘結剤(vi)の含有量は固形分換算で0.4質量部である。すなわち、耐火性粒状材料100質量部に対する、粘結剤の総量(ノボラック型フェノール樹脂(iii)と酸硬化性粘結剤(vi)の固形分換算での合計量)は2.0質量部である。また、ノボラック型フェノール樹脂(i)と酸硬化性粘結剤(vi)との質量比は固形分換算で、1:0.25である。
得られた混練砂を用いた以外は、実施例1と同様にして被覆砂を製造し、得られた被覆砂を用いてテストピースを製造し、曲げ強さを測定した。結果を表2に示す。
【0105】
[比較例2]
加熱した耐火性粒状材料にノボラック型フェノール樹脂(iii)40gを添加した以外は、実施例1と同様にして被覆砂を製造した。得られた被覆砂において、耐火性粒状材料100質量部に対する、ノボラック型フェノール樹脂(iii)の含有量は2.0質量部であり、酸触媒の含有量は0.18質量部である。
得られた被覆砂を直ちに温度25℃、湿度50%の条件下、縦10mm、横10mm、高さ60mmの直方体の型が6個形成されたテストピース作製用金型に充填して硬化させた。硬化開始から180分経過後に6個のテストピースを取り出そうとしたが硬化不良のため抜型できなかった。
そこで、金型のまま200℃に設定した電気炉内で20分間乾燥させた。電気炉から金型を取り出し、抜型した直後の6個のテストピースのうち、3個のテストピースの曲げ強さを測定し、その平均値を求めた。結果を表2に示す。
【0106】
【0107】
表2中のノボラック型フェノール樹脂、酸触媒および酸硬化性粘結剤の量は、それぞれ耐火性粒状材料100質量部に対する固形分量(質量部)である。
【0108】
表2の結果より、各実施例で得られたテストピースは、高温で乾燥しても曲げ強さが高かった。
対して、比較例1で得られたテストピースは、乾燥温度が高くなるに連れて曲げ強度が低下した。
比較例2の場合、200℃で乾燥することで抜型できる程度には硬化反応が進行したものの、比較例2で得られたテストピースは曲げ強さが極端に低かった。
よって、本発明の被覆砂は、注湯時に高温に曝されても耐えられる程度の耐熱性を有する鋳型を製造できることが示された。