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  • 特許-加熱補償屋根用ボード 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】加熱補償屋根用ボード
(51)【国際特許分類】
   E04D 1/28 20060101AFI20230208BHJP
   E04B 1/80 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
E04D1/28 F
E04B1/80 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2018548005
(86)(22)【出願日】2017-03-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-05-16
(86)【国際出願番号】 US2017021876
(87)【国際公開番号】W WO2017156437
(87)【国際公開日】2017-09-14
【審査請求日】2020-02-20
(31)【優先権主張番号】62/306,273
(32)【優先日】2016-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507329365
【氏名又は名称】カーライル・インタンジブル・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】チャド・バーマン
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド・エル・グッドマン
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-500494(JP,A)
【文献】特開2006-132214(JP,A)
【文献】米国特許第05735092(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0069036(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 1/00-3/40
E04D 13/00-15/07
E04D 5/00-12/00
E04B 1/62-1/99
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の平坦面と、第2の平坦面と、を備え、前記第1の平坦面は接着剤で屋根用膜に接着されるように構成されており、前記第2の平坦面は接着剤で屋根用膜に接着されるように構成されており、前記第1の平坦面の光吸収特性は、前記第2の平坦面の光吸収特性と異なり、
前記第1の平坦面及び前記第2の平坦面が同一の基材を含む、リバーシブルで平坦な屋根用ボード。
【請求項2】
前記第1の平坦面は、前記第2の平坦面よりも色が明るい、請求項1に記載のボード。
【請求項3】
前記第1の平坦面は、パントンクールグレー5よりも色が明るく、前記第2の平坦面は、パントンクールグレー5よりも色が暗い、請求項1に記載のボード。
【請求項4】
前記第1の平坦面の第1の日射反射率は、前記第2の平坦面の第2の日射反射率よりも高い、請求項1に記載のボード。
【請求項5】
前記第1の日射反射率は、45%以上であり、前記第2の日射反射率は、8%以下である、請求項4に記載のボード。
【請求項6】
太陽光にさらさられるとき、前記第1の平坦面の温度は周囲の温度以下である、請求項1に記載のボード。
【請求項7】
太陽光にさらさられるとき、前記第2の平坦面の温度は周囲の温度よりも高い、請求項1に記載のボード。
【請求項8】
前記ボードは、ルーフデッキに固定され、屋根用膜は前記第1の平坦面および前記第2の平坦面のうちの一つに接着される、請求項1に記載のボード。
【請求項9】
前記屋根用膜は、前記第1の平坦面に接着剤を用いて接着され、前記接着剤のタックフリータイムは、前記屋根用膜が前記第2の平坦面に接着されるときと比べて10%以上増加する、請求項8に記載のボード。
【請求項10】
前記屋根用膜は、前記第2の平坦面に接着剤を用いて接着され、前記接着剤のタックフリータイムは、前記屋根用膜が前記第1の平坦面に接着されるときと比べて10%以上短縮される、請求項8に記載のボード。
【請求項11】
前記ボードは、発泡断熱ボードである、請求項1に記載のボード。
【請求項12】
発泡断熱ボードをルーフデッキに固定する屋根表面の貼り付け方法であって、前記発泡断熱ボードは、第1の平坦面と、第2の平坦面とを有するリバーシブルで平坦な発泡ボードであり、前記第1の平坦面は接着剤で屋根用膜に接着されるように構成されており、前記第2の平坦面は接着剤で屋根用膜に接着されるように構成されており、前記第1の平坦面の光吸収特性は、前記第2の平坦面の光吸収特性と異なり、前記方法は、前記発泡断熱ボードをルーフデッキに固定する工程であって、前記第1の平坦面および前記第2の平坦面のうちの一つが大気にさらされて、露出面を提供する工程と、屋根用膜を前記露出面に接着または取り付ける工程と、を備え、
前記第1の平坦面及び前記第2の平坦面が同一の基材を含む、屋根表面の貼り付け方法。
【請求項13】
前記第1の平坦面は、前記第2の平坦面よりも色が明るい、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の平坦面は、パントンクールグレー5よりも色が明るく、前記第2の平坦面は、パントンクールグレー5よりも色が暗い、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の平坦面の第1の日射反射率は、前記第2の平坦面の第2の日射反射率よりも高い、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の日射反射率は、45%以上であり、前記第2の日射反射率は、8%以下である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
太陽光にさらさられるとき、前記第1の平坦面の温度は周囲の温度以下である、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
太陽光にさらさられるとき、前記第2の平坦面の温度は周囲の温度よりも高い、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の平坦面は、大気にさらされ、前記膜を接着するために用いられる前記接着剤のタックフリータイムは、前記第2の平坦面が大気にさらされるときと比べて10%以上増加する、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記第2の平坦面は、大気にさらされ、前記膜を接着するために用いられる前記接着剤のタックフリータイムは、前記第1の平坦面が大気にさらされるときと比べて10%以上短縮される、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱補償屋根用ボードに関する。
【背景技術】
【0002】
屋根用ボード(roofing boards)は、パーティクルボード、石膏ボード、または発泡断熱ボードを含むことができる。フェイサ(facers)を含むものもある。フェイサを含まないものもある。ポリイソ断熱ボード(polyiso insulation boards)は、多くの製品の性能特性を提供するための製造用のフェイサ(フォームレイダウン(foam laydown))を含む。フェイサの大半は、ガラス強化フェルト(GRF)またはコートガラスフェイス(Coated Glass Faced)(CGF)の2つのカテゴリに分類される。GRFフェイサは、クラフト紙の外観に見える「紙」フェイサとしても知られている。GRFフェイサは、概して淡褐色から暗褐色にまで及び、ガラス繊維強化パルプ紙から作られる。一方、CGFフェイサは、白色からオフホワイト色になる傾向があり、不織布ガラス繊維スクリム(non-woven fiberglass scrim)をコーティングすることによって作られる。断熱フェイサは、GRFであろうとCGFであろうと、ボードの両側で同じ色である。
【0003】
単層膜を断熱ボードなどの屋根用ボードに接着することは一般的な方法であり、より好ましい屋根の設置方法になりつつある。各接着剤は、「セットアップ時間(setup time)」の点で独自の必要条件を有する。言い換えると、接着剤は、膜が断熱材に接着されることができる前に、フラッシュオフ(flash-off)するか、ストリング時間(string time)に達するなどしなければならない。セットアップ時間は、屋上における周囲の環境条件(例えば、空気温度、断熱材/膜温度、湿度、太陽光/太陽エネルギなど)に基づいて劇的に変化させることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
周囲の環境条件によって所望の接着剤のセットアップ時間よりも長くなるとき、より暗い色の表面またはフェイサは太陽の放射エネルギを吸収し、セットアップ時間を加速させるのに役立つ能力を有する。太陽の放射エネルギを屋根用ボードの外面に伝達することは、これらに限定されないが、最終的に接着剤のセットアップ時間の短縮につながる、より暖かいフェイサ温度および向上した乾燥能力を含むいくつかの結果を生み出す。
【0005】
周囲の環境条件によって所望の接着剤のセットアップ時間よりも短くなるとき、より明るい色の表面またはフェイサは太陽の放射エネルギを反射し、それらを減速させるのに役立つ能力を有する。太陽の放射エネルギをこの表面から反射することは、これらに限定されないが、最終的に接着剤のセットアップ時間の延長につながる、より冷たいフェイサ温度および低下した乾燥能力を含むいくつかの結果を生み出す。
【0006】
一実施形態では、本発明は、発泡ボードの断熱製品などの屋根用ボードであって、ボードの一方の側およびボードの他方の側に異なる光吸収特性を有する表面を備える屋根用ボードを提供する。参照されるボードの側は、6面ボードのうちの2つの最大表面領域側であり、概して上面および下面として説明される。この表面の様々な光吸収特性によって、エンドユーザが現場の任意の所定時間における周囲の環境条件に最も適したボードの側を選択することを可能とする。
【0007】
一実施形態では、本発明は、発泡ボードの断熱製品などの屋根用ボードであって、ボードの一方の側におけるより明るい表面と、ボードの他方の側におけるより暗い表面とを備える屋根用ボードを提供する。表面の色/色相の違いを説明する目的で、ボードの一方の側は、例えばパントン(登録商標)クールグレー5よりも暗い表面の色を有し、他方の側はパントン(登録商標)クールグレー5よりも明るい色を有する。表面の違いは、相対反射率の点で説明することも可能であり、相対反射率はどちらの表面が太陽にさらされるかに基づく潜在的な温度差をもたらす。
【0008】
本発明の目的および利点は、以下の詳細な説明および図面を考慮してさらに認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態の斜視図である。
図2】屋根用膜で覆われている図1の断熱ボードを示す、切欠き断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態は、断熱ボード、パーティクルボード、石膏ボードなどの屋根用ボード(roofing board)であって、一方が他方よりも明るい異なる色を有する2つの露出面を備える屋根用ボードを提供する。本発明の実施形態は、発泡断熱ボードに関して以下に説明されるが、本発明の実施形態は任意の屋根用ボードを含むことができる。
【0011】
図1に示すように、第1の外側平坦面11と、第2の対向する外側平坦面12と、これら2つを仕切る発泡断熱層13とを備える断熱ボード10が提供される。表面11および12はフェイサ(facers)であり、典型的には発泡断熱ボードに使用される。しかしながら、フェイサのない発泡ボードまたは他のフェイスのないボードも使用することができる。フェイサは、例えばガラス強化フェルトやコートガラスフェイス(Coated Glass Faced)であり得る。発泡断熱層13は、断熱目的、特に屋根用の断熱目的で典型的に採用される任意の発泡体であり得る。発泡体は、例えば、押出発泡ポリイソシアヌレート(polyisocyanurate foamorextruded)(XPS)または発泡ポリスチレン(expanded polystyrene)(EPS)であり得る。
しかしながら、本発明の実施形態は、特定の発泡体または特定の化粧材に限定されない。
【0012】
ボード10の表面11および表面12は、異なる光吸収特性を有する。光吸収特性における差は、制限なしに、表面の色、表面反射率、および周囲の温度と比較した表面温度を含む様々な特性で表すことができる。一つの態様では、一方の表面、例えば表面11は、他方の表面、例えば表面12よりも色が明るい。例えば、表面11は、パントン(登録商標)クールグレー5よりも明るくてもよいのに対して、表面12は、パントン(登録商標)クールグレー5よりも暗い。別の態様では、一方の表面、例えば表面11は、他方の表面、例えば表面12よりも高い日射反射率(例えば、ASTM E1918によって決定される)を有する。例えば、表面11は、45%以上の日射反射率を有することができるのに対し、表面12は、8%以下の日射反射率を有することができる。表面11および表面12の日射反射率は、例えば、表面11および表面12に使用される着色剤に基づいて変化させることができる。例えば、表面12に使用される着色剤(例えば、顔料、染料など)によって、より暗いフェイサが太陽エネルギを吸収することを可能とする一方、表面11に使用される着色剤は、より明るいフェイサが太陽エネルギを反射することを可能にする。別の態様では、各表面が太陽にさらされるとき、一方の表面、例えば表面11は、周囲の温度よりも冷たくてもよく、一方、他の表面、例えば表面12は、周囲の温度よりも暖かくてもよい。例えば、表面11は、太陽にさらさられるとき、周囲の温度以下であり得る。表面11の温度は、例えば周囲の温度よりも2.78℃(5°F)以上低いか、または周囲の温度よりも2.78℃(5°F)~5.56℃(10°F)低いことがあり得る。別の例としては、表面12は、太陽にさらされるとき、周囲の温度よりも高いことがあり得る。表面12の温度は、例えば周囲の温度よりも16.67℃(30°F)以上高いか、または周囲の温度よりも16.67℃(30°F)~25℃(45°F)高いことがあり得る。屋根用システム(roofing system)に使用されるとき、表面11および12の異なる光吸収特性は、屋根膜の適切な設置を容易にする。
【0013】
図2に示すように、ボード10の表面12は、ルーフデッキ(図示せず)上に配置される。ボード10は、様々な異なる方法でルーフデッキ(roof deck)に貼ることができ、典型的にはルーフデッキに機械的に固定または接着される。結果として、膜層14は、この場合、接着剤層16によってボード10の表面11に接着される。膜層14は、屋根用途に典型的に使用される任意の膜であり得る。これらは典型的には高分子膜であり、例えばEPDM、PVC、TPOエラストマー、およびその他多くのものを含むことができる。典型的には、高温塗布(hot applied)アスファルト材料に基づくビルドアップルーフ(built-up roofs)は本発明では使用されないであろう。接着剤層16は、選択された膜をボード10に貼り付けるために典型的に使用される任意の接着剤であり得る。
【0014】
示されているように、表面11はより明るい表面を提供し、これは太陽にさらされるときに表面12と同じくらいの量の熱を吸収しない。したがって、屋根がより暑い温度である夏に設置されるとき、接着剤層16と上向きに接触する表面11をさらすことは、接着剤の温度を接着剤が適切に硬化するのを可能にするような低い温度に保持するだろう。表面11の温度が太陽光からエネルギを吸収する場合のそれと同じか低くてもよいので、接着剤層16が硬化するための時間は、表面温度が太陽光に起因して周囲の温度よりも著しく高い構成と比較して増加する。これは、膜層14が最終的な配置において接着剤層16に配置されなければならない前に、追加の操作(additional working)または「オープン」時間("open" time)を提供することができる。表面12と比較して表面11に膜層14を接着するとき、「タックフリー」タイムまたは接着剤層16が粘着性になる前の時間における増加率は10%以上、25%以上、40%以上、10%~55%、または25%~55%である。
【0015】
代替的には、表面12は、膜層14が接着される上面であり得る。この表面12は、周囲の温度が、硬化時間が望ましい時間より長くなる特定の接着剤用途に望ましい温度よりも低いとき、上層となるだろう。周囲の温度が比較的冷たいとき、膜層14が表面12に接着されたときに接着剤層16が硬化する時間は、ボード10の表面温度が周囲の温度以下である構成に比べて短縮される。言い換えると、表面12は太陽からのより多くの熱を吸収し、ボード10の外側温度を上昇させ、さらに、接着剤層16による表面12への膜層14の接着を容易にするだろう。表面11と比較して膜層14を表面12に接着するとき、「タックフリー」タイムまたは接着剤層16が粘着性になる前における時間の短縮率は、10%以上、25%以上、40%以上、10%~55%、または25%~55%であり得る。
【0016】
したがって、本発明の実施形態は、屋根設置業者が屋根を設置している間に屋根用ボードのどちらの表面を露出させるかを選択することを可能にし、それにより接着剤の温度および、それに応じた膜層14がボード10に接着される硬化時間に影響を与える。硬化時間における実際の増減は、周囲の温度、UV指数、雲量、風速および湿度に依存し得る。例えば、膜層14が表面12に接着されるときの硬化時間の減少は、著しい雲量に起因して縮小することがあり得る。
【0017】
本発明の実施形態による屋根用ボードは、膜が屋根用ボードに接着されるか、または、さもなければ機械的に固定されるかどうかにかかわらず使用され得る。例えば、本発明の一態様では、ボード10の使用は、膜の取り付け方法に関係なく、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)屋根用膜に対する設置時間を減少させることができる。その関連で、TPO膜は、接着または他の方法で取り付けられる前に屋根の上でしばしば広げられる。TPO膜、他の膜(例えば、EPDMおよびPVC)よりも柔軟性が低いTPO膜は、ほどいて屋根の形状に適応させる時間を必要とする。TPO膜がボード10の表面12に貼り付けられるとき、表面温度が上昇は、TPO膜の形状調整時間を短縮することができる。したがって、全体の設置時間が短縮され得る。
【0018】
特定の実施形態が本発明を説明するためにかなり詳細に記載されているが、その記載は添付の特許請求の範囲をそのような詳細に制限または何らかに限定することを意図したものではない。本明細書で説明された様々な特徴は、単独または任意の組み合わせで使用することができる。さらなる利点および変更は、当業者には容易に明らかであろう。したがって、そのより広範な態様における本発明は、特定の詳細、代表的な装置および方法、ならびに図示され説明された例示的な例に限定されない。したがって、一般的な発明概念の範囲から逸脱することなく、そのような詳細から逸脱することができる。
【符号の説明】
【0019】
10 断熱ボード(屋根用ボード)
11 第1の表面(第1の平坦面)
12 第2の表面(第2の平坦面)
13 発泡断熱層
14 膜層(屋根用膜)
16 接着剤層
図1
図2