(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】減速機付液圧モータ
(51)【国際特許分類】
F16H 1/28 20060101AFI20230208BHJP
F16H 57/029 20120101ALI20230208BHJP
F03C 1/26 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
F16H1/28
F16H57/029
F03C1/26
(21)【出願番号】P 2019143324
(22)【出願日】2019-08-02
【審査請求日】2022-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健司
(72)【発明者】
【氏名】桂 浩介
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-13598(JP,A)
【文献】特表2007-522404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/28
F16H 57/029
F03C 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動液の給排によってモータ軸が回転駆動されるモータ部と、
前記モータ軸の回転を減速し出力軸を通じて出力する減速部と、
前記モータ部を収容するモータハウジングと、
端面に開口し前記減速部を収容する収容凹部を有すると共に、当該端面を前記モータハウジングの端面に突き合わせた状態で前記モータハウジングに連結されるギヤハウジングと、
前記モータハウジングの端面と前記ギヤハウジングの端面との間を封止するシール部材と、を備え、
前記減速部は、前記モータ軸の回転を減速して出力する第1遊星歯車機構を有し、
前記第1遊星歯車機構は、
前記モータ軸が連結される第1サンギヤと、
前記第1サンギヤの外側に設けられ前記収容凹部の内周面に取り付けられる第1リングギヤと、
前記第1サンギヤと前記第1リングギヤとの間に設けられ前記第1サンギヤ及び前記第1リングギヤのそれぞれと噛み合う複数の第1プラネタリギヤと、
複数の前記第1プラネタリギヤを互いに連結する第1キャリアと、を有し、
前記第1リングギヤは、前記ギヤハウジングの端面から前記モータハウジングに向けて突出する突出部を有し、
前記シール部材は、前記第1リングギヤの前記突出部によって内周が支持されることを特徴とする減速機付液圧モータ。
【請求項2】
前記第1リングギヤの前記突出部は、前記モータハウジングに形成される嵌合穴に嵌合することを特徴とする請求項1に記載の減速機付液圧モータ。
【請求項3】
前記モータハウジングには、前記第1リングギヤの軸方向において前記第1リングギヤに対向し、前記ギヤハウジングの前記収容凹部からの前記第1リングギヤの抜けを形成する抜け止め部が設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の減速機付液圧モータ。
【請求項4】
前記第1リングギヤは、周方向の一部において軸方向に延びて形成され前記第1リングギヤの外周面から径方向外側に突出する突起部を有し、
前記突起部は、前記ギヤハウジングの前記収容凹部の前記内周面に圧入され、
前記突出部の外周面は、前記突起部が設けられない円筒面であり、
前記シール部材は、前記突出部の前記円筒面によって内周が支持されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の減速機付液圧モータ。
【請求項5】
前記減速部は、前記第1遊星歯車機構の出力を減速して前記出力軸に伝達する第2遊星歯車機構をさらに有し、
前記第2遊星歯車機構は、
前記第1遊星歯車機構の前記第1キャリアの回転に伴い回転する第2サンギヤと、
前記第2サンギヤの外側に設けられ前記収容凹部の前記内周面に取り付けられる第2リングギヤと、
前記第2サンギヤと前記第2リングギヤとの間に設けられ前記第2サンギヤ及び前記第2リングギヤのそれぞれと噛み合う複数の第2プラネタリギヤと、
複数の前記第2プラネタリギヤを互いに連結すると共に前記出力軸が連結される第2キャリアと、を有し、
前記減速部は、前記第1リングギヤの外周面と前記第2リングギヤの外周面とにわたって設けられるピン部材をさらに有し、
前記収容凹部の前記内周面には、前記ピン部材が挿入されるピン溝が形成され、
前記ピン部材によって、前記ギヤハウジングに対する前記第1リングギヤ及び前記第2リングギヤの相対回転が規制されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の減速機付液圧モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速機付液圧モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、減速機が取り付けられる油圧モータが開示されている。この油圧モータは、ケースとプレートにより構成されるハウジングを備え、ケースと減速機との合わせ面にOリングが設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の油圧モータでは、Oリングを収容する環状のシール溝が、減速機の合わせ面に形成される。このように、減速機付液圧モータでは、モータハウジングとギヤハウジングとの合わせ面のいずれかにシール溝を形成し、シール溝にシール部材を設けることがある。
【0005】
しかしながら、このような場合には、モータハウジング又はギヤハウジングにシール溝を形成する分だけ、モータ軸の径方向に対してモータハウジング又はギヤハウジングが大型化し、ひいては減速機付液圧モータが大型化する。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、減速機付液圧モータを小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、減速機付液圧モータであって、作動液の給排によってモータ軸が回転駆動されるモータ部と、モータ軸の回転を減速し出力軸を通じて出力する減速部と、モータ部を収容するモータハウジングと、端面に開口し減速部を収容する収容凹部を有すると共に、当該端面をモータハウジングの端面に突き合わせた状態でモータハウジングに連結されるギヤハウジングと、モータハウジングの端面とギヤハウジングの端面との間を封止するシール部材と、を備え、減速部は、モータ軸の回転を減速して出力する第1遊星歯車機構を有し、第1遊星歯車機構は、モータ軸が連結される第1サンギヤと、第1サンギヤの外側に設けられ収容凹部の内周面に取り付けられる第1リングギヤと、第1サンギヤと第1リングギヤとの間に設けられ第1サンギヤ及び第1リングギヤのそれぞれと噛み合う複数の第1プラネタリギヤと、複数の第1プラネタリギヤを互いに連結する第1キャリアと、を有し、第1リングギヤは、ギヤハウジングの端面からモータハウジングに向けて突出する突出部を有し、シール部材は、第1リングギヤの突出部によって内周が支持されることを特徴とする。
【0008】
この本発明では、第1遊星歯車機構の第1リングギヤによってシール部材の内周が支持されるため、モータハウジング又はギヤハウジングに形成されるシール溝を廃止することができる。
【0009】
また、本発明は、第1リングギヤの突出部が、モータハウジングに形成される嵌合穴に嵌合することを特徴とする。
【0010】
この発明では、第1リングギヤの突出部とモータハウジングの嵌合穴とによってインロー構造が構成され、モータハウジングとギヤハウジングの位置合わせを行うことができる。よって、ギヤハウジングにインロー構造を構成する凸部を形成しなくてもよいため、加工工数を低減して低コスト化できると共に、ギヤハウジングの大型化を抑制することができる。
【0011】
また、本発明は、モータハウジングには、第1リングギヤの軸方向において第1リングギヤに対向し、ギヤハウジングの内周面からの第1リングギヤの抜けを形成する抜け止め部が設けられることを特徴とする。
【0012】
この発明では、モータハウジングの抜け止め部によってギヤハウジングからの第1リングギヤの抜けが防止されるため、抜け止めのためのピンなどの他の部材を必要としない。よって、減速機付液圧モータを低コスト化できる。
【0013】
また、本発明は、第1リングギヤが、周方向の一部において軸方向に延びて形成され第1リングギヤの外周面から径方向外側に突出する突起部を有し、突起部は、ギヤハウジングの収容凹部の内周面に圧入され、突出部の外周面は、突起部が設けられない円筒面であり、シール部材は、突出部の円筒面によって内周が支持されることを特徴とする。
【0014】
この発明では、第1リングギヤの周方向の一部に設けられる突起部がギヤハウジングの収容凹部の内周面に圧入されることで、収容凹部の内周面には突起部の圧入によって溝が形成される。このようにして形成される溝は、第1リングギヤと周方向に係止される。よって、第1リングギヤの突起部とギヤハウジングの収容凹部の内周面に形成される溝とにより、ギヤハウジングに対する第1リングギヤの相対回転が規制される。
【0015】
また、本発明は、減速部が、第1遊星歯車機構の出力を減速して出力軸に伝達する第2遊星歯車機構をさらに有し、第2遊星歯車機構は、第1遊星歯車機構のキャリアの回転に伴い回転する第2サンギヤと、第2サンギヤの外側に設けられ収容凹部の内周面に取り付けられる第2リングギヤと、第2サンギヤと第2リングギヤとの間に設けられ第2サンギヤ及び第2リングギヤのそれぞれと噛み合う複数の第2プラネタリギヤと、複数の第2プラネタリギヤを互いに連結すると共に出力軸が連結される第2キャリアと、を有し、減速部は、第1リングギヤの外周面と第2リングギヤの外周面とにわたって設けられるピン部材をさらに有し、収容凹部の内周面には、ピン部材が挿入されるピン溝が形成され、ピン部材によって、ギヤハウジングに対する第1リングギヤ及び第2リングギヤの相対回転が規制されることを特徴とする。
【0016】
この発明では、ピン部材によって第1リングギヤ及び第2リングギヤの両方の回り止めが行われる。また、減速部が2段の減速機構を有するため、減速比の設計の自由度が向上する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、減速機付液圧モータを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る減速機付液圧モータの断面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る減速機付液圧モータのモータハウジングとギヤハウジングとの取付構造を示す拡大断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るギヤハウジングとギヤハウジングに挿入される第1リングギヤとを第1リングギヤの軸方向からみた模式図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る第1リングギヤの平面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る減速機付液圧モータのモータハウジングとギヤハウジングとの取付構造を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、添付図面を参照しながら本発明の第1実施形態に係る減速機付液圧モータ100について説明する。
【0020】
減速機付液圧モータ100は、
図1に示すように、作動液としての作動油の給排により回転駆動される油圧モータ(液圧モータ)10と、油圧モータ10の回転を減速して出力する減速機30と、を備える。
【0021】
油圧モータ10は、作動油の給排によってモータ軸21が回転するモータ部20と、モータ部20を収容するモータハウジング11と、を有する。
【0022】
モータ部20は、モータ軸21と、モータ軸21に連結されモータ軸21と一体に回転するシリンダブロック22と、を有する。モータ軸21はモータハウジング11に軸受15,16を介して回転自在に支持される。モータハウジング11は、一端面に開口するモータ収容凹部11aが形成されるハウジング本体12と、図示しないボルトを介してハウジング本体12に結合されハウジング本体12の開口部を覆う蓋部材13と、に分割される。モータ軸21の一方の端部は、ハウジング本体12を挿通し、後述するギヤハウジング32に挿入される。
【0023】
シリンダブロック22には、モータ軸21の軸心を中心とする同心円上に配置された複数のシリンダ23がモータ軸21と平行に設けられる。シリンダ23は、シリンダブロック22の一端面において開口し、それぞれのシリンダ23には、シリンダ23内に容積室25を画成するピストン24が往復摺動自在に挿入される。
【0024】
ピストン24の先端には球面座24aを介してシュー26が連結される。蓋部材13には、モータ軸21に対して傾斜する傾斜面13aが形成され、傾斜面13aに斜板27が固定される。シュー26は、蓋部材13に固定された斜板27に面接触する。各ピストン24は、各シュー26が摺接する斜板27の傾転角度に応じたストローク量でシリンダ23内を往復動する。
【0025】
ハウジング本体12の底部とシリンダブロック22との間には、シリンダブロック22の基端面が摺接するバルブプレート28が取り付けられる。バルブプレート28は、油圧源に連通する図示しない供給ポートと、タンク側に連通する図示しない排出ポートと、を有する。油圧源から供給ポートを介して各容積室25に導かれる油圧によって各ピストン24がシリンダ23から突出し、各ピストン24がシュー26を介して斜板27を押すことによってシリンダブロック22が回転する。シリンダブロック22が回転することにより、モータ軸21が回転駆動される。
【0026】
ここで、油圧モータとしては、斜板が、ハウジング本体の底部に固定され、シリンダブロックとハウジング本体の底部との間に設けられる場合がある。言い換えれば、
図1におけるバルブプレート28の位置に斜板が設けられる油圧モータが知られている。このような場合、斜板を交換してピストンのストローク量を変更するには、モータハウジングの蓋部材とシリンダブロックとを取り外し、ハウジング本体の底部に固定された斜板を交換する必要がある。
【0027】
これに対し、本実施形態では、斜板27はハウジング本体12ではなく蓋部材13に固定されているため、蓋部材13と共に斜板27を交換することで、シリンダブロック22を取り外すことなく、ピストン24のストローク量の変更を容易に行うことができる。
【0028】
減速機30は、出力軸31と、モータ部20のモータ軸21の回転を減速し出力軸31を通じて出力する減速部35と、減速部35を収容するギヤハウジング32と、を有する。
【0029】
ギヤハウジング32は、端面32aに開口し減速部35が収容される収容凹部33を有する。ギヤハウジング32は、端面32aをモータハウジング11のハウジング本体12の端面12aに突き合わせた状態でハウジング本体12に連結される。ギヤハウジング32には、他の機器等に取り付けるための取付フランジ34が設けられる。モータハウジング11のハウジング本体12とギヤハウジング32との間には、ハウジング本体12の端面12aとギヤハウジング32の端面32aとの間の隙間を封止するシール部材としてのOリング50が設けられる。モータハウジング11とギヤハウジング32との連結構造については、後に詳細に説明する。
【0030】
出力軸31は、軸受36,37を介してギヤハウジング32に回転自在に支持される。出力軸31は、ギヤハウジング32の底部を挿通し、一端部が外部へ突出する。
【0031】
減速部35は、モータ部20のモータ軸21の回転を減速して出力する第1遊星歯車機構40と、第1遊星歯車機構40の出力を減速して出力軸31に伝達する第2遊星歯車機構45と、を有する。
【0032】
第1遊星歯車機構40は、モータ部20のモータ軸21が連結される第1サンギヤ41と、第1サンギヤ41の外側に設けられギヤハウジング32の収容凹部33の内周面に取り付けられる第1リングギヤ42と、第1サンギヤ41と第1リングギヤ42との間に設けられ第1サンギヤ41及び第1リングギヤ42のそれぞれと噛み合う複数の第1プラネタリギヤ43と、複数の第1プラネタリギヤ43を互いに連結する第1キャリア44と、を有する。
【0033】
第1サンギヤ41は、ギヤハウジング32の収容凹部33に挿入されるモータ軸21の端部とセレーション結合される。これにより、モータ部20のモータ軸21の回転が第1サンギヤ41に伝達される。
【0034】
第1リングギヤ42は、ギヤハウジング32の収容凹部33の内周に挿入される。つまり、第1リングギヤ42は、ギヤハウジング32に直接形成されるものではなく、ギヤハウジング32とは別体の構成である。このため、第1リングギヤ42がギヤハウジング2に直接形成(一体的に形成)される場合と比較して、熱処理等を行いやすく、第1リングギヤ42の強度確保が容易となる。第1リングギヤ42の軸方向の一端部は、ギヤハウジング32の端面32aからモータハウジング11に向けて突出する突出部42aとして構成される。第1リングギヤ42の詳細な構成については、後に説明する。
【0035】
複数の第1プラネタリギヤ43は、第1サンギヤ41の外側に等角度間隔で設けられ、第1サンギヤ41及び第1リングギヤ42のそれぞれと噛み合う。モータ部20のモータ軸21の回転に伴い第1サンギヤ41が回転すると、第1プラネタリギヤ43は第1サンギヤ41の周りを回転する。なお、
図1では、単一の第1プラネタリギヤ43のみを図示し、その他の第1プラネタリギヤ43は図示を省略している。
【0036】
第1キャリア44は、複数の第1プラネタリギヤ43を回動自在に保持する。複数の第1プラネタリギヤ43が第1サンギヤ41の回りを回転するのに伴い、第1キャリア44は、モータ軸21の中心軸を中心として回転する。第1キャリア44の内周には、ギヤ部44aが形成される。
【0037】
第2遊星歯車機構45は、モータ部20のモータ軸21と同軸的に配置される第2サンギヤ46と、第2サンギヤ46の外側に設けられギヤハウジング32の収容凹部33の内周面に取り付けられる第2リングギヤ47と、第2サンギヤ46と第2リングギヤ47との間に設けられ第2サンギヤ46及び第2リングギヤ47のそれぞれと噛み合う複数の第2プラネタリギヤ48と、複数の第2プラネタリギヤ48を互いに連結する第2キャリア49と、を有する。
【0038】
第2サンギヤ46は、第1遊星歯車機構40の第1キャリア44を挿通し、第1キャリア44の内周に形成されたギヤ部44aに噛み合う。これにより、第1遊星歯車機構40の第1キャリア44の回転に伴い、第2サンギヤ46が回転する。
【0039】
第2リングギヤ47は、第1リングギヤ42と同様、ギヤハウジング32の収容凹部33の内周に挿入される。つまり、第2リングギヤ47も、ギヤハウジング32に直接形成されるものではなく、ギヤハウジング32とは別体の構成である。第2リングギヤ47の詳細な構成についても、後に説明する。
【0040】
複数の第2プラネタリギヤ48は、第2サンギヤ46の外側に等角度間隔で設けられ、第2サンギヤ46及び第2リングギヤ47のそれぞれと噛み合う。第2サンギヤ46が回転すると、第2プラネタリギヤ48は第2サンギヤ46の周りを回転する。
【0041】
第2キャリア49は、複数の第2プラネタリギヤ48を回動自在に保持する。複数の第2プラネタリギヤ48が第2サンギヤ46の回りを回転するのに伴い、第2キャリア49は、モータ軸21の中心軸を中心として回転する。
【0042】
出力軸31は、第2キャリア49の内周面にセレーション結合される。これにより、第2キャリア49の回転が出力軸31に伝達される。
【0043】
モータ部20への作動油の給排によってモータ軸21が回転すると、モータ軸21に連結される第1遊星歯車機構40の第1サンギヤ41が回転する。第1サンギヤ41の回転に伴い第1プラネタリギヤ43が第1サンギヤ41の周囲を回転することで、第1キャリア44が回転し、これにより第1キャリア44に噛み合う第2遊星歯車機構45の第2サンギヤ46が回転する。第2サンギヤ46が回転すると、第2サンギヤ46に噛み合う第2プラネタリギヤ48が第2サンギヤ46の周囲を回転し、これに伴い第2キャリア49が回転する。第2キャリア49が回転することによって、第2キャリア49に結合される出力軸31が回転する。このように、モータ部20のモータ軸21の回転が第1遊星歯車機構40及び第2遊星歯車機構45によって減速されて出力軸31に伝達される。
【0044】
次に、第1リングギヤ42と第2リングギヤ47の取付構造及びモータハウジング11とギヤハウジング32の取付構造について説明する。
【0045】
ギヤハウジング32の収容凹部33は、
図1及び
図2に示すように、第1リングギヤ42及び第2リングギヤ47が挿入される挿入穴33aを有する。挿入穴33aは、ギヤハウジング32の端面32aに開口する。また、挿入穴33aの底部には、モータ部20のモータ軸21に対して垂直な円環状の平面である位置決め部33bが設けられる。
【0046】
挿入穴33aには、位置決め部33bから挿入穴33aの開口(ギヤハウジング32の端面32a)に向けて、第2リングギヤ47、第1リングギヤ42の順で挿入される。第2リングギヤ47は、位置決め部33bに当接するように挿入穴33aに挿入される。第1リングギヤ42は、第2リングギヤ47の端面に当接するように挿入穴33aに挿入される。このように第2リングギヤ47及び第1リングギヤ42を挿入穴33aに挿入すると、第2リングギヤ47とは軸方向の反対側における第1リングギヤ42の一端部である突出部42aが、ギヤハウジング32の端面32aから突出する。
【0047】
第1リングギヤ42は、
図3及び
図4に示すように、円筒状の外周面である円筒面42bと、円筒面42bの周方向の一部において第1リングギヤ42の軸方向に延びて形成され円筒面42bから径方向外側に突出する突起部42cと、を有する。
【0048】
図4の破線は、突出部42aを模式的に示したものである。突起部42cは、第1リングギヤ42においてギヤハウジング32の端面32aから突出する突出部42aに達しないように形成される。つまり、突出部42aの外周面は、突起部42cが設けられない円筒面42bである。
【0049】
また、第2リングギヤ47は、第1リングギヤ42と同様の形状であり、円筒面47bと、円筒面47bの周方向の一部において第2リングギヤ47の軸方向に延びて形成され円筒面47bから径方向外側に突出する突起部47cと、を有する。第2リングギヤ47は、第1リングギヤ42と同様の形状であるため、各構成の具体的な図示は省略し、
図3及び
図4においては、第1リングギヤ42の構成に対応する第2リングギヤ47の構成を括弧内の符号で表す。
【0050】
第1リングギヤ42の円筒面42bは、収容凹部33の挿入穴33aの内径D2よりもわずかに小さな直径D1に形成される(
図3参照)。また、突起部42cを含む第1リングギヤ42の径方向の最大幅W(突起部42cの頂点と第1リングギヤ42の中心軸を通る径方向の最大寸法)は、挿入穴33aの内径D2よりも大きく形成される。よって、第1リングギヤ42は、中心軸を挟んで突起部42cと対向する部分を除いた円筒面42bでは挿入穴33aに嵌合され、突起部42c及び中心軸を挟んで突起部42cと対向する円筒面42bの一部では挿入穴33aに圧入される。同様に、第2リングギヤ47は、突起部47cと対向する部分を除いた円筒面47bでは挿入穴33aに嵌合され、突起部47c及び突起部47cと対向する円筒面47bの一部は挿入穴33aに圧入される。
【0051】
第1リングギヤ42及び第2リングギヤ47をギヤハウジング32に取り付ける際には、まず、挿入穴33aの位置決め部33bに当接するまで第2リングギヤ47を挿入穴33aに挿入する。この際、第2リングギヤ47の突起部47c及び突起部47cに対向する円筒面47bの一部は、挿入穴33aに圧入される。
【0052】
第2リングギヤ47の突起部47cを挿入穴33aに圧入すると、挿入穴33aの内壁において突起部47cに接触する部分は、圧入される力によって径方向の外側に凹む。このため、第2リングギヤ47の挿入に伴い、挿入穴33aの内壁には、
図3に示すように、突起部47cに対応した形状の溝33cが軸方向に延びて形成される。このようにして生じた溝33cに突起部47cが周方向に係止されるため、第2リングギヤ47がギヤハウジング32に対して相対回転することが規制される。つまり、第2リングギヤ47の外周に設けられる突起部47cと、当該突起部47cを圧入することで形成される挿入穴33aの溝33cとによって、第2リングギヤ47の回り止めが構成される。
【0053】
次に、第2リングギヤ47を挿入する際に形成された挿入穴33aの内周面の溝33cに第1リングギヤ42の突起部42cを合わせるようにして、第2リングギヤ47に当接するまで第1リングギヤ42を挿入穴33aに挿入する。この際、第1リングギヤ42の突起部42cは、ギヤハウジング32の溝33cに圧入される。第2リングギヤ47に当接するまで第1リングギヤ42を挿入穴33aに挿入すると、第1リングギヤ42の突出部42aがギヤハウジング32の端面32aから突出する(
図1、2参照)。
【0054】
ギヤハウジング32の挿入穴33aの内周面の溝33cに第1リングギヤ42の突起部42cを合わせるようにして第1リングギヤ42を挿入穴33aに挿入することで、第1リングギヤ42の突起部42cとギヤハウジング32の溝33cとが周方向に係止される。これにより、ギヤハウジング32に対する第1リングギヤ42の相対回転が規制される。このように、第1リングギヤ42及び第2リングギヤ47は、突起部42c,47cと挿入穴33aの内周面に形成される溝33cとによって回り止めがされるため、回り止め部材を別途設ける必要がない。これにより、回り止め部材を設けるためのスペースを削減することができ、ギヤハウジング32及びモータハウジング11を小型化することができる。
【0055】
図1及び
図2に示すように、モータハウジング11のハウジング本体12の端面12aには、凹部12bが形成される。凹部12bは、ハウジング本体12の端面12aに向かうにつれて内径が大きくなるテーパ面状(円錐面状)の内周面を有する。また、
図2に示すように、凹部12bの内周面には、第1リングギヤ42の突出部42aが嵌合する嵌合穴12cと、ギヤハウジング32からの第1リングギヤ42の抜けを防止する抜け止め部12dと、が形成される。抜け止め部12dは、嵌合穴12cの底部であって、環状に形成される平面である。
【0056】
ギヤハウジング32の端面32aから突出する第1リングギヤ42の突出部42aがモータハウジング11のハウジング本体12の嵌合穴12cに嵌合することで、モータハウジング11とギヤハウジング32とが径方向に位置決めされる。つまり、第1リングギヤ42と凹部12bの嵌合穴12cとによって、モータハウジング11とギヤハウジング32との位置決めのためのインロー構造が構成される。
【0057】
モータハウジング11とギヤハウジング32とは、モータハウジング11の端面12aと、当該端面12aに対向し収容凹部33が開口するギヤハウジング32の端面32aとを突き合わせた状態で図示しないボルトにより連結される。
【0058】
モータハウジング11の端面12aとギヤハウジング32との端面32aとを突き合わせた状態では、
図2に示すように、第1リングギヤ42と抜け止め部12dとは、接触せずに離間する。よって、本実施形態では、モータハウジング11とギヤハウジング32とを組み付ける際、モータハウジング11の端面12aとギヤハウジング32の端面32aとが接触するよりも先に第1リングギヤ42と抜け止め部12dとが接触することが防止される。これにより、モータハウジング11の端面12aとギヤハウジング32の端面32aとを確実に接触させた状態で、モータハウジング11とギヤハウジング32とを組み付けることができる。
【0059】
Oリング50は、第1リングギヤ42の突出部42aの外周面(円筒面42b)によってその内周が支持される。モータハウジング11とギヤハウジング32とを連結した状態では、Oリング50は、モータハウジング11における凹部12bの円錐面状の内周面とギヤハウジング32の端面32aとによって軸方向に圧縮される。つまり、第1リングギヤ42の突出部42aの外周面(円筒面42b)、ギヤハウジング32の端面32a、モータハウジング11の凹部12bにおける円錐面によってOリング50を収容する空間が形成される。これにより、Oリング50によってモータハウジング11の端面12aとギヤハウジング32の端面32aとの間の隙間が封止され、当該隙間を通じて作動油が外部へ漏れ出すことが抑制される。
【0060】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0061】
減速機付液圧モータ100では、第1リングギヤ42によってOリング50の内周が支持され、第1リングギヤ42の突出部42aの外周面によってOリング50を収容する区間が形成される。このため、ギヤハウジング32の端面32a又はモータハウジング11の端面12aに環状のシール溝を形成する場合と比較して、ギヤハウジング32及びモータハウジング11をモータ軸21の径方向に小型化することができる。つまり、ギヤハウジング32の端面32a又はモータハウジング11の端面12aにシール溝を形成するためのスペースを削減することができるため、ギヤハウジング32やモータハウジング11、ひいては減速機付液圧モータ100を小型化することができる。
【0062】
また、第1リングギヤ42及び第2リングギヤ47は、外周面に形成される突起部42c,47cがギヤハウジング32の挿入穴33aに圧入されることで、ギヤハウジング32に対する相対回転が規制される。第1リングギヤ42及び第2リングギヤ47の回転止めにピンなどの回り止め部材を使用しないため、回り止め部材を設けるスペースを削減でき、減速機付液圧モータ100がより一層小型化される。
【0063】
また、Oリング50の内周を支持する第1リングギヤ42の突出部42aには、突起部42cが形成されておらず、突出部42aの外周面は円筒面42bとして形成される。このように、突起部42cとOリング50との接触が回避されるため、突起部42cによってOリング50が変形することが防止され、ギヤハウジング32の端面32aとモータハウジング11の端面12aとによってOリング50を所望の圧縮量で圧縮させることができる。よって、Oリング50により所望のシール性能を発揮させることができる。
【0064】
(第2実施形態)
次に、
図5を参照して、本発明の第2実施形態について、説明する。以下では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明し、上記第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0065】
第1実施形態と第2実施形態では、ギヤハウジング32に対する第1遊星歯車機構40の第1リングギヤ42と第2遊星歯車機構45の第2リングギヤ47との回り止めの構成が異なる。
【0066】
具体的には、第2実施形態に係る第1リングギヤ142及び第2リングギヤ147は、第1実施形態のような突起部42c,47cを有しておらず、それぞれの円筒面42b,47bがギヤハウジング32の挿入穴33aに嵌合する。一方、第1リングギヤ142の外周面には、第2リングギヤ147に対向する端面に開口し、軸方向に延びる第1溝142aが形成される。また、第2リングギヤ147の外周面には、第1リングギヤ142に対向する端面に開口し、軸方向に延びる第2溝147aが形成される。第1溝142a及び第2溝147aは、それぞれ略半円形断面を有する溝である。
【0067】
ギヤハウジング32の挿入穴33aの内周面には、軸方向に延びるピン溝133cが設けられる。ピン溝133cは、半円形断面を有する溝である。
【0068】
また、減速部35は、第1リングギヤ142の第1溝142a、第2リングギヤ147の第2溝147a、及びギヤハウジング32のピン溝133cにわたって設けられるピン部材60を有する。ピン部材60は、円形断面を有し、第1リングギヤ142の第1溝142a及び第2リングギヤ147の第2溝147aに対して周方向に係止されると共に、ギヤハウジング32のピン溝133cに対して周方向に係止される。
【0069】
これにより、ピン部材60を介して第1リングギヤ142及び第2リングギヤ147がギヤハウジング32に対して周方向に係止され、ギヤハウジング32に対する第1リングギヤ142及び第2リングギヤ147の相対回転が規制される。
【0070】
第1リングギヤ142と第2リングギヤ147をギヤハウジング32に組み付ける際には、まず、第2リングギヤ147を挿入穴33aに嵌合させ、ギヤハウジング32の位置決め部33bに当接するまで挿入穴33a内に挿入する。この際、第2リングギヤ147の第2溝147aとギヤハウジング32のピン溝133cとの位置を合わせるようにして、第2リングギヤ147は挿入穴33aに挿入される。これにより、第2リングギヤ147の第2溝147aとギヤハウジング32のピン溝133cとによって略円形断面を有するピン穴61が形成される。
【0071】
次に、第2リングギヤ147の第2溝147aとギヤハウジング32のピン溝133cとによって形成されたピン穴61にピン部材60を挿入する。なお、ギヤハウジング32のピン溝133cは、ピン穴61へピン部材60を挿入できるように、ギヤハウジング32の端面32aに向けて延びて、充分な軸方向長さをもって形成される。
【0072】
次に、第1リングギヤ142の第1溝142aにピン部材60が挿入されるようにして、第1リングギヤ142を挿入穴33aに挿入する。これにより、第1リングギヤ142と第2リングギヤ147とは、ピン部材60によってギヤハウジング32に対する相対回転が規制されて、ギヤハウジング32に取り付けられる。
【0073】
以上のような第2実施形態においても、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0074】
また、第2実施形態に係る減速機付液圧モータ100では、第1リングギヤ142及び第2リングギヤ147は、それぞれ挿入穴33aに圧入されるものではなく、嵌合するものである。このため、第1リングギヤ142、第2リングギヤ147、及び両者にわたって挿入されるピン部材60は、挿入穴33a内にて軸方向に移動可能であるが、モータハウジング11に抜け止め部12dが設けられるため、挿入穴33aからの第1リングギヤ142の抜けは防止される。
【0075】
次に、上記各実施形態の変形例について説明する。
【0076】
上記第1実施形態では、減速部35は、第1遊星歯車機構40と第2遊星歯車機構45とを有するが、この構成は必須のものではない。減速部35は、第2遊星歯車機構45を有さず、第1遊星歯車機構40のみを有するものでもよい。また、上記第1実施形態では、減速部35が第1遊星歯車機構40及び第2遊星歯車機構45を有する場合において、第1リングギヤ42と第2リングギヤ47が一体に形成されてもよい。言い換えれば、第1遊星歯車機構40及び第2遊星歯車機構45のリングギヤが共通する単一のリングギヤであってもよい。なお、この場合には、共通する単一のリングギヤが、特許請求の範囲における「第1リングギヤ」に相当する。
【0077】
また、上記第1実施形態では、第1リングギヤ42及び第2リングギヤ47は、それぞれ単一の突起部42c,47cを有する。これに対し、第1リングギヤ42及び第2リングギヤ47は、それぞれ周方向に並んで設けられる複数の突起部42c,47cを有していてもよい。また、ギヤハウジング32に対する第1リングギヤ42及び第2リングギヤ47の回り止めが可能であれば、突起部42c,47cは、周方向の一部においても設けられるものに限らず、周方向の全体に設けられるものでもよく、言い換えれば、環状の突起部42c,47cが設けられてもよい。
【0078】
また、上記第2実施形態では、単一のピン部材60が設けられる。これに対し、ピン部材60は、複数設けられてもよく、ピン部材60の数に対応して、第1リングギヤ142の第1溝142a、第2リングギヤ147の第2溝147a、及びギヤハウジング32のピン溝133cを形成すればよい。
【0079】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0080】
第1及び第2実施形態に係る減速機付液圧モータ100は、作動油の給排によってモータ軸21が回転駆動されるモータ部20と、モータ軸21の回転を減速し出力軸31を通じて出力する減速部35と、モータ部20を収容するモータハウジング11と、端面32aに開口し減速部35を収容する収容凹部33を有すると共に、当該端面32aをモータハウジング11の端面12aに突き合わせた状態でモータハウジング11に連結されるギヤハウジング32と、モータハウジング11の端面12aとギヤハウジング32の端面32aとの間を封止するOリング50と、を備え、減速部35は、モータ軸21の回転を減速して出力する第1遊星歯車機構40を有し、第1遊星歯車機構40は、モータ軸21が連結される第1サンギヤ41と、第1サンギヤ41の外側に設けられ収容凹部33の内周面に取り付けられる第1リングギヤ42,142と、第1サンギヤ41と第1リングギヤ42との間に設けられ第1サンギヤ41及び第1リングギヤ42,142のそれぞれと噛み合う複数の第1プラネタリギヤ43と、複数の第1プラネタリギヤ43を互いに連結する第1キャリア44と、を有し、第1リングギヤ42,142は、ギヤハウジング32の端面32aからモータハウジング11に向けて突出する突出部42aを有し、Oリング50は、第1リングギヤ42,142の突出部42aによって内周が支持される。
【0081】
この構成では、第1遊星歯車機構40の第1リングギヤ42によってOリング50の内周が支持されるため、モータハウジング11又はギヤハウジング32に形成されるシール溝を廃止することができる。したがって、減速機付液圧モータ100を小型化することができる。
【0082】
また、第1及び第2実施形態に係る減速機付液圧モータ100では、第1リングギヤ42,142の突出部42aは、モータハウジング11に形成される嵌合穴12cに嵌合する。
【0083】
この構成では、第1リングギヤ42の突出部42aとモータハウジング11の嵌合穴12cとによってインロー構造が構成され、モータハウジング11とギヤハウジング32の位置合わせを行うことができる。よって、ギヤハウジング32にインロー構造を構成する凸部を形成しなくてもよいため、加工工数を低減して低コスト化できると共に、ギヤハウジング32の大型化を抑制することができる。
【0084】
また、第1及び第2実施形態に係る減速機付液圧モータ100では、モータハウジング11には、第1リングギヤ42,142の軸方向において第1リングギヤ42,142に対向し、ギヤハウジング32の内周面からの第1リングギヤ42,142の抜けを形成する抜け止め部12dが設けられる。
【0085】
この構成では、モータハウジング11の抜け止め部12dによってギヤハウジング32からの第1リングギヤ42,142の抜けが防止されるため、抜け止めのためのピンなどの他の部材を必要としない。よって、減速機付液圧モータ100を低コスト化できる。
【0086】
また、第1実施形態にかかる減速機付液圧モータ100では、第1リングギヤ42は、周方向の一部において軸方向に延びて形成され第1リングギヤ42の外周面から径方向外側に突出する突起部42cを有し、突起部42cは、ギヤハウジング32の収容凹部33の内周面に圧入され、突出部42aの外周面は、突起部42cが設けられない円筒面42bであり、Oリング50は、突出部42aの円筒面42bによって内周が支持される。
【0087】
この構成では、第1リングギヤ42の周方向の一部に設けられる突起部42cがギヤハウジング32の収容凹部33の内周面に圧入されることで、収容凹部33の内周面には突起部42cの圧入によって溝33cが形成される。このようにして形成される溝33cは、第1リングギヤ42と周方向に係止される。よって、第1リングギヤ42の突起部42cとギヤハウジング32の収容凹部33の内周面に形成される溝33cとにより、ギヤハウジング32に対する第1リングギヤ42の相対回転が規制される。
【0088】
また、第2実施形態に係る減速機付液圧モータ100では、減速部35は、第1遊星歯車機構40の出力を減速して出力軸31に伝達する第2遊星歯車機構45をさらに有し、第2遊星歯車機構45は、第1遊星歯車機構40の第1キャリア44の回転に伴い回転する第2サンギヤ46と、第2サンギヤ46の外側に設けられ収容凹部33の内周面に取り付けられる第2リングギヤ147と、第2サンギヤ46と第2リングギヤ147との間に設けられ第2サンギヤ46及び第2リングギヤ47のそれぞれと噛み合う複数の第2プラネタリギヤ48と、複数の第2プラネタリギヤ48を互いに連結すると共に出力軸31が連結される第2キャリア49と、を有し、減速部35は、第1リングギヤ142の外周面と第2リングギヤ147の外周面とにわたって設けられるピン部材60をさらに有し、収容凹部33の内周面には、ピン部材60が挿入されるピン溝133cが形成され、ピン部材60によって、ギヤハウジング32に対する第1リングギヤ142及び第2リングギヤ147の相対回転が規制される。
【0089】
この構成では、ピン部材60によって第1リングギヤ142及び第2リングギヤ147の両方の回り止めが行われる。また、減速部35が2段の減速機構を有するため、減速比の設計の自由度が向上する。
【0090】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0091】
11…モータハウジング、12a…端面、12c…嵌合穴、12d…抜け止め部、20…モータ部、21…モータ軸、31…出力軸、32…ギヤハウジング、32a…端面、33…収容凹部、33c…溝、35…減速部、40…第1遊星歯車機構、41…第1サンギヤ、42,142…第1リングギヤ、42a…突出部、42b…円筒面、42c…突起部、43…第1プラネタリギヤ、44…第1キャリア、45…第2遊星歯車機構、46…第2サンギヤ、47,147…第2リングギヤ、47b…円筒面、47c…突起部、48…第2プラネタリギヤ、49…第2キャリア、50…Oリング(シール部材)、60…ピン部材、133c…ピン溝、100…減速機付液圧モータ