(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】自己シール型管状グラフト、パッチ、これらの製造方法および使用方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/06 20130101AFI20230208BHJP
A61M 1/36 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
A61F2/06
A61M1/36 143
(21)【出願番号】P 2019506611
(86)(22)【出願日】2017-04-21
(86)【国際出願番号】 US2017028939
(87)【国際公開番号】W WO2017189364
(87)【国際公開日】2017-11-02
【審査請求日】2020-04-06
(32)【優先日】2017-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515283600
【氏名又は名称】ソリナス メディカル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SOLINAS MEDICAL,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デア ブルク,エリック
(72)【発明者】
【氏名】リー,エイミー
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0237929(US,A1)
【文献】米国特許第04731073(US,A)
【文献】特表2014-527414(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0123968(US,A1)
【文献】特表2003-511196(JP,A)
【文献】特開2009-022511(JP,A)
【文献】米国特許第06494904(US,B1)
【文献】国際公開第2014/169267(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/00
A61F 2/02-2/80
A61M 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状グラフトにおいて、
第1の端部と、第2の端部と、前記第1および第2の端部の間に延在する管腔とを有する細長い管状体であって、前記第1の端部に隣接する第1のカニュレーション領域と、前記第2の端部に隣接する第2のカニュレーション領域と、前記第1および第2のカニュレーション領域の間に延在するループ領域とを有する細長い管状体と、
基材内に埋設された2つ以上の補強部材を含み、前記第1のカニュレーション領域で第1の長さにわたって前記管腔の周囲を少なくとも部分的に囲む第1の自己シール部材と、
基材内に埋設された1またはそれ以上の補強部材を含み、前記第2のカニュレーション領域で第2の長さにわたって前記管腔の周囲を少なくとも部分的に囲む第2の自己シール部材と、
前記ループ領域の補強された長さに取り付けられ、少なくとも部分的に前記管状体の周方向に延在する1またはそれ以上のループ領域補強部材と、を具え、
前記第1の自己シール部材の2つ以上の補強部材が、前記基材内に埋設された第1および第2の補強部材を含み、前記第1の補強部材が軸方向に前記第1の長さにわたって延在するとともに、前記管腔の周囲に少なくとも部分的に延在する要素を含み、前記第2の補強部材が軸方向に前記第1の長さにわたって延在するとともに、前記管腔の周囲に少なくとも部分的に延在する要素を含み、前記第2の補強部材が前記第1の補強部材から半径方向に離間して
おり、
前記第1および第2の補強部材が、長手方向に引き延ばされた状態で前記基材内に埋設され、前記基材内に埋設された後で解放されていて、前記第1の長さにわたって前記基材に軸方向の圧縮力を加えており、
前記第1および第2の補強部材が螺旋コイルを有し、当該第1および第2の補強部材の螺旋コイルが、弛緩時に同じ直径を有するとともに互いに軸方向にオフセットされていることを特徴とする管状グラフト。
【請求項2】
管状グラフトにおいて、
第1の端部と、第2の端部と、前記第1および第2の端部の間に延在する管腔とを有する細長い管状体であって、前記第1の端部に隣接する第1のカニュレーション領域と、前記第2の端部に隣接する第2のカニュレーション領域と、前記第1および第2のカニュレーション領域の間に延在するループ領域とを有する細長い管状体と、
基材内に埋設された2つ以上の補強部材を含み、前記第1のカニュレーション領域で第1の長さにわたって前記管腔の周囲を少なくとも部分的に囲む第1の自己シール部材と、
基材内に埋設された1またはそれ以上の補強部材を含み、前記第2のカニュレーション領域で第2の長さにわたって前記管腔の周囲を少なくとも部分的に囲む第2の自己シール部材と、
前記ループ領域の補強された長さに取り付けられ、前記第1の長さの周りにクラムシェルを画定するように前記管状体の周方向に少なくとも部分的に延在する第1および第2のループ領域補強部材と、を具え、
前記第1の自己シール部材の2つ以上の補強部材が、前記基材内に埋設された第1および第2の補強部材を含み、前記第1の補強部材が軸方向に前記第1の長さにわたって延在するとともに、前記管腔の周囲に少なくとも部分的に延在する要素を含み、前記第2の補強部材が軸方向に前記第1の長さにわたって延在するとともに、前記管腔の周囲に少なくとも部分的に延在する要素を含み、前記第2の補強部材が前記第1の補強部材から半径方向に離間して
おり、
前記第1および第2の補強部材が、長手方向に引き延ばされた状態で前記基材内に埋設され、前記基材内に埋設された後で解放されていて、前記第1の長さにわたって前記基材に軸方向の圧縮力を加えており、
前記第1および第2の補強部材が螺旋コイルを有し、当該第1および第2の補強部材の螺旋コイルが、弛緩時に同じ直径を有するとともに互いに軸方向にオフセットされていることを特徴とする管状グラフト。
【請求項3】
管状グラフトにおいて、
第1の端部と、第2の端部と、前記第1および第2の端部の間に延在する管腔とを有する細長い管状体であって、前記第1の端部に隣接する第1のカニュレーション領域と、前記第2の端部に隣接する第2のカニュレーション領域と、前記第1および第2のカニュレーション領域の間に延在するループ領域とを有する細長い管状体と、
基材内に埋設された2つ以上の補強部材を含み、前記第1のカニュレーション領域で第1の長さにわたって前記管腔の周囲を少なくとも部分的に囲む第1の自己シール部材と、
基材内に埋設された1またはそれ以上の補強部材を含み、前記第2のカニュレーション領域で第2の長さにわたって前記管腔の周囲を少なくとも部分的に囲む第2の自己シール部材と、
前記第1の自己シール部材の2つ以上の補強部材が、前記基材内に埋設された第1および第2の補強部材を含み、前記第1の補強部材が軸方向に前記第1の長さにわたって延在するとともに、前記管腔の周囲に少なくとも部分的に延在する要素を含み、前記第2の補強部材が軸方向に前記第1の長さにわたって延在するとともに、前記管腔の周囲に少なくとも部分的に延在する要素を含み、前記第2の補強部材が前記第1の補強部材から半径方向に離間して
おり、
前記第1および第2の補強部材が、長手方向に引き延ばされた状態で前記基材内に埋設され、前記基材内に埋設された後で解放されていて、前記第1の長さにわたって前記基材に軸方向の圧縮力を加えており、
前記第1および第2の補強部材が螺旋コイルを有し、当該第1および第2の補強部材の螺旋コイルが、弛緩時に同じ直径を有するとともに互いに軸方向にオフセットされていることを特徴とする管状グラフト。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の管状グラフにおいて、前記第2の自己シール部材の補強部材が、前記基材内に埋設された第3および第4の補強部材を含み、前記第3の補強部材が軸方向に前記第2の長さにわたって延在するとともに、前記管腔の周囲に少なくとも部分的に延在する要素を含み、前記第4の補強部材が軸方向に前記第2の長さにわたって延在するとともに、前記管腔の周囲に少なくとも部分的に延在する要素を含み、前記第4の補強部材が前記第3の補強部材から半径方向に離間していることを特徴とする管状グラフト。
【請求項5】
請求項1または2の管状グラフトにおいて、前記ループ領域補強部材が、形状設定された熱可塑性材料から形成されることを特徴とする管状グラフト。
【請求項6】
請求項1の管状グラフトにおいて、前記ループ領域補強部材が、
前記補強された長さに沿って延在する交互のループを有する1またはそれ以上のジグザグ部材を具え、前記交互のループは、前記管状体の周方向に少なくとも部分的に延在するように形状設定されていることを特徴とする管状グラフト。
【請求項7】
請求項1または2の管状グラフトにおいて、前記ループ領域補強部材が、前記補強された長さに沿って延在する第1および第2のジグザグ部材を具え、前記第1のジグザグ部材の交互のループが、前記第2のジグザグ部材の交互のループ間に整列されていることを特徴とする管状グラフト。
【請求項8】
請求項1の管状グラフトにおいて、前記1またはそれ以上のループ領域補強部材は、前記補強された長さに沿って延びる単一のジグザグ部材を有し、当該ジグザグ部材の交互のループは、前記管状体の周方向に少なくとも部分的に延びるように形状設定されていることを特徴とする管状グラフト。
【請求項9】
請求項8の管状グラフトにおいて、前記ジグザグ部材の交互のループは、隣接するループが軸方向に互いに隣接して配置されるように、前記管状体の周方向の全体に延在することを特徴とする管状グラフト。
【請求項10】
請求項9の管状グラフトにおいて、前記隣接するループは、前記ループ領域の第1の側に整列して、前記第1の側とは反対側の第2の側よりも前記ループ領域の支持が大きなスパインを規定していることを特徴とする管状グラフト。
【請求項11】
請求項10の管状グラフトにおいて、前記ループ領域が内側半径と外側半径とを有するカーブを規定し、前記スパインは、前記カーブの内側半径に沿って延在することを特徴とする管状グラフト。
【請求項12】
請求項10の管状グラフトにおいて、前記ループ領域が内側半径と外側半径とを有するカーブを画定し、前記スパインは、前記内側半径と外側半径との間の周方向の位置に沿って延在することを特徴とする管状グラフト。
【請求項13】
請求項1または2の管状グラフトにおいて、前記ループ領域補強部材は、前記ループ領域の前記補強された長さに沿って前記管状体の外面の周りに取り付けられていることを特徴とする管状グラフト。
【請求項14】
請求項13の管状グラフトにおいて、前記補強された長さは、前記第1のカニュレーション領域と前記第2のカニュレーション領域との間の前記ループ部分の全長を含むことを特徴とする管状グラフト。
【請求項15】
請求項13の管状グラフトにおいて、前記ループ領域補強部材は、接着剤によって前記外面の周りに取り付けられていることを特徴とする管状グラフト。
【請求項16】
管状グラフトにおいて、
第1の端部と、第2の端部と、前記第1および第2の端部との間に延びる管腔とを有する細長い管状体と、
前記管状体の第1の長さを少なくとも部分的に取り囲む第1の自己シール領域と、を具え、
前記第1の自己シール領域は基材内に埋設された2つ以上の補強部材を含み、
前記2つ以上の補強部材は、
前記第1の長さに沿って延在し前記管腔の周囲の少なくとも一部に延在する山と谷を規定する交互のループを含む第1のジグザグ部材と、
前記第1の長さに沿って延在し前記管腔の周囲の少なくとも一部に延在する山と谷を規定する交互のループを含む第2のジグザグ部材と、を含み、
前記第2のジグザグ部材が前記第1のジグザグ部材から半径方向に離間して
おり、
前記第1および第2のジグザグ部材が、長手方向に引き延ばされた状態で前記基材内に埋設され、前記基材内に埋設された後で解放されていて、前記第1の長さにわたって前記基材に軸方向の圧縮力を加えており、
前記第1および第2のジグザグ部材が、互いに軸方向にオフセットされいて、前記基材に均一な軸方向の圧縮力を提供していることを特徴とする管状グラフト。
【請求項17】
請求項16の管状グラフトにおいて、前記基材がエラストマー材料を含むことを特徴とする管状グラフト。
【請求項18】
請求項16の管状グラフトにおいて、前記交互のループは、前記管状体の周囲に約180~360°の円弧角を規定する周方向の幅を有することを特徴とする管状グラフト。
【請求項19】
請求項
16の管状グラフトにおいて、前記第2のジグザグ部材は、前記第1のジグザグ部材よりも前記基材の外面の近くに配置されていることを特徴とする管状グラフト。
【請求項20】
請求項
16の管状グラフトにおいて、前記第2のジグザグ部材は、前記第1のジグザグ部材から軸方向にずらされ、前記第1および第2のジグザグ部材の交互のループが前記第1の長さに沿って互いに位相がずれていることを特徴とする管状グラフト。
【請求項21】
請求項20の管状グラフトにおいて、前記交互のループは、1つの山と1つの谷によって画定される軸方向周期を規定し、前記第2ジグザグ部材は、前記軸方向周期の半分だけ前記第1ジグザグ部材から軸方向にずれていることを特徴とする管状グラフト。
【請求項22】
請求項20の管状グラフトにおいて、前記第2のジグザグ部材は、前記第2のジグザグ部材が前記第1のジグザグ部材に重なる地点で前記第1のジグザグ部材に接触することを特徴とする管状グラフト。
【請求項23】
管状グラフトにおいて、
第1の端部と、第2の端部と、前記第1および第2の端部との間に延在する管腔とを有する細長い管状体と、
前記管状体の第1の長さを少なくとも部分的に囲む第1の自己シール領域と、を具え、
前記第1の自己シール領域は基材内に埋設された2つ以上の補強部材を含み、
前記2つ以上の補強部材は、
前記第1の長さに沿って軸方向に延在する第1の螺旋コイルであって、
前記第1の長さにわたって前記基材に軸方向の圧縮力を加える第1の螺旋コイルと、
前記第1の長さに沿って軸方向に延在する第2の螺旋コイルであって、前記第1の螺旋コイルから半径方向に離間している第2の螺旋コイルと、
を含み、
前記第1および第2の螺旋コイルが、長手方向に引き延ばされた状態で前記基材内に埋設され、前記基材内に埋設された後で解放されていて、前記第1の長さにわたって前記基材に軸方向の圧縮力を加えており、
前記第1および第2の螺旋コイルが、弛緩時に同じ直径を有するとともに互いに軸方向にオフセットされていることを特徴とする管状グラフト。
【請求項24】
請求項23の管状グラフトにおいて、前記基材がエラストマー材料を含むことを特徴とする管状グラフト。
【請求項25】
請求項23の管状グラフトにおいて、前記第2の螺旋コイルは、
前記第1の螺旋コイルに対して半周期分オフセットされていることを特徴とする管状グラフト。
【請求項26】
管状グラフトにおいて、
第1の端部と、第2の端部と、前記第1および第2の端部との間に延在する管腔とを有する細長い管状体と、
前記管状体の第1の長さを少なくとも部分的に囲む第1の自己シール領域とを具え、前記第1の自己シール領域は基材内に埋設された2つ以上の補強部材を含み、前記2つ以上の補強部材は、前記第1の長さに沿って軸方向に延びて前記基材に
前記第1の長さにわたって軸方向の圧縮力を加える第1の螺旋コイルと、前記第1の螺旋コイルから半径方向に離間した第2の螺旋コイルとを具え、
前記第1および第2の螺旋コイルが、長手方向に引き延ばされた状態で前記基材内に埋設され、前記基材内に埋設された後で解放されていて、前記第1の長さにわたって前記基材に軸方向の圧縮力を加えており、
前記第1の螺旋コイルは第1の螺旋方向に延びる巻き線を具え、前記第2の螺旋コイルは、前記第1の螺旋方向とは反対の第2の螺旋方向に延びる巻線を
具えて、前記基材に均一な軸方向の圧縮力を提供していることを特徴とする管状グラフト。
【請求項27】
管状グラフトにおいて、
第1の端部と、第2の端部と、前記第1および第2の端部との間に延在する管腔とを有する細長い管状体と、
前記管状体の第1の長さを少なくとも部分的に囲む第1の自己シール領域とを具え、前記第1の自己シール領域は基材内に埋設された2つ以上の補強部材を含み、前記2つ以上の補強部材は、前記第1の長さに沿って軸方向に延びて前記基材に
前記第1の長さにわたって軸方向の圧縮力を加える第1の螺旋コイルと、前記第1の長さに沿って軸方向に延在し、前記第1の螺旋コイルから半径方向に離間した第2の螺旋コイルとを
具え、
前記第1および第2の螺旋コイルが、長手方向に引き延ばされた状態で前記基材内に埋設され、前記基材内に埋設された後で解放されていて、前記第1の長さにわたって前記基材に軸方向の圧縮力を加えており、
前記第1の螺旋コイルは第1の螺旋方向に延びる巻き線を具え、前記第2の螺旋コイルは、前記第1の螺旋方向とは反対の第2の螺旋方向に延びる巻線を具えて、前記基材に均一な軸方向の圧縮力を提供していることを特徴とする管状グラフト。
【請求項28】
管状グラフトにおいて、
第1の端部と、第2の端部と、前記第1および第2の端部との間に延在する管腔とを有する細長い管状体と、
前記管状体の第1の長さを少なくとも部分的に囲む第1の自己シール領域とを具え、前記第1の自己シール領域は基材内に埋設された第1および第2の補強部材を含み、前記第1の補強部材は前記第1の長さに沿って軸方向に延在するとともに、前記管腔の周囲に少なくとも部分的に延在する要素を具え、前記第2の補強部材は前記第1の長さに沿って軸方向に延在するとともに、前記管腔の周囲に少なくとも部分的に延在する要素を具え、前記第2の補強部材は前記第1の補強部材から半径方向に離間して
おり、
前記第1および第2の補強部材が、長手方向に引き延ばされた状態で前記基材内に埋設され、前記基材内に埋設された後で解放されていて、前記第1の長さにわたって前記基材に軸方向の圧縮力を加えており、
前記第1および第2の補強部材が、弛緩時に同じ直径を有するとともに互いに軸方向にオフセットされていることを特徴とする管状グラフト。
【請求項29】
請求項
26乃至28のいずれか1項に記載の管状グラフトにおいて、前記第1および第2の補強部材が互いに接触しないことを特徴とする管状グラフト。
【請求項30】
請求項
26または27に記載の管状グラフトにおいて、前記基材は、前記第1および第2の補強部材の間に配置されていることを特徴とする管状グラフト。
【請求項31】
請求項
26または27に記載の管状グラフトにおいて、前記第2の補強部材が前記第1の補強部材と重なる点で、前記第2の補強部材が前記第1の補強部材に接触することを特徴とする管状グラフト。
【請求項32】
請求項
28の管状グラフトにおいて、前記第1および第2の補強部材は、周囲の周りに延在し、
前記軸方向の圧縮力を前記基材に加える第1および第2の螺旋コイルを含むことを特徴とする管状グラフト。
【請求項33】
請求項
32の管状グラフトにおいて、前記第2の螺旋コイルが
、前記第1の螺旋コイルに対して半周期分オフセットされていることを特徴とする管状グラフト。
【請求項34】
管状グラフトにおいて、
第1の端部と、第2の端部と、前記第1および第2の端部との間に延在する管腔とを有する細長い管状体と、
前記管状体の第1の長さを少なくとも部分的に囲む第1の自己シール領域とを具え、前記第1の自己シール領域は基材内に埋設された第1および第2の補強部材を含み、前記第1の補強部材は前記第1の長さに沿って軸方向に延在するとともに、前記管腔の周囲に少なくとも部分的に延在する要素を具え、前記第2の補強部材は前記第1の長さに沿って軸方向に延在するとともに、前記管腔の周囲に少なくとも部分的に延在する要素を具え、前記第2の補強部材は前記第1の補強部材から半径方向に離間しており、
前記第1および第2の補強部材が、長手方向に引き延ばされた状態で前記基材内に埋設され、前記基材内に埋設された後で解放されていて、前記第1の長さにわたって前記基材に軸方向の圧縮力を加えており、
前記第1および第2の補強部材は、前記第1の長さに沿って軸方向に延在し、前記管状体の周囲に少なくとも部分的に延在する山と谷を規定する交互のループを有する第1および第2のジグザグ部材を
具え、前記第1および第2の補強部材は、軸方向に互いにオフセットされていることを特徴とする管状グラフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]
関連出願データ
本出願は、同時係属中の米国仮出願第62/327,328号(2016年4月25日出願)および第62/471,867号(2017年3月15日出願)の利益を主張するものであり、これらの開示全体は明確に参照により本書に組み込まれる。
【0002】
[0002]
連邦支援研究開発に関する声明
本発明は、SBIR助成金番号1143198および1329172の下で、国立科学財団によって授与された政府の支援によってなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
[0003]
発明の分野
本発明の分野は、一般に、患者の身体内に移植可能な自己シール型デバイス、およびそのような自己シール型デバイスを含む装置、システム、および方法に関する。例えば、本発明は、再シール可能なアクセス領域を含む管状または他の構造用の自己シール型グラフト、自己シール型パッチ、および/またはこのような自己シール型グラフトまたはパッチを製造および移植する方法を含むことができる。
【背景技術】
【0004】
[0004]
末期腎疾患(「ESRD」)の透析は、今日世界が直面している急速に発展する主要な問題の1つである。2006年には、米国内で慢性腎疾患と診断された5100万人を超える人々がいた。この人口の50万人以上がESRDに苦しんでいる。高齢化や、糖尿病(全ESRD患者の35%、J Biomater Appl.1999年;13、297-350)および高血圧(30%)のような高リスク因子の罹患率の高まりにより、2020年は78万4千(784,000)人となる予測である(USRDS2008年の推定値)。
【0005】
[0005]
2つの主な治療法は腎臓移植と血液透析である。利用可能な移植腎臓が不足しているため、ESRD患者の約70%が生涯、あるいは移植腎臓が利用可能になるまで血液透析を受ける(USRDS2008年)。頻繁で定期的な治療を容易にするために、患者は血管手術を受けて、典型的には前腕部の動脈と静脈を透析のために準備しなければならない。動脈と静脈を準備する最も一般的な2つの方法は、動静脈(AV)瘻およびAVグラフトであり、前者は開存率がより高いため好ましい方法であるが、瘻孔の寿命が尽きると、瘻孔はしばしばAV移植に置き換えられる。
【0006】
[0006]
両方の方法に、利点と欠点がある。特に、グラフトは移植が容易で、比較的早く使用する準備ができるが、寿命が短く、感染および血栓形成が起こりやすい。瘻孔はより耐久性があり、感染する傾向が少ないが、使用前の成熟に6ヶ月(KDOQI)かかる場合があり、アクセスに用いられる静脈の反復アクセス部位に疑似動脈瘤を発生する傾向がある。現在のAVグラフトおよび/または静脈の急速な劣化の原因の1つは、比較的大きな針(例えば、14-16ゲージ)を用いた透析中の反復的な針刺しである。これは、平均的な患者は、腎臓移植が可能になるまで、または平均寿命(約10年)が終わるまで、毎年、毎週、週に2~3回血液透析治療を受けるために悪化することになる(SzycherM.、JBiomaterAppl。1999;13,297-350)。さらに、透析患者は、内膜肥厚および血管狭窄のリスクが高いため、血管の開存性を維持するために定期的な介入処置を受け、これは1年に数回発生し得る。これは典型的には、冠動脈血管閉塞の処置に似た血管形成術またはステント留置を含み、これらの処置にも針を用いた血管アクセスが必要であり、したがってグラフトまたは血管の劣化のリスクがあった。
【0007】
[0007]
したがって、ESRDおよび他の状態を治療するための装置、システム、および方法の明確な必要性があった。
【発明の概要】
【0008】
[0008]
発明の概要
本出願は、一般に、患者の体内に移植可能な自己シール型デバイス、およびそのような自己シール型デバイスを含む装置、システム、および方法に関する。例えば、本発明は、再シール可能なアクセス領域を有する管状または他の構造用の自己シール型グラフトまたは自己シール型パッチ、および/またはこのような自己シール型グラフトおよびパッチを製造および移植する方法を含む。
【0009】
[0009]
例示的な実施形態によれば、第1の端部と、第2の端部と、第1および第2の端部間に延在する管腔とを有する細長い管状体を具える管状グラフトが提供され、この管状体は、第1の端部に隣接する第1カニュレーション領域と、第2の端部に隣接する第2カニュレーション領域と、第1および第2カニュレーション領域間に延在するループ領域とを含む。第1の自己シール型部材が、第1カニュレーション領域を少なくとも部分的に囲む基材内に埋設された1以上の補強部材を含み、第2の自己シール型部材が、第2カニュレーション領域を少なくとも部分的に囲む基材内に埋設された1以上の補強部材を含み;1以上のループ領域補強部材が、管状体の周囲の少なくとも一部に延在するループ領域の第1の長さに取り付けられる。
【0010】
[0010]
別の例示的な実施形態によれば、第1の端部と、第2の端部と、第1および第2の端部間に延在する管腔とを有する細長い管状体を具える管状グラフトが提供され、管状体の第1の長さを少なくとも部分的に囲む第1の自己シール領域が、基材内に埋設された1以上の補強部材を含み、1以上の補強部材は、前記第1の長さに沿って長手方向に延在する第1のジグザグ部材であって、管状体の少なくとも一部の周囲に延在する山と谷を規定する交互のループを含むジグザグ部材を具える。
【0011】
[0011]
さらに別の実施形態によれば、第1の端部と、第2の端部と、第1および第2の端部間に延在する管腔とを有する細長い管状体を具える管状グラフトが提供され、管状体の第1の長さを少なくとも部分的に囲む第1の自己シール領域が、基材内に埋設された1以上の補強部材を含み、この1以上の補強部材は、第1の方向に軸方向に延びる第1の螺旋コイルを含み、第1の螺旋コイルは、第1の長さに沿って、基材に軸方向の圧縮力を加える。
【0012】
[0012]
さらに別の実施形態によれば、第1の端部と、第2の端部と、第1および第2の端部間に延在する管腔を有する細長い管状体を具える管状グラフトが提供され、管状体の第1の長さを少なくとも部分的に囲む第1の自己シール領域が、基材内に埋設された第1および第2の補強部材を含み、第1の補強部材は、第1の長さに沿って軸方向に延在するとともに、管状体の周囲に少なくとも部分的に延在する要素を具え、第2の補強部材は、第1の長さに沿って延在するとともに、管状体の周囲に少なくとも部分的に延在する要素を具え、第2の補強部材は第1の補強部材から半径方向に離間されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
[0013]
本発明の他の態様および特徴は、添付の図面を参照しながら以下の説明により明らかになるであろう。
[0014]
図面は、例示的な実施形態を示しており:
【
図1】
[0015]図1は、2つの自己シール型カニュレーション領域と、カニュレーション領域の間のループ領域とを含む管状グラフトの例示的な実施形態の斜視図である
。
【
図2】
[0016]図2A、2Bは、
図1の管状グラフトの詳細であり、カニュレーション領域上に外側層を適用する前(
図2A)および外側層を適用した後(
図2B)の、ループ領域の周りの1またはそれ以上の補強要素と、カニュレーション領域に沿った1またはそれ以上の埋設された補強要素を示す
。
【
図3】
[0017]図3は、
図1の管状グラフトのループ領域の詳細であり、補強要素がよじれを防止しながら、ループ領域が狭い半径で曲げられている
。
【
図4】
[0018]図4A~4Cは、
図1のような管状グラフトのループ領域に沿って延びる2つのジグザグ要素を含む補強要素の例示的な実施形態を示す詳細図であり、ジグザグ要素の交互のループが、ループ領域の円周の周りに部分的に巻かれている。[0019]
図4Dは、
図4A~4Cのループ領域の斜視図である
。
【
図5】
[0020]図5A~
図5Cは、管状グラフトのループ領域に沿って延びる単一のジグザグ要素を含む補強要素の別の例示的な実施形態を示す詳細図であり、ジグザグ要素の交互のループがループ領域の円周の周りの全部に巻かれている
。
【
図6】
[0021]図6A、6Bは、2つの自己シール型カニュレーション領域と、これらのカニュレーション領域間のループ領域とを含む管状グラフトの別の実施形態の斜視図および上面図である。[0022]
図6C、6Dは、単一の自己シール型カニュレーション領域を具える管状グラフトのさらなる別の実施形態の側面および断面図である。[0023]
図6Eは、
図6A~6Cに示されるような管状グラフトのカニュレーション領域の内側層の周りに埋設された補強要素の例示的な実施形態を示す詳細図である。[0024]
図6F、6Gは、
図6Eに示される補強要素の詳細であり、弛緩または低エネルギー状態(
図6F)および伸長状態(
図6G)を示す
。
【
図7】
[0025]図7A~7Cは、単一の自己シール型カニュレーション領域を具える管状グラフトのさらなる別の実施形態の斜視図、側面図および断面図である。[0026]
図7Dは、
図7Cの管状グラフトの断面の詳細図である
。
【
図8】
[0027]図8A~8Cは、単一の自己シール型カニュレーション領域を含む管状グラフトのさらなる別の実施形態の斜視図、側面図および断面図である。[0028]
図8Dは、
図8Cの管状グラフトの断面の詳細図である
。
【
図9】
[0029]図9A、9Bは、管状グラフトのカニュレーション領域の例示的な実施形態の側面図であり、補強要素が埋め込まれているエラストマー層の周囲に部分的に延在する補強要素を有している。[0030]
図9Cは、
図9Aの面9C-9Cに沿って取ったカニュレーション領域の断面図である。[0031]
図9Dは、
図4A~9Cのカニュレーション領域内に埋設し得る補強要素の例示的な実施形態を示す
。
【
図10】
[0032]図10A、10Bは、管状グラフトのカニュレーション領域の別の例示的な実施形態の側面図であり、補強要素が埋設されているエラストマー層の周囲の周りに部分的に延在する一対の重なり合う補強要素を含む。[0033]
図10Cは、
図10Aの面10C-10Cに沿って取ったカニュレーション領域の断面図である。[0034]
図10Dは、
図10A~10Cに示される重なり合った補強要素間の間隔を示す詳細図である
。
【
図11】
[0035]図11は、
図9A~9Cや10A~10Cに示す管状グラフトのカニュレーション領域に埋め込まれている補強要素の別の例示的な実施形態を示す詳細図である
。
【
図12】
[0036]図12A~12Dは、一対の補強要素を含む自己シール型パッチの例示的な実施形態の斜視図、平面図および底面図である。[0037]
図12Eは、
図12A~12Dのパッチの端面図である。[0038]
図12Fは、
図12A~12Dのパッチの補強要素の斜視図である
。
【
図13】
[0039]図13A~13Dは、一対の補強要素を含む自己シール型パッチの別の例示的な実施形態の斜視図、平面図および底面図である。[0040]
図13Eは、
図13A~13Dのパッチの端面図である。[0041]
図13Fは、
図13A~13Dのパッチの補強要素の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0042]
図面を参照すると、
図1~2Bは、管状グラフト10の例示的な実施形態を示し、これは中間ループ領域20と、例えば、グラフト10へのアクセスを可能にするために、針、カニューレ、および/または他の装置(図示せず)で管状グラフト10に穿刺できるように構成された、当該ループ領域20の両側にある一対の自己シール型カニュレーション領域30を具える。追加的または代替的に、カニュレーション領域30は、例えば、透析のためのAV開存性を管理および維持するために、例えば、血管形成術、血管ステント挿入、または血栓摘出処置などの他の処置におけるアクセスを提供する。別の代替案では、グラフト10は、例えば
図6C~6D、
図7A~7Cおよび
図8A~8Cに示し、本明細書の他の箇所でさらに説明される実施形態と同様に、特定の用途に望ましい場合には、1つのカニュレーション領域のみを具えてもよい。
【0015】
[0043]
一般に、グラフト10は、第1および第2の端部14a、14bと、これらの端部14a、14b間、すなわち第1の端部14aから第1のカニュレーション領域30a、ループ領域20、および第2のカニュレーション領域30bに沿って第2の端部14bへと延在する管腔16とを有し、それによって端部14a、14b間に延びる長手方向中心軸18を画定する細長い管状グラフト本体12を具える。グラフト本体12は、管状グラフトのための周知の合成または生物学的材料、例えば、ePTFEのような多孔質または非多孔質材料から製造することができる。
【0016】
[0044]
グラフト10は、例えば患者の腕(図示せず)内といった患者の体内に移植するためのサイズであり、血液透析中の動脈および静脈へのアクセスを可能にする動静脈グラフトを提供する。例示的な実施形態では、管腔16は、内径が約1~40mmまたは約4~20mm、全長は端部14a、14b間で5~80cmである。
【0017】
[0045]
図2Aに最もよく示されるように、カニュレーション領域30は、端部14a、14bに隣接して位置する実質的に真っ直ぐな領域であり、基材42内に埋設されグラフト本体12の所望の長さに直接的に取り付けられるか形成された1以上の補強要素40を有する。任意選択的に、グラフト本体12がカニュレーション領域30のすぐ近くでねじれてしまう危険性を低減するために、
図1および
図2Bに示すように、ePTFEのようなポリマー材料のスリーブを補強要素40と基材42の上に、例えば各カニュレーション領域30の第1および第2の端部32、34の間に設けるか、および/または、下のグラフト本体12に対して先細になっている移行領域36、38を各端部32、34に設けてもよい。例示的な実施形態では、各カニュレーション領域30は、それぞれの端部14から所望の距離、例えば約1
~30センチメートル(1.0
~30cm)または約1
~10センチメートル(1.0
~10cm)オフセットしており、約1
~20センチメートル(1.0
~20cm)の長さと、約0.3
~5ミリメートル(0.3
~5.0mm)の壁厚とを有してもよい。
【0018】
[0046]
例示的な実施形態では、各カニュレーション領域30は通常、複数の補強要素、例えばニチノールまたは他の弾性、超弾性、あるいは形状記憶材料から形成され、例えばシリコーンまたは他のエラストマー材料である基材内に埋設されるかこれを囲む複数のジグザグ要素40を具える。基材42は実質的に非多孔性であって、すなわち、カニュレーション領域30の壁を通る流体の流れを妨げることができるが、任意選択的に、組織内殖が可能であり、例えば、周囲組織がカニュレーション領域30内へと成長したり、および/またはその外壁と係合することが可能である。補強要素40は、
図2Aに示すように、グラフト本体12の周りで円周方向に延在してもよいし、および/または、第1の端部32と第2の端部34との間でカニュレーション領域30の所望の長さだけグラフト本体12に沿って延在してもよい(図示せず)。例えば、補強要素40は、弛緩または低エネルギー状態にバイアスされているが、針または他のデバイスがカニュレーション領域30を通って管状グラフト10の管腔16に挿入できるように弾性変形可能であり得る。したがって、デバイスが除去されると、補強要素40は、元の配向に戻るように基材42を付勢し、それによって、カニュレーション領域30を通る様々な穿刺を封止することができる。カニュレーション領域30に使用することができる補強要素、基材、および/または構造を作成する方法の例示的な実施形態は、米国出願公開2013/0237929および2016/0199085に見ることができ、その開示全体が、参照により本明細書中に明示的に組み込まれる。
【0019】
[0047]
例えば、
図2Aに示す実施形態では、補強要素40は、例えば、本明細書中に参考により組み込まれる出願に記載された実施形態と同様に、チューブ、ワイヤまたはシートから、レーザー切断、機械的切断、スタンプ、機械加工などにより、連続リングまたは「C」字形カラーに形成されたニチノール材料の環状バンドとすることができる。各バンドは、グラフト本体12の周囲に少なくとも部分的に長手方向軸18に直交して延在することができる。例えば、各バンドは、湾曲した周方向コネクタ、ストラット、または要素によって隣接するストラットに交互に接続された対向する端部を含み、閉じた環状ジグザグまたは他の蛇行パターンを画定する、長手方向に延びる複数の長手方向ストラットを含むことができる。長手方向ストラットは、長手方向軸18に実質的に平行に延在するか、あるいは、長手方向軸18に対して斜めにまたは螺旋状に延在してもよい(図示せず)。
【0020】
[0048]
代替的に、補強要素40は、カニュレーション領域30の長さに沿って軸方向に延びるストラット、ワイヤ、または他の要素を含むことができる。例えば、複数の実質的にまっすぐなワイヤまたは他のフィラメント(図示せず)が基材42内に埋設されるか、他の方法で固定されていてもよい。これらのフィラメントは、針または他のデバイス(図示せず)を挿入可能なように十分な間隔を有し、本明細書の他の実施形態と同様に、貫通するデバイスを受け入れるようにフィラメントが横方向に移動し、弾性的に元の構成に戻ってカニュレーション領域30を実質的に密封する。あるいは、フィラメントは、少なくとも部分的に横方向に延びる正弦波状、ジグザグ状、螺旋状、または他のパターンを含むことができ、一方でフィラメントは、本明細書の他の箇所に記載されているように、例えば、カニュレーション領域30の端部32、34の間でほぼ軸方向に延在してもよい(図示せず)。
【0021】
[0049]
補強要素40の材料は、所望の仕上げおよび/または機械的特性を提供するために熱処理および/または他の方法で処理されてもよい。例えば、
図2Aに示すバンドは、例えば、当該バンドがグラフト本体12の外径よりも僅かに大きいか、実質的に等しいか、または小さい、所望の弛緩直径に付勢されているが、隣接する支柱および/またはバンド間に針または他のデバイス(図示せず)を受け入れるようにカニュレーション領域30の円周面内でこのバンドが未だ弾性的に変形可能であるように熱処理されてもよい。
【0022】
[0050]
例えば、1つの選択肢では、補強要素40は、隣接する基材に実質的に連続的な半径方向内向きの、すなわち下のグラフト本体12に向かって半径方向内向きの圧縮力を加え、参照により本明細書に組み込まれる出願に記載された実施形態と同様に、基材を貫通して形成された様々な通路の密閉性を向上させる。これを達成するために、補強要素40は、弛緩状態または低エネルギー状態でグラフト本体12の外径よりも小さい直径を画定するように形状設定されてもよく、補強要素40は、グラフト本体12の上にフィットするように例えば、基材42の中に埋設される前または後に弾性的に伸長されていてもよい。別の選択肢では、補強要素40がグラフト本体12の外径よりも大きな直径を画定し、例えば、この補強要素40が基材42内に埋設されたときに、グラフト本体12に対して内向きに半径方向の力を加えない半径方向の低エネルギー状態となるようにしてもよい。
【0023】
[0051]
あるいは、補強要素40は、半径方向内向きの力の代わりに、またはこれに加えて、本明細書の他の箇所に記載されている他の実施形態と同様に、実質的に連続的な軸方向の圧縮力を加えるようにしてもよい。例えば、補強要素40は、弛緩状態または低エネルギー状態で隣接する巻線間に所定の軸方向の間隔(例えば、ゼロまたはそれ以上)を画定するように形状設定され、この補強要素40が、基材42に埋設される前または後に、グラフト本体12の上に配置されるときに、本明細書の他の箇所に記載されているように、弾性的に軸方向に伸長するようにしてもよい。
【0024】
[0052]
任意選択的に、
図1および
図2Bに示す外側層44の代わりに、基材42がグラフト本体12の周囲に直接形成されている場合、すなわち補強要素40が同時に基材42内に埋め込まれている場合、カニュレーション領域30の外側面および端面の上などの任意の露出面の上にファブリック(図示せず)を適用してもよい。代替的に、補強要素40がグラフト本体12に取り付けられる前に基材42内に埋め込まれている場合、取り付けの前に外面、内面および端面にファブリックを適用してもよい。別の選択肢では、例えば、グラフト10が皮下移植かそうでなくとも患者の体内に移植された場合に、本書に参照により組み込まれる出願に開示されているように、カニュレーション領域30の位置決めを容易にするために、カニュレーション領域30は1以上の触覚要素、強磁性要素、エコー源要素など(図示せず)を含んでもよい。
【0025】
[0053]
特に
図2A、2Bを参照すると、ループ領域20はまた、ループ領域20の第1の長さに沿って管状グラフト12の周りに取り付けられた、そうでなくとも設けられた、1以上の補強要素22を含む。例えば、
図2Bに最もよく示されているように、補強要素22は、一方のカニュレーション領域30aから他方のカニュレーション領域30bまで、ループ領域20全体に沿って、周方向および/または軸方向に延在してもよい。あるいは、補強要素22は、例えば、ループ領域20のカーブに対応する第1の長さに沿って、カニュレーション領域30間に部分的にのみ延在してもよい。
【0026】
[0054]
補強要素22は、所定のフープ強度を提供し、および/または、下にあるグラフト本体12を支持して、ループ領域20が湾曲配向に配置されたときにグラフト本体12の材料が破断、潰れ、または座屈しないようにする様々な材料から形成することができる。例えば、
図3に示すように、ループ領域20は、例えばグラフト本体12の直径よりも小さい曲率半径を有する緊密なループに曲げられるか圧縮されてもよく、補強要素22は、グラフト本体12に取り付けられるか、そうでなくてもグラフト本体12を支持しており、このような小さな曲率半径でも管腔16を実質的に開状態に保持する。
【0027】
[0055]
例示的な実施形態では、補強要素22は、グラフト本体12の外径に近い半径を有する所望の湾曲または円周形状を画定するように形状設定された熱可塑性材料、例えば、ナイロン、PTFEまたはFEPから形成されてもよい。あるいは、他の材料、例えばニチノールや他の弾性または超弾性材料を使用してもよい。補強要素22は、所望の断面、例えば円形の断面、長円形または楕円形の断面、正方形または長方形の断面を有することができ、最大幅は約0.004~0.140インチ(0.1~3.5mm)、または約0.14インチ(3.5mm)以下である。
【0028】
[0056]
補強要素22は、例えば、シリコーン接着剤といった接着剤、融着、音波溶接などの結合によって、グラフト本体12の外面に実質的に恒久的に取り付けられてもよい。付加的または代替的に、外部スリーブまたは他の材料層(図示せず)を、例えば、締まりばめ、焼嵌め、接着、融着などによって補強要素22の周りに配置し、その周囲に固定してもよい。例えば、一実施形態では、補強要素22は、実際にグラフト本体の材料に結合することなく(例えば、ポケットを形成するように)グラフト本体12の周りに配備したり、および/または、補強要素22を下にあるグラフト本体12に結合するためにグラフト本体12の周囲にカプセル化してもよい。
【0029】
[0057]
例示的な実施形態では、補強要素22は、第1の長さの長手方向軸18に沿って配列された交互のループ(例えば、山24a、124aと谷24b、124b)を有する1以上の正弦波または他のジグザグ部材24、124を具えてもよい。ジグザグ部材24、124は、例えば、
図4C、5Cに示すような単純な正弦波形状を画定してもよいし、所望により、より複雑な形状の山と谷を画定してもよい。交互のループ24a、124a、24b、124bは、グラフト本体12の円周の周りに少なくとも部分的に延びる形状に設定されてもよい。したがって、ループ24a、124a、24b、124bは、グラフト本体12の外径に対応する長手方向軸18に直交する円弧を規定することができ、その円弧の長さは、例えばジグザグ部材24、124と、ループ領域20の所望の円周範囲とに応じて、全円周の所定部分とすることができる。
【0030】
[0058]
例えば、
図4A~4Dは、補強要素24が、グラフト本体12の円周の周りに互いに約180°ずれた一対の類似のジグザグ部材24(1)、24(2)を有する例示的な実施形態を示す。
図4A、4Bに示すように、各ジグザグ部材24は、交互のループ、すなわち、ループ領域20の長さに沿って交互にある山24aと谷24bを有し、これがグラフト本体12の円周の周りに部分的にのみ延在する。各ジグザグ部材24の交互のループは、1つのループによってジグザグ部24が互いに軸方向にオフセットした状態で、円周の周りの半分以上、すなわち180°よりも大きく、例えば約180°から300°の間に延在し、ジグザグ部材24の隣接するループ24a、24bがループ領域20の長さに沿って互いに少なくとも部分的に入れ子状に重なるようにしてもよい。例えば、各ジグザグ部材24が180°の円弧を規定する場合、全周が覆われる。各ジグザグ部材24が180°より大きい弧を規定する場合、ジグザグ部材24は入れ子状に重なり、提供される支持の剛性が高くなる。
【0031】
[0059]
例えば、
図4C(
図4A、4Bに示すジグザグ部材の2次元概略図)に見られるように、この構成では、第1のジグザグ部材24(1)の山24a(1)は、グラフト本体12の一方の側に沿って隣接する谷24b(2)と軸方向に並んでいてもよく(すなわち、ループ領域20に沿った湾曲の中心軸である軸18上で)、一方、第1のジグザグ部材24(1)の谷24b(1)は、反対側(すなわち、軸18の下)の第2のジグザグ部材24(2)の隣接する山24a(2)と軸方向に並んでもよい。したがって、ジグザグ部材24は、グラフト本体12の周りを囲み、折り曲げ時にグラフト本体12を支持するように部分的にかみ合いまたは重なり合う「クラムシェル」を画定することができる。さらに、ループ24a、24bを軸方向に並べることにより、グラフト本体12の一方の側に沿って軸方向の「スパイン(背骨)」26を形成し、これは大きな支柱密度を有し、グラフト本体12の反対側より大きな支持をもたらし得る。例えば、
図4Dに示すように、スパイン26がループ領域20のカーブの内側半径に沿って配置され、カーブの内側に沿った大きな支持を提供することができ、そうでなければ、ループ領域20を曲げたときにかかる所与の軸方向の圧縮力により潰れたり座屈したりしてしまう。ループ領域のスパイン26の反対側、すなわちカーブの外側半径に沿って位置する側の支柱密度はより小さく、従って、より提供される支持は小さいが、カーブの外側に必要な支持は小さい。なぜなら、ループ領域20が曲げられるとき、カーブの外側は軸方向の張力を受けるからである。
【0032】
[0060]
2つのジグザグ部材24が示されているが、代替的には、3つ、4つ、またはそれ以上(図示せず)のジグザグ部材が、カニュレーション領域30に沿って軸方向に延び、グラフト本体12の円周に沿って延在してもよい。この変形例では、ジグザグ部材は、隣接するジグザグ部材の交互のループが部分的に重なるように、円周の周りに分布されてもよい。例えば、4つのジグザグ部材の場合、各ジグザグ部材の交互のループは、山と谷が円周方向に隣接するジグザグ部材の対応する谷と山の間に入れ子状に重なるように、円周の4分の1より大きく、例えば90°より大きい弧を画定してもよい。
【0033】
[0061]
あるいは、
図5A~5Cに示すように、補強要素は、ループ領域20の所望の長さに沿ってグラフト本体112の円周の周りに部分的または全体的に延在する単一のジグザグ部材124を具えてもよい。例えば、
図5C(
図5A、5Bに示すジグザグ部材124の二次元概略図)に見られるように、この構成では、ジグザグ部材124の上側ループ124aが、隣接する下側ループ124bと軸方向に並んでもよい。ループ124a、124bのこの軸方向の整列はまた、グラフト本体12の一方の側に沿った軸方向の「スパイン」126を形成し、これが大きな支柱密度を有し、グラフト本体12の反対側より大きな支持をもたらす。
【0034】
[0062]
例えば、一実施形態では、上述したように、カーブの内側に沿ってより大きな支持を提供するために、スパイン126をループ領域20のカーブの内側半径に沿って配置することができる。あるいは、
図3に示すように、スパイン26を、例えばカーブの内側半径と外側半径との間に、カーブの内側半径から円周方向に約90°ずらすなどの別の周方向位置に配置することができる。
[0063]
例示的な実施形態では、ジグザグ部材124は、プラスチックワイヤ要素またはフィラメントを、ループ領域20の外径と同様の外径を有する円筒状のマンドレル(図示せず)の周囲に巻き付けることによって形成することができる。例えば、第2の小さいマンドレルを円筒状マンドレルに隣接配置し、ジグザグ部材124用のワイヤ要素を円筒状マンドレルの周りに第1の周方向に、より小さなマンドレルに隣接するまで部分的に巻いて、ここでワイヤ要素は小さなマンドレルの周りに巻かれ、次いで円筒状のマンドレルの周りの第2の周方向に巻かれ、これがワイヤ要素が再び(第1の方向とは反対の)小さなマンドレルに達するまで行われる。ワイヤ要素は、小さなマンドレルの周りに巻かれ、第1の方向に再び巻かれ、このプロセスが、ワイヤ要素が円筒状マンドレルの長さに巻かれるにつれて繰り返されてもよい。
【0035】
[0064]
ワイヤ要素は熱処理または他の方法で処理されて、得られた形状をワイヤ要素にセットすることができ、その後、円筒状マンドレルと小さなマンドレルを取り去ってジグザグ部材124が提供され、その後にこれをグラフト本体12に取り付けることができる。例えば、ワイヤ要素がナイロンまたは他の熱可塑性材料から形成されている場合、マンドレルを取り去る前に、応力除去および/または形状をジグザグ部材124に記憶させるためにワイヤ要素/マンドレルのアセンブリに熱風をかけることができる。次に、ジグザグ部材124は、グラフト本体112の周りに配置され、本明細書の他の箇所に記載されるように、ループ領域の所望の長さに沿ってグラフト本体112に取り付けることができる。あるいは、小さなマンドレルは、円筒状マンドレルを取り去った後にワイヤ要素と織り合わされたままとし、得られたジグザグ部材124をグラフト本体12の周囲に配置し、および/またはグラフト本体12に取り付け、その後に小さなマンドレルを取り去ってもよい。
【0036】
[0065]
軸方向に配向されたジグザグの補強要素の1つの利点は、当該補強要素が、例えば曲げや他の動きによるループ領域20の軸方向の伸長または圧縮に対応できることである。さらなる軸方向の補強が望まれる場合、ループ領域20の単位長さ当たりのジグザグ周期の数を、所望の軸方向の剛性を提供するように調節することができる。ジグザグの補強要素の別の利点は、ジグザグパターンから生じる非対称のジオメトリが、グラフト10の回転方向の視覚的インジケータを提供し得ることであり、蛍光透視法または他の外部イメージングにおいて、グラフト10に追加のマーカを設ける必要がない。例えば、針または他のデバイスをカニュレーション領域30に導入する前に、外部イメージングを用いて、確実に針が支持された領域に挿入されるように、補強要素および/またはループ領域20の向きを確認することができる。
【0037】
[0066]
図6A、6Bを参照すると、中間のループ領域120と、当該ループ領域120の両側の一対の自己シール型カニュレーション領域130とを具える管状グラフト110の別の実施形態が示されている。先の実施形態と同様に、グラフト110は、第1および第2の端部114a、114bと、これらの端部114a、114b間に延びる管腔116とを有する細長い管状グラフト本体112を具える。また、先の実施形態と同様に、ループ領域120は、1以上の補強要素(図示せず)を具え得る。あるいは、
図6C、6Dに示すように、管状グラフト本体112上に単一のカニュレーション領域130を有する、すなわちループ領域を有さない管状グラフト110’を提供することができる。
【0038】
[0067]
図示されているように、カニュレーション領域130は、先の実施形態と同様に、基材142内に埋設されるかこれを取り囲む1またはそれ以上の補強要素140を具える。しかしながら、
図6E~6Gに示すように、この実施形態では、補強要素は、カニュレーション領域130の周りに沿って延びる螺旋コイル140である。
図6Eに示すように、螺旋コイル140は、本明細書や参照により本書に取り込まれる他の出願の別の実施形態と同様に、グラフト本体112の外面の周りに巻き付けられ、または配置され、次いで、基材142、例えばシリコーンまたは他のエラストマー材料(図示せず)の中に埋設されるかこれを取り囲む。螺旋コイル140は、本明細書の他の実施形態と同様に、例えばレーザー切断、機械的切断、スタンピング、機械加工などにより、金属、例えばステンレス鋼、ニチノールなどから、または螺旋形状に形成されたワイヤから形成することができる。
【0039】
[0068]
図6F、6Gに転ずると、例示的な実施形態では、螺旋コイル140では、隣接するコイルが、
図6Fに示すように隣接するコイル間に互いに殆どまたは全く隙間なく接触している弛緩または低エネルギー状態を有する。組み立て時に、螺旋コイル140は、例えば
図6Gに示すように、長手方向に引き伸ばされて隣接するコイル間にギャップまたは空間を形成し、実質的に均一な、または他の所望の間隔を有し得る。次いで、螺旋コイル140は、自己シール型構造を提供するために、基材(図示せず)の内部または周囲に埋設される。螺旋コイル140を基材に埋め込んだ後に解放すると、螺旋コイル140は、その低エネルギー状態に戻るようにバイアスされる。その結果、螺旋コイル140は、基材に(およびグラフト本体112の材料と比較した螺旋コイル140の圧縮力と大きな剛性によっては、下にあるグラフト本体112に)初期の軸方向の圧縮力を加えることができ、針や他のデバイスが構造体を通して導入されたときの密封性が向上する。任意選択的に、螺旋コイル140は、例えば、螺旋コイル140をグラフト本体112よりも弛緩された、または低エネルギーの小さな直径を有するようにサイジングすることによって、基材142に半径方向の圧縮力を加えるようなサイズにすることができる。別の代替例では、例えば、螺旋コイル140が半径方向および/または軸方向の圧縮力を基材に加えないように、螺旋コイル140が弛緩および/または他の低エネルギー状態で基材142内に埋め込まれてもよい。このような構成は、グラフト本体112の内部管腔116の支持を提供することができ、例えばグラフト110の上にある患者の皮膚の外に外部圧力が加えられたときに管腔116が潰れるのが防止される。
【0040】
[0069]
例示的な実施形態では、例えば、(伸長状態および/または径方向に拡張した状態の)螺旋コイル140と、所望の長さのグラフト本体112を型のキャビティ内に配置し、当該キャビティに基材を充填することによって、基材をグラフト本体112および螺旋コイル140の周りに直接形成することができる。代替的に、例えばシート状または管状の基材の1またはそれ以上の層を、例えば、第1の層を螺旋コイル140とグラフト本体112との間に、第2の層を螺旋コイル140の上に(図示せず)など、グラフト本体112に巻き付け、摺動させ、または適用してもよい。基材は硬化させ、加熱され、および/または他の方法で処理されて、基材内に螺旋コイル140を埋設し、および/または基材と螺旋コイル140をグラフト本体112に取り付けることができる。選択的に、外側層(図示せず)を硬化後の基材上に適用してもよく、例えば
図2Bに示すものと同様のePTFEスリーブ、および/またはファブリックを露出面に適用して、カニュレーション領域30の所望の仕上げを提供することができる。
【0041】
[0070]
さらなる代替例では、本書に参照により組み込まれる出願に記載のように、螺旋コイル140が(ここでも延伸状態で)管状スリーブ内に形成された基材内に埋め込まれ、その後、グラフト本体112上に適用され、例えば接着剤で接着、融着などによりほぼ永久的に取り付けられてもよい。任意選択的に、この代替案では、スリーブをグラフト本体112に取り付ける前に露出面にファブリックを適用してもよいし、グラフト本体112に取り付けた後にスリーブの上に外側層(図示せず)を設けてもよい。基材に埋設された螺旋コイル140を有するカニュレーション領域の形成方法に関するさらなる情報が、参照により本書に組み込まれる出願に見出すことができる。
【0042】
[0071]
他の代替案では、カニュレーション領域を提供するために、複数の伸長されたらせん状のコイルが基材内に埋め込まれてもよい。例えば、
図7A~7Cは、基材142”内に埋設された第1および第2の螺旋コイル140a”、140b”を有するグラフト本体112上のカニュレーション領域130”を含む管状グラフト110”の別の実施形態を示す。任意で、カニュレーション領域130”は、本明細書の他の実施形態と同様に、外側スリーブ144”および/またはファブリックカバーを具えてもよい。
図7A、7Bに最もよく示すように、第1の螺旋コイル140a”は第1の螺旋方向に延びる巻線を有し、第2の螺旋コイル140b”は第1の方向とは反対の第2の螺旋方向に延びる巻線を有する。さらに、
図7Dに示すように、第2の螺旋コイル140b”は、第1の螺旋コイル140a”よりも大きい直径を有し、第2の螺旋コイル140b”が第1の螺旋コイル140a”の周りに同心円状に配置される(すなわち、螺旋コイルが共に編まれない)。一実施形態では、これらの直径は、第2の螺旋コイル140b”が重複点で第1の螺旋コイル140a”に接触するように設定され、あるいは、基材142”が螺旋コイル140”の間を流れ、または螺旋コイル140”の間に配置されて、それらを互いに離間させるように、第2の螺旋コイル140b”が第1の螺旋コイル140a”と離間している。この構成は、螺旋コイル間に生じ得るねじれ力が互いに打ち消しあうため、カニューレ形成領域130”に沿ってより均一な軸方向の圧縮を提供することができる。付加的または代替的に、重なり合う螺旋コイル140”は、より均一な外面を提供し、例えば、基材142”が螺旋コイル140”の間で外側に膨らむのを防止することができる。
【0043】
[0072]
図8A~8Cに転ずると、別の代替例では、同じ螺旋方向に延びる巻線を有する2つの螺旋コイル140’’’を含む管状グラフト110’’’上に、すなわち第2の螺旋コイル140b’’’が
図8Dに示すように第1の螺旋コイル140a’’’の周りに同心円状に配置された状態で、カニュレーション領域130’’’が設けられてもよい。この代替例では、第2の螺旋コイル140b’’’の巻線は、必要に応じて、第1の螺旋コイル140a’’’の巻線と軸方向に整列されてもよいし(同相)、またはそれらは互いにずれていてもよい(位相ずれ)。あるいは、同じ弛緩時の直径を有するが、例えば、半周期または他の所望の間隔だけ互いに軸方向にオフセットされた、2(またはそれ以上)の螺旋コイルを基材内に一緒に埋設するようにしてもよい。
【0044】
[0073]
図6A~6Cに戻ると、管状グラフト110は、カニュレーション領域130(基材142に埋設された1またはそれ以上の螺旋コイル140を含む)を介して動脈および静脈へのアクセスを提供するために、患者の体内、例えば患者の前腕内に移植することができる。グラフト110の管腔116へのアクセスが求められた場合、針および/または他のデバイス(図示せず)を、グラフト110の上の患者の皮膚を通して導入し、カニュレーション領域130の1つに通して管腔116内へと導く。
図6Aに示すようにカニュレーション領域130が螺旋コイル140(または
図7A~7Cまたは
図8A~8Cに示されるような複数のコイル140”または140’’’)を含む場合、針は、離隔している巻線間の隙間の1つを介してグラフト本体112の管腔内に通すことができる。選択的に、螺旋コイル140(
140”、140’’’)は、隣接する巻線間にデバイスを通せるように、円形または他の断面を有し得る。針または他のデバイスが取り去られると、螺旋コイル140(
140”、140’’’)による軸方向の圧縮力が穿刺部位を閉じるように基材142(
142”,142’’’)を付勢し、これによって管状グラフト110(110”、110’’’)の壁において実質的に液密シールが維持される。さらに、螺旋コイル140はまた、カニュレーション領域130の後側に沿って軸方向の圧縮力を加えるので、螺旋コイル140(140”、140’’’)は、針が不用意にグラフト本体112に完全に挿入されてカニュレーション領域130の反対側から出る場合でも、グラフト110からの偶発的な漏出、すなわち例えば浸潤に起因する皮下または真皮下の出血を防止することができる。
【0045】
[0074]
図9A~9Dを参照すると、補強部材のさらに別の実施形態、すなわち、
図1のカニュレーション領域30のような管状グラフトのカニュレーション領域の長さに沿って延びるジグザグ部材240が示されている(または、本明細書の他の実施形態と同様に、ジグザグ部材240は、パッチのための基材に埋め込まれてもよい)。
図9A~9Cに見られるように、ジグザグ部材240は、管状グラフト本体212の外面の周りに巻かれ、または他の方法で配置され、次いで、本明細書の他の実施形態や参照により本書に組み込まれる出願と同様に、例えばシリコーンや他の弾性材料の基材242に埋設されるかこれを取り囲む。図
9Dに最もよく示すように、ジグザグ部材240は、グラフト本体212の周囲の少なくとも一部に延び、カニュレーション領域の長さに沿って交互する交互ループ(すなわち山240aと谷240b)を有する。したがって、ループ240a、240bは、グラフト本体212の外径に対応する長手方向軸218に直交する円弧を規定し、その円弧長は、全円周の所定の部分である。
【0046】
[0075]
例えば、
図9Cは、グラフト本体212の円周の周りに部分的にのみ延在する(点線で示す)基材242に埋設されたジグザグ部材240の断面を示しており、例えば約180°
~360°または約180°~300°の範囲内の円弧角度θを規定している。この実施形態では、得られるカニュレーション領域は、
グラフト本体212の周りに部分的にのみ延在し、したがって移植時に、得られた管状グラフト10をカニュレーション領域を前方に、すなわちカニュレーション領域がアクセスされる皮膚に向けて移植することができる。
【0047】
[0076]
図10A~10Dに転ずると、基材242内に埋設され、管状グラフト本体212の周囲に取り付けられてカニュレーション領域230を実現する(または本明細書の他の実施形態と同様にパッチ用に基材内に埋設される)一対の補強部材240(1)、240(2)を具える別の実施例が示されている。各補強部材240は、
図9Dに示すものと同様、グラフト本体212の周囲の少なくとも一部に延在し、カニュレーション領域の長さに沿って交互に繰り返される交互のループ(すなわち山240aと谷240b)を具えるジグザク部材として形成されてもよい。あるいは、ジグザグ部材240の一方または両方は、より複雑な繰り返しパターンを規定してもよく、
図11に示すジグザグ部材340と同様に、非線形の山340aと谷340bを規定する形状を有してもよい。この変形例は、パターンの弧に沿った圧縮量を変える機能を提供し、または管腔の最終形状に影響を与える。例えば、より複雑な形状とすると、カニュレーション領域230に沿った任意の場所における圧縮の程度を制御し、および/またはジグザグ部材340で覆われていない領域の特定の形状を制御して、針とジグザグ部材340の接触を最小限とすることができる。
【0048】
[0077]
図10C、10Dに見られるように、第1のジグザグ部材240(1)がグラフト本体212の外径よりも大きい第1の曲率半径を規定し、第2のジグザグ部材240(2)が第1の
曲率半径より大きい第2の曲率半径を規定しており、第2のジグザグ部材240(2)が第1のジグザグ部材240(1)から半径方向外側に、例えば約0~5.0mmの所望の距離δだけ離間している。あるいは、ジグザグ部材240は、同じ直径へと付勢されているが、例えば、半周または他の所望の間隔だけ互いに軸方向にオフセットしてもよい。
【0049】
[0078]
さらに、
図10A、10Bに見られるように、ジグザグ部材240は、例えば半周だけ互いに軸方向にオフセットしており、山と谷がカニュレーション領域に沿って均等な間隔となるようにしてもよい。ジグザグ部材240が重なるようにすることにより、基材242により均一な圧縮力を提供し、膨らみを低減し、および/または基材242へのワイヤ密度が高まり、本明細書に記載される他の実施形態と同様に、穿刺後のカニュレーション領域の自己シール性を向上することができる。さらに、内側ジグザグ部材240と外側ジグザグ部材240とを有することにより、基材242の厚さを通して、より均一な圧縮力、すなわちシール力を提供することができる。
【0050】
[0079]
選択的に、内側ジグザグ部材240および外側ジグザグ部材240の特性を変えてもよく、すなわち外側ジグザグ部材240(2)が異なる弾性、厚さ、および/または他の機械的特性を有して、ジグザグ部材240間で異なるコンプライアンスを提供し、これによりカニュレーション領域230の内面および外面に向かう特性を変化させることができる。例えば、中立軸がカニュレーション領域に沿ってどこにあるかに依存して、内側および/または外側のジグザグ部材240による大きな、あるいは小さな圧縮により、カニュレーション領域230が望ましくない態様で湾曲または屈曲するのを防ぐことができる。付加的または代替的に、ジグザグ部材240の形状および/または他の機械的特性は、例えば、カニュレーション領域230の長さに沿って異なるコンプライアンスおよび/または他の特性を提供するように、それらの長さに沿って変化させることができる。
【0051】
[0080]
図12A~12Fを参照すると、上述のカニュレーション領域と同様に、基材442に埋設された複数の補強要素440を有する自己シール型パッチ430の例示的な実施形態が示されている。全体として、パッチ430は、第1および第2の端部432を具え、両端部432の間に延在する対向する側縁部434を有する「C」字形断面を画定し、それにより内側管腔または凹部436を規定する細長い本体である。
【0052】
[0081]
図12Eに最もよく示されているように、パッチ430は、180°より大きい、例えば約180°~360°または約180°~300°の円弧を規定するカフとして形成することができ、凹部436内に管状構造物(図示せず)を受容できるように寸法形成されている。あるいは、パッチ430は、本明細書に参照により組み込まれる出願に記載されているように、パッチ430の内面が組織または他の身体構造に取り付けられるように、実質的に平坦または湾曲した形状(図示せず)を有してもよい。例えば、本明細書や本書に参照により組み込まれる出願に記載されているグラフトと同様に、補強要素440および基材442は、パッチ430を管状グラフト(図示せず)などの管状構造物の上および周りに配置可能にするために、側縁部434を分離できるように十分に可撓性であってもよい。
【0053】
[0082]
図12Eに最もよく示すように、補強要素440は、内側ジグザグ部材440aと外側ジグザグ部材440bとを具える。各ジグザグ部材440は、パッチ430の周囲に少なくとも部分的に延在し、パッチ430の所望の長さに沿って交互に配置された交互のループ(すなわち山と谷)を有する。図示された実施形態では、各ジグザグ部材440の隣接する山と谷は軸方向に離間しており、一方の側縁部434に沿ったジグザグ部材440aの山が、反対側の側縁部434の他の
ジグザグ部材440bの谷に軸方向に並ぶように、ジグザグ部材440は軸方向に互いにオフセットされている。
【0054】
[0083]
先の実施形態と同様に、外側
ジグザグ部材440bは、内側
ジグザグ部材440aよりも大きな直径を有し、(内側
ジグザグ部材440aを外側
ジグザグ部材440bに編み込んだり、別の方法で重ねることなく)外側
ジグザグ部材440bが内側
ジグザグ部材440aの周りに同心円状に配置されてもよい。さらに、外側
ジグザグ部材440bは、内側
ジグザグ部材440aから間隔をあけて配置され、すなわち基材442が
ジグザグ部材440の間に配置されてもよいし、または
図12Bに最もよく示すように、パッチ430の頂部の重複点441で外側
ジグザグ部材440bが内側
ジグザグ部材440aと接触してもよい。
【0055】
[0084]
図13A~13Fを参照すると、基材542内に埋設された複数の補強要素540を有する自己シール型パッチ530の別の例示的な実施形態が示されている。全体として、パッチ430と同様に、パッチ530は第1および第2の端部532を含み、対向する端部532間に延在する対向する側縁部534を有する「C」字形の断面を規定する細長い本体であり、これにより管腔または凹部536を画定している。選択的に、図示されるように、側端部534は、例えばパッチ530を管状構造体上に配置し易くするために、両端部532で面取りおよび/または丸くされてもよい。
【0056】
[0085]
この実施形態では、補強要素540は、内側ジグザグ部材540aと、内側
ジグザグ部材540aの周囲に同心に配置された外側ジグザグ部材540bとをさらに具える。
図13Eに最もよく示すように、各ジグザグ部材540は、先の実施形態と同様に、パッチ530の円周の周りに少なくとも部分的に延在し、パッチ530の所望の長さに沿って交互にある交互のループ(すなわち山と谷)を具える。この実施形態では、パッチ530の円弧はパッチ430の円弧より小さく、ジグザグ部材540のパッチ530の長さに沿った周方向の幅はジグザグ部材440よりも小さい。ジグザグ部材440、540の形状および/または周期は、他の補強要素について前述したように、所望のコンプライアンスおよび/または他の機械的特性を提供するように変更されてもよいことは理解されよう。
【0057】
[0086]
以上、本発明の実施形態を説明した。当業者は、多くの実施形態が本発明の範囲内で可能であることを認識するであろう。本明細書に記載された様々な構成要素および方法の他の変形、修正、および組み合わせは確かに可能であるが、依然として本発明の範囲内に含まれる。例えば、本明細書に記載のデバイスのいずれかを、本明細書にも記載されている送達システムおよび方法のいずれかと組み合わせることができる。
【0058】
[0087]
本発明の実施形態を図示し説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更を行うことができる。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物を除いて、限定されるべきではない。