IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝メモリ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-研磨装置およびリテーナリング 図1
  • 特許-研磨装置およびリテーナリング 図2
  • 特許-研磨装置およびリテーナリング 図3
  • 特許-研磨装置およびリテーナリング 図4
  • 特許-研磨装置およびリテーナリング 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】研磨装置およびリテーナリング
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/32 20120101AFI20230208BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
B24B37/32 Z
H01L21/304 622G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019146541
(22)【出願日】2019-08-08
(65)【公開番号】P2021024064
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】川崎 貴彦
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-146412(JP,A)
【文献】特開2011-224731(JP,A)
【文献】特表2006-502016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/32
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨対象の基板を囲むリテーナリングを有する研磨ヘッドと、
前記研磨ヘッドに対向する研磨パッドと、を備え、
前記リテーナリングは第1材料と第2材料を含み、
前記第1材料は、芳香族ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、およびポリベンゾイミダゾールの少なくともいずれか一つを含み、
前記第2材料は、フッ素樹脂を含み、
前記第1材料に対する前記第2材料の重量パーセントは、1~10%である、研磨装置。
【請求項2】
前記フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)、テトラフルオロエチレンーパーフルオロジオキソールコポリマー(TFE/PDD)、ポリビニルフルオライド(PVF)の少なくともいずれか一つを含む、請求項1に記載の研磨装置。
【請求項3】
研磨対象の基板を保持する研磨ヘッドに設けられたリテーナリングであって、
前記リテーナリングは第1材料と第2材料を含み、
前記第1材料は、芳香族ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、およびポリベンゾイミダゾールの少なくともいずれか一つを含み、
前記第2材料は、フッ素樹脂を含み、
前記第1材料に対する前記第2材料の重量パーセントは、1~10%である、リテーナリング。
【請求項4】
前記フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)、テトラフルオロエチレンーパーフルオロジオキソールコポリマー(TFE/PDD)、ポリビニルフルオライド(PVF)の少なくともいずれか一つを含む、請求項3に記載のリテーナリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、研磨装置およびリテーナリングに関する。
【背景技術】
【0002】
化学機械研磨(CMP)に用いられる研磨装置では、一般的に、基板(ウェハ)が研磨ヘッドに保持された状態で研磨パッドに押し付けられる。続いて、研磨ヘッドおよび研磨パッドが回転すると、基板表面に形成された膜が平坦化される。
【0003】
研磨ヘッドには、一般的に、基板を周方向に囲むリテーナリングが設けられている。このリテーナリングによって、基板が研磨中に研磨ヘッドから飛び出すことを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-121411号公報
【文献】特開2002-79461号公報
【文献】特開2002-355753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リテーナリングは、基板と同様に研磨パッドに押し付けられる。そのため、ウェハ基板の研磨に伴い、リテーナリングも摩耗する。リテーナリングは、一般的に樹脂製であるため、摩耗の進行が速い。その結果、リテーナリングの交換頻度が多くなる。
【0006】
本発明の実施形態は、リテーナリングの摩耗を抑制する研磨装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る研磨装置は、研磨対象の基板を囲むリテーナリングを有する研磨ヘッドと、研磨ヘッドに対向する研磨パッドと、を備える。リテーナリングは第1材料と第2材料を含む。第1材料は、芳香族ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、およびポリベンゾイミダゾールの少なくともいずれか一つを含む。第2材料は、フッ素樹脂を含む。第1材料に対する第2材料の重量パーセントは、1~10%である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る研磨装置の概略的な構成を示す模式図である。
図2】研磨ヘッドの断面図である。
図3】リテーナリングを底面側から見た図である。
図4】リテーナリングの材料と摩耗量との関係を示すグラフである。
図5】リテーナリングの材料毎に基板の研磨レートおよび均一性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0010】
図1は、一実施形態に係る研磨装置の概略的な構成を示す模式図である。図1に示す研磨装置1は、研磨ヘッド10と、研磨パッド20と、ノズル30と、を備える。この研磨装置1は、ウェハ状態の基板100を化学機械研磨する工程で用いられる。
【0011】
図2は、研磨ヘッド10の断面図である。図2に示すように、研磨ヘッド10は、支持体11と、チャッキングプレート12と、弾性部材13と、リテーナリング14と、を有する。
【0012】
支持体11は、例えば樹脂製であり、その内部には配管111が形成されている。配管111は分岐しており、分岐路の一部は、チャッキングプレート12まで延びている。チャッキングプレート12は、例えばセラミック製の円板であり、支持体11の下部に設けられている。弾性部材13は、例えばゴムであり、チャッキングプレート12の下部に設けられている。弾性部材13は、配管111の分岐路に対応して設けられた板状部材131によって、複数の領域に区切られている。
【0013】
研磨ヘッド10では、配管111に流入した空気200による圧力が、弾性部材13を介して基板100に加えられるため、基板100は研磨パッド20に押し付けられる。本実施形態では、配管111が分岐し、弾性部材13が板状部材131で仕切られているので、例えば基板100の中央部および端部に加える力をそれぞれ調整することができる。
【0014】
リテーナリング14は、図2に示すように、基板100、チャッキングプレート12、および弾性部材13を囲むように、支持体11の下部に設けられている。リテーナリング14は、配管111に導入された空気200によって、研磨パッド20に押し付けられる。
【0015】
図3は、リテーナリング14を底面側から見た図である。図3に示すように、リテーナリング14の底面、換言すると研磨パッド20との接触面には、溝141が放射状に形成されている。溝141によって、リテーナリング14が研磨パッド20に押し付けられたときに、両者の間に隙間が形成される。この隙間を通じて、スラリー300がリテーナリング14内に流出入する。
【0016】
図1に示すように、研磨パッド20は、研磨ヘッド10に対向する位置に設置されている。また、研磨パッド20の平面積は、基板100の平面積よりも広い。研磨パッド20の表面には、砥粒を含有したスラリー300が供給される。
【0017】
ノズル30は、研磨パッド20の上方からスラリー300を放出する。スラリー300は、例えばセリアスラリーである。
【0018】
以下、上述した研磨装置1を用いて基板100上に形成された膜を化学研磨する工程について説明する。まず、ノズル30がスラリー300を研磨パッド20の表面に向けて放出するとともに、研磨ヘッド10が基板100に形成された膜を研磨パッド20に押し付ける。
【0019】
続いて、研磨ヘッド10および研磨パッド20が同じ方向に同時に回転する。その結果、基板100の表面にパターニングされている溝に埋め込まれていた膜、例えば絶縁膜、金属膜、または結晶珪素膜などが平坦化される。
【0020】
なお、研磨ヘッド10および研磨パッド20の回転方向および回転速度は、研磨対象の膜に応じて適宜設定される。すなわち、回転方向は互いに同じであってもよいし反対であってもよい。また、回転速度も互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0021】
本実施形態では、リテーナリング14が、研磨ヘッド10に保持された基板100の外周に沿って設けられている。そのため、研磨ヘッド10の回転に伴って、基板100を研磨ヘッド10の外側へ動かす力が生じても、基板100の動きは、リテーナリング14によって阻止される。これにより、基板100が研磨ヘッド10から飛び出すことを防止できる。
【0022】
その一方で、リテーナリング14は、基板100と同様に研磨パッド20に押し付けられているので、基板100の研磨に伴って摩耗する。
【0023】
本実施形態では、基板100の研磨に伴うリテーナリング14の摩耗を抑制するため、リテーナリング14には、フッ素樹脂を含んだ第1材料を用いる。
第1材料は、例えば芳香族ポリアミド(PPA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、およびポリベンゾイミダゾール(PBI)の少なくともいずれか一つを含む。すなわち、本実施形態のリテーナリング14は、上記に例示した複数種の材料を含んでいてもよい。
【0024】
フッ素樹脂は、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)、テトラフルオロエチレンーパーフルオロジオキソールコポリマー(TFE/PDD)、ポリビニルフルオライド(PVF)の少なくともいずれか一つを含む。すなわち、本実施形態のリテーナリング14は、上記に例示した複数種のフッ素樹脂を含んでいてもよい。
【0025】
フッ素樹脂は、その表面の摩擦係数が低いことが知られており、リテーナリング14の材料として用いることで、リテーナリングと研磨パッドとの間の摩擦係数を減らし、リテーナリングの摩耗を抑制できると考えられる。以下、図4および図5を参照して、リテーナリング14に添加されるフッ素樹脂の適量範囲について説明する。
【0026】
図4は、リテーナリングの材料と摩耗量との関係を示すグラフである。図4では、横軸は、フッ素樹脂の一例であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の添加量がそれぞれ異なるリテーナリング14の材料を示す。縦軸は、各材料の、1時間当たりの摩耗量(μm)を示す。
【0027】
図4に示すように、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂に代表される熱可塑性エンジニアリングプラスチック材料にPTFEが添加されていないと、リテーナリング14の摩耗量が多い。この場合、リテーナリング14の寿命が短くなる。
【0028】
一方、PEEK樹脂の重量に対するPTFEの重量を示す重量パーセントが1~20%である場合、図4に示すように、リテーナリング14の摩耗量が低減する。これは、PTFEを添加することによって、リテーナリング14と研磨パッド20との間で生じる摩擦力が緩和されるからである。
【0029】
図5は、リテーナリングの材料毎に基板の研磨レートおよび均一性を示すグラフである。図5では、横軸は、リテーナリング14の材料を示す。左側の縦軸は、基板100の中心部における1分当たりの研磨量(nm)である研磨レートを示す。右側の縦軸は、基板100の面内における研磨のばらつきである均一性(%)を示す。研磨レートおよび均一性は、基板100の処理枚数が初期(1枚)、50枚、および100枚ごとに示されている。
【0030】
図5に示すように、PEEK樹脂に対するPTFEの重量パーセントが1~10%の範囲内である場合、基板100の研磨レートおよび均一性は、PTFEを添加していないPPSと同等に高い。一方、PTFEの重量パーセントが20%を超えると、基板100の処理枚数の増加に伴って研磨レートが下がり、均一性が悪化する。これは、リテーナリング14に添加されたPTFEを含む屑が、研磨パッド20や砥粒に付着して基板100の研磨を妨げるからである。
【0031】
したがって、基板100の研磨レートおよび均一性を考慮すると、リテーナリング14に添加するフッ素樹脂の重量パーセントは、1~10%の範囲内であることが望ましい。
【0032】
以上説明した本実施形態によれば、リテーナリング14の材料にフッ素樹脂を添加することによって、リテーナリング14と研磨パッド20との間で生じる摩擦力が緩和される。これにより、リテーナリング14の寿命が長くなるので、リテーナリング14の交換頻度を低減することができる。また、第1材料である芳香族ポリアミド(PPA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、およびポリベンゾイミダゾール(PBI)の合計重量に対するフッ素樹脂の合計重量を示す重量パーセントが1~10%の範囲内にすることによって、基板100の研磨レートおよび均一性も確保することができる。
【0033】
なお、本実施形態において、リテーナリング14は、第1材料およびフッ素樹脂を含むように説明したが、第1材料およびフッ素樹脂以外の材料が含まれていてもよい。その場合であっても、第1材料の合計重量に対するフッ素樹脂の合計重量は1~10重量パーセントとなるように設定される。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0035】
1:研磨装置、10:研磨ヘッド、14:リテーナリング、20:研磨パッド
図1
図2
図3
図4
図5