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特許7222912低VOC含有量のプロピレンコポリマーの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】低VOC含有量のプロピレンコポリマーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/654 20060101AFI20230208BHJP
   C08F 210/06 20060101ALI20230208BHJP
   C08F 4/54 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
C08F4/654
C08F210/06
C08F4/54
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019555949
(86)(22)【出願日】2018-04-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 US2018026811
(87)【国際公開番号】W WO2018191212
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-03-22
(31)【優先権主張番号】62/484,548
(32)【優先日】2017-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001706
【氏名又は名称】ダブリュー・アール・グレース・アンド・カンパニー-コーン
【氏名又は名称原語表記】W R GRACE & CO-CONN
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】バン・エグモンド,ジャン・ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】カールト,ジョン・ケイ
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-160005(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0289436(US,A1)
【文献】特表2012-514122(JP,A)
【文献】特開2017-071801(JP,A)
【文献】特表2012-514123(JP,A)
【文献】特開2016-183354(JP,A)
【文献】特表2013-515143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/00-4/70 4/654
C08F 2/00-2/60、6/00-246/00、301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の気相反応器内で、水素と、プロピレンと、C及びC~Cから選択される少なくとも1つのオレフィンコモノマーとをチーグラー・ナッタ触媒系を用いて反応させてプロピレンポリマーを形成することを含む方法であって、
前記反応が、78~90℃の温度範囲で0.005~0.25のH/Cモル比で行われ、
前記チーグラー・ナッタ触媒系が、
遷移金属化合物と、第2族金属化合物と、置換フェニレン芳香族ジエステルを含む少なくとも1つの内部電子ドナーと、を含む固体触媒成分と、
活性制限剤と、
有機アルミニウム化合物と、
少なくとも1つのシランを含む外部電子ドナー組成物と、を含み、
前記オレフィンコモノマーがエチレンである場合、前記プロピレンポリマーの総重量に基づいて、プロピレンポリマー内に0.5~7.0重量%の量で存在し、前記オレフィンコモノマーがC~Cである場合、前記プロピレンポリマーの総量に基づいて1.0~15.0モル%の量で存在し、
前記置換フェニレン芳香族ジエステルが、以下の構造:
【化1】
(式中、
~R14が、同一であるか又は異なり、R~Rの少なくとも1つが、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ハロゲン原子、及びこれらの組み合わせから選択されるか、あるいは、R~Rの任意の連続したR基が結合して、 又はC 員環を形成してもよく、かつ
~R14のそれぞれが、水素、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ハロゲン原子、及びこれらの組み合わせから選択されるか、あるいは、R~R14の任意の連続したR基が結合して、 又はC 員環を形成してもよい)を有する1,2-フェニレン芳香族ジエステルから選択される、
方法。
【請求項2】
前記プロピレンポリマーが、ASTM D1238に従って測定された0.2~400g/10分のメルトフローレートを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応温度が、78~82℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記内部電子ドナーが、単一の内部電子ドナーである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
~R14のそれぞれが水素であるか、又はR~R14のうちの少なくとも1つが、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ハロゲン原子及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
~Rのうちの少なくとも1つ、R~Rのうちの少なくとも1つ、及びR10~R14のうちの少なくとも1つが、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
、R及びRのそれぞれが水素であり、Rが1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基であり、R~R14のそれぞれが、水素、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ハロゲン及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
、R及びRのそれぞれが水素であり、Rが1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基であり、R~R14のうちの少なくとも1つが、水素、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ハロゲン及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
がメチル基であり、R~R14のそれぞれが水素である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記置換1,2-フェニレン芳香族ジエステルが、3-メチル-5-tert-ブチル-1,2-フェニレンジベンゾエート、3,5-ジイソプロピル-1,2-フェニレンジベンゾエート、3,6-ジメチル-1,2-フェニレンジベンゾエート、4-t-ブチル-1,2-フェニレンジベンゾエート、4-メチル-1,2-フェニレンジベンゾエート、1,2-ナフタレンジベンゾエート、2,3-ナフタレンジベンゾエート、3-メチル-5-tert-ブチル-1,2-フェニレンジ(4-メチルベンゾエート)、3-メチル-5-tert-ブチル-1,2-フェニレンジ(2,4,6-トリメチルベンゾエート)、3-メチル-5-tert-ブチル-1,2-フェニレンジ(4-フルオロベンゾエート)、及び3-メチル-5-tert-ブチル-1,2-フェニレンジ(4-クロロベンゾエート)からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記プロピレンポリマーが、PV-3341による測定で、200ppm未満の総VOC含有量を有し、前記プロピレンポリマーが、修正ASTM D4526による測定で、100ppm未満のC VOC含有量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記プロピレンポリマーがエチレンとのプロピレンランダムコポリマーであり、前記エチレン含有量が、前記プロピレンポリマーの総重量に基づいて2.0~7.0重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記プロピレンポリマーがC~Cを有するプロピレンランダムコポリマーであり、前記C~C含有量が前記プロピレンポリマーの総量に基づいて2.0~10.0モル%の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
単一の気相反応器内で、水素と、プロピレンと、C及びC~Cから選択される少なくとも1つのオレフィンコモノマーとをチーグラー・ナッタ触媒を用いて反応させてプロピレンポリマーを形成することを含む方法であって、
前記反応が、80℃を超え90℃以下の温度範囲で0.005~0.25のH/Cモル比で行われ、
前記チーグラー・ナッタ触媒系が、
遷移金属化合物と、第2族金属化合物と、コハク酸塩、ジエーテル、フタレート又はベンゾエートから選択される少なくとも1つの内部電子ドナーと、を含む固体触媒成分と、
活性制限剤と、
有機アルミニウム化合物と、
少なくとも1つのシランを含む外部電子ドナー組成物と、を含み、
前記オレフィンコモノマーがエチレンである場合、前記プロピレンポリマーの総重量に基づいて、プロピレンポリマー内に1.0~7.0重量%の量で存在し、前記オレフィンコモノマーがC~Cである場合、前記プロピレンポリマーの総量に基づいて1.0~15.0モル%の量で存在する、方法。
【請求項15】
前記プロピレンポリマーがASTM D1238に従って測定された10.0~250g/10分のメルトフローレートを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記プロピレンポリマーがASTM D1238に従って測定された30.0~150g/10分のメルトフローレートを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
前記反応温度が80~85℃である、請求項3に記載の方法。
【請求項18】
前記プロピレンポリマーが、PV-3341による測定で、150ppm未満の総VOC含有量を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記プロピレンポリマーが、PV-3341による測定で、100ppm未満の総VOC含有量を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記プロピレンポリマーが、修正ASTM D4526による測定で、80ppm未満のC VOC含有量を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
前記プロピレンポリマーが、修正ASTM D4526による測定で、65ppm未満のC VOC含有量を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
前記エチレン含有量が、前記プロピレンポリマーの総重量に基づいて3.0~7.0重量%である、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001](関連出願)
本出願は、その開示が引用をもって本明細書に組み込まれた2017年4月12日出願の米国仮特許出願第62/484,548号の優先権及び出願日の利益を主張する。
【0002】
[002](発明の分野)
本発明は、プロピレンポリマーの製造方法に関する。より詳細には、本発明は、低レベルの揮発性有機化合物を有するプロピレンランダムコポリマーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[003]現代の消費者の日常生活において、プラスチックの役割は広範囲に及ぶ。特に、プロピレンポリマーは、フィルム、射出成形、ブロー成形などの用途に広く使用されている。ただし、プロピレンポリマーの製造における課題の一つとして、揮発性有機化合物の存在がある。これらの不純物は、ポリマー製造工程の一部として生成し、より高いレベルでは、生産物の品質、下流でのポリマーの効率的な加工能力、及び環境管理に影響を及ぼす可能性がある。通常、これらの不純物を、初期生産後の最終生成物において従来の手段を使用して削減することは、困難であるか、又は費用がかかる。
【0004】
[004]重合方法又は触媒を調整することにより、ポリマー流中の不純物を低減するための方法の改善を開発する努力が続けられてきた。例えば、米国特許第8,106,138号は、改良されたランダムプロピレン/αーオレフィンコポリマー組成物を製造する方法を開示している。国際公開第2013/041470号は、高純度のプロピレンポリマーの調製方法を開示している。米国特許出願公開第2016/0280812号は、繊維用途のためのプロピレン系ポリマーの製造方法を開示している。それにもかかわらず、ポリマー不純物を低減する方法が継続的に必要とされている。特別に設計されたチーグラー・ナッタ触媒系を使用することにより、単一の気相反応器で高い反応器温度で低VOCプロピレン共重合体を製造できることが予想外に判明した。
【発明の概要】
【0005】
[005]一実施形態では、本明細書の主題は、
単一の気相反応器内で、プロピレンと、C又はC~Cから選択される少なくとも1つのオレフィンコモノマーとをチーグラー・ナッタ触媒系及び水素と重合させてプロピレンポリマーを形成することを含む方法に関する。重合は、78~90℃の温度範囲で0.005~0.25のH/Cモル比で行われる。チーグラー・ナッタ触媒系は、遷移金属化合物と、第2族金属化合物と、置換フェニレン芳香族ジエステルを含む少なくとも1つの内部電子ドナーと、を含む固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物と、活性制限剤と、少なくとも1つのシランを含む外部電子ドナー組成物と、を含み、ここで、オレフィンコモノマーがエチレンである場合、プロピレンポリマーの総重量に基づいて0.5~7.0重量%の量で存在し、オレフィンコモノマーがC~Cである場合、プロピレンポリマーの総量に基づいて1.0~15.0モル%の量で存在する。
【0006】
[006]別の実施形態では、本明細書は、単一の気相反応器内で、プロピレンと、C又はC~Cから選択される少なくとも1つのオレフィンコモノマーとをチーグラー・ナッタ触媒系及び水素と重合させてプロピレンポリマーを形成することを含む方法に関する。重合は、78~90℃の温度範囲で0.005~0.25のH/Cモル比で行われる。チーグラー・ナッタ触媒系は、遷移金属化合物と、第2族金属化合物と、コハク酸塩、ジエーテル、フタレート又はベンゾエートから選択される内部電子ドナーと、を含む固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物と、活性制限剤と、少なくとも1つのシランを含む外部電子ドナー組成物と、を含み、ここで、オレフィンコモノマーがエチレンである場合、プロピレンポリマーの総重量に基づいて、オレフィンコモノマーの0.5~7.0重量%の量で存在し、オレフィンコモノマーがC~Cである場合、プロピレンポリマーの総量に基づいて1.0~15.0モル%の量で存在する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
[007]本発明は、添付の図面に関連して採用された、以下の詳細説明から一層十分に理解されよう。
図1】[008]反応器温度に対する総VOCの線グラフである。
図2】[009]VOC成分C~C15~18についてのVOCレベルと反応器温度との線グラフである。
図3】[0010]VOC成分C~C15~18の総和についてのVOCレベルと反応器温度との線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[0011]本明細書の主題は、チーグラー・ナッタ触媒を使用して、高温度範囲で動作する単一の気相反応器で低レベルの揮発性有機化合物を含有するプロピレンポリマーを製造する方法に関する。
【0009】
[0012]揮発性有機化合物
[0013]本明細書において、揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds、VOC)という用語は、重合方法で生成されるプロピレンポリマーに存在するC及びCモノマーのオリゴマーを含むC7~18炭化水素を意味する。VOCは、窒素パージ後、添加剤を添加する前に、反応器で生成された製品で測定される。VOC物質の量は、触媒の種類、モノマー及び反応器条件の複合的な関数であると考えられているが、本発明の主題の方法により、高い反応器温度でVOCのレベルの低いプロピレンランダムコポリマーを製造できることが予想外に判明した。典型的には、これらの例えば約80℃以上などの比較的高い反応器温度では、プロピレン重合の選択性が変化することにより、キシレン可溶分及びオリゴマーのレベルが増加する可能性がある。しかし、本発明の方法では、高温範囲全体にわたって成分別VOC、総VOC及びXSが低レベルに維持され、またこの他にも、例えば「ポップコーン」ポリマーや凝集物の発生などの製品に関する懸念も軽減される。
【0010】
[0014]以下に説明するPV-3341法で測定したプロピレンポリマー中に存在するVOCの総量は、例えば1~199ppmなど、通常は200ppm未満である。好ましくは、総VOCは、プロピレンポリマー中に、例えば1~149ppmなど、150ppm未満の量で存在する。より好ましくは、総VOCは、例えば1~99ppmなど、100ppm未満の量で存在する。本主題の方法により製造されたプロピレンポリマーはまた、反応器温度が60℃であることを除いて同一の方法により製造されたポリマーと比較して少なくとも79%減少した総VOC含有量を有する。VOCの個々の成分、即ち本方法で生成されたポリマーのC、C、C、C12及びC15~18は、以下に説明する修正ASTM D4526法で測定される。C VOC成分は、典型的には、例えば1.0~4.0ppmなどの5ppm未満の量で存在する。好ましくは、C VOC成分は、例えば1.0~2.0ppmなどの3ppm未満の量で存在する。C VOC成分は、典型的には、例えば1.0~34.0ppmなどの35ppm未満の量で存在する。好ましくは、C VOC成分は、15ppm未満、例えば1.0~14.0ppmの量で存在する。C VOC成分は、典型的には、例えば1.0~99.0ppmなどの100ppm未満の量で存在する。好ましくは、C VOC成分は、例えば1.0~79.0ppmなどの80ppm未満の量で存在する。より好ましくは、C VOC成分は、例えば1.0~64.0ppmなどの65ppm未満の量で存在する。C12 VOC成分は、典型的には、例えば1.0-229.0ppmなどの230ppm未満の量で存在する。好ましくは、C12 VOC成分は、例えば1.0~209.0ppmなどの210ppm未満の量で存在する。C15~18成分は、典型的には、例えば1.0~109.0ppmなどの110ppm未満の量で存在する。好ましくは、C15~18成分は、例えば1.0~94.0ppmなどの95ppm未満の量で存在する。
【0011】
[0015]触媒系
[0016]上記のポリマーは、重合法で生産され、この場合、重合反応が進行すると、触媒粒子の周りにポリマーが形成し、その結果、この触媒粒子は、ポリマー自体の一部となる。本発明の方法で使用されている触媒は、
-遷移金属化合物と、第2族金属化合物と、置換フェニレン芳香族ジエステルを含む少なくとも1つの内部電子ドナーと、を含む固体触媒成分と、
-活性制限剤と、
-有機アルミニウム化合物と、
-好ましくは少なくとも1つのシランを含む外部電子ドナー組成物と、を含むチーグラー・ナッタ触媒系である。
【0012】
[0017]固体触媒成分、担体及び内部電子ドナーの組み合わせは、通常、前駆触媒と呼ばれる。
[0018]固体触媒成分は、遷移金属化合物及び第2族金属化合物を含む。遷移金属化合物が、例えば、チタン、ジルコニウム、クロム又はバナジウムのヒドロカルビルオキシド、ヒドロカルビル、ハロゲン化物又はこれらの混合物などの遷移金属化合物から誘導された固体錯体であってもよい。遷移金属化合物は、一般式TrXを有し、式中、Trは遷移金属、Xはハロゲン又はC1~10ヒドロカルボキシル又はヒドロカルビル基、xは、第2族金属化合物と組み合わせられた化合物中のそのようなX基の数である。Trが、第4、第5又は第6族金属であってもよい。好ましくは、Trはチタンなどの第4族金属である。Xが、塩化物、臭化物、C1~4アルコキシド又はフェノキシドあるいはこれらの混合物であってもよい。好ましくは、Xは塩化物である。
【0013】
[0019]チーグラー・ナッタ前駆触媒組成物の形成に使用できる適切な遷移金属化合物の非限定的な例は、TiCl、ZrCl、HfCl、TiBr、TiCl、Ti(OCCl、Zr(OCCl、Ti(OCBr、Ti(OCH)Cl、Ti(OCCl、Zr(OCCl及びTi(OC)Clである。そのような遷移金属化合物の混合物も同様に使用できる。少なくとも1つの遷移金属化合物が存在する限り、遷移金属化合物の数に制約は作られない。好ましくは、遷移金属化合物はチタン化合物である。
【0014】
[0020]適切な第2族金属化合物の非限定的な例には、マグネシウムハライド、ジアルコキシマグネシウム、アルコキシマグネシウムハライド、マグネシウムオキシハライド、ジアルキルマグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、及びマグネシウムのカルボン酸塩が含まれる。好ましくは、第2族金属化合物は二塩化マグネシウムである。
【0015】
[0021]有機アルミニウム化合物共触媒は、好ましくは、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム(triethylaluminum、TEAL)、トリイソブチルアルミニウム、及びトリ-n-ヘキシルアルミニウムから選択される。より好ましくは、有機アルミニウム化合物はトリエチルアルミニウムである。前駆触媒、外部電子ドナー及び共触媒は、反応器中で一緒にされて、活性な触媒を形成することができるか、又は前駆触媒は、予備重合若しくは予備活性化され得る。
【0016】
[0022]アルミニウムのチタンに対するモル比は、約5:1~約500:1、又は約10:1~約200:1、又は約15:1~約150:1、又は約20:1~約100:1、又は約30:1~約60:1である。
【0017】
[0023]内部電子ドナー
[0024]本触媒組成物は、内部電子ドナーを含む。好ましくは、内部電子ドナーは、少なくとも1つの置換フェニレン芳香族ジエステルと、場合によりコハク酸塩、ジエーテル、フタレート、又は安息香酸塩から選択される電子ドナー成分を含む。より好ましくは、内部電子ドナーは、少なくとも置換フェニレン芳香族ジエステル及び安息香酸塩を含む。好ましくは、内部電子ドナーは、少なくとも1つの単一の置換フェニレン芳香族ジエステルのみを含むこともできる。さらにより好ましくは、内部電子ドナーは、単一の置換フェニレン芳香族ジエステルである。置換フェニレン芳香族ジエステルは、置換1,2-フェニレン芳香族ジエステル、置換1,3-フェニレン芳香族ジエステル、又は置換1,4-フェニレン芳香族ジエステルであり得る。
【0018】
[0025]内部電子ドナーが置換1,2-フェニレン芳香族ジエステルである場合、以下の構造(I)を有することが好ましい:
【0019】
【化1】
【0020】
式中、R~R14は、同一であるか又は異なる;R~Rの少なくとも1つは、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ヘテロ原子及びこれらの組み合わせから選択される;又は、R~Rのいずれかの連続したR基が連結して環間又は環内構造を形成してもよく、R~R14のそれぞれが、水素、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ヘテロ原子及びこれらの組み合わせから選択される;又は、R~Rのいずれかの連続したR基が結合して、環間又は環内構造を形成してもよい。好ましくは、R~R14のそれぞれは水素である。
【0021】
[0026]本明細書で使用される場合、「ヒドロカルビル」及び「炭化水素」というチームは、分岐状又は非分岐状、飽和又は不飽和、環状、多環状、縮合、又は非環状種、及びそれらの組み合わせを含む、水素原子及び炭素原子のみを含有する置換基を指す。ヒドロカルビル基の非限定的な例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基、シクロアルケニル基、シクロアルカジエニル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基、及びアルキニル基が挙げられる。
【0022】
[0027]「置換ヒドロカルビル」及び「置換炭化水素」という用語は、1個以上の非ヒドロカルビル置換基で置換されているヒドロカルビル基を指す。非ヒドロカルビル置換基の非限定的な例は、ヘテロ原子である。本明細書で使用される場合、「ヘテロ原子」とは、炭素又は水素以外の原子を指す。ヘテロ原子は、周期表のIV、V、VI、及びVII族に属する非炭素原子であり得る。ヘテロ原子の非限定的な例に、ハロゲン(F Cl、Br、I)、N、O、P、B、S、及びSiが含まれる。置換ヒドロカルビル基は、ハロヒドロカルビル基及びケイ素含有ヒドロカルビル基も含む。本明細書で使用される場合、「ハロヒドロカルビル」基という用語は、1個以上のハロゲン原子で置換されているヒドロカルビル基を指す。「ケイ素含有ヒドロカルビル基」という用語は、1個以上のケイ素原子で置換されているヒドロカルビル基である。ケイ素原子(複数可)は、炭素鎖中にある場合もない場合もある。
【0023】
[0028]あるいは、R~R14のうちの少なくとも1つは、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ヘテロ原子、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0024】
[0029]あるいは、R~Rのうちの少なくとも1つ、R~Rのうちの少なくとも1つ、及びR10~R14のうちの少なくとも1つは、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基である。
【0025】
[0030]あるいは、R、R及びRのそれぞれは水素であり、Rは1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基である。より好ましくは、R~R14のそれぞれは、水素、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ハロゲン及びこれらの組み合わせから選択される。
【0026】
[0031]あるいは、R、R及びRのそれぞれは水素であり、Rは1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基である。より好ましくは、R~R14のうちの少なくとも1つは、水素、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ハロゲン、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。好ましくは、Rはメチル基であり、R~R14のそれぞれは水素である。
【0027】
[0032]好ましくは、環間又は環内構造は、C又はC員環である。
[0033]あるいは、置換1,2-フェニレン芳香族ジエステルは、3-メチル5-tert-ブチル-1,2-フェニレンジベンゾエート、3,5-ジイソプロピル-1,2-フェニレンジベンゾエート、3,6-ジメチル-1,2-フェニレンジベンゾエート、4-t-ブチル-1,2-フェニレンジベンゾエート、4-メチル-1,2-フェニレンジベンゾエート、12-ナフタレンジベンゾエート、2,3-ナフタレンジベンゾエート、3-メチル-t-tert-ブチル-1,2-フェニレンジ(4-メチルベンゾエート)、3-メチル-5-tert-ブチル-1,2-フェニレンジ(2,4,6-トリメチルベンゾエート)、3-メチル-5-tert-ブチル-1,2-フェニレンジ(4-フルオロベンゾエート)、及び3-メチル-5-tert-ブチル-1,2-フェニレンジ(4-クロロベンゾエート)からなる群から選択される。
【0028】
[0034]外部電子ドナー
[0035]本触媒組成物は、選択性制御剤(selectivity control agent、SCA)としても知られる1つ以上の外部電子ドナー(external electron donor、EED)及び1つ以上の活性制限剤(activity limiting agent、ALA)から構成される混合外部電子ドナー(mixed external electron donor、MEED)を含む。本明細書で使用される「外部電子ドナー」は、前駆触媒形成とは無関係に添加される化合物であり、金属原子に一対の電子を供与することができる少なくとも1つの官能基を含む。外部電子ドナーは、ケイ素化合物、二座化合物、アミン、エーテル、カルボキシレート、ケトン、アミド、カルバメート、ホスフィン、ホスフェート、ホスファイト、スルホン酸塩、スルホン、スルホキシド及びこれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上から選択されてもよい。
【0029】
[0036]EEDがケイ素化合物である場合、それは好ましくは一般式(II)を有し、
SiR(OR’)4-m (II)
式中、Rは、水素又はヒドロカルビル又はアミノ基から独立して選択され、1つ以上の14、15、16又は17個のヘテロ原子を含む1つ以上の置換基で任意に置換されている。Rには、水素とハロゲンを数に入れずに最大20個の原子が含まれる。R’はC1~20アルキル基であり、mは0、1又は2である。一実施形態では、RはC6~12アリール、アルキルアリール又はアラルキル、C3~12シクロアリル、C1~20直鎖アルキル又はアルケニル、C3~12分岐アルキル又はC3~12環状アミノ基であり、R’はC1~4アルキルであり、mは1又は2である。
【0030】
[0037]EEDに適したシリコン化合物の非限定的な例には、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、及びジシクロペンチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ビス(ペルヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、ビス(トリメチルシリルメチル)ジメトキシなどのテトラアルコキシシラン及びこれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0031】
[0038]触媒系には、活性制限剤(ALA)も含まれる。本明細書で使用される「活性制限剤」は、約100℃を超える重合温度で重合反応器内の触媒活性を低下させる物質である。ALAは、重合反応器の不調を抑制又は阻止し、重合方法の継続を確実にする。ALAを使用すると、自己制限的な触媒組成物が得られる。本明細書で使用される「自己制限的」触媒組成物は、約100℃を超える温度で活性の低下を示す触媒組成物である。言い換えれば、「自己制限」とは、通常は約80℃未満の反応温度での通常の重合条件下での触媒活性と比較して、反応温度が100℃を超えて上昇する場合の触媒活性の低下である。
【0032】
[0039]典型的には、チーグラー・ナッタ触媒の活性は、反応器の温度が上昇するにつれて増大する。チーグラー・ナッタ触媒はまた、典型的には、生成されたポリマーの軟化点に近い温度で高い活性を維持する。発熱重合反応によって生じた熱は、ポリマー粒子凝集体を形成させる場合があり、最終的にはポリマー生成方法を中断させ得る。ALAは、高温で触媒活性を低下させ、それにより反応器の不調を阻止し、粒子の凝集を低減(又は阻止)し、重合方法の継続を確実にする。
【0033】
[0040]活性制限剤は、カルボン酸エステル、ジエーテル、ポリ(アルケングリコール)、コハク酸塩、ジオールエステル及びこれらの組み合わせであり得る。カルボン酸エステルは、脂肪族又は芳香族のモノ又はポリカルボン酸エステルであり得る。適切なカルボン酸エステルの非限定的な例には、安息香酸塩、脂肪族C2~40モノ/ジカルボン酸のC1~40アルキルエステル、C2~100(ポリ)グリコールのC2~40モノ-/ポリカルボキシレート誘導体、C2~100(ポリ)グリコールエーテル、及びそれらの任意の組み合わせが含まれる。カルボン酸エステルのさらなる非限定的な例には、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、オレイン酸塩、セバシン酸塩、及び(ポリ)(アルキレン)グリコール、及びそれらの混合物が含まれる。好ましくは、ALAはミリスチン酸イソプロピル又はセバシン酸ジ-n-ブチルである。
【0034】
[0041]触媒組成物は、前述の活性制限剤のいずれかと組み合わせた前述の外部電子ドナーのいずれかを含むことができる。外部電子ドナー及び/又は活性制限剤を、反応器に別々に加えてもよい。あるいは、外部電子ドナー及び活性制限剤を予め混合し、次いで混合物として触媒組成物及び/又は反応器に添加してもよい。
【0035】
[0042]重合方法
[0043]本主題に記載される重合は、例えば、流動床気相反応器、水平又は垂直攪拌気相反応器、又はマルチゾーン循環反応器などの単一の気相反応器で実施される。好ましくは、第1の反応器は流動床気相反応器である。
【0036】
[0044]重合は、水素、プロピレン並びに、C及びC4~8から選択される少なくとも1つのオレフィンコモノマーを上記のチーグラー・ナッタ触媒系と高温の反応器温度で反応させてプロピレンベースのポリマーを生成することにより行われる。チーグラー・ナッタ触媒を、プロピレン、窒素、プロパン、イソペンタン又はヘキサンのキャリア流体によって気相反応器に導入してもよい。触媒を、FDA承認の鉱油と一緒にスラリーの形で供給してもよい。その場合、触媒スラリーはプログレッシブキャビティポンプを介して反応器に圧送され、小口径のステンレス鋼管を介して反応器壁から約3フィートの樹脂床に直接供給される。新鮮なモノマー又は高度に精製された高圧窒素のいずれかでパージされた硬質炭素鋼の支管を使用して、小口径のチューブを保護し、樹脂の凝集による詰まりを最小限に抑える。大容量の反応ラインで、2つ以上の注入管/支管配置を使用してもよい。
【0037】
[0045]プロピレンポリマーが、プロピレンコポリマー(単一コモノマー)又はターポリマー(2つのコモノマー)であってもよい。ポリマーがターポリマーである場合、好ましくは、コモノマーの1つはエチレンである。ポリマーがコポリマーである場合、ランダムコポリマーであることが好ましい。より好ましくは、ランダムコポリマーは、エチレンとのプロピレンランダムコポリマーである。重合温度は78~90℃である。好ましくは、重合温度は80~85℃又は78~82℃である。重合に使用される水素とプロピレンの比は0.005~0.25、好ましくは0.10~0.25である。本発明で特許請求されている方法から得られるプロピレンポリマーの融点は十分に高いため、重合中に反応器内でポリマーの粘着又は凝集が起こらない。好ましくは、プロピレンポリマーの融点は反応器温度より少なくとも30℃高い。
【0038】
[0046]この特許で説明されているVOCレベルは、固体又は液体の製品添加剤を加える前に測定される。固体製品添加剤を、それぞれ個別の重量フィーダを使用して個別のニート物質として、(複数の添加剤を溶融樹脂と混合してペレット化した)マスターバッチとして、(複数のニート添加剤を混合してピルの形で送達する)プリブレンドとして、又は添加剤/マスターミックスブレンドとしてシステムに計量供給してもよい。マスターミックスブレンドは、必要に応じて反応温度以下に冷却され、複数(通常3~8)のニート固体添加剤と混合された、パージ後の主樹脂流から取り出された粒状樹脂で構成されている。次に、この均一な固体樹脂/添加剤混合物を、ペレット化の前に主樹脂流に添加するために、1つの重量測定フィーダに送出する。マスターミックスの添加速度は、ペレット化システムへの主樹脂供給流量及び算出された低下率に基づいている。液体添加剤は、樹脂ミキサー(押出機)供給ホッパーに優先的に添加される。液体添加剤の一例は、ポリマーのクラッキング(ビスブレーキング)に使用される過酸化物である。液体過酸化物は、クラッキングが所望のレベルとなるように、樹脂材料と共に所定の比率で小口径のステンレス鋼管を通して供給される。小口径のステンレス鋼管は、液体過酸化物を供給ホッパー壁から数インチ離れた主樹脂供給流に導入可能にする支管によって保護されている。クラッキングにより放出された副産物の炭化水素ガスを、樹脂押出機のベントシステム(真空又はフレアヘッダ圧力で動作する)によって除去してもよい。ペレット化された製品を、VOCをさらに下げるために、下流の装置でバッチ又は連続的にパージしてもよい。
【0039】
[0047]通常、商業用の方法では、反応器での生産に続いて、ポリマー粉末がパージビンに送られ、ここで反応器からのモノマーが窒素パージされる。その後、固体添加剤を、典型的にはニートとして、又はすべての添加剤のマスターミックスとして、ミキサー又は押出機内でポリマー粉末に添加してもよい。有機過酸化物などの液体添加剤又は液体ビスブレーキング剤を、押出機の供給口でポリマーに加えてもよい。過酸化物は、ポリマーの分子量を減らすことで機能するため、ビスブレーキングされたペレットグレードのVOCに寄与する可能性がある。
【0040】
[0048]過酸化物処理から生じるVOCを低減する試みに、押出機の排気、ペレット化後の熱風などの既知の方法が含まれてもよい。本明細書の主題は、反応器生成物質における、即ち添加剤又はビスブレーキング化学物質の添加の上流側でのVOCの低減に関する。これらの高温度範囲でプロピレンコポリマーを生成する重合により、低VOCのプロピレンコポリマーが生成されることが予想外に発見された。前述のように、VOC物質の生成は、触媒の種類、モノマー及び反応器条件の複合的な関数である。本主題の方法により、粒子の流動性並びに低キシレン可溶分及びオリゴマーを維持しながら、高温の反応器温度で成分別VOCレベル及び総VOCレベルの低いプロピレンランダムコポリマーを製造することが可能となることが予想外に発見された。通常、反応器の温度が例えば80℃以上であるなど比較的高い場合には、プロピレン重合の選択性が変化し、結果としてVOCに寄与するキシレン可溶分及びオリゴマーのレベルが増加する。しかし、本方法では、予想されるVOC生成の増加、あるいは例えば高キシレン可溶分や、「ポップコーン」ポリマー、即ち高い反応温度に起因する破裂又は開裂した粒子の発生などのその他の製品の懸念なしに、高温度範囲内で成分別VOCレベル及び総VOCレベルを予想外に低く維持することが可能である。
【0041】
[0049]コモノマーがエチレンである場合、エチレン含有量は、ポリマーの総重量に基づいて0.5~7.0重量%である。好ましくは、エチレン含有量は1.0~7.0重量%である。より好ましくは、エチレン含有量は2.0~7.0重量%である。さらにより好ましくは、エチレン含有量は3.0~7.0重量%である。コモノマーがC4~8である場合、C4~8含有量は、ポリマーの総量に基づいて1.0~15.0モル%である。
【0042】
[0050]ASTM D1238に従って測定された、生成されたプロピレンポリマーのメルトフローレート(melt flow rate、MFR)は、通常0.2~400g/10分である。MFRの測定には、安定した再現性のある測定を提供する酸化防止剤の添加が含まれる。使用される酸化防止剤には、通常、2000ppmのCyanox-2246、2000ppmのIrgafos-168、1000ppmのZnO、又はそれらの同等物が含まれる。好ましくは、メルトフローレートは10~250g/10分である。より好ましくは、メルトフローレートは30~150である。このメルトフローレートは、その後のビスブレーキングなしで、反応器で生成された物質で測定される。
【0043】
[0051]別の実施形態では、本発明の主題は、単一の気相反応器内で、プロピレンと、C及びC~Cのうちの少なくとも1つから選択されるオレフィンコモノマーとをチーグラー・ナッタ触媒系及び水素と重合させてプロピレンポリマーを形成することを含む方法に関する。重合は、78~90℃の温度範囲で0.005~0.25のH/Cモル比で行われる。チーグラー・ナッタ触媒系は、遷移金属化合物と、第2族金属化合物と、コハク酸塩、ジエーテル、フタレート又はベンゾエートから選択される少なくとも1つの内部電子ドナーと、を含む固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物と、活性制限剤と、少なくとも1つのシランを含む外部電子ドナー組成物と、を含み、ここで、オレフィンコモノマーがエチレンである場合、プロピレンポリマーの総重量に基づいて、プロピレンポリマー内に1.0~7.0重量%の量で存在し、オレフィンコモノマーがC~Cである場合、プロピレンポリマーの総量に基づいて1.0~15.0モル%の量で存在する。反応器の条件及び重合は上記と同様である。
【0044】
[0052]ホモポリマー、ランダムコポリマー及び衝撃コポリマーを含むポリプロピレン製品の製造には、多数の重合触媒を使用することができる。相溶性又は非相溶性の触媒間の移行は、以下を含むがこれらに限定されないいくつかの方法を利用して、重合反応器から樹脂を空にすることなく達成できる:(1)触媒Aの活性を自然に消滅させ、触媒Bの供給を開始する;(2)極性化合物などの触媒停止剤で触媒Aを失活させ、触媒Bの供給を開始する;又は(3)触媒Aの供給を停止し、すぐに触媒Bの供給を開始する。
【0045】
[0053]以下の実施例は、低VOC値を有するプロピレンランダムコポリマーを生成する方法をさらに詳細に説明する。当業者は、本発明の趣旨及び特許請求の範囲内にある多数の改変を認識するであろう。
【実施例
【0046】
[0054]試験方法
総揮発性有機化合物(VOC)
総揮発性有機化合物(VOC)を、Pyrolysis and GC in Polymer Analysis、S.A.Liebman及びE.J.Levy編、Marcel Dekker,Inc.,1985のテキストに記載される静的ヘッドスペース分析により測定する。ガスクロマトグラフィー/ヘッドスペースガスクロマトグラフィー(gas chromatography/head-space gas chromatography、GC-HS)分析は、自動車産業において広く使用されている。Volkswagen AG社は、一般に受け入れられプラスチック業界で使用されている規格を開発した。これは、「VW規格PV3341」(又は「PV3341」)として知られている。同様の方法がVDA-277として知られている。PV3341は、2グラムの試料をヘッドスペースバイアル中に入れ、120℃で5時間コンディショニングを行い、次いでGCに注入する試験である。定量は、アセトン標準のピーク面積応答に基づく外部標準法を使用して行われる。テストの結果は、ppm炭素排出量として報告される。
【0047】
[0055]C、C、C、C12及びC15~18 VOC成分の寄与の測定
[0056]成分C、C、C、C12及びC15~18成分の関数としてのVOCの測定は、以下に説明するように、樹脂に溶解した揮発性物質についてヘンリーの法則に従って修正されたASTM D4526に基づいている。本明細書では、この試験方法を修正ASTM D4526と称する。
【0048】
1.サンプリング
[0057]樹脂のサンプリング及びサンプリング容器の封入は、残留揮発物の喪失を回避するように行う。テフロン(登録商標)又はアルミニウムコーティングセプタムを使用して、セプタムへの揮発物の吸収を回避する。セプタムのコーティング側をバイアルの内側に向くようにしなければならない。0.5~2g、好ましくは、1g近くの樹脂試料を採取する。
【0049】
2.手順
[0058]動作パラメータ
樹脂試料は、以下のパラメータを使用して、ガスクロマトグラフィーによって分析する。
【0050】
【表A】
【0051】
B)較正及び標準化
[0059]2つの異なる較正用標準品をこの方法に使用する:第1は、C~C炭化水素を含有するガス標準品である。第2は、極性分析物、及び測定する必要があるCより大きな炭化水素を含有する液体標準品である。
【0052】
[0060]較正は、異なる試料の平衡温度により行う;非ペレット状の反応器粉末及びペレット状試料の双方を定期的に分析する場合、2つの個別の較正が必要となる場合がある。
【0053】
1)軽質炭化水素(ガス標準品)の較正
[0061]較正は、窒素マトリックス中の、メタン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、n-ブタン、イソブタン、1-ブテン、cis-2-ブテン、trans-2-ブテン、イソブテン及びイソペンタンの50~100百万分率体積(parts per million volume、ppmv)の間を含有する、証明済みガス標準品を使用して行う。
【0054】
[0062]バイアルのヘッドスペースは、空のバイアルに栓をして、2本の内径の小さいニードル(1本は、較正用シリンダからのガス供給用であり、もう一方は、ベント流量の供給用である)を使用することにより、較正用ガスを充填する。ベント用ニードルの流量計への接続は、流量を測定するために有用である。較正用ガスの少なくとも10バイアル分量分を、バイアルのヘッドスペースからパージする。較正用ガスを流すのを停止し、そのニードルをバイアルからまず抜き取る;次に、ベント用ニードルを、バイアルが大気圧と平衡になるのに十分な時間(数秒)の後に除去する。較正用バイアルを充填する際に、室温及び気圧を記録する。較正バイアルは、上記のヘッドスペース及びGCパラメータを使用して分析する(ヘッドスペースの平衡時間は、3分間に短縮される)。
【0055】
[0063]較正用バイアルは、1度に1つずつ調製して、セプタムのシリコーン部分に分析物が分配するのを防止するため、充填後直ちに、分析すべきである。
[0064]較正用ガス中の成分の参照濃度が、モル又は体積ppm(ppmv)として報告される場合、これらの濃度はμg/Lに変換しなければならない。この変換には、式[1]を使用する。
【0056】
[1]C=(MW)/(0.08205T)
式中、
=成分の濃度(μg/L)
=成分の濃度(ppmv)
MW=揮発性成分の分子量(g/mol)
P=部屋の気圧(atm)
0.08205L atm/Kmol、理想気体定数
T=室温(K(T[ケルビン]=273.15+T[摂氏])
2)重質炭化水素及び極性化合物の較正(液体標準品)
[0065]クロロベンゼン、テトラデカン、又は別の適切な溶媒中に約1重量%のメタノール、エタノール、アセトン、tert-ブチルアルコール、酢酸メチル、酸化イソブチレン、イソブチルアルデヒド、2-ブタノン(メチルエチルケトン;MEK)、酢酸エチル、イソブチルアルコール、tert-ブチルエチルエーテル、tert-アミルアルコール、n-ペンタン、イソペンタン、2-メチルペンタン、1-ヘキセン、n-ヘキサンを含有する較正用の液体標準品を作製する。飽和直鎖炭化水素(C~C9)もまた、この標準品中に含まれ、DB-1カラムの場合の総和ピーク領域を画定するために使用されてもよい。不飽和及び分岐炭化水素は、飽和直鎖炭化水素より先に溶出する。上で列挙した分析物はすべて、必ずしも、この較正用溶液に含ませる必要はない。様々な残留分析物が、最終ポリマー生成物を生産するために使用される特定の製造剤(manufacturing agent)に応じて提供されてもよい。試料がビスブレーキングに有機過酸化物を使用したペレットである場合、主要な過酸化物分解生成物には、アセトン、tert-ブチルアルコール、酢酸メチル、酢酸エチル、MEKが含まれる。
【0057】
[0066]マイクロシリンジを使用して、5~9μLの標準品をバイアルのヘッドスペースに移して、これに直ちに栓をした。式2を使用して、気相濃度を算出する(μg/L)。
[2]C=V /V
式中、
=バイアルに添加された較正標準品の体積(μL)
=液体較正標準品中の成分の濃度(μg/g)
=バイアルのヘッドスペース体積(mL)(通常、21.4mLであるが、供給業者に応じて様々となる)
=極性標準品(g/mL)を調製するために使用した溶媒密度
[0067]較正用ガスの成分のμg/L濃度を使用する外部標準較正法及び液体標準品を使用して、応答係数を算出する。
【0058】
[3]R=C/A
式中、
R=成分の応答係数
=較正用ガス中の成分の濃度(μg/L)
A=成分用のピーク面積
[0068]DB-1カラムでのn-ヘキサンについて算出した応答係数を、C、C、C、C12及びC15~18炭化水素領域の総和に適用することができる。Gas Proカラムでは、n-ペンタンに対する応答係数を、「他のCの総和ピーク領域」に対して使用し、1-ヘキサンを「他のCのA」に対して使用し、n-ヘキサンに対する応答係数を、「他のCのB」に対して使用する。2-メチルペンタンに対する応答係数は、Gas Proカラム上のメチルペンタンピークに適用する(2-メチルペンタン及び3-メチルペンタンは共溶出し、一緒に合計する)。
【0059】
C)手順
[0069]バイアルのヘッドスペースの含有量は、上記のGCパラメータ及びヘッドスペースパラメータを使用して分析する。分析後、樹脂試料の重量は、試料バイアルを秤量して、空にして、再秤量することにより得る。目的の成分は、保持時間によって同定する。
【0060】
3.計算
A)濃度の算出
[0070]クロマトグラフィーによるデータシステム上の外部データ分析方法を使用して、ピーク面積を求める。バイアルヘッドスペース中の成分の濃度は、外部の標準品の応答係数から計算する。
【0061】
[4]C=R
式中、C=ヘッドスペース中の成分の濃度(μg/L)
[0071]分布式[5]を使用して、バイアルのヘッドスペース(気相)中のその濃度から、バイアル中の固体ポリマー相中の各成分の量を計算する。この分布定数は、以下のとおり得られる:スパイク実験からの測定、既知のHenryの法則定数からの計算、又は成分の沸点及び分布定数、並びに少なくとも2つの化学的に類似した成分の沸点を使用する推定。
【0062】
[5]K={W/V}/{W/V
式中、
Kc=この揮発性成分の場合の分布定数
=バイアルのヘッドスペース中の固相中の成分の質量(μg)
=バイアル中の固体ポリマーの体積(mL)
=樹脂試料の質量(グラム)/rho
rho=測定温度におけるポリマー密度(g/mL)
=バイアル中の気相の体積、mL=V-V
=バイアルのヘッドスペース中の気相中の成分の質量(μg)
[0072]23℃でのポリマー密度を考慮すると、式[6]を使用して、最大110℃までの温度において密度を算出することができる。
【0063】
[6]rho=rho23-0.000214(T(℃)-23)
[0073]樹脂をサンプリングしてバイアルのヘッドスペースに入れた時の、この樹脂中に溶解した揮発物の成分の濃度は、式7から計算される。
【0064】
[7]C=0.001 {V+K }/m
式中、
=樹脂をバイアルのヘッドスペースにサンプリングした時の樹脂中の成分の濃度(μg/g)
=樹脂試料の質量(g)
0.001L/mL
B)イソブタンが存在する場合の、メタノールピーク面積に対する補正
[0074]メタノール及びイソブタンは、DB-1カラムでは、共溶出する。イソブタンが存在する場合、そのピーク面積への寄与分を減算して、メタノールによるピーク面積を得なければならない。その寄与分は、GasProクロマトグラムからのイソブタンのピーク面積とメタンのピーク面積との比を算出して、この比にDB-1クロマトグラフからのメタンピーク面積を乗算することにより分かる。メタノールの補正済みピーク面積(式[8])を、式[4]中に使用して、ヘッドスペース中のメタノール濃度を算出する。
【0065】
【数1】
【0066】
式中、
MeOH,DB1=DB1クロマトグラム上のメタノールピークの補正済み面積
MeOH/iBu,DB1=DB1クロマトグラム上の共溶出したメタノールとイソブタンのピークの面積
iBu,GP=GasProクロマトグラム上のイソブタンピークの面積
Methane,DB1=DB1クロマトグラム上のメタンピークの面積
Methane,GP=GasProクロマトグラム上のメタンピークの面積
[0066]重合
[0067]重合反応で使用した触媒は、Mg、Ti及び、内部電子ドナーとして3-メチル-5-tertブチル-1,2フェニレンジベンゾエートを含む、担持チーグラー・ナッタ固体触媒である。触媒及びその調製は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,536,372号に記載されている。共触媒として、トリエチルアルミニウム(TEAl)を使用した。混合外部電子ドナー(MEED)として、n-プロピルトリメトキシシラン(NPTMS)をSCAとして使用し、イソプロピルミリステート(IPM)をアルキルエステル活性制限剤として使用した。NPTMS及びIPMを混合物として反応器に供給した。混合物は、98モル%のIPM及び2モル%のNPTMSを含有した。
【0067】
[0068]実施例では、チーグラー・ナッタ触媒は、HYDROBRITE380の商標名で販売されている白色鉱油のスラリーとして供給され、シリンジポンプ及び1時間当たり4ポンドのプロピレンキャリア流によって、直径14インチの流動床気相反応器の側に注入された。気相反応器では、TEAl、NPTMS、及びIPMの存在下で触媒をプロピレンモノマー、水素、エチレンコモノマーと接触させ、4.0重量%のエチレンを含有し、70g/10分の目標公称メルトフローレートを有するプロピレンエチレンランダムコポリマーを生成する。60、70、80、及び90℃の反応器温度で、別々の重合実験を実施した。活性触媒の入った反応器によって生成されたポリマー粉末は、平均して2時間の滞留時間の間、反応器内に保持される。反応器ガスは、コンプレッサによって駆動されて反応器の上部から取り出され、冷却器を通過した後、ガス分配板を通して反応器の底部に戻される。分配板から出るガス流は、反応器内の粉末を流動化し、安定した平均反応器温度を維持するために重合触媒を含む粉末を十分に冷却するのに十分である。詳細な反応器条件を以下の表1に示す。XRFによる生成物中のTi残渣測定、触媒のTi添加量、及び触媒供給速度から、触媒生産性を決定した。生産速度は、3時間の間の反応器による生成物排出の質量を3で割ったものとして定義した。
【0068】
[0069]室温で3時間、モノマーを窒素でポリマーからパージした後、生成物のヘッドスペース試料を反応器から収集した。総VOCレベル及びVOC成分レベルは、以下のように測定された。重合実験のVOC特性を表2及び表3並びに図1図3にまとめる。図1に、反応器温度に対する総VOCの線グラフを示す。図2に、VOC成分C~C15~18についてのVOCレベルと反応器温度との線グラフを示す。表3及び図2において、成分別VOCは、60℃からの比較的高い反応器温度では大幅に減少し、最も高い反応器温度(90℃)では、C、C及びC12が最小レベルから僅かに増加するのみであることを示している。図3に、VOC成分C~C15~18の総和についてのVOCレベルとVOCの反応器温度との線グラフを示す。
【0069】
【表1】
【0070】
表1 ポリプロピレンの実施例の調製

表2に、実施例1~4について、PV3341法で測定した総VOC(C-ppm)を示す。
【0071】
【表2】
【0072】
[0070]表は、本発明の主題の方法により、試験方法PV3341で測定した総VOC(C-ppm)が、60℃のしきい値レベルと比較して、より好ましくは70~85%、さらに好ましくは少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%減少することを示している。表は、本発明の主題の方法で達成可能なVOCの低いレベルを示している。
【0073】
表2に、修正ASTM D4526法で測定した、実施例1~4のVOC成分の減少を示す。
【0074】
【表3】
【0075】
[0071]表2と表3の総VOCの差は、使用した分析方法の較正の相違に起因することに留意されたい。
[0072]本明細書において開示されている、他の特徴、本発明の利点及び実施形態は、前述の開示を一読した後、当業者には容易に明らかとなるであろう。この点に関して、本発明の特定の実施形態がかなり詳細に説明されているが、これらの実施形態の変更例並びに改良例は、説明及び請求されている本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく成立し得る

[発明の態様]
[1]
単一の気相反応器内で、プロピレンと、C及びC~Cから選択される少なくとも1つのオレフィンコモノマーとをチーグラー・ナッタ触媒系及び水素と重合させてプロピレンポリマーを形成することを含む方法であって、
前記重合が、78~90℃の温度範囲で0.005~0.25のH/Cモル比で行われ、
前記チーグラー・ナッタ触媒系が、
遷移金属化合物と、第2族金属化合物と、置換フェニレン芳香族ジエステルを含む少なくとも1つの内部電子ドナーと、を含む固体触媒成分と、
活性制限剤と、
有機アルミニウム化合物と、
少なくとも1つのシランを含む外部電子ドナー組成物と、を含み、
前記オレフィンコモノマーがエチレンである場合、前記プロピレンポリマーの総重量に基づいて、プロピレンポリマー内に0.5~7.0重量%の量で存在し、前記オレフィンコモノマーがC~Cである場合、前記プロピレンポリマーの総量に基づいて1.0~15.0モル%の量で存在する、方法。
[2]
前記プロピレンポリマーが0.2~400のメルトフローレートを有する、1に記載の方法。
[3]
前記メルトフローレートが10.0~250である、2に記載の方法。
[4]
前記メルトフローレートが30.0~150である、3に記載の方法。
[5]
前記重合温度が78~82℃である、1に記載の方法。
[6]
前記重合温度が80~85℃である、1に記載の方法。
[7]
前記内部電子ドナーが、置換フェニレン芳香族ジエステルから選択される単一の内部電子ドナーである、1に記載の方法。
[8]
前記置換フェニレン芳香族ジエステルが、[化1]の構造を有する1,2-フェニレン芳香族ジエステルから選択され、
式中、
~R14が、同一であるか又は異なり、R~Rの少なくとも1つが、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ヘテロ原子、及びこれらの組み合わせから選択されるか、あるいは、R~Rのいずれかの連続したR基が結合して、環間又は環内構造を形成してもよく、
~R14のそれぞれが、水素、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ヘテロ原子及びこれらの組み合わせから選択されるか、あるいは、R~Rのいずれかの連続したR基が結合して、環間又は環内構造を形成してもよい、7に記載の方法。
[9]
前記R~R14のそれぞれが水素である、7に記載の方法。
[10]
~R14のうちの少なくとも1つが、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ヘテロ原子、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、7に記載の組成物。
[11]
~Rのうちの少なくとも1つ、R~Rのうちの少なくとも1つ、及びR10~R14のうちの少なくとも1つが、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基である、7に記載の方法。
[12]
、R及びRのそれぞれが水素であり、Rが1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基である、7に記載の方法。
[13]
~R14のそれぞれが、水素、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ハロゲン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、12に記載の方法。
[14]
、R及びRのそれぞれが水素であり、Rが1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基である、7に記載の方法。
[15]
~R14のうちの少なくとも1つが、水素、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ハロゲン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、14に記載の方法。
[16]
がメチル基であり、R~R14のそれぞれが水素である、7に記載の方法。
[17]
前記環間又は環内構造がC又はC員環である、7に記載の方法。
[18]
前記置換1,2-フェニレン芳香族ジエステルが、3-メチル-5-tert-ブチル-1,2-フェニレンジベンゾエート、3,5-ジイソプロピル-1,2-フェニレンジベンゾエート、3,6-ジメチル-1,2-フェニレンジベンゾエート、4-t-ブチル-1,2-フェニレンジベンゾエート、4-メチル,2-フェニレンジベンゾエート、1,2-ナフタレンジベンゾエート、2,3-ナフタレンジベンゾエート、3-メチル-5-tert-ブチル-1,2-フェニレンジ(4-メチルベンゾエート)、3-メチル-5-tert-ブチル-1,2-フェニレンジ(2,4,6-トリメチルベンゾエート)、3-メチル-5-tert-ブチル-1,2-フェニレンジ(4-フルオロベンゾエート)、及び3-メチル-5-tert-ブチル-1,2-フェニレンジ(4-クロロベンゾエート)からなる群から選択される、7に記載の方法。
[19]
前記プロピレンポリマーが、PV-3341による測定で200ppm未満の総VOC含有量を有する、1に記載の方法。
[20]
前記総VOC含有量が150ppm未満である、19に記載の方法。
[21]
前記総VOC含有量が100ppm未満である、20に記載の方法。
[22]
前記プロピレンポリマーが、修正ASTM D4526による測定で100ppm未満のC VOC含有量を有する、1に記載の方法。
[23]
前記C VOC含有量が80ppm未満である、22に記載の方法。
[24]
前記C VOC含有量が65ppm未満である、23に記載の方法。
[25]
前記プロピレンポリマーがエチレンとのプロピレンランダムコポリマーである、
1に記載の方法。
[26]
前記エチレン含有量が、前記プロピレンポリマーの総重量に基づいて2.0~7.0重量%である、25に記載の方法。
[27]
前記エチレン含有量が、前記プロピレンポリマーの総重量に基づいて3.0~7.0重量%である、26に記載の方法。
[28]
前記プロピレンポリマーが、C~Cとのプロピレンランダムコポリマーである、請求項1に記載の方法。
[29]
前記C~C含有量が、前記プロピレンポリマーの総量に基づいて2.0~10.0モル%の範囲である、28に記載の方法。
[30]
単一の気相反応器内で、プロピレンと、C及びC~Cから選択される少なくとも1つのオレフィンコモノマーとをチーグラー・ナッタ触媒系及び水素と重合させてプロピレンポリマーを形成することを含む方法であって、
前記重合が、78~90℃の温度範囲で0.005~0.25のH/Cモル比で行われ、
前記チーグラー・ナッタ触媒系が、
遷移金属化合物と、第2族金属化合物と、コハク酸塩、ジエーテル、フタレート又はベンゾエートから選択される少なくとも1つの内部電子ドナーと、を含む固体触媒成分と、
活性制限剤と、
有機アルミニウム化合物と、
少なくとも1つのシランを含む外部電子ドナー組成物と、を含み、
前記オレフィンコモノマーがエチレンである場合、前記プロピレンポリマーの総重量に基づいて、プロピレンポリマー内に1.0~7.0重量%の量で存在し、前記オレフィンコモノマーがC~Cである場合、前記プロピレンポリマーの総量に基づいて1.0~15.0モル%の量で存在する、方法。
図1
図2
図3