(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】新規のベータ-ラクトグロブリン調製物の製造ならびに関連する方法、使用および食品
(51)【国際特許分類】
A23J 1/20 20060101AFI20230208BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20230208BHJP
A23L 33/19 20160101ALN20230208BHJP
A23L 2/52 20060101ALN20230208BHJP
A23L 2/66 20060101ALN20230208BHJP
A23L 2/38 20210101ALN20230208BHJP
【FI】
A23J1/20
A23L5/00 M
A23L33/19
A23L2/00 F
A23L2/00 J
A23L2/38 P
(21)【出願番号】P 2019533532
(86)(22)【出願日】2017-12-22
(86)【国際出願番号】 EP2017084553
(87)【国際公開番号】W WO2018115520
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-11
(32)【優先日】2016-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514140089
【氏名又は名称】アーラ フーズ エエムビエ
【氏名又は名称原語表記】Arla Foods amba
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】バートルセン,ハンス
(72)【発明者】
【氏名】ラウリツェン,キャスパー ブーグロンド
【審査官】山本 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-218755(JP,A)
【文献】米国特許第05961934(US,A)
【文献】特表2015-517306(JP,A)
【文献】特開2013-053053(JP,A)
【文献】特表平08-508168(JP,A)
【文献】特開2011-206054(JP,A)
【文献】米国特許第02790790(US,A)
【文献】米国特許第04659667(US,A)
【文献】LARSON, B. L. et al,origin of the major specific protein in milk,JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,vol.227, no.2,1957年,pp.565-573
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトが消費するのに安全である食用組成物であって結晶化形態でベータ-ラクトグロブリン(BLG)を含む食用組成物を調製する方法であって、当該方法が
a)BLGおよび少なくとも1種の追加のホエイタンパク質を含むホエイタンパク質溶液を提供するステップであって、前記ホエイタンパク質溶液は、
- BLGに関して過飽和であり、かつ5~6の範囲のpHを有し、
- タンパク質の総量に対して最大85重量/重量%の量でBLGを含み、
- 前記ホエイタンパク質溶液は、最大5mS/cmの導電率を有するか、または
- 前記ホエイタンパク質溶液の導電率(mS/cmで表される)とタンパク質の総量(前記ホエイタンパク質溶液の総重量に対する総タンパク質の重量%で表される)との間の比は、最大0.3である、ステップと、
b)塩溶モードにおいて、前記過飽和ホエイタンパク質溶液中でBLGを結晶化させるステップと、
c)任意選択で、前記残存するホエイタンパク質溶液からBLG結晶を分離するステップと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、BLG結晶、例えばステップc)から得られた前記分離された結晶を洗浄するステップd)をさらに備えることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、BLG結晶、例えばステップc)またはd)から得られた前記BLG結晶を再結晶化させるステップe)をさらに備えることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の方法において、ステップb)、c)、d)またはe)に由来するBLG含有組成物を乾燥させるステップf)をさらに備えることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の方法において、ステップa)の前記ホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも5重量/重量%のアルファ-ラクトアルブミン(ALA)を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の方法において、ステップa)の前記ホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも15重量/重量%の追加のホエイタンパク質を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の方法において、ステップa)の前記ホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも1重量/重量%のBLGを含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の方法において、ステップa)の前記ホエイタンパク質溶液は、前記ホエイタンパク質溶液の重量に対して少なくとも0.4重量/重量%のBLGを含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の方法において、前記ホエイタンパク質溶液は、乳清タンパク質濃縮物、ホエイタンパク質濃縮物、乳清タンパク質単離物および/またはホエイタンパク質単離物を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載の方法において、前記過飽和ホエイタンパク質溶液は、ホエイタンパク質原材料を下記の調整:
- pHを調整すること、
- 導電率を減少させること、
- 温度を低下させること、
- タンパク質濃度を増加させること、および
- 水分活性を減少させる薬剤を添加すること
の1つまたは複数にかけることによって調製されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、前記ホエイタンパク質溶液の前記調製は、前記ホエイタンパク質原材料のpHを調整することを伴うことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項10または11に記載の方法において、前記ホエイタンパク質溶液の前記調製は、前記ホエイタンパク質原材料の導電率を減少させることを伴うことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項10乃至12の何れか1項に記載の方法において、前記ホエイタンパク質溶液の前記調製は、前記ホエイタンパク質原材料の温度を低下させることを伴うことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項10乃至13の何れか1項に記載の方法において、前記ホエイタンパク質溶液の前記調製は、前記ホエイタンパク質原材料の総タンパク質濃度を増加させることを伴うことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1乃至14の何れか1項に記載の方法において、ステップb)のBLGの結晶化は、下記:
- 結晶化が起こるのを待つこと、
- 結晶化種の添加、
- BLGの過飽和度の度合いをさらに増加させること、および/または
- 機械的刺激
の1つまたは複数を伴うことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1乃至15の何れか1項に記載の方法において、ステップc)は、前記BLG結晶を少なくとも30重量/重量%の固形分まで分離するステップを備えることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1乃至15の何れか1項に記載の方法において、ステップc)は、前記BLG結晶を少なくとも40重量/重量%の固形分まで分離するステップを備えることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1乃至15の何れか1項に記載の方法において、ステップc)は、前記BLG結晶を少なくとも50重量/重量%の固形分まで分離するステップを備えることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項2乃至18の何れか1項に記載の方法において、ステップd)における前記洗浄は、前記BLG結晶を完全に溶解させることなく、前記分離されたBLG結晶を洗浄液と接触させ、かつ続いて前記残存するBLG結晶を前記洗浄液から分離することを伴うことを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、ステップd)の前記洗浄は、BLG結晶の最初の量の最大80重量/重量%を溶解させることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項19に記載の方法において、ステップd)の前記洗浄は、BLG結晶の最初の量の最大50重量/重量%を溶解させることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項19に記載の方法において、ステップd)の前記洗浄は、BLG結晶の最初の量の最大20重量/重量%を溶解させることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項3乃至22の何れか1項に記載の方法において、前記再結晶ステップは、
- 前記分離されたBLG結晶を再結晶液に溶解させること、
- 前記再結晶液を調整して、BLGに関して過飽和を得ること、
- 前記過飽和の調整された再結晶液中でBLGを結晶化させること、および
- 前記残存する調整された再結晶液からBLG結晶を分離すること
を伴うことを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項3乃至23の何れか1項に記載の方法において、ステップd)のBLG結晶は、少なくとも2回再結晶化されることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項4乃至24の何れか1項に記載の方法において、前記乾燥ステップは、噴霧乾燥、凍結乾燥、スピンフラッシュ乾燥機、回転乾燥および/または流動床乾燥の1つまたは複数を伴うことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単離ベータ-ラクトグロブリン組成物および/または結晶化したベータ-ラクトグロブリンを含む組成物を製造する新規の方法に関する。本発明は、新規のベータ-ラクトグロブリン組成物、これらの組成物の使用およびこれらの組成物を含む食品にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
乳タンパク質の分画の概念は、当分技術野で公知であり、特定の特性および特徴をそれぞれ有する様々な乳タンパク質種に富む組成物を調製するための一連の技術に過去数十年で発展している。
【0003】
乳清またはホエイからのベータ-ラクトグロブリン(BLG)の単離は、多くの刊行物の主題であり、典型的には、精製されたベータ-ラクトグロブリン生成物を得るために多数の分離ステップおよび多くの場合にクロマトグラフィー技術を伴う。
【0004】
例えば、de Jonghら(Mild Isolation Procedure Discloses New Protein Structural Properties of β-Lactoglobulin,J Dairy Sci.,vol.84(3),2001,pages 562-571)は、カゼインの低温酸凝固ならびに得られた酸ホエイをアフィニティクロマトグラフィー(DEAE Sepharose)およびゲル浸透クロマトグラフィーの組合わせにかけることによる、新たに搾乳された乳からのBLGの精製を説明した。得られたBLG組成物は、タンパク質1g当たりベータ-ラクトグロブリン0.985gを含むと述べられた。
【0005】
Slackら(Journal of Food Processing and Preservation,vol.10,1986,pages 19-30)は、様々なアプローチを調査し、脱塩酸ホエイおよびスイートホエイのpHをpH4.65に調整し、形成された沈殿物を遠心分離およびデカンテーションにより分離することにより、BLG強化沈殿物を調製した。得られた沈殿物ペレットは、比較的不溶性であると説明されており、追加のBLG中に相当量のタンパク質不純物を含んだ。結晶の形成は、観察されなかった。pH4.65で形成され得るBLG沈殿物は、BLG結晶ではないことに留意すべきである。
【0006】
Palmer(Crystalline Globulin from Cow’s Milk,J.Biol.Chem.,Vol.104,1934,pages359-372)は、望ましくないタンパク質の塩析沈殿、pH調整および他の望ましくないタンパク質を除去するための透析のいくつかのシーケンスを使用して、酸ホエイをベースとしてタンパク質結晶を製造するための面倒で時間がかかるプロセスを報告した。最後に、高純度のBLG溶液が得られた場合、BLGが結晶化された。このプロセスは、12日を超えて続き、さらにトルエンの添加を必要とした。従って、Palmerにより開示された手順は、安全な食品製造と相容れず、明らかに食用でない生成物が生じる。
【0007】
Aschaffenburgら(Improved Method for the Preparation of Crystalline beta-Lactoglobulin and alpha-Lactalbumin from Cow’s Milk,Bioch.,vol.65,1957,pages273-277)は、Palmerのプロセスと比較して改善されたプロセスを開示し、この改善により、数週間ではなく数日ほどでベータ-ラクトグロブリン結晶の調製が可能である。しかしながら、この改善された方法は、依然として結晶化前に望ましくないタンパク質の除去を必要とし、さらに結晶化のためにトルエンを用い、このトルエンの使用により、この方法は、安全な食品製造と相容れない。
【0008】
特開平10-218755号公報は、有効成分としてBLGを含むメラニン生成阻害剤を含む化粧品組成物の製造を開示している。この文献では、BLGが例えば下記のプロセスによって単離され得ることがさらに示唆されている:乳に塩酸を添加してカゼインを沈殿させ、続いてろ過してホエイを得る。このホエイのpHを6.0に調整し、硫酸アンモニウムを半飽和量で添加し、沈殿したタンパク質を塩析により除去し、ろ液を回収する。このろ液を硫酸アンモニウムで飽和させ、沈殿したタンパク質を回収する。回収したタンパク質を水に再度溶解させ、pH5.2で透析して結晶を分離し、β-ラクトグロブリンをホエイ1Lから約1.8gの割合で調製する。しかしながら、特開平10-218755号公報で説明されている提案されたプロセスの一般的なプロセスステップは、BLG結晶を形成するには不十分である。従って、この文献は、BLGの結晶化またはBLG結晶を可能にする開示を含まない。
【0009】
米国特許第2790790号明細書は、溶液からのタンパク質の沈殿プロセスを開示しており、より具体的には、沈殿剤としての塩化ナトリウムの使用による水溶液からの比較的非共役のタンパク質の分別沈殿のための沈殿プロセスを開示している。このプロセスは、pH3.6~3.8でのNaCl誘導沈殿によるBLGの単離に有用であると示唆されている。この文献の実施例IIでは、NaCl沈殿物を通常の方法で透析して、結晶性B-ラクトグロブリンを形成し得ることが示唆されている。しかしながら、米国特許第2790790号明細書は、pH3.6~3.8でのBLG結晶の形成が実際に可能であることを実証しておらず、BLG沈殿物を透析する「通常の方法」の意味への言及も含まれていない。従って、この文献は、BLGの結晶化およびBLG結晶を可能にする開示を含まない。
【発明の概要】
【0010】
偶然にも、本発明者らは、トルエン等の有機溶媒を使用することなく、BLGに加えて他のホエイタンパク質の相当量を含む粗ホエイタンパク質溶液中で高純度のBLG結晶を直接調製し得るという驚くべき発見をした。これは、タンパク質を結晶化させることを望み得る前に、このタンパク質を高度に精製しなければならないこと、および全てのタンパク質が結晶化され得るわけではないことを教示する当技術分野での共通の一般常識に反する。
【0011】
この発見は、乳業界における、ホエイタンパク質を取り扱って分別する方法を変える可能性を有し、食品成分として安全に使用される高純度BLGの効率的かつ穏やかな製造を開くものである。
【0012】
そのため、本発明の一態様は、結晶化形態および/または単離形態でベータ-ラクトグロブリン(BLG)を含む食用組成物を調製する方法であって、
a)BLGおよび少なくとも1種の追加のホエイタンパク質を含むホエイタンパク質溶液を提供するステップであって、前記ホエイタンパク質溶液は、BLGに関して過飽和であり、かつ5~6の範囲のpHを有する、ステップと、
b)この過飽和ホエイタンパク質溶液中でBLGを結晶化させるステップと、
c)任意選択で、残存するホエイタンパク質溶液からBLG結晶を分離するステップと
を含む方法に関する。
【0013】
本発明者らは、BLG結晶を含む粉末形態の食用ホエイタンパク質組成物が、先行技術の同等の組成物と比べて有意に高い嵩密度を有することをさらに発見した。これは、この粉末の取扱いを容易にして埃っぽさを少なくすることから有利である。
【0014】
そのため、本発明の別の態様は、例えば、本明細書で説明された1つまたは複数の方法によって得ることができる、結晶化形態および/または単離形態でベータ-ラクトグロブリンを含む食用組成物に関する。この食用組成物は、例えば、BLG結晶を含み、かつ少なくとも0.40g/mLの嵩密度を有する粉末であり得る。代わりに、この食用阻止物は、BLG結晶を含む液体懸濁液またはスラリーであり得る。
【0015】
本発明に関連して、「BLG結晶」を含む乾燥製品(例えば、粉体)は、BLG結晶の懸濁液の乾燥から得られる生成物を含み、この湿ったBLG結晶の結晶構造は、この乾燥プロセス中に歪んでいる場合があり、X線回折の特徴を少なくとも部分的に喪失している場合がある。同じように、用語「乾燥BLG結晶」および「乾燥されたBLG結晶」は、湿ったBLG結晶の乾燥から得られる粒子を指し、この乾燥粒子は、それ自体が結晶構造を有する必要はない。しかしながら、本発明者らは、乾燥BLG結晶を冷(4℃)脱塩水に水2部対乾燥BLG結晶1部の重量比で再懸濁させる場合、このBLG結晶が再水和し、乾燥前と実質的に同一の結晶構造(空間群の種類および単位格子の寸法)を回復することを観察した。
【0016】
BLGは、必須アミノ酸(例えば、ロイシンを含む)の大きい供給源であることが公知であり、従って、本発明により提供される食用BLG組成物は、いくつかの興味深い栄養学的用途を有する。
【0017】
本発明のさらなる態様は、斜方晶の空間群P212121ならびに単位格子の寸法a=68.68(±5%)Å、b=68.68(±5%)Åおよびc=156.65(±5%)Åを有する単離BLG結晶に関し、この結晶は、単位格子の整数角α=90°、β=90°およびγ=90°を有する。
【0018】
さらに、本発明のある態様は、食品成分としての、本明細書で定義された食用組成物の使用に関する。
【0019】
本発明のさらなる態様は、本明細書で定義された食用組成物と、脂肪源および/または炭水化物源とを含む食品に関する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、スイートホエイをベースとする粗ホエイタンパク質溶液(実線)および結晶化後に得られた母液(破線)の2つの重ね合わせたクロマトグラムを示す。実線と破線との間の差異は、取り出されたBLG結晶に起因する。
【
図2】
図2は、実施例1から回収したBLG結晶の顕微鏡写真である。
【
図3】
図3は、実施例1から回収したBLG結晶のクロマトグラムである。
【
図4】
図4は、ホエイタンパク質溶液の導電率と、回収したBLG結晶の得られた収率との間の関係のプロットである。
【
図5】
図5は、ホエイタンパク質溶液の温度および導電率と、回収したBLG結晶の得られた収率との間の関係のプロットである。
【
図6】
図6は、ホエイタンパク質溶液の総タンパク質含有量(このタンパク質含有量に比例するBrix度により間接的に示される)と、回収したBLG結晶の得られた収率との間の関係を示す。
【
図7】
図7は、実施例3の原材料(feed)1(実線)ならびに結晶化およびBLG結晶の取り出し後に得られた母液(破線)のクロマトグラムを示す。
【
図8】
図8は、実施例3の原材料1の結晶化の初期段階中に採取した試料の顕微鏡写真である。
【
図9】
図9は、実施例3の原材料1の結晶化の完了後に採取した試料の顕微鏡写真である。
【
図10】
図10は、実施例3の原材料1から得られた洗浄したBLG結晶のクロマトグラムを示す。
【
図11】
図11は、実施例3の原材料2(実線)ならびに結晶化およびBLG結晶の取り出し後に得られた母液(破線)のクロマトグラムを示す。
【
図12】
図12は、結晶化前(左側の写真)および後(右側の写真)の実施例3の原材料2の写真を示す。
【
図13】
図13は、実施例3の原材料2から得られたBLG結晶(全体よび断片の両方)の顕微鏡写真を示す。
【
図14】
図14は、BLG結晶スラリーの導電率の上昇またはpHの変更によりBLG結晶が溶解することを示す。
【
図15】
図15は、BLG結晶スラリーの導電率の上昇またはpHの変更によりBLG結晶が溶解することを示す。
【
図17】
図17は、結晶化前(左側の写真)および後(右側の写真)の実施例3の原材料3の写真を示す。
【
図18】
図18は、実施例3の原材料3から回収したBLG結晶の顕微鏡写真である。
【
図19】
図19は、いかなる洗浄ステップも伴わない実施例3の原材料3の回収したBLG結晶のクロマトグラムを示す。
【
図20】
図20は、回収したBLG結晶の収率への導電率の増加の影響を示す。
【
図21】
図21は、4.20mS/cmの導電率で形成されたBLG結晶の顕微鏡写真を示す。
【
図22】
図22は、SPCベースのホエイタンパク質溶液の結晶化の初期段階からのBLG結晶の顕微鏡写真を示す。
【
図23】
図23は、標準的なホエイタンパク質単離物(WPI)の嵩密度と、BLG結晶を含む本発明の高純度BLG組成物の嵩密度との差異を示す。
【
図24】
図24は、実施例3、原材料1のBLG結晶が母液から分離されているスピンフィルタの写真である。
【
図25】
図25は、実施例8の6種の低リン飲料試料の部分試料の写真である。左から右に、部分試料は、試料A、B、C、D、EおよびFである。
【
図26】
図26は、母液からのBLG結晶の分離のためにDCFを使用する、実施例10の結晶化プロセスの変形形態を示す概略図である。
【
図27】
図27は、フィルタ遠心分離器を使用したBLG結晶と母液との分離から得られたフィルタケーキの3枚の写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上述したように、本発明のある態様は、結晶化形態および/または単離形態でベータ-ラクトグロブリン(BLG)を含む食用組成物を調製する方法であって、
a)BLGおよび少なくとも1種の追加のホエイタンパク質を含むホエイタンパク質溶液を提供するステップであって、前記ホエイタンパク質溶液は、BLGに関して過飽和であり、かつ5~6の範囲のpHを有する、ステップと、
b)この過飽和ホエイタンパク質溶液中でBLGを結晶化させるステップと、
c)任意選択で、残存するホエイタンパク質溶液からBLG結晶を分離するステップと
を含む方法に関する。
【0022】
本発明に関連して、用語「食用組成物」は、ヒトが消費しかつ食品成分として使用するのに安全であり、および毒性成分(例えば、トルエンまたは他の望ましくない有機溶媒)の問題となる量を含まない組成物に関する。BLGは、ウシホエイおよび乳清中で最も優性なタンパク質であり、いくつかの遺伝子バリアントで存在し、牛乳中における主なものは、AおよびBと標識されている。BLGは、リポカリンタンパク質であり、多くの疎水性分子に結合し得、この疎水性分子の輸送における役割を示唆する。BLGは、シデロホアを介して鉄に結合し得ることも分かっており、病原体への対処において役割を有し得る。BLGの同族体は、ヒトの母乳で欠如している。
【0023】
ウシBLGは、分子量が約18.3~18.4kDaである、約162個のアミノ酸残基の比較的小さいタンパク質である。生理学的条件下では、このウシBLGは、主に二量体であるが、約pH3未満で単量体に解離し、NMRを使用して決定されるように、この単量体の天然状態を保持する。反対に、BLGは、様々な天然条件下において四量体、八量体および他の多量体凝集形態でも生じる。
【0024】
凝集を可能にするように天然構造が十分に不安定化されている場合、BLG溶液は、様々な条件下でゲルを形成し得る。低pHおよび低イオン強度での長期にわたる加熱下で透明な「微細鎖状」ゲルが形成され、このゲル中では、タンパク質分子が長くて硬い繊維に集合する。
【0025】
本発明に関連して、用語「BLG」または「ベータ-ラクトグロブリン」は、例えば、天然形態および/またはグリコシル化形態における哺乳動物種由来のBLGに関し、天然に存在する遺伝子バリアントを含む。
【0026】
本発明に関連して、用語「結晶」は、構成要素(例えば、原子、分子またはイオン)が非常に規則的な微視的構造で配置されている固体材料に関し、全方向に延びる結晶格子を形成する。BLG結晶は、非常に規則的な微視的構造で配置されているBLGを主に含むタンパク質結晶であり、全方向に延びる結晶格子を形成する。BLG結晶は、例えば、モノリシックまたは多結晶質であり得、かつ例えば無傷の結晶、結晶の断片またはこれらの組合わせであり得る。結晶の断片は、例えば、無傷の結晶が加工中に機械的剪断にかけられる場合に形成される。結晶の断片は、結晶の非常に規則的な微視的構造も有するが、無傷な結晶の均一な表面および/または均一な縁もしくは角を欠いている場合がある。例えば、多くの無傷のBLG結晶の一例については
図18を、BLG結晶の断片の一例については
図13を参照されたい。両方の場合において、BLG結晶または結晶断片は、光顕微鏡を使用して明確に定義されたコンパクトでコヒーレントな構造として視覚的に識別され得る。BLG結晶または結晶断片は、少なくとも部分的に透明であることが多い。タンパク質結晶は、複屈折性であることがさらに知られており、この光学特性を使用して、結晶構造を有する未知の粒子を同定し得る。他方では、非結晶性BLG凝集体は、明確に定義されておらず、不透明であり、かつ不規則なサイズの目の粗いまたは多孔質の塊として見える。
【0027】
本発明に関連して、用語「結晶化させる」は、タンパク質結晶の形成に関する。結晶化は、例えば、自発的に起き得るか、または結晶化種の添加によって開始され得る。
【0028】
本食用組成物は、結晶化形態および/または単離形態でBLGを含む。単離形態でBLGを含む食用組成物は、総固形物に対して少なくとも80%(重量/重量)のBLGを含む。結晶化形態でBLGを含む食用組成物は、少なくともいくつかのBLG結晶、好ましくは相当量のBLG結晶を含む。
【0029】
BLG結晶は、多くの場合に顕微鏡で観察され得、さらに目に見えるサイズに達する場合がある。
【0030】
本発明に関連して、「過飽和」または「BLGに関して過飽和」である液体は、所与の物理的条件および化学的条件において、この液体中のBLGの飽和点を超える濃度の溶解BLGを含む。用語「過飽和」は、結晶化の分野で公知であり(例えば、Gerard Coquerela,“Crystallization of molecular systems from solution:phase diagrams,supersaturation and other basic concepts”,Chemical Society Reviews,p.2286-2300,Issue 7,2014を参照されたい)、過飽和を多くの異なる測定技術により(例えば、分光法または粒径分析により)決定し得る。本発明に関連して、BLGに関する過飽和は、下記の手順により決定される。
【0031】
BLGに関して特定の条件で液体が過飽和であるかどうかを試験する手順:
a)試験する液体の試料50mlを高さ115mm、内径25mmおよび容量50mLの遠心分離チューブ(VWRカタログ番号525-0402)に移す。ステップa)~h)中、試料およびその後のその画分をこの液体の元々の物理的条件および化学的条件で保つように注意すべきである。
b)この試料を最大30秒の加速および最大30秒の減速で3.0分にわたり3000gで直ちに遠心分離する。
c)遠心分離の直後に、(ペレットが形成されている場合、このペレットを乱すことなく)上清を可能な限り多く第2の遠心分離チューブ((ステップa)と同じタイプ)に移す。
d)この上清の部分試料0.05mLを採取する(部分試料A)。
e)第2の遠心分離チューブに、最大200ミクロンの粒径を有するBLG結晶(総固形物に対して少なくとも98%の純BLG)10mgを添加し、この混合物を撹拌する。
f)この第2の遠心分離チューブを元々の温度で60分にわたり放置する。
g)ステップf)の直後に、この第2の遠心分離チューブを10分にわたり500gで遠心分離し、次いで上清の別の部分試料0.05mLを採取する(部分試料B)。
h)ステップg)の遠心分離ペレットが存在する場合、このペレットを回収し、このペレットをmilliQ水に再懸濁させ、顕微鏡により見える結晶の存在に関してこの懸濁液を直ちに検査する。
i)実施例9.9で概説する方法を使用して、部分試料A中のおよび部分試料B中のBLGの濃度を決定し、結果を部分試料の総重量に対する重量/重量% BLGとして表す。部分試料AのBLGの濃度は、CBLG,Aと称され、部分試料BのBLGの濃度は、CBLG,Bと称される。
j)cBLG,BがcBLG,Aと比べて低く、かつステップi)で結晶が観察される場合、ステップa)の試料を採取した液体は、(この特定の条件で)過飽和であった。
【0032】
本発明に関連して、用語「液体」および「溶液」は、液体と、固体または半固体の粒子(例えば、タンパク質結晶または他のタンパク質粒子)との組合わせを含む組成物を包含する。従って、「液体」または「溶液」は、懸濁液であり得、さらにスラリーであり得る。しかしながら、「液体」および「溶液」は、好ましくは、ポンプ輸送可能である。
【0033】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本方法は、ステップc)の分離を含まず、BLG結晶および追加のホエイタンパク質の両方を含む食用組成物が生成される。この方法の変形形態がステップf)の乾燥させることをさらに含む場合、BLG結晶および追加のホエイタンパク質を含む乾燥組成物(即ちBLGの少なくとも一部がBLG結晶の形態で存在するWPCまたはWPI)が生成される。好ましくは、この方法は、直接的な順番でステップa)、b)およびf)を含む。
【0034】
本ホエイタンパク質原材料がホエイタンパク質濃縮物(WPC)、ホエイタンパク質単離物(WPI)、血清タンパク質濃縮物(SPC)または血清タンパク質単離物(SPI)である場合、上記の方法の変形形態により、BLGの少なくとも一部が結晶形態である液体形態または乾燥形態でWPC、WPI、SPCまたはSPIを調製することが可能になる。
【0035】
用語「ホエイタンパク質濃縮物」および「血清タンパク質濃縮物」は、総固形物に対して20~89%(重量/重量)のタンパク質の総量を含む乾燥組成物または水性組成物に関する。
【0036】
WPCまたはSPCは、好ましくは、
総固形物に対して20~89%(重量/重量)のタンパク質、
総タンパク質に対して15~70%(重量/重量)のBLG、
総タンパク質に対して8~50%(重量/重量)のALA、および
タンパク質に対して0~40%(重量/重量)のCMP
を含む。
【0037】
代わりに、しかしまた好ましくは、WPCまたはSPCは、
総固形物に対して20~89%(重量/重量)のタンパク質、
総タンパク質に対して15~90%(重量/重量)のBLG、
総タンパク質に対して4~50%(重量/重量)のALA、および
タンパク質に対して0~40%(重量/重量)のCMP
を含み得る。
【0038】
好ましくは、WPCまたはSPCは、
総固形物に対して20~89%(重量/重量)のタンパク質、
総タンパク質に対して15~80%(重量/重量)のBLG、
総タンパク質に対して4~50%(重量/重量)のALA、および
タンパク質に対して0~40%(重量/重量)のCMP
を含む。
【0039】
より好ましくは、WPCまたはSPCは、
総固形物に対して70~89%(重量/重量)のタンパク質、
総タンパク質に対して30~90%(重量/重量)のBLG、
総タンパク質に対して4~35%(重量/重量)のALA、および
タンパク質に対して0~25%(重量/重量)のCMP
を含む。
【0040】
用語「ホエイタンパク質単離物」および「血清タンパク質単離物」は、総固形物に対して90~100%(重量/重量)のタンパク質の総量を含む乾燥組成物または水性組成物に関する。
【0041】
WPIまたはSPIは、好ましくは、
総固形物に対して90~100%(重量/重量)のタンパク質、
総タンパク質に対して15~70%(重量/重量)のBLG、
総タンパク質に対して8~50%(重量/重量)のALA、および
総タンパク質に対して0~40%(重量/重量)のCMP
を含む。
【0042】
代わりに、しかしまた好ましくは、WPIまたはSPIは、
総固形物に対して90~100%(重量/重量)のタンパク質、
総タンパク質に対して30~95%(重量/重量)のBLG、
総タンパク質に対して4~35%(重量/重量)のALA、および
総タンパク質に対して0~25%(重量/重量)のCMP
を含み得る。
【0043】
より好ましくは、WPIまたはSPIは、
総固形物に対して90~100%(重量/重量)のタンパク質、
総タンパク質に対して30~90%(重量/重量)のBLG、
総タンパク質に対して4~35%(重量/重量)のALA、および
総タンパク質に対して0~25%(重量/重量)のCMP
を含み得る。
【0044】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本方法は、BLG結晶(例えば、ステップc)から得られた分離されたBLG結晶)を洗浄するステップd)をさらに含む。
【0045】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本方法は、BLG結晶(例えば、ステップc)またはd)から得られたBLG結晶)を再結晶化させるステップe)をさらに含む。
【0046】
本方法は、例えば、ステップa)、b)、c)、d)およびe)を含み得るかまたはこれらからなり得る。代わりに、本方法は、ステップa)、b)、c)およびe)を含み得るかまたはこれらからなり得る。
【0047】
本発明のいくつかの特に好ましい実施形態では、本方法は、ステップb)、c)、d)またはe)に由来するBLG含有組成物を乾燥ステップf)をさらに含む。
【0048】
本方法は、例えば、ステップa)、b)およびf)を含み得るかまたはこれらからなり得る。代わりに、本方法は、ステップa)、b)、c)およびf)を含み得るかまたはこれらからなり得る。代わりに、本方法は、ステップa)、b)、c)、d)およびf)を含み得るかまたはこれらからなり得る。代わりに、本方法は、ステップa)、b)、c)、d)、e)およびf)を含み得るかまたはこれらからなり得る。
【0049】
上述したように、本発明のステップa)は、BLGおよび少なくとも追加のホエイタンパク質を含むホエイタンパク質溶液を提供することを伴う。
【0050】
本発明に関連して、用語「ホエイタンパク質」は、ホエイまたは乳清中に見出されるタンパク質に関する。本ホエイタンパク質溶液のホエイタンパク質は、ホエイもしくは乳清中に見出されるタンパク質種のサブセットであり得るか、またはホエイおよび/もしくは乳清中に見出されるタンパク質種の完全なセットであり得る。しかしながら、このホエイタンパク質溶液は、BLGを常に含む。
【0051】
本発明に関連して、用途「追加のタンパク質」は、BLGではないタンパク質を意味する。本ホエイタンパク質溶液中に存在する追加のタンパク質は、典型的には、乳清またはホエイ中に見出される非BLGタンパク質の1種または複数を含む。そのようなタンパク質の非限定的な例は、アルファ-ラクトアルブミン、ウシ血清アルブミン、免疫グロブリン、カゼイノ-マクロペプチド(CMP)、オステオポンチン、ラクトフェリンおよび乳脂肪球膜タンパク質である。
【0052】
従って、本ホエイタンパク質溶液は、好ましくは、アルファ-ラクトアルブミン、ウシ血清アルブミン、免疫グロブリン、カゼイノマクロペプチド(CMP)、オステオポンチン、ラクトフェリン、乳脂肪球膜タンパク質およびこれらの組合わせからなる群から選択される少なくとも1種の追加のホエイタンパク質を含み得る。
【0053】
アルファ-ラクトアルブミン(ALA)は、ほとんど全ての哺乳動物種の乳中に存在するタンパク質である。ALAは、ラクトースシンターゼ(LS)ヘテロ二量体の調節サブユニットを形成し、β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(ベータ4Gal-T1)は、触媒成分を形成する。まとめると、これらのタンパク質は、ガラクトース部分をグルコースに導入することにより、LSがラクトースを産生することを可能にする。多量体として、アルファ-ラクトアルブミンは、カルシウムイオンおよび亜鉛イオンに強く結合し、かつ殺菌活性または抗腫瘍活性を有し得る。ベータ-ラクトグロブリンとの主な構造上の差異の1つは、ALAが、共有結合性の凝集反応の出発点として作用し得るチオール基を全く有しないことである。結果として、純粋なALAは、変性および酸性化の際にゲルを形成しないであろう。
【0054】
本発明に関連して、用語「ALA」または「アルファ-ラクトアルブミン」は、例えば、天然形態および/またはグリコシル化形態における哺乳動物種由来のアルファ-ラクトアルブミンに関し、天然に存在する遺伝子バリアントを含む。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態では、本ホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して最大10%(重量/重量)、タンパク質の総量に対して好ましくは最大5%(重量/重量)、より好ましくは最大1%(重量/重量)、さらにより好ましくは最大0.5%のカゼインを含む。本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本ホエイタンパク質溶液は、検出可能な量のカゼインを全く含まない。
【0056】
用語「乳清」は、例えば、精密ろ過または大きい細孔の限外ろ過により、カゼインおよび乳脂肪球を乳から除去している場合に残る液体に関する。乳清は、「理想的なホエイ」とも称され得る。
【0057】
用語「乳清タンパク質」または「血清タンパク質」は、乳清中に存在するタンパク質に関する。
【0058】
用語「ホエイ」は、乳のカゼインを沈殿させて除去した後に残る液体上清に関する。カゼイン沈殿は、例えば、乳の酸性化および/またはレンネット酵素の使用により達成され得る。
【0059】
カゼインのレンネットに基づく沈殿により製造されるホエイ製品である「スイートホエイ」およびカゼインの酸に基づく沈殿により製造されるホエイ製品である「酸性ホエイ」または「サワーホエイ」等、いくつかのタイプのホエイが存在する。カゼインの酸に基づく沈殿は、例えば、食用酸の添加または細菌培養により達成され得る。
【0060】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパクの総量に対して少なくとも5%(重量/重量)の追加のホエイタンパク質を含む。好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも10%(重量/重量)の追加のホエイタンパク質を含む。より好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも15%(重量/重量)の追加のホエイタンパク質を含む。さらにより好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも20%(重量/重量)の追加のホエイタンパク質を含む。最も好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも30%(重量/重量)の追加のホエイタンパク質を含み得る。
【0061】
本発明の他の好ましい実施形態では、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも1%(重量/重量)の追加のホエイタンパク質を含む。好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも2%(重量/重量)の追加のホエイタンパク質を含む。さらにより好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも3%(重量/重量)の追加のホエイタンパク質を含む。最も好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも4%(重量/重量)の追加のホエイタンパク質を含み得る。
【0062】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも35%(重量/重量)の追加のホエイタンパク質を含む。好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも40%(重量/重量)の追加のホエイタンパク質を含み得る。より好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、例えば、タンパク質の総量に対して少なくとも45%(重量/重量)の追加のホエイタンパク質を含み得る。さらにより好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも50%(重量/重量)の追加のホエイタンパク質を含み得る。
【0063】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して5~90%(重量/重量)の範囲の追加のホエイタンパク質を含む。好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して10~80%(重量/重量)の範囲の追加のホエイタンパク質を含み得る。ステップa)のホエイタンパク質溶液は、例えば、タンパク質の総量に対して20~70%(重量/重量)の範囲の追加のホエイタンパク質を含み得る。好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して30~70%(重量/重量)の範囲の追加のホエイタンパク質を含む。
【0064】
上述したように、本発明者らは、有機溶媒を使用することなくBLGを結晶化させ得ることを発見した。この精製アプローチは、ホエイタンパク質を含む調製物(この調製物は、数回のBLG精製に既にかけられている)を精製するためにも使用され得、BLGの純度をさらに増加させる単純な方法を提供する。そのため、本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して1~20%(重量/重量)の範囲の追加のホエイタンパク質を含む。好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して2~15%(重量/重量)の範囲の追加のホエイタンパク質を含み得る。さらにより好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、例えば、タンパク質の総量に対して3~10%(重量/重量)の範囲の追加のホエイタンパク質を含み得る。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態では、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも5%(重量/重量)のALAを含む。好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも10%(重量/重量)のALAを含む。さらにより好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも15%(重量/重量)のALAを含む。代わりに、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも20%(重量/重量)のALAを含み得る。
【0066】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも25%(重量/重量)のALAを含む。好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも30%(重量/重量)のALAを含む。ステップa)のホエイタンパク質溶液は、好ましくは、タンパク質の総量に対して少なくとも35%(重量/重量)のALAを含む。さらにより好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも40%(重量/重量)のALAを含み得る。
【0067】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して5~95%(重量/重量)の範囲のALAを含む。好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して5~70%(重量/重量)の範囲のALAを含む。さらにより好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して10~60%(重量/重量)の範囲のALAを含み得る。ステップa)のホエイタンパク質溶液は、好ましくは、タンパク質の総量に対して12~50%(重量/重量)の範囲のALAを含む。さらにより好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して20~45%(重量/重量)の範囲のALAを含み得る。
【0068】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、BLGとALAとの間の重量比が少なくとも0.01である。好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、BLGとALAとの間の重量比が少なくとも0.5である。さらにより好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、BLGとALAとの間の重量比が少なくとも1、例えば少なくとも2である。例えば、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、BLGとALAとの間の重量比が少なくとも3であり得る。
【0069】
ホエイタンパク質溶液およびホエイタンパク質原材料中のBLGおよび他のタンパク質の量および濃度は、全て溶解したタンパク質を指し、沈殿または結晶化したタンパク質を含まない。
【0070】
本発明に関連して、成分Xと成分Yとの間の用語「重量比」は、計算mX/mY(式中、mXは、成分Xの量(重量)であり、mYは、成分Yの量(重量)である)により得られる値を意味する。
【0071】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、BLGとALAとの間の重量比が0.01~20の範囲である。好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、BLGとALAとの間の重量比が0.2~10の範囲である。さらにより好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、BLGとALAとの間の重量比が0.5~4の範囲である。例えば、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、BLGとALAとの間の重量比が1~3の範囲である。
【0072】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも1%(重量/重量)のBLGを含む。好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも2%(重量/重量)のBLGを含む。さらにより好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも5%(重量/重量)のBLGを含む。好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも10%(重量/重量)のBLGを含み得る。
【0073】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも12%(重量/重量)のBLGを含む。例えば、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも15%(重量/重量)のBLGを含み得る。ステップa)のホエイタンパク質溶液は、例えば、タンパク質の総量に対して少なくとも20%(重量/重量)のBLGを含み得る。代わりに、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して少なくとも30%(重量/重量)のBLGを含み得る。
【0074】
本発明のいくつかの特に好ましい実施形態では、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して最大95%(重量/重量)のBLGを含む。好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して最大90%(重量/重量)のBLGを含み得る。より好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、例えば、タンパク質の総量に対して最大85%(重量/重量)のBLGを含み得る。さらにより好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、例えば、タンパク質の総量に対して最大80%(重量/重量)のBLGを含み得る。好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して最大78%(重量/重量)のBLGを含み得る。好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して最大75%(重量/重量)のBLGを含み得る。
【0075】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して1~95%(重量/重量)の範囲のBLGを含む。好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して5~90%(重量/重量)の範囲のBLGを含み得る。より好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して10~85%(重量/重量)の範囲のBLGを含む。さらにより好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して10~80%(重量/重量)の範囲のBLGを含む。最も好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して20~70%(重量/重量)の範囲のBLGを含み得る。
【0076】
本発明の他の好ましい実施形態では、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して10~95%(重量/重量)の範囲のBLGを含む。好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して12~90%(重量/重量)の範囲のBLGを含み得る。より好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して15~85%(重量/重量)の範囲のBLGを含む。さらにより好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して15~80%(重量/重量)の範囲のBLGを含む。最も好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、タンパク質の総量に対して30~70%(重量/重量)の範囲のBLGを含み得る。
【0077】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、このホエイタンパク質溶液の重量に対して少なくとも0.4%(重量/重量)のBLGを含む。好ましくは、このホエイタンパク質溶液は、少なくとも1.0%(重量/重量)のBLGを含む。より好ましくは、このホエイタンパク質溶液は、少なくとも2.0%(重量/重量)のBLGを含む。このホエイタンパク質溶液が少なくとも4%(重量/重量)のBLGを含むことがさらにより好ましい。
【0078】
より高濃度のBLGがさらにより好ましく、好ましくは、このホエイタンパク質溶液は、少なくとも6%(重量/重量)のBLGを含む。より好ましくは、このホエイタンパク質溶液は、少なくとも10%(重量/重量)のBLGを含む。このホエイタンパク質溶液が少なくとも15%(重量/重量)のBLGを含むことがさらにより好ましい。
【0079】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、このホエイタンパク質溶液の重量に対して0.4~40%(重量/重量)の範囲のBLGを含む。好ましくは、このホエイタンパク質溶液は、1~35%(重量/重量)の範囲のBLGを含む。より好ましくは、このホエイタンパク質溶液は、4~30%(重量/重量)の範囲のBLGを含む。このホエイタンパク質溶液が10~25%(重量/重量)の範囲のBLGを含むことがさらにより好ましい。
【0080】
任意の適切なホエイタンパク質源を使用して本ホエイタンパク質溶液を調製し得る。本発明のいくつかの好ましい実施形態では、このホエイタンパク質溶液は、乳清タンパク質濃縮物、ホエイタンパク質濃縮物、乳清タンパク質単離物、ホエイタンパク質単離物またはこれらの組合わせを含むかまたはこれらからなる。
【0081】
本ホエイタンパク質溶液は、脱塩ホエイタンパク質溶液であることが好ましい。
【0082】
これに関連して、用語脱塩は、本ホエイタンパク質溶液の導電率が最大15mS/cm、好ましくは最大10mS/cm、さらにより好ましくは最大8mS/cmであることを意味する。脱塩ホエイタンパク質溶液のUF透過液の導電率は、好ましくは、最大7mS/cm、より好ましくは最大4mS/cm、さらにより好ましくは最大1mS/cmである。
【0083】
本ホエイタンパク質溶液は、脱塩乳清タンパク質濃縮物、脱塩乳清タンパク質単離物、脱塩ホエイタンパク質濃縮物または脱塩ホエイタンパク質単離物であることが特に好ましい。
【0084】
本発明のいくつかの特に好ましい実施形態では、本ホエイタンパク質溶液は、脱塩されてpHが調整された乳清タンパク質濃縮物、ホエイタンパク質濃縮物、乳清タンパク質単離物、ホエイタンパク質単離物またはこれらの組合わせを含むかまたはこれらからなる。
【0085】
本ホエイタンパク質溶液は、例えば、脱塩乳清タンパク質濃縮物を含み得るかまたはこれからなり得る。代わりに、このホエイタンパク質溶液は、脱塩ホエイタンパク質濃縮物を含み得るかまたはこれからなり得る。代わりに、このホエイタンパク質溶液は、脱塩乳清タンパク質単離物み得るかまたはこれからなり得る。代わりに、このホエイタンパク質溶液は、脱塩ホエイタンパク質単離物を含み得るかまたはこれからなり得る。
【0086】
本発明に関連して、用語「ホエイタンパク質濃縮物」および「乳清タンパク質濃縮物」は、ホエイまたは乳清の調製物に関し、この調製物は、総固形物に対して約20~89%(重量/重量)の範囲のタンパク質を含む。
【0087】
本発明に関連して、用語「ホエイタンパク質単離物」および「乳清タンパク質単離物」はホエイまたは乳清の調製物に関し、この調製物は、総固形物に対して少なくとも90%(重量/重量)のタンパク質を含む。
【0088】
用語「から本質的になる」および「から本質的になっている」は、対象の請求項または特徴が、特定の材料またはステップと、特許請求される本発明の基本的で新規の特徴に実質的に影響を及ぼさないものとを包含すること意味する。
【0089】
本ホエイタンパク質溶液のタンパク質は、好ましくは、哺乳動物の乳由来であり、好ましくは反芻動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギ、バッファロー、ラクダ、ラマ、雌ウマおよび/またはシカ)の乳由来である。ウシ(bovine)(ウシ(cow))の乳由来のタンパク質が特に好ましい。従って、BLGおよび追加のホエイタンパク質は、好ましくは、ウシBLGおよびウシホエイタンパク質である。
【0090】
本ホエイタンパク質溶液のタンパク質は、好ましくは、その天然状態に可能な限り近く、好ましくはたとえあったとしても緩やかな加熱処理にかけられているのみである。
【0091】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本ホエイタンパク質溶液のBLGは、ラクトシル化度が最大1である。好ましくは、このホエイタンパク質溶液のBLGは、ラクトシル化度が最大0.6である。より好ましくは、このホエイタンパク質溶液のBLGは、ラクトシル化度が最大0.4である。さらにより好ましくは、このホエイタンパク質溶液のBLGは、ラクトシル化度が最大0.2である。最も好ましくは、このホエイタンパク質溶液のBLGは、ラクトシル化度が最大0.1、例えば好ましくは最大0.01である。
【0092】
BLGのラクトシル化度は、Czerwenka et al(J.Agric.Food Chem.,Vol.54,No.23,2006,pages8874-8882)に従って決定される。
【0093】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本ホエイタンパク質溶液は、フロシン値が最大80mg/タンパク質100gである。好ましくは、このホエイタンパク質溶液は、フロシン値が最大40mg/タンパク質100gである。より好ましくは、このホエイタンパク質溶液は、フロシン値が最大20mg/タンパク質100gである。さらにより好ましくは、このホエイタンパク質溶液は、フロシン値が最大10mg/タンパク質100gである。最も好ましくは、このホエイタンパク質溶液は、フロシン値が最大5mg/タンパク質100gであり、例えば好ましくはフロシン値が0mg/タンパク質100gである。
【0094】
本ホエイタンパク質溶液は、典型的には、タンパク質に加えて他の成分を含む。このホエイタンパク質溶液は、ホエイまたは乳清中に通常見出される他の成分(例えば、ミネラル、炭水化物および/または脂質)を含み得る。代わりにまたは加えて、このホエイタンパク質溶液は、ホエイまたは乳清に固有でない成分を含み得る。しかしながら、そのような非天然成分は、好ましくは、食品製造での使用に対して安全であるべきであり、同様に好ましくはヒトによる消費に対しても安全であるべきである。
【0095】
本方法は、BLG以外の固体を含む粗ホエイタンパク質溶液からBLGを分離するのに特に有利である。
【0096】
本ホエイタンパク質溶液は、例えば、炭水化物、例えばラクトース、オリゴ糖ならびに/またはラクトースの加水分解生成物(即ちグルコースおよびガラクトース)を含み得る。このホエイタンパク質溶液は、例えば、0~40%(重量/重量)の範囲、例えば1~30%(重量/重量)の範囲または2~20%(重量/重量)の範囲で炭水化物を含み得る。
【0097】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本ホエイタンパク質溶液は、最大20%(重量/重量)の炭水化物、好ましくは最大10%(重量/重量)の炭水化物、より好ましくは最大5%(重量/重量)の炭水化物、さらにより好ましくは最大2%(重量/重量)の炭水化物を含む。
【0098】
本ホエイタンパク質溶液は、脂質、例えばトリグリセリドおよび/または他の脂質型(例えば、リン脂質)の形態で脂質も含み得る。
【0099】
本発明のいくつかの実施形態では、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、総固形物に対して最大15%(重量/重量)の脂質の総量を含む。好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、総固形物に対して最大10%(重量/重量)の脂質の総量を含む。より好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、総固形物に対して最大6%(重量/重量)の脂質の総量を含む。さらにより好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、総固形物に対して最大1.0%(重量/重量)の脂質の総量を含む。最も好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、総固形物に対して最大0.5%(重量/重量)の脂質の総量を含む。
【0100】
本ホエイタンパク質溶液のタンパク質の総量は、典型的には、このホエイタンパク質溶液の重量に対して少なくとも1%(重量/重量)である。好ましくは、このホエイタンパク質溶液のタンパク質の総量は、少なくとも5%(重量/重量)である。より好ましくは、このホエイタンパク質溶液のタンパク質の総量は、少なくとも10%(重量/重量)である。さらにより好ましくは、このホエイタンパク質溶液のタンパク質の総量は、少なくとも15%(重量/重量)である。
【0101】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本ホエイタンパク質溶液のタンパク質の総量は、1~50%(重量/重量)の範囲である。好ましくは、このホエイタンパク質溶液のタンパク質の総量は、5~40%(重量/重量)の範囲である。より好ましくは、このホエイタンパク質溶液のタンパク質の総量は、10~30%(重量/重量)の範囲である。さらにより好ましくは、このホエイタンパク質溶液のタンパク質の総量は、15~25%(重量/重量)の範囲である。
【0102】
本ホエイタンパク質溶液のタンパク質の総量は、実施例9.2に従って決定される。
【0103】
本ホエイタンパク質溶液は、典型的には、ホエイタンパク質原材料を、BLGに関して過飽和であるホエイタンパク質溶液が形成される1つまたは複数の調整にかけることにより調製される。
【0104】
この原材料は、好ましくは、WPC、WPI、SPC、SPIまたはこれらの組合わせである。
【0105】
本発明に関連して、用語「ホエイタンパク質原材料」は、BLGに関して過飽和のホエイタンパク質溶液に変換される組成物に関する。このホエイタンパク質原材料は、典型的には、BLGと、少なくとも1種のホエイタンパク質とを含む水性液体であるが、通常、BLGに関して過飽和ではない。
【0106】
本ホエイタンパク質溶液の化学組成に関する実施形態は、本ホエイタンパク質原材料にも同様に当てはまるが、典型的には、このホエイタンパク質原材料の少なくとも1つのパラメータは、過飽和または少なくとも自発的結晶化を回避するように設定されている。
【0107】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本過飽和ホエイタンパク質溶液は、本ホエイタンパク質原材料を下記の調整:
- pHを調整すること、
- 導電率を減少させること、
- 温度を低下させること、
- タンパク質濃度を増加させること、
- 水分活性を減少させる薬剤を添加すること、
- イオン組成を変更すること
の1つまたは複数にかけることによって調製される。
【0108】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本ホエイタンパク質溶液の調製は、本ホエイタンパク質原材料のpHを5~6の範囲のpHに調製することを伴う。
【0109】
全てのpH値は、pHガラス電極を使用して測定され、25℃に正規化される。
【0110】
本ホエイタンパク質溶液は、例えば、4.9~6.1の範囲のpHを有し得る。このホエイタンパク質溶液のpHは、例えば、5.0~6.1の範囲であり得る。代わりに、このホエイタンパク質溶液のpHは、5.1~6.1の範囲であり得る。好ましくは、このホエイタンパク質溶液のpHは、5.1~6.0の範囲である。
【0111】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本ホエイタンパク質溶液のpHは、5.0~6.0の範囲である。好ましくは、このホエイタンパク質溶液のpHは、5.1~6.0の範囲である。より好ましくは、このホエイタンパク質溶液のpHは、5.1~5.9の範囲である。さらにより好ましくは、このホエイタンパク質溶液のpHは、5.2~5.9の範囲であり得る。最も好ましくは、このホエイタンパク質溶液のpHは、5.2~5.8の範囲である。
【0112】
pHは、好ましくは、食品に許容される酸および/または塩基を使用して調整される。例えば、カルボン酸等の食品に許容される酸が特に好ましい。そのような酸の有用な例は、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、マレイン酸、酒石酸、乳酸、クエン酸もしくはグルコン酸および/またはこれらの混合物である。
【0113】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、pHは、ラクトン(例えば、D-グルコノ-デルタ-ラクトン)を使用して調整され、このラクトンは、緩やかに加水分解し、同時にこのラクトンを含む水性液体のpHを低下させる。ラクトンの加水分解が終了した後の標的pHは、正確に算出され得る。
【0114】
食品に許容される塩基の有用な例は、例えば、水酸化物源、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、食用酸の塩(例えば、クエン酸三ナトリウム)および/またはこれらの組合わせである。
【0115】
本発明の他の好ましい実施形態では、pHは、陽イオン交換材料のそのH+型での添加により調整される。結晶化前または結晶化後でも、ビーズ型/大粒子型の陽イオン交換材料は、本ホエイタンパク質溶液から容易に除去される。陽イオン交換材料のそのH+型での添加によるpHの調整は、ホエイタンパク質原材料の導電率に顕著に影響を及ぼす負の対イオンを添加することなくpHを低下させることから、本発明で特に有利である。
【0116】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本ホエイタンパク質溶液の調製は、本ホエイタンパク質原材料の導電率を減少させることを伴う。
【0117】
本明細書で言及する導電率の値は、別途明記しない限り、25℃に正規化されている。
【0118】
本発明者らは、本ホエイタンパク質溶液の導電率を減少させることによりBLG結晶の収率が高くなることを発見した。このホエイタンパク質溶液の得られる最小の導電率は、タンパク質画分および脂質画分(存在する場合)の組成に依存する。カゼイノマクロペプチド(CMP)等のいくつかのタンパク質種は、他のタンパク質種と比べて導電率への寄与が高い。従って、本ホエイタンパク質原材料の導電率を、タンパク質およびこのタンパク質の対イオンが導電率の主な一因であるレベルまで近づけることが好ましい。この導電率の減少は、液相中に存在し、かつタンパク質に強く結合していない小さい遊離イオンの少なくとも一部の除去を伴うことが多い。
【0119】
本ホエイタンパク質溶液は、最大10mS/cmの導電率を有することが好ましいことが多い。本発明のいくつかの好ましい実施形態では、このホエイタンパク質溶液は、最大5mS/cmの導電率を有する。好ましくは、このホエイタンパク質溶液は、最大4mS/cmの導電率を有する。
【0120】
導電率が低いほどさらに好ましく、BLG結晶の収率が高くなる。そのため、本ホエイタンパク質溶液は、好ましくは、最大3mS/cmの導電率を有する。本発明のいくつかの好ましい実施形態では、このホエイタンパク質溶液は、最大1mS/cmの導電率を有する。好ましくは、このホエイタンパク質溶液は、最大0.5mS/cmの導電率を有する。
【0121】
好ましくは、本ホエイタンパク質原材料の導電率は、透析または透析ろ過により減少される。限外ろ過による透析ろ過は、タンパク質を保持しつつ塩および小さい荷電分子を洗い流すことが可能であることから特に好ましい。本発明のいくつかの好ましい実施形態では、同じUFユニットがUF/透析ろ過およびそれに続くホエイタンパク質原材料の濃縮に使用される。
【0122】
本発明者らは、BLGの結晶化を促進するために、導電率(mS/cmで表される)と、本ホエイタンパク質溶液中のタンパク質の総量(このホエイタンパク質溶液の総重量に対する総タンパク質の重量%で表される)との間の比が特定の閾値以下に保持され得ることが有利であるという徴候を発見した。
【0123】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本ホエイタンパク質溶液の導電率とタンパク質の総量との間の比は、最大0.3である。好ましくは、本ホエイタンパク質溶液の導電率とタンパク質の総量との間の比は、最大0.25である。好ましくは、本ホエイタンパク質溶液の導電率とタンパク質の総量との間の比は、最大0.20である。より好ましくは、本ホエイタンパク質溶液の導電率とタンパク質の総量との間の比は、最大0.18である。さらにより好ましくは、本ホエイタンパク質溶液の導電率とタンパク質の総量との間の比は、最大0.12である。最も好ましくは、本ホエイタンパク質溶液の導電率とタンパク質の総量との間の比は、最大0.10である。
【0124】
例えば、本ホエイタンパク質溶液の導電率とタンパク質の総量との間の比は、約0.07以下であることが好ましい。
【0125】
本発明者らは、UF透過液の導電率が最大10mS/cmであるホエイタンパク質溶液を生成するように本ホエイタンパク質原材料を有利に条件付け得ることをさらに発見した。UF透過液の導電率は、液体の小分子画分の導電率の尺度であり、実施例9.10に従って測定される。用語「導電率」がそのように本明細書で使用される場合、この用語は、対象の液体の導電率を指す。用語「UF透過液の導電率」が使用される場合、この用語は、液体の小分子画分の導電率を指し、実施例9.10に従って測定される。
【0126】
好ましくは、本ホエイタンパク質溶液のUF透過液の導電率は、最大7mS/cmである。より好ましくは、このホエイタンパク質溶液のUF透過液の導電率は、最大5mS/cmであり得る。さらにより好ましくは、このホエイタンパク質溶液のUF透過液の導電率は、最大3mS/cmであり得る。
【0127】
さらに低いUF透過液の導電率を使用し得、BLGの高い収率を得るべき場合に特に好ましい。そのため、好ましくは、本ホエイタンパク質溶液のUF透過液の導電率は、最大1.0mS/cmである。より好ましくは、このホエイタンパク質溶液のUF透過液の導電率は、最大0.4mS/cmであり得る。さらにより好ましくは、このホエイタンパク質溶液のUF透過液の導電率は、最大0.1mS/cmであり得る。最も好ましくは、このホエイタンパク質溶液のUF透過液の導電率は、最大0.04mS/cmであり得る。
【0128】
例えば、透析ろ過中に希釈剤としてMilliQ水(MilliQは、約0.06μS/cmの導電率を有する)を使用して、さらに低いUF透過液の導電率を達成し得る。そのため、本ホエイタンパク質溶液のUF透過液の導電率は、最大0.01mS/cmであり得る。代わりに、このホエイタンパク質溶液のUF透過液の導電率は、最大0.001mS/cmであり得る。代わりに、このホエイタンパク質溶液のUF透過液の導電率は、最大0.0001mS/cmであり得る。
【0129】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本ホエイタンパク質溶液の調製は、本ホエイタンパク質原材料の温度を低下させることを伴う。
【0130】
例えば、本ホエイタンパク質溶液の調製は、本ホエイタンパク質原材料の温度を少なくとも5℃、好ましくは少なくとも10℃、さらにより好ましくは少なくとも15℃まで低下させることを伴い得る。例えば、このホエイタンパク質溶液の調製は、このホエイタンパク質原材料の温度を少なくとも20℃まで低下させることを伴い得る。
【0131】
本ホエイタンパク質原材料の温度を例えば最大30℃、好ましくは最大20℃、さらにより好ましくは最大10℃まで低下させ得る。さらに低い温度により過飽和の度合いが高くなり、そのため、本ホエイタンパク質原材料の温度を例えば最大5℃、好ましくは最大2℃、さらにより好ましくは最大0℃まで低下させ得ることを本発明者らは発見した。この温度は、0℃よりも低い場合さえあるが、好ましくは、本ホエイタンパク質溶液は、例えば、氷スラリーの形態でポンプ輸送可能なままであるべきである。
【0132】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本ホエイタンパク質溶液は、BLG結晶化の初期化前に氷スラリーである。代わりにまたは加えて、結晶化するホエイタンパク質溶液は、ステップb)のBLG結晶化中に氷スラリーに変換され得るか、または氷スラリーとして維持され得る。
【0133】
本発明のいくつかの特に好ましい実施形態では、本ホエイタンパク質溶液の調製は、本ホエイタンパク質原材料の総タンパク質濃度を増加させることを伴う。このホエイタンパク質原材料を例えば1つまたは複数のタンパク質濃縮ステップ(例えば、限外ろ過、ナノろ過、逆浸透および/もしくは蒸発)にかけることができ、それにより濃縮して、このホエイタンパク質溶液を得ることができる。
【0134】
限外ろ過は、タンパク質の選択的濃縮を可能にし、同時に塩および炭水化物の濃縮にほぼ影響を与えないことから特に好ましい。上述したように、限外ろ過は、好ましくは、本ホエイタンパク質原材料の透析ろ過および濃縮の両方に使用される。
【0135】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ホエイタンパク質溶液のBLGの濃度は、BLGの自発的結晶化が起こるレベルよりも低い。従って、本ホエイタンパク質溶液が順安定領域にある場合、即ち播種が使用される場合にBLG結晶が成長し得るが、結晶化が自発的に始まらない過飽和領域にある場合、本ホエイタンパク質原材料の変更を停止することが好ましいことが多い。
【0136】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本ホエイタンパク質の溶液の調製は、本ホエイタンパク質原材料への1種または複数の水分活性減少剤の添加を伴う。
【0137】
そのような水分活性減少剤の有用であり非限定的な例は、多糖および/またはポリエチレングリコール(PEG)である。
【0138】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本ホエイタンパク質溶液の調製は、例えば、イオン交換により、新たなイオン種を添加することにより、透析または透析ろ過により、本ホエイタンパク質原材料のイオン組成を変更することを伴う。
【0139】
典型的には、過飽和を生じさせるための上記のプロセスステップの2つ以上を組み合わせることにより、本ホエイタンパク質溶液を調製する。
【0140】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本ホエイタンパク質溶液の調製は、本ホエイタンパク質原材料を少なくとも:
- 10℃を超える温度で例えば限外ろ過、ナノろ過または逆浸透を使用して濃縮すること、および
- 続いて10℃未満の温度まで冷却すること
にかけることを伴う。
【0141】
本発明の他の好ましい実施形態では、本ホエイタンパク質溶液の調製は、本ホエイタンパク質原材料を少なくとも
- 6.0超のpHで濃縮すること、および
- 続いて酸(例えば、GDLまたはH+型での陽イオン交換材料)の添加によりpHを低下させること
にかけることを伴う。
【0142】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、本ホエイタンパク質溶液の調製は、本ホエイタンパク質原材料を少なくとも:
- 例えば、少なくともBLGを保持する膜を使用する透析ろ過により導電率を減少させること
にかけることを伴う。
【0143】
本発明のさらに好ましい実施形態では、本ホエイタンパク質溶液の調製は、本ホエイタンパク質原材料を少なくとも:
- pHを5~6に調整すること、
- 少なくともBLGを保持する膜を使用する透析ろ過により導電率を減少させること、
- 10℃を超える温度で例えば限外ろ過、ナノろ過または逆浸透を使用してタンパク質を濃縮すること、および
- 最後に、10℃未満の温度まで冷却すること
の組合わせにかけることを伴う。
【0144】
本発明者らは、ナトリウム+カリウムの合計対カルシウムおよびマグネシウムの合計のモル比を制御することにより、本方法のBLG収率を改善し得ることをさらに発見した。カルシウムおよびマグネシウムのより高い相対量により、驚くべきことにBLGの収率が増加し、従って本方法のBLG回収の効率が増加すると思われる。
【0145】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、Na+KとCa+Mgとの間のモル比が最大4である。より好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、Na+KとCa+Mgとの間のモル比が最大2である。さらにより好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、Na+KとCa+Mgとの間のモル比が最大1.5、さらにより好ましくは最大1.0である。最も好ましくは、ステップa)のホエイタンパク質溶液は、Na+KとCa+Mgとの間のモル比が最大0.5、例えば最大0.2である。
【0146】
Na+KとCa+Mgとの間のモル比は(mNa+mK)/(mCa+mMg)として算出され、式中、mNaは、molでの元素Naの含有量であり、mKは、molでの元素Kの含有量であり、mCaは、molでの元素Caの含有量であり、mMgは、molでの元素Mgの含有量である。
【0147】
本ホエイタンパク質溶液は、塩溶によりBLGに関して過飽和であり、従って、BLGは、塩溶モードにおいてこのホエイタンパク質溶液から結晶化され得ることが特に好ましい。
【0148】
本発明のいくつかの実施形態では、特に本発明の食用BLG製品がある程度のタンパク質変性も有するはずである場合、本ホエイタンパク質溶液は、変性タンパク質の含有量が低い。好ましくは、このホエイタンパク質溶液は、タンパク質変性の度合いが最大2%、好ましくは最大1.5%、より好ましくは最大1.0%、最も好ましくは最大0.8%である。
【0149】
本方法のステップb)は、本過飽和ホエイタンパク質溶液のBLGの少なくとも一部を結晶化させることを伴う。
【0150】
ステップb)の結晶化は、塩溶モード(即ちイオン強度および導電率が低い液体中)で起こることが特に好ましい。これは、結晶化を誘発するために相当量の塩が溶液に添加される塩析モードとは対照的である。
【0151】
ステップb)のBLGの結晶化は、例えば、下記:
- 結晶化が起こるのを待つこと、
- 結晶化種の添加、
- BLGの過飽和の度合いをさらに増加させること、および/または
- 機械的刺激
の1つまたは複数を伴い得る。
【0152】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップb)は、本ホエイタンパク質溶液に結晶化種を添加することを伴う。本発明者らは、結晶化種の添加により、プロセス装置の突然の目詰まりおよび製造中での意図しない停止を回避するために、BLG結晶化が起こる時期および場所を制御し得ることを発見した。例えば、本ホエイタンパク質原材料を濃縮しつつ、結晶化の開始を回避することが望ましいことが多い。
【0153】
原則として、BLGの結晶化を開始するあらゆる種材料を使用し得る。しかしながら、本ホエイタンパク質溶液へのさらなる不純物の添加を回避するために、播種には水和BLG結晶または乾燥BLG結晶を使用することが好ましい。
【0154】
この結晶化種は、乾燥形態であり得るか、または本ホエイタンパク質溶液に添加された場合に懸濁液の一部を形成し得る。この結晶化種(例えば、BLG結晶)を含む懸濁液の添加は、それにより結晶化がより早く開始されると思われることから、現在のところ好ましい。pHが5~6の範囲であり、かつ導電率が最大10mS/cmである結晶化種を含むような懸濁液が好ましい。
【0155】
本発明のいくつかの実施形態では、この結晶化種の少なくとも一部は、本ホエイタンパク質溶液と接触する固相上に位置する。
【0156】
この結晶化種は、好ましくは、BLG結晶の所望のサイズと比べて粒径が小さい。この結晶化種のサイズを、ふるい分けまたは他のサイズ分別プロセスによって最大の種を除去することにより変更し得る。この粒径分別前に例えば粉砕による粒径の減少も用い得る。
【0157】
本発明のいくつかの実施形態では、この結晶化種の少なくとも90%(重量/重量)は、(ふるい分け分析により測定した)粒径が0.1~600ミクロンの範囲である。例えば、この結晶化種の少なくとも90%(重量/重量)は、粒径が1~400ミクロンの範囲であり得る。好ましくは、この結晶化種の少なくとも90%(重量/重量)は、粒径が5~200ミクロンの範囲であり得る。より好ましくは、この結晶化種の少なくとも90%(重量/重量)は、粒径が5~100ミクロンの範囲であり得る。
【0158】
結晶化種の粒径および投与量を、BLGの最適な結晶化をもたらすように調整し得る。
【0159】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、BLGに関して過飽和を得る前に、しかし好ましくは過飽和が達成された場合に少なくともいくつかの結晶化種が依然として存在するように、この結晶化種を本ホエイタンパク質原材料に添加する。これは、例えば、(例えば、冷却、濃縮および/またはpH調整中に)本ホエイタンパク質原材料が過飽和に近く、かつ結晶化種が完全に溶解する前に過飽和に達しそうである場合、結晶化種を添加することにより達成され得る。
【0160】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップb)は、好ましくは、BLGの結晶化が直ちに(即ち最大20分、好ましくは最大5分で)始まる程度までBLGの過飽和の度合いをさらに増加させることを伴う。これは、結晶が自発的に生じて結晶化プロスを開始する核形成ゾーンとも称される。
【0161】
過飽和の度合いは、例えば、下記:
- 本ホエイタンパク質溶液のタンパク質濃度をさらに増加させること、
- このホエイタンパク質溶液をさらに冷却すること、
- このホエイタンパク質溶液をBLG結晶化に最適なpHに近づけること、
- 導電率をさらに減少させること
の1つまたは複数によって増加され得る。
【0162】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップb)は、BLG結晶が生じるのを待つことを伴う。これには数時間かかる場合があり、典型的には、BLGに関してごくわずかに過飽和であり、かつ結晶化種が添加されていないホエイタンパク質溶液用である。
【0163】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本ホエイタンパク質溶液の提供(ステップa)およびBLGの結晶化(ステップb)は、2つの別々のステップとして起こる。
【0164】
しかしながら、本発明の他の好ましい実施形態では、ステップb)は、BLGの過飽和の度合いを上昇させるか、または少なくとも過飽和を維持するために、ホエイタンパク質溶液の結晶化のさらなる調整を伴う。さらなる調整により、BLG結晶の収率が増加する。
【0165】
そのようなさらなる調整は、
- 結晶化するホエイタンパク質溶液のタンパク質濃度をさらに増加させること、
- 結晶化するホエイタンパク質溶液をさらに低い温度まで冷却すること、
- 結晶化するホエイタンパク質溶液をBLG結晶化に最適なpHにさらに近づけること、
- 結晶化するホエイタンパク質溶液の導電率をさらに減少させること
の1つまたは複数を伴い得る。
【0166】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、結晶化するホエイタンパク質溶液は、ステップb)中に順安定領域内に維持されて、新たな結晶の自発的形成が回避される。
【0167】
本発明者らは、単離BLG結晶の結晶格子構造をX線結晶学により決定しており、先行技術で同様の結晶を見出していない。
【0168】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップb)中に得られるBLG結晶の少なくとも一部は、斜方晶の空間群P212121を有する。
【0169】
好ましくは、得られたBLG結晶の少なくとも一部は、斜方晶の空間群P212121と、単位格子の寸法a=68.68(±5%)Å、b=68.68(±5%)Åおよびc=156.65(±5%)Åと、単位格子の整数角α=90°、β=90°およびγ=90°とを有する。
【0170】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、得られたBLG結晶の少なくとも一部は、斜方晶の空間群P212121と、単位格子の寸法a=68.68(±2%)Å、b=68.68(±2%)Åおよびc=156.65(±2%)Åと、単位格子の整数角α=90°、β=90°およびγ=90°とを有する。
【0171】
さらにより好ましくは、得られたBLG結晶の少なくとも一部は、斜方晶の空間群P212121と、単位格子の寸法a=68.68(±1%)Å、b=68.68(±1%)Åおよびc=156.65(±1%)Åと、単位格子の整数角α=90°、β=90°およびγ=90°とを有し得る。
【0172】
最も好ましくは、得られたBLG結晶の少なくとも一部は、斜方晶の空間群P212121と、単位格子の寸法a=68.68Å、b=68.68Åおよびc=156.65Åと、単位格子の整数角α=90°、β=90°およびγ=90°とを有する。
【0173】
本発明のいくつかの特に好ましい実施形態では、本方法は、残存するホエイタンパク質溶液からBLG結晶の少なくとも一部を分離するステップc)を含む。これは、BLGの精製が望ましい場合に特に好ましい。
【0174】
ステップc)は、例えば、少なくとも30%(重量/重量)の固形分までBLG結晶を分離することを含み得る。好ましくは、ステップc)は、少なくとも40%(重量/重量)の固形分までBLG結晶を分離することを含む。さらにより好ましくは、ステップc)は、少なくとも50%(重量/重量)の固形分までBLG結晶を分離することを含む。
【0175】
本発明者らは、分離されたBLG結晶に付着する水性部分が概して避けるべき不純物を含むことから、高い固形分がBLGの精製に有利であることを発見した。加えて、この高い固形分は、分離されたBLG結晶を乾燥生成物(例えば、粉末)に変換するためのエネルギー消費を削減し、所与の容量を有する乾燥装置から得られるBLG収率を増加させる。
【0176】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップc)は、少なくとも60%の固形分までBLG結晶を分離することを含む。好ましくは、ステップc)は、少なくとも70%の固形分までBLG結晶を分離することを含む。さらにより好ましくは、ステップc)は、少なくとも80%の固形分までBLG結晶を分離することを含む。
【0177】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップc)の分離は、下記の操作:
- 遠心分離、
- デカンテーション、
- ろ過、
- 沈降、
- 上記の組合わせ
の1つまたは複数を伴う。
【0178】
これらの単位操作は、当業者に公知であり、かつ容易に実行される。ろ過による分離は、例えば、真空ろ過、動的クロスフローろ過(DCF)、ろ過プレスまたはフィルタ遠心分離機の使用を伴い得る。
【0179】
所望の結果に基づいて、ろ過のために様々な孔径を利用し得る。好ましくは、フィルタは、天然ホエイタンパク質および小さい凝集体を通過させるが、BLG結晶を保持する。このフィルタは、好ましくは、名目上の孔径が少なくとも0.1ミクロンである。このフィルタは、例えば、名目上の孔径が少なくとも0.5ミクロンであり得る。さらにより好ましくは、このフィルタは、名目上の孔径が少なくとも2ミクロンであり得る。
【0180】
孔径がより大きいフィルタも使用し得、BLG結晶を含む液体から主に大きい結晶が分離されるべきである場合に実際に好ましい。本発明のいくつかの実施形態では、このフィルタは、名目上の孔径が少なくとも5ミクロンである。好ましくは、このフィルタは、名目上の孔径が少なくとも20ミクロンである。さらにより好ましくは、このフィルタは、孔径が少なくとも40ミクロンであり得る。
【0181】
このフィルタは、例えば、孔径が0.03~5000ミクロン、例えば0.1~5000ミクロンの範囲であり得る。好ましくは、このフィルタは、細孔が0.5~1000ミクロンの範囲であり得る。さらにより好ましくは、このフィルタは、細孔が5~800ミクロンの範囲、例えば10~500ミクロンの範囲または50~500ミクロンの範囲であり得る。
【0182】
本発明のいくつかの実施形態では、このフィルタは、細孔が0.03~100ミクロンの範囲である。好ましくは、このフィルタは、細孔が0.1~50ミクロンの範囲であり得る。より好ましくは、このフィルタは、細孔が4~40ミクロンの範囲であり得る。さらにより好ましくは、このフィルタは、細孔が5~30ミクロンの範囲、例えば10~20ミクロンの範囲であり得る。
【0183】
細孔が1ミクロンよりも大きいフィルタを使用することの利点は、分離中ならびに任意選択で洗浄および/または再結晶中にも細菌および他の微生物が少なくとも部分的に除去されることである。従って、本方法により、非常に低い細菌負荷でありながらタンパク質の熱損傷が回避されている高純度のBLGの製造が可能となる。
【0184】
細孔が1ミクロンよりも大きいフィルタを使用することの別の利点は、水の除去およびそれに続く乾燥がより容易になり、エネルギー消費がより少なくなることである。
【0185】
BLG結晶から分離された、残存するホエイタンパク質溶液を本ホエイタンパク質溶液の調製中に本ホエイタンパク質原材料に再利用し得る。
【0186】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップc)は、フィルタ遠心分離機を利用する。本発明の他の好ましい実施形態では、ステップc)は、デカンター遠心分離機を利用する。初期の結果(実施例13を参照されたい)は、母液からBLG結晶を分離するためにフィルタ遠心分離機および/またはデカンター遠心分離機を使用することにより、例えば真空ろ過と比べて本方法の頑強な操作がもたらされることを示した。
【0187】
多くの場合、形成されたフィルタケーキを乾燥ガスで乾燥させて、このフィルタケーキの含水量を減少させることが好ましく、このフィルタケーキをフィルタから剥がすことを可能にすることが好ましい。乾燥ガスの使用は、分離ステップの一部を形成し得るか、または代わりにこのフィルタケーキを乾燥食用BLG組成物に直接変換する場合に最終乾燥ステップの一部を形成し得る。
【0188】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップc)は、DCF装置を利用する。
【0189】
初期の試験(実施例12を参照されたい)は、膜孔径が0.03~5ミクロンの範囲、好ましくは0.3~1.0ミクロンの範囲であるDCF装置を使用することにより、BLG結晶の効率的な分離が提供されることを示し、本発明者らは、BLG結晶を含むホエイタンパク質溶液のさらに大きいバッチから結晶を分離するのに十分な持続期間にわたりDCF装置を稼働させ得ることを観察した。
【0190】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、BLG結晶を保持し得る膜を備えたDCF装置を使用してステップc)を実施し、DCF透過液を、本ホエイタンパク質溶液または本ホエイタンパク質原材料の一部を形成するために再利用し、DCF保持液を回収し得るか、または結晶タンクに戻し得る。好ましくは、例えば、本ホエイタンパク質溶液または本ホエイタンパク質原材料と混合する前に、DCF透過液をBLGに関して過飽和にする限外ろ過/透析ろ過により、DCF透過液を処理する。
【0191】
有利には、これらの実施形態は、液体流の温度が15℃を超えて上昇することを必要とせず、従ってより高い温度を必要とする方法の変形形態と比べて微生物汚染されにくい。これらの実施形態の別の産業上の利点は、過飽和レベルが容易に制御され、望ましくない自発的結晶化が起こらないレベルで保持され得ることである。従って、本方法のこれらの実施形態中の液体流の温度は、好ましくは、最大15℃、より好ましくは最大12℃、さらにより好ましくは最大10℃、最も好ましくは最大5℃である。
【0192】
これらの実施形態を実施例10で例示しかつ
図26に示す。これらの実施形態をバッチ法または連続法として実行し得る。
【0193】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本方法は、BLG結晶(例えば、c)の分離されたBLG結晶)を洗浄するステップd)を含む。この洗浄は、1回の洗浄ステップからなり得るか、または複数回の洗浄ステップからなり得る。
【0194】
ステップd)の洗浄は、好ましくは、BLG結晶を完全に溶解させることなくBLG結晶と洗浄液とを接触させ、続いて残存するBLG結晶を洗浄液から分離することを伴う。
【0195】
この洗浄液は、好ましくは、BLG結晶の完全な溶解を回避するように選択され、例えば冷脱塩水、冷水道水または逆浸透の冷浸透液を含み得るかまたはこれらから本質的になり得る。
【0196】
この洗浄液は、pHが5~6の範囲、好ましくは5.0~6.0の範囲、さらにより好ましくは5.1~6.0の範囲、例えば5.1~5.9の範囲であり得る。
【0197】
この洗浄液は、導電率が最大0.1mS/cm、好ましくは最大0.02mS/cm、さらにより好ましくは最大0.005mS/cmであり得る。
【0198】
導電率がさらに低い洗浄液を使用し得る。例えば、この洗浄液は、導電率が最大1マイクロS/cmであり得る。代わりに、この洗浄液は、導電率が最大0.1マイクロS/cm、例えば約0.05マイクロS/cmであり得る。
【0199】
結晶化したBLGの溶解を制限するために、洗浄するステップを好ましくは低温で実施する。洗浄液の温度は、好ましくは、最大30℃、より好ましくは最大20℃、さらにより好ましくは最大10℃である。
【0200】
洗浄するステップを例えば最大5℃、より好ましくは最大2℃、例えば約0℃で実施し得る。例えば、1種または複数の凝固点降下剤の存在に起因して洗浄液が凍結しない限り、0℃よりも低い温度を使用し得る。
【0201】
本発明のいくつかの実施形態では、洗浄液は、例えば、少なくとも1%(重量/重量)の量、好ましくは少なくとも3%(重量/重量)の量、例えば4%(重量/重量)の量でBLGを含む。
【0202】
ステップd)の洗浄により、概してBLG結晶の初期量の最大80%(重量/重量)、好ましくは最大50%(重量/重量)、さらにより好ましくはBLG結晶の初期量の最大20%(重量/重量)が溶解する。好ましくは、ステップd)の洗浄により、BLG結晶の初期量の最大15%(重量/重量)、より好ましくは最大10%(重量/重量)、さらにより好ましくはBLG結晶の初期量の最大5%(重量/重量)が溶解する。
【0203】
洗浄液の総量と、分離されたBLG結晶の初期量との間の重量比は、少なくとも1であることが多く、好ましくは少なくとも2、より好ましくは少なくとも5である。例えば、洗浄液の量と、分離されたBLG結晶の初期量との間の重量比は、少なくとも10であり得る。代わりに、洗浄液の総量と、分離されたBLG結晶の初期量との間の重量比は、少なくとも20、例えば少なくとも50または少なくとも100であり得る。
【0204】
用語「洗浄液の総量」は、プロセス全体中に使用される洗浄液の総量に関する。
【0205】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、1回または複数回の洗浄シーケンスをBLG結晶分離と同一のフィルタ配置または類似のフィルタ配置で行う。主にBLG結晶を含むフィルタケーキに、フィルタを通して除去される洗浄液の1回または複数回のシーケンスを添加し、BLG結晶の残存部分は、このフィルタケーキ中に留まる。
【0206】
本発明の特に好ましい実施形態では、ステップc)の分離を、BLG結晶を保持するフィルタを使用して実施する。続いて、フィルタケーキを、このフィルタケーキおよびフィルタを通って移動する洗浄液の1回または複数回の量と接触させる。洗浄液の各回の量は、このフィルタケーキの体積の最大10倍、好ましくはこのフィルタケーキの体積の最大5倍、より好ましくはこのフィルタケーキの体積の最大1倍、さらにより好ましくはこのフィルタケーキの体積の最大0.5倍、例えばこのフィルタケーキの体積の最大0.2倍であることが好ましいことが多い。このフィルタケーキの体積は、このフィルタケーキの固体ならびに流体(液体および気体)の両方を含む。このフィルタケーキを好ましくは少なくとも2回、好ましくは少なくとも4回、さらにより好ましくは少なくとも6回このように洗浄する。
【0207】
ステップd)からの使用済洗浄液を例えば本ホエイタンパク質原材料に再利用し得るか、またはBLGを洗い流したホエイタンパク質を再度単離し得る。
【0208】
本方法は、
- 分離されたBLG結晶を再結晶液に溶解させること、
- この再結晶液を調整して、BLGに関して過飽和を得ること、
- この過飽和の調整された再結晶液中でBLGを結晶化させること、および
- 残存する調整された再結晶液からBLG結晶を分離すること
を含む再結晶ステップを含むステップe)をさらに伴い得る。
【0209】
ステップe)は、1回の再結晶シーケンスまたは複数回の再結晶シーケンスの何れかを含み得る。
【0210】
本発明のいくつかの実施形態では、ステップc)またはd)のBLG結晶を少なくとも2回再結晶化させる。例えば、このBLG結晶を少なくとも3回、例えば少なくとも4回再結晶化させ得る。
【0211】
洗浄ステップおよび再結晶ステップを任意の順序で組み合わせ得、必要に応じて複数回実施し得る。ステップc)の分離されたBLG結晶は、例えば、下記のプロセス順序:
- 洗浄の1回または複数回のステップ(ステップd)、続いて
- 再結晶の1回または複数回のステップ(ステップe)
にかけられ得る。
【0212】
代わりに、ステップc)の分離されたBLG結晶は、下記のプロス順序:
- 再結晶の1回または複数回のステップ(ステップe)、続いて
- 洗浄の1回または複数回のステップ(ステップd)
にかけられ得る。
【0213】
例えば、下記の順序で洗浄および再結晶の複数回のステップを組み合わせることも可能である:
- 洗浄の1回または複数回のステップ(ステップd)、
- 再結晶の1回または複数回のステップ(ステップe)、
- 洗浄の1回または複数回のステップ(ステップd)、および
- 再結晶の1回または複数回のステップ(ステップe)。
【0214】
または、例えば下記の順序:
- 再結晶の1回または複数回のステップ(ステップe)、
- 洗浄の1回または複数回のステップ(ステップd)、
- 再結晶の1回または複数回のステップ(ステップe)、
- 洗浄の1回または複数回のステップ(ステップd)
である。
【0215】
本発明のいくつかの実施形態では、本方法は、分離されたBLGを例えばクロマトグラフィーまたは選択ろ過に基づくさらなるBLG富化ステップにかけることをさらに伴う。しかしながら、本発明の他の好ましい実施形態では、本方法は、ステップb)後にさらなるBLG富化ステップを含まない。用語「さらなるBLG富化ステップ」は、タンパク質の総量に対してBLGを富化させるプロセスステップを意味し、このステップは、BLGの結晶化またはBLG結晶の取扱いに関係しない。そのようなさらなるBLG富化ステップの例は、イオン交換クロマトグラフィーである。BLG結晶の洗浄および/またはBLGの再結晶は、「さらなるBLG富化ステップ」と見なされない。
【0216】
本発明のいくつかの特に好ましい実施形態では、本方法は、ステップb)、c)、d)またはe)に由来するBLG含有組成物を乾燥組成物に変換させる乾燥ステップf)を伴う。
【0217】
本発明に関連して、用語「乾燥」は、対象の組成物または生成物が最大6%(重量/重量)の水、好ましくはさらに少ない水を含むことを意味する。
【0218】
本発明に関連して、用語「BLG含有組成物」は、ステップf)の乾燥にかけられる組成物を説明するために使用される。
【0219】
本発明に関連して、「ステップb)、c)、d)またはe)に由来するBLG含有組成物」は、ステップb)、c)、d)またはe)由来のBLGの少なくとも一部を含む組成物を意味する。本発明のいくつかの好ましい実施形態では、「ステップb)、c)、d)またはe)に由来するBLG含有組成物」は、ステップb)、c)、d)またはe)から直接得られる。しかしながら、本発明の他の好ましい実施形態では、「ステップb)、c)、d)またはe)に由来するBLG含有組成物」は、ステップb)、c)、d)またはe)から直接得られる組成物のさらなる処理の結果である。
【0220】
このBLG含有組成物は、ステップb)、c)、d)またはe)から直接得られる組成物中に存在するBLGの相当量を含むことが好ましいことが多い。本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップb)、c)、d)またはe)に由来するBLG含有組成物は、ステップb)、c)、d)またはe)から得られるBLGの少なくとも50%(重量/重量)、好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%を含む。
【0221】
好ましくは、ステップb)、c)、d)またはe)に由来するBLG含有組成物は、ステップb)、c)、d)またはe)から得られるBLGの少なくとも85%(重量/重量)を含む。より好ましくは、ステップb)、c)、d)またはe)に由来するBLG含有組成物は、ステップb)、c)、d)またはe)から得られるBLGの少なくとも90%(重量/重量)を含む。さらにより好ましくは、ステップb)、c)、d)またはe)に由来するBLG含有組成物は、ステップb)、c)、d)またはe)から得られるBLGの少なくとも95%(重量/重量)を含む。最も好ましくは、ステップb)、c)、d)またはe)に由来するBLG含有組成物は、ステップb)、c)、d)またはe)から得られるBLGの100%(重量/重量)を含む。
【0222】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、乾燥ステップは、噴霧乾燥、凍結乾燥、スピンフラッシュ乾燥機、回転乾燥および/または流動床乾燥の1つまたは複数を伴う。
【0223】
本発明のいくつかの特に好ましい実施形態では、乾燥ステップは、BLG結晶が溶解しているBLG含有組成物を伴い、得られた粉末は、ステップb)またはこの乾燥ステップ前の再結晶により形成されたBLG結晶を含まない。この実施形態は、本食用BLG組成物が例えば従来の乾燥ホエイタンパク質粉末のそれに類似しているべきである場合に好ましい。
【0224】
BLG結晶は、例えば、
- 温度を上昇させること、
- 例えば1種または複数の塩の添加によって導電率を増加させること、
- pHを例えば5~6の範囲外に変更すること、
- 例えば希釈によってBLGの濃度を低下させること、または
- 上記の組合わせ
によって溶解され得る。
【0225】
噴霧乾燥は、BLG結晶を含まないBLG含有組成物を乾燥させる現在好ましい方法である。
【0226】
本発明の他の特に好ましい実施形態では、乾燥ステップは、依然としてBLG結晶を含むBLG含有組成物を伴い、得られた粉末は、BLG結晶を含む。この実施形態は、本食用BLG組成物が従来の乾燥ホエイタンパク質粉末と比べて高密度であるべき場合に好ましい。
【0227】
本発明のいくつかの特に好ましい実施形態では、乾燥ステップは、依然としてBLG結晶を含むBLG含有組成物を伴い、得られた粉末は、BLG結晶を含む。この実施形態は、本食用BLG組成物が従来の乾燥ホエイタンパク質粉末と比べて高密度であるべき場合に好ましい。
【0228】
実施例7で実証されているように、本発明者らは、BLG結晶のスラリーを噴霧乾燥させ得、乾燥BLG結晶を冷脱塩水に再懸濁させる場合に結晶構造の少なくとも一部を保持し得ることを発見した。BLG結晶を含むBLG含有組成物を、噴霧前にBLG結晶の相当量を溶解する加熱処理レジメに曝すことを回避することが特に有利である。そのため、BLG結晶を含むBLG含有組成物の予備加熱を噴霧前に使用する場合、熱負荷を慎重に制御することが好ましい。
【0229】
本発明のいくつかの実施形態では、BLG結晶を含むBLG含有組成物は、噴霧装置の出口(例えば、ノズルまたは噴霧器)に達する場合に温度が最大70℃、好ましくは最大60℃、より好ましくは最大50℃である。本発明のいくつかの好ましい実施形態では、BLG結晶を含むBLG含有組成物は、噴霧装置の出口に達する場合に温度が最大40℃、好ましくは最大30℃、より好ましくは最大20℃、さらにより好ましくは最大10℃、最も好ましくは最大5℃である。
【0230】
噴霧乾燥の噴霧装置は、乾燥させる溶液または懸濁液を、噴霧乾燥機の乾燥チャンバに入る小滴に変換する装置(例えば、ノズルまたは噴霧器)である。
【0231】
BLG結晶を含むBLG含有組成物は、噴霧装置の出口に達する場合に温度が0~50℃の範囲、好ましくは2~40℃の範囲、より好ましくは4~35℃の範囲、最も好ましくは噴霧装置の出口に達する場合に5~10℃の範囲であることが特に好ましい。
【0232】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本BLG含有組成物は、噴霧装置の出口に達する場合にBLGの結晶化度が少なくとも20%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%、例えば好ましくは97~100%である。BLG含有組成物は、例えば、総タンパク質に対して90%(重量/重量)超の量でBLGを含むBLG単離物であり得るか、または他のタンパク質の相当量を含み得、従って総タンパク質に対して最大90%(重量/重量)の量でBLGを含み得る。
【0233】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本BLG含有組成物は、本明細書で説明したような従来の液体WPCもしくはWPIまたは従来の液体SPCもしくはSPIのタンパク質組成を有し得るが、噴霧装置の出口に達する場合にBLGの結晶化度が少なくとも20%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%、例えば好ましくは97~100%であり得る。
【0234】
噴霧乾燥機のガスの入口温度は、好ましくは、140~220℃の範囲、より好ましくは160~200℃の範囲、さらにより好ましくは170~190℃の範囲、例えば好ましくは約180℃である。この噴霧乾燥機からのガスの出口温度は、好ましくは、50~95℃の範囲、より好ましくは70~90℃の範囲、さらにより好ましくは80~88℃の範囲、例えば好ましくは約85℃である。経験則で、噴霧乾燥にかけられる固体は、ガスの出口温度と比べて10~15℃低い温度まで加熱されると言われている。
【0235】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、噴霧乾燥機は、好ましくは、50~85℃の範囲、より好ましくは60~80℃の範囲、さらにより好ましくは65~75℃の範囲、例えば好ましくは約70℃である。
【0236】
BLG結晶の懸濁液を噴霧乾燥させるという概念は、先行技術で開示されておらず、それ自体が本発明の別の態様である。
【0237】
従って、本発明のある態様は、BLGを含む噴霧乾燥した食用粉末組成物を製造する方法であって、前記組成物は、乾燥したBLG結晶を含み、
- BLG結晶を含み、かつ好ましくは少なくとも20%のBLGの結晶化度を有する液体BLG含有組成物を提供するステップであって、前記液体BLG含組成物は、好ましくは、少なくとも10%(重量/重量)の総固形物を含み、かつ好ましくは少なくとも5%(重量/重量)のBLGを含む、ステップと、
- この液体BLG含有組成物を作動中の噴霧乾燥機の乾燥チャンバ中に噴霧して、BLG結晶を含む液体BLG含有組成物を粉末に変換するステップと
を含む方法に関する。
【0238】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、乾燥させるBLG含有組成物を乾燥BLG単離物と混合し、この混合物が流動床乾燥により乾燥され得るレベルまで固形分を上昇させる。これは、逆混合とも称され、BLG製品の費用効率が非常に高い乾燥を可能にする。この実施形態は、BLG結晶を含むBLG含有組成物に特に好ましい。
【0239】
本方法の利点は、乾燥させるBLG含有組成物が乾燥ステップ前に非常に高い固形分を有し得、従って除去すべき水が少なく、乾燥作業で消費されるエネルギーが少ないことである。本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップb)、c)、d)またはe)に由来するBLG含有組成物は、少なくとも20%(重量/重量)の固形分を有する。好ましくは、ステップb)、c)、d)またはe)に由来するBLG含有組成物は、少なくとも30%(重量/重量)の固形分を有する。より好ましくは、ステップb)、c)、d)またはe)に由来するBLG含有組成物は、少なくとも40%(重量/重量)の固形分を有する。さらにより好ましくは、ステップb)、c)、d)またはe)に由来するBLG含有組成物は、少なくても50%(重量/重量)、例えば少なくとも60%(重量/重量)の固形分を有する。
【0240】
本発明の他の好ましい実施形態では、ステップb)、c)、d)またはe)に由来するBLG含有組成物は、20~80%(重量/重量)の範囲の固形分を有する。好ましくは、ステップb)、c)、d)またはe)に由来するBLG含有組成物は、30~70%(重量/重量)の範囲の固形分を有する。より好ましくは、ステップb)、c)、d)またはe)に由来するBLG含有組成物は、40~65%(重量/重量)の範囲の固形分を有する。さらにより好ましくは、ステップb)、c)、d)またはe)に由来するBLG含有組成物は、50~65%(重量/重量)の範囲、例えば約60%(重量/重量)の固形分を有する。
【0241】
本発明者らは、本BLG含有組成物の結晶化度が高いほど、このBLG含有組成物に結合した水が少なく、このBLG含有組成物のより高い総固形分が乾燥ステップ前に達成され得ることを発見した。
【0242】
そのため、本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本BLG含有組成物は、少なくとも10%(重量/重量)のBLGの結晶化度を有する。好ましくは、本BLG含有組成物のBLGは、結晶化度が少なくとも20%(重量/重量)である。より好ましくは、本BLG含有組成物のBLGは、結晶化度が少なくとも30%(重量/重量)である。さらにより好ましくは、本BLG含有組成物のBLGは、結晶化度が少なくとも40%(重量/重量)である。
【0243】
さらに高い結晶化度が好ましい場合が多い。そのため、本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本BLG含有組成物のBLGは、結晶化度が少なくとも50%(重量/重量)である。好ましくは、本BLG含有組成物のBLGは、結晶化度が少なくとも60%(重量/重量)である。より好ましくは、食用BLG組成物のBLGは、結晶化度が少なくとも70%(重量/重量)である。さらにより好ましくは、本BLG含有組成物のBLGは、結晶化度が少なくとも80%(重量/重量)である。最も好ましくは、本BLG含有組成物のBLGは、結晶化度が少なくとも90%(重量/重量)、好ましくは少なくとも95%(重量/重量)、より好ましくは少なくとも97%(重量/重量)、さらにより好ましくは少なくとも99%(重量/重量)である。
【0244】
本発明者らは、含水量の減少により組成物のBLGの結晶化度が増加する傾向があることを発見した。そのため、水:BLG比が高い組成物(例えば、水中に4%BLG結晶の懸濁液)は、同一条件での水:BLG比がより低い組成物(例えば、フィルタケーキまたは湿った単離結晶)と比べてBLGの結晶化度が低い傾向がある。
【0245】
本発明の方法を、BLGの栄養価も本ホエイタンパク質溶液の他のホエイタンパク質の栄養価も損なわない穏やかな温度を使用して実施し得る。
【0246】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、BLGは、本方法中に90℃超の温度に曝されない。好ましくは、BLGは、本方法中に80℃を超える温度に曝されない。さらにより好ましくは、BLGは、本方法中に75℃を超える温度に曝されない。たとえ噴霧乾燥が150℃を超える温度を用いることが多くても、短い曝露時間および同時に起こる水の蒸発は、噴霧乾燥したタンパク質が50~70℃を超える温度を経験しないことを意味することに留意すべきである。
【0247】
本発明者らは、乾燥ステップ中の長時間の加熱により、結晶形態であるBLGの量が減少するという徴候を発見した。本発明のいくつかの好ましい実施形態では、乾燥ステップ中の熱曝露は、BLGの変性の度合いが最大10%となるように十分に低く保たれ、好ましくは最大4%、より好ましくは最大1%、さらにより好ましくは最大0.4%、さらにより好ましくは最大0.1%となるように十分に低く保たれる。最も好ましくは、乾燥ステップによるBLGの検出可能な変性は全くない。
【0248】
乾燥ステップにより引き起こされる変性の度合いを、乾燥させるBLG組成物中の(総固形物に対する)BLG含有量(ステップf中のcステップf前)および再溶解させて乾燥させた組成物中の(総固形物に対する)BLG含有量を決定し、式:
変性の度合い=((cステップf前-cステップf後)/cステップf前)*100%
を使用することにより算出する。
【0249】
本発明のいくつかの好ましい実施形態は、結晶化形態でベータ-ラクトグロブリン(BLG)を含む食用組成物を調製する方法であって、
a)BLGおよび少なくとも1種の追加のホエイタンパク質を含むホエイタンパク質溶液を提供するステップであって、前記ホエイタンパク質溶液は、BLGに関して過飽和であり、かつ5~6の範囲のpHを有し、前記ホエイタンパク質溶液は、
- 総固形物に対して70~100%(重量/重量)のタンパク質、
- 総タンパク質に対して30~90%(重量/重量)のBLG、好ましくは30~70%(重量/重量)のBLG、
- 総タンパク質に対して4~50%(重量/重量)のALA、好ましくは8~35%(重量/重量)のALA、
- タンパク質に対して0~25%(重量/重量)のCMP、
- このホエイタンパク質溶液の総重量に対して少なくとも10%(重量/重量)のタンパク質
を含む、ステップと、
b)好ましくは結晶化種の添加により、この過飽和ホエイタンパク質溶液中でBLGを結晶化させるステップと、
f)ステップb)から直接得られたBLG含有組成物を乾燥させるステップであって、前記BLG含有組成物は、好ましくは、少なくとも30%のBLGの結晶化度を有する、ステップと
を含み、ステップc)、d)またはe)を含まない方法に関する。
【0250】
このホエイタンパク質溶液は、好ましくは、脱塩ホエイタンパク質溶液であり、好ましくは導電率とタンパク質の総量との間の比が最大0.3であり、および/またはUF透過液の導電率が最大7mS/cmである。
【0251】
この実施形態では、このホエイタンパク質溶液から分離されていないBLG結晶は、乾燥され、高密度の食用BLG組成物を粉末形態でもたらす。
【0252】
本発明は、この実施形態によって得ることができる食用組成物にさらに関する。
【0253】
本発明の他の好ましい実施形態は、結晶化形態でベータ-ラクトグロブリン(BLG)を含む食用組成物を調製する方法であって、
a)BLGおよび少なくとも1種の追加のホエイタンパク質を含むホエイタンパク質溶液を提供するステップであって、前記ホエイタンパク質溶液は、BLGに関して過飽和であり、かつ5~6の範囲のpHを有し、前記ホエイタンパク質溶液は、
- 総固形物に対して70~100%(重量/重量)のタンパク質、
- 総タンパク質に対して30~90%(重量/重量)のBLG、好ましくは30~70%のBLG、
- 総タンパク質に対して4~50%(重量/重量)のALA、好ましくは8~35%のALA、
- 総タンパク質に対して0~25%(重量/重量)のCMP、
- このホエイタンパク質溶液の総重量に対して少なくとも10%(重量/重量)のタンパク質
を含む、ステップと、
b)好ましくは結晶化種の添加により、この過飽和ホエイタンパク質溶液中でBLGを結晶化させるステップと、
c)残存するホエイタンパク質溶液からBLG結晶を分離するステップと、
d)任意選択で、ステップc)から得られた分離されたBLG結晶を洗浄するステップと、
e)任意選択で、ステップc)またはd)から得られたBLG結晶を再結晶化させるステップと、
f)ステップc)、d)またはe)に由来し、好ましくはステップc)、d)またはe)から直接得られたBLG含有組成物を乾燥させるステップであって、BLG含有組成物は、BLG結晶を含み、かつ好ましくは少なくとも30%のBLGの結晶化度を有する、ステップと
を含む方法に関する。
【0254】
このホエイタンパク質溶液は、好ましくは、脱塩ホエイタンパク質溶液であり、好ましくは導電率とタンパク質総量との間の比が最大0.3であり、および/またはUF透過液の導電率が最大7mS/cmである。
【0255】
この実施形態は、高密度粉末の形態での低ミネラルおよび低リンの食用BLG組成物の製造に特に有用である。
【0256】
本発明は、この実施形態によって得ることができる食用組成物にさらに関する。
【0257】
本発明のさらに他の好ましい実施形態は、単離形態でベータ-ラクトグロブリンを含む食用組成物を調製する方法であって、
a)BLGおよび少なくとも1種の追加のホエイタンパク質を含むホエイタンパク質溶液を提供するステップであって、前記ホエイタンパク質溶液は、BLGに関して過飽和であり、かつ5~6の範囲のpHを有し、前記ホエイタンパク質溶液は、
- 総固形物に対して70~100%(重量/重量)のタンパク質、
- 総タンパク質に対して30~90%(重量/重量)のBLG、好ましくは30~70%(重量/重量)のBLG、
- 総タンパク質に対して5~50%(重量/重量)のALA、好ましくは8~35%(重量/重量)のALA、
- 総タンパク質に対して0~25%(重量/重量)のCMP、
- このホエイタンパク質溶液の総重量に対して少なくとも10%(重量/重量)のタンパク質
を含む、ステップと、
b)好ましくは結晶化種の添加により、この過飽和ホエイタンパク質溶液中でBLGを結晶化させるステップと、
c)残存するホエイタンパク質溶液からBLG結晶を分離するステップと、
d)任意選択で、ステップc)から得られた分離されたBLG結晶を洗浄するステップと、
e)任意選択で、ステップc)またはd)から得られたBLG結晶を再結晶化させるステップと、
f)ステップc)、d)またはe)に由来するBLG含有組成物を乾燥させるステップであって、BLG含有組成物は、BLG結晶を含まない、ステップと
を含む方法に関する。
【0258】
このホエイタンパク質溶液は、好ましくは、脱塩ホエイタンパク質溶液であり、好ましくは導電率とタンパク質の総量との間の比が最大0.3であり、および/またはUF透過液の導電率が最大7mS/cmである。
【0259】
この実施形態では、BLG結晶は、乾燥させる前に溶解している。
【0260】
本発明は、この実施形態によって得ることができる食用組成物にさらに関する。
【0261】
いくつかの好ましい実施形態では、本方法をバッチプロセスとして実行する。代わりにおよびときに好ましくは、この方法をセミバッチプロセスとして実行し得る。他の好ましい実施形態では、この方法を連続プロセスとして実行する。
【0262】
本方法の利点は、この方法が先行技術のBLG結晶化のための同等の方法と比べてはるかに早いことである。ホエイタンパク質原材料の最初の調整からステップcの分離の完了までの持続期間は、最大10時間、好ましくは最大4時間、より好ましくは最大2時間、さらにより好ましくは最大1時間であり得る。
【0263】
本発明のさらなる態様は、本明細書で説明した方法から得ることができる単離BLG結晶に関する。
【0264】
本発明に関連して、用語「単離BLG結晶」は、BLG結晶において、このBLG結晶が形成された溶液から分離されているが、依然として内部水を含み得るBLG結晶(即ち結晶の水和BLG分子)に関する。
【0265】
この単離BLG結晶は、好ましくは、斜方晶の空間群P212121を有する。
【0266】
好ましくは、この単離BLG結晶は、斜方晶の空間群P212121ならびに単位格子の寸法a=68.68(±5%)Å、b=68.68(±5%)Åおよびc=156.65(±5%)Åを有し、かつ単位格子の整数角α=90°(±2%)、β=90°(±2%)およびγ=90°(±2%)を有する。
【0267】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、この単離BLG結晶は、斜方晶の空間群P212121ならびに単位格子の寸法a=68.68(±2%)Å、b=68.68(±2%)Åおよびc=156.65(±2%)Åを有し、かつ単位格子の整数角α=90°(±1%)、β=90°(±1%)およびγ=90°(±1%)を有する。
【0268】
さらにより好ましくは、この単離BLG結晶は、斜方晶の空間群P212121ならびに単位格子の寸法a=68.68(±1%)Å、b=68.68(±1%)Åおよびc=156.65(±1%)Åを有し得、かつ単位格子の整数角α=90°(±0.5%)、β=90°(±0.5%)およびγ=90°(±0.5%)を有し得る。
【0269】
最も好ましくは、この単離BLG結晶は、斜方晶の空間群P212121ならびに単位格子の寸法a=68.68Å、b=68.68Åおよびc=156.65Åを有し、かつ単位格子の整数角α=90°、β=90°およびγ=90°を有する。
【0270】
この単離BLG結晶は、例えば、少なくとも20%(重量/重量)のBLGおよび最大80%(重量/重量)の水を含み得る。好ましくは、この単離BLG結晶は、少なくとも40%(重量/重量)のBLGおよび0~60%(重量/重量)の範囲の水を含み得る。さらにより好ましくは、この単離BLG結晶は、40~60%(重量/重量)の範囲のBLGおよび約40~約60%(重量/重量)の範囲の水を含む。
【0271】
本発明者らは、本発明のBLG結晶が、驚くべきことに、乾燥させて再水和させた後にこのBLG結晶の元々の結晶構造を回復する能力を有することを発見した。これは、BLGの結晶構造から利益を得る用途で特に有利である。
【0272】
本発明のさらなる態様は、ベータ-ラクトグロブリンを含む食用組成物(例えば、本明細書で定義した方法によって得ることができる食用組成物)に関する。
【0273】
本発明の別の態様は、総固形物に対して少なくとも90%(重量/重量)のBLGを含む食用BLG組成物に関する。そのような食用BLG組成物は、本明細書で定義された方法によって得ることができ得る。
【0274】
本発明のさらなる態様は、乾燥したBLG結晶を含み(総固形物に対して少なくとも20%(重量/重量)のBLG)、かつ好ましくは少なくとも20%のBLGに関する結晶化度を有する食用BLG組成物に関する。乾燥したBLG結晶を含むそのような食用BLG組成物は、本明細書で定義された方法によって得ることができ得る。
【0275】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本食用BLG組成物のBLGは、ラクトシル化度が最大1である。好ましくは、この食用BLG組成物のBLGは、ラクトシル化度が最大0.6である。より好ましくは、この食用BLG組成物のBLGは、ラクトシル化度が最大0.4である。さらにより好ましくは、この食用BLG組成物のBLGは、ラクトシル化度が最大0.2である。最も好ましくは、この食用BLG組成物のBLGは、ラクトシル化度が最大0.1、例えば好ましくは最大0.01である。
【0276】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本食用BLG組成物のBLGは、少なくとも90%(重量/重量)の非ラクトシル化BLG、好ましくは少なくとも95%(重量/重量)の非ラクトシル化BLG、さらにより好ましくは少なくとも98%(重量/重量)の非ラクトシル化BLGを含む。
【0277】
非ラクトシル化BLGの百分率は、実施例9.1に従って決定される。
【0278】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本食用BLG組成物のBLGは、結晶化度が少なくとも10%(重量/重量)である。好ましくは、この食用BLG組成物のBLGは、結晶化度が少なくとも20%(重量/重量)である。さらに好ましくは、この食用BLG組成物のBLGは、結晶化度が少なくとも30%(重量/重量)である。さらにより好ましくは、この食用BLG組成物のBLGは、結晶化度が少なくとも40%(重量/重量)である。
【0279】
さらに高い結晶化度が好ましい場合が多い。そのため、本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本食用BLG含有組成物のBLGは、結晶化度が少なくとも50%(重量/重量)である。好ましくは、この食用BLG含有組成物のBLGは、結晶化度が少なくとも60%(重量/重量)である。より好ましくは、この食用BLG組成物のBLGは、結晶化度が少なくとも70%(重量/重量)である。さらにより好ましくは、この食用BLG含有組成物のBLGは、結晶化度が少なくとも80%(重量/重量)である。最も好ましくは、この食用BLG含有組成物のBLGは、結晶化度が少なくとも90%(重量/重量)、好ましくは少なくとも95%(重量/重量)である。
【0280】
pHが5~6の範囲である液体中におけるBLGの結晶化度は、実施例9.7に従って測定される。粉末状物質中におけるBLGの結晶化度は、実施例9.8に従って測定される。本食用組成物が乾燥製品であるが、粉末の形態ではない場合、この食用組成物は、実施例9.8の方法にかける前に例えば粉砕(grinding)または粉砕(milling)により、粉末に変換しなければならない。
【0281】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本食用BLG組成物は、WPC、WPI、SPCまたはSPIであり、ここで、BLGの少なくとも一部は、結晶形態である。この食用BLG組成物は、例えば、タンパク質の総量に対して最大90%(重量/重量)のBLGを含み得、かつ少なくとも10%のBLGの結晶化度を有する。例えば、この食用BLG組成物は、タンパク質の総量に対して最大80%(重量/重量)のBLGを含み得、かつ少なくとも10%のBLGの結晶化度を有し得る。この食用BLG組成物は、例えば、タンパク質の総量に対して30~70%(重量/重量)のBLGを含み得、かつ少なくとも10%のBLGの結晶化度を有し得る。
【0282】
本発明の他の好ましい実施形態では、本食用BLG組成物は、タンパク質の総量に対して最大90%(重量/重量)のBLGを含み、かつ少なくとも30%のBLGの結晶化度を有する。好ましくは、この食用BLG組成物は、タンパク質の総量に対して最大80%(重量/重量)のBLGを含み得、かつ少なくとも30%のBLGの結晶化度を有し得る。さらにより好ましくは、この食用BLG組成物は、タンパク質の総量に対して30~70%(重量/重量)のBLGを含み得、かつ少なくとも30%のBLGの結晶化度を有し得る。
【0283】
本発明者らは、本発明により、リンおよび他のミネラルの含有量が非常に低い食用ホエイタンパク質製品を調製することが可能となり、この食用ホエイタンパク質製品が、腎疾患に罹患しているかまたは別の方法で腎機能が低下している患者に有利であることを発見した。
【0284】
本食用BLG組成物は、好ましくは、低リン組成物である。
【0285】
本発明に関連して、用語「低リン」は、リンの総含有量がタンパク質100g当たりリン最大100mgである組成物(例えば、液体、粉末または別の食品)に関する。好ましくは、低リン組成物は、総含有量がタンパク質100g当たりリン最大80mgである。より好ましくは、低リン組成物は、総含有量がタンパク質100g当たりリン最大50mgであり得る。さらにより好ましくは、低リン組成物は、リンの総含有量がタンパク質100g当たりリン最大20mgであり得る。さらにより好ましくは、低リン組成物は、リンの総含有量がタンパク質100g当たりリン最大5mgであり得る。本発明に係る低リン組成物は、腎機能が低下している患者群のための食品を製造するための食品成分として使用され得る。
【0286】
そのため、本発明のいくつかの特に好ましい実施形態では、本食用BLG組成物は、タンパク質100g当たりリン最大80mgを含む。好ましくは、この食用BLG組成物は、タンパク質100g当たりリン最大30mgを含む。より好ましくは、この食用BLG組成物は、タンパク質100g当たりリン最大20mgを含む。さらにより好ましくは、この食用BLG組成物は、タンパク質100g当たりリン最大10mgを含む。最も好ましくは、この食用BLG組成物は、タンパク質100g当たりリン最大5mgを含む。
【0287】
リンの含有量は、対象の組成物の元素リンの総量に関連し、実施例9.5に従って決定される。
【0288】
本発明の他の好ましい実施形態では、本食用BLG組成物は、低ミネラル組成物である。
【0289】
本発明に関連して、「低ミネラル」は、下記:
- 総固形物に対して最大1.2%(重量/重量)の灰含有量、
- 総固形物に対して最大0.3%(重量/重量)のカルシウムおよびマグネシウムの総含有量、
- 総固形物に対して最大0.10%(重量/重量)のナトリウムおよびカリウムの総含有量、
- タンパク質100g当たりリン最大100mgのリンの総含有量
の少なくとも1つ、好ましくは2つ、さらにより好ましくは全てを有する組成物(例えば、液体、粉末または別の食品)に関する。
【0290】
好ましくは、低ミネラル組成物は、下記:
- 総固形物に対して最大0.7%(重量/重量)の灰含有量、
- 総固形物に対して最大0.2%(重量/重量)のカルシウムおよびマグネシウムの総含有量、
- 総固形物に対して最大0.08%(重量/重量)のナトリウムおよびカリウムの総含有量、
- タンパク質100g当たりリン最大80mgのリンの総含有量
の少なくとも1つ、好ましくは2つ以上、さらにより好ましくは全てを有する。
【0291】
さらにより好ましくは、低ミネラル組成物は、下記:
- 総固形物に対して最大0.5%(重量/重量)の灰含有量、
- 総固形物に対して最大0.15%(重量/重量)のカルシウムおよびマグネシウムの総含有量、
- 総固形物に対して最大0.06%(重量/重量)のナトリウムおよびカリウムの総含有量、
- タンパク質100g当たりリン最大50mgのリンの総含有量
の少なくとも1つ、好ましくは2つ以上、さらにより好ましくは全てを有する。
【0292】
低ミネラル組成物が下記:
- 総固形物に対して最大0.5%(重量/重量)の灰含有量、
- 総固形物に対して最大0.15%(重量/重量)のカルシウムおよびマグネシウムの総含有量、
- 総固形物に対して最大0.06%(重量/重量)のナトリウムおよびカリウムの総含有量、
- タンパク質100g当たりリン最大50mgのリンの総含有量
を有することが特に好ましい。
【0293】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本食用BLG組成物は、この食用BLG組成物の総固形物に対して少なくとも25%(重量/重量)のタンパク質の総量を含む。好ましくは、本食用BLG組成物は、この食用BLG組成物の総固形物に対して少なくとも50%(重量/重量)のタンパク質の総量を含む。より好ましくは、本食用BLG組成物は、この食用BLG組成物の総固形物に対して少なくとも75%(重量/重量)のタンパク質の総量を含む。さらにより好ましくは、本食用BLG組成物は、この食用BLG組成物の総固形物に対して少なくとも90%(重量/重量)のタンパク質の総量を含む。
【0294】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本食用BLG組成物のタンパク質の総量は、総固形物に対して25~100%(重量/重量)の範囲である。好ましくは、本食用BLG組成物のタンパク質の総量は、50~100%(重量/重量)の範囲である。より好ましくは、本食用BLG組成物のタンパク質の総量は、総固形物に対して75~100%(重量/重量)の範囲である。さらにより好ましくは、本食用BLG組成物のタンパク質の総量は、総固形物に対して90~100%(重量/重量)の範囲である。
【0295】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本食用BLG組成物は、タンパク質の総量に対して少なくとも75%(重量/重量)のBLGを含む。好ましくは、本食用BLG組成物は、タンパク質の総量に対して少なくとも90%(重量/重量)のBLGを含み得る。より好ましくは、本食用BLG組成物は、タンパク質の総量に対して少なくとも95%(重量/重量)のBLGを含み得る。さらにより好ましくは、本食用BLG組成物は、タンパク質の総量に対して少なくとも97%(重量/重量)のBLGを含み得る。最も好ましくは、本食用BLG組成物は、タンパク質の総量に対して約100%(重量/重量)のBLGを含む。
【0296】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本食用BLG組成物は、最大10%(重量/重量)の炭水化物、好ましくは最大5%(重量/重量)の炭水化物、より好ましくは最大1%(重量/重量)の炭水化物、さらにより好ましくは最大0.1%(重量/重量)の炭水化物を含む。
【0297】
本食用BLG組成物は、脂質(例えば、トリグリセリドおよび/または他の脂質型(例えば、リン脂質)の形態)も含み得る。
【0298】
本発明のいくつかの実施形態では、本食用BLG組成物は、総固形物に対して最大1%(重量/重量)の脂質の総量を含む。好ましくは、本食用BLG組成物は、総固形物に対して最大0.5%(重量/重量)の脂質の総量を含む。より好ましくは、本食用BLG組成物は、総固形物に対して最大0.1%(重量/重量)の脂質の総量を含む。さらにより好ましくは、本食用BLG組成物は、総固形物に対して最大0.05%(重量/重量)の脂質の総量を含む。最も好ましくは、本食用BLG組成物は、総固形物に対して最大0.01%(重量/重量)の脂質の総量を含む。
【0299】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本食用BLG組成物は、乾燥組成物、例えば粉末である。本食用BLG組成物は、噴霧乾燥された粉末であることが特に好ましい。
【0300】
本発明者らは、乾燥時にBLGの少なくとも一部が結晶形態である粉末形態の食用BLG組成物が、BLG結晶を含まない同等のBLG組成物と比べて高密度であることを観察した(実施例7を参照されたい)。非常に驚くべきことに、噴霧乾燥されたBLG結晶スラリーから得られた粉末形態の食用BLG組成物の場合にもこの高密度効果が観察される。
【0301】
そのため、本発明のいくつかの好ましい実施形態では、粉末形態の本食用BLG組成物は、嵩密度が少なくとも0.40g/mLである。好ましくは、粉末形態の本食用BLG組成物は、嵩密度が少なくとも0.45g/mLである。より好ましくは、粉末形態の本食用BLG組成物は、嵩密度が少なくとも0.50g/mLである。粉末形態の本食用BLG組成物は嵩密度が少なくとも0.6g/mLであることがさらにより好ましい。粉末形態の本食用BLG組成物は、例えば、嵩密度が少なくとも0.7g/mLであり得る。
【0302】
嵩密度の利点は、BLGが、存在するほぼ唯一のタンパク質である食用BLG組成物の粉末と、ホエイタンパク質溶液中に存在した他のタンパク質と比較してBLGの濃度が富化されていない食用BLG組成物の粉末との両方に当てはまることである。従って、本発明は、単離BLGと、BLGに加えて相当量のALAおよび他のホエイタンパク質を含む粗ホエイタンパク質との両方の高密度粉末を提供する。
【0303】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、粉末形態の本食用BLG組成物は、嵩密度が少なくとも0.45g/mLであり、かつこの組成物の総重量に対して少なくとも70%(重量/重量)のタンパク質を含む。より好ましくは、粉末形態の本食用BLG組成物は、嵩密度が少なくとも0.50g/mLであり、かつこの組成物の総重量に対して少なくとも70%(重量/重量)のタンパク質を含む。粉末形態の本食用BLG組成物は、嵩密度が少なくとも0.6g/mLであり、かつこの組成物の総重量に対して少なくとも70%(重量/重量)のタンパク質を含むことがさらにより好ましい。粉末形態の本食用BLG組成物は、例えば、嵩密度が少なくとも0.7g/mLであり得、かつこの組成物の総重量に対して少なくとも70%(重量/重量)のタンパク質を含む。
【0304】
本発明の他の好ましい実施形態では、粉末形態の本食用BLG組成物は、嵩密度が少なくとも0.45g/mLであり、かつこの組成物の総重量に対して少なくとも80%(重量/重量)のタンパク質を含む。より好ましくは、粉末形態の本食用BLG組成物は、嵩密度が少なくとも0.50g/mLであり、かつこの組成物の総重量に対して少なくとも80%(重量/重量)のタンパク質を含む。粉末形態の本食用BLG組成物は、嵩密度が少なくとも0.6g/mLであり、かつこの組成物の総重量に対して少なくとも80%(重量/重量)のタンパク質を含むことがさらにより好ましい。粉末形態の本食用BLG組成物は、例えば、嵩密度が少なくとも0.7g/mLであり得、かつこの組成物の総重量に対して少なくとも80%(重量/重量)のタンパク質を含む。
【0305】
粉末形態の本食用BLG組成物は、例えば、嵩密度が0.40~1.5g/mLの範囲であり得、かつこの組成物の総重量に対して少なくとも80%(重量/重量)のタンパク質を含む。好ましくは、粉末状の本食用BLG組成物は、嵩密度が0.45~1.0g/mLの範囲であり、かつこの組成物の総重量に対して少なくとも80%(重量/重量)のタンパク質を含む。より好ましくは、粉末状の本食用BLG組成物は、嵩密度が0.50~0.9g/mLの範囲であり得、かつこの組成物の総重量に対して少なくとも80%(重量/重量)のタンパク質を含む。粉末状の本食用BLG組成物は、嵩密度が0.6~0.9g/mLの範囲であり、かつこの組成物の総重量に対して少なくとも80%(重量/重量)のタンパク質を含むことがさらにより好ましい。粉末状の本食用BLG組成物は、例えば、嵩密度が0.6~0.8g/mLの範囲であり得、かつこの組成物の総重量に対して少なくとも80%(重量/重量)のタンパク質を含む。
【0306】
本発明者らは、本発明の高密度粉末が、粉末1kg当たりに必要とされる包装材料がより少なく、かつ所与の容器またはトラックにより、より多くの粉末(質量)を輸送し得ることから、この粉末の費用効率がより高い包装および物流を有利に可能にすることを発見した。
【0307】
粉末形態の本食用BLG組成物は、例えば、嵩密度が0.40~1.5g/mLの範囲であり得る。好ましくは、粉末状の本食用BLG組成物は、嵩密度が0.45~1.0g/mLの範囲である。より好ましくは、粉末状の本食用BLG組成物は、嵩密度が0.50~0.9g/mLの範囲であり得る。粉末状の本食用BLG組成物は嵩密度が0.6~0.9g/mLの範囲であることがさらにより好ましい。粉末状の本食用BLG組成物は、例えば、嵩密度が0.6~0.8g/mLの範囲であり得る。
【0308】
本発明の他の好ましい実施形態では、粉末形態の本食用BLG組成物は、嵩密度が0.50~1.5g/mLの範囲である。好ましくは、粉末状の本食用BLG組成物は、嵩密度が0.55~1.0g/mLの範囲である。より好ましくは、粉末状の本食用BLG組成物は、嵩密度が0.60~1.0g/mLの範囲であり得る。粉末状の本食用BLG組成物は嵩密度が0.65~1.0g/mLの範囲であることがさらにより好ましい。粉末状の本食用BLG組成物は、好ましくは、嵩密度が0.70~1.0g/mLの範囲であり得る。
【0309】
粉末形態の本食用BLG組成物は、例えば、嵩密度が0.40~1.5g/mLの範囲であり得、かつこの組成物の総重量に対して少なくとも70%(重量/重量)のタンパク質を含む。好ましくは、粉末状の本食用BLG組成物は、嵩密度が0.45~1.0g/mLの範囲であり、かつこの組成物の総重量に対して少なくとも70%(重量/重量)のタンパク質を含む。より好ましくは、粉末状の本食用BLG組成物は、嵩密度が0.50~0.9g/mLの範囲であり得、かつこの組成物の総重量に対して少なくとも70%(重量/重量)のタンパク質を含む。粉末状の本食用BLG組成物は、嵩密度が0.6~0.9g/mLの範囲であり、かつこの組成物の総重量に対して少なくとも70%(重量/重量)のタンパク質を含むことがさらにより好ましい。粉末状の本食用BLG組成物は、例えば、嵩密度が0.6~0.8g/mLの範囲であり得、かつこの組成物の総重量に対して少なくとも70%(重量/重量)のタンパク質を含む。
【0310】
粉末形態の本食用BLG組成物は、例えば、嵩密度が0.40~1.5g/mLの範囲であり得、かつこの組成物の総重量に対して少なくとも80%(重量/重量)のタンパク質を含む。好ましくは、粉末状の本食用BLG組成物は、嵩密度が0.45~1.0g/mLの範囲であり、かつこの組成物の総重量に対して少なくとも80%(重量/重量)のタンパク質を含む。より好ましくは、粉末状の本食用BLG組成物は、嵩密度が0.50~0.9g/mLの範囲であり得、かつこの組成物の総重量に対して少なくとも80%(重量/重量)のタンパク質を含む。粉末状の本食用BLG組成物は、嵩密度が0.6~0.9g/mLの範囲であり、かつこの組成物の総重量に対して少なくとも80%(重量/重量)のタンパク質を含むことがさらにより好ましい。粉末状の本食用BLG組成物は、例えば、嵩密度が0.6~0.8g/mLの範囲であり得、かつこの組成物の総重量に対して少なくとも80%(重量/重量)のタンパク質を含む。
【0311】
本発明の他の好ましい実施形態では、粉末形態の本食用BLG組成物は、嵩密度が0.50~1.5g/mLの範囲であり、かつこの組成物の総重量に対して少なくとも70%(重量/重量)のタンパク質を含む。好ましくは、粉末状の本食用BLG組成物は、嵩密度が0.55~1.0g/mLの範囲であり、かつこの組成物の総重量に対して少なくとも70%(重量/重量)のタンパク質を含む。より好ましくは、粉末状の本食用BLG組成物は、嵩密度が0.60~1.0g/mLの範囲であり得、かつこの組成物の総重量に対して少なくとも70%(重量/重量)のタンパク質を含む。粉末状の本食用BLG組成物は、嵩密度が0.65~1.0g/mLの範囲であり、かつこの組成物の総重量に対して少なくとも70%(重量/重量)のタンパク質を含むことがさらにより好ましい。粉末状の本食用BLG組成物は、好ましくは、嵩密度が0.70~1.0g/mLの範囲であり得、かつこの組成物の総重量に対して少なくとも70%(重量/重量)のタンパク質を含む。
【0312】
本発明の他の好ましい実施形態では、粉末形態の本食用BLG組成物は、嵩密度が0.50~1.5g/mLの範囲であり、かつこの組成物の総重量に対して少なくとも80%(重量/重量)のタンパク質を含む。好ましくは、粉末状の本食用BLG組成物は、嵩密度が0.55~1.0g/mLの範囲であり、かつこの組成物の総重量に対して少なくとも80%(重量/重量)のタンパク質を含む。より好ましくは、粉末状の本食用BLG組成物は、嵩密度が0.60~1.0g/mLの範囲であり得、かつこの組成物の総重量に対して少なくとも80%(重量/重量)のタンパク質を含む。粉末状の本食用BLG組成物は、嵩密度が0.65~1.0g/mLの範囲であり、かつこの組成物の総重量に対して少なくとも80%(重量/重量)のタンパク質を含むことがさらにより好ましい。粉末状の本食用BLG組成物は、好ましくは、嵩密度が0.70~1.0g/mLの範囲であり得、かつこの組成物の総重量に対して少なくとも80%(重量/重量)のタンパク質を含む。
【0313】
粉末の嵩密度は、実施例9.3に従って測定される。
【0314】
本発明者らは、本発明に係るBLG組成物が類似のBLG組成物と比べて良好な長期安定性を有するという徴候を発見した。これは、BLGの少なくとも一部がBLG結晶の形態で存在する場合に特に当てはまり、BLG分子のより良好な貯蔵安定性を提供すると思われる。
【0315】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本乾燥BLG組成物は、フロシン値が30℃で60日後に最大80mg/タンパク質100g、好ましくは最大60mg/タンパク質100g、より好ましくは最大40mg/タンパク質100g、さらにより好ましくは最大20mg/タンパク質100gである。最も好ましくは、本乾燥BLG組成物は、フロシン値が30℃で60日後に最大10mg/タンパク質100gである。
【0316】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本乾燥BLG組成物は、フロシン値が最大80mg/タンパク質100g、好ましくは最大60mg/タンパク質100g、より好ましくは最大40mg/タンパク質100g、さらにより好ましくは最大20mg/タンパク質100gである。最も好ましくは、本乾燥BLG組成物は、フロシン値が最大10mg/タンパク質100gである。好ましくは、本BLG組成物は、フロシン値が0mg/タンパク質100gである。
【0317】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本乾燥BLG組成物のBLGは、ラクトシル化度が30℃で60日後に最大1、好ましくは最大0.6、より好ましくは0.2、さらにより好ましくは最大0.1、最も好ましくは最大0.01である。
【0318】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本食用BLG組成物は、液体組成物である。液体の食用BLG組成物は、好ましくは、少なくとも20%(重量/重量)の水、より好ましくは少なくとも30%(重量/重量)の水、さらにより好ましくは少なくとも40%(重量/重量)を含む。
【0319】
液体の本食用BLG組成物は、例えば、20~90%(重量/重量)の範囲の水を含み得、より好ましくは30~80%(重量/重量)の範囲の水を含み得、さらにより好ましくは少なくとも40%(重量/重量)を含み得る。
【0320】
本発明者らは、たとえ食用BLG粉末組成物の調製に噴霧乾燥を使用しても、本発明に係る食用BLG組成物が、驚くべきことに、タンパク質変性の度合いが低いことを発見した(実施例11を参照されたい)。
【0321】
そのため、本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本食用BLG組成物は、タンパク質変性の度合いが最大2%である。好ましくは、本食用BLG組成物は、タンパク質変性の度合いが最大1.5%である。より好ましくは、本食用BLG組成物は、タンパク質変性の度合いが最大1.0%である。さらにより好ましくは、本食用BLG組成物は、タンパク質変性の度合いが最大0.8%である。さらにより好ましくは、本食用BLG組成物は、タンパク質変性の度合いが最大0.5%である。
【0322】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本食用BLG組成物は、乾燥粉末、好ましくは噴霧乾燥粉末であり、かつタンパク質変性の度合いが最大2%、好ましくは最大1.5%である。より好ましくは、例えば噴霧乾燥粉末の形態の本乾燥食用BLG組成物は、タンパク質変性の度合いが最大1.0%である。さらにより好ましくは、例えば、噴霧乾燥粉末の形態の本乾燥食用BLG組成物は、タンパク質変性の度合いが最大0.8%である。さらにより好ましくは、例えば、噴霧乾燥粉末の形態の本乾燥食用BLG組成物は、タンパク質変性の度合いが最大0.5%である。
【0323】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本食用BLG組成物は、
- 最大6%(重量/重量)の水、
- 総固形物に対して少なくとも80%の総タンパク質、
- 総タンパク質に対して少なくとも95%のBLG
を含み、前記食用BLG組成物は、
- 乾燥粉末であり、かつ
- 嵩密度が少なくとも0.50g/mL、好ましくは少なくとも0.60g/mである。
【0324】
本発明の他の好ましい実施形態では、本食用BLG組成物は、
- 最大6%(重量/重量)の水、
- 総固形物に対して少なくとも80%の総タンパク質、
- 総タンパク質に対して少なくとも95%のBLG
を含み、前記食用BLG組成物は、
- 乾燥粉末であり、
- 嵩密度が少なくとも0.50g/mL、好ましくは少なくとも0.60g/mLであり、かつ
- BLGの結晶化度が少なくとも20%、好ましくは少なくとも40%である。
【0325】
本発明のさらに好ましい実施形態では、本食用BLG組成物は、
- 最大6%(重量/重量)の水、
- 総固形物に対して少なくとも80%の総タンパク質、
- 総タンパク質に対して少なくとも95%のBLG、
を含み、前記食用BLG組成物は、
- 乾燥粉末であり、
- 嵩密度が少なくとも0.50g/mL、好ましくは0.60g/mLであり、かつ
- タンパク質変性の度合いが最大2%、好ましくは最大1.0%である。
【0326】
本発明のさらに好ましい実施形態では、本食用BLG組成物は、
- 最大6%(重量/重量)の水、
- 総固形物に対して少なくとも80%の総タンパク質、
- 総タンパク質に対して少なくとも95%のBLG、
- タンパク質100g当たりリン最大80mg
を含み、前記食用BLG組成物は、
- 乾燥粉末である。
【0327】
本発明のさらに好ましい実施形態では、本食用BLG組成物は、
- 最大6%(重量/重量)の水、
- 総固形物に対して少なくとも90%の総タンパク質、
- 総タンパク質に対して少なくとも97%のBLG、
- タンパク質100g当たりリン最大50mg
を含み、前記食用BLG組成物は、
- 乾燥粉末である。
【0328】
本発明の他の好ましい実施形態では、本食用BLG組成物は、
- 最大6%(重量/重量)の水、
- 総固形物に対して少なくとも80%の総タンパク質、好ましくは総固形物に対して少なくとも90%の総タンパク質、
- 総タンパク質に対して30~70%のBLG、
- 総タンパク質に対して8~25%(重量/重量)のALA
を含み、前記食用BLG組成物は、
- 乾燥粉末であり、かつ
- BLGの結晶化度が少なくとも20%、好ましくは少なくとも40%である。
【0329】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本食用BLG組成物は、
- 20~80%(重量/重量)の水、好ましくは20~60%(重量/重量)の水、
- 総固形物に対して少なくとも80%の総タンパク質、好ましくは少なくとも90%の総タンパク質、
- 総タンパク質に対して少なくとも95%のBLG、
- タンパク質100g当たりリン最大80mg
を含み、前記食用BLG組成物は、
- BLGの結晶化度が少なくとも20%、好ましくは少なくとも40であり、かつ
- 任意選択で、タンパク質変性の度合いが最大2%、好ましくは最大1.0%である。
【0330】
これらの実施形態に係る食用組成物は、乾燥形態の食用BLG組成物の調製に特に有用であり、高密度ホエイタンパク質粉末において、ホエイタンパク質種の通常の濃度プロファイルを有するが、乾燥したBLG結晶の形態でBLGの少なくとも一部を含む高密度ホエイタンパク質粉末の噴霧乾燥および調製に特に適している。
【0331】
本発明の他の好ましい実施形態では、本食用BLG組成物は、
- 20~80%(重量/重量)の水、好ましくは20~60%(重量/重量)の水、
- 総固形物に対して少なくとも80%の総タンパク質、好ましくは総固形物に対して少なくとも90%の総タンパク質、
- 総タンパク質に対して30~70%のBLG、
- 総タンパク質に対して8~25%(重量/重量)のALA
を含み、前記食用BLG組成物は、
- BLGの結晶化度が少なくとも20%、好ましくは少なくとも40%である。
【0332】
この実施形態に係る食用組成物は、乾燥形態の食用BLG組成物の調製に特に有用であり、高密度ホエイタンパク質において、ホエイタンパク質種の通常の濃度プロファイルを有するが、乾燥したBLG結晶の形態でBLGの少なくとも一部を含む高密度ホエイタンパク質の噴霧乾燥および調製に特に適している。
【0333】
さらに、本発明のある態様は、食品成分としての、本明細書で定義された食用BLG組成物の使用に関する。
【0334】
例えば、本明細書で定義された低リンの食用BLG組成物を低リン食品の製造において食品成分として使用することが好ましい場合がある。
【0335】
本発明のさらなる態様は、本明細書で定義された食用BLG組成物と、例えば脂肪および/または炭水化物の供給源等の少なくとも追加の成分とを含む食品に関する。
【0336】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、この食品は、炭水化物およびタンパク質を含む乾燥食品(例えば、バー)であり、前記乾燥食品は、少なくとも1%(重量/重量)のBLG、好ましくは少なくとも5%を含み、
i)BLGの結晶化度は、少なくとも20%、好ましくは少なくとも40%であり、および/または
ii)タンパク質の総量の少なくとも90%(重量/重量)がBLGで構成されている。
【0337】
本発明のいくつかの特に好ましい実施形態では、この食品は、低リン食品において、タンパク質100g当たりリン最大100mg、好ましくはタンパク質100g当たりリン最大80mg、より好ましくはタンパク質100g当たりリン最大40mg、さらにより好ましくはタンパク質100g当たりリン最大20mgを含む低リン食品である。
【0338】
BLGは、有利なアミノ酸プロファイルを有し、好ましくはこの食品のタンパク質の相当な部分を占める。これは、この食品が低ミネラル食品または低リン食品である場合に特に興味深い。本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本食用BLG組成物は、この食品のタンパク質の総量の少なくとも25%(重量/重量)を占めるか、または少なくとも50%(重量/重量)、より好ましくは少なくとも80%(重量/重量)、さらにより好ましくは少なくとも90%(重量/重量)を占める。さらに、本食用BLG組成物がこの食品の全タンパク質を占めることが最も好ましい場合がある。
【0339】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本低リンの食用BLG組成物は、低リン食品のタンパク質の総量の少なくとも25%(重量/重量)を占めるか、または少なくとも50%(重量/重量)、より好ましくは少なくとも80%(重量/重量)、さらにより好ましくは少なくとも90%(重量/重量)を占める。さらに、この低リンの食用BLG組成物が低リン食品の全タンパク質を占めることが最も好ましい場合がある。
【0340】
この食品の非限定的な例は、例えば、乳製品、キャンディ、飲料、プロテインバー、経腸栄養組成物、ベーカリー製品である。
【0341】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、この食品は、飲料である。この飲料は、好ましくは、
- BLGの総量を少なくとも1%(重量/重量)、好ましくは少なくとも5%(重量/重量)、より好ましくは少なくとも8%(重量/重量)、さらにより好ましくは12%(重量/重量)にするための、本明細書で定義された食用BLG組成物、
- 甘味料、例えば糖甘味料および/またはノンシュガー甘味料、
- 少なくとも1種の食用酸、例えばクエン酸または他の適切な食用酸、
- 任意選択の香味料、および
- タンパク質100g当たりリン最大80mg
を含み、かつ2.5~4.0の範囲のpHを有する。
【0342】
本発明者らは、BLG結晶を含む乾燥食用BLG組成物からの、酸性で高タンパク質低ミネラルの飲料または液体の調製が容易でないことを認識した。BLG結晶を含む乾燥食用BLG組成物は、概して、水に懸濁された場合にpHが5~6となり、pHを変化させるかまたは導電率を増加させるための酸または塩の付加により、得られる液体/飲料のミネラル負荷も増加する。
【0343】
しかしながら、本発明者らは、pHを低下させるためにカルボン酸、ラクトン、カルボン酸無水物またはこれらの組合わせを使用する場合、不必要なミネラルが添加されず、飲料/液体のミネラル組成のより良好な制御が得られることを発見した。
【0344】
そのため、本発明のある態様は、成分として、BLG結晶を含む食用BLG組成物を使用する、酸性化された低ミネラル液体を製造する方法であって、
- カルボン酸、ラクトン、カルボン酸無水物またはこれらの組合わせからなる群から選択される1種または複数の酸性化剤を提供するステップと、
- BLG結晶を含む食用BLG組成物を1種または複数の酸性化剤ならびに任意選択の追加の成分(例えば、水、脂肪源および/または炭水化物源)と接触させるステップであって、前記1種または複数の酸性化剤は、pHを2~4.5(好ましくは2.5~4.0)に調整するのに十分な量で使用され、BLG結晶が溶解することを可能にする、ステップと
を含み、それにより液体を形成する方法に関する。
【0345】
この液体を例えば飲料として使用し得るか、または別の食品を製造するための成分として使用し得る。
【0346】
この方法で使用される食用BLG組成物が例えば粉末として乾燥形態で提供される場合、酸性化剤を添加する前に食用BLG組成物を水で再水和させることが好ましいことが多い。
【0347】
この方法で使用される食用BLG組成物は、好ましくは、タンパク質を1~30%(重量/重量)にするのに十分な量で液体中に存在し、好ましくはタンパク質を2~25%(重量/重量)、より好ましくはタンパク質を4~20%(重量/重量)、さらにより好ましくはタンパク質を5~16%(重量/重量)にするのに十分な量で存在する。
【0348】
この方法で使用される食用BLG組成物は、好ましくは、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも70%のBLGの結晶化度を有する。
【0349】
適切な酸性化剤の例は、
- カルボン酸、例えば酢酸、マレイン酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、グルコン酸、グルコン酸またはこれらの混合物、
- ラクトン、例えばD-グルコノ-デルタ-ラクトン、
- カルボン酸無水物
である。
【0350】
いくつかの好ましい実施形態では、この方法で使用される、BLG結晶を含む食用BLG組成物は、好ましくは、低リン組成物であり、この方法で使用されるあらゆる他の成分は、好ましくは、最終液体も低リン組成物であるように選択される。
【0351】
他の好ましい実施形態では、この方法で使用される、BLG結晶を含む食用BLG組成物は、好ましくは、低ミネラル組成物であり、この方法で使用されるあらゆる他の成分は、好ましくは、最終液体も低ミネラル組成物であるように選択される。
【0352】
この方法を好ましくは1~65℃の範囲の温度で実施し、好ましくは2~50℃、より好ましくは3~20℃の範囲、さらにより好ましくは4~15℃の範囲の温度で実施する。
【0353】
本発明を、具体的な実施形態を参照して上記で説明した。しかしながら、上記以外の他の実施形態も本発明の範囲内で同様に可能である。別途明記しない限り、本発明の様々な実施形態および態様の様々な特徴およびステップを、本明細書で説明したもの以外の方法で組み合わせ得る。
【実施例】
【0354】
実施例1:粗ホエイタンパク質濃縮物からのベータ-ラクトグロブリンの結晶化
プロトコル:
標準的なチーズ製造プロセス由来のスイートホエイに由来しかつ1.2ミクロンのフィルタに通してろ過された、ラクトースが枯渇したUF保持液をBLG結晶化プロセスの原材料として使用した。このスイートホエイ原材料は、21%TS(総固形物)±5の原材料濃度および透析ろ過媒体としての洗練水(最大0.05mS/cmの導電率を得るために逆浸透によりろ過された水)を使用する、46ミルスペーサー供給圧が1.5~3.0バールであるKoch HFK-328型膜を使用する限外ろ過設定を必要条件とした。限外ろ過中の原材料および保持液の温度は、約12℃であった。次いで、HClを添加して約5.40のpHを得ることにより、pHを調整した。この保持液の導電率の低下が20分の期間をかけて0.03mS/cm未満となるまで透析ろ過を続けた。次いで、この保持液を約30%TS(濃縮保持液の総重量に対して約23.1%の総タンパク質)まで濃縮した。この濃縮保持液の試料を5分にわたり3000gで遠心分離したが、目に見えるペレットは形成されなかった。上清をHPLC分析にかけた。この原材料の組成を表1に示す。
【0355】
この濃縮保持液に、自発的なBLG結晶化(原材料2に関連して実施例3で説明されている)から得られた0.5g/Lの純粋なBLG結晶材料を播種した。この播種材料を、BLG結晶スラリーをmilliQ水で5回洗浄し、各洗浄後にBLG結晶を集めることにより調製した。洗浄後、このBLG結晶を凍結乾燥させ、乳棒および乳鉢を使用して磨り砕き、次いで200ミクロンの篩いに通した。従って、結晶化種は、粒度が200ミクロン未満であった。
【0356】
この濃縮保持液を300Lの結晶化タンクに移し、約4℃まで冷却し、穏やかに撹拌しつつ、この温度で一晩保持した。翌朝、この冷却された濃縮保持液の試料を試験管に移し、目視と顕微鏡との両方で調べた。急速に沈降する結晶が一晩で明瞭に生じた。結晶と母液との両方を含む混合物の実験室用試料を氷水浴中で0℃までさらに冷却した。この母液および結晶を5分にわたる3000gの遠心分離により分離し、上清およびペレットの試料をHPLC分析のために採取した。結晶を冷洗練水で1回洗浄し、次いで再度遠心分離した後にペレットを凍結乾燥させた。
【0357】
HPLCによるBLG相対収率の定量:
全ての試料を洗練水の添加により同程度に希釈した。これらの試料を、0.22ミクロンのフィルタに通してろ過した。各試料に関して、同一の体積を、Phenomenex Jupiter(登録商標)5μm C4 300Å、LCカラム250×4.6mm(Part Number:00G-4167-E0)を備えたHPLCシステムにロードし、214nmで検出した。
【0358】
これらの試料を、下記の条件を使用して流した:
バッファーA:MilliQ水、0.1重量/重量%のTFA
バッファーB:HPLCグレードのアセトニトリル、0.085重量/重量%のTFA
流速:1ml/分
勾配:0~30分 82~55%Aおよび18~45%B;30~32分 55~10%Aおよび45~90%B;32.5~37.5分 10%Aおよび90%B;38~48分 10~82%Aおよび90~18%B。
【0359】
データ処理:
全ての試料を同一の方法で処理したことから、本発明者らは、BLGピークの面積を直接比較して相対収率を得ることができる。結晶はBLGのみを含み、かつ試料を全て同一の方法で処理していることから、アルファ-ラクトアルブミン(ALA)の濃度(従ってALAの面積)は、全ての試料で同一のはずであり、従って相対質量の算出時に結晶化の前後のALAの面積を補正係数(cf)として使用する。
【0360】
【0361】
結果:
図1は、スイートホエイからのBLGの結晶化の前後の重ね合わせたクロマトグラムを示す。「結晶化前」試料を黒色の実線で表し、「結晶化後」試料を点線で表す。BLG濃度の大幅な減少が生じたことが明らかであり、既に説明した収率計算を使用して、取り出されたBLGの収率を64.5%(重量/重量)と決定した。
【0362】
結晶スラリーを顕微鏡で調べたところ、
図2から分かるように、試料は六方晶を含み、多くは、サイズが200ミクロンよりも大幅に大きく、これは、観測した結晶が播種結晶だけではないことを示す。結晶は、針を押し当てると容易に粉砕され、このことから、この結晶がタンパク質結晶であることを確認した。
【0363】
図3は、洗浄した結晶生成物のクロマトグラムを示し、この場合、BLGは、クロマトグラムの総面積の98.9%を占める。このBLG生成物の純度をさらなる洗浄によりさらに一層高めることができる。
【0364】
結論:
この実施例から、驚くべきことに、総タンパク質に対して48%を超える非BLGタンパク質を含む粗ホエイタンパク質濃縮物からBLGを選択的に結晶化させることが可能であり、得られたBLG結晶単離物は、極めて高い純度を有することが実証される。この発見は、好ましくは、高温および問題のある化学物質への長時間の曝露を回避する穏やかな方法でBLGが他のタンパク質成分から分離される、工業用乳タンパク質分離の新しいアプローチを切り開く。
【0365】
実施例2:BLGの収率への導電率および温度の影響
プロトコル:
実施例1と同一の原材料、実験および分析の設定を使用して、様々な導電率レベルでのUF透析ろ過中に保持液(約13.9%(重量/重量)の総タンパク質)の試料を採取し、BLG結晶の収率への導電率の影響を調べた。この試料を4℃まで冷却し、この温度で一晩保持し(しかしながら、本発明者らは、平衡に達するには30分以下で十分あり得ることを観察した)、次いで3つの試料を氷水中で0℃まで冷却し、少なくとも1時間にわたりこの温度で保持して収率への温度の影響を示した。4℃での試料の結果を
図4に見ることができる。
【0366】
透析ろ過が完了した後、濃縮中に試料をBrix 21、24および32.5で採取した。これらの試料を最初に4℃まで冷却し、この温度で一晩保持した。BLG結晶の収率を、実施例1で説明したように測定した。次いで、試料を氷水中で0℃まで冷却し、少なくとも1時間にわたりこの温度で保持した。続いて、BLG結晶の収率を再度測定した。
【0367】
結果:
図4に示すように、これらの試料でのBLGの相対収率対導電率をプロットすると、より低い導電率と、BLGのより高い相対収率との間に明白な相関関係が存在する。
【0368】
図5では、様々な導電率の3つの試料の収率が2つの温度(4℃および0℃)で示されており、温度が低いほどBLGの収率が高いことを見ることができる。さらに一層温度を下げると、収率が増加すると予想される。
【0369】
図6は、4℃および0℃の両方でのBLGの相対収率へのタンパク質濃度の影響を示す。この図は、タンパク質濃度(本明細書ではBrix測定により示される)と、BLGの相対収率との間の明白な相関関係を示し、タンパク質の濃度が増加するにつれて相対収率が増加し続けることを示す。
【0370】
結論:
本発明者らは、いくつかのパラメータが結晶化プロセスの効率に影響を及ぼすことを観察した。所与のpH値で導電率を低下させ、BLGの濃度を増加させ、かつ温度を低下させることにより、BLGの収率を増加させ得る。
【0371】
実施例3:3種のホエイタンパク質溶液中でのBLGの結晶化
プロトコル:
実施例1と同一の実験および分析の設定を使用し、結晶化の原材料として、異なる3種のホエイタンパク質含有原料を試験した。しかしながら、原材料2で実施した実験では播種を使用しなかった。原材料1および2はスイートホエイをベースとし、実施例1で説明した処理前にSynder FR膜により脂肪を減少させた。原材料3は、酸性ホエイに由来した。
【0372】
これら3種の原材料の組成を下記の表2、表3および表4に見ることができる。原材料3を、他の2種(原材料1中での26.3%(重量/重量)の総タンパク質および原材料2中での25.0%(重量/重量))と比べて有意に低い濃度である21%TS(この原材料の総重量に対して13.3重量/重量%の総タンパク質)で結晶化させた。
【0373】
結晶化した原材料1のスラリーを、5分にわたり1500gで、0.45ミクロンのCA膜を備えたMaxi-Spinフィルタ上で遠心分離し、次いでフィルタケーキに2倍容量のMilliQ水を添加した後に再度遠心分離した。得られたフィルタケーキをHPLCで分析した。結晶化した原材料1のペレット(フィルタケーキ)を保持するMaxi-Spinフィルタの写真を
図24に示す。原材料2からのペレットを2倍容量のMilliQ水で洗浄し、標準的な条件下で再度遠心分離した後にペレットをHPLCで分析した。原材料3からのペレットを洗浄することなく分析した。
【0374】
原材料2から作られた結晶を10%TSまで希釈し、1MのNaOHを使用してpHをpH7に調整して結晶化を反転させた。原材料2からの結晶スラリー(36%TS)にNaClを添加して、結晶化を反転させた。
【0375】
結果:
原材料1:
図7では、原材料(実線)および母液(破線)のタンパク質組成のクロマトグラムを見ることができる。このプロセスによりBLGの大部分が結晶として取り出されたことが明らかである。単離BLGの収率(実施例1で説明したように算出される)は、この原材料中のBLGの総量に対して約65%である。
【0376】
図8は、結晶化期間の初期段階中に採取した試料の顕微鏡写真である。
図9は、結晶化が完了した際に採取した試料の顕微鏡写真である。これら2枚の写真から、BLG結晶が比較的脆いことが明らかである。結晶の一部は、撹拌中に壊れるように見え、六角形または菱形の形状から結晶片に変形し、この結晶片は、依然として非常にコンパクトで明確に見えるが、より不規則な形状を有する。
【0377】
図10は、スピンフィルタ上で分離して洗浄されたBLG結晶のクロマトグラムを示す。この図に見られるように、純度は、非常に高く、他のホエイタンパク質の除去は、極めて効率的である。
【0378】
原材料2:
図11では、原材料2(実績)および得られた母液(破線)のタンパク質組成を見ることができる。BLGの大部分が取り出されたことが明らかであり、算出された収率は、原材料2中のBLGの総量に対して82%であった。
【0379】
図12は、結晶化前(左側の写真)および後(右側の写真)の原材料2を示す。結晶化中、この原材料は、透明な液体(この液体中で撹拌磁石が目に見える)から乳白色の不透明な液体に変化した。
【0380】
図13は、BLG結晶の顕微鏡写真を示す。結晶の大部分は、破砕されているが、六角形の形状を見ることができる。
【0381】
図16は、2倍容量のMilliQ水で洗浄した後のBLG結晶の単離ペレットのクロマトグラムである。このクロマトグラムは、結晶が非常に高い純度でBLGを含むことを明確に示す。
【0382】
図14および
図15は、環境がもはや結晶構造にとって好都合ではないように(NaClの添加により)導電率を上昇させたかまたは(NaOHの添加によりpHを7に調整することによって)pHを変更した結果を示す。両方の場合において、乳白色の懸濁液は、BLG結晶が溶解するにつれて透明な液体に戻る。
【0383】
原材料2から得られた結晶調製物のミネラル組成を表5に示す。本発明者らは、リン対タンパク質の比が非常に低く、これにより、この結晶調製物が、腎疾患を患っている患者のタンパク源として適していることに留意する。
【0384】
原材料3:
図17では、原材料3(実線)および得られた母液(破線)のタンパク質組成のクロマトグラムを示す。BLGの大分部が単離されたことが明らかである(この原材料中のBLGの総量に対して70.3%の算出した収率)。結晶化前にタンパク質含有量がより高かった場合、得られた収率は、さらに高かったであろう。
【0385】
図18は、原材料3(CMPを実質的に含まない)から単離されたBLG結晶の顕微鏡写真である。この結晶は、六角形ではなく長方形の形状を有した。この長方形の結晶は、六角形の結晶と比べて頑強に見えた。
図19は、洗浄されていない単離結晶ペレットのクロマトグラムを示し、このクロマトグラムは、結晶が、六角形ではなく長方形を有するにもかかわらずBLG結晶であったことを明確に示す(例えば、
図18の長方形の結晶形状と
図2の六角形の結晶形状とを比較されたい)。
【0386】
原材料3に由来する結晶調製物は、P 45mg/タンパク質100gを含んだ。本発明者らは、リン対タンパク質の比が非常に低く、これにより、この結晶調製物が、腎疾患を患っている患者のタンパク源として適していることに留意する。
【0387】
結論:
3種全ての原材料は、BLG結晶化プロセスに適していた。BLG結晶は、塩を添加するかまたはpHもしくは温度を上昇させることにより容易に溶解した。この新規の方法は、リンの含有量が非常に低いBLG調製物を調製することを可能にし、これにより、この調製物は、腎疾患を患っている患者のタンパク源として適したものになる。
【0388】
実施例4 BLG結晶の収率へのpHの影響
プロトコル:
各実験に関してpHを表8で説明するレベルに調整したことを除いて、(低脂肪スイートホエイタンパク質濃縮物を使用して)実施例1と同一のプロトコルおよび実験の設定を使用した。結晶化ステップの開始時のタンパク質濃度は、約24%(重量/重量)であった。
【0389】
結晶化プロセスおよび得られた収率へのpHの影響を調べるために、薄いNaOH溶液(>4%)または薄いHCl(>3.6%)溶液の何れかでpHを調整した。結晶化後、BLG結晶を、実施例1で説明したように遠心分離により分離した。
【0390】
結果:
収率を実施例1で説明したように算出した。播種材料の添加前に出発試料を採取したことに留意すべきである。従って、この試料がBLGに関して過飽和でなかった場合、播種材料は、溶解して総BLG濃度に寄与し、この場合、BLG収率は、マイナスに見えるであろう。
【0391】
結論:
この実験は、塩溶モードでのBLGの結晶化が5~6のpH範囲で可能であったことを実証する。
【0392】
実施例5:導電率のレベルの増加の影響の調査
プロトコル:
試料を様々な導電率で採取したことを除いて、実施例1と同一のプロトコルおよび実験の設定を使用した。表10に示す原料を必要条件とし、結晶化プロセスの原材料として使用した。UF前に原料の試料を採取してNaClを添加し、導電率を増加させてBLG結晶が成長し得る導電率レベルを調べた。結晶化中のタンパク質含有量は、約16.7%(重量/重量)であった。
【0393】
結果:
試料を、実施例1で説明したように処理した。
図20は、保持液の様々な導電率での算出された収率を示す。3.53mS/cmでの点がpH調整後の原料であった。3.53を超える全ての点は、導電率を増加させるためにNaClを添加した結果であった。3.53未満の点は、UFシステムによる透析ろ過の結果であった。4.93mS/cmでの収率は、ゼロに近く、有意と見なさなかった。
【0394】
導電率が4.93mS/cmである保持液試料は、UF透過液の導電率が約5.7mS/cmであった。導電率が3.53mS/cmである保持液試料は、UF透過液の導電率が約4.35mS/cmであった。
【0395】
図20から、BLG結晶が、(4℃および約16.7%(重量/重量)の総タンパク質含有量での)4.93mS/cm未満の導電率で原材料中に形成されたことが分かる。約2mS/cmの保持液の導電率および約1.6mS/cmのUF透過液の導電率で約75%のBLG収率を得た。
【0396】
図21は、予想されるBLG結晶特性を示す、保持液中において4.20mS/cmで形成された結晶の顕微鏡写真である。
【0397】
結論:
実施例5の具体的な原材料により、4.93mS/cm(UF透過液の導電率5.75mS/cmおよび導電率とタンパク質の総量との間の比0.057に対応する)未満でBLG結晶の形成が可能になる。この導電率の上限は、タンパク質の濃度および組成に依存すると予想される。例えば、より高いタンパク質濃度および/または高荷電のタンパク質もしくは他の巨大分子(例えば、CMP)の含有量の増加により、BLGの結晶化が可能である導電率の上限が上がると予想される。
【0398】
実施例6:血清タンパク質濃縮物中でのBLGの結晶化
Synder FR膜および約50℃のプロセス温度を使用して、脱脂乳を精密ろ過にかけることにより、血清タンパク質濃縮物(SPC)を調製した。得られた保持液は、実質的に全てのカゼインおよび残留脂肪を含んでおり、いくつかの血清タンパク質、ラクトースおよびミネラルをさらに含む。透過液は、この膜を透過し得る分子(例えば、血清タンパク質、ラクトースおよびミネラル)を含むが、カゼインまたは脂肪を実質的に含まなかった。次いで、実施例1で説明したように結晶化のために透過液を調製し(原材料の組成については表11を参照されたい)、実施例1で説明したように、得られたBLG結晶の特徴を明らかにした。しかしながら、全てのUF操作を12℃で実施する代わりに、保持液の導電率が1mS/cmに近づくと、保持液の温度を12℃から25℃に上昇させた。UF濃縮中でのBLGの自発的結晶化を回避するために温度を上昇させた。
【0399】
実施例1~5の結晶化と同様に、SPC原材料のBLGは、非常に高純度で分離され得る結晶を形成し(先の実施例のようにクロマトグラフィーで確認した)、SPC原材料のBLGの総量に対して70%のBLG収率が得られた。
図22では、結晶化の初期段階からのBLG結晶を示す。既に見られるように、結晶は、例えば、実施例2で観察した六角形の形状とは対称的に長方形または正方形の形状を有する。
【0400】
実施例7:噴霧乾燥したBLG結晶の調製および嵩密度の決定
実施例3(原材料2を使用する)で製造したBLG結晶の一部を64ミルスペーサー(ミルは1/1000インチを意味する)および25~30L/時間の流量で1200g、5180RPM、110RPM Diff.においてデカンター遠心分離機で分離した。次いで、BLG結晶相を洗練水と1:1で混合し、次いで同じ設定を使用するデカンター遠心分離機で再度分離した。次いで、BLG結晶相を洗練水と混合して、約25%の乾燥物質を含みかつBLGの結晶化度が約80であるスラリーにし、続いてパイロットプラントの噴霧乾燥機(余熱なしで入口温度が180℃であり出口温度が85℃である)で乾燥させた。噴霧乾燥までの流体流の温度は、10~12℃であった。出口でのサンプリングにより得られた粉末は、含水量が4.37%(重量/重量)であった。
【0401】
このスラリー中のBLGの結晶化度は、約90%であった。
【0402】
本発明者らは、BLG結晶のスラリーおよび母液を64ミルスペーサーおよび75L/時間の流速で350g、2750RPM、150RPM Diff.においてデカンター遠心分離機でも問題なく分離した。続いて、BLG結晶相を洗練水と1:2で混合した。次いで、BLG結晶相を洗練水と混合して薄いスラリーにし、続いて上記と同一のパラメータを使用してパイロットプラントの噴霧乾燥機で乾燥させた。
【0403】
次いで、噴霧乾燥した粉末の嵩密度を実施例9.3に従って測定し、同一の装置で乾燥させた標準WPIの嵩密度と比較した。標準WPIは、嵩密度(625回のスタンピングに基づく)が0.39g/mLであることが分かり、これは、WPI粉末の正常範囲の上限である。しかしながら、噴霧乾燥したBLG結晶調製物は、嵩密度が0.68g/mLであり、標準WPIの嵩密度に比べて75%高かった(例えば、
図23を参照されたい)。これは、実際に驚くべきことであり、多くの物流上の利点および用途関連の利点の両方をもたらす。
【0404】
続いて、噴霧乾燥したBLG結晶調製物の試料を冷脱塩水に再懸濁させ、BLG結晶は、依然として顕微鏡で明確に見ることができた。クエン酸またはNaClの添加によりBLG結晶が溶解し、不透明な結晶懸濁液が透明な液体に変化した。
【0405】
本発明者らは、乾燥ステップ中の長時間の加熱により、結晶形態であるBLGの量が減少するという徴候を発見した。従って、BLG結晶調製物の熱曝露は、可能な限り低いことが好ましい。
【0406】
結論:
この実施例は、BLG結晶を含むスラリーを噴霧乾燥し得ること、および乾燥ステップ中の加熱を制御する場合、BLG結晶が、再懸濁した噴霧乾燥粉末中に依然として存在することを実証する。
【0407】
本発明者らは、BLG結晶を含むホエイタンパク質粉末の嵩密度は、溶解したタンパク質流の通常の噴霧乾燥により得られるものと比べて大幅に高いことをさらに発見した。高密度粉末は、粉末1kg当たりに必要とされる包装材料がより少なく、かつ所与の容器またはトラックにより、より多くの粉末(質量)を輸送し得ることから、この粉末の費用効率がより高い包装および物流を可能にする。
【0408】
この高密度粉末は、製造および使用中での取扱いが容易でありかつふっくらさおよび埃っぽさがより少ないとも思われる。
【0409】
実施例8:低リンタンパク質飲料
実施例3からの精製済BLG生成物(原材料3から得た結晶調製物)を使用して、6種の低リン飲料試料を調製した。全ての乾燥成分を脱塩水と混合して各試料10kgを得、10℃で1時間にわたり水和させた。
【0410】
これら6種の試料の部分試料を採取して、Turbiquant(登録商標)3000 IR Turbidimeterで濁度を測定し、Gilsonによるvicomanで粘度を測定した。結果を下記の表に示す。
【0411】
6種の低リン飲料試料の部分試料が入った試験管の写真を
図25に示す。左から右に、部分試料は、試料A、B、C、D、EおよびFであった。試験管の目視検査は、濁度測定値を検証し、全ての飲料試料が透明であり、特に試料CおよびD(pH3.0)が非常に透明であることを実証した。低粘度は、飲料試料を容易に飲むことができることを実証する。
【0412】
飲料を調製するために使用される全ての成分は、リンが少なく、不必要なミネラルを含まなかった。従って、得られた飲料は、リン含有量がP約45mg/タンパク質100gであり、概してミネラル含有量が非常に低かった。従って、6種の飲料は、腎疾患患者のためのタンパク質飲料としての使用に適した。
【0413】
実施例9 - 分析の方法
実施例9.1 ラクトシル化BLG対非ラクトシル化BLGの決定:
LC-MSを使用して実施した、ラクトシル化BLGおよび天然BLGの量の定量。
この分析を、Agilent TechnologiesのHP1200シリーズHPLCと連結されたAgilent Technologiesの6410 Triple Quad MSで実施した。イオン化前の分離のためにSymmetry300(商標)C18カラム(WAT106172:5μm固相粒子、カラム寸法2.1×150mm)にアプライし、タンパク質を214nmで検出した。試料を分析する前に試料を0.22ミクロンフィルタに通してろ過した。全ての試料を二重に流した。
【0414】
この分析を、下記の条件を使用して実施した:
HPLC
バッファーA:99.9%のMilliQ-vandおよび0.1%のTFA
バッファーB:9.9%のMilliQ-vand、90%のアセトニトリル、0.1%のTFA
流量:0.3mL/分
勾配:
0~20分:85~60%Aおよび15~40%B
20~45分:60~50%Aおよび40~50%B
45~55分:0%Aおよび100%B
55~70分 85%Aおよび15%B
ロード:40μL
カラム温度を60℃に設定した。
【0415】
質量分析:
m/zが100~2000であるイオンを検出し、得られたデータをMassHunter Workstation Software,Ver.B.04.00で評価した。デコンボリューションを使用して、同種(同質量)の全てのフォームをグループ化した。18kDa~20kDaの質量をさらに調査した。BLG-Aの無傷の質量は、18.361kDaであり、BLG-Bは、18.276であり、ラクトシル化は、タンパク質の質量に324Daを加え、この質量領域を調べることにより、1個のタンパク質当たり最大5個のラクトシル化を検出し得る。相対的定量を、異なる種のイオン化識別を無視して、各質量に対する信号強度を比較することにより行う。
【0416】
実施例9.2:総タンパク質の決定
試料の総タンパク質含有量(真のタンパク質)を下記により決定する:
1)ISO 8968-1/2|IDF 020-1/2-Milk-Determination of nitrogen content-Part 1/2:Determination of nitrogen content using the Kjeldahl methodに従う、試料の総窒素の決定。
2)ISO 8968-4|IDF 020-4-Milk-Determination of nitrogen content-Part 4:Determination of non-protein-nitrogen contentに従う、試料の非タンパク質窒素の決定。
3)(m総窒素-m非タンパク質窒素)*6.38としてのタンパク質の総量の算出。
【0417】
実施例9.3:ルース密度(loose density)および嵩密度の決定
乾燥粉末の密度は、特定の条件下で特別なStampf体積計(即ちメスシリンダ)を使用して分析される粉末の重量と体積との間の関係として定義される。この密度は、概して、g/mlまたはkg/Lで表される。
【0418】
この方法では、乾燥粉末の試料をメスシリンダに詰める。指定の回数タッピングした後、この製品の体積を読み取り、密度を算出する。
【0419】
この方法により、下記の3種の密度を定義し得る:
・ 充填密度、指定のメスシリンダに移した後の粉末の体積で除算した質量である。
・ ルース密度、この標準器中での指定の条件に従う100回のタッピング後の粉末の体積で除算した質量である。
・ 嵩密度、この標準器中での指定の条件に従う625回のタッピング後の粉末の体積で除算した質量である。
【0420】
この方法は、特別のメスシリンダ(250ml、目盛り0~250ml、重量190±15g)(J.Engelsmann A.G.67059 Ludwigshafen/Rh)およびStampf体積計(例えば、J.Engelsmann A.G.)を使用する。
【0421】
乾燥製品のルース密度および嵩密度を下記の手順により決定する。
【0422】
前処理:
測定する試料を室温で保管する。
【0423】
次いで、容器を繰り返し回転させて逆転させる(粒子の粉砕を回避する)ことにより、試料を完全に混合する。この容器は、2/3を超えて満たされていない。
【0424】
手順:
粉末100.0±0.1グラムを秤量し、メスシリンダに移す。体積V0をmlで読み取る。
【0425】
粉末100gがメスシリンダに収まらない場合、この量を50グラムまたは25グラムまで減少させるべきである。
【0426】
このメスシリンダをStampf体積計に取り付け、100回タップする。スパチュラで表面を平らにし、体積V100をmlで読み取る。
【0427】
タブの数を625(100回のタップを含む)に変更する。表面に平らにタッピングした後、V625をmlで読み取る。
【0428】
密度の算出:
下記式:
嵩密度=M/V
(式中、Mは、秤量した試料をグラムで示し、Vは、625回のタッピング後の体積をmlで示す)に従って、g/mlで表されるルース密度および嵩密度を算出する。
【0429】
実施例9.4:粉末の含水量の決定
ISO 5537:2004(Dried milk-Determination of moisture content(Reference method))に従って食品の含水量を決定する。NMKLは、「Nordisk Metodikkomite for Naeringsmidler」の略語である。
【0430】
実施例9.5:カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、リンの総量の決定
マイクロ波消化を使用して試料を最初に分解し、次いでICP装置を使用してミネラルの総量を決定する手順を使用して、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムおよびリンの総量を決定する。
【0431】
装置:
電子レンジは、Anton Paar製であり、ICPは、PerkinElmer Inc製のOptima 2000DVである。
【0432】
材料:
1MのHNO3
2%HNO3中のイットリウム
5%HNO3中の、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムおよびリンに適した標準
【0433】
前処理:
特定の量の粉末を秤量し、この粉末をマイクロ波消化チューブに移す。1MのHNO3 5mLを添加する。電子レンジの指示に従って試料をマイクロ波で消化する。消化したチューブをヒューム戸棚に入れ、蓋を取り外して揮発性ヒュームを蒸発させる。
【0434】
測定手順:
既知量のMilli-Q水を使用して、前処理した試料をデジチューブに移す。この消化チューブにイットリウムの2%HNO3溶液を添加し(希釈した試料50mL当たり約0.25mL)、Milli-Q水を使用して既知量まで希釈する。製造業者により説明される手順を使用して、ICPで試料を分析する。
【0435】
Milli-Q水を使用して、1MのHNO3 10mLおよびイットリウムの2%HNO3溶液0.5mLの混合物を100mLの最終体積まで希釈することにより、ブラインド試料を調製する。
【0436】
予想される試料濃度を挟む濃度を有する少なくとも3つの標準試料を調製する。
【0437】
実施例9.6:フロシン値の決定:
フロシン値を、“Maillard Reaction Evaluation by Furosine Determination During Infant Cereal Processing”,Guerra-Hernandez et al,Journal of Cereal Science 29(1999)171-176で説明されているように決定し、タンパク質の総量を実施例9.2に従って決定する。フロシン値をタンパク質100g当たりのフロシンmg単位で報告する。
【0438】
実施例9.7:液体中におけるBLGの結晶化度の決定
下記の方法を使用して、pHが5~6の範囲である液体中におけるBLGの結晶化度を決定する。
a)対象の液体の試料10mLを、0.45ミクロンの孔径のCA膜を有するMaxi-Spinフィルタに移す。
b)直ちにこのフィルタを5分にわたり1500gで回転させる。遠心分離機を2℃で保持する。
c)このスピンフィルタの保持液側に冷milliQ水(2℃)2mLを添加し、直ちに遠心分離機を2℃に保持しつつ5分にわたり1500gでフィルタを回転させ、透過液(透過液A)を集め、体積を測定し、実施例9.9で概説する方法を使用してHPLCによりBLG濃度を決定する。
d)このフィルタの保持液側に2MのNaCl 4mLを添加し、迅速に撹拌し、この混合物を25℃で15分にわたり放置する。
e)直ちにこのフィルタを5分にわたり1500gで回転させ、透過液(透過液B)を集める。
f)実施例9.9で概説する方法を使用して透過液Aおよび透過液B中のBLG総重量を決定し、この結果を重量パーセントの代わりにBLGの総重量に変換する。透過液A中のBLGの重量をm透過液Aと称し、透過液B中のBLGの重量をm透過液Bと称する。
g)BLGに関する液体の結晶化度を、
結晶化度=m透過液B/(m透過液A+m透過液B)*100%
として決定する。
【0439】
実施例9.8:乾燥粉末中におけるBLGの結晶化度の決定
この方法を使用して、乾燥粉末中におけるBLGの結晶化度を決定する。
a)粉末試料5.0グラムを冷milliQ水(2℃)20.0グラムと混合し、2℃で5分にわたり放置する。
b)対象の液体の試料を、0.45ミクロンのCA膜を有するMaxi-Spinフィルタに移す。
c)直ちにこのフィルタを5分にわたり1500gで回転させる。遠心分離機を2℃で保持する。
d)このスピンフィルタの保持液側に冷milli-Q水(2℃)2mLを添加し、直ちに5分にわたり1500gでフィルタを回転させ、透過液(透過液A)を集め、体積を測定し、実施例9.9で概説する方法を使用してHPLCによりBLG濃度を決定し、この結果を重量パーセントの代わりにBLGの総重量に変換する。透過液A中のBLGの重量をm
透過液Aと称する。
f)次いで、粉末中におけるBLGの結晶化度を下記式:
(式中、M
総BLGは、ステップa)の粉末試料中のBLGの総量である)を使用して算出する。
【0440】
粉末試料のBLGの総量が未知である場合、これを、(同一の粉末源からの)別の粉末試料5gをmilliQ水20.0グラムに懸濁させ、水性NaOHの添加によりpHを7.0に調整し、この混合物を、撹拌しつつ25℃で1時間にわたり放置し、最後に実施例9.9を使用して粉末試料のBLGの総量を決定することにより、決定し得る。
【0441】
実施例9.9:水性液体中におけるBLG、ALAおよびCMPの総量の決定
アルファ-ラクトアルブミン、ベータ-ラクトグロブリンおよびCMPの含有量を0.4mL/分でHPLC分析により分析した。ろ過した試料25マイクロLを、溶出液(MilliQ水465g、アセトニトリル417.3gおよびトリフルオロ酢酸1mLからなる)で平衡化した附属のプレカラムPWxl(6mm×4cm、Tosohass、日本)と直列に接続された2個のTSKgel3000PWxl(7.8mm 30cm、Tosohass、日本)カラムに注入し、210nmでUV検出器を使用する。
【0442】
対応する標準タンパク質に関して得られたピーク面積と、この試料のピーク面積とを比較することにより、天然のアルファ-ラクトアルブミン(Cアルファ)、ベータ-ラクトグロブリン(Cベータ)およびカゼイノマクロペプチド(CCMP)の含有量の定量的決定を実施した。
【0443】
追加のタンパク質(非BLGタンパク質)の総量を、総タンパク質の量(実施例9.2に従って決定した)からBLGの量を減算することにより決定した
【0444】
実施例9.10:UF透過液の導電率の決定
試料15mLを3kDaカットオフ(3000NMWL)のAmicon Ultra-15 Centrifugal Filter Unitに移し、20~30分にわたり4000gでまたは導電率を測定に十分な体積のUF透過液がフィルタユニットの底部に蓄積されるまで遠心分離する。遠心分離の直後に導電率を測定する。試料の取扱いおよび遠心分離を試料の供給源の温度で実施する。
【0445】
実施例9.11:ホエイタンパク質組成物のタンパク質変性の度合いの決定
変性したホエイタンパク質は、pH7.0と比べてpH4.6で溶解度が低いことが分かっており、ホエイタンパク質組成物の変性の度合いを、pH7.0でのタンパク質の総量に対するpH4.6での可溶性タンパク質の量を測定することにより決定する。
【0446】
より具体的には、分析するホエイタンパク質組成物(例えば、粉末または水溶液)を、
- 5.0%(重量/重量)の総タンパク質を含みかつpHが7.0である第1の水溶液、および
- 5.0%(重量/重量)の総タンパク質を含みかつpHが4.6である第2の水溶液
に変換する。
【0447】
3%(重量/重量)のNaOH(水性)または5%(重量/重量)HCl(水性)を使用してpH調整を行う。
【0448】
第1の水溶液の総タンパク質含有量(PpH7.0)を実施例9.2に従って決定する。
【0449】
第2の水溶液を室温で2時間にわたり保管し、それに続いて5分にわたり3000gで遠心分離する。上清の試料を回収し、実施例9.2に従って分析して総タンパク質(SpH4.6)を決定する。
【0450】
ホエイタンパク質組成物のタンパク質変性の度合いDを、
D=((PpH7.0-SpH4.6)/PpH7.0)*100%
として算出する。
【0451】
実施例9.12:粉末中における乾燥BLG結晶の検出
粉末中における乾燥したBLG結晶の存在を下記の方法で確認し得る:
分析する粉末の試料を再懸濁させ、温度が4℃である脱塩水と水2部対粉末1部の重量比で緩やかに混合し、4℃で1時間にわたり再水和させる。
【0452】
再水和した試料を、好ましくは複屈折を検出するために平面偏光を使用して、結晶の存在を確認するために顕微鏡で調べる。
【0453】
結晶様物質を分離し、X線結晶構造解析にかけて、結晶構造の存在を検証し、および好ましくは同様に結晶格子(空間群および単位格子の寸法)がBLG結晶のものと対応するかを検証する。
【0454】
分離した結晶様物質の化学組成を分析して、この結晶様物質の固体が主にBLGからなることを検証する。
【0455】
実施例10:UFベースの動的クロスフローろ過による結晶化
透析ろ過をpH5.92で実行し、最終TSが20%であることを除いて、結晶化タンクのための原材料を、実施例1で説明したように調製した。
【0456】
原材料を用意した後(この原材料の組成を表15に見ることができる)、この原材料を300Lの結晶化タンクに移し、pHを最初にpH5.80に調整し、温度を10~12℃で保持した。pH調整後、実施例1で説明したのと同じ方法で製造されているが、非自発的な結晶化製造に由来する播種材料を添加した。この原材料に原材料1リットル当たり播種材料0.5gの濃度まで播種材料を播種した。播種後、冷却マントルの温度を5℃に設定し、pHを5.50に緩やかに調整し、混合物を約1時間にわたり結晶化させ、その後、
図26に示すように、この結晶化タンクにDCF(動的クロスフローろ過)ユニットを接続した。このDCFユニットに、孔径が500nmであるKerafolセラミック膜を取り付け、TMP(膜透過圧)を0.4バールに設定し、この膜の回転速度は、32Hzであった。
【0457】
DCFからの保持液を結晶化タンクに戻し、透過液を、46ミルスペーサーを有するKoch HFK-328型膜を備えたUF(限外ろ過)ユニット中の原材料として使用した。UFユニットでは、温度が上昇するが、12℃を超えない。添加した透析ろ過水の量を、UFから出て結晶化タンクに戻る保持液が約21%TSとなるように調整し、ミネラルを母液(ML)から除去した。
【0458】
MLの透析ろ過を、透過液と透析ろ過水との導電率の差が50マイクロS/cm未満となるまで続けた。この時点で、透析ろ過水の量を、保持液が約30%TSとなるように調整した。BLGを結晶として取り出した場合、ML中のTSの量は、減少し、BLG結晶化中の他タンパク質の濃度は、調査している範囲内でのBLGの溶解度への影響があったとしても限定されていると思われることから、過剰な水およびミネラルをこのように連続除去することにより、全収率を高めることが可能となる。
【0459】
DCFからのML透過液の組成を表16に見ることができる。原材料の最初の300Lは、ML約100Lまで減少していた。質量保存に基づいてBLGの相対収率を92%と算出した。
【0460】
結論:
BLG結晶化が起こるマトリックスから過剰なミネラルおよび水を連続除去することにより、BLGの収率は、有意に改善され得、このプロセスを低温で実行し得る。
【0461】
実施例11:様々なホエイタンパク質製品のタンパク質変性の度合い
市販品および本発明の4種の食用BLG組成物のタンパク質変性の度合いを比較した。試料を下記で説明する。
【0462】
試料B~Eを下記の方法で調製した:
実施例12で説明されるように結晶スラリーを調整し、実施例7で説明したように分離した。一部の分離されたBLGスラリーを取り出し、4分割した。
【0463】
試料B:3%のNaOHを使用してBLG結晶スラリーのpHを7.01に調整することにより、分離したBLG結晶スラリーの第1の部分を全く乾燥させることなく再溶解させ、次いで試料をBx6まで希釈して、約5%のタンパク質溶液を作った。
【0464】
試料C:分離したBLG結晶スラリーの第2の部分を凍結乾燥させた。次いで、この粉末を洗練水に再懸濁させ、3%のNaOHを使用してpHを7.09に調整し、次いで試料をBrix6まで希釈して、約5%のタンパク質溶液を作った。
【0465】
試料D:3%のNaOHを使用してpHを7.0に調整することにより、分離したBLG結晶スラリーの第3の部分を再溶解させ、次いで凍結乾燥させた。次いで、凍結乾燥した粉末を洗練水に再懸濁させ、pHを測定したところ7.07であった。次いで、試料をBrix6まで希釈して、約5%のタンパク質溶液を作った。
【0466】
試料E:分離したBLG結晶スラリーの第4の部分を、実施例7で説明したように処理して噴霧乾燥させた。次いで、粉末を洗練水に再懸濁させ、3%のNaOHを使用してpHを7.04に調整した。次いで、試料をBrix6まで希釈して、約5%のタンパク質溶液を作った。
【0467】
各試料のタンパク質変性の度合いを実施例9.11に従って決定し、結果を表17に示す。
【0468】
結論:
乾燥方法にかかわらず、本発明の食用BLG組成物は、タンパク質変性の度合いが驚くほど低く、比較に使用した市販のWPIで見られるもののわずか10分の1である。噴霧乾燥したBLG結晶スラリー製品は、依然として全てのタンパク質の変性の度合いが最低であることが特に驚くべきことである。
【0469】
実施例12:動的クロスフローろ過による結晶の分離
標準的なチーズ製造プロセス由来のスイートホエイに由来し、1.2ミクロンのフィルタに通してろ過された、ラクトースが枯渇したUF保持液を、結晶化プロセスの原材料として使用した。このスイートホエイ原材料は、10%TS(総固形物)±5の原材料濃度および透析ろ過媒体としての洗練水(最大0.05mS/cmの導電率を得るために逆浸透によりろ過された水)を使用する、供給圧が1.5~3.0バールである46ミルスペーサーを備えたKoch HFK-328型膜を使用する限外ろ過設定を必要条件とした。限外ろ過中の原材料および保持液の温度は、約12℃であった。次いで、HClを添加して約5.60のpHを得ることにより、pHを調整した。この保持液の導電率が1.30mS/cm未満であるまで透析ろ過を続けた。次いで、この原材料を25℃まで加熱した後、この保持液を約27%TS(濃縮保持液の総重量に対して約21%の総タンパク質)まで濃縮した。透過液の導電率は、濃縮の最後で0.33mS/cmであった。この濃縮保持液の試料を5分にわたり3000gで遠心分離したが、目に見えるペレットは形成されなかった。
【0470】
この濃縮保持液を300Lの結晶化タンクに移し、この濃縮保持液を約6℃まで冷却し、緩やかに撹拌しつつ、一晩この温度で保持した。翌朝、この保持液は結晶化していた。5分にわたる3000gでの遠心分離により母液と結晶とを分離し、上清およびペレットの試料をHPLC分析のために採取した。このプロセスからのBLGの収率を67%と算出した。
【0471】
300Lのタンクからの結晶スラリーを、孔径が500nmである1枚のディスク膜を使用するAndritz DCF 152Sシステムでの原材料に使用した。ろ過を8℃で行い、回転速度は、32Hzであり、膜間圧は、0.4バールであった。このシステムは、保持液が連続的に除去されるであろう大型ユニットと異なり、保持液がろ過チャンバ中に蓄積されるデッドエンドろ過として機能する。このろ過を、ろ過チャンバ中に蓄積された固体がろ過に影響を及ぼすようになり始めたちょうど40分をかけて安定した方法で行った。
【0472】
DFCの操作中、結晶質量の量は、有意に増加した。
【0473】
結論.
DCFは、MLから結晶を分離するための安定したかつ効率的な手段を提供する。必要に応じて、このDCFに洗浄液を加えることができた。
【0474】
実施例13:ろ過遠心分離機を使用する結晶の分離
実施例12と同一の原材料および同一の結晶化プロセスを使用して、孔径が約20マイクロメートルであるろ紙を取り付けたFiltration Centrifuge HZ 25/0.1で分離を試験した。
【0475】
試験1:原材料4Lを、60gで実行するフィルタ遠心分離機に供給した。全ての原材料を添加した後、この遠心分離機を250gに加速させてフィルタケーキを乾燥させた。このケーキは、47.6%のTSを含んでおり、このケーキの組成を表18に示す。
【0476】
洗浄後、この遠心分離機に60gで上記と同一の原材料7Lを供給した。次いで、この遠心分離機を250gまで加速させて約5分にわたり脱水し、その後、再度60gまで減速させ、洗練水0.25Lを添加して洗浄した。洗浄水を添加した後、この遠心分離機を再度250gまで加速させて脱水した。ケーキのTSを測定したところ47%であった。このケーキを
図27Aに示す。このケーキ、ML画分および洗浄後の洗浄液の組成を表18に示す。このケーキを脱水した後、遠心分離機の側面から剥がそうと試みたが、
図27Cに示すように、最上層はくすぶり、意図したチューブを通って落ちたが、下層は、
図27Bに示すように、適切に剥がれるには湿り気が多くて粘着性が高かった。
【0477】
結論:
フィルタ遠心分離機は、たとえ洗浄しなくてもALAおよびCMPが定量に必要なレベルを下回るほど純粋であるBLGケーキを得るための興味深い選択肢を提供する。表18中の洗浄水のタンパク質の組成により分かるように、フィルタケーキに適用される洗浄媒体の量がたとえ少量であっても、このケーキ中のミネラル含有量をさらに低下させ得る。使用した洗浄水から分かるように、ケーキの非BLGタンパク質の含有量も洗浄により低下する。使用した洗浄水は、フィルタケーキ中の比と比べて大きいALA:BLGの比を含む。これは、洗浄するステップがBLGと比べてALA(およびおそらく他の非BLGタンパク質)を除去する傾向が大きいことを示す。
【0478】
製造されたフィルタケーキは、剥離性ではなかったが、依然として透過性であった。これにより、フィルタケーキの含水量を上層のように隔離可能な程度まで低下させるために、所与の温度で乾燥ガスを加えるという選択肢が可能となる。代わりに、サイフォン遠心分離方式の設定で水溶液中の適切な量の酸、塩基または塩を添加することにより、この遠心分離機内でフィルタケーキを再溶解させ得た。
【0479】
実施例14:ホエイタンパク質溶液のミネラルの組成の影響
この実施例では、BLGの収率への一価の金属陽イオンと二価の金属陽イオンとの間のモル比の影響を調べた。
【0480】
下記の2種の試料を比較した:
試料A:過重量のNa+(供給源:Na2SO4)を有する
試料B:過重量のCa2+(供給源:CaSO4)を有する。
【0481】
実施例1で使用したのと同種の原料を2.5%の硫酸で調整した。試料のpHを約pH5.4に調整し、正確なpHを表20で報告する。各試料の元の体積は、250mLであった。これら2種の試料を冷洗練水 約24Lに対して別の24Lの容器中で透析した。全ての透析プロセスに関して、透析チューブOrDial D-Clean MWCO 3500(品番63034405)を使用した。この容器を透析プロセス中に連続的に撹拌し、透析を4℃の冷却器中で行った。1回目の透析を一晩行った。
【0482】
1回目の透析後に過剰なイオンを除去するために、透析バッグを、塩溶液2Lが入った容器に移した。濃度は、下記のとおりであった:
試料A:Na2SO4(硫酸ナトリウム)0.059M、
試料B:CaSO4(硫酸カルシウム)0.059M。
【0483】
1回目の塩透析を一晩行った。1回目の塩透析後の導電率、pHおよびBrixを表20で報告する。塩溶液を新鮮なものに変え、透析を週末にかけて続けた。
【0484】
2回目の塩透析後、チューブを、冷洗練水 約24Lが満たされた24Lの容器に移し、一晩透析して過剰なイオンを除去した後に結晶化させた。
【0485】
最後の透析ステップ後、タンパク質濃度は、好ましい濃度と比べて少し低かった。従って、10kDaのカットオフ膜および75mL/時間で作動する蠕動ポンプを使用するPellicon XL UF実験室設定で試料を濃縮した。試料のミネラル含有量を原料と一緒に表19に示す。
【0486】
次いで、試料に、既に説明した播種材料0.5g/Lを播種し、一晩4℃で結晶化させた。次いで、翌日、結晶沈殿物が全ての試料で見られた。各試料のHPLC試料を、5分にわたり3000gで各試料を遠心分離することにより調製し、続いて上清の試料を分析した。結果を表21に示す。
【0487】
結論:
表21から、一価の陽イオンと二価の陽イオンとの高モル比が回避される場合、より少ない残留量のBLGが母液に残る(および高収率の分離されたBLG結晶が得られる)ことが実証される。一価の陽イオンと二価の陽イオンとの間のモル比(実際にはNa+K対Ca+Mg)を制御して、本方法のBLGの収率を改善し得る。