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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】食品分割装置
(51)【国際特許分類】
   B26D 3/24 20060101AFI20230208BHJP
   B26D 3/26 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
B26D3/24 Z
B26D3/26 605C
B26D3/26 605A
B26D3/26 605E
B26D3/26 605Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019152073
(22)【出願日】2019-08-22
(65)【公開番号】P2021030353
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000141509
【氏名又は名称】株式会社紀文食品
(74)【代理人】
【識別番号】100101432
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 太
(72)【発明者】
【氏名】増田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】阿部 慎一
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3019636(JP,U)
【文献】特開2003-180319(JP,A)
【文献】実開昭60-146696(JP,U)
【文献】特開2009-248260(JP,A)
【文献】特開2016-196068(JP,A)
【文献】特開2000-201840(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/193983(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 3/24
B26D 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割対象の食品が一端側から他端側へ送り出されながら内部の薄板状の縦刃と横刃とによって縦分割および横分割される一つ以上の略箱状のシュートと、該シュート内を一端側の入口開口から他端側の出口開口へ前記食品を送り出す押し出し装置とを備えた食品分割装置であって、
前記シュートは、
下側部材と、該下側部材を前記食品がその長手方向が前記送り出し方向に対して直交状態で載置される一端部の載置領域を除いて覆う上側部材とを備え、
シュート内部に、
両側面が前記送り出し方向に沿う向きでシュート内部空間の全高さ領域にわたって取り外し可能に立設され、前記食品をその長手方向の長尺に対して分断して複数個の短尺部分とする少なくとも一枚の縦刃と、
刃先が前記送り出し方向と直交する水平方向に対して予め定められた角度を持った状態でシュート内部空間の全横幅領域にわたって取り外し可能に横架され、前記食品を水平方向に切断して上下方向に分断する少なくとも一枚の横刃と、
前記縦刃の下流から前記出口開口にわたって、前記横刃が通過可能にシュート内部空間を複数のレーンに仕切る少なくとも一枚のガイド片と、を備え、
前記押し出し装置は、
各シュート内で一端側から他端側への往動と復動とが繰り返されて、前記載置領域に順次載置される前記食品を、連続的に前記入口開口へ押し入れて前記出口開口から押し出すまでシュート内を送るプッシャーと、プッシャーを往復動させる駆動シリンダ装置とを備え、
前記プッシャーは、互いに、その往復動の際に前記縦刃と前記横刃と前記ガイド片とが通過可能な間隔を持って配置され、縦分割および横分割された各食品部分を同時に押し出す複数本のプッシャーアームの束から構成されていることを特徴とする食品分割装置。
【請求項2】
前記横刃は、前記縦刃の下流側に配置され、前記縦刃を通過して分断された前記食品の各短尺部分をさらに上下方向の部分に分断するものであることを特徴とする請求項1に記載の食品分割装置。
【請求項3】
前記横刃の刃先の前記角度が、20°~40°であることを特徴とする請求項1又は2に記載の食品分割装置。
【請求項4】
前記縦刃は、その刃先が垂直方向より前記送り出し方向である後方へ、あるいは前方へ傾斜状態で設置されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の食品分割装置。
【請求項5】
前記下側部材および前記上側部材のうちの少なくとも一方は、複数のレーン部材が互いに間隙を持って連結されたものであり、前記縦刃は、前記間隙を通してシュートの内側へ突出させた状態で前記下側部材の下方および/または前記上側部材の上方に交換可能に装着されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の食品分割装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ちくわなどの略柱状の加工食品や大根、にんじん等の略円柱状の食材などを、食べやすい大きさあるいは更に加工、調理するための複数個の小口に分割することができる装置に関し、詳しくは、縦方向と横方向の分割を一挙に行える食品分割装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種加工食品の製造工程では、食品を複数個の小口サイズに分割する工程が含まれることが多く、効率的に大量に分割処理するための様々装置が考えられている。例えば、特許文献1には、寒天ゼリー、ペクチンゼリー等の板状のゲル状物を切断する装置が開示されている。このゲル状物切断装置は、ゲル状物を搬送するシュートに連設され、シュート表面より低い位置に刃先を設けた格子状の切断刃の上方にプッシャーを設けたものであり、このプッシャーはその下面がシュートの表面と同じ高さまで下降して停止する構成となっている。この構成では、先に切断刃に係止されているゲル状物の上に別の板状ゲル状物が搬送され、これをプッシャーでシュート表面の高さまで下方へ押すと、先のゲル状物が切断刃からダイス状に分割されながら押し出され、上のゲル状物が切断刃に係止された状態で留まるものである。
【0003】
また、特許文献2には、柱状食品の分割装置として、桟付ベルトコンベア上に整列させた柱状食品を、移動途中で横割回転カッターによって横に分割し、横分割した食品を、筒体に入れて縦に落下する中で縦割回転カッターによって縦に分割する構成を備えたものが開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、野菜の千切り機として、供給室と切断室との境界にスライス刃が取り付けられ、スライスシリンダで野菜を供給室からスライス刃で長手方方向に沿って切断しながら切断室へ搬送することで縦に分割し、その後切断室で切断シリンダによる切断刃の往復運動でチップ状にして排出する構成のものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭63-119668号公報
【文献】特開平10-175196号公報
【文献】特開2003-117889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の切断装置では、上に重なる板状のゲル状物を介して押されることで、格子状切断刃に係止されているゲル状物が切断刃を通過して分割が完了するものであるが、プッシャーが直接押し出すことができないため、この構成は対象がゲル状の柔らかいものでなければ、例えば、硬いものや弾性の強い対象物は良好に切断できなくなると思われる。そして、板状以外の食品、特に長尺状、柱状の食品の分割には対応できない。
【0007】
また、特許文献2の分割装置では、円柱(円筒)状の食品の切断に対応しているが、横分割と縦分割とをそれぞれ別の搬送手段での搬送中に行う二段階方式であり、また回転カッターによる切断であるため、それぞれの異なる搬送機構と各回転カッターを回転させるための駆動機構も必要となるため、装置構成が大型化し、効率的とは言えない。
【0008】
さらに、特許文献3の装置も、略円柱状の食品の切断に対応しているが、縦方向の切断と横方向の切断とをそれぞれ別の部屋で行う二段階方式であり、また一方の切断刃は往復移動のための駆動機構としてのシリンダも必要となっており、空間的にも工程的にも煩雑な構成と言える。
【0009】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、従来よりコンパクトな装置構成でありながら、比較的硬い食品や弾力のある食品など様々な質感の略柱状の食品に対して一挙に縦分割と横分割とを良好に行える食品分割装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明に係る食品分割装置は、分割対象の食品が一端側から他端側へ送り出されながら内部の薄板状の縦刃と横刃とによって縦分割および横分割される一つ以上の略箱状のシュートと、該シュート内を一端側の入口開口から他端側の出口開口へ前記食品を送り出す押し出し装置とを備えた食品分割装置であって、
前記シュートは、
下側部材と、該下側部材を前記食品がその長手方向が前記送り出し方向に対して直交状態で載置される一端部の載置領域を除いて覆う上側部材とを備え、
シュート内部に、
両側面が前記送り出し方向に沿う向きでシュート内部空間の全高さ領域にわたって取り外し可能に立設され、前記食品をその長手方向の長尺に対して分断して複数個の短尺部分とする少なくとも一枚の縦刃と、
刃先が前記送り出し方向と直交する水平方向に対して予め定められた角度を持った状態でシュート内部空間の全横幅領域にわたって取り外し可能に横架され、前記食品を水平方向に切断して上下方向に分断する少なくとも一枚の横刃と、
前記縦刃の下流から前記出口開口にわたって、前記横刃が通過可能にシュート内部空間を複数のレーンに仕切る少なくとも一枚のガイド片と、を備え、
前記押し出し装置は、
各シュート内で一端側から他端側への往動と復動とが繰り返されて、前記載置領域に順次載置される前記食品を、連続的に前記入口開口へ押し入れて前記出口開口から押し出すまでシュート内を送るプッシャーと、プッシャーを往復動させる駆動シリンダ装置とを備え、
前記プッシャーは、互いに、その往復動の際に前記縦刃と前記横刃と前記ガイド片とが通過可能な間隔を持って配置され、縦分割および横分割された各食品部分を同時に押し出す複数本のプッシャーアームの束から構成されているものである。
【0011】
請求項2に記載の発明に係る食品分割装置は、請求項1に記載の食品分割装置において、前記横刃は、前記縦刃の下流側に配置され、前記縦刃を通過して分断された前記食品の各短尺部分をそれぞれ上下方向の部分に分割するものである。
【0012】
請求項3に記載の発明に係る食品分割装置は、請求項1又は2に記載の食品分割装置において、前記横刃の刃先の前記角度が、20°~40°であることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明に係る食品分割装置は、請求項1~3のいずれか1項に記載の食品分割装置において、前記縦刃は、その刃先が垂直方向より前記送り出し方向である後方へ、あるいは前方へ傾斜状態で設置されているものである。
【0014】
請求項5に記載の発明に係る食品分割装置は、請求項1~4のいずれか1項に記載の食品分割装置において、前記下側部材および前記上側部材のうちの少なくとも一方は、複数のレーン部材が互いに間隙を持って連結されたものであり、前記縦刃は、前記間隙を通してシュートの内側へ突出させた状態で前記下側部材の下方および/または前記上側部材の上方に交換可能に装着されているものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の食品分割装置によれば、分割対象の食品をシュートの入口開口から出口開口まで押して送り出すだけで、シュート内の縦刃と横刃とによって一挙に且つ良好に縦横分割することができるため、従来の二段階方式に比べて格段に手間と装置構成とを簡略化でき、高効率で食品の大量分割処理を行えるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施例としての食品分割装置を、シュート内透過状態で示した概略構成図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図2図1のシュート内の構成を上側部材を除いた状態で示す部分斜視図である。
図3図1のシュートの出口開口から見た概略正面図である。
図4図1のプッシャーの正面側からみた概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明による食品分割装置においては、分割対象の食品が、一端側から他端側へ送り出されながら内部の薄板状の縦刃と横刃とによって縦分割および横分割される一つ以上の略箱状のシュートと、該シュート内を一端側の入口開口から他端側の出口開口へ前記食品を送り出す押し出し装置とを備え、シュートは、下側部材と、該下側部材を前記食品がその長手方向が送り出し方向に対して直交状態で載置される一端部の載置領域を除いて覆う上側部材とを備えたものである。そして、シュート内部には、両側面が前記送り出し方向に沿う向きでシュート内部空間の全高さ領域にわたって取り外し可能に立設され、食品をその長手方向の長尺に対して分断して複数個の短尺部分とする少なくとも一枚の縦刃と、刃先が送り出し方向と直交する水平方向に対して予め定められた角度を持った状態でシュート内部空間の全横幅領域にわたって取り外し可能に横架され、前記食品を水平方向に切断して上下方向に分断する少なくとも一枚の横刃と、前記縦刃の下流から前記出口開口にわたって、前記横刃が通過可能にシュート内部空間を複数のレーンに仕切る少なくとも一枚のガイド片と、を備えたものである。
【0018】
以上の構成において、略柱状の食品がシュート内を入口開口から出口開口へ向けて送り出されるだけで、同一搬送経路上の縦刃と横刃とによって所定の個数の小口に分割された状態で出口開口から排出される。従って、本発明の食品分割装置によれば、従来の二段階方式に比べて装置設計も手間も大幅に簡略化された構成でありながら、一挙に食品の縦分割と横分割とが行える。
【0019】
また、本発明では、押し出し装置は、各シュート内で一端側から他端側への往動と復動とが繰り返されて、前記載置領域に順次載置される食品を連続的に入口開口へ押し入れて出口開口から押し出すまでシュート内を送るプッシャーと、プッシャーを往復動させる駆動シリンダ装置とを備えたものであり、プッシャーが、互いに、その往復動の際に縦刃と横刃とガイド片とが通過可能な間隔を持って配置され、縦分割および横分割された各食品部分を同時に押し出す複数本のプッシャーアームの束から構成されている。
【0020】
従って、プッシャーの往復動のタイミングに応じた所定の時間間隔で、略柱状の食品を連続的に載置領域に載置すれば、該プッシャーの往復動に伴って一挙に且つ連続的に食品に対する縦横分割が進められ、大量の食品分割処理が高効率で行える。また、プッシャーを構成する複数本のプッシャーアームが、略柱状食品の縦横分割部分に対応する各食品部位を、縦刃と横刃およびガイド片に干渉することなく入口開口から出口開口まで良好に押して送り出すため、その間、食品は各縦刃および横刃に押し当てられて良好に縦横分割されながら、ガイド片で仕切られた各レーンに沿って、各ガイド片と下側部材および上側部材とで囲まれたトンネル状の空間内を上下左右方向に分散することなくそれぞれ真っ直ぐに進んだ後にシュート外へ排出される。
【0021】
また、本発明におけるシュート内部の横刃は、その刃先が食品の送り出し方向に直交する水平方向に対して傾斜して設置されており、分割対象の食品が比較的硬いものであっても、弾力の強いものであっても、斜めに切り込まれていくため、切り口は潰れ難くきれいな切断面となり、後の加工食品の品質を損ねることがない。この傾斜角度は、それぞれ、対象食品の性質に応じて適宜設定すれば良いが、横刃の場合、刃先が送り出し方向と直交する方向に対して20°~40°の角度範囲とすることが好適である。20°より小さい傾斜角度では、斜め切り込み効果が不十分で潰れが生じる恐れがあり、40°を超える大きな傾斜角度では、切断に必要な送り出し距離が長くなりすぎてシュートを含む装置構成が無駄に大型化してしまう。
【0022】
また、縦刃に関しても、その刃先が食品に対して斜めに切り込まれる状態が切り口が潰れ難くきれいな切断面となる。即ち、縦刃は、刃先が、垂直方向に対して送り出し方向である後方へ、あるいは前方へ傾斜状態とすればよい。この縦刃の垂直方向に対する傾斜角度も、斜めの切り込み効果が期待できると共に設計上実際的な範囲である20°~40°とするのが望ましい。
【0023】
なお、シュート内の縦刃と横刃との位置は、どちらが上流でも設置可能であるが、縦刃を上流側に設置し、先に縦刃で短尺部分に分断してから横刃で水平方向に切断して上下部に二分する構成とすることが好ましい。これは、先に横刃で上下に二分すると、上部分と下部分とに互いに水平方向でズレが生じる場合があり、この上下部分がズレた状態で縦分割が行われると、きれいな切断ができなくなる恐れがあるためである。
【0024】
縦刃の枚数は、略柱状食品の長手方向の分割数に応じて適宜決定される。例えば、1/2の長さに二分割する場合は、一枚の縦刃を、シュート内部空間の横幅領域が二等分される中央位置に立設する。この場合、縦刃の下流側に配置されるガイド片も一枚であり、シュート内部空間を二つのレーンに仕切るものとなる。また、食品を三等分の短尺部分に分断する場合には、二枚の縦刃を、シュート内部空間の横幅領域が三等分される二つの位置に互いに平行な状態で立設する。この場合は、二枚のガイド片が各縦刃の下流側に配置され、シュート内部空間を三つのレーンに仕切る構成となる。さらに多くの短尺部分に分割する場合には、それに応じた枚数の縦刃を、シュート内部空間の横幅領域がその分割数で等分される各位置に、互いに等間隔で平行に立設する構成とする。
【0025】
また、横刃の枚数も、一枚のみで食品を上下方向に二分割する構成に限らない。柱状食品の径寸法などによっては、上下方向に三分割以上に分断することが望まれる場合がある。この場合、二枚以上の対応枚数の横刃を上下方向に等間隔で配置する構成とする。横刃の取り付けは、例えば、柱状食品の中央高さ位置で上下部に二分する場合には、一枚の横刃を、下側部材と上側部材との間に挟んだ状態で横刃の両端を固定するだけで簡便に設置できる。また、上下方向に三分割する場合には、シュート両側壁の上下二個所で二枚の横刃を取り付ければよい。この場合、シュートの両側壁を構成する下側部材の両側立ち上がり部と、上側部材の両側下垂部とに、それぞれ互いに斜めに対向する位置で一対の貫通孔を設けておき、それぞれ一方の貫通孔から他方の貫通孔にわたって横刃を横架させた状態で両端を固定すれば、二枚の横刃をシュート内部の上下位置で全横幅領域にわたって前記傾斜角度で設置できる。
【0026】
なお、縦刃をシュート内部空間の全高さ領域にわたって立設させるための取り付けは、縦刃を下側部材から上方に突設させるか、あるいは上側部材から下方へ突設させる機構とする。ただし、できるだけ容易に縦刃を交換できる装着機構が望まれる。そこで、下側部材から上方へ突設させる場合には、下側部材が複数のレーン部材を互いに間隙を持って連結することで構成されるものとし、縦刃を、その間隙から上方へ突出させた状態で下側部材の下方に縦刃端部を取り外し可能に固定する構成とすれば、隙間からの出し入れで縦刃を簡便に交換できる。一方、上側部材から下方へ縦刃を突設させる場合には、上側部材が複数のレーン部材を互いに間隙を持って連結して構成されるものとし、縦刃を、その間隙から下方へ突出させて上側部材の上方に縦刃端部を取り外し可能に固定する構成とすれば良い。
【0027】
このレーン部材同士の間の間隙は、ガイド片の設置にも利用できる。例えば、下側あるいは上側のレーン部材同士を連結する際に、その間隙にガイド片を挟み込んで固定すればよい。また、ガイド片は、それ一枚でシュート内部空間の全高さ領域にわたってシュート内を仕切ることができる寸法のものを下側部材か上側部材のどちらか一方に装着する構成としてもよいが、下側部位と上側部材との両方からシュート内部空間の中央高さ位置まで上下のガイド片を対向して突設させる構成でも良い。即ち、下側のレーン部材同士を連結する際に下側用のガイド片を間隙に挟み込んで固定すると共に、上側のレーン部材同士を連結する際に上側用のガイド片を間隙に挟み込んで固定し、略箱状シュートを構築するために下側部材にこれを覆うように上側部材を連結した際に、上下方向から向き合うガイド片同士で実質的に一枚の仕切り壁が形成できる構成とすれば良い。
【0028】
なお、ガイド片は、シュート内部空間の全横幅領域にわたって横架される横刃の設置に支障のない形状のものとするが、横刃の枚数とシュート内高さ位置に応じて適宜横刃が通過できる手段を講じる。例えば、各ガイド片が一枚でシュート内部空間を全高さ領域にわたって仕切る構成の場合、横刃が貫通できる貫通孔を各ガイド片の相当位置に設けておけば良い。また、横刃が一枚だけ中央高さ位置に横架される配置の場合(食品を上下部に二分する場合)には、下側部材と上側部材との両側からガイド片を突設させる構成とすれば、上下のガイド片の間の間隙を横刃が通過できるため、貫通孔を設けておく必要もなく、横刃の設置に関しては簡便である。このように下側部材と上側部材との間隙および上側ガイド片と下側ガイド片との間隙に横刃を配置して横架する場合、横刃の両端部をシュートの外側で取り外し可能に固定する構成とすれば、これら間隙を利用して横刃をシュートの外側から挿脱できるため、横刃の交換も容易に行える。
【0029】
また、本発明は、シュートとプッシャーのセットを一つ備えた構成でも、二つ以上備えた構成も可能である。複数のシュートとプッシャーを備えた構成の場合、駆動シリンダ装置の同一のピストンロッドに各プッシャーを連結すれば、複数のシュートでの食品分割工程が連動して行える。
【実施例
【0030】
本発明の一実施例として、例えば、ちくわ等の弾力のある円筒状の食品をまず二枚の縦刃で短尺部分に三分割してからそれらを全て一枚の横刃でそれぞれ上下に二分割するために縦横全六分割用に設定された食品分割装置を図1図4に示す。図1は本実施例の食品分割装置の概略構成図であり、(a)は平面図、(b)は側面図であって、それぞれ特にシュート内を透過状態で現している。図2はシュートの上側部材を除いた状態の構成を示す部分斜視図である。図3はシュートを出口開口から見た概略正面図である。図4はプッシャーを正面側からみた概略模式図である。
【0031】
本実施例による食品分割装置1は、シュート(3A,3B)とプッシャー(40A,40B)との組を二組備え、これら二組のシュート(3A,3B)は、互いに同じ構成を備え、エアシリンダから成る駆動シリンダ装置4を挟んで両側に同じ距離で並設されている。そして、この同一の駆動シリンダ装置4によって両プッシャー(40A,40B)に対して連動して往復動させる構成とした。
【0032】
各シュート(3A,3B)は、横断面凹状の下側部材11と、この下側部材11を対象食品Xがその長手方向を送り出し方向に対して直交するように載置される一端部の載置領域30を除いて覆う横断面逆凹状の上側部材21とで略箱状に構成されており、シュートの一端側には入口開口10が、他端側には出口開口20が形成されている。これらの開口(10,20)は、横幅内法が、分割対象の円筒状食品Xの長手方向の長尺寸法に対応し、高さ方向の縦幅内法が、円筒状食品Xの最外径に対応している。
【0033】
本実施例では、円筒状食品Xをまず二枚の縦刃13で三分割する設定であるため、各縦刃13がシュート内部空間の横幅領域を三等分する二位置で互いに平行に下側部材11の底面から上方へシュートの天井高さまで突出させて取り付けられるものとした。下側部材11は、台座2の上方で、3つの下側レーン部材(11a,11b,11c)が互いに間隙12を持って連結されて構成されている。これら3つの下側レーン部材(11a,11b,11c)は、左右両側の下側レーン部材(11a,11c)に、それぞれ略箱状シュートの左右側壁の下方領域を形成する立ち上がり部(Ra、Rc)が設けられているが、下側部材11の底面を形成する部分は、3つの下側レーン部材で互いに同じ幅である。
【0034】
従って、下側部材11の底面には二本の間隙12が形成されており、二枚の縦刃13は、それぞれ下側部材11の下方から各間隙12を通って上方へ突出させた状態で、各縦刃13の下端が下側部材11の下方で台座2上の取付部18に交換可能に固定されている。各縦刃13は、この固定状態にて、刃先14が垂直方向より送り出し方向の後方へ約30°傾斜する設定とされている。
【0035】
また、各縦刃13の下流から他端側の出口開口20にわたってシュート内部空間を3つのレーンに仕切る二枚の下側ガイド片15が、それぞれ、隣合う下側レーン部材(11a,11b,11c)同士の間の間隙12に挟み込まれて固定されている。
【0036】
上側部材21も、下側部材11と同様に、3つの上側レーン部材(21a,21b,21c)が互いに間隙22を持って連結されて構成されている。そして、これら3つの上側レーン部材(21a,21b,21c)は、左右両側の上側レーン部材(21a,21c)に、それぞれ略箱状のシュートの左右側壁の上方領域を形成する下垂部(Da、Dc)が設けられているが、上側部材21の天井面を形成する部分は3つの上側レーン部材で互いに同じ幅である。そして下側ガイド片15に対向する領域にわたって天井面の隙間22から下方に突出してシュート内部空間を仕切る2枚の上側ガイド片23が間隙22に挟み込まれて固定されている。即ち、上下で互いに向き合う一対の上側ガイド片23と下側ガイド片15とで実質的に一枚の仕切り壁が形成される。
【0037】
また、下側部材11と上側部材21との間で、シュートの内部空間の全横幅領域にわたって横架して配置された横刃16が、その刃先17が送り出し方向と直交する水平方向に対する角度αを約30°とした傾斜状態で、台座2上に交換可能に装着されている。この横刃16の配置位置は、シュートの縦幅内法のほぼ中央高さ位置であって、円筒状食品Xを中央高さ位置で水平方向に切断して上下部に二分する位置である。そして、この横刃16は、下側ガイド片15と上側ガイド片23との間の間隙を通過する状態で配置されており、その両端が、シュートの外側で台座2上に取り外し可能に固定されている。従って、横刃16は、シュートを分解することなく、下側部材11と上側部材21との間隙および下側ガイド片15と上側ガイド片23との間隙を利用して、シュートの外側から挿脱でき、交換が容易である。
【0038】
本実施例における押し出し装置の駆動シリンダ装置4は、そのピストンロッド5の往復動に伴って、ピストンロッド5に連結された二つのプッシャー(40A,40B)を連動して往復動させるものであり、各プッシャー(40A,40B)を構成する6本のプッシャーアーム(41a,41b,41c,41d,41e,41f)の束に、対応するシュート(3A,3B)内で一端側から他端側への往動と復動とを繰り返させる。
【0039】
図4に示すように、6本のプッシャーアーム(41a,41b,41c,41d,41e,41f)の先端には、それぞれ円筒状食品Xを押して送り出す際に食品側面に当接する平坦な押圧面(42a,42b,42c,42d,42e,42f)が設けられている。これら6本のプッシャーアーム(41a~41f)および押圧面(42a~42f)は、互いに、シュート内での往復動の際に縦刃13及び下側ガイド片15と横刃16と上側ガイド片23とが通過可能な間隔を持って配置され、縦分割および横分割された各食品部分を同時に押し出すように、横二列縦三列の配列となっている。
【0040】
以上の構成において、各シュート(3A,3B)の下側部材11の食品載置領域30上に円筒状食品Xを載置した後、駆動シリンダ装置4の駆動を開始し、そのピストンロッド5を一往復動させると、これに伴って、各プッシャー(40A,40B)がその往動にての各プッシャーアーム(41a~41f)の先端の押圧面(42a~42f)で円筒状食品Xを押してシュート内へ入口開口10から押し入れ、出口開口20からシュート外へ押し出す。
【0041】
その間シュート内では、円筒状食品Xはまず二枚の縦刃13に押し当てられて3つの短尺部分に分断され、その後、下側部材11と上側部材21および下側ガイド片15と上側ガイド片23とによって囲まれた3つのトンネル状空間を左右に分散されることなく真っ直ぐ進む。そして3つの短尺部分は、前記3つのトンネル状空間内を進みながら横刃16に押し当てられ、上下左右に分散されることなくそれぞれ良好に水平方向の切断によって上下部に二分されて6つの小口部となり、出口開口20から押し出されて受け容器6へ落下し回収される。円筒状食品Xを出口開口20から押し出した各プッシャー(40A,40B)は、復動して各プッシャーアーム(41a~41f)の先端の押圧面(42a~42f)を各シュートの一端まで後退させる。
【0042】
このように、本実施例の食品分割装置1によれば、略柱状食品を、シュート内を入口開口から出口開口まで押して送り出すという同一搬送路上での一つの動作のみで、一挙に縦横に分割することができる。従って、食品載置領域30上への食品の載置と駆動シリンダ装置4のピストンロッド5の往復駆動による各プッシャー(40A,40B)の往復動を繰り返すだけで、略柱状食品の縦横分割を連続的に行うことができ、大量の小口食品の製造を効率良く行うことができる。
【0043】
なお、以上に示した実施例では、略柱状食品を二枚の縦刃による長尺方向の三等分への分割と、一枚の横刃による上下に二分する分割との縦横六分割する場合の構成を示したが、本発明の食品分割装置においては、これに限定するものではない。即ち、対象食品の寸法や分割後の加工形態によって望まれる縦横分断個数に応じた縦刃横刃の枚数での配置構成として適宜対応させることができる。例えば、縦刃による分断を4つ以上とする場合、中央部の下側レーン部材と上側レーン部材との数を増やして、レーン部材間の間隙に挟み込む縦刃とガイド片の数を増やせば、簡便に対応させることができる。
【0044】
また、例えば横刃で上下方向に三分割する場合には、下側部材の対向する立ち上がり部と上側部材の対向する下垂部とのそれぞれに、斜めに対向する一対の貫通孔を形成し、また各ガイド片の相当位置にも貫通孔を形成しておけば、各ガイド片の貫通孔と上下の一対の貫通孔にそれぞれ横刃を挿通して横架状態とし、横刃両端部を固定するだけで、上下に二枚の横刃を設置できる。また、前述のように上側部材と下側部材との間の中央高さ位置に一枚の横刃を横架すると共に、さらにその上下の両側下垂部間と両側立ち上がり部間との各所定高さ位置で上記のようにそれぞれ設けられた貫通孔を通して横刃を横架して三枚の横刃設置することで、食品を上下方向に四分割する構成とすることができる。
【0045】
また、以上の実施例の構成による食品分割装置においては、一定期間の使用の後、全縦刃及び横刃を取り外し、下側部材と上側部材との連結を解除することによって、シュートの内部を含む全体を容易に洗浄できる。また、下側部材、上側部材が複数のレーン部材の連結で構成されている場合、これらレーン部材同士の連結およびガイド片の装着も取り外し可能な機構としておけば、より細かい構成部品への分解によって、さらに高精度の洗浄が行える。
【符号の説明】
【0046】
1:食品分割装置
2:台座
3A,3B:シュート
4:駆動シリンダ装置
5:ピストンロッド
6:受け容器
10:入口開口
20:出口開口
30:食品載置領域
11:下側部材
11a,11b,11c:下側レーン部材
Ra,Rc:立ち上がり部
12:間隙
13:縦刃
14:縦刃の刃先
15:下側ガイド片
16:横刃
17:横刃の刃先
18:縦刃取付部
21:上側部材
21a,21b,21c:上側レーン部材
Da,Dc:下垂部
22:間隙
23:上側ガイド片
40A.40B:プッシャー
41a,41b,41c,41d,41e,41f:プッシャーアーム
42a,42b,42c,42d,42e,42f:押圧面
X:円筒状食品
図1
図2
図3
図4