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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/12 20060101AFI20230208BHJP
   F01N 3/033 20060101ALI20230208BHJP
   F01N 3/023 20060101ALI20230208BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20230208BHJP
   F01N 3/025 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
F02D41/12
F01N3/033 Z ZAB
F01N3/023 A
F02D45/00
F01N3/025 101
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019110941
(22)【出願日】2019-06-14
(65)【公開番号】P2020204270
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2021-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲場 拓巳
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-127559(JP,A)
【文献】特開2017-089538(JP,A)
【文献】国際公開第2014/122778(WO,A1)
【文献】特開2009-215933(JP,A)
【文献】特開2016-056696(JP,A)
【文献】特開2011-099451(JP,A)
【文献】特開2010-048131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/12
F01N 3/033
F01N 3/023
F02D 45/00
F01N 3/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された内燃機関を制御する内燃機関の制御装置において、
前記内燃機関の排気通路に設けられたパティキュレートフィルタと、
前記パティキュレートフィルタよりも上流側の前記排気通路に設けられた三元触媒と、
前記車両の減速時に前記パティキュレートフィルタに捕集された粒子状物質を燃焼させて前記パティキュレートフィルタを再生させる制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記パティキュレートフィルタを再生させる期間に、前記内燃機関における燃料噴射を停止させる燃料カット制御を開始し、前記パティキュレートフィルタに供給された酸素量が、前記パティキュレートフィルタにおける前記粒子状物質の堆積量及び前記パティキュレートフィルタの温度に基づいて算出される粒子状物質燃焼許可酸素量に到達したときに、前記燃料カット制御を終了し、その後に前記内燃機関に供給される混合気の空燃比を燃料リーン状態に制御する、
内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記空燃比を前記燃料リーン状態に制御する期間に、
前記パティキュレートフィルタに流入する排気の空燃比が燃料リーン状態である一方、前記パティキュレートフィルタから流出する排気の空燃比がストイキ状態となるように前記混合気を燃料リーン状態に制御する、
請求項に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記燃料カット制御を実行した後、前記混合気の空燃比を燃料リッチ状態に制御し、さらに前記燃料リーン状態に制御する、
請求項1又は2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記混合気の空燃比を前記燃料リッチ状態に制御し、前記パティキュレートフィルタから流出する排気の空燃比がストイキ状態となった後に、前記混合気の空燃比を前記燃料リーン状態に制御する、
請求項に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記混合気の空燃比を前記燃料リーン状態に制御している状態で、前記パティキュレートフィルタから流出する排気の空燃比が燃料リーン状態に変化したときに前記混合気の空燃比をストイキ状態に制御する、
請求項に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記混合気の空燃比を前記燃料リーン状態から燃料リッチ状態に制御した後、ストイキ状態に制御する、
請求項に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記混合気の空燃比を前記燃料リッチ状態に制御した後、前記パティキュレートフィルタに流入する排気の空燃比がストイキ状態となったときに、前記混合気の空燃比をストイキ状態に制御する、
請求項に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項8】
前記車両は、
前記内燃機関の出力トルクを変速機に伝達するトルクコンバータと、前記トルクコンバータを締結状態に維持するロックアップクラッチと、を備え、
前記ロックアップクラッチは、
前記燃料カット制御の実行開始後、車速又は前記内燃機関の回転数が所定値まで低下したときに解放され、
前記制御部は、
前記ロックアップクラッチが解放される時刻よりも前に、前記混合気の空燃比を前記燃料リーン状態に制御する、
請求項1~のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項9】
前記パティキュレートフィルタから流出する排気の酸素濃度を検出する下流側酸素濃度センサと、
前記パティキュレートフィルタに流入する排気の酸素濃度を検出する上流側酸素濃度センサと、を備え、
前記制御部は、
前記パティキュレートフィルタから流出する排気の酸素濃度及び前記パティキュレートフィルタに流入する排気の酸素濃度に基づいて、前記パティキュレートフィルタにおける粒子状物質の燃焼状態を推定する、
請求項1~のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用内燃機関においては、環境対策として燃料消費量や排気エミッションを低減することが求められる。排気エミッションを低減するために、ガソリンエンジンにおいても排気通路に三元触媒やパティキュレートフィルタが設けられ、排気の浄化が行われる。
【0003】
三元触媒は、排気中の一酸化炭素、炭化水素及び窒素酸化物を、酸化あるいは還元することによって浄化する。具体的に、一酸化炭素は二酸化炭素へと酸化され、炭化水素は水と二酸化炭素へと酸化され、窒素酸化物は窒素へと還元される。パティキュレートフィルタは、排気ガス中の粒子状物質を捕集する。パティキュレートフィルタに捕集された粒子状物質は適時に燃焼され、除去される。
【0004】
ガソリンエンジンの場合、ディーゼルエンジンに比べて排気温度が高く、パティキュレートフィルタの温度を高く保つことができる。このため、ガソリンエンジンの場合、エンジンが回転している状態で燃料噴射を停止する制御(以下、「燃料カット制御」ともいう。)等を実行してパティキュレートフィルタに酸素を供給することによって、パティキュレートフィルタに捕集された粒子状物質を燃焼させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-167618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、加速走行が多用される場合や、内燃機関の冷間始動後に短時間で車両の走行が停止される場合など、粒子状物質が発生しやすい一方で燃料カット制御の実行頻度が少ない場合には、パティキュレートフィルタへの粒子状物質の堆積量が増加する。粒子状物質の堆積量が多い状態で粒子状物質の酸化燃焼が継続すると、発生する反応熱でパティキュレートフィルタが焼損するおそれがある。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、パティキュレートフィルタに捕集された粒子状物質の燃焼効率の低下を抑制可能な、新規かつ改良された内燃機関の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、車両に搭載された内燃機関を制御する内燃機関の制御装置であって、内燃機関の排気通路に設けられたパティキュレートフィルタと、パティキュレートフィルタよりも上流側の排気通路に設けられた三元触媒と、車両の減速時にパティキュレートフィルタに捕集された粒子状物質を燃焼させてパティキュレートフィルタを再生させる制御を行う制御部と、を備え、制御部は、パティキュレートフィルタを再生させる期間に、内燃機関における燃料噴射を停止させる燃料カット制御を開始し、パティキュレートフィルタに供給された酸素量が、パティキュレートフィルタにおける粒子状物質の堆積量及びパティキュレートフィルタの温度に基づいて算出される粒子状物質燃焼許可酸素量に到達したときに、燃料カット制御を終了し、その後に内燃機関に供給される混合気の空燃比を燃料リーン状態に制御する、内燃機関の制御装置が提供される。
【0012】
制御部は、空燃比を燃料リーン状態に制御する期間に、パティキュレートフィルタに流入する排気の空燃比が燃料リーン状態である一方、パティキュレートフィルタから流出する排気の空燃比がストイキ状態となるように混合気を燃料リーン状態に制御してもよい。
【0013】
制御部は、燃料カット制御を実行した後、混合気の空燃比を燃料リッチ状態に制御し、さらに燃料リーン状態に制御してもよい。
【0014】
制御部は、混合気の空燃比を燃料リッチ状態に制御し、パティキュレートフィルタから流出する排気の空燃比がストイキ状態となった後に、混合気の空燃比を燃料リーン状態に制御してもよい。
【0015】
制御部は、混合気の空燃比を燃料リーン状態に制御している状態で、パティキュレートフィルタから流出する排気の空燃比が燃料リーン状態に変化したときに混合気の空燃比をストイキ状態に制御してもよい。
【0016】
制御部は、混合気の空燃比を燃料リーン状態から燃料リッチ状態に制御した後、ストイキ状態に制御してもよい。
【0017】
制御部は、混合気の空燃比を燃料リッチ状態に制御した後、パティキュレートフィルタに流入する排気の空燃比がストイキ状態となったときに、混合気の空燃比をストイキ状態に制御してもよい。
【0018】
車両は、内燃機関の出力トルクを変速機に伝達するトルクコンバータと、トルクコンバータを締結状態に維持するロックアップクラッチと、を備え、ロックアップクラッチは、燃料カット制御の実行開始後、車速又は内燃機関の回転数が所定値まで低下したときに解放され、制御部は、ロックアップクラッチが解放される時刻よりも前に、混合気の空燃比を燃料リーン状態に制御してもよい。
【0019】
パティキュレートフィルタから流出する排気の酸素濃度を検出する下流側酸素濃度センサと、パティキュレートフィルタに流入する排気の酸素濃度を検出する上流側酸素濃度センサと、を備え、制御部は、パティキュレートフィルタから流出する排気の酸素濃度及びパティキュレートフィルタに流入する排気の酸素濃度に基づいて、パティキュレートフィルタにおける粒子状物質の燃焼状態を推定してもよい。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明によれば、パティキュレートフィルタに捕集された粒子状物質の燃焼効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態に係る内燃機関の制御装置の構成例を示す模式図である。
図2】内燃機関の制御装置に備えられた電子制御装置の構成例を示すブロック図である。
図3】制御処理の概略を示す説明図である。
図4】内燃機関の制御処理の一例を示すフローチャートである。
図5】内燃機関の制御処理の一例を示すフローチャートである。
図6】内燃機関の制御処理によるセンサ値の推移を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0023】
<1.内燃機関の制御装置の構成例>
まず、図1を参照して、本発明の実施の形態に係る内燃機関の制御装置を適用可能な内燃機関の排気系の構成例を説明する。本実施形態に係る内燃機関の制御装置1は、ガソリンエンジンの排気系に適用される。
【0024】
内燃機関10は、シリンダ11、ピストン13、吸気弁21、排気弁23、燃料噴射弁15及び点火プラグ17を備える。ピストン13は、シリンダ11内を上下動する。吸気弁21は、シリンダ11に臨む吸気通路19の開口部に設けられる。排気弁23は、シリンダ11に臨む排気通路31の開口部に設けられる。燃料噴射弁15及び点火プラグ17は、先端がシリンダ11内に臨むように設けられる。燃料噴射弁15及び点火プラグ17は、電子制御装置(制御部)50により駆動制御される。
【0025】
吸気通路19には、エアマスセンサ18及び吸気スロットル弁16が備えられる。吸気スロットル弁16は、電子制御装置50により駆動され、シリンダ11に供給される吸気の流量を調節する。エアマスセンサ18は、吸気の流量を検出する。エアマスセンサ18のセンサ信号は、電子制御装置50に送信される。
【0026】
内燃機関10では、ピストン13の下降時に吸気弁21が開かれて吸気通路19からシリンダ11へと吸気が行われるとともに燃料噴射弁15から燃料が噴射されてシリンダ11内に混合気が形成される(吸気行程)。次のピストン13の上昇時には吸気弁21が閉じられ、形成された混合気が圧縮される(圧縮行程)。圧縮された混合気は点火プラグ17により点火されて膨張し、ピストン13を押し下げる(膨張行程)。次のピストン13の上昇時には排気弁23が開かれ、排気通路31に燃焼ガス(排気)が排出される(排気行程)。
【0027】
排気通路31には、三元触媒33及びパティキュレートフィルタ35が備えられる。パティキュレートフィルタ35は、三元触媒33の下流側に備えられる。三元触媒33は、酸素吸蔵放出性能を有する触媒であり、排気中の炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NOX)を酸化あるいは還元する。例えば、三元触媒33は、排気がリッチ状態のときに排気中の酸素を吸着し、排気がリーン状態のときに吸着していた酸素を放出して排気中のHC、CO、NOX等を浄化する。
【0028】
本実施形態において、パティキュレートフィルタ35は、酸素吸蔵放出性能の機能を有するフィルタである。パティキュレートフィルタ35は、例えば、セラミック製のハニカム状のフィルタ担体の表面に触媒成分が担持されて構成される。かかるパティキュレートフィルタ35は、三元触媒としても機能し、排気中のHC、CO及びNOXを酸化あるいは還元する。三元触媒33だけでなくパティキュレートフィルタ35に三元触媒の機能を持たせることにより、排気の浄化効率が高められる。
【0029】
また、パティキュレートフィルタ35は、排気中に含まれる粒子状物質(PM:Particulate Matter)を捕集する。パティキュレートフィルタ35に捕集されたPMは、パティキュレートフィルタ35が高温状態のときにパティキュレートフィルタ35に酸素が供給されることによって燃焼(酸化)する。
【0030】
排気通路31には、第1の排気センサ41、第2の排気センサ43、第3の排気センサ45及び排気温度センサ47が備えられる。第1の排気センサ41及び排気温度センサ47は、三元触媒33の上流に備えられる。第2の排気センサ43は、三元触媒33の下流、かつ、パティキュレートフィルタ35の上流に備えられる。第3の排気センサ45は、パティキュレートフィルタ35の下流に備えられる。第1の排気センサ41、第2の排気センサ43、第3の排気センサ45及び排気温度センサ47のセンサ信号は、電子制御装置50に送信される。
【0031】
第1の排気センサ41、第2の排気センサ43及び第3の排気センサ45は、それぞれ燃焼ガスの空燃比に関連する状態値を検出するセンサである。例えば第1の排気センサ41、第2の排気センサ43及び第3の排気センサ45は、それぞれ空燃比センサ又は酸素濃度センサであってよい。空燃比センサは、状態値として空燃比(A/F)を検出し、酸素濃度センサは、状態値として酸素濃度を検出する。空燃比センサは、ラムダセンサであってもよい。例えば排気センサにより検出される状態値は、混合気の空燃比がストイキ状態(理論空燃比、ラムダ値=1)よりも燃料リッチ状態(燃料過多状態、ラムダ値<1)になると低下し、燃料リーン状態(燃料過少状態、ラムダ値>1)になると上昇する。
【0032】
また、内燃機関10は、図示しない冷却水温センサを備える。内燃機関10のハウジングには冷却水通路が設けられ、冷却水温センサは、冷却水通路を通過する冷却水の温度を検出する。冷却水温センサのセンサ信号は、電子制御装置50に送信される。
【0033】
電子制御装置50は、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサを備えて構成される。電子制御装置50の一部又は全部は、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。
【0034】
図2は、電子制御装置50の構成のうち、本実施形態に係る制御に関連する機能構成を示す説明図である。電子制御装置50は、通常運転制御部51、燃料カット制御部53、燃料リーン制御部55、中立化制御部57、GPF温度推定部58、PM堆積量推定部59及び記憶部52を備えている。このうち、通常運転制御部51、燃料カット制御部53、燃料リーン制御部55、中立化制御部57、GPF温度推定部58及びPM堆積量推定部59は、プロセッサによるソフトウェアプログラムの実行により実現される機能である。
【0035】
電子制御装置50は、エアマスセンサ18、第1の排気センサ41、第2の排気センサ43、第3の排気センサ45及び排気温度センサ47それぞれのセンサ信号の他、アクセルセンサ等の種々のセンサ信号あるいは他の電子制御装置からのメッセージを取得可能になっている。
【0036】
記憶部52は、RAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)等の記憶素子を含む。記憶部52は、HDD(Hard Disk Drive)やストレージ装置等の他の記憶装置を含んでもよい。記憶部52は、プロセッサにより実行されるソフトウェアプログラム、演算処理に使用される種々のパラメータ、取得したセンサ信号に対応する状態値、あるいは演算処理の結果を記憶する。
【0037】
通常運転制御部51は、シリンダ11内で燃料を燃焼させ、内燃機関10から駆動力を発生させて車両を走行させる制御を実行する。具体的に、通常運転制御部51は、燃料噴射弁15の駆動を制御してシリンダ11内へ燃料を噴射させるとともに空気を供給して、燃料と空気とからなる混合気を燃焼させる。通常運転時における燃料噴射量や吸気の流量は、内燃機関10の回転数及び車両の要求加速度に基づいて制御される。
【0038】
燃料カット制御部53は、シリンダ11内で燃料を燃焼させることなく、内燃機関10から駆動力を発生させずに車両を走行させる制御を実行する。具体的に、燃料カット制御部53は、車両の減速時や惰性走行時等において、燃料噴射弁15による燃料噴射を停止させた状態でシリンダ11内へ空気を供給する。燃料カット制御により、燃料消費量が低減されるとともに、排気中の酸素濃度が上昇してパティキュレートフィルタ35に捕集されたPMを燃焼させることができる。
【0039】
燃料リーン制御部55は、シリンダ11内の混合気の空燃比を制御する。具体的に、燃料リーン制御部55は、燃料噴射弁15による燃料噴射量、噴射時期又は噴射回数や、点火プラグ17の点火時期又は点火回数等を適宜調節することにより、混合気の空燃比を制御する。特に、本実施形態において、燃料リーン制御部55は、燃料カット制御の実行後、混合気の空燃比を燃料リーン状態に制御して、パティキュレートフィルタ35の温度をPM燃焼効率最大温度未満に維持しつつ、パティキュレートフィルタ35に捕集されたPMを燃焼させる。この間のリーン度合いは、パティキュレートフィルタ35に流入する排気の空燃比が燃料リーン状態を示す一方、パティキュレートフィルタ35から流出する排気の空燃比がストイキ状態を示すように制御される。
【0040】
燃料カット制御部53及び燃料リーン制御部55は、パティキュレートフィルタ35に捕集されたPMを燃焼させてパティキュレートフィルタ35を再生させる制御を実行する機能を有する。
【0041】
中立化制御部57は、燃料カット制御の終了時又は空燃比を燃料リーン状態にする制御の終了時に、三元触媒33の機能及びパティキュレートフィルタ35の触媒機能を回復させるための中立化制御を実行する。三元触媒33及びパティキュレートフィルタ35は、燃料カット制御や、混合気の空燃比を燃料リーン状態にする制御の実行時に、多量の酸素が供給されて酸素吸蔵量が過大になると、触媒機能が低下する。このため、中立化制御部57は、三元触媒33及びパティキュレートフィルタ35の酸素吸蔵量を低減させる中立化制御を実行する。具体的に、中立化制御部57は、燃料カット制御の終了時又は混合気の空燃比を燃料リーン状態にする制御の終了時に、混合気の空燃比を燃料リッチ状態にする。このときのリッチ度合いは、通常運転制御時と比べて大きくなるように設定される。これにより、未燃燃料を含む排気が三元触媒33あるいはパティキュレートフィルタ35に供給され、三元触媒33及びパティキュレートフィルタ35の中立化が図られる。
【0042】
GPF温度推定部58は、パティキュレートフィルタ35の層内温度を推定する。例えば、GPF温度推定部58は、排気温度センサ47により検出される排気温度と、三元触媒33におけるHC、CO及びNOXの反応状態とに基づいて、パティキュレートフィルタ35の層内温度を推定することができる。なお、パティキュレートフィルタ35の層内温度を推定するために、上記の排気温度センサ47に代えて、あるいは、排気温度センサ47と併せて、パティキュレートフィルタ35の入り口に排気温度センサが備えられてもよい。
【0043】
PM堆積量推定部59は、パティキュレートフィルタ35に捕集されたPMの堆積量を推定する。例えば、PM堆積量推定部59は、燃料噴射量、内燃機関10の燃焼温度、内燃機関10の排気の流量、排気中の酸素の流量及びパティキュレートフィルタ35の温度に基づいて、PMの堆積量を推定する。
【0044】
具体的に、PM堆積量推定部59は、燃料噴射量、内燃機関10の燃焼温度及び内燃機関10の排気の流量に基づいて、パティキュレートフィルタ35に流入するPMの流量を積算する一方、パティキュレートフィルタ35の温度及び排気中の酸素の流量に基づいて、燃焼するPM量を減算することにより、PMの堆積量を推定する。また、排気中の酸素の流量は、内燃機関10の吸気の流量、燃焼効率及び三元触媒33における酸素消費量等に基づいて推定することができる。
【0045】
なお、パティキュレートフィルタ35の上流側の圧力と下流側の圧力との差を検知する差圧センサ等を備える場合、PM堆積量推定部59は、検出される差圧に基づいてPMの堆積量を推定してもよい。
【0046】
<2.制御動作の概略>
次に、本実施形態に係る内燃機関の制御装置1による制御動作の概略を説明する。
【0047】
図3は、内燃機関の制御装置1による制御動作の概略を説明するための図であり、アクセルペダルのオンオフ、車速V、内燃機関10の回転数Ne、燃料カット制御の実行フラグF_fcのオンオフ(1or0)、パティキュレートフィルタ35の層内温度T_gpf、内燃機関10の混合気の空燃比λが示されている。なお、混合気の空燃比λは、燃料リーン状態において上方側に変化する。
【0048】
図3は、車両が、内燃機関10の出力トルクを自動変速機に伝達するトルクコンバータと、トルクコンバータを締結状態に維持するロックアップクラッチとを備える場合の例を示している。ロックアップクラッチは、燃料カット制御の実行開始後、車速Vがあらかじめ設定されたロックアップ解放車速V_0まで低下したときに解放されるようになっている。かかる図3には、車速Vが、ロックアップ解放車速V_0まで低下する間、燃料カット制御を継続する参考例における燃料カット制御の実行フラグF_fcのオンオフ(1or0)、パティキュレートフィルタ35の層内温度T_gpf、内燃機関10の混合気の空燃比λが破線で示されている。なお、ロックアップクラッチの解放時期は、車速の代わりに内燃機関10の回転数により設定されていてもよい。
【0049】
時刻t1までの期間、運転者がアクセルペダルを操作して、所定の車速V1で車両を走行させている。この期間において、内燃機関10の回転数NeはNe1であり、パティキュレートフィルタ35の温度T_gpfはT_gpf_1であり、燃料カット制御の実行フラグF_fcはオフであり、混合気の空燃比λは1である。時刻t1~時刻t4までの期間、アクセルペダルが開放される。
【0050】
時刻t1において、アクセルペダルが開放されると、燃料カット制御の実行フラグがオンになって燃料噴射が停止する。これに伴って、車速V及び内燃機関10の回転数Neが低下する。また、燃料噴射が停止することから、混合気の空燃比λが燃料リーン側に大きく変化する。これに伴って、三元触媒33で吸蔵しきれない酸素がパティキュレートフィルタ35に流入するため、パティキュレートフィルタ35に捕集されたPMが燃焼し、パティキュレートフィルタ35の層内温度T_gpfが上昇し始める。
【0051】
破線で示した参考例では、車速Vが車速V_0に低下する時刻t3までの期間、燃料カット制御が継続される。このため、時刻t1~時刻t3まで間、パティキュレートフィルタ35には多量の酸素が流入するために、パティキュレートフィルタ35に捕集されたPMの燃焼によりパティキュレートフィルタ35の層内温度T_gpfが上昇し続ける。したがって、パティキュレートフィルタ35の層内温度T_gpfは、PMの燃焼効率が最大となる温度(以下、「PM燃焼効率最大温度」ともいう。)T_gpf_Aを超え、燃焼効率が低下する。
【0052】
これに対して、本実施形態に係る内燃機関の制御装置1では、燃料カット制御を実行した後、パティキュレートフィルタ35の層内温度T_gpfがPM燃焼効率最大温度T_gpf_Aに到達する前に燃料リーン制御に切り換えられる。本実施形態においては、最初に燃料カット制御を実行することにより、PMの燃焼速度が短時間で高められる。これにより、パティキュレートフィルタ35に捕集されたPMが効率よく燃焼され、PMを燃焼させる時間を短くすることができる。また、すべての期間を燃料リーン状態とする場合に比べて、三元触媒33におけるNOXの浄化率の低下を抑制することができる。
【0053】
さらに、燃料カット制御を終了させて燃料リーン制御に切り換えることにより、パティキュレートフィルタ35の層内温度T_gpfがPM燃焼効率最大温度T_gpf_Aを超えないようにしつつ、パティキュレートフィルタ35に捕集されたPMを燃焼させることができる。
【0054】
<3.動作の具体例>
次に、本実施形態に係る内燃機関の制御装置1の動作例を具体的に説明する。
【0055】
(3-1.フローチャート)
図4及び図5は、電子制御装置50による制御処理の一例を示すフローチャートである。車両の走行時において、電子制御装置50の通常運転制御部51は、運転者のアクセル操作にしたがって通常運転制御を実行する(ステップS11)。具体的に、通常運転制御部51は、内燃機関10の回転数及び要求加速度に基づいて燃料噴射弁15による燃料噴射及び吸気スロットル弁16による吸気流量を制御する。自動運転可能な車両においては、演算により算出される要求加速度が用いられる。
【0056】
次いで、燃料カット制御部53は、燃料カット要求の有無を判別する(ステップS13)。例えば、燃料カット制御部53は、車両の減速時あるいは惰性走行時に燃料カット要求有りと判定する。燃料カット要求がない場合(S13/No)、通常運転制御部51が、通常運転制御を継続する(ステップS11)。
【0057】
一方、燃料カット要求が有る場合(S13/Yes)、燃料カット制御部53は、PM堆積量推定部59により推定されているPM堆積量PN及びGPF温度推定部58により推定されているパティキュレートフィルタ35の層内温度T_gpfを読み込む(ステップS15)。
【0058】
次いで、燃料カット制御部53は、第1のPM燃焼許可酸素量M_O2_sb1を算出する(ステップS17)。第1のPM燃焼許可酸素量M_O2_sb1は、パティキュレートフィルタ35の層内温度T_gpfが、PM燃焼効率最大温度を超えない範囲で、PMの燃焼に用いられる酸素量である。
【0059】
例えば、燃料カット制御部53は、パティキュレートフィルタ35に流入する排気の空燃比がストイキ状態であると仮定したときに、PMの燃焼によるパティキュレートフィルタ35の層内温度T_gpfの上昇速度を考慮して、パティキュレートフィルタ35の層内温度T_gpfがPM燃焼効率最大温度を超えない範囲内の時間で燃料カット制御を実行するために、第1のPM燃焼許可酸素量M_O2_sb1を算出する。ストイキ状態の酸素濃度は、例えば20%に設定される。
【0060】
燃料カット制御部53は、ステップS17において第1のPM燃焼許可酸素量M_O2_sb1を算出した後、燃料カット制御を開始する(ステップS19)。次いで、燃料カット制御部53は、燃料カット制御を開始してからパティキュレートフィルタ35に供給された酸素量M_O2_actが第1のPM燃焼許可酸素量M_O2_sb1に到達したか否かを判別する(ステップS21)。パティキュレートフィルタ35に供給された酸素量M_O2_actは、第2の排気センサ43のセンサ信号に基づいて算出される酸素濃度と、エアマスセンサ18により検出される吸気流量とを乗じることにより求めることができる。
【0061】
燃料カット制御を開始してからパティキュレートフィルタ35に供給された酸素量M_O2_actが第1のPM燃焼許可酸素量M_O2_sb1に到達していない場合(S21/No)、燃料カット制御部53は、燃料カット制御を継続する。一方、燃料カット制御を開始してからパティキュレートフィルタ35に供給された酸素量M_O2_actが第1のPM燃焼許可酸素量M_O2_sb1に到達した場合(S21/Yes)、中立化制御部57は、第3の排気センサ45のセンサ信号に基づいて、パティキュレートフィルタ35から流出する排気の空燃比GPF_Rrが燃料リーン状態であるか否かを判別する(ステップS23)。
【0062】
パティキュレートフィルタ35から流出する排気の空燃比GPF_Rrが燃料リーン状態である場合(S23/Yes)、三元触媒33及びパティキュレートフィルタ35の酸素吸蔵量が過大になっていると考えられる。このため、中立化制御部57は、中立化制御を実行する(ステップS25)。具体的に、中立化制御部57は、三元触媒33及びパティキュレートフィルタ35に未燃燃料が供給されるように、シリンダ11内の混合気の空燃比を燃料リッチ状態にする。中立化制御部57は、ステップS23でパティキュレートフィルタ35から流出する排気の空燃比GPF_Rrが燃料リーン状態でないと判断されるまで中立化制御を継続する。
【0063】
なお、中立化制御の実行中、内燃機関10から出力されるトルクが駆動輪に伝達されないようにクラッチ等が遮断され、あるいは、当該トルクを相殺するような制動力が付与される。
【0064】
パティキュレートフィルタ35から流出する排気の空燃比GPF_Rrが燃料リーン状態でないと判定された場合(S23/No)、三元触媒33及びパティキュレートフィルタ35ともに酸素吸蔵機能が正常に機能する状態に戻ったと考えられる。この場合、燃料リーン制御部55は、PM堆積量推定部59により推定されているPM堆積量PN及びGPF温度推定部58により推定されているパティキュレートフィルタ35の層内温度T_gpfを読み込む(ステップS27)。
【0065】
次いで、燃料リーン制御部55は、第2のPM燃焼許可酸素量M_O2_sb2を算出する(ステップS29)。第2のPM燃焼許可酸素量M_O2_sb2は、パティキュレートフィルタ35に捕集されているPMをすべて燃焼させるために必要な酸素量である。
【0066】
例えば、燃料リーン制御部55は、パティキュレートフィルタ35の層内温度T_gpfがPM燃焼効率最大温度を超えないようにパティキュレートフィルタ35に流入する排気の空燃比が燃料リーン状態にされるものとして、パティキュレートフィルタ35に捕集されているPMを燃焼させるために必要な第2のPM燃焼許可酸素量M_O2_sb2を算出する。第2のPM燃焼許可酸素量M_O2_sb2を算出する際の燃料リーン状態の酸素濃度は、例えば5%に設定される。
【0067】
燃料リーン制御部55は、ステップS29において第2のPM燃焼許可酸素量M_O2_sb2を算出した後、混合気の空燃比を燃料リーン状態とする制御を開始する(ステップS31)。次いで、燃料リーン制御部55は、混合気の空燃比を燃料リーン状態にする制御を開始してからパティキュレートフィルタ35に供給された酸素量M_O2_actが第2のPM燃焼許可酸素量M_O2_sb2に到達したか否かを判別する(ステップS33)。
【0068】
混合気の空燃比を燃料リーン状態にする制御を開始してからパティキュレートフィルタ35に供給された酸素量M_O2_actが第2のPM燃焼許可酸素量M_O2_sb2に到達した場合(S33/Yes)、燃料リーン制御部55は、混合気の空燃比を燃料リーン状態にする制御を終了させる(ステップS35)。この場合、燃料カット制御部53は、燃料カット要求が有るか否かを判別する(ステップS36)。例えば、車両が下り坂を走行中である場合には、引き続き燃料カット要求がなされる。燃料カット要求が有る場合(S36/Yes)、燃料カット制御部53は、燃料カット制御を再開する(ステップS37)。一方、燃料カット要求がない場合(S36/No)、通常運転制御部51が通常運転制御を再開する(ステップS45)。これにより、アクセルペダル開放時の空燃比制御が終了する。
【0069】
なお、ステップS37において燃料カット制御を再開した場合であっても、パティキュレートフィルタ35に捕集されていたPMは燃焼させられているために、パティキュレートフィルタ35の焼損が生じにくくなっている。
【0070】
一方、混合気の空燃比を燃料リーン状態にする制御を開始してからパティキュレートフィルタ35に供給された酸素量M_O2_actが第2のPM燃焼許可酸素量M_O2_sb2に到達していない場合(S33/No)、燃料リーン制御部55は、第3の排気センサ45のセンサ信号に基づいて、パティキュレートフィルタ35から流出する排気の空燃比GPF_Rrが燃料リーン状態であるか否かを判別する(ステップS39)。
【0071】
パティキュレートフィルタ35から流出する排気の空燃比GPF_Rrが燃料リーン状態でない場合(S39/No)、三元触媒33及びパティキュレートフィルタ35の酸素吸蔵量が過大な状態ではないと考えられるために、燃料リーン制御部55は、ステップS33に戻って、酸素量M_O2_actの判別を繰り返す。一方、パティキュレートフィルタ35から流出する排気の空燃比GPF_Rrが燃料リーン状態である場合(S39/Yes)、三元触媒33及びパティキュレートフィルタ35の酸素吸蔵量が過大な状態になっていると考えられるために、中立化制御部57は、中立化制御の実行を開始する(ステップS41)。
【0072】
次いで、中立化制御部57は、第2の排気センサ43のセンサ信号に基づいて、三元触媒33から流出する排気の空燃比が燃料リーン状態であるか否かを判別する(ステップS43)。三元触媒33から流出する排気の空燃比が燃料リーン状態である場合(S43/Yes)、三元触媒33の酸素吸蔵量が過大になっていると考えられるために、中立化制御部57は、中立化制御を継続して、ステップS43の判別を繰り返す。
【0073】
一方、三元触媒33から流出する排気の空燃比が燃料リーン状態でない場合(S43/No)、三元触媒33の酸素吸蔵機能は正常に機能する状態に戻ったと考えられる。この場合、通常運転制御部51が通常運転制御を再開する(ステップS45)。ステップS45において、パティキュレートフィルタ35に堆積したPMを再燃焼させるために燃料カット制御(S31)が行われてもよいが、本実施形態においては、パティキュレートフィルタ35の焼損を防止するために通常運転制御が再開される。これにより、アクセルペダル開放時の空燃比制御が終了する。
【0074】
(3-2.センサ値の推移)
図6は、本実施形態に係る内燃機関の制御装置1による制御処理を実行した場合における、第2の排気センサ43及び第3の排気センサ45のセンサ値の推移を示す。第2の排気センサ43は、三元触媒33の下流側かつパティキュレートフィルタ35の上流側に設けられたセンサであり、第3の排気センサ45は、パティキュレートフィルタ35の下流側に設けられたセンサである。図6に示した例では、第2の排気センサ43及び第3の排気センサ45はいずれも酸素濃度センサであり、燃料リーン状態において下方側に変化する。
【0075】
通常運転制御が実行される間、内燃機関10の排気の目標酸素濃度(目標λ)は1(ストイキ状態)に設定されている。時刻t11において燃料カット制御が開始されると、三元触媒33の酸素吸蔵量が過大になって、第2の排気センサ43が燃料リーン状態を示す。その後、パティキュレートフィルタ35の酸素吸蔵量も過大になることから、第3の排気センサ45も燃料リーン状態を示す。燃料カット制御中は、パティキュレートフィルタ35に捕集されたPMの燃焼温度も速やかに高められ、燃焼効率が上昇する。ただし、三元触媒33及びパティキュレートフィルタ35の酸素吸蔵量が過大になることにより、触媒機能によるNOXの浄化効率は低下する。
【0076】
時刻t12において、燃料カット制御の実行時間が経過すると、中立化制御が開始される。中立化制御の実行時には、内燃機関10の排気の目標酸素濃度(目標λ)は燃料リッチ状態に設定される。これにより、三元触媒33及びパティキュレートフィルタ35に吸蔵されていた酸素が減少し始め、第2の排気センサ43及び第3の排気センサ45のセンサ値は、ストイキ状態を示す。これにより、三元触媒33及びパティキュレートフィルタ35ともに、触媒機能によるNOXの浄化効率が適正な状態に戻される。
【0077】
時刻t13において、燃料リーン制御が開始されると、内燃機関10の排気の目標酸素濃度(目標λ)は、弱リーン状態に設定される。ここで、弱リーン状態とは、パティキュレートフィルタ35に流入する排気の空燃比が燃料リーン状態を示す一方、パティキュレートフィルタ35から流出する排気の空燃比がストイキ状態を示す状態を意味するものとする。したがって、燃料リーン状態が開始されると、第2の排気センサ43のセンサ値は燃料リーン状態を示す一方、第3の排気センサ45のセンサ値はストイキ状態で推移している。燃料リーン制御中においては、酸素吸蔵量が過大にならない程度にパティキュレートフィルタ35に酸素が供給されることから、パティキュレートフィルタ35に捕集されたPMを燃焼させることができるとともに、NOXの浄化効率を著しく低下させることがないようになっている。
【0078】
次いで、パティキュレートフィルタ35の酸素吸蔵量が過大となって、第3の排気センサ45のセンサ値が燃料リーン状態に変化する時刻t14において、NOXの浄化効率の低下を抑制するために、再び中立化制御が開始される。これにより、三元触媒33及びパティキュレートフィルタ35に吸蔵されていた酸素が減少し始め、三元触媒33及びパティキュレートフィルタ35の触媒機能が適正な状態に戻される。その後、通常運転制御に復帰する。
【0079】
以上説明したように、本実施形態に係る内燃機関の制御装置1によれば、車両の減速時にパティキュレートフィルタ35に捕集されたPMを燃焼させてパティキュレートフィルタ35を再生させる際に、燃料カット制御が実行された後、燃料リーン制御が実行される。このため、最初に、パティキュレートフィルタ35におけるPMが効率よく燃焼されるとともに、以降は、パティキュレートフィルタ35の層内温度T_gpfがPM燃焼効率最大温度T_gpf_Aを超えない範囲でPMの燃焼が継続される。したがって、PMの燃焼効率を大きく低下させることなく、パティキュレートフィルタ35を再生することができる。
【0080】
また、本実施形態に係る内燃機関の制御装置1において、燃料リーン制御の実行中、パティキュレートフィルタ35に流入する排気の空燃比が燃料リーン状態であるとともに、パティキュレートフィルタ35から流出する排気の空燃比がストイキ状態となるように、混合気の空燃比が制御される。このため、パティキュレートフィルタ35に供給される酸素によってPMが燃焼される一方、パティキュレートフィルタ35の触媒機能を大きく低下させることを防ぐことができる。
【0081】
また、本実施形態に係る内燃機関の制御装置1において、燃料カット制御の開始後にパティキュレートフィルタ35に供給された酸素量が、パティキュレートフィルタ35におけるPMの堆積量PN及びパティキュレートフィルタ35の相関温度T_gpfに基づいて算出されるPM燃焼許可酸素量に到達したときに燃料カット制御が終了し、燃料リーン制御が開始される。このため、パティキュレートフィルタ35の状態に応じて燃料カット制御が適切な時間実行される。
【0082】
また、本実施形態に係る内燃機関の制御装置1において、燃料カット制御から燃料リーン制御に切り換える際、また、燃料リーン制御から通常運転制御に切り換える際に、一旦中立化制御が実行される。これにより、三元触媒33あるいはパティキュレートフィルタ35の触媒機能が適正な状態に戻され、NOXの浄化効率の低下を抑制することができる。
【0083】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0084】
例えば、上記実施形態では、パティキュレートフィルタ35におけるPMの堆積量PN及びパティキュレートフィルタ35の相関温度T_gpfに基づいて算出されるPM燃焼許可酸素量に基づいて燃料カット制御の終了時期が決定されていたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、燃料カット制御の開始後、推定されるパティキュレートフィルタ35の層内温度T_gpfがあらかじめ設定された閾値に到達したときに、燃料カット制御を終了させて燃料リーン制御に切り換えてもよい。これにより、パティキュレートフィルタ35の層内温度T_gpfが、PM燃焼効率最大温度T_gpf_Aを超えないようにする確実性を向上させることができる。また、燃料カット制御の開始後、あらかじめ設定した所定時間が経過したときに、燃料カット制御を終了させて燃料リーン制御に切り換えてもよい。これにより、電子制御装置50による演算処理の負荷を軽減することができる。
【0085】
また、上記実施形態に係る内燃機関の制御装置1は、パティキュレートフィルタ35の上流側及び下流側にそれぞれ第2の排気センサ43及び第3の排気センサ45を備えている。このため、電子制御装置50は、パティキュレートフィルタ35に流入する排気の酸素濃度及びパティキュレートフィルタ35から流出する排気の酸素濃度に基づいて、パティキュレートフィルタ35におけるPMの燃焼状態を推定する機能を有していてもよい。具体的に、パティキュレートフィルタ35に流入する排気中のNOXの還元反応に用いられる酸素濃度を引いた酸素消費量がPMの燃焼に消費されたものとして、PMの燃焼状態を推定することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 内燃機関の制御装置
10 内燃機関
31 排気通路
33 三元触媒
35 パティキュレートフィルタ
41 第1の排気センサ
43 第2の排気センサ
45 第3の排気センサ
47 排気温度センサ
50 電子制御装置
51 通常運転制御部
53 燃料カット制御部
55 燃料リーン制御部
57 中立化制御部
58 GPF温度推定部
59 PM堆積量推定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6