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特許7222687充電システム、および、充電システムのプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】充電システム、および、充電システムのプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20230208BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20230208BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20230208BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
H02J7/02 J
H02J7/02 H
H02J7/02 B
H02M7/48 E
H01M10/44 Q
H01M10/48 P
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018231973
(22)【出願日】2018-12-11
(65)【公開番号】P2020096432
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】清水 浩史
(72)【発明者】
【氏名】小俣 隆士
(72)【発明者】
【氏名】中村 誠
(72)【発明者】
【氏名】野辺 大悟
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-527321(JP,A)
【文献】特開2018-102069(JP,A)
【文献】特表2017-507635(JP,A)
【文献】特開2016-063702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H01M 10/42-10/48
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数相のコイル(11、12、13)を有する回転電機(10)に電力を供給する2つの電圧源である第1電圧源(21)および第2電圧源(22)を、外部充電器(100)により充電する充電システムであって、
第1スイッチング素子(31~36)を有し、前記コイルの一端(111、121、131)および前記第1電圧源に接続される第1インバータ(30)と、
第2スイッチング素子(41~46)を有し、前記コイルの他端(112、122、132)および前記第2電圧源に接続される第2インバータ(40)と、
前記外部充電器の高電位側と接続可能な高電位側外部接続端子(6)と前記第1電圧源の高電位側とを接続する高電位側給電線(61)に設けられる高電位側開閉器(51)と、
前記外部充電器の低電位側と接続可能な低電位側外部接続端子(7)と前記第2電圧源の低電位側とを接続する低電位側給電線(62)に設けられる低電位側開閉器(52)と、
前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子のオンオフ作動を制御する制御部(70)と、
を備え
前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子は、それぞれ、前記制御部からの指令により電流の導通および遮断を切替可能であるスイッチ部、および、低電位側から高電位側への通電を許容する還流部を有し、
前記第1スイッチング素子は、高電位側に接続される第1上アーム素子(31~33)、および、前記第1上アーム素子の低電位側に接続される第1下アーム素子(34~36)を含み、
前記第2スイッチング素子は、高電位側に接続される第2上アーム素子(41~43)、および、前記第2上アーム素子の低電位側に接続される第2下アーム素子(44~46)を含み、
前記制御部は、
前記高電位側開閉器および前記低電位側開閉器が閉の状態にて、前記第1上アーム素子の少なくとも1相をオンにし、前記第1上アーム素子がオンされる相とは異なる少なくとも1相の前記第2下アーム素子をオンにすることで、前記第1電圧源と前記第2電圧源とを並列充電する充電システム。
【請求項2】
前記制御部は、充電開始後、
前記第1上アーム素子がオンされる相と同じ相の前記第2上アーム素子をオンにし、
前記第2下アーム素子がオンされる相と同じ相の前記第1下アーム素子をオンにする請求項に記載の充電システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記高電位側開閉器および前記低電位側開閉器が閉の状態にて、前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子をオフにすることで、前記第1電圧源と前記第2電圧源とを直列充電する請求項またはに記載の充電システム。
【請求項4】
前記制御部は、充電開始後、
前記第1下アーム素子の全相、および、前記第2上アーム素子の全相をオンにする請求項に記載の充電システム。
【請求項5】
前記制御部は、
前記高電位側開閉器および前記低電位側開閉器が閉の状態にて、前記第2下アーム素子の少なくとも1相をオンにすることで前記第1電圧源を単独充電し、
前記高電位側開閉器および前記低電位側開閉器が閉の状態にて、前記第1上アーム素子の少なくとも1相をオンにすることで前記第2電圧源を単独充電する請求項のいずれか一項に記載の充電システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1電圧源および前記第2電圧源の充電状態に応じ、前記第1電圧源または前記第2電圧源の単独充電と、前記第1電圧源および前記第2電圧源の同時充電とを切替可能である請求項1~のいずれか一項に記載の充電システム。
【請求項7】
複数相のコイル(11、12、13)を有する回転電機(10)に電力を供給する2つの電圧源である第1電圧源(21)および第2電圧源(22)を、外部充電器(100)により充電する充電システムのプログラムであって、
前記充電システムは、
第1スイッチング素子(31~36)を有し、前記コイルの一端(111、121、131)および前記第1電圧源に接続される第1インバータ(30)と、
第2スイッチング素子(41~46)を有し、前記コイルの他端(112、122、132)および前記第2電圧源に接続される第2インバータ(40)と、
前記外部充電器の高電位側と接続可能な高電位側外部接続端子(6)と前記第1電圧源の高電位側とを接続する高電位側給電線(61)に設けられる高電位側開閉器(51)と、
前記外部充電器の低電位側と接続可能な低電位側外部接続端子(7)と前記第2電圧源の低電位側とを接続する低電位側給電線(62)に設けられる低電位側開閉器(52)と、
前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子のオンオフ作動を制御する制御部(70)と、
を備え、
前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子は、それぞれ、前記制御部からの指令により電流の導通および遮断を切替可能であるスイッチ部、および、低電位側から高電位側への通電を許容する還流部を有し、
前記第1スイッチング素子は、高電位側に接続される第1上アーム素子(31~33)、および、前記第1上アーム素子の低電位側に接続される第1下アーム素子(34~36)を含み、
前記第2スイッチング素子は、高電位側に接続される第2上アーム素子(41~43)、および、前記第2上アーム素子の低電位側に接続される第2下アーム素子(44~46)を含み、
前記制御部に、
前記高電位側開閉器および前記低電位側開閉器が閉の状態にて、前記第1上アーム素子の少なくとも1相をオンにさせ、前記第1上アーム素子がオンされる相とは異なる少なくとも1相の前記第2下アーム素子をオンにさせることで、前記第1電圧源と前記第2電圧源とを並列充電させる充電システムのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電システム、および、充電システムのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中性点が分離された多相のオープン巻線を有する交流電動機駆動システムが知られている。例えば特許文献1では、交流電動機駆動システムは、巻線の一端に接続される第1のスイッチを有する第1のインバータと、巻線の他端に接続される第2のスイッチを有する第2インバータと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-63702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、第1のスイッチと接続される第1のバッテリ、および、第2のスイッチと接続される第2のバッテリを、単相交流電源にて充電する。しかしながら、特許文献1では、例えばCHAdeMO(登録商標)やCCS(コンバインド・チャージング・システム)のような直流の急速充電器には対応してない。本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、オープン巻線に接続された2つの電圧源を適切に充電可能な充電システム、および、充電システムのプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の充電システムは、複数相のコイル(11、12、13)を有する回転電機(10)に電力を供給する2つの電圧源である第1電圧源(21)および第2電圧源(22)を、外部充電器(100)により充電するものであって、第1インバータ(30)と、第2インバータ(40)と、高電位側開閉器(51)と、低電位側開閉器(52)と、制御部(70)と、を備える。
【0006】
第1インバータは、第1スイッチング素子(31~36)を有し、コイルの一端(111、121、131)および第1電圧源に接続される。第2インバータは、第2スイッチング素子(41~46)を有し、コイルの他端(112、122、132)および第2電圧源に接続される。
【0007】
高電位側開閉器は、外部充電器の高電位側と接続可能な高電位側外部接続端子(6)と第1電圧源の高電位側とを接続する高電位側給電線(61)に設けられる。低電位側開閉器は、外部充電器の低電位側と接続可能な低電位側外部接続端子(7)と第2電圧源の低電位側とを接続する低電位側給電線(62)に設けられる。制御部は、第1スイッチング素子および第2スイッチング素子のオンオフ作動を制御する。
第1スイッチング素子および第2スイッチング素子は、それぞれ、制御部からの指令により電流の導通および遮断を切替可能であるスイッチ部、および、低電位側から高電位側への通電を許容する還流部を有する。第1スイッチング素子は、高電位側に接続される第1上アーム素子(31~33)、および、第1上アーム素子の低電位側に接続される第1下アーム素子(34~36)を含む。第2スイッチング素子は、高電位側に接続される第2上アーム素子(41~43)、および、第2上アーム素子の低電位側に接続される第2下アーム素子(44~46)を含む。
制御部は、高電位側開閉器および低電位側開閉器が閉の状態にて、第1上アーム素子の少なくとも1相をオンにし、第1上アーム素子がオンされる相とは異なる少なくとも1相の第2下アーム素子をオンにすることで、第1電圧源と第2電圧源とを並列充電する。
本発明の別の態様は、充電システムのプログラムであって、制御部に、高電位側開閉器および低電位側開閉器が閉の状態にて、第1上アーム素子の少なくとも1相をオンにさせ、第1上アーム素子がオンされる相とは異なる少なくとも1相の第2下アーム素子をオンにさせることで、第1電圧源と前記第2電圧源とを並列充電させる。
【0008】
オープン巻線であるコイルの両側にインバータおよび電圧源が設けられる構成において、高電位側給電線および低電位側給電線を設け、回転電機およびインバータを電力パスとして用いることで、2つの電圧源を同時に充電することができる。また、単独充電、並列充電および直列充電を切替可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態による充電システムを示す回路図である。
図2】一実施形態による電池パックを示す回路図である。
図3】一実施形態による並列充電を説明する説明図である。
図4】一実施形態による直列充電を説明する説明図である。
図5】一実施形態による第1電圧源の単独充電を説明する説明図である。
図6】一実施形態による第2電圧源の単独充電を説明する説明図である。
図7】一実施形態による充電制御処理を説明するフローチャートである。
図8】一実施形態による単独充電モードを説明するフローチャートである。
図9】一実施形態による並列充電モードを説明するフローチャートである。
図10】一実施形態による直列充電モードを説明するフローチャートである。
図11】一実施形態による通電素子選定を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(一実施形態)
以下、本発明による充電システムを図面に基づいて説明する。一実施形態による充電システムを図1図11に示す。図1に示すように、充電システム1は、車両98に搭載される。車両98には、インレット5が設けられる。充電システム1は、インレット5を経由して外部充電器としての急速充電器100と接続可能に設けられる。インレット5には、高電位側外部接続端子6、および、低電位側外部接続端子7が設けられる。急速充電器100は、商用電源と比較して高電圧の直流充電器であって、車両98の制御部70と通信可能な外部制御部105を備える。
【0011】
充電システム1は、回転電機としてのモータジェネレータ10、第1電圧源21、第2電圧源22、第1インバータ30、第2インバータ40、高電位側開閉器51、低電位側開閉器52、高電位側給電線61、低電位側給電線62、および、制御部70等を備える。
【0012】
モータジェネレータ10は、例えば永久磁石式同期型の3相交流モータであって、U相コイル11、V相コイル12、および、W相コイル13を有する。モータジェネレータ10は、図示しない駆動輪を駆動するためのトルクを発生する、いわゆる主機モータであり、駆動輪を駆動するための電動機としての機能、および、図示しないエンジンや駆動輪から伝わる運動エネルギによって駆動されて発電する発電機としての機能を有する。以下適宜、モータジェネレータを「MG」と記載する。
【0013】
MG10には、第1電圧源21および第2電圧源22から電力が供給される。第1電圧源21および第2電圧源22は、例えばニッケル水素電池、リチウムイオン電池等の充放電可能な蓄電装置である。二次電池に替えて、電気二重層キャパシタ等を用いてもよい。本実施形態では、第1電圧源21および第2電圧源22は、例えば定格電圧が300[V]の同等の性能のものを用いるが、例えば一方に出力型のものを用い、他方に容量型のものを用いる、といった具合に、電池性能や種類が異なっていてもよい。図中等適宜、第1電圧源21を「電圧源1」、第2電圧源22を「電圧源2」とする。
【0014】
図2に示すように、第1電圧源21と第2電圧源22とは、絶縁された状態にて、1つの電池パック29に設けられる。電池パック29は、外部接続端子6、7を経由して急速充電器100と接続可能である。また、電池パック29は、車載充電器150を経由して、商用電源等の交流電源に接続可能である。図2中、急速充電器100を「DC急速」、車載充電器150を経由して接続される電源を「AC普通」と記載した。
【0015】
第1電圧源21は、電池セルモジュール210、高電位側メインリレー部212、および、低電位側メインリレー部215を有する。電池セルモジュール210は、複数の電池セル211が並列に接続される。
【0016】
高電位側メインリレー部212は、1つのリレー部213を有し、電池セルモジュール210の高電位側に接続される。低電位側メインリレー部215は、並列に接続されるリレー部216、217、および、リレー部217に直列に接続されるプリチャージ抵抗218を有し、電池セルモジュール210の低電位側に接続される。低電位側メインリレー部215をオンにするとき、プリチャージ抵抗218に接続されたリレー部217をオンにした後に、オンされるリレーを、リレー部217からリレー部216に切り替えることで、コンデンサ39への突入電流を防ぐことができる。
【0017】
第2電圧源22は、電池セルモジュール220、高電位側メインリレー部222、および、低電位側メインリレー部225を有する。電池セルモジュール220は、複数の電池セル221が並列に接続される。図2では、電池セルモジュール211、221は、いずれも2つの電池セルが並列に接続されているが、電池セルの個数は1または3以上であってもよい。
【0018】
高電位側メインリレー部222は、1つのリレー部223を有し、電池セルモジュール220の高電位側に接続される。低電位側メインリレー部225は、並列に接続されるリレー部226、227、および、リレー部227に直列に接続されるプリチャージ抵抗228を有し、電池セルモジュール220の低電位側に接続される。低電位側メインリレー部225をオンにするとき、プリチャージ抵抗228が接続されたリレー部227をオンにした後、オンされるリレーを、リレー部227からリレー部226に切り替えることで、コンデンサ49への突入電流を防ぐことができる。
【0019】
電池パック29には、第1電圧源21と接続される第1高電位側端子291および第1低電位側端子292、ならびに、第2電圧源22と接続される第2高電位側端子293および第2低電位側端子294が設けられる。
【0020】
高電位側給電線61は、第1高電位側端子291と高電位側外部接続端子6とを接続する。高電位側給電線61には、高電位側開閉器51が設けられる。第2高電位側端子293は、第2インバータ40、MG10、第1インバータ30および高電位側給電線61を経由して、高電位側外部接続端子6と接続される。
【0021】
低電位側給電線62は、第2低電位側端子294と低電位側外部接続端子7とを接続する。低電位側給電線62には、低電位側開閉器52が設けられる。第1低電位側端子292は、第1インバータ30、MG10、第2インバータ40および低電位側給電線62を経由して、低電位側外部接続端子7と接続される。開閉器51、52は、電流の導通および遮断を切替可能であれば、どのようなものを用いてもよく、例えば半導体リレーやメカリレー等が用いられる。
【0022】
図中、メインリレー部を「SMR」と記載し、SMRが導通可能な状態を「メインリレー部オン」、SMRが導通不能の状態を「メインリレー部オフ」とする。また、第1電圧源21のメインリレー部212、215を「SMR1」、第2電圧源22のメインリレー部222、225を「SMR2」とする。図2では、記載の都合上、MG10およびインバータ30、40を2つに分けて記載した。
【0023】
図1に示すように、第1インバータ30は、コイル11~13の通電を切り替える3相インバータであって、スイッチング素子31~36を有し、MG10および第1電圧源21に接続される。第2インバータ40は、コイル11~13の通電を切り替える3相インバータであって、スイッチング素子41~46を有し、MG10および第2電圧源22に接続される。図中等適宜、第1インバータ30を「INV1」、第2インバータ40を「INV2」と記載する。
【0024】
スイッチング素子31~36、41~46は、それぞれ、スイッチ部および還流ダイオードを有する。スイッチ部は、制御部70によりオンオフ作動が制御される。本実施形態のスイッチ部はIGBTであるが、MOSFET等、他の素子を用いてもよい。また、スイッチング素子31~36、41~46で用いる素子が異なっていてもよい。
【0025】
還流ダイオードは、各スイッチ部と並列に接続され、低電位側から高電位側への通電を許容する。還流ダイオードは、例えばMOSFETの寄生ダイオードのように内蔵されていてもよいし、外付けされたものであってもよい。また、還流できるように接続されたIGBTやMOSFET等のスイッチであってもよい。
【0026】
第1インバータ30において、高電位側にスイッチング素子31~33が接続され、低電位側にスイッチング素子34~36が接続される。以下適宜、高電位側のスイッチング素子31~33を「第1上アーム素子」、低電位側のスイッチング素子34~36を「第1下アーム素子」とする。第1上アーム素子31~33の高電位側を接続する第1高電位側配線37が第1電圧源21の高電位側と接続され、第1下アーム素子34~36の低電位側を接続する第1低電位側配線38が第1電圧源21の低電位側と接続される。
【0027】
U相のスイッチング素子31、34の接続点にはU相コイル11の一端111が接続され、V相のスイッチング素子32、35の接続点にはV相コイル12の一端121が接続され、W相のスイッチング素子33、36の接続点にはW相コイル13の一端131が接続される。
【0028】
第2インバータ40において、高電位側にスイッチング素子41~43が接続され、低電位側にスイッチング素子44~46が接続される。以下適宜、高電位側のスイッチング素子41~43を「第2上アーム素子」、低電位側のスイッチング素子44~46を「第2下アーム素子」とする。第2上アーム素子41~43の高電位側を接続する第2高電位側配線47が第2電圧源22の高電位側と接続され、第2下アーム素子44~46の低電位側を接続する第2低電位側配線48が第2電圧源22の低電位側と接続される。
【0029】
U相のスイッチング素子41、44の接続点にはU相コイル11の他端112が接続され、V相のスイッチング素子42、45の接続点にはV相コイル12の他端122が接続され、W相のスイッチング素子43、46の接続点にはW相コイル13の他端132が接続される。
【0030】
このように、本実施形態では、MG10のコイル11~13がオープン巻線化されており、第1インバータ30および第2インバータ40がコイル11~13の両端に接続されている「2電源2インバータ」の電動機駆動システムとなっている。
【0031】
第1コンデンサ39は、高電位側配線37と低電位側配線38とに接続され、第1インバータ30と並列に設けられる。第2コンデンサ49は、高電位側配線47と低電位側配線48とに接続され、第2インバータ40と並列に設けられる。コンデンサ39、49は、平滑コンデンサであり、インバータ30、40に印加される電圧を平滑化する。
【0032】
高電位側開閉器51が設けられる高電位側給電線61は、MG10およびインバータ30、40を経由せず、第1電圧源21の高電位側と高電位側外部接続端子6とを直接的に接続する。また、低電位側開閉器52が設けられる低電位側給電線62は、MG10およびインバータ30、40を経由せず、第2電圧源22の低電位側と低電位側外部接続端子7とを直接的に接続する。
【0033】
制御部70は、マイコン等を主体として構成され、内部にはいずれもCPU、ROM、RAM、I/O、及び、これらの構成を接続するバスライン等を備えている。制御部70における各処理は、ROM等の実体的なメモリ装置(すなわち、読み出し可能非一時的有形記録媒体)に予め記憶されたプログラムをCPUで実行することによるソフトウェア処理であってもよいし、例えばFPGA(field-programmable gate array)のような電子回路によるハードウェア処理であってもよい。
【0034】
制御部70は、インバータ制御部71、リレー制御部72、および、充電制御部75を有する。インバータ制御部71は、スイッチング素子31~36、41~46のオンオフ作動を制御する。第1インバータ30の駆動制御に係る制御信号は、第1ドライブ回路76を経由して第1インバータ30に出力される。第2インバータ40の駆動制御に係る制御信号は、第2ドライブ回路77を経由して第2インバータ40に出力される。インバータ30、40を制御するマイコンは、1つであってもよいし、インバータ30、40ごとに設けられていてもよい。
【0035】
ここで、MG10の駆動モードを説明する。駆動モードには、第1電圧源21または第2電圧源22の電力を用いる「片側駆動モード」、第1電圧源21および第2電圧源22の電力を用いる「両側駆動モード」が含まれ、動作点や運転条件等に応じ、片側駆動モードと両側駆動モードとを切り替える。その他の駆動モードを含んでもよい。
【0036】
片側駆動モードでは、一方のインバータの上アーム素子の全相または下アーム素子の全相をオンにして中性点化し、他方のインバータを駆動要求に応じて、PWM制御や矩形波制御等により制御する。
【0037】
両側駆動モードでは、PWM制御における基本波の位相を第1インバータ30と第2インバータ40とで反転させる。変調率は、第1インバータ30と第2インバータ40とで異なっていてもよい。また、変調率を無限大と見なせば、矩形波制御であってもよい。これにより、電圧源21、22が直列接続されている状態とみなすことができ、電圧源21、22の電圧和に相当する電圧をMG10に印加することが可能であり、出力を高めることができる。
【0038】
リレー制御部72は、急速充電器100を制御する外部制御部105からの指令に基づき、高電位側開閉器51および低電位側開閉器52を制御する。開閉器51、52は、充電開始タイミングで閉となり、充電終了タイミングで開となる。すなわち、外部接続端子6、7と直接的に接続される開閉器51、52は、急速充電器100側からの指令で制御され、充電中は閉の状態が継続される。
【0039】
充電制御部75は、第1電圧源21および第2電圧源22のSOC(State Of Charge)等の充電状態に係る情報を取得し、電圧源21、22の充電状態を制御する。以下適宜、第1電圧源21のSOCをSOC1、第2電圧源22のSOCをSOC2とする。充電制御部75は、別途のECUとして設けられていてもよい。
【0040】
ところで、急速充電器100には、例えば500V規格のCHAdeMOや、1000V規格のCCSのように、複数の規格が存在する。また、電圧源21、22の定格電圧を例えば300Vとすると、急速充電器100が500V規格の場合、2電源の定格電圧の和が500Vより大きく、2電源を直列で充電することができないため、並列で充電する必要がある。一方、急速充電器100が1000V規格であれば、2電源を直列充電可能である。また、SOC差が大きい場合や一方の電圧源21、22の充電が不要の場合、1つの電圧源21、22の単独充電が必要である。本実施形態では、両側駆動モードによる高出力を実現すべく、一方の電圧源21、22が枯渇するのを避け、両方の電圧源21、22のSOCが両側駆動可能な程度に維持されていることが望ましい。
【0041】
そこで本実施形態では、MG10およびインバータ30、40を充電電力の電力パスとして用いることで、別途の充電器等を設けることなく、単独充電、並列充電および直列充電を切り替える。これにより、電圧源21、22を適切に充電可能である。なお本実施形態のMG10は主機モータであって、MG10およびインバータ30、40は大出力に設計されており、輸送電力の大きい急速充電器100による充電にも十分耐えられる。
【0042】
並列充電を図3、直列充電を図4、単独充電を図5および図6に基づいて説明する。図3~図では、電圧源21、22を1つの電池記号にて記載し、制御部70等の一部の構成や符号の記載を省略した。充電中、開閉器51、52は閉であり、メインリレー部212、215、222、225がオンされているものとする。
【0043】
図3に示すように、並列充電を行う場合、少なくとも1相の第1上アーム素子をオン、第1上アーム素子をオンした相とは異なる少なくとも1相の第2下アーム素子をオンにする。図3の例では、V相とW相の第1上アーム素子32、33、および、U相の第2下アーム素子44がオンされる。
【0044】
破線の矢印で示すように、U相の第1下アーム素子34の還流ダイオード、U相コイル11、および、U相の第2下アーム素子44のスイッチ部を電流が流れることで、第1電圧源21が充電される。また、一点鎖線の矢印で示すように、V相およびW相の第1上アーム素子32、33のスイッチ部、V相コイル12およびW相コイル13、ならびに、V相およびW相の第2上アーム素子42、43の還流ダイオードを電流が流れることで、第2電圧源22が充電される。これにより、電圧源21、22を並列にて同時に充電可能である。
【0045】
第2電圧源22の方が第1電圧源21より電位が低い場合、図3のように、第2電圧源22をV相およびW相の2相で充電し、第1電圧源21をU相の1相充電する。なお、第1電圧源21の方が第2電圧源22より電位が低い場合、第1電圧源21を2相、第2電圧源22を1相で充電する。通電相は、任意に選択可能であるが、例えば前回充電時にオンした素子とは別の素子をオンする。
【0046】
また、スイッチング素子31~36、41~46がMOSFETの場合、充電開始が確認された後、低電位側から高電位側への通電経路にあるU相の第1下アーム素子34、V相の第2上アーム素子42およびW相の第2上アーム素子43をオンにして同期整流してもよい。直列充電および単独充電の場合も同様に、還流ダイオードが通電経路となるスイッチ部をオンにしてもよい。これにより、導通損を低減可能である。
【0047】
図4に示すように、直列充電を行う場合、全素子31~36、41~46がオフの状態で、開閉器51、52を閉、メインリレー部212、215、222、225をオンにすると、破線の矢印で示すように、第1下アーム素子34~36の還流ダイオード、コイル11~13、および、第2上アーム素子41~43の還流ダイオードを電流が流れる。これにより、電圧源21、22を直列にて同時に充電可能である。
【0048】
図5に示すように、第1電圧源21の単独充電を行う場合、第2下アーム素子44~46をオンにすると、破線の矢印で示すように、第1下アーム素子34~36の還流ダイオード、コイル11~13、第2下アーム素子44~46のスイッチ部を電流が流れる。これにより、第1電圧源21を単独充電することができる。
【0049】
図6に示すように、第2電圧源22の単独充電を行う場合、第1上アーム素子31~33をオンにすると、破線の矢印で示すように、第1上アーム素子31~33のスイッチ部、コイル11~13、および、第2上アーム素子41~43の還流ダイオードを電流が流れる。これにより、第2電圧源22を単独充電することができる。電圧源21、22の単独充電を行う場合、高電位側から低電位側への通電となる3相のスイッチング素子をオンしているが、オンする相数は、1相または2相でもよい。
【0050】
本実施形態の充電制御処理を図7のフローチャートに基づいて説明する。この処理は、車両が停止しているとき、制御部70にて実行可能である。以下、ステップS101の「ステップ」を省略し、単に記号「S」と記す。他のステップも同様である。
【0051】
S101にて、急速充電器100の充電コネクタがインレット5に接続されると、S102にて、リレー制御部72は、外部制御部105からの指令により、開閉器51、52を閉とする。このとき、急速充電器100からの出力は0とする。S103では、充電制御部75は、電圧源21、22の電位やSOC等の電池状態を取得する。
【0052】
S104では、充電制御部75は、電圧源21、22の両方の充電が必要か否かを判断する。ここでは、SOCが完了判定閾値Fth(例えば80%)以上であれば、充電が完了しており、充電不要と判定する。電圧源21、22の一方の充電が不要であると判断された場合(S104:NO)、S110へ移行する。電圧源21、22が共に充電必要であると判断された場合(S104:YES)、S105へ移行する。
【0053】
S105では、充電制御部75は、第1電圧源21と第2電圧源22との電位差ΔVが電位差判定閾値Vthより大きいか否かを判断する。電位差判定閾値Vthは、電圧源21、22を並列または直列にて同時充電可能な程度の値に設定される。電位差ΔVが電位差判定閾値Vthより大きいと判断された場合(S105:YES)、S106へ移行し、単独充電モードとする。電位差ΔVが電位差判定閾値Vth以下になったら、単独充電を終了し、S107へ移行する。電位差Vthが電位差判定閾値Vth以下であると判断された場合(S105:NO)、S107へ移行する。なお、各充電モードの詳細は後述する。
【0054】
S107では、充電制御部75は、直列充電が可能か否かを判断する。ここでは、急速充電器100により印加可能な電圧が、電圧源21、22の定格電圧の和より大きい場合、直列充電可能と判断する。或いは、例えば接続されている急速充電器100がCCSであれば直列充電可能、CHAdeMOであれば直列充電不可、といった具合に、接続されている充電器の規格等に基づいて判定してもよい。直列充電が可能であると判断された場合(S107:YES)、S108へ移行し、直列充電モードとする。直列充電が不可であると判断された場合(S107:NO)、S109へ移行し、並列充電モードとする。電圧源21、22の少なくとも一方の充電が完了した場合、直列充電または並列充電を終了し、S110へ移行する。
【0055】
S110では、充電制御部75は、電圧源21、22が共に充電完了したか否かを判断する。一方の電圧源の充電が完了していないと判断された場合(S110:NO)、S111へ移行し、充電が完了していない側の電圧源の単独充電モードとする。充電が完了した場合、単独充電を終了し、S112へ移行する。両方の電圧源21、22の充電が完了したと判断された場合(S110:YES)、S112へ移行する。
【0056】
S112では、制御部70は、充電が完了した旨の情報を外部制御部105へ通知し、外部制御部105からの指令に基づき、リレー制御部72が開閉器51、52を開とする。
【0057】
ここで、充電コネクタが充電途中で抜かれ、充電が中止されることがある。本実施形態では、電位差ΔVが大きい場合、電位が低い側の電圧源を優先的に充電することで、できるだけ両側駆動が可能な状態を確保するようにしている。
【0058】
単独充電モードでの充電処理を図8のフローチャートに基づいて説明する。S201では、充電制御部75は、充電を要する電圧源が第1電圧源21か否かを判断する。S106における単独充電モードでは、充電を要する電圧源として、電圧が低い方の電圧源を選択する。また、S111における単独充電モードでは、充電を要する電圧源として、充電が完了していない電圧源を選択する。充電を要する電圧源が第1電圧源21ではないと判断された場合(S201:NO)、すなわち充電を要する電圧源が第2電圧源22である場合、S206へ移行する。充電を要する電圧源が第1電圧源21であると判断された場合(S201:YES)、S202へ移行する。
【0059】
S202では、インバータ制御部71は、第1インバータ30の全素子、および、第2上アーム素子41~43をオフ、第2下アーム素子44~46をオンとする。S203では、制御部70は、受電準備が完了した旨の情報を外部制御部105に通知する。外部制御部105は、受電準備完了通知を受け取ると、給電を開始する。給電が開始されると、S204にて、第1電圧源21が単独充電される。
【0060】
S204mでは、スイッチング素子がMOSEFT等、オンすることで低電位側から高電位側への通電がスイッチ部にて可能である場合、通電確認後、第1インバータ30の下アーム素子34~36をオンにする。また、当該素子がオンされている状態であれば、オンの状態を継続する。なお、スイッチング素子がIGBT等、低電位側から高電位側への通電がスイッチ部にて不能の場合、当該ステップは省略される。また、スイッチ部と還流ダイオードとの導通損によっては、当該ステップは省略可能である。S208m等、ステップ番号の末尾に「m」を付した後述の各ステップにおいても同様である。
【0061】
S205では、充電制御部75は、第1電圧源21の充電状態が目標に到達したか否かを判断する。S106における単独充電モードでは、電位差ΔVが電位差判定閾値Vth以下となった場合、目標に到達したと判定する。また、S111における単独充電モードでは、第1電圧源21のSOCが完了判定閾値Fth以上となった場合、目標に到達したと判定する。第1電圧源21の充電状態が目標に到達していないと判断された場合(S205:NO)、S204に戻り、第1電圧源21の単独充電を継続する。第1電圧源21の充電状態が目標に到達したと判断された場合(S205:YES)、S210へ移行する。
【0062】
S201にて否定判断された場合に移行するS206では、インバータ制御部71は、第1上アーム素子31~33をオン、第1下アーム素子34~36および第2インバータ40の全素子をオフにする。S207では、S203と同様、制御部70は、受電準備が完了した旨の情報を外部制御部105に通知する。外部制御部105は、受電準備完了通知を受け取ると、給電を開始する。給電が開始されると、S208にて、第2電圧源22が単独充電される。
【0063】
S208mは、スイッチング素子がMOSEFT等、オンすることで低電位側から高電位側への通電がスイッチ部にて可能である場合、通電確認後、第2インバータ40の上アーム素子41~43をオンとする。また、当該素子がオンされている状態であれば、オンの状態を継続する。
【0064】
S209では、充電制御部75は、第2電圧源22の充電状態が目標に到達したか否かを判断する。ここでは、S205と同様、S106における単独充電モードでは、電位差ΔVが電位差判定閾値Vth以下となった場合、目標に到達したと判定する。また、S111における単独充電モードでは、第2電圧源22のSOCが完了判定閾値Fth以上となった場合、目標に到達したと判定する。第2電圧源22の充電状態が目標に到達していないと判断された場合(S209:NO)、S208に戻り、第2電圧源の単独充電を継続する。第2電圧源22の充電状態が目標に到達したと判断された場合(S209:YES)、S210へ移行する。
【0065】
S210では、制御部70は、給電停止指令を外部制御部105に送信する。外部制御部105は、給電停止指令を受け取ると、急速充電器100からの給電を停止する。S211では、インバータ制御部71は、インバータ30、40の全素子をオフにし、単独充電モードを終了する。
【0066】
並列充電モードでの充電処理を図9のフローチャートに基づいて説明する。S301では、充電制御部75は、通電経路となる通電素子を選定する。本実施形態では、充電制御部75は、前回の充電時に通電していない素子が優先して通電素子となるように、通電素子を選定する。これにより、素子劣化の偏りを低減することができる。
【0067】
例えば図11(a)に示すように、前回の充電時に、U相およびV相の上アーム素子31、32、41、42およびW相の下アーム素子36、46を通電素子として並列充電を行った場合、図11(b)に示すように、今回の充電時には、U相およびV相の下アーム素子34、35、44、45およびW相の上アーム素子33、43を通電素子として選定する。また、前回の充電が単独充電または直列充電であって、並列充電を行っておらず、前々回に並列充電を行っていた場合、前々回の並列充電時に通電していない素子を通電素子として選定する、といった具合に、直近の並列充電時の通電素子に基づいて、今回の通電素子を選定してもよい。また、素子劣化状態に偏りがなければ、任意の素子を通電素子として選定してもよい。
【0068】
図9に戻り、S302では、インバータ制御部71は、選定された通電素子をオンにする。S303では、制御部70は、受電準備が完了した旨の情報を外部制御部105に通知する。外部制御部105は、受電準備完了通知を受け取ると、給電を開始する。給電が開始されると、S304にて、電圧源21、22が並列に接続されていると見なせる状態にて、電圧源21、22が同時に充電される。
【0069】
S304mは、スイッチング素子がMOSEFT等、オンすることで低電位側から高電位側への通電がスイッチ部にて可能である場合、通電確認後、還流ダイオードが通電経路となっている素子をオンにする。例えば図11(a)の例であれば、第1下アーム素子36、および、第2上アーム素子41、42をオンにする。また例えば図11(b)の例であれば、第1下アーム素子34、35、および、第2上アーム素子43をオンにする。また、当該素子がオンされている状態であれば、オンの状態を継続する。
【0070】
S305では、充電制御部75は、電圧源21、22の充電状態が目標に到達したか否かを判断する。本実施形態では、SOC1、SOC2の少なくとも一方が完了判定閾値Fth以上となった場合、目標に到達したと判定する。電圧源21、22の充電状態が目標に到達していないと判断された場合(S305:NO)、すなわちSOC1、SOC2がともに完了判定閾値Fth未満の場合、S304に戻り、電圧源21、22の並列充電を継続する。電圧源21、22の充電状態が目標に到達したと判断された場合(S305:YES)、すなわちSOC1、SOC2の少なくとも一方が完了判定閾値Fth以上の場合、S306へ移行する。
【0071】
S306では、制御部70は、給電停止指令を外部制御部105に送信する。外部制御部105は、給電停止指令を受け取ると、急速充電器100からの給電を停止する。S307では、インバータ制御部71は、インバータ30、40の全素子をオフにする。S308では、充電制御部75は、今回の通電素子を図示しない記憶部等に記憶させ、並列充電モードを終了する。
【0072】
直列充電モードでの充電処理を図10のフローチャートに基づいて説明する。S401では、インバータ制御部71は、インバータ30、40の全素子31~36、41~46をオフにする。
【0073】
S402では、制御部70は、受電準備が完了した旨の情報を外部制御部105に通知する。外部制御部105は、受電準備完了通知を受け取ると、給電を開始する。給電が開始されると、S403にて、電圧源21、22が直列に接続されていると見なせる状態にて、電圧源21、22が同時に充電される。
【0074】
S403mは、スイッチング素子がMOSEFT等、オンすることで低電位側から高電位側への通電がスイッチ部にて可能である場合、通電確認後、第1下アーム素子34~36、および、第2上アーム素子41~43をオンにする。また、当該素子がオンされている状態であれば、オンの状態を継続する。なお、スイッチング素子がIGBT等、低電位側から高電位側への通電不能の場合、当該ステップは省略される。
【0075】
S404では、図9中のS305と同様、充電制御部75は、電圧源21、22の充電状態が目標に到達したか否かを判断する。電圧源21、22の充電状態が目標に到達していないと判断された場合(S404:NO)、S403に戻り、電圧源21、22の直列充電を継続する。電圧源21、22の充電状態が目標に到達したと判断された場合(S404:YES)、S405へ移行する。
【0076】
S405では、制御部70は、給電停止指令を外部制御部105に送信する。外部制御部105は、給電停止指令を受け取ると、急速充電器100からの給電を停止する。S406では、インバータ制御部71は、インバータ30、40の全素子をオフにする。全素子がオフであれば、オフの状態を継続する。
【0077】
以上説明したように、本実施形態の充電システム1は、複数相のコイル11~13を有するMG10に電力を供給する2つの電圧源である第1電圧源21および第2電圧源22を、急速充電器100により充電するものであって、第1インバータ30と、第2インバータ40と、高電位側開閉器51と、低電位側開閉器52と、制御部70と、を備える。
【0078】
第1インバータ30は、第1スイッチング素子31~36を有し、コイル11~13の一端111、121、131および第1電圧源21に接続される。第2インバータ40は、第2スイッチング素子41~46を有し、コイル11~13の他端112、122、132および第2電圧源22に接続される。
【0079】
高電位側開閉器51は、急速充電器100の高電位側と接続可能な高電位側外部接続端子6と第1電圧源21の高電位側とを接続する高電位側給電線61に設けられる。低電位側開閉器52は、急速充電器100の低電位側と接続可能な低電位側外部接続端子7と第2電圧源22の低電位側とを接続する低電位側給電線62に設けられる。制御部70は、第1スイッチング素子31~36および第2スイッチング素子41~46のオンオフ作動を制御する。
【0080】
本実施形態では、オープン巻線であるコイル11~13の両側に、インバータ30、40および電圧源21、22が設けられる2電源2インバータの構成において、高電位側給電線61および低電位側給電線62を設け、インバータ30、40およびコイル11~13を電力パスとして用いることで、絶縁された2つの電圧源を同時に充電することができる。また、インバータ30、40および開閉器51、52を制御することで、単独充電、並列充電および直列充電を切替可能である。特に、MG10およびインバータ30、40が大出力のものであれば、輸送電力が大きい急速充電にも対応可能である。
【0081】
スイッチング素子31~36、41~46は、それぞれ、制御部70からの指令により電流の導通および遮断を切替可能であるスイッチ部、および、低電位側から高電位側への通電を許容する還流ダイオードを有する。第1スイッチング素子31~36は、高電位側に接続される第1上アーム素子31~33、および、第1上アーム素子31~33の低電位側に接続される第1下アーム素子34~36を含む。
【0082】
制御部70は、高電位側開閉器51および低電位側開閉器52が閉の状態にて、第1上アーム素子31~33の少なくとも1相をオンにし、第1上アーム素子31~33がオンされる相とは異なる少なくとも1相の第2下アーム素子44~46をオンにすることで、第1電圧源21と第2電圧源22とを並列充電する。これにより、電圧源21、22を並列充電可能であって、電圧源21、22の定格電圧の和よりも電圧が低い規格の急速充電器100により、適切に充電を行うことができる。
【0083】
制御部70は、充電開始後、第1上アーム素子31~33がオンされる相を同じ相の第2上アーム素子41~43をオンにし、第2下アーム素子44~46がオンされる相と同じ相の第1下アーム素子34~36をオンにする。これにより、スイッチング素子がMOSFET等の低電位側から高電位側への通電が可能な素子である場合、導通損を低減可能であり、充電時間を短縮可能である。
【0084】
制御部70は、高電位側開閉器51および低電位側開閉器52が閉の状態にて、第1スイッチング素子31~36および第2スイッチング素子41~46をオフにすることで、第1電圧源21と第2電圧源22とを直列充電する。これにより、電圧源21、22を直列充電可能であって、電圧源21、22の定格電圧の和よりも電圧が高い規格の急速充電器100により、高効率に充電を行うことができる。
【0085】
制御部70は、充電開始後、第1下アーム素子34~36の全相、よおび、第2上アーム素子41~43の全相をオンにする。これにより、スイッチング素子がMOSFET等の低電位側から高電位側への通電が可能な素子である場合、導通損を低減可能であり、充電時間を短縮可能である。
【0086】
制御部70は、高電位側開閉器51および低電位側開閉器52が閉の状態にて、第2下アーム素子44~46の少なくとも1相をオンにすることで、第1電圧源21を単独充電する。また、制御部70は、高電位側開閉器51および低電位側開閉器52が閉の状態にて、第1上アーム素子31~33の少なくとも1相をオンにすることで、第2電圧源22を単独充電する。これにより、電圧源21、22を単独充電可能であるので、電圧源21、22を適切に充電することができる。
【0087】
制御部70は、第1電圧源21および第2電圧源22の充電状態に応じ、第1電圧源21または第2電圧源22の単独充電と、第1電圧源21および第2電圧源22の同時充電とを切替可能である。これにより、電圧源21、22を適切に充電することができる。
【0088】
本実施形態では、MG10が「回転電機」、スイッチング素子31~36、41~46の還流ダイオードが「還流部」、急速充電器100が「外部充電器」に対応する。
【0089】
(他の実施形態)
上記実施形態の回転電機は3相である。他の実施形態では、回転電機は4相以上としてもよい。上記実施形態では、回転電機は電動車両の主機モータとして用いられている。他の実施形態では、回転電機は、主機モータに限らず、例えばスタータ機能とオルタネータ機能とを併せ持つ、所謂ISG(Integrated Starter Generator)や、補機モータであってもよい。また、電源システムを車両以外の装置に適用してもよい。以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0090】
1・・・充電システム
10・・・モータジェネレータ(回転電機)
30・・・第1インバータ
40・・・第2インバータ
51・・・高電位側開閉器
52・・・低電位側開閉器
61・・・高電位側給電線
62・・・低電位側給電線
70・・・制御部
100・・・急速充電器(外部充電器)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11