(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】油性洗浄料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/31 20060101AFI20230208BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20230208BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20230208BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20230208BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
A61K8/31
A61K8/39
A61K8/37
A61K8/891
A61Q19/10
(21)【出願番号】P 2019542061
(86)(22)【出願日】2018-09-11
(86)【国際出願番号】 JP2018033603
(87)【国際公開番号】W WO2019054362
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-08-20
(31)【優先権主張番号】P 2017175405
(32)【優先日】2017-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100067644
【氏名又は名称】竹内 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100125313
【氏名又は名称】木村 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】苅谷 智行
(72)【発明者】
【氏名】河野 佐代子
(72)【発明者】
【氏名】松尾 玲
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-298635(JP,A)
【文献】特開2006-306780(JP,A)
【文献】特開2006-225403(JP,A)
【文献】特開2003-113023(JP,A)
【文献】特開2005-206557(JP,A)
【文献】国際公開第2003/080004(WO,A1)
【文献】特開2005-264110(JP,A)
【文献】特開2012-126664(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0044372(US,A1)
【文献】特開2004-161659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C11D 1/66
C11D 3/20
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)HLB9~16のノニオン界面活性剤と、
(B)液状油分と、
(C)ラウリン酸プロピレングリコールと、
(D)ポリオキシプロピレン(17)グリコール、ポリオキシエチレン(8)グリコール、ポリオキシブチレン(9)ポリオキシプロピレン(1)グリコール、ポリオキシエチレン(14)ポリオキシプロピレン(7)ジメチルエーテル、又はポリオキシエチレン(17)ポリオキシプロピレン(4)ジメチルエーテル 1~2質量
%と、
を含有することを特徴とする油性洗浄料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水が混入しても白濁あるいは増粘することなく、すぐれた洗浄効果を奏する油性洗浄料に関する。
【背景技術】
【0002】
口紅、ファンデーション、マスカラ、アイシャドウ等の油分を含むメークアップ化粧料を洗い落とすための油性洗浄料として、所謂、クレンジングオイルが広く使用されている。
【0003】
クレンジングオイルは、通常、多量の油分と少量のノニオン界面活性剤をベースとしており、使用の際は、まずクレンジングオイルをメークアップ化粧料になじませた後、クレンジングオイルとともにメーキャップ化粧料を水で洗い落として洗浄することから、洗面所あるいは風呂場で使用することが多い。
【0004】
しかしながら、クレンジングオイルに水分が混入すると、混入した水分が溶解せず、2層に分離して白濁したり、増粘するなどの現象が生じる。クレンジングオイルの白濁は、2層の界面に界面活性剤が局在することから、メークアップ化粧料の洗浄効果の低下につながり、また、クレンジングオイルの増粘は、メークアップ化粧料へなじませることが困難となり易い。このため使用者は、クレンジングオイルを濡れた手で使用したり、風呂場で洗髪した後等の濡れた顔面に用いることがないよう注意する必要があり、使用者にとって、必ずしも使い勝手が良いものではなかった。
【0005】
このため、水分が混入しても白濁あるいは増粘することがなく、たとえ使用者が濡れた手で使用しても、すぐれた洗浄効果を発揮し得る油性洗浄料の開発が望まれる。
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、水分が混入しても白濁あるいは増粘することがなく、たとえ使用者が濡れた手で使用しても、すぐれた洗浄効果を発揮し得る油性洗浄料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明者らが検討を行った結果、(A)HLB9~16のノニオン界面活性剤と、(B)液状油分と、(C)ラウリン酸プロピレングリコールと、(D)ポリオキシプロピレン(17)グリコール、ポリオキシエチレン(8)グリコール、ポリオキシブチレン(9)ポリオキシプロピレン(1)グリコール、ポリオキシエチレン(14)ポリオキシプロピレン(7)ジメチルエーテル、又はポリオキシエチレン(17)ポリオキシプロピレン(4)ジメチルエーテル 1~2質量%と、を含有することにより、水分が混入しても白濁あるいは増粘することがなく、すぐれた洗浄効果が発揮されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、(A)HLB9~16のノニオン界面活性剤と、(B)液状油分と、(C)ラウリン酸プロピレングリコールと、(D)ポリオキシプロピレン(17)グリコール、ポリオキシエチレン(8)グリコール、ポリオキシブチレン(9)ポリオキシプロピレン(1)グリコール、ポリオキシエチレン(14)ポリオキシプロピレン(7)ジメチルエーテル、又はポリオキシエチレン(17)ポリオキシプロピレン(4)ジメチルエーテル 1~2質量%と、を含有することを特徴とする油性洗浄料である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の油性洗浄料によれば、水分が混入しても白濁あるいは増粘することがなく、たとえ使用者が濡れた手で使用しても、すぐれた洗浄効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の油性洗浄料は、(A)HLB9~16のノニオン界面活性剤と、(B)液状油分と、(C)ラウリン酸プロピレングリコールと、を含有することを特徴とする。
【0013】
(A)HLB9~16のノニオン界面活性剤は、通常化粧料に配合し得るものであれば特に限定されるものではないが、例えば、POE(10)オレイルエーテル(HLB=10)、POE(10)ヘキサデシルエーテル(HLB=10)、POE(20)グリセリルイソステアレート(HLB=14)、POE(8)グリセリルモノイソステアレート(HLB=12)、POE(40)グリセリルトリイソステアレート(HLB=11)、POE(30)グリセリルトリオレエート(HLB=10)、POE(10)モノイソステアレート(HLB=12)、POE(30)硬化ヒマシ油(HLB=11)、POE(50)硬化ヒマシ油モノイソステアレート(HLB=12)、POE(60)硬化ヒマシ油トリイソステアレート(HLB=10)、モノイソステアリン酸ソルビタン(HLB=9)などが例示され、特にPOE(8)グリセリルモノイソステアレートが好ましい。
【0014】
ノニオン界面活性剤のHLBが9未満の場合は、水分の混入により白濁し、HLBが16をこえると均一な組成物を得ることが困難となる。
【0015】
(B)液状油分としては、通常化粧料に使用される液状油分であれば特に制限されるものではないが、例えば、流動パラフィン、スクワラン、オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィンなどの炭化水素油、2-エチルヘキサン酸トリグリセリド、2-エチルヘキサン酸セチル、2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、パルミチン酸2-エチルヘキシル、イソノナン酸イソセチル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ジネオペンタン酸トリプロピレンポリグリコールなどのエステル油、ホホバ油、オリーブ油、マカデミアナッツ油、綿実油、茶実油、サフラワー油、米糠油などの天然系植物油、デカメチルペンタシクロシロキサン、オクタメチルテトラシクロシロキサン、ジメチルシロキサン、メチルフェニルシロキサンなどのシリコーン油などが挙げられ、好ましくは、流動パラフィン、2-エチルヘキサン酸セチル、デカメチルペンタシロキサン等を用いることができる。
【0016】
(C)ラウリン酸プロピレングリコールを油性洗浄料に配合すると、高温度下において油性洗浄料の状態を長期間安定に保持することが可能となる。また、水分の混入により生じる粘度の上昇や白濁の発生を効果的に抑えることができる。尚、ラウリン酸プロピレングリコールのHLB値は5である。
【0017】
本発明の油性洗浄料には、さらに(D)ポリアルキレングリコール又はポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンジメチルエーテルを配合することが好ましい。このようなポリアルキレングリコール等を配合することにより、水分混入による粘度上昇と白濁の発生を顕著に抑えることができ、メークアップ化粧料の洗浄力が向上する。ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールを配合することができる。ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンジメチルエーテルとしては、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンランダム共重合体ジメチルエーテルである、POE(14)POP(7)ジメチルエーテル、POE(17)POP(4)ジメチルエーテル等を配合することができる。
【0018】
本発明の油性洗浄剤には、上記必須成分に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で化粧料や医薬品に通常配合される他の成分を1種又は2種以上配合することができる。例えば、油性洗浄剤においては、通常洗浄料組成物に配合される成分を配合することができる。下記にその具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
粉末成分として、二酸化チタン、マイカ、タルク等を配合することができる。また、紫外線吸収剤として、パラアミノ安息香酸等の安息香酸系紫外線吸収剤、ホモメンチル-7N-アセチルアントラニレート等のアントラニル系紫外線吸収剤、ブチルメトキシベンゾイルメタン等のベンゾイル系紫外線吸収剤、オクチルシンナメート、ジパラメトキシケイヒ酸-モノ2-エチルヘキサン酸グリセリル等のケイヒ酸系紫外線吸収剤、アミルサリシレート等のサリシレート系紫外線吸収剤、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤等を配合することができる。
【0020】
保湿剤として、ポリエチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、ムコ多糖、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、キトサン等を配合することができる。増粘剤として、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアガム、ポリビニルアルコール、モンモリロナイト、ラポナイト等を配合することができる。また有機溶剤としてエタノール、1,3-ブチレングリコール等を配合することができる。
【0021】
酸化防止剤として、ブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、フィチン酸等、抗菌防腐剤として、安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸アルキルエステル(エチルパラベン、ブチルパラベン等)、ヘキサクロロフェン等を配合することができる。
【0022】
その他成分として、色素、香料、精製水等を適宜配合することができる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例に沿って本発明をさらに詳細に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。なお、表中の数値は、特に記載のない限り質量%を示す。
【0024】
油性洗浄料を常法により調整し、「安定性」、「メーク落ち」、「すすぎ易さ」について評価した。
【0025】
「安定性」は、50℃の高温下と0℃の低温下において3日間放置した後、外観により、モヤやカスミの発生の有無について、下記の基準にしたがい評価した。
【0026】
「安定性」の評価基準
○:透明(合格)
×:モヤ・カスミの発生(不合格)
【0027】
「メーク落ち」は、リキッドファンデーションを均一に塗布した人工皮革の上面を、油性洗浄料0.2gを含ませたティッシュペーパーで、300gの加重をかけながら20往復した後のリキッドファンデーションの残り具合を目視により評価した。
【0028】
「メーク落ち」の評価基準
◎:非常にすぐれる(合格)
○:すぐれる(合格)
△:やや劣る(不合格)
×:劣る(不合格)
【0029】
「すすぎ易さ」は、油性洗浄料3gを全顔に塗布し、よくなじませた後、水洗いしたときの、ぬるつきを感じなくなるまでの所要時間を官能評価により判断した。
【0030】
「すすぎ易さ」の評価基準
◎:非常にすぐれる(合格)
○:すぐれる(合格)
△:やや劣る(不合格)
×:劣る(不合格)
【0031】
油性洗浄料は水分が混入すると、粘度が上昇したり、白濁する場合がある。粘度が上昇すると、油性洗浄料がメークになじみにくくなる。また、白濁した洗浄剤は、洗浄成分の界面活性剤がメークと結合しづらくなり、メークを落とす効果が低下する傾向にある。このため、水分混入時の粘度、透明性、メーク落ちについて評価を行った。
【0032】
「水分混入時の粘度」の測定は、油性洗浄料:水の配合比が、7:3となるように、油性洗浄料に水を加え、転倒混和にて混合した後、かかる混合液40gを50mlのガラス瓶に充填し、30℃の温度にてBL型 3番ローター(回転数12rpm)を用い測定した後、下記の基準にしたがい評価した。尚、水分を混入する前の油性洗浄料の粘度は、約40mPa・s(BL型 1番ローター回転数60rpm)である。油性洗浄料は水分混入よる粘度上昇がなるべく小さいことが好ましい。評価の基準としては、水分混入時の粘度が3500mPa・s以下であることを合格の基準とした。
【0033】
「水分混入時の粘度」の評価基準
◎:1500mPa・s以下(合格)
○:1500~3500mPa・s(合格)
△:3500~6000mPa・s(不合格)
×:6000mPa・s~(不合格)
【0034】
「水分混入時の透明性」は、油性洗浄料:水の配合比が、7:3となるように、油性洗浄料に水を加え、転倒混和にて混合した後、かかる混合液の外観を下記の基準したがい評価した。
【0035】
「水分混入時の透明性」の評価基準
◎:透明(合格)
○:青白い(合格)
△:やや白濁(不合格)
×:白濁(不合格)
【0036】
「水分混入時のメーク落ち」は、リキッドファンデーションを均一に塗布した人工皮革の上面を、油性洗浄料0.2gと水0.09g(油性洗浄料と水との配合比が約7:3に相当)を含ませたティッシュペーパーで、300gの加重をかけながら20往復した後のリキッドファンデーションの残り具合を目視により評価した。
【0037】
「水分混入時のメーク落ち」の評価基準
◎:非常にすぐれる(合格)
○:すぐれる(合格)
△:やや劣る(不合格)
×:劣る(不合格)
【0038】
【0039】
表1に示すように、POE(8)グリセリルモノイソステアレートとラウリン酸プロピレングリコールを配合した実施例1~4では、すべての評価項目において、良好な結果を得ることができた。
【0040】
【0041】
表2に示すように、POE(8)グリセリルモノイソステアレートとラウリン酸プロピレングリコールを配合した実施例5、11において良好な結果が得られたが、さらにポリプロピレングリコールを配合することにより、より優れた評価結果を得ることができた(実施例6~10、12及び13)。
【0042】
さらに、表3の実施例6、7、14~21の結果から、ポリプロピレングリコールだけでなく、ポリエチレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリアルキレングリコールあるいはポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンジメチルエーテルの配合によっても、評価が向上することが確認できた。
【0043】