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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】航空機
(51)【国際特許分類】
   G08B 25/00 20060101AFI20230208BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20230208BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20230208BHJP
   B64C 13/18 20060101ALI20230208BHJP
   G08B 21/00 20060101ALI20230208BHJP
   H04N 7/18 20060101ALN20230208BHJP
【FI】
G08B25/00 510M
B64C39/02
B64D47/08
B64C13/18 Z
G08B21/00 A
H04N7/18 K
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018239412
(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公開番号】P2020101973
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金田一 久美子
(72)【発明者】
【氏名】工藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】大栗 孝之
(72)【発明者】
【氏名】山根 章弘
(72)【発明者】
【氏名】阪口 晃敏
【審査官】西巻 正臣
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-191593(JP,A)
【文献】特開2011-208961(JP,A)
【文献】特開2004-326363(JP,A)
【文献】特開2005-096674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64B1/00-1/70
B64C1/00-99/00
B64D1/00-47/08
B64F1/00-5/60
B64G1/00-99/00
G01S7/00-7/42
13/00-13/95
G08B19/00-31/00
H04N7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶を捜索可能な海上捜索レーダと、
自動船舶識別装置において発信されたデータを受信可能なAIS受信機と、
前記海上捜索レーダによって検出された船舶と、前記自動船舶識別装置においてデータを発信している船舶とを比較し、不審船候補を特定する船舶照合部と、
前記不審船候補に接近するための経路を導出する経路導出部と、
前記不審船候補に接近するための経路に従い自機を前記不審船候補に接近させる飛行保持部と、
前記不審船候補に接近するための経路に従い前記不審船候補に接近した後、前記不審船候補を撮像して赤外線画像を生成する画像生成部と、
前記赤外線画像中の前記不審船候補に、不審船としての外見的特徴があるかどうかを判定する外見判定部と、
不審船としての外見的特徴があれば、衛星を介して外部装置と通信を確立し、その旨、外部装置に送信する情報送信部と、
を備える航空機。
【請求項2】
前記経路導出部は、前記不審船候補に接近するための経路として、前記不審船候補に接近することによる燃料消費が最小となる経路、および、前記不審船候補に接近後、前記不審船候補の上空を所定距離の旋回半径で周回するように旋回する経路導出し、
前記画像生成部は、前記経路導出部が導出した経路を自機が旋回している間、前記不審船候補を複数の方向から撮像して前記赤外線画像を生成する請求項1に記載の航空機。
【請求項3】
前記所定距離の前記旋回半径は、前記不審船候補の前記赤外線画像を撮像可能な範囲内で最長の距離である請求項2に記載の航空機。
【請求項4】
前記経路導出部は、前記不審船候補が2つ以上存在し、かつ、2つの前記不審船候補間の最短距離が前記旋回半径の2倍未満である条件を満たす場合、前記条件を満たす2つの前記不審船候補を一体的に扱って、前記条件を満たす2つの前記不審船候補の外周を旋回する経路を導出する請求項2または3に記載の航空機。
【請求項5】
不審船としての外見的特徴は、
(1)外見上漁船であるが、船上に漁具が存在しない、
(2)外見上漁船であるが、エンジンの位置が通常の漁船におけるエンジンの位置と異なる、
(3)エンジンが複数備わっている、
(4)偽装の煙突が存在する、
(5)船体の後部に比較的大きなハッチを有する、
(6)アンテナの数が通常の船舶におけるアンテナの数よりも多い、
(7)ロケット砲および機関銃の少なくともいずれか一方を装備している、
の(1)から(7)の少なくとも1つである請求項1から4のいずれかに記載の航空機。
【請求項6】
前記外部装置で不審船か否か特定した結果に基づき、前記外見判定部の判定基準が調整される請求項1から5のいずれかに記載の航空機。
【請求項7】
前記不審船候補の航路に基づいて、不審船の行動的特徴があるかどうかを判定する行動判定部を備える請求項1からのいずれかに記載の航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中を飛行可能な航空機に関する。
【背景技術】
【0002】
不審船(不審な行動をする船舶)が自船周囲に存在する場合に、その行動パターンに基づいて、船舶を不審船と特定する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-096674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の技術では、不審船の探索範囲が自船の周囲に限られ、また、探索範囲自体も狭いので、不審船が存在しても、それを適切に特定できない場合があった。
【0005】
そこで、本発明は、このような課題に鑑み、空中から不審船を適切に特定可能な航空機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の航空機は、船舶を捜索可能な海上捜索レーダと、自動船舶識別装置において発信されたデータを受信可能なAIS受信機と、海上捜索レーダによって検出された船舶と、自動船舶識別装置においてデータを発信している船舶とを比較し、不審船候補を特定する船舶照合部と、不審船候補に接近するための経路を導出する経路導出部と、不審船候補に接近するための経路に従い自機を不審船候補に接近させる飛行保持部と、不審船候補に接近するための経路に従い不審船候補に接近した後、不審船候補を撮像して赤外線画像を生成する画像生成部と、赤外線画像中の不審船候補に、不審船としての外見的特徴があるかどうかを判定する外見判定部と、不審船としての外見的特徴があれば、衛星を介して外部装置と通信を確立し、その旨、外部装置に送信する情報送信部と、を備える。
【0007】
経路導出部は、不審船候補に接近するための経路として、不審船候補に接近することによる燃料消費が最小となる経路、および、不審船候補に接近後、不審船候補の上空を所定距離の旋回半径で周回するように旋回する経路導出し、画像生成部は、経路導出部が導出した経路を自機が旋回している間、不審船候補を複数の方向から撮像して赤外線画像を生成するようにしてもよい。
所定距離の前記旋回半径は、不審船候補の赤外線画像を撮像可能な範囲内で最長の距離であるとしてもよい。
経路導出部は、不審船候補が2つ以上存在し、かつ、2つの不審船候補間の最短距離が旋回半径の2倍未満である条件を満たす場合、条件を満たす2つの不審船候補を一体的に扱って、条件を満たす2つの不審船候補の外周を旋回する経路を導出するようにしてもよい。
不審船としての外見的特徴は、(1)外見上漁船であるが、船上に漁具が存在しない、(2)外見上漁船であるが、エンジンの位置が通常の漁船におけるエンジンの位置と異なる、(3)エンジンが複数備わっている、(4)偽装の煙突が存在する、(5)船体の後部に比較的大きなハッチを有する、(6)アンテナの数が通常の船舶におけるアンテナの数よりも多い、(7)ロケット砲および機関銃の少なくともいずれか一方を装備している、の(1)から(7)の少なくとも1つであるとしてもよい。
【0008】
外部装置で不審船か否か特定した結果に基づき、外見判定部の判定基準が調整されるとしてもよい。
【0009】
航空機は、不審船候補の航路に基づいて、不審船の行動的特徴があるかどうかを判定する行動判定部を備えるとしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、空中から不審船を適切に特定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】飛行制御システムの概略的な構成を説明するための説明図である。
図2】無人機の制御系を説明するための機能ブロック図である。
図3】不審船探索処理の流れを示すフローチャートである。
図4】経路導出部の処理を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
<飛行制御システム1>
図1は、飛行制御システム1の概略的な構成を説明するための説明図である。飛行制御システム1は、無人機10と、外部装置20と、衛星30とを含んで構成される。
【0014】
無人機(無人航空機)10は、人が搭乗しない航空機であり、海上の不審船2を特定する。外部装置20は、地上に設置され、無人機10から不審船2の候補に関する情報を受信して不審船2を特定する。また、詳細な説明は省略するが、外部装置20は、無人機10の位置や状態を把握するとともに、無人機10の緊急的な飛行制御指令を送信する管制部としても機能する。なお、外部装置20は、必ずしも地上に設置しなくとも、例えば、無人機10とは別体の航空機や船舶であってもよい。衛星30は、無人機10と外部装置20との通信を担う。ここでは、航空機の一例として無人機を挙げて説明するが、大気中を飛行する機械であれば足り、有人機やOPV(Optionally Piloted Vehicle)にも適用できる。
【0015】
ここで、無人機10と外部装置20との通信に衛星30が用いられるのは以下の理由からである。すなわち、無人機10は不審船2に接近するために高度を下げる場合がある。そうすると、無人機10の見通し距離が短縮し、無人機10と外部装置20とが直接通信(ダイレクトリンク)できなくなるおそれがある。ここでは、衛星30を介することで見通し距離の制限を解除できるので、無人機10と外部装置20との通信を確実に確立することが可能となる。
【0016】
<無人機10>
図2は、無人機10の制御系を説明するための機能ブロック図である。無人機10は、飛行関連センサ12と、飛行機構14と、飛行通信部16、飛行制御部18とを含んで構成されている。
【0017】
飛行関連センサ12は、無人機10に設けられた慣性航法装置(Inertial Navigation System)等の様々なセンサを通じて、飛行位置(経度、緯度、高度を含む)、機体速度、機体姿勢、機体が受ける風力、風向、天候、機体周囲の気圧、温度等の現在の飛行状態を検出する。また、無人機10は、飛行関連センサ12として、海上における200km以上の範囲で船舶を捜索可能な海上捜索レーダ、自動船舶識別装置(Automatic Identification System)におけるデータを受信可能なAIS受信機、赤外線画像を撮像可能なEO/IRカメラも搭載している。
【0018】
ここで、自動船舶識別装置は、海上移動業務識別コード(MMSI)等の識別符号、船名、水平位置、針路、速度、目的地等の情報を発信するVHF帯のデジタル無線機器であり、テキスト表示に加え、または代えて、電子海図やレーダ画面に、データを発信している船舶を表示することができる。
【0019】
飛行機構14は、翼が機体に固定されている固定翼と、推力を得る内燃機関(例えば、ジェットエンジンやレシプロエンジン)とで構成され、推力により翼周りに揚力を生じさせることで、機体が大気中に浮上した状態を維持する。ただし、揚力を生じさせる機構はかかる場合に限らず、回転翼航空機(ヘリコプター)のように、回転可能に設けられた回転翼(ローター)により揚力および推力を得ることも可能である。
【0020】
また、飛行機構14では、昇降舵や補助翼(エルロン)を通じてバンク角(ロール角)、機首角(ピッチ角)、内燃機関の出力等を調整することで、飛行方位(ヨー角)、高度、飛行速度を変化させることも可能である。
【0021】
飛行通信部16は、衛星30を通じて外部装置20と通信を確立し、無人機10が取得した情報を外部装置20に送信する。
【0022】
飛行制御部18は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路で構成され、無人機10全体を管理および制御する。RAM(もしくはROM)には、無人機10が飛行する予定経路や、その予定経路のそれぞれの飛行位置における飛行状態(飛行速度、機体姿勢等)を特定可能な飛行データ等、無人機10が飛行するのに必要な様々なデータが保持されている。
【0023】
また、飛行制御部18は、ROMやRAMと協働して飛行保持部50、船舶照合部52、経路導出部54、画像生成部56、外見判定部58、行動判定部60、情報送信部62、判定学習部64としても動作する。以下、無人機10による不審船探索処理について、当該飛行制御部18の各機能部の動作も踏まえて詳述する。
【0024】
(不審船探索処理)
図3は、不審船探索処理の流れを示すフローチャートである。不審船探索処理では、飛行保持部50が、予定経路に従って無人機10を飛行制御する(S200)。船舶照合部52が、不審船候補を特定すると(S202)、経路導出部54が、不審船候補に接近するための経路を導出する(S204)。続いて、画像生成部56が、不審船候補を撮像して画像を生成する(S206)。そして、外見判定部58が、不審船2としての外見的特徴があるかどうかを判定し(S208)、行動判定部60が、不審船2の行動的特徴があるかどうかを判定する(S210)。次に、情報送信部62が、不審船2としての外見的特徴や行動的特徴があれば、その旨、外部装置20に送信する(S212)。最後に、判定学習部64が、外部装置20で不審船2か否か特定した結果に基づき、外見判定部の判定基準を調整する(S214)。以下、各処理を具体的に説明する。
【0025】
<飛行保持処理S200>
飛行保持部50は、RAMから飛行データを取得し、その飛行データに基づいて、無人機10の予定経路を、それぞれの飛行位置における飛行状態で飛行制御する。
【0026】
<船舶照合処理S202>
海上捜索レーダは、海上の所定範囲に存在する全ての船舶を検出できる。したがって、通常、海上捜索レーダによって検出された船舶と、自動船舶識別装置においてデータを発信している船舶とは等しいはずである。しかし、不審船2は、自動船舶識別装置においてデータを発信していない場合がある。そこで、船舶照合部52は、レーダによって検出された船舶のうち、自動船舶識別装置においてデータを発信していない船舶を抽出する。
【0027】
ただし、正規の船舶であっても、停泊中に自動船舶識別装置におけるデータを停波する場合がある。したがって、自動船舶識別装置においてデータを発信していない船舶があったとしても、直ちに不審船2であると特定すべきではない。
【0028】
したがって、船舶照合部52は、海上捜索レーダによって検出された船舶と、自動船舶識別装置においてデータを発信している船舶とを比較し、海上捜索レーダによって検出された船舶のうち、自動船舶識別装置においてデータを発信していない船舶を、不審船2の候補である不審船候補として特定する。
【0029】
そして、船舶照合部52は、不審船候補が特定されなければ、飛行保持処理S200からを繰り返し、不審船2が特定されれば、経路導出処理S204に移行する。
【0030】
<経路導出処理S204>
経路導出部54は、船舶照合部52が特定した不審船候補に接近するための経路を導出する。
【0031】
図4は、経路導出部54の処理を説明するための説明図である。ここでは、不審船候補が3隻存在する場合を説明する。また、無人機10の経路が実線の矢印で示される。経路導出部54は、全ての不審船候補の航路を推定し、自機が最速で接近可能な1の不審船候補(ここでは不審船候補3a)を特定する。そして、特定した不審船候補3aの航路を引き続き推定しつつ、不審船候補3aへの最適な経路を導出する。飛行保持部50は、かかる経路に従い、無人機10を不審船候補3aに自律的に接近させる。ここで、最適な経路とは、高度(機体周囲の気圧)、天候、風速、風向を考慮した上で、無人機10の燃料消費が最小となる経路である。したがって、無人機10は、早期に不審船候補を特定するとともに、不審船2の探索を長時間実行することができる。
【0032】
続いて、経路導出部54は、無人機10を、不審船候補3aの上空において、所定距離の旋回半径で旋回させる。旋回が完了すると、経路導出部54は、自機が最速で接近可能な他の不審船候補(ここでは不審船候補3b)を特定する。そして、特定した不審船候補3bの航路を引き続き推定しつつ、不審船候補3bへの最適な経路を導出する。飛行保持部50は、かかる経路に従い、無人機10を、不審船候補3bに自律的に接近させる。このような動作を全ての不審船候補3a、3b、3cに対して繰り返し実行する。
【0033】
ここで、所定距離は、不審船候補の外見を判定できる赤外線画像をEO/IRカメラで撮像可能な範囲内の距離を示す。なお、不審船候補から何らかの攻撃を受けるおそれがあるので、所定距離は、赤外線画像を撮像可能な範囲内で最長であることが望ましい。
【0034】
また、図4における不審船候補3b、3cのように、不審船候補同士の距離が近い場合、1の不審船候補3bから遠くても他の不審船候補3cに近づく場合もある。その場合は、図4中、破線で示すように、両者を一体的に扱い、経路導出部54は、その外周を旋回する経路を導出するとしてもよい。
【0035】
<画像生成処理S206>
画像生成部56は、経路導出部54が導出した経路を自機が旋回している間に、EO/IRカメラを通じて不審船候補を撮像し、画像(例えば赤外線画像)を生成する。ここでは、不審船候補を複数の方向(角度)から撮像することで、不審船2の特定精度を向上させる。
【0036】
<外見判定処理S208>
外見判定部58は、画像中の不審船候補に、不審船2としての外見的特徴があるかどうかを判定する。
【0037】
ここで、外見的特徴は、以下の様な外見を言う。(1)外見上漁船であるが、船上に漁具が存在しない。(2)外見上漁船であるが、エンジンの位置が通常の漁船の位置と異なる。(3)エンジンが複数(例えば2~4)備わっている。(4)偽装の煙突が存在する。(5)船体の後部に大きなハッチを有する(上陸用ボートや水中スクータを搭載している可能性がある)。(6)アンテナの数が通常より多い。(7)ロケット砲や機関銃を装備している。外見判定部58は、不審船候補が、このような外見的特徴の項目に一つでも該当すれば、不審船2の可能性があると判定することとなる。
【0038】
<行動判定処理S210>
行動判定部60は、経路導出部54が特定した不審船候補の航路に基づいて、不審船2の行動的特徴があるかどうかを判定する。また、行動判定部60は、デジタル無線機が受信した電波に基づき、例えば、不審船候補が通常の漁船では使用されない特殊な電波で長時間交信していることをもって、不審船2の可能性があると判定してもよい。
【0039】
ここで、行動的特徴は、以下の様な行動を言う。(1)船舶は外見上漁船であるが、漁をすることなく同一箇所に停泊している。(2)航路が定まることなく、徘徊している。行動判定部60は、不審船候補が、このような行動的特徴の項目に一つでも該当すれば、不審船2の可能性があると判定することとなる。なお、行動判定部60は、不審船候補に接近しなくても、遠隔から不審船候補の航路を確認することで、行動的特徴を判定することができる。
【0040】
ここでは、外見判定部58による外見的特徴と、行動判定部60による行動的特徴とをいずれも判定することで、不審船2の可能性があるという判定の精度向上を図っている。
【0041】
<情報送信処理S212>
情報送信部62は、不審船候補に不審船2としての外見的特徴があれば、または、不審船2としての行動的特徴があれば、飛行通信部16を通じ、衛星30を介して外部装置20と通信を確立し、その旨外部装置20に送信する。
【0042】
<判定学習処理S214>
上述したように、外見判定部58が、不審船候補に不審船2としての外見的特徴があると判定したら、その旨、情報送信部62により外部装置20に送信される。また、行動判定部60が、不審船候補に不審船2の行動的特徴があると判定したら、その旨、情報送信部62により外部装置20に送信される。外部装置20では、外見判定部58および行動判定部60の判定に基づき、不審船候補が不審船2であるか否か特定する。
【0043】
判定学習部64は、AI(Artificial Intelligence)で構成され、外部装置20で不審船候補が不審船2か否か特定した結果に基づき、外見判定部58および行動判定部60の判定基準を調整する。具体的に、外部装置20で不審船候補が不審船2であると特定した場合に参照された項目について、その重み付けを上げる。一方、外部装置20で不審船候補が不審船2ではないと特定した場合に参照された項目について、その重み付けを下げる。そして、外見判定部58および行動判定部60は、各項目にその重み付けを乗じ点数化して、外見的特徴および行動的特徴の有無を判定する。
【0044】
かかる構成により、時間の経過に伴い、不審船2の外見的特徴および行動的特徴の判定精度が高くなり、外見判定部58および行動判定部60が不審船候補として送信してきた船舶を外部装置20が不審船2と特定する確率(不審船識別性能)が高くなる。
【0045】
なお、ここでは、経路導出部54を無人機10に搭載する例を挙げて説明したが、外部装置20で備えるとしてもよい。このように、外部装置20側で経路導出部54を備えることで、処理能力が制限される無人機10ではなく、処理能力に制限がない外部装置20に処理負荷の重い不審船候補に接近するための経路の導出処理を担わせることができるので、無人機10の処理負荷の軽減を図ることができる。また、ここでは、判定学習部64を無人機10に搭載する例を挙げて説明したが、外部装置20で備えるとしてもよい。このように、外部装置20側で判定学習部64を備えることで、無人機10それぞれが個別に判定した結果を外部装置20で統一して調整することができる。すなわち、判定基準のばらつきを抑えることが可能となる。
【0046】
以上のように、無人機10が、不審船候補を特定し、その不審船候補に接近して不審船2の外見的特徴や行動的特徴があるか否かを判定することで、空中から不審船2を適切に特定することが可能となる。また、無人機10が自律的に、不審船候補を探索し、その旨送信するので、外部装置20では、その不審船候補が送信されたタイミングでのみ不審船2を特定すれば足りる。すなわち、人が不審船候補を抽出するための経路や常時観察を行う必要がなく、作業負担を軽減することができる。
【0047】
また、コンピュータを航空機(無人機10)として機能させるプログラムや、当該プログラムを記録した、コンピュータで読み取り可能なフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD、DVD、BD等の記憶媒体も提供される。ここで、プログラムとは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理手段を言う。
【0048】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0049】
なお、本明細書の不審船探索処理の各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、空中を飛行可能な航空機に利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
2 不審船
10 無人機(航空機)
20 外部装置
52 船舶照合部
54 経路導出部
56 画像生成部
58 外見判定部
60 行動判定部
62 情報送信部
64 判定学習部
図1
図2
図3
図4