(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】間仕切りユニット、及びこの間仕切りユニットを用いた間仕切り構造
(51)【国際特許分類】
E04B 2/74 20060101AFI20230208BHJP
E04B 2/82 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
E04B2/74 551F
E04B2/82 501A
E04B2/82 511A
(21)【出願番号】P 2019023087
(22)【出願日】2019-02-13
【審査請求日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2018029866
(32)【優先日】2018-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135335
【氏名又は名称】株式会社ノザワ
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143122
【氏名又は名称】田中 功雄
(72)【発明者】
【氏名】海野 光生
(72)【発明者】
【氏名】岡 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】小西 健夫
(72)【発明者】
【氏名】小野村 寛
(72)【発明者】
【氏名】名塚 彰
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-139710(JP,A)
【文献】特開平10-037355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/00 - 2/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の内部空間を仕切る間仕切りパネル部材と、
前記間仕切りパネル部材の裏面に沿って当該間仕切りパネル部材と間隔をおいて固定され、当該間仕切りパネル部材を補強する
一方向に長いリブ部材と、
前記間仕切りパネル部材と前記リブ部材との間
で、当該リブ部材幅に対応する大きさの小片シート状に形成されると共に弾性変形していない状態で挟持された
複数の弾性部材と、を備え、
当該複数の弾性部材は当該リブ部材の長手方向に沿って間隔をおいて設けられており、
前記
複数の弾性部材によって前記両部材間に掛かる力が緩和されている間仕切りユニット。
【請求項2】
建物の内部空間に横方向に並べられた複数の間仕切りユニットと、
床面に固定され、前記複数の間仕切りユニットの下部を支持する下部ランナーと、
天井面に固定され、前記複数の間仕切りユニットの上部を支持する上部ランナーと、を備えた間仕切り構造であって、
前記各間仕切りユニットが、
建物の内部空間を仕切る間仕切りパネル部材と、
前記間仕切りパネル部材の裏面に沿って当該間仕切りパネル部材と間隔をおいて固定され、当該間仕切りパネル部材を補強する
一方向に長いリブ部材と、
前記間仕切りパネル部材と前記リブ部材との間
で、当該リブ部材幅に対応する大きさの小片シート状に形成されると共に弾性変形していない状態で挟持された
複数の弾性部材と、を備え、
当該複数の弾性部材は当該リブ部材の長手方向に沿って間隔をおいて設けられており、
前記
複数の弾性部材によって前記両部材間に掛かる力が緩和されている間仕切り構造。
【請求項3】
前記複数の間仕切りユニットのうち隣り合う2つの間仕切りユニットの前記間仕切りパネル部材の目地部を跨ぐように取り付けられて、当該目地部の段差を矯正する矯正プレートを更に備える請求項2に記載の間仕切り構造。
【請求項4】
前記各間仕切りユニットのリブ部材の上端と、天井面と、が間隔を空けた状態とされ、かつ当該リブ部材の下端と、床面と、が間隔を空けた状態とされている請求項2に記載の間仕切り構造。
【請求項5】
前記各間仕切りユニットの下部は前記下部ランナーに固定されると共に、当該各間仕切りユニットの上部は前記上部ランナーに嵌め込まれた状態とされている請求項2に記載の間仕切り構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の内部空間を仕切るための乾式の間仕切りユニット及び、この間仕切りユニットを用いた間仕切り構造に関し、特に施工性、遮音性、耐火性に優れた間仕切りユニット及び、間仕切り構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、RC造やSRC造の湿式の構造物が多く建築されているが、このようなコンクリートを用いる構造では、遮音性、耐火性に優れるものの型枠工事が必須であり、多大なコストを要する。このため工期短縮及びコストダウンを目的として、集合住宅やホテルなどで、隣り合う居住空間を区画するための乾式の間仕切りパネルが多く用いられている。
【0003】
乾式の間仕切り構造として次のものが知られている。上下のスラブ面(天井面、床面)に取り付けられた上下のランナーに、金属製のスタッド(間柱)を取り付け、その両面に間仕切りパネルを貼り付けた構造が知られている。このような構造として、特許文献1には、天井面及び床面に敷設された幅広のランナーに、スタッドを交互に配置して、そこに間仕切りパネルを取り付けたものが記載されている。
【0004】
特許文献2には、平板に中空の補強部を一体的に形成した間仕切りパネルが記載されている。特許文献3の構造では、間仕切りパネルの裏面に予め補強材を固定し、補強材側を内側にした状態で、上下スラブに固定している。
【0005】
特許文献4には、間仕切りパネルの裏面に補強リブ材を固定した構造が記載されている。特許文献5の構造では、間仕切りパネルの裏面両端部に補強リブ材を固定すると共に、この補強リブ材を介して係止部を取り付け、背面同士を対抗させた4つの間仕切りパネルのコーナー部を互いに連結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開昭60-162607号公報
【文献】実開昭54-049112号公報
【文献】特開昭60-005941号公報
【文献】特開平07-207784号公報
【文献】特開平01-098809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の構造では、金属製のスタッドを取り付けるための多くの手間がかかり、施工性が低い。スタッドを取り付ける工程がないものとして、例えば特許文献2の構造が挙げられるが、平板と中空の補強部が一体的に形成された間仕切りパネルを用いるため、平板も強度を必要とする補強部と同じ材質となりコストアップとなる。
【0008】
特許文献3及び特許文献4の構造では、間仕切りパネルと補強材の材質が異なり、これらの伸縮率の違いによって、間仕切りパネルに反りが生じるおそれがある。そのため、目地部に段差が発生することや、目地部が開いてしまうといった問題がある。この現象を防ぐため、目地部を跨ぐようにビスを打って表面同士を揃える方法もあるが、施工性が低くなる。
【0009】
背面同士を対抗させた4つの間仕切りパネルのコーナー部を互いに連結する特許文献5の構造では、間仕切りパネルは比較的、強固に固定されるため、目地部の段差や開きは生じにくい。しかし多くの専用金具が必要となる上、施工現場での作業量が多くなり、多大なコストと低い施工性を招くことになる。
【0010】
本発明は従来技術の問題点に鑑み、良好な施工性が得られると共にコストが低減され、かつ間仕切りパネルの反りを抑制できる間仕切りユニット、及びこの間仕切りユニットを用いた間仕切り構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の間仕切りユニットは、建物の内部空間を仕切る間仕切りパネル部材と、前記間仕切りパネル部材の裏面に沿って当該間仕切りパネル部材と間隔をおいて固定され、当該間仕切りパネル部材を補強する一方向に長いリブ部材と、前記間仕切りパネル部材と前記リブ部材との間で、当該リブ部材幅に対応する大きさの小片シート状に形成されると共に弾性変形していない状態で挟持された複数の弾性部材と、を備え、当該複数の弾性部材は当該リブ部材の長手方向に沿って間隔をおいて設けられており、前記複数の弾性部材によって前記両部材間に掛かる力が緩和されているものである。
【0012】
本発明の間仕切りユニットは、間仕切りパネル部材と、間仕切りパネル部材を補強するリブ部材と、間仕切りパネル部材とリブ部材との間に挟持された弾性部材とで構成されている。金属製のスタッドを予め施工する必要がないため、手間がかからず施工性が高い。間仕切りパネル部材とリブ部材をそれぞれの材料特性(間仕切りパネル部材として必要とする強度、リブ部材として必要とする強度)を活かした異なる材質にすることができ、コストアップとならない。間仕切りパネル部材とリブ部材との間に固定された弾性部材が弾性変形していない状態で挟持されて、両部材間に掛かる力が緩和されているため、両部材の伸縮率の違いによる反りを抑制できる。そのため目地部の段差の発生や、目地部が開く現象を防ぐための作業が不要となり、施工性を向上させることができる。さらに、間仕切る部分に、間仕切りパネル部材及びこれを補強するリブ部材、を有する間仕切りユニットを取り付けるだけで良いので、施工現場での作業量が少なくなり、コストを低減することができる。
【0013】
本発明の間仕切り構造は、 建物の内部空間に横方向に並べられた複数の間仕切りユニットと、床面に固定され、前記複数の間仕切りユニットの下部を支持する下部ランナーと、天井面に固定され、前記複数の間仕切りユニットの上部を支持する上部ランナーと、を備えた間仕切り構造であって、前記各間仕切りユニットが、建物の内部空間を仕切る間仕切りパネル部材と、前記間仕切りパネル部材の裏面に沿って当該間仕切りパネル部材と間隔をおいて固定され、当該間仕切りパネル部材を補強する一方向に長いリブ部材と、前記間仕切りパネル部材と前記リブ部材との間で、当該リブ部材幅に対応する大きさの小片シート状に形成されると共に弾性変形していない状態で挟持された複数の弾性部材と、を備え、当該複数の弾性部材は当該リブ部材の長手方向に沿って間隔をおいて設けられており、前記複数の弾性部材によって前記両部材間に掛かる力が緩和されているものである。
【0014】
本発明の間仕切り構造が備える間仕切りユニットは、間仕切りパネル部材と、間仕切りパネル部材を補強するリブ部材と、間仕切りパネル部材とリブ部材との間に挟持された弾性部材とで構成されている。金属製のスタッドを予め施工する必要がないため、手間がかからず施工性が高い。間仕切りパネル部材とリブ部材をそれぞれの材料特性を活かした異なる材質にすることができ、コストアップとならない。間仕切りパネル部材とリブ部材との間に固定された弾性部材が弾性変形していない状態で挟持されて、両部材間に掛かる力が緩和されているため、両部材の伸縮率の違いによる反りを抑制できる。そのため目地部の段差の発生や、目地部が開く現象を防ぐための作業が不要となり、施工性を向上させることができる。さらに、間仕切る部分に、間仕切りパネル部材及びこれを補強するリブ部材、を有する間仕切りユニットを取りつけるだけで良いので、施工現場での作業量が少なくなり、コストも低減することができる。
【0015】
前記複数の間仕切りユニットのうち隣り合う2つの間仕切りユニットの前記間仕切りパネル部材の目地部を跨ぐように取り付けられて、当該目地部の段差を矯正する矯正プレートを更に備えることが好ましい。この場合、目地部を跨ぐようにビスを打って表面同士を揃える手法をとらなくても、目地部の段差の発生を防止することができる。
【0016】
前記各間仕切りユニットのリブ部材の上端と、天井面と、が間隔を空けた状態とされ、かつ当該リブ部材の下端と、床面と、が間隔を空けた状態とされていることが好ましい。この場合、隣り合う居住空間における振動や熱の伝搬の抑制効果をさらに向上させることができる。
【0017】
前記各間仕切りユニットの下部は前記下部ランナーに固定されると共に、当該各間仕切りユニットの上部は前記上部ランナーに嵌め込まれた状態とされていることが好ましい。この場合、例えばリブ部材を上部ランナーに嵌め込むだけで簡単に取り付けることができ、施工性が格段に向上する。これによりコストを低減できる。上部ランナーにリブ部材が完全には固定されておらず、層間変位時に間仕切りユニットが変位に追従し易くなるので、耐震性も向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のとおり、金属製のスタッドを予め施工する必要がないため施工性が高い。間仕切りパネル部材とリブ部材をそれぞれの材料特性を活かした異なる材質にすることができコストアップとならない。間仕切りパネル部材とリブ部材との間に掛かる力が緩和されて、両部材の伸縮率の違いによる反りを抑制でき、反りを防ぐ作業が不要となるため、高い施工性が得られる。間仕切る部分に、間仕切りパネル部材及びこれを補強するリブ部材、を有する間仕切りユニットを取りつけるだけで良いので、施工現場での作業量が少なくなり、コストも低減することができる。更に、隣り合う居住空間における振動や熱の伝搬を効果的に抑制できるとともに、耐震性にも優れた構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る間仕切りユニットを表面側と裏面側から見た斜視図である。
【
図3】間仕切りユニットを用いた間仕切り構造の一部斜視図である。
【
図5】
図3に示す間仕切り構造の横断面図であるである。
【
図6】矯正プレートを取り付けた間仕切り構造の一部断面図と矯正プレートの斜視図である。
【
図8】断面コ型又はC型のリブ部材を用いる場合の説明図である。
【
図9】本実施形態の上部アンカーとその周辺、及びその変形例を示す断面図である。
【
図10】(a)は他の実施形態に係る間仕切りユニットを裏面側から見た斜視図であり、(b)は矯正プレートの変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る間仕切りユニット1を表面側と裏面側から見た斜視図であり、
図2は間仕切りユニット1の一部断面図である。本実施形態の間仕切りユニット1は、建物の内部空間を仕切る間仕切りパネル部材2と、間仕切りパネル部材2を補強するリブ部材3と、間仕切りパネル部材2とリブ部材3との間に設けられた弾性部材4と、これらを互いに固定する固定手段5とを備えている。
【0021】
本実施形態の間仕切りパネル部材2は、図示のように正面視長方形状に形成された板材である。間仕切りパネル部材2の形状、寸法は限定されないが、施工場所の大きさに合わせて割り付けた形状、寸法に設定される。間仕切りパネル部材2を形成する材料は、建物の仕切りとして使用できる不燃性のものであれば限定されず、例えば厚みが3~15mm程度のセメント系のフレキシブルボード、石膏ボード、ケイ酸カルシウム板、中質繊維板、パーティクルボード、木質系合板、硬質繊維板、鋼板などが挙げられる。
【0022】
間仕切りパネル部材2として無機系の材料を選択する場合の比重は0.5~1.8g/cm3程度のものが好適である。一般的な集合住宅の階高を考慮した場合の間仕切りパネル部材2の最大長さは3000mm程度とされるが、このサイズのものを小端建てした際に、1.3g/cm3以上の比重のものを用いれば曲がらないようにすることができる。また1.8g/cm3以下の比重のものを用いることで、重量が大きくなり過ぎるのを防ぐことができる。
【0023】
更に無機質系の材料の場合は、セメント、炭酸カルシウム、パルプを主成分として抄造した比重1.5~1.7g/cm3、曲げ強度17~23N/cm2、伸縮率0.05~0.12%のセメント系フレキシブルボードが好適である。この配合と物性のものを用いることで、遮音性、耐火性、反り抑制に高い効果を得ることができる。更に石膏ボードをエアタッカーやネジ打ち機を用いてステイプルやネジで取り付ける際にも、間仕切りパネル部材2の割れや裏面側の剥離を防止することができる。
【0024】
リブ部材3は、間仕切りパネル部材2の裏面2aに沿って当該間仕切りパネル部材2と間隔を空けて取り付けられている。間仕切りパネル部材2の両端部の縦方向に沿って、それぞれ1つずつのリブ部材3が取り付けられている。本実施形態のリブ部材3は断面矩形状に形成された薄板の鋼材からなる。リブ部材3は不燃性のものであれば鋼材に限定されず、間仕切りパネル部材2の補強効果を発揮でき、間仕切り壁とした際に自立できるものであればよい。リブ部材3を間仕切りパネル部材2と同じ材料で形成してもよい。
【0025】
間仕切りパネル部材2とリブ部材3に挟持されている弾性部材4は、所要の寸法にカットされたシート状となっている。弾性部材4の寸法、厚みは適宜変更できる。弾性部材4は、弾性変形していない状態で挟持されており、これよって間仕切りパネル部材2とリブ部材3との間に掛かる力を緩和できるようになっている。これにより、間仕切りパネル部材2とリブ部材3の伸縮率の違いによる反りを緩和することができる。
【0026】
間仕切りパネル部材2とリブ部材3との間に掛かる力が緩和されることで、間仕切りパネル部材2とリブ部材3の伸縮率の差が許容されて、間仕切りパネル部材2の反りを抑制することができる。また、弾性部材4が間仕切りパネル部材2とリブ部材3との間に介在していることで、力の緩和効果だけでなく、遮音効果をも格段に向上させることができる。
【0027】
このためには弾性部材4を圧縮しないように取り付ける点が重要である。弾性部材4を弾性変形させないような、間仕切りパネル部材2とリブ部材3との間隔は、即ち弾性部材4の厚み分である。従って間仕切りパネル部材2とリブ部材3とは、弾性部材4の厚み分の間隔を空けて取り付けられている。弾性部材4を挟持した状態で間仕切りパネル部材2に、リブ部材3を取り付ける本実施形態の固定手段5には、図示のとおりビス留めが用いられている。
【0028】
固定手段5は、ビス留めの他、間仕切りパネル部材2とリブ部材3との間隔を保つことができれば、ピン、リベット等どのような形態でもよい。リブ部材3を間仕切りパネル部材2に取り付ける際には、弾性部材4を圧縮しないように、弾性部材と同じ厚みのスレートや塩ビなどの硬質パッキン材を予めリブ部材3と間仕切りパネル部材2との間に挟んでおき、取り付けが完了した後、これを除去すればよい。
【0029】
固定手段5に接着剤を用いてもよい。この場合、弾性部材4の表裏に接着剤を塗布して、間仕切りパネル部材2と弾性部材4、弾性部材4とリブ部材3を互いに密着させて固定する。接着剤を用いれば、弾性部材4を押す力は作用しないため、確実に圧縮しない状態で取り付けることができる。
【0030】
弾性部材4を形成する材料として、例えば天然ゴム、合成ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム、これらの発泡体などが挙げられる。
【0031】
弾性部材4の硬度は、タイプAのデュロメータで20~80が好ましく、より好ましくは30~60である。弾性部材4の硬度を20以上とすることで、ビス留めの際に弾性部材4が圧縮されにくくなり、高い遮音性を得ることができる。弾性部材4の硬度を80以下とすることで、弾性部材4に伝わる音の振動が大きくなり過ぎず、高い遮音性を維持することができる。
【0032】
次に間仕切りユニット1を用いた間仕切り構造10について説明する。
図3は間仕切り構造10の一部斜視図であり、
図4は間仕切り構造10の縦断面図であり、
図5は間仕切り構造10の横断面図である。
図4のように本実施形態の間仕切り構造10は、建物の内部空間に横方向に並べられた複数の間仕切りユニット1と、床面t1に固定されて、複数の間仕切りユニット1の下部を支持する下部ランナー11と、天井面t2に固定されて、複数の間仕切りユニット1の上部を支持する上部ランナー12と備えている。
図5のように各間仕切りユニット1の両端部のリブ部材3は、その隣の間仕切りユニット1のリブ部材3に長手方向を沿わせるようにして近接して位置している。
【0033】
上部ランナー12及び下部ランナー11はいずれも
図4貫通方向に長いL型鋼材である。天井面t2には、一対の上部ランナー12が、垂直片12aに対して水平片12bを内側に向けるようにしてコンクリート用ピン13で固定されている。床面t1には、一対の下部ランナー11が垂直片11aに対して水平片11bを外側に向けるようにしてコンクリート用ピン13で固定されている。
【0034】
間仕切りユニット1は、上部ランナー12によって外側から支持され、下部ランナー11によって内側から支持されている。横方向に並べられた一対の複数の間仕切りユニット1、1は、それぞれの裏面2a、2aを互いに対向させて状態で、上部ランナー12と下部ランナー11に支持されて取り付けられている。
【0035】
間仕切りユニット1のリブ部材3の上端と、天井面t2と、が間隔を空けた状態とされ、かつ当該リブ部材3の下端と、床面t1と、が間隔を空けた状態とされている。このため、隣り合う居住空間における振動や熱の伝搬の抑制効果をさらに向上させることができる。
【0036】
吸音材・断熱材14が、リブ部材3に取りつけられた図示しないピンによって、裏面を互いに対向させる間仕切りユニット1、1間に挟み込まれるようにして取り付けられている。横方向に並べられた複数の間仕切りユニット1の内側における、リブ部材3の上側の天井面t2との間隔が空けられた箇所には、上部ランナー12の水平片12bを覆うようにロックウール又はセラミックウール等の不燃材15が横方向に連続して取り付けられている。横方向に並べられた複数の間仕切りユニット1の内側における、リブ部材3の下側の床面t1との間隔が空けられた箇所にも、ロックウール又はセラミックウール等の不燃材15が上側と同様に取り付けられている。
【0037】
図4のように一方(左側)の下部ランナー11の垂直片11aがリブ部材3に内側からビス留めされている。他方(右側)の下部ランナー11の垂直片11aがリブ部材3に外側からビス留めされている。このようなビス留め形態は、間仕切りユニット1の取り付け工程に伴うものであり、適宜変更される。間仕切りパネル部材2の上側及び下側には、シーリング材16が設けられている。横方向に並ぶ間仕切りユニット1の表面2bに石膏ボード17が取り付けられており、部屋の壁面となっている。このようにして間仕切りユニット1の下部が下部ランナー11に固定され、それと共に当該間仕切りユニット1の上部は上部ランナー12に嵌め込まれた状態となっている。
【0038】
図6は矯正プレート18を取り付けた間仕切り構造10の一部断面図と矯正プレート18の斜視図である。横方向に並ぶ複数の間仕切りユニット1のうち隣り合う2つの間仕切りユニット1の間仕切りパネル部材2の目地部m1の内側を跨ぐように矯正プレート18が取り付けられている。矯正プレート18は鋼板からなり、ベースプレート19と、ベースプレート19から折り曲げられて形成された固定片20で構成されている。
【0039】
ベースプレート19は、隣り合う間仕切りパネル部材2の目地部m1を跨ぐようにして、間仕切りパネル部材2とリブ部材3に挟まれ、それと共に固定片20がリブ部材3にビス留めされている。矯正プレート18を取り付ける箇所及び数は適宜設定される。矯正プレート18を取り付けることによって、隣り合う間仕切りパネル部材2の表面2bが揃うようになり、目地部m1における段差の発生を防ぐことができる。間仕切りパネル部材2に反りが生じようとした場合にも、矯正プレート18の存在によって、隣り合う間仕切りパネル部材2同士で表面2bを揃えようとする力が働き、間仕切りパネル部材2の反りの発生を防止することができる。
【0040】
矯正プレートは、目地部m1の段差を防止できる形状であればよい。例えば
図10(a)に示すように、正面視H型に形成した矯正プレート24を横倒しにして、2つの凹部24aにそれぞれ、隣り合う間仕切りパネル部材2の弾性部材4を入り込ませてもよい。この形状では、凹部24aが弾性部材4を位置させる逃げ部分となり、矯正プレート24は上下方向に移動しなくなくなる。リブ部材3に取り付けるための固定片は存在せず、ビス留め工程が不要となる。このように、矯正プレートは、矯正するベースプレートが間仕切りパネル部材2とリブ部材3間で保持可能であれば、どのような形状であってもよい。
【0041】
間仕切りユニット1を用いた間仕切り構造10は、例えば次のようにして施工される。まず片側(
図4左側)の上部ランナー12及び下部ランナー11をそれぞれ天井面t2、床面t1に取り付ける。間仕切りユニット1を斜め方向から差し入れるようにして、片側の間仕切りパネル部材2の上部と、リブ部材3の上部との隙間に上部ランナー12の垂直片12aを挿入する。挿入を確認したら、その間仕切りパネル部材2の下部を下部ランナー11に宛てがい、間仕切りユニット1を床面t1上に直立させる。下部ランナー11の垂直片11aの内側から間仕切りパネル部材2にビス留めする。
【0042】
間仕切りユニット1の上側の隙間に、上部ランナー12の水平片12bを覆うように不燃材15を充填する。同様に、間仕切りユニット1の下側の隙間にも、下部ランナー11の水平片11bを覆うように不燃材15を充填する。そして、間仕切りユニット1のリブ部材3に、吸音・断熱材14を固定するための図示しないピンを取り付け、不燃材15をそのピンで固定する。
【0043】
その後、片側(
図4右側)の上部ランナー12及び下部ランナー11、間仕切りユニット1を右側と同様の手順で取り付ける。横方向に並ぶ複数の間仕切りユニット1を対向させるように取り付け、室内側からビス留めした後、間仕切りパネル部材2の表面2bに石膏ボード17を取り付け、更に壁紙を貼り付けて仕上げる。この施工手順は一例を示したものであり、間仕切りユニット1、間仕切り構造10の形態に応じて任意に設定できる。
【0044】
本実施形態の間仕切り構造10を構成する間仕切りユニット1は、間仕切りパネル部材2と、間仕切りパネル部材2を補強するリブ部材3と、間仕切りパネル部材2とリブ部材3との間に挟持された弾性部材4とを備えている。金属製のスタッドを予め施工する必要がないため、手間がかからず施工性が高い。間仕切りパネル部材2とリブ部材3をそれぞれの材料特性(間仕切りパネル部材2として必要とする強度、リブ部材3として必要とする強度)を活かした異なる材質にすることができ、コストアップとならない。
【0045】
間仕切りパネル部材2とリブ部材3との間に挟まれた弾性部材4が弾性変形していない状態で挟持されて、両部材2、3間に掛かる力が緩和されているため、両部材2、3の伸縮率の違いによる反りを抑制できる。そのため目地部m1に大きな段差が発生することや、目地部m1が開いてしまうといった現象を防ぐための作業が不要となり、施工性を向上させることができる。さらに、間仕切り部分に、間仕切りパネル部材2及びこれを補強するリブ部材3、を有する間仕切りユニット1を取りつけるだけで良いので、施工現場での作業業量が少なくなり、コストを低減することができる。
【0046】
更に、間仕切りユニット1のリブ部材3が上部ランナー12に完全には固定されず、間仕切りユニット1の上部が上部ランナー12に単に嵌め込まれた状態となっているので、リブ部材3を上部ランナー12に嵌め込むだけで簡単に取り付けることができ、施工性が格段に向上する。これによりコストを低減できる。上部ランナー12にリブ部材3が完全には固定されておらず、層間変位時に間仕切りユニット1が変位に追従し易くなるので、耐震性も向上させることができる。
【0047】
本発明は上記実施形態に限定されず、間仕切りパネル部材及びリブ部材の形状、寸法、取り付け方法等は、建物の内部空間を仕切る仕様に応じて適宜変更できる。
図7はリブ部材3の変形例を示す断面図である。図示のようにリブ部材3を、断面コ型、L型、C型、円型、三角型、多角型としてもよい。
【0048】
断面コ型又はC型のリブ部材を用いる場合には、
図8に示すように間仕切りパネル部材2に、2つのリブ部材3、3の開口部3a、3aが互いに向かい合うように当該両リブ部材3、3を取りつける。そして、2つのリブ部材3、3の間に断熱材14を取りつける構成としても良い。この場合、現場で断熱材14を取り付ける手間が省けるので、施工性を更に向上することができる。
【0049】
リブ部材の取り付け位置は、矯正プレートを取り付け可能であれば任意に設定できる。上部ランナーの形状を例えば
図9の中央図のように、コ型の上部ランナー21にすることや、
図9の右図のように上部アンカーとしてL型アングル22を用いてもよい。下部アンカーの形状も同様である。上記実施形態ではリブ部材を鉛直方向に向けて取り付けているが、
図10(b)のように、リブ部材26をより長く形成して、これを間仕切りパネル部材2に対して斜め方向に向けて取り付けてもよい。リブ部材26を斜め方向に取り付ければ、取り付け本数が少なくなり施工性が向上する。
【0050】
本発明に係る間仕切りユニット、及びこの間仕切りユニットを用いた間仕切り構造は、特許請求の範囲に記載した技術的範囲において変更可能である。間仕切りユニットを用いた間仕切り構造に、必要に応じて設けられる他の部材は本発明の効果を損なわない限りにおいてどのような形態のものであってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 間仕切りユニット
2 間仕切りパネル部材
2a 裏面
2b 表面
3、26 リブ部材
4 弾性部材
5 固定手段
10 間仕切り構造
11 下部ランナー
12 上部ランナー
13 用ピン
14 吸音材・断熱材
15 不燃材
16 シーリング材
17 石膏ボード
18、24 矯正プレート
19 ベースプレート
20 固定片
21 上部ランナー
22 L型アングル
m1 目地部
t1 床面
t2 天井面