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特許7222916ドリメノール及びそれらの混合物の製造のためのセスキテルペンシンターゼ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】ドリメノール及びそれらの混合物の製造のためのセスキテルペンシンターゼ
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/60 20060101AFI20230208BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230208BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230208BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230208BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230208BHJP
   C12N 9/88 20060101ALI20230208BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230208BHJP
   C12P 7/02 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
C12N15/60 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N9/88
C12N15/63 Z
C12P7/02
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019560191
(86)(22)【出願日】2018-04-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 EP2018060889
(87)【国際公開番号】W WO2018202578
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-03-31
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2017/082803
(32)【優先日】2017-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】17174791.8
(32)【優先日】2017-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100182545
【弁理士】
【氏名又は名称】神谷 雪恵
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】パン リー
(72)【発明者】
【氏名】チィ ワン
(72)【発明者】
【氏名】シウ-フォン ホァ
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ エフリジェ
【審査官】木原 啓一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/169871(WO,A2)
【文献】国際公開第2015/176959(WO,A1)
【文献】Phytochemistry,2004年,Vol. 65,pp. 2649-2659
【文献】FEBS Lett.,2014年,Vol. 588,pp. 4597-4603
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12P
C12N 9/00-9/99
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドリメノール又はドリメノールを含む混合物の製造方法であって、
a.非環式ファルネシル二リン酸(FPP)と、セスキテルペンシンターゼ活性及び/又はドリメノールシンターゼ活性を有するポリペプチドとを接触させて、ドリメノール又はドリメノール及び1つ以上のテルペンを含む混合物を製造すること、ここで、該ポリペプチドは、配列番号2に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又は配列番号2のアミノ酸配列を含み、
b.任意にドリメノール単離すること
を含む、ドリメノール又はドリメノールを含む混合物の製造方法。
【請求項2】
セスキテルペンシンターゼ活性及び/又はドリメノールシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸で宿主細胞又は非ヒト宿主生物を形質転換することを含み、該ポリペプチドが、配列番号2に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又は配列番号2を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、FPPを生産でき、形質転換させてセスキテルペンシンターゼ活性及び/又はドリメノールシンターゼ活性を有するポリペプチドを発現する非ヒト宿主生物又は宿主細胞をポリペプチドの製造を可能にする条件下で培養することを含み、該ポリペプチドが、配列番号2に対して少なくとも90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
化学合成又は生化学合成を使用してドリメノールをドリメノール誘導体に変換することを含む、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
セスキテルペンシンターゼ活性及び/又はドリメノールシンターゼ活性を有し、配列番号2に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又は配列番号2のアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチド。
【請求項6】
セスキテルペンシンターゼ活性及び/又はドリメノールシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸分子であって、
a.請求項5に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むか、
b.配列番号1又は配列番号3のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、又は
c.配列番号1又は配列番号3のヌクレオチド配列を含む、
単離された核酸分子。
【請求項7】
ベクターであって、
c.請求項6に記載の核酸分子、又は
d.請求項5に記載のポリペプチドをコードする核酸
を含む、ベクター。
【請求項8】
ベクターが、原核生物ベクター、ウィルスベクター又は真核生物ベクターである、請求項7に記載のベクター。
【請求項9】
宿主細胞又は非ヒト宿主生物であって、
a.請求項6に記載の単離された核酸、又は
b.請求項7又は8に記載のベクター
を含む、宿主細胞又は非ヒト宿主生物。
【請求項10】
前記細胞又は非ヒト宿主生物が、植物、原核生物、真菌又は微生物である、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項11】
前記微生物が、細菌又は酵母である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記細菌が大腸菌(E.coli)であり、かつ前記酵母がサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ドリメノール又はドリメノール及び1つ以上のテルペンを含む混合物を製造するための、請求項5に記載のポリペプチドの使用。
【請求項14】
前記混合物が、ドリメノール及びネロリドールを含む、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記混合物が、ドリメノール及びネロリドールを含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において、新規ポリペプチドの使用を含む、ドリメノール及び関連する化合物及び誘導体及びドリメノールを含む混合物を製造するための生化学的方法が提供される。
【0002】
背景技術
テルペンは、ほとんどの生物(微生物、動物及び植物)において見出される。これらの化合物は、5個の炭素単位、いわゆるイソプレン単位からなり、それらの構造において存在するこれらの単位の数により分類される。したがって、モノテルペン、セスキテルペン及びジテルペンは、それぞれ炭素原子10個、15個及び20個を含むテルペンである。例えば、セスキテルペンは、植物界において広く見出せる。多くのセスキテルペン分子は、それらのフレーバー及びフレグランス特性、並びにそれらの化粧品効果、医薬品効果及び抗菌効果について公知である。多数のセスキテルペン炭化水素及びセスキテルペノイドが、同定されている。
【0003】
テルペンの生合成生成物は、酵素、いわゆるテルペンシンターゼを含む。植物界に存在する多数のセスキテルペンシンターゼがあり、全て同一の基質(ファルネシル二リン酸、FPP)を使用するが、異なる生成物プロフィールを有する。セスキテルペンシンターゼをコードする遺伝子及びcDNAは、クローンを生じ、かつ相応する組換え酵素を特徴付ける。
【0004】
一般に、ドリメノールについての主な源は、天然にドリメノールを含む植物であるが、しかしながら、これらの天然源におけるドリメノールの含有率は低い。化学合成のアプローチが開発されているが、未だ複雑であり、かつ費用効果がない。新たなテルペン、テルペンシンターゼ、並びにドリメノール及びそれらの誘導体及びドリメノールを含む混合物を製造するより費用効果のある方法を発見する必要が未だある。
【0005】
要約
本明細書において、
a.非環式ファルネシル二リン酸(FPP)前駆体と、セスキテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドとを接触させて、ドリメノール又はドリメノール及び1つ以上のテルペンを含む混合物を製造すること、ここで、該ポリペプチドは、配列番号2に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又は配列番号2のアミノ酸配列を含み、
b.任意にドリメノール単離すること
を含む、ドリメノール又はドリメノールを含む混合物の製造方法が提供される。
【0006】
また、ドリメノールシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸で、宿主細胞又は非ヒト宿主生物を形質転換することを含む方法も提供され、ここで該ポリペプチドは、配列番号2に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又は配列番号2を含む。
【0007】
また、FPPを生産でき、形質転換されてポリペプチドを発現する非ヒト宿主生物又は宿主細胞を培養することをさらに含む方法も提供され、ここで該ポリペプチドは、ポリペプチドの製造が可能である条件下で、配列番号2に対して少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0008】
一態様において、前記方法から製造したドリメノールを単離する。
【0009】
他の態様において、前記方法は、さらに、ドリメノールと少なくとも1つの酵素とを接触させて、ドリメノール誘導体を製造することを含む。
【0010】
さらなる態様において、前記方法は、化学合成又は生化学合成を使用してドリメノールをドリメノール誘導体に変換することを含む。
【0011】
また、本明細書において、ドリメノールシンターゼ活性を有し、配列番号2に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又は配列番号2のアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチドも提供される。
【0012】
さらに、本明細書において、ドリメノールシンターゼ活性を有し、かつ配列番号2に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又は配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子が提供される。
【0013】
さらに、配列番号1又は配列番号3に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、又は配列番号1及び配列番号3のヌクレオチド配列を含む、単離された核酸が提供される。
【0014】
さらに、本明細書において提供されるポリペプチドをコードする単離された核酸分子が提供される。
【0015】
一態様において、本明細書において記載される核酸分子を含むベクターが本明細書において提供される。他の態様において、ベクターは発現ベクターである。さらなる態様において、ベクターは、原核生物ベクター、ウィルスベクター又は真核生物ベクターである。
【0016】
(1)前記核酸分子、又は(2)前記核酸分子を含む発現ベクター、を含有する非ヒト宿主生物又は宿主細胞も提供される。一態様において、非ヒト生物又は宿主細胞は、原核細胞又は真核細胞である。他の態様において、宿主細胞は、細菌細胞、植物細胞、真菌細胞又は酵母である。さらなる態様において、細菌細胞は大腸菌(E. coli)であり、かつ酵母細胞はサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である。
【0017】
さらに、ドリメノール又はドリメノール及び1つ以上のテルペンを含む混合物を製造するための、本明細書に記載されるポリペプチドの使用が提供される。
【0018】
一態様において、前記方法又は使用において製造される混合物は、ドリメノール及びネロリドールを含む。
【0019】
他の態様において、ドリメノール及び/又はネロリドールが単離される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】(-)-ドリメノールの構造を示す図。
図2】標準の(-)-ドリメノールの質量スペクトルを示す図。
図3】標準の(-)-ドリメノールの13C NMRスペクトルを示す図。
図4】標準の(-)-ドリメノールのX線(Cu Kα放射線)構造を示す図。
図5】ペオニア・アノマラ(Paeonia anomala)の根のジクロロメタン抽出物のGC/MSクロマトグラムを示す図。矢印はドリメノールのピークを示す。
図6】PaTPS3の大腸菌発現実験のGC/MSクロマトグラムを示す図(セスキテルペンについての領域のみを表示する)。
図7図6におけるドリメノールのピークの質量スペクトルを示す図。
図8】PaTPS3のin vitroアッセイのGC/MSクロマトグラムを示す図(セスキテルペンについての領域のみを表示する)。
図9図8におけるドリメノールのピークの質量スペクトルを示す図。
【0021】
使用した省略形
bp 塩基対
kb キロベース
DNA デオキシリボ核酸
cDNA 相補的DNA
DTT ジチオトレイトール
FPP ファルネシル二リン酸
GC ガスクロマトグラフ
IPTG イソプロピル-D-チオガラクト-ピラノシド
LB 溶原性培地
MS 質量分析計/質量分析法
MVA メバロン酸
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
RNA リボ核酸
mRNA メッセンジャーリボ核酸
miRNA マイクロRNA
siRNA 低分子干渉RNA
rRNA リボソームRNA
tRNA トランスファーRNA。
【0022】
定義
「ポリペプチド」という用語は、連続して重合させたアミノ酸残基、例えば、少なくとも15残基、少なくとも30残基、少なくとも50残基のアミノ酸配列を意味する。本明細書におけるいくつかの実施形態において、ポリペプチドは、酵素、又はそれらの断片、又はそれらの多様体であるアミノ酸配列を含む。
【0023】
「タンパク質」という用語は、天然に生じようと合成であろうと、アミノ酸が、共有ペプチド結合によって連結されており、かつオリゴペプチド、ペプチド、ポリペプチド及び全長タンパク質を含む、任意の長さのアミノ酸配列をいう。
【0024】
「単離された」ポリペプチドという用語は、その自然環境から、任意の方法、又は組換え法、生化学的方法及び合成法を含む当業者に公知の方法の組み合わせによって取り出したアミノ酸配列をいう。
【0025】
「セスキテルペンシンターゼ」又は「セスキテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチド」という用語は、非環式テルペンピロリン酸、特にファルネシル二リン酸(FPP)から出発して、セスキテルペン又は1つ以上のセスキテルペンの混合物、例えばドリメノール及び/又はネロリドールを触媒により合成することができるポリペプチドに関する。
【0026】
「ドリメノールシンターゼ」又は「ドリメノールシンターゼ活性を有するポリペプチド」又は「ドリメノールシンターゼタンパク質」という用語は、非環式テルペンピロリン酸、特にファルネシル二リン酸(FPP)から出発して、ドリメノールを、任意のその立体異性体又はそれらの混合物の形で、触媒により合成することができるポリペプチドに関する。ドリメノールは、単独の生成物であってよく、又はセスキテルペンの混合物の一部であってよい。
【0027】
「生物学的機能」、「機能」、「生物学的活性」又は「活性」という用語は、ドリメノール又はドリメノール及び1つ以上のテルペンを含む化合物の混合物を触媒により形成するドリメノールシンターゼの能力をいう。
【0028】
「ドリメノールを含むテルペンの混合物」又は「ドリメノールを含むセスキテルペンの混合物」という用語は、ドリメノール及び1つ以上の追加のテルペン又はセスキテルペンを含むテルペン又はセスキテルペンの混合物をいう。
【0029】
「核酸配列」、「核酸」、「核酸分子」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、互換的に使用され、ヌクレオチドの配列を意味する。核酸配列は、一本鎖又は二本鎖のデオキシリボヌクレオチド、又は任意の長さのリボヌクレオチドであってよく、遺伝子のコード配列及び非コード配列、エキソン、イントロン、センス及びアンチセンスの相補的配列、ゲノムDNA、cDNA、miRNA、siRNA、mRNA、rRNA、tRNA、組換え核酸配列、単離された及び精製された天然に生じるDNA及び/又はRNA配列、合成DNA及びRNA配列、断片、プライマー及び核酸プローブを含む。当業者は、RNAの核酸配列が、種々のチミン(T)をウラシル(U)によって置き換えたDNA配列と同一であることに気付いている。「ヌクレオチド配列」という用語は、別々の断片の形で、又はより大きい核酸の成分としてポリヌクレオチド分子又はオリゴヌクレオチド分子を含むとも解されるべきである。
【0030】
「単離された核酸」又は「単離された核酸配列」は、天然に生じる核酸又は核酸配列とは異なる環境にあり、かつ実質的に内因性物質が汚染されていないものを含みうる核酸又は核酸配列に関する。本明細書において使用される核酸に適用される「天然に生じる」という用語は、天然に生物の細胞中で見られ、かつ研究室において人間により意図的に改変されていない核酸をいう。
【0031】
「組換え核酸配列」は、天然に生じない、そうでなければ生物学的生物において見られない核酸配列を生じる又は改変する、1種以上の源からの遺伝物質と一緒にもたらすための実験的方法(例えば分子クローニング)の使用から生じる核酸配列である。
【0032】
「組換えDNA技術」は、例えば、Weigel及びGlazebrookによって編集されたLaboratory Manuals(2002, Cold Spring Harbor Lab Press)、並びにSambrookら(1989, Cold Spring Harbor, NY, Cold Spring Harbor Laboratory Press)において記載されているような組換え核酸配列を生成するための分子生物学的方法をいう。
【0033】
「遺伝子」という用語は、適した調節領域、例えばプロモーターに操作可能に連結された、RNA分子、例えば細胞中のmRNAに転写された領域を含むDNA配列を意味する。遺伝子は、したがって、いくつかの操作可能に連結された配列、例えばプロモーター、例えば翻訳開始において含まれる配列を含む5’リーダー配列、cDNA又はゲノムDNAのコード領域、イントロン、エキソン、及び/又は例えば転写終結点を含む3’非翻訳配列を含む。
【0034】
「キメラ遺伝子」は、通常、種において天然に見られないあらゆる遺伝子、特に、天然に互いに関連しない核酸配列の1つ以上の部位が存在する遺伝子をいう。例えば、プロモーターは、転写領域の一部もしくは全てと又は他の調節領域と天然に関連しない。「キメラ遺伝子」という用語は、プロモーター又は転写制御配列が、1つ以上のコード配列に、もしくは1つのアンチセンス、すなわちセンス鎖の逆相補鎖に操作可能に連結され、又は繰り返し配列を逆転させる(センス及びアンチセンス、それによりRNA転写が転写に対して二本鎖RNAを形成する)、発現構築物を含むと解される。「キメラ遺伝子」という用語は、新たな遺伝子を製造するために1つ以上のコード配列の一部を組み合わせて得られる遺伝子も含む。
【0035】
「3’UTR」又は「3’非翻訳配列」(「3’非翻訳領域」又は「3’末端」とも言われる)は、例えば転写終結点及び(ほとんど、しかし全てではないが真核mRNAの)ポリアデニル化シグナル、例えばAAUAAA又はそれらの多様体を含む、遺伝子のコード配列の下流に見られる核酸配列をいう。転写の終結後に、mRNA転写は、ポリアデニル化シグナルの下流で開裂してよく、かつ翻訳の場所、例えば細胞質へのmRNAの輸送中に含まれるポリ(A)末端が付加されてよい。
【0036】
「遺伝子の発現」は、「異種発現」及び「過剰発現」を包含し、かつ遺伝子の転写及びタンパク質へのmRNAの翻訳を含む。過剰発現は、類似の遺伝的背景の非形質転換細胞又は非形質転換生物における製造のレベルを超える、トランスジェニック細胞又はトランスジェニック生物におけるmRNA、ポリペプチド及び/又は酵素活性のレベルによって測定される遺伝子産物の製造をいう。
【0037】
本明細書において使用される「発現ベクター」は、宿主細胞中へ異物又は外因性のDNAを導入するための分子生物学的方法及び組換えDNA技術を使用して設計された核酸分子を意味する。発現ベクターは、典型的に、ヌクレオチド配列の適正な転写のために要求される配列を含む。コード領域は、通常、目的のタンパク質についてコードするが、RNA、例えばアンチセンスRNA、siRNA等についてもコードしてよい。
【0038】
本明細書において使用される「発現ベクター」は、これらに制限されないが、ウィルスベクター、バクテリオファージ及びプラスミドを含む、あらゆる線状又は環状の組み換えベクターを含む。当業者は、発現系に従って適したベクターを選択することができる。一実施形態において、発現ベクターは、転写、翻訳、開始及び終結を調節する少なくとも1つの制御配列、例えば転写プロモーター、オペレーター又はエンハンサー、又はmRNAリボソーム結合部位に操作可能に連結され、及び任意に、少なくとも1つの選択マーカーを含む、本明細書における実施形態の核酸を含む。ヌクレオチド配列は、制御配列が、本明細書における実施形態の核酸に機能的に関連する場合に、「操作可能に連結」される。
【0039】
「制御配列」は、本明細書の実施形態の核酸配列の発現レベルを決定し、かつ制御配列に操作可能に連結される核酸配列の転写の割合を制御することができる核酸配列をいう。制御配列は、プロモーター、エンハンサー、転写因子、プロモーターエレメント等を含む。
【0040】
「プロモーター」は、RNAポリメラーゼのための結合部位、及びこれらに制限されないが転写因子結合部位、リプレッサー及び活性化タンパク質結合部位を含む適正な転写のために要求される他の因子を提供することにより、コード配列の発現を制御する核酸配列をいう。プロモーターの用語の意味は、「プロモーター制御配列」の用語も含む。プロモーター制御配列は、転写、RNAプロセシング又は関連するコード核酸配列の安定性に影響しうる上流及び下流のエレメントを含みうる。プロモーターは、天然由来の配列及び合成の配列を含む。コード核酸配列は、通常、転写開始点で出発する転写の方向に関連してプロモーターの下流に配置される。
【0041】
「構成的プロモーター」という用語は、操作可能に連結される核酸配列の連続的な転写を可能にする非制御プロモーターをいう。
【0042】
本明細書において使用されるように、「操作可能に連結」という用語は、機能的関連にあるポリヌクレオチドエレメントの連結をいう。核酸は、それが他の核酸配列と機能的関係に置かれる場合に「操作可能に連結」される。例えば、プロモーター、むしろ転写制御配列は、コード配列の転写に影響する場合に、コード配列に操作可能に連結される。操作可能に連結は、連結されているDNA配列が典型的に隣接することを意味する。プロモーター配列に関連付けられたヌクレオチド配列は、形質転換されるべき植物に関して相同性又は異種性の起源のものであってよい。前記配列は、全体的に又は部分的に合成されていてもよい。起源に関わらず、プロモーター配列に関連する核酸配列は、本明細書における実施形態のポリペプチドへの結合後に連結されるプロモーター特性に従って発現されるか又は発現抑制される。関連する核酸は、全ての時間で又は代わりに特定の時間で生物を通じて、又は特異的な組織、細胞もしくは細胞コンパートメント中で、発現又は抑制されるべきであることが所望されるタンパク質についてコードしてよい。かかるヌクレオチド配列は、特に、それらで改変された又は形質転換された宿主細胞又は生物に対して所望の表現型の特徴を付与するタンパク質をコードする。より詳述すれば、関連するヌクレオチド配列は、細胞又は生物におけるドリメノール又はドリメノール及び1つ以上のテルペンを含む混合物の製造を導く。特に、ヌクレオチド配列は、ドリメノールシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする。
【0043】
「標的ペプチド」は、タンパク質、又は細胞内オルガネラ、すなわちミトコンドリア、もしくは色素体に対するポリペプチド、又は細胞外空間に対するポリペプチド(分泌シグナルペプチド)を標的とするアミノ酸配列をいう。標的ペプチドをコードする核酸配列は、タンパク質又はポリペプチドのアミノ末端、例えばN-末端をコードする核酸配列に融合されてよく、又は天然の標的ポリペプチドを置き換えるために使用されてよい。
【0044】
「プライマー」という用語は、鋳型核酸配列にハイブリダイズされ、かつ鋳型に対して相補的な核酸配列の重合のために使用される、短い核酸配列をいう。
【0045】
本明細書において使用されるように、「宿主細胞」又は「形質転換細胞」という用語は、転写に対してドリメノール又はドリメノール及び1つ以上のテルペンを含む混合物を製造するために有用なドリメノールシンターゼタンパク質をもたらす、少なくとも1つの核酸分子、例えば所望のタンパク質又は核酸配列をコードする組換え遺伝子を宿すために改変された細胞(又は生物)をいう。宿主細胞は、特に細菌細胞、真菌細胞又は植物細胞である。宿主細胞は、宿主細胞の核ゲノム又はオルガネラゲノムに組込まれている組換え遺伝子を含んでよい。代わりに、宿主は、組換え遺伝子を染色体外で含んでよい。
【0046】
相同配列は、オルソガス配列又はパラロガス配列を含む。系統学的方法、配列類似性、及びハイブリダイゼーション法を含む、オルソガス又はパラロガスを同定する方法は、当業者に公知であり、本明細書において記載されている。
【0047】
パラログは、類似した配列及び類似した機能を有する2以上の遺伝子を生じる遺伝子重複から生じる。パラログは、典型的に、一緒にクラスター形成し、関連する植物種内で遺伝子の重複によって形成される。パラログは、ペアワイズのBlast解析を使用して類似の遺伝子の群で見出されるか、又はプログラム、例えばCLUSTALを使用した遺伝子ファミリーの系統発生解析中に見出される。パラログにおいて、コンセンサス配列は、関連する遺伝子内の配列及び遺伝子の類似の機能を有する配列に対して特徴的に同定されうる。
【0048】
オルソログ、又はオルソガス配列は、それらが共通祖先の子孫である種において見出されることから、互いに類似する配列である。例えば、共通祖先を有する植物種は、類似した配列及び機能を有する多くの酵素を含むことが公知である。当業者は、オルソガス配列を同定することができ、かつオルソログの機能を、例えばCLUSTAL又はBLASTプログラムを使用して1つの種の遺伝子ファミリーについてのポリジーン系図(polygenic tree)を構築することによって予測することができる。相同配列中の類似した機能を同定又は確認するための方法は、関連するポリペプチドを過剰発現又は欠失する(ノックアウト/ノックダウンで)宿主細胞又は生物、例えば植物中で転写プロフィールを比較することによる。当業者は、通常50%より多くの調節された転写で、又は通常70%より多くの調節された転写で、又は通常90%より多くの調節された転写で類似した転写プロフィールを有する遺伝子が類似した機能を有することを理解している。ホモログ、パラログ、オルソログ及び本発明における配列のあらゆる他の多様体は、ドリメノールシンターゼタンパク質を製造する宿主細胞、生物、例えば植物を作成することによって類似する方法において機能することが予期される。
【0049】
「選択可能なマーカー」という用語は、発現に対して、選択可能なマーカーを含む1つの細胞又は複数の細胞を選択するために使用されてよい任意の遺伝子をいう。選択可能なマーカーの例を以下に記載する。当業者は、種々の抗生物質、殺菌剤、栄養要求性又は除草剤の選択可能なマーカーが種々の標的種に適用可能であることを周知している。
【0050】
本発明の目的の「ドリメノール」は、(-)-ドリメノール(CAS:468-68-8)をいう(図1~4も参照されたい)。
【0051】
「生物」という用語は、任意の非ヒト多細胞生物又は単細胞生物、例えば植物、又は微生物をいう。特に、微生物は、細菌、酵母、藻類又は真菌である。
【0052】
「植物」という用語は、植物プロトプラスト、植物組織、再生植物を生じる植物細胞組織培養物、又は植物の一部、又は植物器官、例えば根、茎、葉、花、花粉、胚珠、胚、果実等を含む植物細胞を含むために区別なく使用される。任意の植物は、本明細書における実施形態の方法を実施するために使用されてよい。
【0053】
特定の生物又は細胞は、本明細書において記載された核酸で形質転換する前に、又は前記核酸と一緒に、天然にFPPを製造する場合に、又は天然にFPPを製造しないがFPPを製造するように形質転換される場合に、「FPPを製造できる」ことを意味する。生物又は細胞を天然に生じるよりも高い量のFPPを製造するために形質転換させた生物又は細胞は、「FPPを製造することができる生物又は細胞」にも包含される。
【0054】
明細書及び付属の特許請求の範囲について、「又は」の使用は、特に明記されない限り「及び/又は」を意味する。同様に、「含有する(comprise)」、「含有する(comprises)」、「含有している(comprising)」、「含む(include)」、「含む(includes)」及び「含んでいる(including)」は、置き換えることができ、かつ制限することを意図しない。
【0055】
さらに、種々の実施形態の記載が「含有している(comprising)」という用語を使用する場合に、当業者は、ある特定の例において、実施形態が「実質的にからなる(consisting essentially of)」又は「からなる(consisting of)」という言語を使用して代わりに記載されてよいことを理解していることを、さらに理解すべきである。
【0056】
発明の詳細な説明
本発明は、特に次の実施形態に関する:
1. ドリメノール又はドリメノールを含む混合物の製造方法であって、
a.非環式ファルネシル二リン酸(FPP)前駆体と、セスキテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドとを接触させて、ドリメノール又はドリメノール及び1つ以上のテルペンを含む混合物を製造すること、ここで、該ポリペプチドは、配列番号2に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又は配列番号2のアミノ酸配列を含み、
b.任意にドリメノール単離すること
を含む、ドリメノール又はドリメノールを含む混合物の製造方法。
2. ドリメノールシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸で、宿主細胞又は非ヒト宿主生物を形質転換することを含む、実施形態1に記載の方法であって、ポリペプチドが、配列番号2に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又は配列番号2を含む、実施形態1に記載の方法。
3. さらに、FPPを生産でき、形質転換されてポリペプチドを発現する非ヒト宿主生物又は宿主細胞を培養することを含む、前記実施形態のいずれか1つに記載の方法であって、ポリペプチドが、ポリペプチドの製造が可能である条件下で、配列番号2に対して少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、前記実施形態のいずれか1つに記載の方法。
4. ドリメノールを単離する、実施形態1に記載の方法。
5. ドリメノールと少なくとも1つの酵素とを接触させて、ドリメノール誘導体を製造することを含む、前記実施形態のいずれか1つに記載の方法。
6. 化学合成又は生化学合成を使用して、ドリメノールをドリメノール誘導体に変換することを含む、前記実施形態のいずれか1つに記載の方法。
7. セスキテルペンシンターゼ活性を有し、配列番号2に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又は配列番号2のアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチド。
8. 単離された核酸分子であって、
a.実施形態7に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むか、
b.配列番号1又は配列番号3のヌクレオチド配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、又は
c.配列番号1又は配列番号3のヌクレオチド配列を含む、
単離された核酸分子。
9. ベクターであって、
a.実施形態8に記載の核酸分子、又は
b.実施形態7に記載のポリペプチドをコードする核酸
を含む、ベクター。
10. ベクターが、原核生物ベクター、ウィルスベクター又は真核生物ベクターである、実施形態9に記載のベクター。
11. ベクターが発現ベクターである、前記実施形態のいずれか1つに記載のベクター。
12. 宿主細胞又は非ヒト宿主生物であって、
a.実施形態8に記載の単離された核酸分子、又は
b.実施形態9から11のいずれか1つに記載のベクター
を含む、宿主細胞又は非ヒト宿主生物。
13. 細胞が原核細胞である、実施形態2又は3のいずれか1つに記載の方法。
14. 原核細胞が細菌細胞である、実施形態13に記載の方法。
15. 細菌細胞が大腸菌(E. coli)である、実施形態14に記載の方法。
16. 細胞が真核細胞である、実施形態2又は3のいずれか1つに記載の方法。
17. 真核細胞が酵母細胞又は植物細胞である、実施形態16に記載の方法。
18. 酵母細胞がサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)である、実施形態17に記載の方法。
19. ドリメノール又はドリメノール及び1つ以上のテルペンを含む混合物を製造するための、実施形態7に記載のポリペプチドの使用。
20. 混合物が、ドリメノール及びネロリドールを含む、実施形態19に記載の使用。
21. 混合物が、ドリメノール及びネロリドールを含む、実施形態1に記載の方法。
22. 生成されたドリメノール及び/又はネロリドールを単離する、実施形態21に記載の方法。
【0057】
さらに、本明細書において、配列番号1又は配列番号3に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、又は配列番号1もしくは配列番号3のヌクレオチド配列又はそれらの逆相補配列を含む、核酸分子が提供される。
【0058】
一実施形態に従って、前記核酸分子は、配列番号1もしくは配列番号3のヌクレオチド配列又はそれらの逆相補配列からなる。
【0059】
一実施形態において、本明細書における実施形態の核酸は、ボタン属(Paeonia)植物において又は他の植物種において天然に存在するか、又は配列番号1もしくは配列番号3又はそれらの逆相補配列を改変することによって得られてよい。
【0060】
他の実施形態において、核酸は、ボタン科(Paeoniaceae)の植物から単離されるか、又はそれらに由来する。さらなる実施形態において、核酸は、ペオニア・アノマラ(Paeonia anomala)から単離されるか、又はそれらに由来する。
【0061】
さらに、当業者に公知の任意の方法を使用して、例えば任意のタイプの変異、例えば欠失、挿入及び/又は置換の変異を導入することによって、配列番号1もしくは配列番号3の配列又はそれらの逆相補配列を改変することによって得られる任意の配列を包含する、配列番号1もしくは配列番号3又はそれらの逆相補配列を改変することによって得られるヌクレオチドが提供される。配列番号1もしくは配列番号3又はそれらの逆相補配列の変異によって得られる配列を含む核酸は、本明細書における実施形態に包含されるが、但し、それらを含む配列は、配列番号1もしくは配列番号3又はそれらの逆相補配列の少なくとも定義された配列同一性を共有し、かつそれらは、前記実施形態のいずれかにおいて定義された、ドリメノールシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする。変異は、これらの核酸のあらゆる種類の変異、例えば配列番号1又は配列番号3のDNA配列の1つ以上のヌクレオチドの点変異、欠失変異、挿入変異及び/又はフレームシフト変異であってよい。一実施形態において、本明細書における実施形態の核酸は、切断されてよいが、但し、本明細書において記載されるポリペプチドをコードする。
【0062】
多様体核酸は、そのヌクレオチド配列を特定の発現系に適応するために製造されてよい。例えば、細菌発現系は、アミノ酸が特定のコドンによってコードされる場合に、ポリペプチドをより効率的に発現することが公知である。
【0063】
遺伝子コードの縮重によって、1つより多いコドンが、同一のアミノ酸配列をコードしてよく、多重核酸配列は、同一のタンパク質又はポリペプチドについてコードでき、その際、全てのこれらのDNA配列は、本明細書における実施形態に含まれる。適宜、ドリメノールシンターゼをコードする核酸配列は、宿主細胞中で増加させた発現について最適化されてよい。例えば、本明細書における実施形態のヌクレオチドを、改良された発現のために特に宿主にコドンを使用して合成してよい。
【0064】
一実施形態において、本明細書において、ドリメノールシンターゼ活性を有し、細胞中でFPP前駆体からドリメノール又はドリメノール及び1つ以上テルペンを含む混合物を触媒により製造する配列番号2のアミノ酸配列又はそれらの断片を含むポリペプチドをコードする配列番号1又は配列番号3の単離された、組換えの又は合成の核酸配列が提供される。
【0065】
cDNA、ゲノムDNA及びRNA配列も本明細書において提供される。ドリメノールシンターゼをコードするあらゆる核酸配列又はそれらの多様体は、ドリメノールシンターゼをコードする配列としても本明細書に挙げられる。
【0066】
一実施形態に従って、配列番号1又は配列番号3の核酸は、実施例において記載されているように得られるドリメノールシンターゼをコードするドリメノールシンターゼ遺伝子のコード配列である。
【0067】
配列番号1又は配列番号3のポリヌクレオチドの断片は、本明細書における実施形態のポリヌクレオチドの長さで特に少なくとも15bp、少なくとも30bp、少なくとも40bp、少なくとも50bp及び/又は少なくとも60bpである連続ヌクレオチドをいう。特にポリヌクレオチドの断片は、本明細書における実施形態のポリヌクレオチドの連続ヌクレオチドを少なくとも25、より特に少なくとも50、より特に少なくとも75、より特に少なくとも100、より特に少なくとも150、より特に少なくとも200、より特に少なくとも300、より特に少なくとも400、より特に少なくとも500、より特に少なくとも600、より特に少なくとも700、より特に少なくとも800、より特に少なくとも900、より特に少なくとも1000含む。制限されることなく、本明細書におけるポリヌクレオチドの断片は、PCRプライマーとして、及び/又はプローブとして、又はアンチセンス遺伝子のサイレンシング又はRNAiのために使用されてよい。
【0068】
本明細書における実施形態のポリヌクレオチドを含む遺伝子が、当業者に公知の方法により、利用できるヌクレオチド配列情報、例えば付属の配列表において見出される情報に基づいてクローン作製されうることは、当業者に明確である。これらは、例えば、センス方向で生じ、かつセンス鎖の合成を開始し、かつ他は逆相補的な方法で作製され、かつアンチセンス鎖を生じる、かかる遺伝子のフランキング配列を示すDNAプライマーの設計を含む。熱安定性のDNAポリメラーゼ、例えばポリメラーゼ連鎖反応において使用されるものは、かかる実験を実施するために一般に使用される。代わりに、遺伝子を表すDNA配列は、化学的に合成され、続いて、例えば適合性の細菌、例えば大腸菌によって増殖されてよいDNAベクター分子中で導入されてよい。
【0069】
本明細書において提供される関連する一実施形態において、ドリメノールシンターゼをコードする核酸配列を検出するためのPCRプライマー及び/又はプローブが提供される。当業者は、配列番号1又は配列番号3に基づいて、ドリメノールシンターゼをコードする核酸配列又はそれらの断片を増幅するための縮重した又は特異的なPCRプライマー対を合成するための方法を認識している。ドリメノールシンターゼをコードする核酸配列のための検出キットは、ドリメノールシンターゼをコードする核酸配列について特異的なプライマー及び/又はプローブ、並びに試料中でドリメノールシンターゼをコードする核酸配列を検出するためにプライマー及び/又はプローブを使用するための関連するプロトコルを含んでよい。かかる検出キットは、植物、生物又は細胞が改変されているかどうか、すなわちドリメノールシンターゼをコードする配列で形質転換されているかどうかを決定するために使用されてよい。
【0070】
本明細書における実施形態に従った多様体DNA配列の機能を試験するために、目的の配列は、選択可能な又はスクリーニング可能なマーカー遺伝子に操作可能に連結され、かつレポーター遺伝子の発現が、プロトプラストでの一過性の発現アッセイで、又は安定して形質転換された植物で試験される。当業者は、発現を操作できるDNA配列が、モジュールとして構築されることを認識している。したがって、より短いDNA断片からの発現レベルは、最も長い断片からの発現レベルとは異なってよく、かつ互いに異なってよい。本明細書において提供されるドリメノールシンターゼタンパク質をコードする核酸配列、すなわち、配列番号1又は配列番号3の核酸配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列の機能的等価物も本明細書において提供される。
【0071】
当業者は、他の生物における相同配列を同定するための方法、及び相同配列間の配列同一性のパーセンテージを決定するための方法を認識している。そして、かかる新たに同定されたDNA分子を、配列決定してよく、そしてその配列を、配列番号1又は配列番号3の核酸配列と比較してよい。
【0072】
2つのペプチド配列間又はヌクレオチド配列間の同一性のパーセンテージは、これらの2つの配列のアライメントが生じる場合に2つの配列において同一であるアミノ酸残基又はヌクレオチド残基の数の関数である。同一残基は、アライメントの与えられた位置で2つの配列において同一である残基と定義される。配列同一性のパーセンテージは、本明細書において使用されるように、2つの配列間の同一の残基の数を最も短い配列における残基の総数で割り、100をかけることによって最適なアライメントから算出される。最適なアライメントは、同一性のパーセンテージが最も高い可能性があるアライメントである。ギャップは、1つ又は双方の配列中に、最適なアライメントを得るためにアライメントの1つ以上の位置で導入されうる。これらのギャップは、同一でない残基として、配列同一性のパーセンテージの計算のために考慮に入れられる。アミノ酸又は核酸の配列同一性のパーセンテージを決定する目的のためのアライメントは、コンピュータプログラム及び例えばウェブ上で入手できる公的に入手可能なコンピュータプログラムを使用する種々の方法で得られてよい。好ましくは、国立バイオテクノロジーセンター(National Center for Biotechnology Information(NCBI))ウェブサイトncbi.nlm.nih.gov/BLAST/bl2seq/wblast2.cgiから入手できるデフォルトパラメータに対するBLASTプログラム(Tatianaら、FEMS Microbiol Lett., 1999, 174:247-250, 1999)セットが、タンパク質又は核酸配列の最適なアライメントを得るため、及び配列同一性のパーセンテージを算出するために使用されてよい。
【0073】
本明細書において提供される関連する実施形態は、配列番号1又は配列番号3に従った核酸配列、例えば抑制性RNAsに相補的である核酸配列、又はストリンジェントな条件下で配列番号1又は配列番号3に従ったヌクレオチド配列の少なくとも一部にハイブリダイズする核酸配列を提供する。本明細書における実施形態の代わりの実施形態は、宿主細胞中で遺伝子発現を変化するための方法を提供する。例えば、本明細書における実施形態のポリヌクレオチドは、宿主細胞又は宿主生物中で、特定の状況で(例えば、特定の温度又は培養条件に曝すことで)高められるか又は過剰発現されるか又は誘発されてよい。
【0074】
本明細書において提供されるポリヌクレオチドの発現の変化は、変化させた生物における、及び対照又は野生型の生物における種々の発現パターンである異所性発現ももたらしうる。発現の変化は、本明細書における一実施形態のポリペプチドと外因性又は内因性修飾因子との相互作用から生じるか、又はポリペプチドの化学的改質の結果として生じる。その用語は、検出レベル以下の又は完全に抑制された活性に変化されている本明細書における実施形態のポリヌクレオチドの変化された発現パターンもいう。
【0075】
一実施形態において、本明細書において提供されるポリペプチド又は多様体ポリペプチドをコードする単離された組換え又は合成ポリヌクレオチドも本明細書において提供される。
【0076】
一実施形態において、ドリメノールシンターゼ活性を有し、かつ配列番号2に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又は配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする単離された核酸分子が提供される。
【0077】
一実施形態において、本明細書において、セスキテルペンシンターゼ活性及び/又はドリメノールシンターゼ活性を有し、かつ配列番号2に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又は配列番号2のアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドが提供される。
【0078】
一実施形態に従って、ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列からなる。
【0079】
一実施形態において、本明細書における実施形態のポリペプチドは、ボタン属植物において又は他の植物種において天然に存在してよく、又は遺伝子操作によって得られるか又はボタン属植物においてもしくは他の植物種において天然に見出される、配列番号2の多様体であるアミノ酸配列を含む。
【0080】
他の実施形態に従って、ポリペプチドは、ボタン科の植物から単離されるか、又はそれらに由来する。さらなる実施形態において、ポリペプチドは、ペオニア・アノマラから単離されるか、又はそれらに由来する。
【0081】
一実施形態において、本明細書に記載される実施形態のいずれか1つにおいて使用されるセスキテルペンシンターゼ活性及び/又はドリメノールシンターゼ活性を有する少なくとも1つのポリペプチド又は本明細書に記載される実施形態のいずれか1つにおいて使用される核酸によりコードされる少なくとも1つのポリペプチドは、遺伝子操作により得られる配列番号2の多様体であるアミノ酸配列を含む。一実施形態において、ポリペプチドは、配列番号1もしくは配列番号3又はそれらの逆相補配列を改変することによって得られるヌクレオチド配列によってコードされたアミノ酸配列を含む。
【0082】
ポリペプチドは、セスキテルペンシンターゼ活性及び/又はドリメノールシンターゼ活性を有するという前提で多様体及び切断ポリペプチドを含むことも意味する。
【0083】
他の実施形態に従って、本明細書に記載される実施形態のいずれかにおいて使用されるドリメノールシンターゼ活性を有する少なくとも1つのポリペプチド又は本明細書に記載される実施形態のいずれかにおいて使用される核酸によりコードされる少なくとも1つのポリペプチドは、遺伝子操作により得られる、配列番号2の多様体であるアミノ酸配列を含み、但し、該多様体は、ドリメノールシンターゼ活性を有し、かつ本明細書に記載される配列番号2に対して要求されるパーセンテージの同一性を有する。
【0084】
他の実施形態に従って、本明細書に記載される実施形態のいずれかにおいて使用されるドリメノールシンターゼ活性を有する少なくとも1つのポリペプチド又は本明細書に記載される実施形態のいずれかにおいて使用される核酸によりコードされる少なくとも1つのポリペプチドは、他の生物、例えば他の植物種において天然に見出される配列番号2の多様体であり、但しそれはドリメノールシンターゼ活性を有する。本明細書において使用されるように、ポリペプチドは、本明細書において同定されるアミノ酸配列を包含するポリペプチド又はペプチド断片、並びに切断されたポリペプチド又は多様体ポリペプチドを含み、但し、それらはセスキテルペンシンターゼ活性及び/又はドリメノールシンターゼ活性を有し、かつ少なくとも配列番号2の対応する断片と定義したパーセンテージの同一性を共有する。
【0085】
多様体ポリペプチドの例は、選択的mRNAスプライシング事象から又は本明細書において記載されたポリペプチドのタンパク質切断からもたらされる天然に生じるタンパク質である。タンパク質分解による多様性は、例えば、本明細書における実施形態のポリペプチドからの1つ以上の末端アミノ酸のタンパク質分解性除去による、種々のタイプの宿主細胞における発現に対するN末端又はC末端での差異を含む。以下に記載されているように、本明細書における実施形態の核酸の天然又は人工の変異によって得られた核酸によってコードされたポリペプチドも、本明細書における実施形態に包含される。
【0086】
アミノ末端及びカルボキシル末端で追加のペプチド配列の融合から得られるポリペプチド多様体も、本明細書における実施形態の方法で使用されうる。特に、かかる融合は、ポリペプチドの発現を高めることができ、タンパク質の精製において有用であり、又は所望の環境又は発現システムでポリペプチドの酵素活性を改良する。かかる追加のペプチド配列は、例えばシグナルペプチドであってよい。他の態様は、多様体ポリペプチド、例えば他のオリゴペプチド又はポリペプチドとの融合によって得られたもの、及び/又はシグナルペプチドに連結させたものを使用する方法を包含する。他の機能性タンパク質、例えばテルペン生合成経路からの他のタンパク質との融合から得られるポリペプチドは、有利には、本明細書における実施形態の方法においても使用されうる。
【0087】
多様体は、ポリペプチド骨格に共有結合又は非共有結合する修飾基の付着により、本明細書における実施形態のポリペプチドとも異なってよい。多様体は、導入されたN結合した又はO結合したグリコシル化部位、及び/又はシステイン残基の付加によって本明細書において提供されたポリペプチドとは異なるポリペプチドも含む。当業者は、どのようにアミノ酸配列を改質するか、及び生物学的活性を保持するかを認識している。
【0088】
本明細書に開示される配列において示されている遺伝子配列に加えて、DNA配列多型が所与の集団内に存在してよく、本明細書に開示されるポリペプチドのアミノ酸配列における変化をもたらしうることは、当業者に明白であろう。かかる遺伝的多型は、異なる集団からの細胞中に又は天然の対立遺伝子変異による集団内に存在しうる。対立遺伝子多様体は機能的等価物を含んでもよい。
【0089】
さらなる実施形態は、具体的に開示された核酸からかかる配列多型によって誘導された分子にも関する。これらの自然変異は、通常、本明細書に開示される遺伝子のヌクレオチド配列又はポリペプチドのアミノ酸配列において約1~5%の変動をもたらす。前記のように、本明細書における実施形態のポリペプチド又はそれらの多様体をコードする核酸は、非ヒト宿主生物又は細胞を改質するため、及び本明細書に記載された方法において使用されることが意図される非ヒト宿主生物又は細胞を改質するために有用な手段である。
【0090】
本明細書において提供される実施形態は、オルソログ及びパラログを含むドリメノールシンターゼタンパク質のアミノ酸配列、並びに他の生物におけるドリメノールシンターゼのオルソログ及びパラログを同定及び単離するための方法を提供する。特に、ドリメノールシンターゼの同定されたオルソログ及びパラログは、ドリメノールシンターゼ活性を保持し、かつ非環式テルペンピロリン酸前駆体、例えばFPPから出発してドリメノール又はドリメノール及び1つ以上のテルペンを含む混合物を製造することができる。
【0091】
in vitroで、非環式テルペンピロリン酸、例えばFPPと接触されるべきポリペプチドは、標準のタンパク質又は酵素抽出技術を使用して、それを発現する任意の生物から抽出することにより得られうる。宿主生物が培地中に本明細書における実施形態のポリペプチドを放出する単細胞生物又は細胞である場合に、ポリペプチドは、培地から、例えば遠心分離、任意に続いて洗浄ステップ及び適した緩衝溶液中での再懸濁によって簡単に採取されてよい。前記生物又は細胞がその細胞内でポリペプチドを蓄積する場合に、ポリペプチドは、細胞の破壊又は溶解、及び任意に細胞溶解物からポリペプチドのさらなる抽出によって得られてよい。未処理の細胞、細胞可溶化物又は抽出されたポリペプチドを、テルペン又はテルペンの混合物の製造のために非環式テルペンピロリン酸を接触させるために使用してよい。
【0092】
ドリメノールシンターゼ活性を有するポリペプチドは、単離された形で又は他のタンパク質と一緒に、例えば培養細胞又は微生物から得られた粗タンパク質抽出物中で、至適pHで緩衝溶液中で懸濁されてよい。適宜、塩、DTT、無機カチオン及び他の種類の酵素補因子を、酵素活性を最適化するために添加してよい。前駆体FPPを、ポリペプチド懸濁液に添加し、そして至適温度、例えば15~40℃、特に25~35℃、より特に30℃でインキュベートする。インキュベート後に、製造したドリメノールを、場合により溶液からポリペプチドを取り出した後に、標準単離方法、例えば溶媒抽出及び蒸留によってインキュベートした溶液から単離してよい。
【0093】
他の実施形態に従って、ドリメノールシンターゼ活性を有する少なくとも1つのポリペプチドを、ドリメノール又はドリメノールを含むテルペンの混合物の製造のために使用してよい。他の実施形態において、ドリメノールを含む混合物は、ネロリドールも含みうる。
【0094】
本明細書における実施形態の方法を実施するための1つの特定の手段は、本明細書において記載されるポリペプチド自体である。
【0095】
特定の実施形態に従って、ポリペプチドは、ドリメノールを含むセスキテルペンの混合物を製造することができる。さらなる実施形態において、シンターゼは、ドリメノールを含むセスキテルペンの混合物を製造することができ、その際、ドリメノールは、少なくとも20%、特に少なくとも30%、特に少なくとも35%、特に少なくとも90%、特に少なくとも95%、より特に少なくとも98%の製造されたセスキテルペンを示す。本明細書で提供される他の態様において、ドリメノールは、95%以上、より特に98%以上の選択性で製造される。
【0096】
他の実施形態に従って、セスキテルペンシンターゼは、ドリメノール及びネロリドールを含むセスキテルペンの混合物を製造することができる。さらなる実施形態において、シンターゼは、ドリメノール及びネロリドールを含むセスキテルペンの混合物を製造することができ、その際、ネロリドールは、少なくとも5%~約80%、特に少なくとも10%~約80%、特に少なくとも15%~約80%、特に少なくとも16%~約80%、特に少なくとも50%~約80%、特に少なくとも60%~約80%、特に少なくとも70%~約80%、特に約79%の製造されたセスキテルペンを示す。
【0097】
任意のセスキテルペンシンターゼ又はドリメノールシンターゼタンパク質、多様体又は断片の機能性又は活性を、種々の方法を使用して決定してよい。例えば、植物細胞、細菌細胞又は酵母細胞における一過性の又は安定な過剰発現を、タンパク質が活性を有するかどうか、すなわち非環式テルペンピロリン酸前駆体、例えばFPP前駆体の製造から1つ以上のセスキテルペン、例えばドリメノール又はドリメノールを含むかもしくはドリメノール及びネロリドールを含むセスキテルペンの混合物を製造するかどうかを試験するために使用できる。ドリメノールシンターゼ活性は、機能性を示すドリメノールの製造に対して、微生物発現系で、例えば本明細書における実施例2において記載されるアッセイで評価されうる。本明細書における実施形態のドリメノールシンターゼポリペプチドの多様体又は誘導体は、FPP前駆体からドリメノール又はドリメノールを含む混合物を製造するための能力を保持している。本明細書において提供されるドリメノールシンターゼの多様体のアミノ酸配列は、例えば変更された基質利用、反応速度、生成物分布又は他の変更を含む、追加の所望の生物学的機能を有してよい。
【0098】
特定のセスキテルペン(例えばドリメノール)の合成に触媒作用を及ぼすポリペプチドの能力は、例えば実施例1及び2において詳述される酵素アッセイを実行することによって単純に確認できる。
【0099】
さらに、本明細書において記載された核酸分子を含む少なくとも1つのベクターが提供される。
【0100】
本明細書において、原核生物ベクター、ウィルスベクター及び真核生物ベクターの群から選択されるベクターも提供される。
【0101】
さらに、本明細書で、発現ベクターであるベクターが提供される。
【0102】
一実施形態において、いくつかのドリメノールシンターゼをコードする核酸配列は、単独の宿主で、特に異なるプロモーターの制御下で、同時発現される。他の実施形態において、いくつかのドリメノールシンターゼタンパク質をコードする核酸配列は、単独の形質転換ベクターが存在してよく、又は別々のベクターを使用して、及び双方のキメラ遺伝子を含む形質転換体を選択して、同時に同時形質転換されてよい。同様に、1つ以上のドリメノールシンターゼをコードする遺伝子を、他のキメラ遺伝子と共に、単一の植物、細胞、生物、又は微生物中で発現させてよい。
【0103】
ドリメノールシンターゼタンパク質をコードする本明細書における実施形態の核酸配列は、宿主細胞又は非ヒト宿主生物中でドリメノールシンターゼタンパク質を製造するために、発現ベクター中に挿入されてよく、及び/又は発現ベクター中で挿入されたキメラ遺伝子にお含まれてよい。宿主細胞のゲノム中へ導入遺伝子を挿入するためのベクターは、当業者に周知であり、かつプラスミド、ウィルス、コスミド及び人工染色体を含む。キメラ遺伝子が挿入される二元の又は同時組み込み型のベクターも、宿主細胞を形質転換するために使用されてよい。
【0104】
本明細書において提供される実施形態は、ドリメノールシンターゼ遺伝子の核酸配列を含む組換え発現ベクター、又は関連する核酸配列、例えばプロモーター配列に操作可能に連結したドリメノールシンターゼ遺伝子の核酸配列を含むキメラ遺伝子を提供する。例えば、配列番号1又は配列番号3又はそれらの多様体の核酸配列を含むキメラ遺伝子は、場合により3’非翻訳核酸配列に連結した植物細胞、細菌細胞もしくは真菌細胞中での発現に適したプロモーター配列に操作可能に連結してよい。
【0105】
代わりに、プロモーター配列は、ベクター中で既に存在していてよく、その結果、転写されるべき核酸配列は、プロモーター配列の下流のベクター中に挿入される。ベクターは、複製、マルチクローニング部位、及び選択可能なマーカーの起点を有するために操作されうる。
【0106】
一実施形態において、本明細書において記載される核酸を含む発現ベクターを、in vivoで本明細書における実施形態の方法を実施するために適した非ヒト宿主生物又は宿主細胞を形質転換するための手段として使用することができる。
【0107】
本明細書において提供される発現ベクターを、本明細書において記載されるように、本明細書における実施形態の核酸を宿す非ヒト宿主生物及び/又は宿主細胞中で遺伝子的に形質転換された非ヒト宿主生物及び/又は宿主細胞を製造するための方法において、並びにドリメノールシンターゼ活性を有するポリペプチドを製作するための方法において使用してよい。
【0108】
本明細書における実施形態の少なくとも1つの核酸を宿すために形質転換させて、本明細書における実施形態の少なくとも1つのポリペプチドを異種発現又は過剰発現する組換えた非ヒト宿主生物及び宿主細胞は、本明細書における実施形態の方法を実施するための非常に有用な手段でもある。したがって、かかる非ヒト宿主生物及び宿主細胞が、本明細書において提供される。
【0109】
一実施形態において、本明細書において記載される核酸分子の少なくとも1つを含むか、又は核酸分子の少なくとも1つを含む少なくとも1つのベクターを含む宿主細胞又は非ヒト宿主生物が提供される。
【0110】
前記実施形態のいずれかに従った核酸は、非ヒト宿主生物及び細胞を形質転換するために使用されてよく、かつ発現されたポリペプチドは、前記ポリペプチドのいずれかであってよい。
【0111】
一実施形態において、非ヒト宿主生物又は宿主細胞は原核細胞である。他の実施形態において、非ヒト宿主生物又は宿主細胞は細菌細胞である。さらなる実施形態において、非ヒト宿主生物又は宿主細胞は大腸菌(Escherichia coli)である。
【0112】
一実施形態において、非ヒト宿主生物又は宿主細胞は真核細胞である。他の実施形態において、非ヒト宿主生物又は宿主細胞は酵母細胞である。さらなる実施形態において、非ヒト宿主生物又は細胞は、サッカロミセス・セレビジエである。
【0113】
さらなる実施形態において、非ヒト生物又は宿主細胞は、植物細胞である。
【0114】
一実施形態において、非ヒト宿主生物又は宿主細胞は、ポリペプチドを発現するが、但し該生物又は細胞は、該ポリペプチドをコードする核酸を宿すために形質転換され、この核酸は、mRNAに転写され、そしてポリペプチドが、宿主生物又は宿主細胞中で見出される。
【0115】
非ヒト宿主生物又は宿主細胞を形質転換するための適した方法は、以前に記載されており、本明細書においても提供されている。
【0116】
本明細書における実施形態をin vivoで実施するために、宿主生物又は宿主細胞を、セスキテルペン、例えばドリメノール又はドリメノールを含む混合物を製造するのによい条件下で培養させる。したがって、宿主がトランスジェニック植物である場合に、最適な成長条件、例えば最適な光条件、水条件及び栄養条件が提供されうる。宿主が単細胞生物である場合に、ドリメノール又はドリメノールを含む混合物を製造するのによい条件は、宿主の培地に適した補因子の添加を含んでよい。さらに、培地は、ドリメノール合成を最大化するように選択されてよい。最適な培養条件の例は、実施例におけるより詳細な方法において記載されている。
【0117】
in vivoで本明細書における実施形態の方法を実施するために適した非ヒト宿主生物は、任意の非ヒト多細胞又は単細胞生物であってよい。一実施形態において、in vivoで本明細書における実施形態を実施するために使用される非ヒト宿主生物は、植物、原核生物又は真菌である。あらゆる植物、原核生物又は真菌を使用できる。特に有用な植物は、多量のテルペンを自然に製造するものである。他の実施形態において、in vivoで本明細書における実施形態の方法を実施するために使用される非ヒト宿主生物は、微生物である。任意の微生物を使用でき、例えば微生物は、細菌又は酵母、例えば大腸菌又はサッカロミセス・セレビジエであってよい。
【0118】
これらの生物のいくつかは、天然にFPPを製造しない。本明細書における実施形態の方法を実施するために適切であるために、非環式テルペンピロリン酸前駆体、例えばFPPを天然に製造しない生物又は細胞を形質転換して、前記前駆体を製造する。それらは、前記で説明されているように、前記実施形態のいずれかに従って記載された核酸での改質前に、又は同時に、形質転換されてよい。生物、例えば微生物を形質転換して、それらが非環式テルペンピロリン酸前駆体、例えばFPPを製造する方法は、既に当業者に公知である。
【0119】
単離された高次真核細胞を、完全な生物の代わりに、in vivoで本明細書における実施形態の方法を実施するための宿主としても使用できる。適した真核細胞は、あらゆる非ヒト細胞、例えば植物又は真菌細胞であってよい。
【0120】
さらに、本明細書において、
i) 非環式テルペンピロリン酸、特にファルネシル二リン酸(FPP)と、ドリメノールシンターゼ活性を有し、かつ配列番号2に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか又は配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドとを接触させて、ドリメノール又はドリメノール及び1つ以上のテルペンを含む混合物を製造すること、並びに
ii) 任意にドリメノール単離すること
を含む、ドリメノール又はドリメノールを含む混合物の製造方法が提供される。
【0121】
一態様において、ドリメノールは単離される。
【0122】
本明細書で提供される他の態様において、ドリメノールは、製造されるセスキテルペンの20%以上、30%以上、35%以上、40%以上、50%以上、60%以上、80%以上、又は90%以上、又はさらに95%以上の選択性で生成される。
【0123】
さらに、ドリメノールシンターゼ活性を有し、かつ配列番号2に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか又は配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸で、宿主細胞又は非ヒト宿主生物を形質転換することを含む方法が本明細書で提供される。
【0124】
一実施形態において、本明細書において提供される方法は、FPPを生産でき、形質転換させてポリペプチドを発現する非ヒト宿主生物又は宿主細胞を培養することを含み、ここでポリペプチドは、ポリペプチドの製造を可能にする条件下で、配列番号1又は配列番号3に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸の配列を含む。
【0125】
他の実施形態において、本明細書において提供される方法は、セスキテルペン、例えばドリメノールと少なくとも1つの酵素とを接触させて、セスキテルペン誘導体を製造することを含む。かかるドリメノールの誘導体の例は、ドリメニルアセテート(CAS 40266-93-1)、ドリメナール(CAS 105426-71-9)、ドリメン酸(drimenic acid)(CAS 111319-84-7)を含むが、これらに制限されない。
【0126】
他の特定の実施形態に従って、任意の前記実施形態の方法を、in vivoで実施する。このような場合、ステップa)は、1つ以上のセスキテルペン、例えばドリメノール又はドリメノールを含む混合物を製造するのによい条件下で、FPPを製造することができ、かつ形質転換させて配列番号2を含むアミノ酸又はそれらの機能的多様体を含有し、ドリメノールシンターゼ活性を有する少なくとも1つのポリペプチドを発現することができる非ヒト宿主生物又は宿主細胞を培養することを含む。ドリメノールは、単独の生成物であってよく、又はセスキテルペンの混合物の一部であってよい。一実施形態において、セスキテルペンの混合物は、ドリメノール及びネロリドールを含む。
【0127】
さらなる実施形態に従って、本発明は、さらに、ステップa)の前に、FPPを製造できる非ヒト生物又は細胞を、配列番号2を含むアミノ酸を含むポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸、又はドリメノールシンターゼ活性を有し、かつ配列番号2に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸で形質転換し、その結果前記生物が該ポリペプチドを発現することを含む。
【0128】
本明細書における実施形態のこれらの実施形態は、予めポリペプチドを単離することなくin vivoで前記方法を実施することができるため、特に有利である。前記反応は、形質転換した生物又は細胞内で直接生じて、前記ポリペプチドを発現する。
【0129】
本明細書における実施形態は、in vitro又はin vivoでFPP前駆体と本明細書における実施形態のポリペプチドとを接触することによりドリメノール又はドリメノールを含む混合物を製造するための方法において使用されるべき本明細書における実施形態のポリペプチドを提供する。
【0130】
さらに、ドリメノール又はドリメノール及び1つ以上のテルペンを含む混合物又はドリメノール及びネロリドールを含む混合物を製造するための、本明細書に記載されるポリペプチドの使用が提供される。一実施形態において、製造されたドリメノール及び/又はネロリドールが単離される。
【0131】
次の実施例は、例示のためのみであり、特許請求の範囲及び本明細書において記載された実施形態を制限することを意図しない。
【0132】
実施例
実施例1
ペオニア・アノマラの植物材料源及び根のトランスクリプトームの配列決定
ペオニア・アノマラの植物材料を、Datong社(Qinghai、Chaina)から得た。ペオニア・アノマラがドリメノールを含んでいたどうかを証明するために、その根を採取し、そして化学分析のためにジクロロメタンで新たに抽出した。その抽出物を、GC-MSにより分析し、GC-MS分析のパラメータを以下のように記載した:DB1-msカラム30m×0.25mm×0.25μm(フィルムの厚さ)、P/N 122-0132(J&W scientific Inc.、Folsom、CA)を備え、5975シリーズ質量分析器を連結したAgilent 6890シリーズGCシステムを使用した。キャリヤーガスは、0.7mL/分の一定流でのヘリウムであった。注入は、250℃に設定したインジェクタ温度でスプリット(1:5)モードであった。炉温度を、50℃(5分保持)~300℃(5℃/分で)、そして~340℃(50℃/分で)にプログラム設定し、そして3分間保持した。生成物の同定を、質量スペクトル及び保持指数に基づいて実施した。ペオニア・アノマラの根は、少量のドリメノールを含んでいた(図5)。
【0133】
ペオニア・アノマラの新鮮な根を、トランスクリプトーム分析のために使用した。全RNAを、Column Plant RNAout(TIANDZ、Chaina)を使用して抽出した。この全RNAを、Illumina Total RNA-Seq技術を使用して加工し、Illumina MiSeqシーケンサーで配列決定した。合計900万個の2×251bpのペアエンドリードが生じた。そのリードを、Trinity(http://trinityrnaseq.sf.net/)ソフトウェアを使用して構築した。平均サイズ1109bpを有する26457個のunigeneを得た。unigeneを、NCBI Blast(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)及びInterProScanソフトウェア(http://www.ebi.ac.uk/Tools/pfa/iprscan/)により注釈を付けた。このアプローチは、PaTPS3を含む7個の新たな推定セスキテルペンシンターゼについての配列を提供した。PaTPS3の酵素活性を、次の実施例において記載したように評価した。
【0134】
実施例2
PaTPS3の機能発現及び特徴付け
Column Plant RNAoutキットにより抽出された全RNAを、最初に、SuperScript III First-Strand Synthesisキット(Invitrogen、Shanghai、China)を使用してcDNAに逆転写した。そして、その生成物をテンプレートとして使用し、フォワードプライマー(5’-ATGTCTGTCAAAGTTCCTCAATC-3’)(配列番号4)及びリバースプライマー(5’-TCACATTGCAATAGGATCGGTG-3’)(配列番号5)を使用して、P.アノマラのcDNAライブラリから遺伝子を増幅させた。
【0135】
PaTPS3の配列を、大腸菌の次の遺伝子コドン頻度により最適化し、そして合成した。NdeIの制限酵素部位をPaTPS3の5’末端に付加し、一方でKpnIを3’末端に付加した。PaTPS3を、続く大腸菌中での発現のためにpJ401(DNA2.0)プラスミドにサブクローニングした。
【0136】
KRX大腸菌細胞(Promega)を、異種メバロン酸経路をコードする遺伝子を含むプラスミドpACYC/ScMVA、及びプラスミドpJ401-PaTPS3で同時形質転換した。pACYC/ScMVAプラスミドを構築するために、8つの生合成遺伝子を2つの合成オペロン、いわゆる「上流」及び「下流」のメバロン酸(MVA)経路に分けた。上流MVA経路として、それぞれ、atoBによりコードされる大腸菌からのアセトアセチル-CoAチオラーゼ、HMG-CoAシンターゼ、並びにERG13及びERG19によりコードされるサッカロミセス・セレビジエからのHMG-CoAレダクターゼの切断型からなる合成オペロンを作成した。このオペロンは、一次代謝物アセチル-CoAを(R)-メバロン酸に形質転換する。「下流」メバロン酸経路として、メバロン酸キナーゼ(ERG12、S.セレビジエ)、ホスホメバロン酸キナーゼ(ERG8、S.セレビジエ)、ホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ(MVD1、S.セレビジエ)、イソペンテニルジホスフェートイソメラーゼ(idi、大腸菌)及びファルネシルピロリン酸(FPP)シンターゼ(IspA、大腸菌)をコードする第二の合成オペロンを作成した。最終的に、S.セレビジエからの第二のFPPシンターゼ(ERG20)を、上流経路のオペロンに導入して、ファルネシルピロリン酸(FPP)へのイソプレノイドC5単位(IPP及びDMAPP)の変換を改善した。それぞれのオペロンを、T7プロモーター(pACYCDuet-1、Invitrogen)の制御下で、低コピー発現プラスミドのマルチクローニング部位の1つにサブクローニングした。
【0137】
同時形質転換した細胞を、カナマイシン(50μg/mL(最終))及びクロラムフェニコール(34μg/mL(最終))を含むLB寒天プレート上で選択した。単コロニーを使用して、カナマイシン(25μg/mL(最終))及びクロラムフェニコール(34μg/mL(最終))を含む5mLの液体LB培地に植えた。その培養物を37℃及び200rpm撹拌で一晩インキュベートした。翌日、同一の抗生物質及びグリセロール(3%w/v(最終))で補った6mLのTB培地を一晩培養物の0.6mLに植えた。37℃で及び200rpmで撹拌して4時間インキュベートした後に、その培養物を1時間25℃まで冷却させた。その培養物の容量を、それぞれの管について2mLに調整し、そしてIPTG(0.1mM(最終))を添加し、ドデカン200μLで覆った。その培養物を、さらに48時間25℃で、及び200rpmで撹拌してインキュベートした。そして、その培養物を、1mL酢酸エチルで抽出し、2mg/mLでイソロンギホレン50μL(内部標準)を、GC/MSにより試料を分析する前に内部標準として添加した。GC/MS分析は、実施例1に記載の方法と同一の方法を使用した。キャリヤーガスは、0.7mL/分の一定流でのヘリウムであった。注入は、250℃に設定したインジェクタ温度でスプリット(1:5)モードであった。炉温度を、50℃(5分保持)~300℃(5℃/分で)、そして~340℃(50℃/分で)にプログラム設定し、そして3分間保持した。生成物の同定を、質量スペクトル及び保持指数に基づいて実施した。GC/MS分析は、PaTPS3が73%の選択性(ファルネソール及びファルネシルアセテートを含まない)及び18.4mg/Lの力価を有する主生成物としてドリメノールを製造したことを明らかにした(図6及び7)。
【0138】
in vitroアッセイを実施して、PaTPS3の前記のin vivoの特徴を確認した。BL21(DE3)大腸菌細胞を、プラスミドpJ401-PaTPS3で形質転換した。形質転換した細胞を、カナマイシン(50μg/mL(最終))を含むLB寒天プレート上で選択した。単コロニーを使用して、同一の抗生物質で補った25mLの液体LB培地に植え付けた。その培養物を37℃及び200rpmの撹拌で、濁る(OD約0.5)までインキュベートした。5時間のインキュベート後に、その培養物を、30分間20℃まで冷却し、そしてIPTG(0.1mM(最終))を添加した。その培養物を、20℃及び200rpmで一晩インキュベートし、そして遠心分離し、5mLの50mM MOPSO緩衝液(10%グリセロール(w/v)、及び5mM DTTを含む、pH7)中で再懸濁した。再懸濁した細胞を、氷上で10秒間を3回超音波処理することによって破砕し、4℃で12000rpmで30分間遠心分離し、その上清(粗タンパク質を含む)を、in vitroアッセイに使用した。合計2mLの50mM MOPSO反応緩衝液(10%グリセロール(w/v)、15mM MgCl2、0.1mM MnCl2、1mM DTT、6mM Na3VO4を含む、pH7)、145μM FPP溶液10μL及び粗タンパク質1mLを混合し、そしてヘプタン1mLにより覆い、そして16時間in vitro反応のためにインキュベートした。そして、その反応物を、1mL酢酸エチルで抽出し、2mg/mLでイソロンギホレン50μL(内部標準)を、GC/MSにより試料を分析する前に内部標準として添加した。GC/MS分析は、実施例1に記載の方法と同一の方法を使用した。キャリヤーガスは、0.7mL/分の一定流でのヘリウムであった。注入は、250℃に設定したインジェクタ温度でスプリット(1:5)モードであった。炉温度を、50℃(5分保持)~300℃(5℃/分で)、そして~340℃(50℃/分で)にプログラム設定し、そして3分間保持した。生成物の同定を、質量スペクトル及び保持指数に基づいて実施した。GC/MS分析は、PaTPS3が79%(E)-ネロリドールに加えて21%の選択性を有するドリメノールを製造したことを明らかにした(図8及び9)。
【0139】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
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