(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】半導体チップの溝内にワイヤを挿入するための方法、およびそのような方法を実施するための装置の部分
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20230208BHJP
G06K 19/02 20060101ALI20230208BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
G06K19/077 212
G06K19/02 070
H01L21/60 301A
(21)【出願番号】P 2019561374
(86)(22)【出願日】2018-01-25
(86)【国際出願番号】 FR2018050166
(87)【国際公開番号】W WO2018138437
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2021-01-08
(32)【優先日】2017-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】519275571
【氏名又は名称】プリモ1ディー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル アレーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ロバン ルティエク
(72)【発明者】
【氏名】パヴィーナ グエン
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー マカニク
【審査官】河合 弘明
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-513980(JP,A)
【文献】特開2011-249808(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0001237(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0073128(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/077
G06K 19/02
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップ(1)の縦溝(2a,2b)内にその組み立てのためにワイヤ(7a,7b)を挿入するための方法であって、前記
縦溝(2a,2b)は、所定の融点を有する結合材製のパッド(6a,6b)を含み、前記パッド(6a,6b)は、前記ワイヤ
(7a,7b)が中に完全に収容されるの
が防止されるように前記
縦溝(2a,2b)
内の空間を占め
ており、前記方法は、
位置決め
工程において、前記ワイヤ(7a,7b)の長手方向部分を、前記
縦溝(2a,2b)に沿って、前記パッド(6a,6b)に強制当接させて、配置する工程、
挿入
工程において、前記パッド(6a,6b)の少なくとも
一部を含む帯域を、前記結合材の融点よりも高い加工温度に、および前記パッド(6a,6b)を少なくとも部分的に溶融させるのに十分な時間にわたって、暴露し、
そのようにして前記ワイヤ(7a,7b)を前記
縦溝(2a,2b)内に挿入させる工程、
を含むことを特徴とする、挿入方法。
【請求項2】
前記挿入
工程の完了時に、前記ワイヤ(7a,7b)と前記半導体チップ(1)を組み立てるために前記結合材を固化させる工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の挿入方法。
【請求項3】
前記ワイヤ(7a,7b)は、前記
縦溝(2a,2b)に対向して緊張状態に維持され、および前記位置決め
工程は、前記ワイヤ(7a,7b)を前記パッド(6a,6b)に
対して押
圧する工程
をさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載の挿入方法。
【請求項4】
前記パッド(6a,6b)は、前記帯域を熱気流または光流に暴露することによって、または金属に形成されたとき、誘導によって、加工温度に持ち込まれることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の挿入方法。
【請求項5】
前記
縦溝(2a,2b)内に挿入されることが意図される前記ワイヤ
(7a,7b)の前記長手方向部分を準備する
工程を
さらに含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の挿入方法。
【請求項6】
前記準備
工程は、前記ワイヤ
(7a,7b)の前記長手方向部分上に塗工層を堆積させる工程を含むことを特徴とする請求項5に記載の挿入方法。
【請求項7】
前記準備
工程は、前記ワイヤ
(7a,7b)の前記長手方向部分の洗浄および/または脱酸素の
工程を含むことを特徴とする請求項5または6に記載の挿入方法。
【請求項8】
前記挿入
工程の後に、前記
縦溝(2a,2b)内におよび前記
縦溝(2a,2b)内にさらされる前記ワイヤ(7a,7b)の前記長手方向部分上に接着剤を分配する工程を含む補強
工程が続くことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の挿入方法。
【請求項9】
前記挿入
工程の後に、前記半導体チップ(1)および/または前記ワイヤ(7a,7b)を封入する
工程が続くことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の挿入方法。
【請求項10】
前記ワイヤ(7a,7b)は導電性であることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の挿入方法。
【請求項11】
前記ワイヤ(7a,7b)上に複数の半導体チップ(1)を挿入しおよびチェーン(16,21)を形成するように、前記位置決めおよび挿入
工程を繰り返す工程を含むことを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の挿入方法。
【請求項12】
少なくとも1つの半導体チップ(1)内にワイヤ(7a,7b)を挿入するための
挿入装
置であって、前記半導体チップは、前記ワイヤ
(7a,7b)の長手方向部分を受け入れるための溝(2a,2b)を有し、および前記溝(2a,2b)は、所定の融点を有する結合材製のパッド(6a,6b)を含み、前記パッド(6a,6b)は、前記ワイヤ
(7a,7b)が中に完全に収容されるのを
防止するように前記溝(2a,2b)
内の空間を占め
ており、前記
挿入装
置は、
作業空間の第1および第2の端部間に前記ワイヤ(7a,7b)の長さを展開しおよび移動させるための位置決め部材(9a,9b,9)と、
前記溝(2a,2b)が前記ワイヤ(7a,7b)に対向して配置される挿入位置内に前記半導体チップ(1)を配置することができる、前記半導体チップ(1)を取り扱うためのデバイス(11)と、
前記ワイヤ(7a,7b)の前記長手方向部分を、前記溝(2a,2b)に沿って、前記パッド(6a,6b)に強制当接させて、配置するための位置決め部材(12)と、
前記半導体チップ(1)が前記挿入位置に配置されたときに、前記所定の融点を超える加工温度まで、前記パッド(6a,6b)を含む帯域を上昇させるための加熱部材(13)と、
を含むことを特徴とする挿入装
置。
【請求項13】
前記位置決め部材(9a,9b,9)は、前記第1および第2の端部間に2本の平行なワイヤ
(7a,7b)を展開するように構成され、および前記挿入位置は、
前記第1および第2の端部間であって前記2本のワイヤ
(7a,7b)間に位置することを特徴とする請求項12に記載の挿入装
置。
【請求項14】
前記作業空間内において、前記半導体チップ(1)の前記挿入位置の下流または上流に配置される少なくとも1つの付加的部材(14)を含むことを特徴とする請求項13または13に記載の挿入装
置。
【請求項15】
前記付加的部材(14)および前記位置決め部材(12)は、これらの部材によって実行される加工が同時に行われ得るように、前記作業空間内に位置決めされおよび構成されることを特徴とする請求項14に記載の挿入装
置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップの溝内にその組み立てのためにワイヤを挿入するための方法に関する。それは、また、この挿入方法を実施するための装置の部分(piece of equipment)に関する。それは、RFID電子タグ付け(electronic tagging)(「無線周波数識別」)の分野において、アンテナを送受信チップ(transmission reception chip)と直接的に関連付け、および単純な製法の特に小さな無線周波数デバイス(radiofrequency device)を提供する、例示的適用を見出した。このデバイスは、織物用糸(textile thread)に一体化され得、およびこの糸それ自体は、その識別(identification)、追跡(tracking)および管理(administration)の多種多様な対象物に一体化され得る。
【背景技術】
【0002】
例えば、E-Thread(商標)(E-THREADTM)として知られる、ワイヤとチップを組み立てるために使用されるテクノロジーは、文献(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、または特許文献7)から知られている。
【0003】
この技術では、チップは、縦溝(longitudinal groove)を有し、およびワイヤの長手方向部分(longitudinal section)は、この溝内に挿入される。組立品は、ワイヤを溝内に埋め込むことによって得ることができ、ワイヤのおよび溝の寸法は、次いで、2つの要素を互いに機械的に接合させるのに十分に調整される。文献(特許文献8または特許文献9)に開示されるように、溝は、いくつかの場合において、ワイヤを溝内にそれをそこに保持するように締め付けることを可能にするパッドを備えていてもよい。加えてまたは代替的に、組立品は、ワイヤおよびチップを半田付けしまたは蝋付けすることによって、ワイヤとチップとの間に接着材を加えることによって、得ることができまたは補強され得る。
【0004】
文献(特許文献10)において、ワイヤは導電性(electrically conductive)であり、および半導体チップは、送受信回路(transmission reception circuit)を含む。ワイヤとチップの組立品は、ワイヤと送受信回路の入力-出力端子(terminal)とを接触させて、操作可能な(operational)送受信デバイス(transmission reception device)を形成することを可能にする。ワイヤは、このデバイスのアンテナである。
【0005】
ワイヤをチップ溝内へ挿入する工程は、とりわけ、高生産速度(high production rate)を維持することができることが必要な産業状況(industrial context)において、特に繊細な操作である。
【0006】
文献(特許文献5)は、この速度を維持するのに適当な挿入装置の部分(piece of insertion equipment)を開示する。大きいワイヤは、装置の部分内にコイルの形状で供給され、およびチップは、タンク内に保管される。2本のワイヤは、コイルから巻き出されて互いに平行に装置の部分の締付帯域(clamping zone)に供給される。それは、また、チップをタンクから2本のワイヤ間のこの締付帯域に連続的に持ってきて、および各ワイヤの長手方向部分をチップの縦溝内に埋め込むように構成される。あるいはまた、この文献は、ワイヤと溝内に置かれた金属パッドとの互いに対する溶接を提供して、挿入装置の部分の出口においてチップおよびワイヤを固定する。大きいワイヤによって接続された複数のチップからなるチェーン(chain)は、このようにして形成される。チップチェーンは、支持体上に巻かれて、保管リールを形成し得る。このチェーンのセグメントは、所望の切断パターンによってワイヤを切断することによって、保管リールから取り外され得る。
【0007】
この装置の部分において提供される挿入テクノロジーは、ワイヤに対して、それらを溝内に埋め込むために、比較的かなり大きな力を加える必要がある。溝内へのワイヤのこの「強制(forced)」挿入は、挿入の間または後の弱体化または破壊をもたらし得る。加えて、この挿入テクノロジーは、特に、溝およびワイヤ寸法の正確な調整に敏感である。誤った調整は、不十分に堅固な組立品をもたらし、またはそれどころか、ワイヤの破損またはワイヤに損傷をもたらす可能性のある過度の力を必要とする可能性がある。
【0008】
最先端の技術と同じだけの力を加える必要のない挿入技術を有することは有利であろう。また、過度の力を用いずにワイヤとチップを同一のステップにおいて挿入しおよび組み立てることができることは有利であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第8471713号明細書(US8471713)
【文献】米国特許第8093617号明細書(US8093617)
【文献】米国特許第8723312号明細書(US8723312)
【文献】米国特許出願公開第2015/318409号明細書(US2015318409)
【文献】米国特許第8782880号明細書(US8782880)
【文献】米国特許第8814054号明細書(US8814054)
【文献】米国特許出願第2015/230336号明細書(US2015230336)
【文献】国際公開第2009/112644号(W02009112644)
【文献】国際公開第2014/041107号(W02014041107)
【文献】米国特許第8471773号明細書(US8471773)
【発明の概要】
【0010】
本発明の簡単な説明
これらの目的のうちの少なくとも1つを達成することを視野に入れて、本発明の主題は、第1の態様によると、半導体チップの縦溝内にその組み立てのためにワイヤを挿入するための方法を提案し、溝は、設定された融点(set melting point)を有する結合材(bonding material)製のパッドを含み、方法は、
- 位置決めステップにおいて、ワイヤの長手方向部分を、溝に沿って、パッドに強制当接させて、配置する工程、
- 挿入ステップにおいて、パッドの少なくとも1つの部分を含む帯域を、結合材の融点よりも高い加工温度(processing temperature)に、およびパッドを少なくとも部分的に溶融させるのに十分な時間にわたって、暴露する工程、およびワイヤを溝内に挿入させる工程、
を含む。
【0011】
単独でまたは任意の技術的に実現可能な組み合わせで用いられる本発明の他の有利なおよび非制限的な特徴によると、
- 本方法は、挿入ステップの完了時に、ワイヤとチップを組み立てるために結合材を固化させる(solidifying)ステップを含み、
- ワイヤは、溝に対向して(opposite)緊張状態に維持され、および位置決めステップは、ワイヤをパッドに押し付ける工程にあり、
- パッドは、帯域を熱気流(hot air flow)または光流(light flow)に暴露することによって誘導(induction)加工温度に持ちこまれ、
- 方法は、位置決め工程の前または間に、溝内へ挿入されることが意図されるワイヤの長手方向部分の準備のステップを含み、
- 準備ステップは、ワイヤの長手方向部分上の塗工層(coating layer)の堆積を含み、
- 準備ステップは、ワイヤの長手方向部分の洗浄(cleaning)および/または脱酸素(deoxidation)のステップを含み、
- 挿入ステップの後に、溝内におよび溝内でさらされるワイヤの長手方向部分上に接着剤を分配する補強ステップが続き、
- 挿入ステップの後に、チップおよび/またはワイヤを封入するステップが続き、
- ワイヤは導電性であり、
- 方法は、ワイヤ上に複数のチップを挿入しおよびチェーン16,21を形成するように、位置決めステップおよび挿入ステップを繰り返す工程を含む。
【0012】
別の態様において、本発明は、また、ワイヤを少なくとも1つのチップ内に挿入するための装置の部分を提案し、チップは、ワイヤの長手方向部分を受け入れるための溝を有し、および溝は、設定された融点を有する結合材製のパッドを含み、装置の部分は、
- 作業空間の第1および第2の端部間にワイヤの長さを展開しおよび移動させるための位置決め部材と、
- 前記溝がワイヤに対向して配置される挿入位置にチップを配置することができる、チップを取り扱うためのデバイスと、
- ワイヤの長手方向部分を、前記溝に沿って、パッドに強制当接させて、配置するための位置決め部材と、
- チップが挿入位置に配置されたときに、加工温度まで、パッドを含む帯域を上昇させるための加熱部材、
を含む。
【0013】
単独でまたは任意の技術的に実現可能な組み合わせで用いられる本発明の他の有利なおよび非制限的な特徴によると、
- 位置決め部材は、第1および第2の端部間に2本の平行なワイヤを展開するように構成され、および挿入位置は、2本のワイヤ間に位置し、
- 挿入装置は、作業空間内において、チップ挿入位置の上流または下流に配置される少なくとも1つの付加的部材を有し、
- 付加的部材および位置決め部材は、これらのコンポーネントによって実行される加工(processing)が同時に行われ得るように、作業空間内に位置決めされおよび構成される。
【0014】
本発明の他の特徴および利点は、添付図面に関連して後に続く発明の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1a】本発明による挿入方法に対応したチップの斜視図である。
【
図1b】本発明による挿入方法に対応したチップの断面図である。
【
図2a】本発明による方法のステップを示す図である。
【
図2b】本発明による方法のステップを示す図である。
【
図2c】本発明による方法のステップを示す図である。
【
図2d】本発明による方法のステップを示す図である。
【
図2e】本発明による方法のステップを示す図である。
【
図3a】その作動の間の特定の時における、本発明による方法を実施するように構成された装置の部分を示す図である。
【
図3b】その作動の間の特定の時における、本発明による方法を実施するように構成された装置の部分を示す図である。
【
図4a】第1の受送信デバイス(reception transmission device)の製造への方法の例示的適用を示す図である。
【
図4b】第1の受送信デバイスの製造への方法の例示的適用を示す図である。
【
図4c】第1の受送信デバイスの製造への方法の例示的適用を示す図である。
【
図5a】第2の送受信デバイスの製造への本発明の方法の例示的適用を示す図である。
【
図5b】第2の送受信デバイスの製造への本発明の方法の例示的適用を示す図である。
【
図5c】第2の送受信デバイスの製造への本発明の方法の例示的適用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の詳細な説明
図1aは、斜視図において、「半導体チップ」または以下の記載においてより簡単に「チップ」と呼ばれる、本発明による挿入方法に対応した電子コンポーネント1を示す。
図1bは、そのようなチップ1の断面図である。
【0017】
チップ1は、互いに平行のおよび互いに反対側の(opposite each other)チップ1の2つの側面1a、1b上にそれぞれ形成された、2つの縦溝2a,2bを有する。この構成は、その概要(generality)の全てを後に続く説明に沿わせることを可能にするが、本発明は、決して、溝のこの数およびこの配置に限定されず、およびチップ1は、本発明の範囲を逸脱することなく、チップ1の面のうちの任意の1つの上に任意の配向で各々配置された、単一のまたは任意の数の溝(単数または複数)をとてもよく備え得る。これらの縦溝2a,2bは、各々、ワイヤの長手方向部分(これらの
図1aおよび
図1bにおいて不図示)を受け入れおよび収容するように設けられる。ワイヤの挿入を容易にするために、各溝2a,2bは、それが配置されるチップの面上において、チップ1の片側から他の側に延びる。以下において、チップの溝内に収容されているまたは収容されることになるワイヤの部分は、その長さにより、「ワイヤの長手方向部分」と呼ばれる。
【0018】
本発明によると、各ワイヤがその埋め込みを機械的に強制することなく溝2a,2b内に収容され得るように、溝2a,2bの高さおよび深さ寸法は、十分に大きく選択され、またはワイヤ断面は、十分に小さく選択される。チップ1に対するワイヤの接続を促進するために、ワイヤの長手方向部分が溝内に完全に収容され得ること、すなわち、各ワイヤの収容される部分は溝が形成されたチップの面を越えて延びないことは、概して好ましい。チップ1が、
図1aおよび
図1bにおけるように複数の溝2a,2bを有するとき、それらは、必ずしも同一のサイズのものとは限らない。同様に、溝内に収容されることとなるワイヤは、必ずしも同一の性質のものとは限らず、および必ずしも同じ断面を有するとは限らない。
【0019】
チップ1は、例えば半導体分野において知られている技術を用いた、基板(substrate)3上に設けられる、送受信回路、計算デバイス、センサー、LEDまたは任意の他の形態の集積回路(integrated circuit)のような、機能回路(functional circuit)4を有する基板3を含む。機能回路4は、基板3上または基板3内に形成された導電性トラックまたはビアを用いる溝2a,2bのうちのいずれか1つの中に通じる1つまたは複数の接続端子(単数または複数)4a,4bに電気的に接続され得る。ワイヤのうちの少なくとも1本は、次いで、それが溝2a,2bのうちの1つの中に挿入されたときに、機能回路4と、電気的に接触させられ得る。この場合において、チップ1に組み立てられたワイヤは、チップ1のための単純な機械的支持体ではなく、しかし、例えば、アンテナを形成することによって、またはチップを電源(power supply)に電気的に接続することによって、またはさらに、それに接続されていてもよい別のチップに信号を配信すること(distributing)によって、その操作に貢献し得る。この場合において、もちろん、ワイヤは、導電性材料製であり、または導電性材料を含んでいる。ワイヤが絶縁シースを備えている場合、接続端子との電気的接触を可能にするために、溝内に収容されることとなるその長手方向部分においてワイヤを裸にする必要があってもよい。しかし、本発明は、決して、チップ1の溝内に位置する接続端子に接続される導電性ワイヤに限定されない。ワイヤは、このチップのための機械的支持体を形成する非導電性材料製となることが想定され得る。あるいはまた、チップは、溝内に配置される複数のワイヤを備えていてもよく、少なくとも1本のワイヤは、チップ1に電気的に接続される金属導体であり、少なくとも別のワイヤは、電気絶縁体でありおよび支持体としてのみ使用される。
【0020】
図1aおよび
図1bの記載において、チップ1は、また、T字形部分(T-shaped section)を備えるカバー5を含み、Tの基部(base)は、基板3の主要面(main face)と組み立てられている。このようにして、2つの縦溝2a,2bは、カバー5のT形材(T-bar)と、基板3との組み立ての主要面と、の間に形成される。基板3と同様に、カバー5もまた、機能回路、接続端子および/または導電性トラックまたはビアを備え得る。これらの要素は、機能回路4に電気的および機能的に接続され得る。
【0021】
以下の図および図lbに示されるもの以外のチップ1の構成は可能である。例えば、チップ1は、機能回路4を有する単一の平坦な支持体から成っていてもよく、縦溝2a,2bは、例えば、この支持体の2つの反対側面(opposite lateral faces)上、またはこの支持体の主要面のうちの一方および/または他方上のエッチングによって形成される。別の構成によると、チップ1は、各々機能回路を有する同じまたは同様の寸法の2つの平坦な支持体から成り得る。平坦な支持体は、各々、チップ1の2つの縦溝2a,2bを画定するように、より小さいスペーサの2つの反対側(two opposite sides)に組み立てられる。スペーサは、接着剤の十分に厚い層でできている部分から成り得る。
【0022】
選ばれた構成がどのようなものであれ、本発明による挿入方法に対応したチップ1は、ワイヤの長手方向部分を受け入れおよび収容するための少なくとも1つの縦溝2a,2bを有することになっている。
【0023】
また、本発明によると、溝2a,2bは、結合材製の少なくとも1つのパッド6a,6bを含む。
図1a、
図1bに示される例において、パッド6a,6bは、溝2a,2b内において、溝2a,2bの壁のうちの1つを形成する支持体5の面上に、およびそれらの全長にわたって、配置される。あるいはまた、パッド6a,6bは、溝2a,2bを形成する別の壁上、例えばカバー5側上に配置され得る。あるいはまた、互いに異なり、溝内において低減された長さにわたって配置される、複数の簡単な(elementary)パッドのうちの各パッド6a,6bが選択され得る。溝2a,2b内におけるパッド6a,6bの形状、体積または配置がどのようなものであれ、それらは、それらの存在の下、ワイヤを溝2a,2b内に完全に収容することができないように大きい。以下の記載において明らかにされるように、各パッド6a,6bは、溝2a,2bの各々内に収容されたワイヤの組み立ておよび良好な機械的強度を可能にするであろう結合材の予備を形成する。
【0024】
各パッド6a,6bを構成する材料は、その融点が相対的に低いように選択される。この融点は、チップ1の機能回路4が損傷なしに暴露され得る最高温度よりも低い。例えばこの最高温度が350℃である場合、パッド6a,6bの材料は、その融点は、350℃°よりも低く、例えば300℃であるように選択されるべきである。有利には、下述される挿入方法の単純性の理由のために、この材料は、その融点が80℃から100℃または150℃、または250℃であるように選択される。各パッド6a,6bを構成する材料は、複数の元素化合物(elemental compounds)を含んでいてもよい。例えば、それは、錫、銀および銅のような金属の合金であってもよい。チップ1は、大気圧で取り扱われることが意図され、およびしたがって、言及される融点は、この圧力で決定されることに留意されたい。加えて、パッド6a,6bまたは簡単なパッドの全てが同じ材料製である必要はない。
【0025】
有利には、特にパッド6a,6bがワイヤをチップ1の接続端子に電気的に接続するために使用されるときに、それは、導電性材料製である。しかし、上記のように、これは必須ではない。
【0026】
チップ1は、言及される最先端の技術文献中に教示されるような半導体集積回路の分野のテクノロジーを用いて大量生産され得る。パッド6a,6bは、有利には、例えば、そのカバー5との組み立ての前に、または、より概してカバー5の形成の前に、基板3上への堆積によってそれらを形成することによって、チップ1の製造の間に製造され得る。また、チップ1を製造した後に、例えば、これらのパッド6a,6bを形成する結合材をその融点を超える温度で液体の形態で直接的に溝2a,2b内に分配することによって、パッド6a,6bを縦溝2a,2b内に形成することを考慮に入れることも可能である。
【0027】
この発明は、チップ1の特性を利用して、少なくとも1本のワイヤをチップ1の少なくとも1つの溝2a,2b内に挿入するための特に賢い方法を提案し、これは、このワイヤの強制埋め込みを必要とせず、およびこれは、したがって、その挿入の間にワイヤに加える力を制限する。この方法は、
図2aから
図2eを参照しながら説明される。
【0028】
まず、ワイヤは、それが、開示される機械的および化学的処理に対して十分に耐性がある限り、任意の種類のものであり得ることに留意されたい。有利には、ワイヤは、例えばステンレス鋼、銅系合金または銅製である導電性の電線(electrical wire)であり、および挿入方法は、このワイヤがチップ1の機能回路4の端子4a,4bに電気的に接続されることを可能にする。
【0029】
【0030】
位置決めステップの間、2本のワイヤ7a,7bの長手方向部分は、2つの溝2a,2bに沿ってレイアウトされる。パッド6a,6bは、溝2a,2bの、ワイヤがその中に完全に収容されるのを防止するのに十分な部分を占める。位置決め工程の間、制限された力がワイヤ7a,7b上に、それをパッド6a,6bに押し付け、およびそれをそれに強制当接させるために、作り出される。
図2bおよび
図2cは、位置決めステップの完了時の、チップ1および2本のワイヤ7a,7bを示す。ワイヤ7a,7bは、パッド6a,6bと接触しており、それらは、また、チップ1の側面1a、1b上において溝2a,2bの輪郭を画定する基板3および/またはカバー5の縁部のうちの1つと接触し得る。パッド6a,6bが溝2a,2bの全長にわたって延びていない場合において、ワイヤの長手方向部分の一部は、その中に部分的に収容されてもよい。
【0031】
ワイヤの直径は、パッド6a,6bが無いときにワイヤが溝2a,2b内に何ら特別な埋め込み力無しに挿入されおよび収容され得るように、溝の高さよりも小さくなるように選択されることは、忘れてはならない。
【0032】
図2dおよび
図2eに示されるように、本発明の方法は、また、位置決めステップの後に、挿入ステップを含む。この挿入ステップの間、パッド6a,6bを少なくとも部分的に含む帯域は、それらが含有する結合材の融点を超える加工温度に、およびそれが溶融するのに十分な時間にわたって、暴露される。結合材の液体状態への変化は、ワイヤ7a,7bに及ぼされる適度な力(modest forces)と組み合わされて、
図2eに示されるように、溝2a,2b内への後者の挿入をもたらす。パッド6a,6bの結合材にとって、その全体として液体状態になってワイヤ7a,7bの挿入を引き起こすことは、必要ではない。材料の一部だけが液化して、ワイヤ7a,7bが溝2a,2b内に係合されおよび収容されることを可能にするのに十分な通路を開けることは、十分である。加工温度に暴露される帯域は、全てのパッド6a,6bを含むが、これらのパッド6a,6bの一部だけが、加工温度に直接的に暴露されてもよく、これは、熱伝導によって引き起こされ得る。
【0033】
図2aから
図2eに示される例に示されるように、チップ1が、いくつかのワイヤ7a,7bを収容するためのいくつかの溝2a,2bを有するとき、挿入ステップは、ワイヤの各々に関して連続的にまたは同時に実行され得る。加工温度に暴露される帯域は、全てのパッド6a,6bを少なくとも部分的に含むのに十分に大きくてもよい。あるいはまた、挿入ステップは、各々パッド6a,6bの少なくとも一部を包含するいくつかの異なる(distinct)帯域の同時または連続的な暴露を含んでもよい。
【0034】
挿入ステップは、加熱部材、例えば空気または別の加熱された流体の流れの発生器、を用いて、誘導によって、またはレーザー照射または紫外線放射のような光照射によって、実施されて、チップ1の加熱帯域を画定する熱流の発生をもたらし得る。流れは、十分長くにわたって維持され、およびパッド6a,6bが作られる結合材の融点よりも高い、それを溶融させるのに十分な温度を有する。もちろん、加熱は、例えば加熱されたエンクロージャ内にチップ1を配置することによって、包括的(global)であり得るが、このアプローチは、工業的に実施するためにはもう少し複雑であり得る。
【0035】
図2eに示されるように、パッド6a,6bを構成する結合材は、いったん液体状態にで、それ自体をワイヤ7a,7bの周りに埋め込み、溝2a,2bを画定する壁にわたって流れる傾向がある。結合材のいくらかは、ワイヤの長手方向部分によって吸い上げられ得(can be absorbed)、および溝2a,2b内におけるワイヤ7a,7bの機械的強度を補強するのに貢献する。
【0036】
ワイヤ7a,7bが溝2a,2b内に挿入されたときに、結合材の熱処理は、加熱部材を非活性化すること、または熱流に露出される帯域からチップ1を取り出すようにチップ1および/または部材を移動させること、のいずれかによって、中止され得る。帯域における熱処理の中止は、結合材の融点よりも低い温度、典型的には室温を取り戻させ、これは、固体構造(solid constitution)、およびチップに接合されたワイヤをもたらす。結合材およびワイヤが導電体(electrical conductors)であるとき、したがって、ワイヤ7a,7bを機能回路4の端子4a,4bに電気的に接続することが可能である。したがって、方法は、組み合わされたやり方で、大きい埋め込み力の必要性なしに、ワイヤを挿入しおよびそれをチップ1に固定することを可能にすることに留意されたい。パッド6a,6bは、組立品材料の一種の予約(reservation)を形成し、溝内に事前位置決めされる。
【0037】
位置決め工程の前または間に、本発明の方法は、ワイヤ7a,7bを準備するステップを提供してもよい。このステップは、ワイヤ7a,7bがそのように形成されたときに、導電性組立品がチップ1を備えて形成され得るように、導電性コアを取り囲む絶縁シースを取り外す工程を含んでいてもよい。あるいはまた、または加えて、ワイヤ7a,7bの洗浄または脱酸素加工は、この接触の形成および/またはパッド6a,6b結合材の接着(adhesion)を向上させるために提供され得る。いくつかの代替的な解決策において、準備ステップは、ワイヤを錫めっきする工程、またはより概して、それらを電気的接触または結合材の接着を促進させる材料で塗工する工程を含んでいてもよい。これらの処理は、例えば、所望の加工に応じた液体流体または液化流体(酸、洗浄液、液体金属合金、等)を発射または噴霧する工程によって、実施され得る。
【0038】
本発明による方法は、また、ワイヤ7a,7bが溝2a,2b内に挿入された後に、結合材を固化させる工程によるチップ1上におけるその組み立ての間または後に、付加的なステップを含んでいてもよい。したがって、方法は、チップ1上におけるワイヤ7a,7bの組み立てを補強するステップを含み得る。このステップは、複数のワイヤ7a,7bに不平衡力が加えられ、チップ1とのそれらの組み立てにおいて剪断応力の形成をもたらしたときに、特に有用である。補強ステップは、溝2a,2b内および溝内において暴露されるワイヤ7a,7bの長手方向部分の少なくとも一部上に接着剤を分配する工程を含んでいてもよい。接着剤を分配する工程は、例えばUV処理によるその暴露によって補足され得、これは、接着剤を硬化させ(stiffen)およびそれが接触する要素に対するその取り付けを促進させるために、1秒または数秒のオーダーの非常に短時間であり得る。
【0039】
本発明は、また、補完ステップとして、チップ1を、その最終的な適用における機械的または化学的ストレスからそれを保護するために、樹脂のような十分に剛性の防水材料内に封入するステップを含む。好ましくは、この封入は、チップ1の全ての面、特に溝2a,2bがその上に形成されている面が、実際に、封入材料で塗工されているようなものである。
【0040】
いくつかの場合において、特に、チップ1がいくつかの導電性ワイヤ7a,7bと関連付けられているときに、ワイヤ7a,7bを互いから電気的に分離することが必要である場合がある。本発明は、したがって、ワイヤ7a,7b上またはワイヤ7a,7b間に電気絶縁を設けることを目的とした補完ステップを提供してもよい。絶縁体(insulant)は、固くされる前に、導電性ワイヤ7a,7b上および導電性ワイヤ7a,7b間、またはチップ1それ自体の上にさえ配置される液体材料製であり得る。好ましくは、ワイヤ7a,7bを変形可能に保つために、電気絶縁材料は、過度に剛性ではなく、これは、関係している適用に応じて特に興味深い可能性がある。
【0041】
方法は、また、補完ステップとして、ループを形成するためにワイヤ7a,7bを電気的接触させる工程を含んでいてもよい。この接触は、導電性接着剤の分配をもたらし得る。
【0042】
方法は、また、補完ステップとして、1本または複数本のワイヤ(単数または複数)7a,7bを切断するステップを含んでいてもよい。これは、対象物内へのその一体化のために、少なくとも1つのチップ1を備えるセグメントを取る工程(taking)を含んでいてもよい。それは、文献(特許文献10)に教示されるように、チップ1に接続される双極子アンテナを形成するために、ワイヤの一部を切断する工程を含んでいてもよい。1本または複数本のワイヤ(単数または複数)7a,7bの切断工程は、それ自体が知られている任意の手段によって、例えば、機械的剪断工具(mechanical shearing tool)を使用することによって、またはレーザー切断によって、実施され得る。
【0043】
チップ1を、それがワイヤ7a,7bに組み立てられた後にテストしおよび/またはプログラミングする付加的なステップは、また、前のステップがその機能性に影響を及ぼしていないことおよび/またはそれを完全に機能的にすることを保証するために提供され得る。
【0044】
本発明は、また、半導体チップ1の溝2a,2b内にワイヤ7a,7bを挿入するために、装置の部分8を提供し、今しがた記載されたものによる方法を実施することを可能にする。装置の部分8は、チップチェーン1を形成するための、複数のチップ1内へのワイヤの繰り返される挿入に、特に適している。
【0045】
図3aおよび
図3bは、その作動の2つの特定の時における、そのような装置の部分を示す。これらの図に示される装置の部分8は、チップ1の2つの溝2a,2bそれぞれ内への2本のワイヤ7a,7bの同時挿入を可能にするように構成されている。しかし、本発明の装置の部分は、決して、この特定の例に限定されず、および説明されることとなる同一の原理は、異なる数のワイヤの挿入に適用されてもよい。
【0046】
装置の部分8は、張力の制御された状態の下で、作業空間の2つの端部間にワイヤ7a,7bを展開させるための位置決め部材9,9a,9bを含む。この空間の1つの端部において、リールのようなワイヤ供給部材9aは、2つの供給リールから2本のワイヤ7a,7bを取り出す(extract)ために設けられていてもよい。これらのワイヤ7a,7bは、作業空間の全長にわたって展開されて、リールのような保管部材9bが設けられ得る第2の端部に到達し、装置の部分8によって製造されることとなるチップチェーンを保管リール上に位置決めすることを可能にする。ワイヤ7a,7bは、ホイールまたはローラーのような案内部材9によって2つの端部間に案内されて、特にその移動の間、ワイヤ7a,7bの空間内における位置を正確に位置決めしおよび案内する。位置決め部材9a,9b,9b,9は、ワイヤが駆動されることを可能にするようにモーターが付けられて、装置の部分8が処理する(processes)際に、それらの供給リールから保管リールへのワイヤ7a,7bの移送を保証し得る。
【0047】
位置決め部材9,9a,9bは、また、各ワイヤ7a,7bの張力を、それがワイヤ7a,7bに張力が掛からない最小の張力とワイヤが劣化または破断しそうになる最大の張力との間であり得るように、制御するように設計される。装置の部分8が、示される例のように、複数のワイヤ7a,7bを展開するように設計されているとき、2本のワイヤ間において同一の張力を維持しようとすることは、有利である可能性がある。同様に、複数のワイヤ7a,7bが少なくとも1つのチップ1内に挿入されるとき、溝2a,2bからのワイヤ7a,7bの組立解除をもたらし得る、チップ1上における剪断力を発生させることを回避するために、装置の部分8によって実行される加工の間の作業空間に沿ったワイヤ7a,7bの移動は、各ワイヤ7a,7bに関して同時におよび同一速度で実行されるべきであることは重要である。
【0048】
示される例において、2本のワイヤ7a,7bは、同一の水平面内に、同様に同一の面に配置される2つの溝2a,2bを備えるチップ1内に挿入され得るように、配置される。チップ1上の溝2a,2bの別の構成は、互いに関するワイヤ7a,7bの配置の異なる調整をもたらし得る。
【0049】
作業空間は、ワイヤ7a,7bとチップ1を組み立てるステップが実行される中間(intermediate)帯域10aから成る。
【0050】
中間帯域10aの上流、第1の端部および供給部材9aの側において、2本のワイヤ7a,7bは、チップ1の溝2a,2b内に挿入されたときの2本のワイヤ7a,7b間の距離よりも大きい距離だけ、互いから離間される。チップ1の溝2a,2b間の距離が1ミリメートル未満であるとき、これは通常であり、2本のワイヤ7a,7bは、上流の帯域10bにおいて、数ミリメートル、例えば3mmだけ、互いから分離され得る。
【0051】
中間組立帯域(intermediate assembly zone)10aの下流、装置の部分8の第2の端部および保管部材9bの側において、ワイヤ7a,7bは、溝2a,2b内に挿入され、およびチップ1と組み立てられる。2本のワイヤ7a,7b間の距離は、したがって、チップ1の幾何学的形状およびその溝の深さによって与えられる。この距離は、典型的には1mm未満である。
【0052】
中間帯域10a内にまたは直接的にこの帯域に近接して(in the vicinity)配置される案内要素9は、ワイヤ7a,7bのスペーシングが、上流の帯域10bにおいて存在するスペーシングと下流の帯域10cにおいて存在するものとの間に案内されることを可能にする。
【0053】
図3aおよび
図3bに示される装置の部分は、また、取扱デバイス11を含み、これは、チップ1がチップ保管帯域から取り出され、およびワイヤ7a,7b間の中間帯域10aに位置する挿入位置に位置決めされるのを可能にする。挿入位置は、チップ1が位置決めされおよび固定的に上に保持されるトレイによって、具現化され得る。チップ1が挿入位置内に正確に位置決めされたとき、チップの溝2a,2bは、ワイヤ7a,7bに面してワイヤ7a,7bと同じ高さに、および同じ平面内に位置決めされる。取扱デバイス11は、チップ1を保管領域(storage area)から掴みおよび同じ物を正確にその挿入位置に位置決めすることを可能にする、吸引ノズルを備える関節アーム(articulated arm)を含む自動的コンポーネント挿入(「ピックアンドプレース(Pick and Place)」)機であり得る。
【0054】
装置の部分8は、また、ワイヤ7a,7bを位置決めするための部材12を含む。中間挿入帯域10a内に配置されるこの部材12は、2つの構成によって、ワイヤ7a,7b上に支持され得る。
図3aに示される第1の「オープン(open)」構成において、位置決め部材12は、ワイヤ7a,7b上に載っておらずまたは十分に載っておらず、これらのワイヤ7a,7b間のスペースを、挿入位置においてその中にチップ1を配置することができるために、開けたままにする。
図3bに示される位置決め部材12の第2の構成において、後者は、溝2a,2bに沿ってワイヤ7a,7bを位置決めするように制御可能に載り、これらの溝内に配置されるパッド6a,6bに押し付けられ、およびしたがって、パッド6a,6bに強制当接する。
【0055】
本発明によると、装置の部分8は、また、中間帯域10aの中または近くに配置される少なくとも1つの加熱部材13を含み、チップ1が挿入位置に配置されたときに、加工温度に、溝2a,2b内に配置されるパッド6a,6bの少なくとも一部を含む帯域を、上昇させる。本発明の方法の詳細な説明に見られるように、加熱部材12は、パッド6a,6bを形成する結合材の温度がその融点を超えて上昇させられることを可能にする。部材12は、熱気または任意の他のガス状流体の流れの発生器、UVまたはレーザー照射(laser radiation)のような光放射(light radiation)の発生器、誘導加熱(induction heating)の発生器、を含んでいてもよい。部材12は、いくつかの発生器を含んでいてもよく、各発生器は、それが挿入位置に配置されたときに、例えばチップ1の溝2a,2bの各々内に位置する特定の帯域を暴露する。
【0056】
先ほど説明された全ての部材は、不図示の加工デバイス(processing device)に接続されて、ワイヤ7a,7bを移動させる工程、チップ1を挿入位置内に配置する工程、挿入部材12を作動させる工程、の操作の順序を保証してもよく、および加熱部材13は本発明の挿入方法が高速で行われるのを可能にする。
【0057】
先ほど説明された中間組立帯域10aの中または近くに配置される部材に加えて、装置の部分8は、また、この帯域の上流および/または下流に、他の付加的部材14を提供して、ワイヤ7a,7bを準備するステップ、およびチップ1およびワイヤ7a,7bによって形成される組立品に関する補完ステップを行ってもよい。これらの付加的部材は、例えば、ワイヤ7a,7b上へのおよび/または溝2a,2b内への、噴霧、洗浄、脱酸素、錫めっきまたは接着剤流体のための、分配ノズルを含んでいてもよい。付加的部材は、また、ワイヤを切断するためのレーザー源、または接着剤または樹脂を固化させるためのUV源を含んでいてもよい。それは、また、剪断によるワイヤの切断、またはチップテストまたはプログラミング手段のための機械デバイスであってもよい。好ましくは、これらの付加的部材14は、ワイヤ7a,7bまたはチップ1を、これらの要素と接触することなく加工する(to process)ことを可能にする。
【0058】
付加的部材14は、有利には、これらの部材によっておよび中間帯域10aに配置されたものによって行われる加工(processings)が全て同時に実行され得るように、作業空間内に、ワイヤ7a,7bに沿って、上流の帯域10b側上および下流の帯域10c内に、分散させられる。換言すると、ワイヤ7a,7bが、供給、案内および保管部材9a,9および9bによって駆動されて、2つのチップ間のスペーシングに対応する長さ部分だけ移動させられたとき、付加的部材は、それらが加工することのできる、チップに対向して(中間挿入帯域の下流)またはワイヤの長手方向部分に対向して(この帯域の上流)、位置決めされる。これらの部材によって全ての加工が行われたとき、ワイヤ7a,7bは、付加的な長さ部分だけ、駆動されおよび移動され得る。
【0059】
本発明の代替的な実施形態において、ワイヤ7a,7bは、稼働率(working rate)をさらに増大させるために、連続的に駆動され得る。この場合において、チップ1は、チップ1がワイヤ7a,7bに対して実質的に静止しているように、ワイヤ駆動方向におよび同一の速度で移動するプレート上に位置決めされ、および溝2a,2b内へのその挿入およびその組み立てを可能にし得る。
【0060】
第1の実施例
上述された方法および装置の部分8は、文献(特許文献10)に記載されるように、送受信デバイス15およびそのようなデバイスのチェーンを生産するために使用され得る。
【0061】
そのようなデバイス15は、チップ1の反対側(opposite sides)に配置される2つの縦溝2a,2bを含む
図1aに示されるものによるチップ1によって形成される。2本の導電性ワイヤ7a,7bは、溝2a,2b内に配置される。これらのワイヤは、チップ1の両側(either side)に延びて、双極子形状のアンテナを形成する。ワイヤ7a,7bは、例えばチップ1の基板3内に位置決めされる送受信回路4の端子4a,4bに電気的に接続される。
図4aは、そのような送受信デバイス15の概略図を示す。
【0062】
特に曲げに対する機械抵抗の理由のために、ワイヤは、好ましくは、ステンレス鋼の中で選択される。いくつかの場合において、しかしながら、銅系合金または銅ワイヤが好ましくてもよい。
【0063】
そのような送受信デバイス、またはそのようなデバイスのチェーンを製造するために、2本のワイヤコイルが供給部材9aの巻出機内に配置され、およびこれらのワイヤ7a,7bは、それらが保管デバイス9bを形成するリールの保管スプールに取り付けられるまで、案内部材9を通して展開される。いったん位置決めされると、異なる位置決め部材は、チップ1内へのワイヤ7a,7bの挿入を準備するために、ワイヤを緊張状態におよび同一平面内に位置決めするように作動させられる。送受信チップ(Transmission reception chip)1、例えばRFIDチップは、チップ保管帯域内に位置決めされ、および加工シークエンス(processing sequences)の間、取扱デバイス11によって挿入位置に連続的に移動させられ得る。各新加工シークエンスの間、装置の部分8が作られている部材は、以下の操作を、ワイヤを特定の長さだけ移動させおよびこれらの操作を再び繰り返す前に、同時に実行する。
【0064】
作業空間の上流の帯域10bにおいて、付加的部材14で、
- チップ1の溝2a,2b内に収容されることが意図されるワイヤ7a,7bの長手方向部分を洗浄し、および場合により錫めっきする工程。
【0065】
中間帯域10aにおいて、この帯域に位置する部材を使用して、
- 保管領域からチップ1を取り外し、およびこのチップ1を挿入位置に位置決めする工程、
- 前のシークエンスの間に前もって準備されていたワイヤ7a,7bの長手方向部分を挿入する工程、
- 当初はパッド6a,6bを形成する結合材を液化および固化させることによって、溝2a,2b内にワイヤ7a,7bを組み立てる工程。
【0066】
下流の帯域10cにおいて、前のシークエンスの間にワイヤ7a,7bに組み立てられた複数のチップ1に対向してこの帯域に配置される付加的部材14を使用して、
- 接着剤を溝2a,2b内へおよびこれらの溝内において暴露されるワイヤの長手方向部分上に分配する工程、およびそれを硬化させおよびチップ1上のワイヤ7a,7bの組み立てを補強するための接着剤の暴露、
- 双極子形状のアンテナを事前形成するために2本のワイヤ7a,7bのうちの1本を切断する工程、
- 剛性樹脂のような保護材内にチップ1を封入して、それが機械的および化学的に保護されるのを可能にするする工程、
- チップ1の機能テストをし、および固有の識別番号をそれに割り当てるようにチップ1をプログラミングする工程。
【0067】
接着剤を溝2a,2b内へおよびワイヤの長手方向部分上に分配する工程は、ワイヤとワイヤに垂直なチップの1つの縁部との間に接着剤メニスカスの形成をもたらし得ることに留意されたい。このメニスカスは、ワイヤに加えられ得るおよびチップからそれらを係合解除する傾向があり得る力に対して特に抵抗性がある、チップとワイヤ7a,7bとの組立品を作るのに役立つ。
【0068】
製造プロセスの完了時に、
図4bに概略的に示されるように、送受信デバイス15のチェーン16を含む保管コイル(storage coil)が得られる。例えば識別目的のために対象物内に一体化され得る機能性送受信デバイス15を形成するセグメントは、このチェーン16から取り出し得る。
【0069】
図4aに示されるように、チェーン16の各送受信デバイス15は、互いに平行のおよびチップ1の2つの反対側に配置された2つの縦溝2a,2bを有するチップ1を含む。送受信デバイスは、また、機能性送受信回路4、および溝2a,2b内に収容されおよび各々溝2a,2bの片側(one side)から広がって双極子形状のアンテナを形成する2つのワイヤセグメント7a,7bを含む。ワイヤセグメント7a,7bは、結合材17を介して、溝内に配置される機能回路4の端子4a,4bと、電気的に接触する。ワイヤセグメントは、また、これらの溝2a,2b内におよびワイヤ7a,7bの暴露側上に位置決めされる1つの接着剤18によって、溝2a,2b内に維持される。チップ1は、また、保護材19内に被覆されおよび封入される。
【0070】
第2の実施例
この第2の実施例は、第1の実施例のものに類似する送受信デバイス20に関する。
図5aに概略的に示されるこの第2の実施例において、しかしながら、送受信デバイス20は、1本のワイヤ7bの1つの端部を他のワイヤ7aに電気的に接続することによって形成されるループを持つアンテナを有する。このデバイスを製造するために、前述の実施例のうちの1つに類似する製造プロセスが使用される。各新加工シークエンスの間、装置の部分8が作られている部材は、以下の操作を、ワイヤを設定された長さだけ移動させおよびこれらの操作を再び繰り返す前に、同時に実行する。
【0071】
作業空間の上流の帯域10bにおいて、付加的部材14で、
- チップ1の溝2a,2b内に収容されることが意図されるワイヤ7a,7bの長手方向部分を洗浄し、および場合により錫めっきする工程。
【0072】
中間帯域10aにおいて、この帯域に位置する部材を使用して、
- 保管領域からチップ1を取り外し、およびこのチップ1を挿入位置に位置決めする工程、
- 前述のシークエンスの間に前もって準備されていたワイヤ7a,7bの長手方向部分を挿入する工程、
- 当初はパッド6a,6bを形成する結合材を液化および固化させることによって、溝2a,2b内にワイヤ7a,7bを組み立てる工程。
【0073】
下流の帯域10cにおいて、前述のシークエンスの間にワイヤ7a,7bに組み立てられた複数のチップ1に対向してこの帯域に配置される付加的部材14を使用して、
- 設定された距離にわたってそれらを電気的接触に置くのを回避するために、少なくとも、チップの片側に配置される2本のワイヤ7a,7b上に、電気的に絶縁性の材料を分配する工程であって、絶縁体(insulation)は、また、チップ上に分配され得る、工程、
- 任意選択的に、形成された絶縁性帯域の端部の端部でまたはこの絶縁ステップの前に、2本のワイヤ7a,7bを、例えば中間帯域の位置決め部材12に類似する可動のジョーを用いてそれらを一緒に近づけることによって、電気的接触に至らせ、および溶接する工程。あるいはまた、この電気的接触を確立させるために、2本のワイヤ7a,7b上および2本のワイヤ7a,7b間に導電性にかわまたは任意の他の導電性材料を分配することが計画されてもよい。ループは、こうして形成される。この操作が行われない場合、ループの形成は、後ほど、保管コイルのセグメントを取り外した後、デバイスが対象物内に一体化される前に、得られ得る。
- それが機械的および化学的に保護されることを可能にする、剛性樹脂のような保護材内におけるチップ1の剛性樹脂のような保護材内における封入。この封入ステップは、電気的に絶縁性の材料がチップおよびワイヤ上に前もって分配されていたとき、省略され得る。
- 例えば、ワイヤを局所的に破断させるのに十分に深く封入層にレーザーカット22を形成することによって、ワイヤのうちの1本をチップ1に沿って切断する工程。
- チップ1の運用テストをし、および固有の識別番号をそれに割り当てるようにチップ1をプログラミングする工程。
【0074】
この第2の実施例において、アンテナを形成するためにワイヤのセグメントを切断することは必要ではない。チップ1がその上に組み立てられている2本のワイヤ7a,7bからなるチェーン21は、保存される。操作可能な送受信デバイスを形成するセグメントは、上述の方法により形成されたデバイスチェーンから、取り外され得、その中に、先ほどの実施例と同様に、対象物は、同じ物を識別するために、一体化され得る。このチェーン21は、
図5bに概略的に示される。
【0075】
図5cに示されるように、各送受信デバイス20は、互いに平行のおよびチップ1の2つの反対側に配置された2つの縦溝2a,2bを備えるチップ1を含む。送受信デバイスは、また、操作可能な送受信回路4、および溝2a,2b内に収容される2つのワイヤセグメント7a,7bを含む。それは、また、溝2a,2b内に収容されおよびこれらの溝2a,2bの両側(either side)から広がる2つのワイヤセグメント7a,7bを含む。ワイヤ7a,7bは、チップ1の片側で互いに接触してループを形成することができ、および溝2a,2b内に収容されるワイヤの長手方向部分は、溝2a,2b内に配置される操作可能な回路4の端子4a,4bと結合材17を介して電気的接触する。ループを構成するワイヤセグメント、および場合によっては、チップは、電気的に絶縁性の材料23内に少なくとも部分的に埋め込まれ得、したがって、同じ物間の電気的接触を回避する。チップ1は、特にそれが絶縁材料内に埋め込まれていないときに、保護材19内に埋め込まれおよび封入される。封入材料(単数または複数)は、アンテナを機能的にするためにワイヤのうちの1つを切断するために使用されたノッチ22を有する。
【0076】
第1および第2の実施例の送受信デバイス15,20は、文献(特許文献6)に教示されるように、例えばテーピングによって、織物用糸内に挿入され得る。より概して、それは、織物またはプラスチック材料、布またはシース内に挿入され得る。
【0077】
したがって、送受信デバイスを含む織物用糸またはこの糸のセグメント、またはより概して、デバイスが挿入されている、織物またはプラスチック材料、布またはシースは、それ自体が、織物であろうとなかろうと、対象物内に一体化され得る。
【0078】
もちろん、本発明は、記載された実施の様式に限定されず、および代替的な実施形態は、特許請求の範囲によって定義されるような本発明の範囲を越えることなく、提供され得る。